【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、総務省 「ミリ波帯における高度多重化干渉制御技術等に関する研究開発」に関する委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
(本開示に至る経緯)
まず、本開示に至る経緯について説明する。本開示は、無線端末がハンドオーバーを行う無線通信装置、制御装置、および制御方法に関する。
【0019】
具体的には、本開示における無線通信装置、制御装置、および制御方法は、ビームフォーミング技術を用いて指向性の狭いミリ波帯の無線信号を送受信する無線アクセスポイントに関する。
【0020】
指向性の狭いミリ波帯の無線通信を行うミリ波通信装置を、インターネット等の通信ネットワークへの無線アクセスポイントとして用いる場合、1つのミリ波通信装置が全周囲を通信エリアとしてカバーすることは難しい。このため、複数のミリ波通信装置を組み合わせて全周囲をカバーする方法が考えられるが、複数のミリ波通信装置間における無線端末のハンドオーバー(接続しているアクセスポイントの切り替え)について対処が求められる。
【0021】
無指向性通信において、接続しているアクセスポイントの切り替えを高速に実現するための技術は、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の技術(以下「従来技術」という)において、アクセスポイントは、当該アクセスポイントに接続している無線端末に対し、周辺に存在する他のアクセスポイントに関する情報(使用している無線チャネル、BSSID、ESSID)を報知する。無線端末は、接続しているアクセスポイントを他のアクセスポイントに切り替えるために、報知された情報に基づいて、スキャンする無線チャネルを絞り込む。
【0022】
無指向性通信では、従来技術により、無線端末は、他のアクセスポイントへの接続に要する時間を短縮することができ、接続しているアクセスポイントの高速な切り替えができる。
【0023】
しかしながら、無線端末が密集しているエリアをカバーするアクセスポイントは、多数の無線端末が接続しているため、大きな処理負荷を有する。そのため、新たな無線端末がこのアクセスポイントに接続先を切り替えた場合、新たな無線端末の通信品質は、向上せず、却って低下する可能性があった。なお、従来技術は、通信品質の低下への対策として不十分であった。
【0024】
このような事情に鑑み、指向性を有するアクセスポイントにおいて、ハンドオーバーを行う代わりにアクセスポイントの指向性を制御することにより、通信品質の低下を抑制できることに着目し、本開示に至った。
【0025】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する各実施形態は一例であり、本開示はこれらの実施形態により限定されるものではない。
【0026】
(実施の形態1)
本開示の実施の形態1について、図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
<システムの構成>
図1は、本実施の形態に係る無線通信装置1を含む通信システム100の構成の一例を示すシステム構成図である。
図1に示すように、通信システム100は、インターネット等の通信ネットワーク10と、通信ネットワーク10に接続された無線通信装置(AP:Access Point)1と、無線通信装置1を介して通信ネットワーク10に接続する無線端末(STA:STAtion)2とを有する。
【0028】
無線通信装置1及び無線端末2は、ミリ波通信規格であるIEEE802.11adに対応した通信装置である。無線通信装置1は、通信ネットワーク10への無線端末2のアクセスポイントとして機能する。より具体的には、無線通信装置1は、無線端末2との間でビームフォーミングによる無線通信を行うことにより無線端末2と接続し、無線端末2と通信ネットワーク10との間のデータ転送を行う。すなわち、無線通信装置1は、無線端末2の通信ネットワーク10へのアクセスを管理する。
図1は、無線通信装置1が無線端末2と接続している状態を示している。
【0029】
<無線通信装置の構成>
次に、無線通信装置1の構成について、
図2、
図3を参照して説明する。
図2は、本実施の形態に係る無線通信装置1の構成の一例を示すブロック図である。
図3は、本実施の形態に係る通信処理部11の構成の一例を示すブロック図である。
【0030】
図2において、無線通信装置1は、通信処理部11(11a〜11c)、ハンドオーバー制御部12、及びネットワーク制御部13を有する。また、無線通信装置1は、通信処理部11a〜11cにそれぞれ接続するアレーアンテナ14(14a〜14c)を有する。
【0031】
通信処理部11a〜11cは、同一の構成を有する。一方で、通信処理部11a〜11cは、互いに異なるMACアドレスを有する。以下では、同一の構成を有する通信処理部11a〜11cについては、通信処理部11として説明する。
【0032】
図3に示すように、通信処理部11は、変復調処理部111、MAC部112、送信パラメータ切替部113、端末情報管理部114、及びビームフォーミングトレーニング処理部115を有する。
【0033】
変復調処理部111は、MAC部112から取得したパケット(具体的には、Beamforming用トレーニングパケット以外のパケット)に変調処理を施す。また、変復調処理部111は、ビームフォーミングトレーニング処理部115から取得したパケット(具体的にはBeamforming用トレーニングパケット)に変調処理を施す。変復調処理部111は、変調処理を行うために、送信パラメータ切替部113から取得したMCS(Modulation and Coding Scheme)の情報を用いる。
【0034】
また、変復調処理部111は、送信パラメータ切替部113からビームID(Beam_ID)の指示を受け、アレーアンテナ14の制御をすることでビームIDに対応したビームパターンを形成する。変復調処理部111は、形成したビームパターンを用いて、変調処理を施したパケットを送信する。ビームIDとは、アレーアンテナ14を制御することにより形成される複数のビームパターンのそれぞれに割り当てられる識別情報である。なお、ビームパターンについては後述する。
【0035】
変復調処理部111は、アレーアンテナ14が受信した信号を復調し、復調した信号(パケット)、および受信した信号の受信品質情報(具体的には、RSSI:Received Signal Strength Indication)をMAC部112に出力する。
【0036】
MAC部112は、ネットワーク制御部13から取得するデータにMACヘッダを付与し、パケットを生成し、生成したパケットを変復調処理部111へ出力する。
【0037】
MAC部112は、変復調処理部111から取得したパケット(受信パケット)に付与されるMACヘッダを解析する。
【0038】
解析の結果、変復調処理部111から取得したパケットがデータパケットの場合、MAC部112は、データパケットをネットワーク制御部13へ出力する。
【0039】
解析の結果、変復調処理部111から取得したパケットが制御パケットの場合、MAC部112は、制御パケットに応じた処理を行う。MAC部112は、必要に応じて、応答するための応答用制御パケットを生成し、変復調処理部111へ出力する。
【0040】
解析の結果、変復調処理部111から取得したパケットがビームフォーミングに用いるトレーニングパケットの場合、MAC部112は、上記の処理を行わない。ビームフォーミングに用いるトレーニングパケットは、後述するビームフォーミングトレーニング処理部115において処理が施される。
【0041】
MAC部112は、無線端末の識別情報であるID(STA_ID)を送信パラメータ切替部113に出力する。MAC部112は、変復調処理部111に対して出力したパケットを送信するために、送信する無線端末(STA)毎にビームの方向とMCSを変更する。
【0042】
MAC部112は、端末情報管理部114に、接続している無線端末のSTA_ID、RSSI、ビームID、MCSを出力する。
【0043】
具体的には、MAC部112は、STA_IDが示す無線端末から最も新しく受信したパケットのRSSIを出力する。例えば、MAC部112は、ビームフォーミングトレーニングを実施した後では、一連のビームフォーミングトレーニングで受信した最後のパケット(ビームフォーミング用トレーニングパケット)のRSSIを出力する。MAC部112は、ビームフォーミングトレーニングを実施した後に、データパケットを受信した場合、受信したデータパケットのRSSIを出力する。つまり、MAC部112が出力するビームIDは、実施したビームフォーミングトレーニングで決定される。ビームフォーミングトレーニングの詳細については後述する。
