(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6565022
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】液化ガス燃料船の交通経路形成構造
(51)【国際特許分類】
B63B 29/00 20060101AFI20190819BHJP
B63B 11/04 20060101ALI20190819BHJP
B63B 25/00 20060101ALI20190819BHJP
B63B 27/00 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
B63B29/00 A
B63B11/04 B
B63B25/00 102Z
B63B27/00 B
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-28387(P2017-28387)
(22)【出願日】2017年2月17日
(65)【公開番号】特開2018-131174(P2018-131174A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2019年3月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518144045
【氏名又は名称】三井E&S造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】滝本 陽平
(72)【発明者】
【氏名】山田 豪
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 貴士
【審査官】
杉田 隼一
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2016/087704(WO,A1)
【文献】
国際公開第2015/040268(WO,A1)
【文献】
特開2010−247663(JP,A)
【文献】
特開2013−11332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 29/00
B63B 11/04
B63B 25/00
B63B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガス燃料から蒸発した燃料ガスが大気中へ漏出する可能性のあるガス発生源が収容され、曝露甲板より下側に設けられるガス発生室と、
前記ガス発生室に隣接して設けられるエアロックスペースと、
前記エアロックスペースに隣接して設けられる小区画と、
前記ガス発生室、前記エアロックスペースおよび前記小区画の外側に形成される外側領域と、
前記ガス発生室と前記エアロックスペースの間を移動するための第1の出入口を密閉可能な第1のガス密戸と、
前記エアロックスペースと前記小区画の間を移動するための第2の出入口を密閉可能な第2のガス密戸と、
前記小区画と前記外側領域の間を移動するための第3の出入口を密閉可能な第3のガス密戸と、
前記小区画内を換気する換気手段と
を備えたことを特徴とする液化ガス燃料船の交通経路形成構造。
【請求項2】
前記換気手段が前記小区画に外気を導くために前記小区画に形成された第1の開口であることを特徴とする請求項1に記載の交通経路形成構造。
【請求項3】
前記ガス発生源と前記第1の開口の間が4.5m以上離れることを特徴とする請求項2に記載の交通経路形成構造。
【請求項4】
前記換気手段が前記小区画内を前記エアロックスペース内よりも加圧するための通風装置であることを特徴とする請求項1に記載の交通経路形成構造。
【請求項5】
前記小区画に設けられた前記通風装置の給気口と排気口が前記外側領域側の壁部に形成されることを特徴とする請求項4に記載の交通経路形成構造。
【請求項6】
前記ガス発生源が液化ガス燃料を貯留する燃料タンクに接続されたバンカーマニフォールドであり、前記ガス発生室が燃料補給ステーションであることを特徴とする請求項1に記載の交通経路形成構造。
【請求項7】
前記ガス発生源が液化ガス燃料を主機または発電機において効率よく燃焼させるために液化ガス燃料の性状を調整する機器であり、前記ガス発生室が燃料調整室であることを特徴とする請求項1、2、4、5のいずれか1項に記載の交通経路形成構造。
【請求項8】
前記燃料調整室が乾舷甲板上に設けられることを特徴とする請求項7に記載の交通経路形成構造。
【請求項9】
前記燃料調整室が乾舷甲板の下側に設けられ、前記エアロックスペースと前記燃料調整室の間に階段が設けられることを特徴とする請求項7に記載の交通経路形成構造。
【請求項10】