【0044】
端末情報管理部114に出力する情報は、STA_ID、RSSI、ビームID、MCSを全て出力してもよいし、その一部でもよい。具体的には、RSSIが更新された場合、MAC部112は、STA_IDとRSSIを出力する。
【0045】
MAC部112は、ビームフォーミングトレーニング処理部115に対して、トレーニング要求を出力する。トレーニング要求は、ビームフォーミングトレーニングを実施する対象となる無線端末を示すSTA_IDを含む。トレーニング要求を出力するタイミングは、周期的でもよいし、受信品質が低下した場合でもよいし、スループットが低下した場合でもよいし、これらの組み合わせでもよい。MAC部112は、トレーニング要求を出力した後、実施されるビームフォーミングトレーニングで決定されたビームIDをビームフォーミングトレーニング処理部115から取得する。MAC部112は、ビームフォーミングトレーニングが完了後、ハンドオーバー制御部12にトレーニング完了通知を出力する。
【0046】
MAC部112は、ハンドオーバー制御部12からの接続解除通知を取得した場合、指定された無線端末に対する接続解除を通知するためのパケットを生成し、変復調処理部111に出力する。
【0047】
MAC部112は、ハンドオーバー制御部12からのMCS変更通知を取得した場合、指定されたSTA_ID(または、ブロードキャスト用ID)とMCSとを端末情報管理部114へ出力する。
【0048】
MAC部112は、ハンドオーバー制御部12からのビーム変更通知を取得した場合、指定されたSTA_ID(または、ブロードキャスト用ID)とビームIDとを端末情報管理部114へ出力する。MAC部112が端末情報管理部114へ出力するビームIDは、あらかじめ保持し、ハンドオーバー制御の過程において送信するビーコンに使用するビームID(ハンドオーバー用ビームID)である。
【0049】
MAC部112は、ハンドオーバー制御部12からハンドオーバー完了通知を取得した場合、STA_ID(または、ブロードキャスト用ID)のビームIDを、通常ビーコンの送信に使用するビームID(通常用ビームID)に戻すため、端末情報管理部114へSTA_IDとビームIDを出力する。なお、通常用ビームIDは、例えば、疑似無指向性(Quasi Omni)のビームパターン(ビームID)でもよいし、特定のビームパターン(例えば、後述する
図5におけるビーム#3)でもよい。
【0050】
MAC部112は、ビーコン送信タイミング、ビームフォーミングトレーニングの実施タイミング、及び、無線端末に対する送信期間の割り当てを含むスケジューリングの管理を行う。
【0051】
送信パラメータ切替部113は、MAC部112から取得したSTA_IDに基づき、端末情報管理部114からSTA_IDに該当するビームIDとMCSを取得し、変復調処理部111へ取得したビームIDとMCSを出力する。
【0052】
端末情報管理部114は、MAC部112から取得したSTA_ID、RSSI、ビームID、MCSを端末情報管理テーブルへ登録する。
【0053】
図4は、端末情報管理部114が管理する端末情報管理テーブルの一例を示す図である。
図4の端末情報管理テーブルにおいて、「STA1」は、1つの無線端末のSTA_IDであり、「STA1」が示す無線端末に関する情報が、対応付けて示されている。また、「ALL」は、パケットをブロードキャストによって送信するための情報である。
【0054】
端末情報管理部114は、STA_IDには、無線端末のMACアドレスを登録してもよいし、MACアドレスに紐づいたIDを登録してもよいし、無線端末のSTA_IDとMACアドレスを両方登録してもよい。「ALL」は、ブロードキャストによって送信するパケットに関する情報であるため、特定の無線端末との無線品質情報(RSSI)を受信することはない。そのため、「ALL」に対応するRSSIは登録されない。「ALL」について登録される情報は、ビームIDとMCSである。なお、ハンドオーバー制御部12からの指示でビームを切り替える場合、端末情報管理部114は、「ALL」のビームIDをMAC部112が保持する初期値に書き換える。
【0055】
ビームフォーミングトレーニング処理部115は、MAC部112からのトレーニング要求を契機に、IEEE802.11adによって規定されるビームフォーミングトレーニングであるSLS(Sector Level Sweep)をトレーニング要求で指定された無線端末との間で行い、無線端末と接続するために使用するビームパターンを決定する。
【0056】
ビームフォーミングトレーニング処理部115は、MAC部112からのトレーニング要求を契機に、SLSを行うためのビームフォーミングトレーニング用のパケットを生成し、変復調処理部111に出力する。ビームフォーミングトレーニング部115は、変復調処理部111から取得した受信パケットがビームフォーミングトレーニング用パケットの場合、SLSに応じた処理を行う。ビームフォーミングトレーニング処理部115は、SLSで決定したビームパターンに対応したビームIDをMAC部112へ出力する。
【0057】
ハンドオーバー制御部12は、各通信処理部11(11a〜11c)から取得するトレーニング完了通知を契機に、トレーニング完了通知を発行した通信処理部11(具体的には、通信処理部11a〜11cのいずれか少なくとも1つ)の端末情報管理部114より取得した端末情報管理テーブルに基づきハンドオーバー制御を開始する。ハンドオーバー制御の具体的な方法については、後述する。
【0058】
ハンドオーバー制御部12は、ハンドオーバーの履歴を管理する。具体的には、ハンドオーバーの履歴は、ハンドオーバーを行った回数、通信処理部11a〜11cの中でどの通信処理部11と接続していたか、といった情報を含む。ハンドオーバー制御部12は、ハンドオーバーが完了した場合、ハンドオーバー制御前に接続していた通信処理部11(具体的には、通信処理部11a〜11cのいずれか少なくとも1つ)のMAC部12に対してハンドオーバー完了通知を出力する。
【0059】
ネットワーク制御部13は、通信処理部11を介して取得したデータを通信ネットワーク10に出力する。また、ネットワーク制御部13は、通信ネットワーク10からのデータを送信相手の無線端末を管理する通信処理部11(具体的には、通信処理部11a〜11cのいずれか少なくとも1つ)へ出力する。また、ネットワーク制御部13は、通信処理部11のデータパケットの送受信量、すなわち、トラフィック量を観測する機能を持ち、観測したトラフィック量をハンドオーバー制御部12へ通知する。
【0060】
<ビームパターン>
次に、通信処理部11が形成するビームパターンについて、
図5を参照して説明する。
図5は、通信処理部11が形成するビームパターンの一例を示す図である。なお、
図5では、信号を送信するアレーアンテナ14については図示を省略している。
【0061】
図5では、通信処理部11は、アレーアンテナ14により、5つのビームパターンの間で、形成するビームを切り替える。ここで、ビームとは、無線信号の送受信が可能な範囲(通信エリア)を示す、例えば、通信処理部11は、アレーアンテナ14の各アンテナ素子が送信する信号の位相、振幅、或いは位相と振幅の両方を制御することによりビームを形成する。5つのビームパターンは、それぞれビーム方向が異なる、指向性の高い(指向性の狭い)ビームパターンである。
【0062】
図5では、例えば、通信処理部11は、5つのビームパターンを切り替えることに、120度程度の通信エリアを形成する。
【0063】
<ビームフォーミングトレーニングについて>
次に、ビームフォーミングトレーニングについて説明する。
【0064】
通信処理部11は、例えば、IEEE802.11adプロトコルのSLSに従ったビームフォーミングトレーニングを行う。すなわち、通信処理部11は、まず、ビームパターンを切り替え、各ビームパターンにおいて、無線端末との間でビームフォーミングトレーニングパケットを送受信する。通信処理部11は、最も受信品質の良いビームパターンを互いにフィードバックし、無線端末との通信に用いるビームパターンを決定する。
【0065】
ビームフォーミングトレーニングを実行するタイミングは、周期的に実行してもよいし、通信品質の劣化を契機に実行してもよいし、スループットが低下したことを契機に実行してもよいし、その3つを組み合わせてもよい。
【0066】
<無線通信装置の通信エリア>
次に、無線通信装置1の通信エリアについて、
図6を参照して説明する。
図6は、無線通信装置1が形成する通信エリアの一例を示す図である。なお、図示しないが、無線通信装置1は、無線通信装置1のセルの略中心に位置する。
【0067】
まず、本実施の形態における用語について説明する。
【0068】
ビームは、通信処理部11が持つ、ある一つのビームパターン(先述したように、無線信号の送受信が可能な範囲(通信エリア))である。
【0069】
セクタは、通信処理部11がビーム(ビームパターン)を切り替えることでカバーできる送受信が可能な範囲(通信エリア)である。
【0070】
セルは、複数のセクタを組み合わせることでカバーできる送受信が可能な範囲(通信エリア)である。
【0071】
ビーム#1〜ビーム#15は、それぞれ、ビームIDが割り当てられている。以下の説明では、ビーム#1のビームIDは、#1である。#1のビームIDに対応するビーム(または、ビームパターン)を、ビーム#1と呼ぶ。
【0072】
つまり、
図6では、通信処理部11aは、ビーム#1〜ビーム#5の5つのビームを有し、ビーム#1〜ビーム#5を切り替えることで、通信処理部11aのセクタをカバーしている。無線通信装置1のセルは、通信処理部11a〜11cのセクタを組み合わせることで、形成される。各セクタは、セクタ間の境界において、互いに隣接する。
【0073】
図6では、無線通信装置1の通信エリア(セル)は、3つの通信処理部11a〜11cのセクタを互いに重ならないように組み合わせることで、無線通信装置1の全周囲をカバーする。
【0074】
図6では、ビーム#1、ビーム#5は、通信処理部11aのセクタにおける両端のビームである。同様に、ビーム#6、ビーム#10は、通信処理部11bのセクタにおける両端のビームであり、ビーム#11、ビーム#15は、通信処理部11cのセクタにおける両端のビームである。
【0075】
通信処理部11aのセクタにおいて、ビーム#1に隣接するセクタは、通信処理部11cのセクタであり、ビーム#5に隣接するセクタは通信処理部11bのセクタである。同様に、通信処理部11bのセクタにおいて、ビーム#6に隣接するセクタは、通信処理部11aのセクタであり、ビーム#10に隣接するセクタは、通信処理部11cのセクタである。同様に、通信処理部11cのセクタにおいて、ビーム#11に隣接するセクタは、通信処理部11bのセクタであり、ビーム#15に隣接するセクタは、通信処理部11aのセクタである。
【0076】
各セクタにおける両端のビームは、それぞれ、隣接するセクタのビームと重なりあっている。
【0077】
ハンドオーバー制御部12は、通信処理部11が無線端末と接続するために使うビームがセクタにおける両端のビームであるか否か、そして、両端のビームの場合、どのセクタに隣接するビームであるか、に基づいて、ハンドオーバー制御後に接続する通信処理部11の候補を選定することができる。
【0078】
ハンドオーバー制御部12は、ハンドオーバー制御後に接続する通信処理部11の候補を選定した後、選定した通信処理部11のトラフィック量が所定量以上か否かを判定する。
【0079】
ハンドオーバー制御部12は、選定した通信処理部11のトラフィック量が所定量より小さい場合、ハンドオーバー制御によって選定した隣接するセクタの通信処理部11による両端のビームにハンドオーバーし、ハンドオーバー制御後に、ハンドオーバー制御前に接続していた通信処理部11に対して、両端のビームから他のビームに変更する指示を行う。この制御により、ハンドオーバー制御後に、無線端末が、再度、ハンドオーバー制御前に接続していた通信処理部11にハンドオーバー制御の要求を行うことを抑制することができるため、ハンドオーバー制御を効率よく行うことができる。
【0080】
ハンドオーバー制御部12は、選定した通信処理部11のトラフィック量が所定量以上の場合、無線端末の接続先を、選定した通信処理部11へ切り替えずに、ハンドオーバー制御前に接続していた通信処理部11との通信を継続させる。
【0081】
ハンドオーバー制御部12は、ハンドオーバー制御前に接続していた通信処理部11と無線端末との通信を継続させるために、例えば、MCSを下げる(通信速度を下げる)ことによって、ハンドオーバー制御前に接続していた通信処理部11が用いる1つのビームによる通信エリアを広くする。なお、1つのビームによる通信エリアの形状の変更は、MCSの変更以外の方法であってもよい。
【0082】
次に、MCSの設定と1つのビームによる通信エリアの形状の変更について、
図7、
図8を参照して説明する。
【0083】
図7は、MCSの一覧を示す図である。
図7は、IEEE802.11adで規定されるMCSである。MCSは、変調方式および符号化率に応じて、1から24までの複数のレベルが規定される。変調方式及び符号化率によってロバスト性が異なるため、MCSを変えることで通信距離が変わる。
図7では、MCSが低いほど、1つのビームによる通信エリアが広くなる。ただし、通信速度の観点では、MCSが高くなるほど、通信速度は速くなる。
【0084】
1つのビームによる通信エリアの広さは、特に、変調方式に依存するため、変調方式を変更することによって、通信エリアの広さを制御できる。
【0085】
図8は、通信処理部11における1つのビームによる通信エリアの形状の変更の一例を示す図である。
図8は、
図6で示した通信処理部11aのビーム#5の通信エリアの形状が変更される様子を一例として示す。MCSを低くすることによってビーム#5の指向性は広がり、通信距離も長くなる。
【0086】
ハンドオーバー制御部12は、通信処理部11に対して、MCSの変更を通知する。通信処理部11は、通知されたMCSが示す変調方式と符号化率を用いることで1つのビームによる通信エリアを広くして、接続中の無線端末と通信を行う。この制御により、無線端末と接続中の通信処理部11との通信の切断を回避できる。
【0087】
例えば、
図6では、ハンドオーバー制御前に接続していた通信処理部が通信処理部11aであり、通信処理部11aが無線端末と接続するために使うビームがビーム#5の場合、ハンドオーバー制御部12は、ビーム#5に隣接するセクタをカバーする通信処理部11bをハンドオーバー制御後に接続する通信処理部として選定できる。
【0088】
次に、ハンドオーバー制御部12は、選定した通信処理部11bのトラフィック量が所定量以上か否かを判定する。
【0089】
ハンドオーバー制御部12は、選定した通信処理部11bのトラフィック量が所定量より小さい場合、選定した通信処理部11bのビームを、通信処理部11aのビーム#5に隣接するビーム#6に変更する。そして、ハンドオーバー制御部12は、通信処理部11aのビームを両端のビームであるビーム#5から他のビーム、例えば、ビーム#3に変更することにより、ハンドオーバーを効率よく行い、かつ、無線端末による再度のハンドオーバーの要求を抑制することができる。
【0090】
ハンドオーバー制御部12は、選定した通信処理部11bのトラフィック量が所定量以上の場合、無線端末と通信処理部11aとの通信を継続させる。ハンドオーバー制御部12は、通信処理部11aと無線端末との通信を継続させるためにMCSを変更することによって、通信処理部11aが用いるビーム#5のビームによる通信エリアを
図8に示したように広くする。
【0091】
<無線通信装置のハンドオーバー制御>
次に、無線通信装置1のハンドオーバー制御について、
図9、10を参照して説明する。
図9は、本実施の形態における無線通信装置1のハンドオーバー制御の一例を示すフローチャートである。なお、本実施の形態におけるハンドオーバー制御は、ハンドオーバーを実行するか否かの判定、およびハンドオーバーを実行しない場合の制御を含む。
【0092】
ステップS501において、通信処理部11は、無線端末との接続があるか否かを判定する。通信処理部11は、無線端末と接続している場合(S501:YES)、ハンドオーバー制御はステップS502へ移行する。また、通信処理部11は、無線端末と接続していない場合(S501:NO)、ハンドオーバー制御はステップS511へ移行する。
【0093】
通信処理部11は、無線端末と接続している場合、例えば、周期的にビームフォーミングトレーニングを行う。
【0094】