前記外側領域が車両積載区域またはロールオン・ロールオフ区域であることを特徴とする請求項1に記載の交通経路形成構造。
【請求項11】
前記外側領域が機関室であることを特徴とする請求項1に記載の交通経路形成構造。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の交通経路形成構造を備えたことを特徴とする船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液化ガスを燃料として使用可能な船舶に関し、特に燃料補給ステーションまたは燃料調整室等の燃料ガス危険区域と、この燃料ガス危険区域の外側に設けられた領域との間に交通経路を形成するための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LNGなどの液化ガス燃料を使用可能な船舶が提案されている(特許文献1)。このような船舶では、液化ガス燃料タンクへ液化ガス燃料を補給するための燃料補給ステーションが設けられ、また液化ガス燃料を主機や発電機等で効率よく燃焼させるために液化ガス燃料の性状を調整する機器を備えた燃料調整室が設けられる。燃料補給ステーションや燃料調整室は、液化ガス燃料から蒸発した燃料ガスが充満する可能性のある燃料ガス危険区域である。
【0003】
自動車運搬船においては、車両積載区域やロールオン・ロールオフ区域は、車載燃料による火災防止のために、通風装置を稼働して常時換気をする必要がある。一方、自動車運搬船において液化ガス燃料を使用する場合、車両積載区域等と燃料ガス危険区域の間の交通経路を確保する方策として、車両積載区域等と燃料ガス危険区域の間に作業員が通行可能なエアロックスペースを設け、エアロックスペース内の圧力を車両積載区域等と燃料ガス危険区域の両者よりも高く維持することによって、燃料ガスが車両積載区域等へ拡散するのを防ぐことが可能である。また他の方策として、燃料ガス危険区域から、自然通風される曝露甲板に通じる階段等の交通経路を設け、曝露甲板を通って車両積載区域等へ移動できるように構成することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2011−503463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エアロックスペースを設けた構成において、エアロックスペース内の高圧状態が維持できない場合、燃料ガスがエアロックスペースを通って車両積載区域等に流入する恐れがある。車両積載区域等に流入した燃料ガスが通風装置等の電気機器が設けられた領域に滞留すると、その領域が爆発性雰囲気となり、通風装置等の電気機器が着火源となる可能性がある。また、燃料ガス危険区域から曝露甲板に通じる交通経路を設けた構成の場合、この交通経路の分だけ車両積載区域が減少するという問題が生じる。
【0006】
本発明は、燃料補給ステーション等の燃料ガス危険区域から、この燃料ガス危険区域の外側の領域へ燃料ガスが拡散する恐れがなく、かつ車両積載区域の減少を最小限に抑えることができる液化ガス燃料船の交通経路形成構造およびこの交通経路形成構造を有する船舶を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る液化ガス燃料船の交通経路形成構造は、液化ガス燃料から蒸発した燃料ガスが大気中へ漏出する可能性のあるガス発生源が収容され、曝露甲板より下側に設けられるガス発生室と、ガス発生室に隣接して設けられるエアロックスペースと、エアロックスペースに隣接して設けられる小区画と、ガス発生室、エアロックスペースおよび小区画の外側に形成される外側領域と、ガス発生室とエアロックスペースの間を移動するための第1の出入口を密閉可能な第1のガス密戸と、エアロックスペースと小区画の間を移動するための第2の出入口を密閉可能な第2のガス密戸と、小区画と外側領域の間を移動するための第3の出入口を密閉可能な第3のガス密戸と、小区画内を換気する換気手段とを備えたことを特徴としている。
【0008】
換気手段は、小区画に外気を導くために小区画に形成された第1の開口であってもよい。この場合、ガス発生源と第1の開口の間が4.5m以上離れることが好ましい。
【0009】
換気手段は、小区画内をエアロックスペース内よりも加圧するための通風装置であってもよい。この場合、小区画に設けられた通風装置の給気口と排気口が外側領域側の壁部に形成されることが好ましい。
【0010】
ガス発生源は例えば、液化ガス燃料を貯留する燃料タンクに接続されたバンカーマニフォールドであり、ガス発生室は燃料補給ステーションである。またガス発生源は例えば、液化ガス燃料を主機または発電機において効率よく燃焼させるために液化ガス燃料の性状を調整する機器であり、ガス発生室は燃料調整室である。この場合、燃料調整室は乾舷甲板上に設けられてもよく、あるいは乾舷甲板の下側に設けられ、エアロックスペースと燃料調整室の間に階段が設けられてもよい。
【0011】
外側領域は、例えば車両積載区域またはロールオン・ロールオフ区域である。また外側領域は、例えば機関室である。
【0012】
また本発明に係る船舶は、上述したいずれかの構成を有する交通経路形成構造を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、燃料ガス危険区域から車両積載区域等へ燃料ガスが拡散する恐れがなく、かつ車両積載区域等の減少を最小限に抑えることができる液化ガス燃料船の交通経路形成構造、およびこの交通経路形成構造を有する船舶を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態の交通経路形成構造を示す平面図である。
【
図2】第2実施形態の交通経路形成構造を示す平面図である。
【
図3】第3実施形態の交通経路形成構造を示す側面図である。
【
図4】第3実施形態の交通経路形成構造を示す平面図である。
【
図5】第4実施形態の交通経路形成構造を示す側面図である。
【
図6】第4実施形態の交通経路形成構造を示す平面図である。
【
図7】第5実施形態の交通経路形成構造を示す平面図である。
【
図8】第6実施形態の交通経路形成構造を示す平面図である。
【
図9】第7実施形態の交通経路形成構造を示す側面図である。
【
図10】第7実施形態の交通経路形成構造を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図示された実施形態に基づいて本発明を説明する。
図1は本発明の第1実施形態の交通経路形成構造を示している。この交通経路形成構造は、燃料として液化ガスを利用できる自動車運搬船に設けられ、車両積載区域(またはロールオン・ロールオフ区域)10と燃料補給ステーション11の間を作業員が往来するための経路として利用される。車両積載区域10と燃料補給ステーション11は曝露甲板より下側に位置する乾舷甲板上に設けられる。燃料補給ステーション11は乾舷甲板において船側に設けられ、燃料補給ステーション11の側壁は船体の外板30である。
【0016】
車両積載区域10は、車載燃料による火災を防止するために、図示しない通風装置によって常時換気される。燃料補給ステーション11には、液化ガス燃料を貯留する燃料タンクに接続されたバンカーマニフォールド12が収容される。バンカーマニフォールド12のバルブ25は、液化ガス燃料から蒸発した燃料ガスが大気中へ漏出する可能性のあるガス発生源であり、燃料補給ステーション11はガス発生源が収容されるガス発生室(燃料ガス危険区域)である。燃料補給ステーション11と車両積載区域10の間には、次に述べるようにエアロックスペース13と小区画16が設けられる。
【0017】
エアロックスペース13は燃料補給ステーション11に隣接して船側に設けられ、エアロックスペース13の側壁は船体の外板30である。燃料補給ステーション11とエアロックスペース13は隔壁14によって気密的に区画され、隔壁14には作業員が通行可能な第1の出入口15が形成される。第1の出入口15は第1のガス密戸21によって密閉可能である。小区画16はエアロックスペース13に隣接して船側に設けられ、小区画16の側壁も船体の外板30である。エアロックスペース13と小区画16は隔壁17によって気密的に区画され、隔壁17には作業員が通行可能な第2の出入口18が形成される。第2の出入口18は第2のガス密戸22によって密閉可能である。
【0018】
小区画16において、隔壁17とは反対側には隔壁19が形成され、隔壁19には、車両積載区域10との間を移動するための第3の出入口20が設けられる。第3の出入口20は、第3のガス密戸23によって密閉可能である。車両積載区域10は燃料補給ステーション11、エアロックスペース13および小区画16の外側に形成される外側領域であり、作業員が車両積載区域10から燃料補給ステーション11へ行くには、小区画16とエアロックスペース13を通過することが必要である。すなわち第1、第2および第3のガス密戸21、22、23を開閉することが必要であるが、次に述べるように本実施形態は、燃料補給ステーション11に滞留した燃料ガスが車両積載区域10に流出しないように構成されている。
【0019】