ステップS502において、ハンドオーバー制御部12は、トレーニング完了通知を取得したか否かを判定する。ハンドオーバー制御部12は、トレーニング完了通知を取得した場合(S502:YES)、ハンドオーバー制御はステップS503へ移行する。ハンドオーバー制御部12は、トレーニング完了通知を取得していない場合(S502:NO)、ハンドオーバー制御はステップS502へ戻る。
【0095】
ステップS503において、ハンドオーバー制御部12は、トレーニング完了通知を発行した通信処理部11の端末情報管理部114より端末情報管理テーブルを取得する。そして、ハンドオーバー制御はステップS504へ移行する。
【0096】
ステップS504において、ハンドオーバー制御部12は、取得した端末情報管理テーブルからトレーニング完了通知に含まれるSTA_IDを探索し、探索したSTA_IDのビームIDが示すビームパターンがセクタにおける両端のビームであるか否かを判定する。
【0097】
ここで、
図6では、ビームパターンがセクタにおける両端のビームとは、無線端末が通信処理部11aに接続している場合ではビーム#1またはビーム#5であり、通信処理部11bに接続している場合ではビーム#6またはビーム#10であり、通信処理部11cに接続している場合ではビーム#11またはビーム#15である。
【0098】
ハンドオーバー制御部12の判定の結果、ビームパターンがセクタの両端のビームである場合(S504:YES)、ハンドオーバー制御はステップS505へ移行する。また、ビームパターンが両端のビームではない場合(S504:NO)、ハンドオーバー制御はステップS502へ戻る。
【0099】
ステップS505において、ハンドオーバー制御部12は、取得した端末情報管理テーブルからトレーニング完了通知に含まれるSTA_IDを探索し、探索したSTA_IDの無線品質情報(RSSI)が所定の閾値以下か否かを判定する。無線品質情報が閾値以下の場合(S505:YES)、ハンドオーバー制御はステップS506へ移行する。また、無線品質情報が閾値より大きい場合(S505:NO)、ハンドオーバー制御はステップS502へ戻る。
【0100】
上述のステップS502の処理により、ビームフォーミングトレーニングが完了しているため、S505において無線端末は、現在接続中の通信処理部11がカバーするセクタ内において、最も通信品質の良いビームパターンを使用して通信を行っている。つまり、ステップS505において、無線品質情報が閾値以下の場合(S505:YES)とは、現在接続中の通信処理部11がカバーするセクタ内において最も受信品質の良いビームパターンを使用した通信の通信品質が閾値以下、すなわち、現在接続中の通信処理部11から別の通信処理部11へのハンドオーバーが必要とされることを意味している。そのため、ステップS506以降の処理において、ハンドオーバー制御部12の制御により、ハンドオーバーが実行される。
【0101】
ステップS506において、ハンドオーバー制御部12は、ハンドオーバー制御後の接続候補(ハンドオーバー先候補)となる通信処理部11を選定する。
【0102】
次に、無線端末がハンドオーバー制御前に接続している(ハンドオーバー元)通信処理部11が通信処理部11aである場合の選定方法について説明する。ハンドオーバー制御部12は、通信処理部11aがビーム#5を使って無線端末と接続している場合、ビーム#5に隣接するセクタをカバーする通信処理部11bを、ハンドオーバー先候補として選定する。また、ハンドオーバー制御部12は、通信処理部11aがビーム#1を使って無線端末と接続している場合、ビーム#1に隣接するセクタをカバーする通信処理部11cを、ハンドオーバー先候補として選定する。
【0103】
ステップS507において、ハンドオーバー制御部12は、ネットワーク制御部13からハンドオーバー先候補の通信処理部11のトラフィック量を取得し、取得したトラフィック量が所定量以上か否かを判定する。ハンドオーバー先候補のトラフィック量が所定量以上の場合(S507:YES)、ハンドオーバー制御はステップS508へ移行する。ハンドオーバー先候補のトラフィック量が所定量未満の場合(S507:NO)、ハンドオーバー制御はステップS510へ移行する。ステップS507の判定により、ハンドオーバー制御部12は、ハンドオーバー先候補の通信処理部11が新たな無線端末の収容が可能か否かを判定する。
【0104】
ハンドオーバー制御部12は、ステップS504〜S507において、ハンドオーバー元の通信処理部11が使用するビームのセクタ内の位置、ハンドオーバー元の通信処理部11と無線端末との通信品質、及び、ハンドオーバー先候補の通信処理部11におけるトラフィックに関する値に応じて、ハンドオーバー元の通信処理部11のハンドオーバーの有無を判定する。
【0105】
ステップS508において、ハンドオーバー制御部12は、ハンドオーバー元の通信処理部11が無線端末との通信に用いているMCSを下げる(通信速度を低くする)ことができるか否かを判定する。例えば、ハンドオーバー制御部12は、ハンドオーバー元の通信処理部11と無線端末との通信に用いているMCSが、規定されるMCSの中で最も低いMCSでは無い場合、MCSを下げることができると判定する。ハンドオーバー制御部12は、ハンドオーバー元の通信処理部11と無線端末との通信に用いているMCSが、規定されるMCSの中で最も低いMCSの場合、MCSを下げることができないと判定する。
【0106】
MCSを下げることができる場合(S508:YES)、ハンドオーバー制御はステップS509へ移行する。MCSを下げることができない場合(S508:NO)、ハンドオーバー制御はステップS510へ移行する。
【0107】
ステップS509において、ハンドオーバー制御部12は、ハンドオーバー元の通信処理部11のMAC部112にMCS変更通知を発行することにより、MCSの変更の制御を行う。MAC部112は、MCS変更通知を取得し、端末情報管理部114に無線端末のSTA_IDに対応するMCSを、MCS変更通知により指定されるMCSに書き換える。そして、ハンドオーバー元の通信処理部11の変復調処理部111は、書き換えられたMCSに基づいて、無線端末と通信を行う。そして、ハンドオーバー制御はステップS511へ移行する。
【0108】
ステップS511において、ハンドオーバー制御部12は、ユーザ操作などにより処理の終了が指示されたか否かを判断する。ハンドオーバー制御部12は、処理の終了が指示されていない場合(S511:NO)、ハンドオーバー制御はステップS501へ移行する。また、ハンドオーバー制御部12は、処理の終了が指示された場合(S511:YES)、ハンドオーバー制御は終了する。
【0109】
次に、ステップS510におけるハンドオーバー実行の制御について、
図10を参照して説明する。前述の通り、
図10のハンドオーバー実行の制御は、
図9のステップS507にて、ハンドオーバー先候補のトラフィック量が所定量未満の場合(S507:NO)、または、
図9のステップS508にて、MCSを下げることができない場合(S508:NO)、開始される。
【0110】
ステップS512において、ハンドオーバー制御部12は、ハンドオーバー先候補の通信処理部11のMAC部112にビーム変更通知を発行することにより、ビームの変更の制御を行う。そして、ハンドオーバー制御はステップS513へ移行する。
【0111】
つまり、ハンドオーバー制御部12は、ハンドオーバー先候補が通信処理部11bの場合、ビーム#6を設定するために通信処理部11bに通知する。また、ハンドオーバー制御部12は、ハンドオーバー先候補が通信処理部11cの場合、ビーム#15を設定するために通信処理部11cに通知する。
【0112】
ステップS513において、ハンドオーバー制御部12は、ハンドオーバー元の通信処理部11のMAC部112に対して、接続している無線端末を接続解除するために、接続の解除を通知する。ハンドオーバー制御部12は、接続解除を通知後、タイマを起動する。ハンドオーバー元の通信処理部11のMAC部112は、ハンドオーバー制御部12からの接続解除通知により、接続している無線端末との接続を解除する。そして、ハンドオーバー制御はステップS514へ移行する。
【0113】
ステップS514において、ハンドオーバー制御部12は、ハンドオーバー元の通信処理部11のMAC部112に対して、ビームパターンをハンドオーバー用ビームIDに変更するよう通知する。ハンドオーバー元の通信処理部11のMAC部112は、ハンドオーバー元の通信処理部11の端末情報管理部114に対してブロードキャスト用STA_IDのビームIDをハンドオーバー用ビームIDに変更する。ハンドオーバー用ビームIDは、ハンドオーバーを行う無線端末がハンドオーバー元の通信処理部11に再接続することを防止するために設定される。例えば、通信処理部11aの場合、セクタの中央の通信エリアをカバーするビーム#3であってもよいし、又は、ハンドオーバー先から離れたビーム#1、#2であってもよい。そして、ハンドオーバー制御はステップS515へ移行する。