エアロックスペース13は図示しない通風装置により加圧され、燃料ガス補給ステーション11と小区画16よりも高い圧力を保持するように制御される。一方、小区画16の側壁には第1の開口31が形成され、燃料補給ステーション11の側壁には第2の開口32が形成される。第1および第2の開口31、32は共に常時開放しており、小区画16と燃料補給ステーション11は自然換気され、大気圧に保たれる。したがって燃料補給ステーション11において燃料ガスが発生しても、燃料ガスは第2の開口32から船外へ放出され、第1のガス密戸21が開放されてもエアロックスペース13へ流入することが防止される。またエアロックスペース13に燃料ガスが流入したとしても、第2のガス密戸22を開放したときに、燃料ガスは第1の開口31を通って小区画16から船外へ放出され、車両積載区域10へ流入することはない。
【0020】
エアロックスペース13の床は矩形であり、その面積は例えば1.5m
2以上である。またエアロックスペース13に入った作業員が第1および第2のガス密戸21、22を同時に開放することができないよう、隔壁14、17の間隔Aは1.5m〜2.5m空けられている。作業員は、例えば小区画16から燃料補給ステーション11へ入るときに第2のガス密戸22を閉鎖してから第1のガス密戸21を開放することが義務付けられ、これによりエアロックスペース13内の圧力が急激に低下して燃料補給ステーション11および小区画16の圧力に近づくことが防止され、燃料補給ステーション11に滞留する燃料ガスがエアロックスペース13を通って小区画16へ流入することが極力抑えられる。
【0021】
燃料補給ステーション11の第2の開口32から船外へ放出された燃料ガスが小区画16内へ流入することを防止するため、小区画16に設けられる第1の開口31はバンカーマニフォールド12から極力離れるように配慮されている。具体的には、第1の開口31のエアロックスペース13側の縁部33と、燃料補給ステーション11においてエアロックスペース13側に位置するバンカーマニフォールド12のバルブ25との間隔Bは4.5m以上に定められている。なお小区画16の床はエアロックスペース13と同じ幅の矩形であり、その面積は例えば0.8m
2以上である。
【0022】
以上のように本実施形態によれば、エアロックスペース13内の圧力は常時、燃料補給ステーション11と小区画16よりも高圧に維持されるので、燃料補給ステーション11の燃料ガスが小区画16に流入することが防止される。また、燃料補給ステーション11は第2の開口32によって常時大気に開放されて自然通風されるので、発生した燃料ガスは第2の開口32から大気へ放出される。一方、第1の出入口15を通って燃料ガスがエアロックスペース13に流入した場合であっても、小区画16が第1の開口31によって常時大気に開放されて自然通風されるので、第2のガス密戸22が開放されたときに燃料ガスは第1の開口31から大気へ放出され、車両積載区域10へ流入することはない。
【0023】
通常、第1〜第3のガス密戸21、22、23は閉塞されている。作業員が例えば、車両積載区域10から燃料補給ステーション11へ行くとき、第3のガス密戸23を開けて小区画16に入った後、第3のガス密戸23を閉じてから第2のガス密戸22を開けてエアロックスペース13に入る。そして第2のガス密戸22を閉じてから第1のガス密戸21を開けて燃料補給ステーション11へ入る。このように通行すれば、燃料補給ステーション11内に燃料ガスが滞留していても、燃料ガスが車両積載区域10へ拡散することはなく、車両積載区域10の安全性が常に確保される。
【0024】
従来のように燃料補給ステーション11から曝露甲板に通じる階段を設け、この階段を通って車両積載区域10へ移動する構成の場合、階段の分だけ車両積載区域10の面積が減少するという問題があるが、本実施形態では、エアロックスペースを有する従来技術と比較すると、車両積載区域10の減少分は小区画16の面積(例えば0.8m
2)であり、車両積載区域10の減少を最小限に抑えることができる。
【0025】
図2は第2実施形態を示している。第1実施形態との違いは、小区画16内を換気するために通風装置40を設けたことである。すなわち第1実施形態では第1の開口31によって小区画16内を自然通風により換気しているが、第2実施形態では、小区画16の側壁である外板30に開口は形成されず、通風装置40により換気している。通風装置40は曝露甲板であって、車両積載区域10とは異なる区画44に設けられる。通風装置40の給気口41と排気口42は小区画16の車両積載区域10側の壁部43に設けられ、通風装置40の機械通風により小区画16内はエアロックスペース13よりも高圧になるように加圧される。なおエアロックスペース13と小区画16は外板30に接する必要はなく、外板30よりも内側に設けられていてもよい。
【0026】
第2実施形態によれば、小区画16内の圧力が常にエアロックスペース13よりも高くなるように維持されるので、小区画16内に燃料ガスが流入することが確実に防止され、車両積載区域10の安全性が常に確保される。