【0114】
ステップS515において、ハンドオーバー制御部12は、無線端末がハンドオーバー先候補となる通信処理部11へ接続し、ハンドオーバーが完了したか判定する。ハンドオーバーが完了したか判断する方法として、ハンドオーバー先の通信処理部11からハンドオーバーした無線端末におけるトレーニング完了通知を受信したか否かによって判断する。
【0115】
ハンドオーバー制御部12は、ハンドオーバーが完了した場合(S515:YES)、ハンドオーバー制御はステップS516へ移行する。また、ハンドオーバー制御部12は、ハンドオーバーが完了していない場合(S515:NO)、ハンドオーバー制御はステップS517へ移行する。
【0116】
ステップS516において、ハンドオーバー制御部12はハンドオーバー元及びハンドオーバー先の通信処理部11のMAC部112に対して、ハンドオーバーの完了を通知する。ハンドオーバー元及びハンドオーバー先の通信処理部11のMAC部112は、端末情報管理部114に対して、ブロードキャスト用STA_IDのビームIDを通常用ビームIDへ変更する通知を行う。そして、ハンドオーバー制御は、
図9に示したステップS511へ移行する。
【0117】
ステップS517において、ハンドオーバー制御部11は、ハンドオーバー元の通信処理部11のMAC部112に接続解除を通知後にタイマを起動し、起動したタイマが満了しているか否か(つまり、タイムアウトしたか否か)を判定する。ハンドオーバー制御部12は、タイマが満了した場合(S517:YES)、ハンドオーバー制御はステップS516へ移行する。また、ハンドオーバー制御部12は、タイマが満了していない場合(S517:NO)、ステップS515へ移行する。
【0118】
<無線端末の接続制御>
次に、無線端末の接続制御について、
図11を参照して説明する。
図11は、無線端末2の接続制御の一例を示すフローチャートである。
【0119】
ステップS601において、無線端末2は、接続する無線通信装置1、すなわち、通信処理部11を探索するためのスキャンを実施する。
【0120】
ステップS602において、無線端末2は、スキャンの結果に基づき、接続する通信処理部11を検出した場合(S602:YES)、接続制御はステップS603へ移行する。また無線端末2は、スキャンの結果に基づき、接続する通信処理部11を検出しなかった場合(S602:NO)、接続制御はステップS601へ戻る。
【0121】
ステップS603において、無線端末2は、検出した通信処理部11との接続制御を行う。
【0122】
なお、無線端末2は、スキャンの結果、複数の通信処理部11を検出した場合、最も受信品質が良い通信処理部11を接続先として選定し、選定した通信処理部11との接続制御を行う。
【0123】
ステップS604において、無線端末2は、通信処理部11との接続関係が継続しているか監視することにより、接続解除されたか否かを判定する。無線端末2は、通信処理部11との接続が解除された場合(S604:YES)、接続制御をステップS605へ移行させる。また、無線端末2は、通信処理部11との接続が継続されている場合(S604:NO)、接続制御をステップS604に留まらせる。
【0124】
ステップS605において、無線端末2は、ユーザ操作などにより処理の終了が指示されたか否かを判断する。無線端末2は、処理の終了が指示されていない場合(S605:NO),接続制御をステップS601へ戻す。また、無線端末2は、処理の終了が指示された場合(S605:YES)、接続制御を終了する。
【0125】
図10では、ハンドオーバー制御が実行される場合、ハンドオーバー先候補となる通信処理部11は、ハンドオーバー元の通信処理部11によるビームに隣接するビームを予め形成している。そのため、無線端末2は、ハンドオーバーのためのスキャンにおいて、ハンドオーバー先候補となる通信処理部11を容易に検出できる。
【0126】
なお、本実施の形態1では通信処理部11に無線端末2が1台接続している場合を例に説明したが、2台以上接続していても同じように動作する。本実施の形態で想定する無線システムは半二重通信であり、またCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)方式を採用しているため、1つの通信処理部11に接続している複数の無線端末2が同時に送信、又は受信、或いは送受信することはなく、かつ、無線端末2に用いるビームも決められており、ビーコンを送信する時間(期間)も無線端末2とデータ通信をする時間(期間)と分けているため、無線端末2が複数存在する場合でも本実施の形態は有効である。
【0127】
図12は、通信処理部11aと2台の無線端末(STA1、STA2)とが接続されている場合の通信処理部11a、11b、およびハンドオーバー制御部12の動作を時系列で示す。通信時のビームには、通信処理部11a、11bの動作、及び、ビームIDが示されている。
【0128】
通信処理部11a及び11bは、周期的にビーコンを送信する。ビーコンを区別するために、便宜的に、ビーコンに別々の名称を付しているが、ビーコン#11、ビーコン#12及びビーコン#13は同一のビーコンであり、また、ビーコン#21、ビーコン#22、及びビーコン#23は同一のビーコンである。
【0129】
図12では、通信処理部11aは、ビーコン#11の送信(S901)の後にSTA1との通信期間を割り当てている。
図12には示していないが、ビーコン#11の以前に、通信処理部11aのビームフォーミングトレーニング処理部115はSLSを実行し、ビーム#5を選択している。通信処理部11aは、ビーム#5を用いてSTA1との通信を行う(S902)。
【0130】
また、無線端末と接続していない通信処理部11bは、ビーム#8を使用してビーコン#21を送信する(S903)。
【0131】
通信処理部11aは、STA1との通信期間終了後に、あらかじめ設定されていたSTA1に対するSLSを実行する(S904)。そして、通信処理部11aは、ハンドオーバー制御部12にトレーニング完了通知を発行する(S905)。
【0132】
ハンドオーバー制御部12は、通信処理部11aの端末情報管理部114から端末情報管理テーブルを取得し、STA1のビームIDとRSSIから、ハンドオーバーの対象と判断し、ハンドオーバー先候補として通信処理部11bを選定する。
【0133】
ハンドオーバー制御部12は、通信処理部11bに対して端末情報管理テーブルの更新を通知する(S906)。通信処理部11bは、更新の通知により、ビーコン#22を送信するためのビームIDを、送信済のビーコン#21とは異なるビームID(
図12の場合、#8から#6)へ書き換える。
【0134】
図12には示していないが、通信処理部11bは、端末情報管理テーブルを更新(S906)してからビーコン#22を送信する(S912)までの期間に通信が発生した場合、発生した通信に用いるビームを、ビーコン#22の送信に用いるビームとは異なるビームを用いる。つまり、通信処理部11bは、端末情報管理テーブルを更新してからビーコン#22までの期間に発生した通信に対して、端末情報管理テーブル更新による影響を受けない。
【0135】
ハンドオーバー制御部12は、通信処理部11bの端末情報管理部114が有する端末情報管理テーブルを更新した後、通信処理部11aに対してSTA1との接続を解除するための通知を実施する(S907)。
図12では、接続解除を通知するタイミングにおいて、通信処理部11aは、STA2との通信中である(S908)。そのため、通信処理部11aは、STA2との通信期間が終了した後に、接続解除フレームを送信する(S909)。
【0136】
また、ハンドオーバー制御部12は、通信処理部11aに対して端末情報管理テーブルの更新を通知する(S910)。通信処理部11aは、更新された端末情報管理テーブルに基づいてビームIDを#5から#3へ切り替えた後に、ビーコン#12を送信する(S911)。これにより、通信処理部11aは、STA1により再接続されることを抑制できる。
【0137】