【0027】
図3、4を参照して第3実施形態を説明する。この実施形態では、燃料調整室50がガス発生室(燃料ガス危険区域)であり、燃料調整室50には、液化ガスを主機または発電機において効率よく燃焼させるために液化ガスの性状を調整する機器が収容される。燃料調整室50とエアロックスペース13と小区画16は第1実施形態と同様に、曝露甲板51の下側に位置する乾舷甲板52の上に設けられるが、燃料調整室50の側壁に開口は形成されない。
【0028】
その他の構成は第1実施形態と同じであり、相互に対応する部分には
図1と同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0029】
第3実施形態によっても、第1実施形態と同様な効果が得られる。
【0030】
図5、6を参照して第4実施形態を説明する。第4実施形態と第3実施形態の差異は、第4実施形態では、燃料調整室50が乾舷甲板52の下側に設けられ、エアロックスペース13と燃料調整室50の間に階段53が設けられる点である。階段53は乾舷甲板52を上下方向に貫通する階段室54内に設けられ、階段室54はエアロックスペース13から燃料調整室50へ行くための専用交通経路である。
【0031】
第1の出入口15は階段室54とエアロックスペース13の間の隔壁14に形成され、第1のガス密戸21によって開閉される。一方、燃料調整室50と階段室54を区画する隔壁55には第4の出入口56が形成され、第4の出入口56は第4のガス密戸24によって開閉される。その他の構成は第3実施形態と同一である。
【0032】
第4実施形態によっても、第1実施形態と同様な効果が得られる。
【0033】
図7は第5実施形態を示している。この実施形態は、第3実施形態を変形した例であり、第2実施形態と同様に、小区画16内を換気するために通風装置40を設けたことである。すなわち第5実施形態では、小区画16の側壁である外板30に開口は形成されず、通風装置40により換気している。通風装置40は曝露甲板であって、車両積載区域10とは異なる区画44に設けられる。通風装置40の給気口41と排気口42は小区画16の車両積載区域10側の壁部43に設けられ、通風装置40の機械通風により小区画16内はエアロックスペース13よりも高圧になるように加圧される。
【0034】
第5実施形態によれば、第2実施形態と同様に、小区画16内の圧力が常にエアロックスペース13よりも高くなるように維持されるので、小区画16内に燃料ガスが流入することが確実に防止され、車両積載区域10の安全性が常に確保される。
【0035】
図8は第6実施形態を示している。第6実施形態では、燃料調整室50は第4実施形態と同様に乾舷甲板の下側に設けられるが、外板30に接しておらず、階段室54よりも船体の内側に位置している。また、第5実施形態と同様に、小区画16内を換気する通風装置40が設けられる。第4および第5実施形態と同一部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0036】
第6実施形態によれば、第4および第5実施形態と同様な効果が得られる。
【0037】
図9、10は第7実施形態を示している。第7実施形態は、交通経路形成構造が燃料調整室50の燃料ガスが機関室60へ拡散することを防止するように構成されたものである。すなわち機関室60は、燃料調整室50、エアロックスペース13および小区画16の外側に形成される外側領域であり、燃料調整室50、エアロックスペース13および小区画16は、上記各実施形態と同様に、作業員が機関室60と燃料調整室50の間を移動できるように構成される。
【0038】
機関室60と燃料調整室50とエアロックスペース13と小区画16はそれぞれ、乾舷甲板52の下側に設けられる。その他の構成は第5実施形態と同様であり、第5実施形態と同一部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0039】
なお第1〜第7実施形態において自動車運搬船はRO−RO船を含む。また本発明は自動車運搬船に限定されず、客船にも適用でき、上部構造物が通常の船舶よりも大きいものであれば、自動車運搬船や客船以外の船舶にも適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
10 車両積載区域(外側領域)
12 バンカーマニフォールド(ガス発生源)
11 燃料補給ステーション(ガス発生室)
13 エアロックスペース
16 小区画
21 第1のガス密戸
22 第2のガス密戸
23 第3のガス密戸
31 第1の開口(換気手段)
40 通風装置(換気手段)
50 燃料調整室(ガス発生室)
60 機関室(外側領域)