STA1は、通信処理部11aとの接続を解除された後、スキャン処理を実行し、ハンドオーバー先の通信処理部11を探索する。STA1は、通信処理部11bがビーム#6を使用して送信するビーコン#22を受信する(S912)。STA1は、通信処理部11bに対する接続要求を行う。通信処理部11bは、STA1からの接続要求を受信し(S913)、STA1との接続処理を完了する。接続処理が完了した後、通信処理部11bは、STA1に対してSLSを行い、最適なビームを決定する(S914)。通信処理部11bは、ハンドオーバー制御を完了したことをハンドオーバー制御部12へ通知する(S915)。
【0138】
なお、
図12では、通信処理部11bがSTA1との接続処理を行っている間、通信処理部11aは、ビーム#5を使用してSTA2と通信を行う(S916)。ここで、STA2に対してのビーム#5は、無線品質情報(例えば、RSSI)が閾値を上回っているためハンドオーバーの対象とならず、STA2は、通信処理部11aとの接続を継続できる。
【0139】
ハンドオーバー制御部12は、通信処理部11bからのハンドオーバー完了通知に基づき、通信処理部11a及び11bそれぞれが管理する端末情報管理テーブルを更新する(S917、S918)。つまり、
図12では、ビーコン#13は、ビーコン#13の送信に用いたビーム#3からビーコン#11の送信に用いたビーム#5に戻し、ビーコン#23は、ビーコン#22の送信に用いたビーム#6からビーコン#21の送信に用いたビーム#8に戻す。
【0140】
なお、
図12では、通信処理部11bが端末情報管理テーブルの更新の通知を取得する間、通信処理部11bは、ビーム#6を使用してSTA1と通信を行う(S919)。
【0141】
ステップS917による端末情報管理テーブルの更新により、通信処理部11aは、ビームIDを#3から#5へ変更してビーコン#13を送信する(S920)。また、S918による端末情報管理テーブルの更新により、通信処理部11bは、ビームIDを#6から#8へ変更してビーコン#23を送信する(S921)。
【0142】
なお、通信処理部11aがビーコン#12を送信後のSTA2との通信に用いるビームIDは、ビーコン#12の送信には依存せずに、端末情報管理テーブルに登録されているSTA2用のビームIDを用いるため、通信処理部11aは、一連のハンドオーバー制御に影響を受けることなく通信できる。
【0143】
なお、通信処理部11aは、ビーコン#12の送信において、ビームIDを変更している。このため、STA2は、ビーコン#12の受信が困難である可能性がある。しかし、通信規格(例えば、IEEE802.11ad)では、無線端末が、少なくとも1つ以上のビーコンを受信できないことを許容しているため、STA2は、ビーコン#12を受信できないことがあってもよい。
【0144】
なお、通信処理部が複数の無線端末を接続している場合、処理を簡単にするため、ビーコンとビーコンの間の期間では1つの無線端末に対してSLSを実行してもよい。例えば、
図12では、通信処理部11aは、ビーコン#11とビーコン#12の間で、STA1とSTA2に対してそれぞれSLSを行うのではなく、STA1に対してSLSを実行し、ビーコン#12とビーコン#13の間でSTA2とのSLSを実行する。例えば、無線LANにおけるビーコン周期は100ms程度であるため、ビーコンとビーコンの間の期間では、1つの無線端末に対してSLSを実行しても、ビームの追従性を著しく損なうことはない。
【0145】
以上説明したように、本実施の形態によれば、それぞれがアクセスポイントとして機能するミリ波通信を用いた複数の通信処理部を有する無線通信装置において、ハンドオーバー制御部12は、通信処理部11が無線端末との通信に使用するビームが、セクタの両端のビームであるか否か、およびセクタの両端のビームである場合、無線品質情報が閾値以下であるか否かに基づいてハンドオーバーの要否を判定する。また、ハンドオーバー制御部12は、セクタの両端のビームである場合、両端のビームに隣接する他のセクタをカバーする通信処理部11をハンドオーバー先候補として選択する。さらに、ハンドオーバー制御部12は、ハンドオーバー先候補の通信処理部11のトラフィック量に基づいて、ハンドオーバー先候補の通信処理部11が無線端末を新たに収容できるか否かを判定する。ハンドオーバー制御部12は、ハンドオーバー先候補の通信処理部11が無線端末を新たに収容することが困難である場合、ハンドオーバー元の通信処理部11と無線端末との通信を継続させるために、ハンドオーバー元の通信処理部11が用いるMCSを下げること、つまり、通信速度を下げることにより、1つのビームによる通信エリアを広くする制御を行う。
【0146】
このような構成により、ハンドオーバー先候補の通信処理部11が新たな無線端末の収容が困難な場合、ハンドオーバー元の通信処理部11の指向性を制御することにより、無線端末の通信の切断を回避できる。
【0147】
また、ハンドオーバー制御部12は、ハンドオーバー先候補の通信処理部11が無線端末を新たに収容できる場合、ハンドオーバー先候補の通信処理部11のビームを、ハンドオーバー元のセクタにおける両端のビームに隣接するビームに変更する。
【0148】
(実施の形態2)
実施の形態1では、ハンドオーバー制御部を有する1台の無線通信装置が通信ネットワークに接続している場合について説明した。本実施の形態2では、ハンドオーバー制御部を持つ複数の無線通信装置が同一の通信ネットワークに接続している場合について説明する。
【0149】
図13は、本実施の形態に係る無線通信装置1−1、1−2を含む通信システム200の構成の一例を示すシステム構成図である。
図13では、通信システム200は、2台の無線通信装置(AP1、AP2)1−1、1−2が通信ネットワーク10に接続されている。そして、無線端末(STA)2は、無線通信装置(AP1)1−1に接続されている。
【0150】
無線通信装置1−1、1−2の構成は、実施の形態1で示した無線通信装置1の構成と同様であるため、説明を省略する。また、実施の形態1との違いは、主に、ハンドオーバー先候補の選定方法、およびハンドオーバー制御を行うハンドオーバー制御部の選定方法である。以下、それぞれについて説明する。
【0151】
<ハンドオーバー制御部の選定>
図14は、本実施の形態に係る無線通信装置1−1、1−2の接続状態の一例を示す図である。
図14では、2つの無線通信装置1−1、1−2は、通信ネットワーク10に接続されている。なお、
図14に示す無線通信装置1−1、1−2の構成は、
図2で示した無線通信装置1の構成と同様であるが、無線通信装置1−1、1−2の構成を区別するために、通信処理部11については、通信処理部11a−1〜11c−1、および通信処理部11a−2〜11c−2と符番を付す。ハンドオーバー制御部12、およびネットワーク制御部13についても同様の符番を付す。
【0152】
無線通信装置1−1、1−2は、通信ネットワーク10を介して接続しているため、どちらか一方の無線通信装置が有するハンドオーバー制御部12がマスタとなり、通信ネットワーク10を介して両方の無線通信装置の通信処理部11の制御及び端末情報管理テーブルの取得及び更新を行う。なお、マスタではないハンドオーバー制御部12は、スレーブとなる。
【0153】
マスタとなるハンドオーバー制御部12を選定する方法は、例えば、最初に起動した無線通信装置のハンドオーバー制御部12をマスタとする方法であってもよい。具体的には、無線通信装置1−1が起動した場合、無線通信装置1−1は、起動後に通信ネットワーク10に接続している他の無線通信装置1−2に対してプローブ要求をブロードキャストで送信する。無線通信装置1−2が既に起動しマスタとして動作している場合、無線通信装置1−2は、無線通信装置1−1に対してプローブ応答を返す。無線通信装置1−1は、プローブ応答を受信した場合、スレーブとして動作し、プローブ応答が一定時間返ってこない場合、マスタとして動作する。
【0154】
なお、マスタとスレーブは、マスタの決定後に変更してもよい。例えば、マスタとして動作しているハンドオーバー制御部を有する無線通信装置が動作を停止、または、終了する場合、あるいは、ハンドオーバー制御部の負荷が重くなり、システム性能へ影響を回避するために、負荷の少ないハンドオーバー制御部へ変更する場合、無線通信装置は、マスタの決定後に、マスタをスレーブに変更してもよい。
【0155】
また、ネットワーク遅延を考慮して、リアルタイム性を要求されるアプリケーション(例えば、ストリーミング、又は、VoIP)を使用している通信処理部11を有する無線通信装置内のハンドオーバー制御部12がマスタとなってもよい。
【0156】
<ハンドオーバー先候補の選定>
図15は、2つの無線通信装置の通信エリアの一例を示す図である。
図15は、
図6で説明した通信エリアと同様の2つの通信エリアが隣接する状態であるため、詳細な説明は省略する。なお、図示しないが、無線通信装置1−1、1−2は、それぞれのセルの略中心に位置する。
図15では、無線通信装置1−1の通信処理部11a−1〜11c−1のセクタ、および無線通信装置1−2の通信処理部11a−2〜11c−2のセクタを並べて配置した。また、無線通信装置1−2のビームIDは、無線通信装置1−1のビームIDと重複を避けるため、異なるビームIDである。
【0157】
図15を用いてハンドオーバー先候補となる通信処理部11の選定方法を説明する。無線端末2は、通信処理部11a−1に対してビーム#5を用いて接続している。また、マスタとなるハンドオーバー制御部12は、無線通信装置1−2のハンドオーバー制御部12−2である。
【0158】
実施の形態1、つまり、1つの無線通信装置を考慮した場合、ハンドオーバー先候補は、通信処理部11b−1であった。
【0159】
本実施の形態では、ビーム#5に隣接するセクタは、通信処理部11b−1のセクタ、通信処理部11a−2のセクタ、および通信処理部11c−2のセクタである。そのため、例えば、無線端末2が移動の向きを変えたことで、RSSIが閾値以下となった場合、無線通信装置1−2の通信処理部11a−2、11c−2もハンドオーバー先候補となる。無線通信装置1−1、1−2は、設置される際に、互いの位置関係(複数のセルの位置関係およびセル内のセクタの位置関係)を把握できるので、ハンドオーバー制御部12は、無線通信装置1−1、1−2の両方をハンドオーバー先候補として選定できる。
【0160】
したがって、マスタであるハンドオーバー制御部12−2は、通信処理部11b−1、11a−2、11c−2それぞれのトラフィック量を対応する無線通信装置のネットワーク制御部13から取得し、取得したそれぞれのトラフィック量が所定量以上か否かを判定する。通信処理部11b−1、11a−2、11c−2のトラフィック量が所定量以上の場合、ハンドオーバー制御部12−2は、通信処理部11a−1のMCSを下げることができるか否かを判定する。MCSを下げることができる場合、ハンドオーバー制御部12−2は、通信処理部11a―1のMCSを下げることによって、通信処理部11a−1の1つのビームによる通信エリアを広くする制御を行う。
【0161】
通信処理部11b−1、11a−2、11c−2のいずれかのトラフィック量が所定量未満の場合、ハンドオーバー制御部12−2は、所定量未満のトラフィック量である通信処理部11に対してビーム変更通知を発行する。
【0162】
なお、トラフィック量が所定量未満の通信処理部が複数存在する場合、ハンドオーバー制御部12−2は、最もトラフィック量が少ない通信処理部11に対してビーム変更通知を発行する。
【0163】
他の工程は、実施の形態1と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0164】
ハンドオーバー制御の結果、通信処理部11c−2に無線端末2が接続した場合、通信処理部11c−2は、ハンドオーバー制御部12−2に対してトレーニング完了通知を発行する。
【0165】
ハンドオーバー制御部12−2は、通信処理部11c−2からのトレーニング完了通知に基づき、通信処理部11b−1、11a−2、11c−2に対してハンドオーバー完了通知を発行し、ハンドオーバー制御を終了する。
【0166】
以上説明したように、本実施の形態では、実施の形態1で説明した複数の無線通信装置1がネットワークに接続し、複数の無線通信装置1のセルが互いに隣接している場合においても、複数の無線通信装置1は、互いの位置関係(複数のセルの位置関係およびセル内のセクタの位置関係)を把握できるため、ハンドオーバー制御を行うことにより、無線端末と接続中の通信処理部11との通信の切断を回避できる、つまり、通信品質の低下を抑制できる。さらに、複数の無線通信装置1のいずれかが有するハンドオーバー制御部12がマスタとなってハンドオーバー制御を実行できる。
【0167】
(実施の形態2の変形例1)
本実施の形態2では、ハンドオーバー制御部を持つ複数の無線通信装置が同一の通信ネットワークに接続している場合について説明した。本実施の形態2の変形例1では、ハンドオーバー制御部を有さない複数の無線通信装置が同一の通信ネットワークに接続し、更に、ハンドオーバー制御部を有する装置が同一の通信ネットワークに接続している場合について説明する。
【0168】
例えば、無線通信装置がハンドオーバー制御部を有しておらず、ネットワークに接続するネットワーク制御装置(例えば、アクセスポイントコントローラ、又は、アクセスポイントコーディネータ:APC)がハンドオーバー制御部を有している場合について説明する。
【0169】
図16は、実施の形態2の変形例1に係る通信システム300の構成の一例を示すシステム構成図である。
図16では、無線通信装置(AP3、AP4)3−1、3−2及びネットワーク制御装置(APC)4は、通信ネットワーク10に接続している。そして、無線端末(STA)2は、無線通信装置3−1に接続している。
【0170】
図17は、実施の形態2の変形例1に係る無線通信装置3−1、3−2及びネットワーク制御装置4の構成の一例を示すブロック図である。
図17に示す無線通信装置3−1、3−2は、実施の形態1の無線通信装置1の構成と比較して、ハンドオーバー制御部を有さない点を除いて、同様の構成であるため、詳細な説明は省略する。
【0171】
ネットワーク制御装置4は、ハンドオーバー制御部42および図示しない通信部を有する。ハンドオーバー制御部42は、通信部、および通信ネットワーク10を介して無線通信装置3−1、3−2の通信処理部11の制御及び端末情報管理テーブルの取得及び更新を行う。つまり、実施の形態2の変形例1の構成は、実施の形態2においてマスタとして動作するハンドオーバー制御部12がネットワーク制御装置4のハンドオーバー制御部42に置き換わった構成である。よって、具体的な処理については、実施の形態2と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0172】
なお、本実施の形態2の変形例1では、ハンドオーバー制御部を有さない複数の無線通信装置が同一の通信ネットワークに接続し、更に、ハンドオーバー制御部を有する装置が同一の通信ネットワークに接続している場合について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、ハンドオーバー制御部を有さない無線通信装置が同一の通信ネットワークに1台接続し、ハンドオーバー制御部を有する装置が同一の通信ネットワークに接続している場合であっても同様に動作する。
【0173】
(実施の形態2の変形例2)
本実施の形態2の変形例2では、ハンドオーバー制御部を有する複数の無線通信装置が同一のネットワークに接続し、更に、ハンドオーバー制御部を有するネットワーク制御装置が同一のネットワークに接続している場合について説明する。
【0174】
図18は、実施の形態2の変形例2に係る無線通信装置1−1、1−2及びネットワーク制御装置4の構成の一例を示すブロック図である。なお、
図18において、
図14と同様の構成については、同一の符番を付し、説明を省略する。
【0175】
図18では、無線通信装置1−1、1−2は、それぞれハンドオーバー制御部12を有し、通信ネットワーク10に接続するネットワーク制御装置4は、ハンドオーバー制御部42を有する。
図18では、ネットワーク制御装置4のハンドオーバー制御部42がマスタであり、無線通信装置1−1、1−2内のすべてのハンドオーバー制御部12(12−1、12−2)がスレーブである。動作については、実施の形態2で説明したものと同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0176】
なお、実施の形態2の変形例1及び2は無線通信装置1が接続する同一のネットワークにネットワーク制御装置4が接続している場合を記載した。図示していないが、無線通信装置1が接続するネットワークと、ネットワーク制御装置4が接続するネットワークが異なり、2つのネットワークが互いに接続している場合であっても、無線通信装置1は、本実施の形態2の変形例1及び2の場合と同じ効果を得ることができる。
【0177】
以上説明したように、本実施の形態2の変形例1、変形例2では、複数の無線通信装置の他に、ハンドオーバー制御部を有するネットワーク制御装置が通信ネットワークに接続している。ネットワーク制御装置のハンドオーバー制御部は、通信ネットワークを介して無線通信装置におけるハンドオーバー制御を実施する。このため、複数の無線通信装置がハンドオーバー制御部を有している、又は有していない、のいずれであっても、ハンドオーバー制御を行うことができる。
【0178】
なお、
図12では、通信処理部11によって送信されるビーコンは1つのビームIDに対応するビームで送信される場合について説明したが、ビーコンは複数のビームを使って送信してもよい。ビーコンを複数のビームを使って送信する場合について、
図19A、
図19Bを用いて説明する。
【0179】
図19Aは、ビーコンの送信方法の一例を示す図である。
図19Aは、通信処理部11aがビーコンを順次送信する様子を示す。
図19Aでは、通信処理部11aは、ビームIDを#1から#5まで変え、複数のビーコンであるビーコン群を送信する。送信される各ビーコンは、ビームIDは異なるが、同一種類のビーコンである。
図12では、通信処理部11aは1つのビーコンを周期的に送信していたが、
図19Aでは、通信処理部11aはビーコン群を周期的に送信する。
【0180】
図19Aを本開示に適用するためには、例えば、
図10のステップS514の処理を変更する。
図10のステップS514では、ハンドオーバー元の通信処理部11は、ハンドオーバー制御部12からの要求により、ハンドオーバー用ビームIDに対応するビームを使用してビーコンを送信するが(
図12のS911,S912)、
図19Aでは、ハンドオーバー元の通信処理部11がビーコン群を送信するため、ビーコン毎に送信するビームIDは、変更される。
【0181】
例えば、通信処理部11aがハンドオーバー元の通信処理部11であり、ビーム#5(セクタの端のビーム)を使用して接続していた無線端末がハンドオーバーを行う場合に、通信処理部11aがビーコン群を送信する方法の一例について、
図19Bを参照して説明する。
【0182】
図19Bでは、通信処理部11aは、ビームIDを変更し、ビームID#3(セクタの中央のビーム)に対応するビームでビーコン群の全てのビーコンを送信する。なお、通信処理部11aは、ビーコンを#1〜#3のビームIDに対応するビーム(ビーム#5から離れたビーム)でビーコン群を送信してもよい。このような方法を用いても、ハンドオーバーを行う無線端末がハンドオーバー元の通信処理部11に再接続することを防止することができる。このような方法を用いることにより、ビーコン群で送信されるようなシステムでも本開示を適用することはできる。
【0183】
なお、無線通信装置に採用されるミリ波通信は、上記実施の形態ではIEEE802.11adとしたが、これに限定されない。例えば、無線通信装置に採用されるミリ波通信は、IEEE802.15.3c等の、指向性を有する他の各種無線通信とすることができる。また、同様に、ビームフォーミングトレーニングも、上述のSLSに限定されない。
【0184】
また、上記実施の形態ではミリ波通信を前提にしたが、指向性を有する通信方式であればミリ波通信に限定されるものではない。
【0185】
また、上記実施の形態では、無線通信装置をアクセスポイント(AP)と称して説明したが、各通信処理部を1つのアクセスポイントと称しても良い。
【0186】
また、通信処理部のビームパターンの数、及び形状は
図5等で説明した例に限定されない。
【0187】
また、上記実施の形態では、無線通信装置内の通信処理部は、IEEE802.11adを用いて説明したが、3つの通信処理部が、それぞれ異なる通信方式(通信規格)を用いてもよい。この場合、無線端末は、対応する複数の通信方式(通信規格)に対応していなければならない。
【0188】
また、通信処理部の数は、
図2で説明した例に限定されない。
【0189】
また、本実施の形態では、無線品質情報としてRSSIを用いたが、例えば、受信電力、SNR(Signal-to-Noise Ratio)、SINR(Signal-to-Interference Noise Ratio)などであってもよい。
【0190】
また、
図9のステップS504において、ビームパターンが両端のビーム、つまり、通信処理部11aの場合、ビーム#1又はビーム#5であるか否かを判定する場合について説明したが、本開示はこれに限定されない。
図9のステップS504において、ビームパターンが両端のビームを含む所定の範囲内のビームであるか否かを判定してもよい。具体的には、1つのセクタをN方向(Nは2以上の整数)のビームを使用してカバーする通信処理部11の場合、ビームパターンがセクタの境界に近い位置からK番目(Kは、1以上、N/2以下の整数)までのビームであるか否かを判定してもよい。例えば、通信処理部11aの場合は、セクタを5つの方向のビームを使用してカバーしているため、ビームパターンがセクタの境界に近い位置から2番目までのビーム、つまり、ビーム#1又はビーム#5以外にも、ビーム#2、又は、ビーム#4であるか否かを判定してもよい。
【0191】
また、
図9のステップS505において、無線品質情報の閾値をビームパターン毎、あるいは通信処理部毎に設定してもよい。
【0192】
また、
図9のステップS505において、閾値を動的に変更してもよい。具体的には、通信処理部を動作させた後、発熱によりデバイスの温度が上昇する。デバイスの温度上昇によって、送受信性能が劣化するため、閾値が固定であると、通信処理部は、意図しないハンドオーバーが実行されてしまうことがある。意図しないハンドオーバーを防止するために、例えば、通信処理部は、周期的にデバイスの温度を測定し、デバイスの温度に応じて閾値を変更してもよい。
【0193】
また、
図9のステップS507において、ハンドオーバー先候補の通信処理部11が、新たに無線端末を収容できるか否かを判断する基準として、トラフィック量を用いる場合について説明したが、本開示はこれに限定されない。以下にトラフィック量以外のトラフィックに関する値について説明する。
【0194】
例えば、
図9のステップS507において、ハンドオーバー制御部12は、ハンドオーバー先候補の通信処理部11と接続中の他の無線端末に対する専用の期間(例えば、TXOP、SP:Service Period)の使用率を取得してもよい。そして、ハンドオーバー制御部12は、取得した使用率が80%以上と判定した場合、ハンドオーバー制御はS508へ移行するとしてもよい。
【0195】
また、
図9のステップS507において、ハンドオーバー制御部12は、ハンドオーバー先候補の通信処理部11に接続している端末の台数を取得してもよい。そして、ハンドオーバー制御部12は、取得した端末台数がハンドオーバー先候補の通信処理部11における端末収容台数の80%以上と判定した場合、ハンドオーバー制御はS508へ移行するとしてもよい。
【0196】
また、
図9のステップS507において、ハンドオーバー制御部12は、ハンドオーバー先候補の通信処理部11に接続中の無線端末が使用しているMCSから推定される最大スループットと実際のスループットとの比率(つまり、効率)を取得してもよい。そして、ハンドオーバー制御部12は、取得した比率が50%を下回っている場合、ハンドオーバー制御はS508へ移行するとしてもよい。
【0197】
また、
図9のステップS507において、ハンドオーバー制御部12は、ハンドオーバー先候補の通信処理部11が検出したSINRを取得してもよい。ハンドオーバー制御部12は、取得したSINRが閾値を下回っている場合、ハンドオーバー制御はS508へ移行するとしてもよい。
【0198】
また、
図9のステップS507において、各通信処理部11が新たな無線端末の収容が可能か否かを随時判断し、その判断結果をフラグとしてハンドオーバー制御部12に通知してもよい。ハンドオーバー制御部12は、各通信処理部11から通知されるフラグに基づいて、通信処理部11が新たな無線端末の収容が可能か否かを速やかに判定できる。
【0199】
また、
図10のステップS513において、接続解除通知を受けた通信処理部は、ビームを初期値に変更し、更に、通信処理部の機能を一時的に停止してもよい。具体的には、通信処理部は、例えば、電源をOFFにしてもよいし、送信電力を下げてもよい。
【0200】
また、ハンドオーバー制御部がハンドオーバーの判断をするタイミングは、SLSの終了を契機として説明したが、これに限る必要はない。例えば、SLSの実行周期よりも長い周期でハンドオーバーの判断を行ってもよい。また、ハンドオーバー制御部は、任意のタイミングで端末情報管理テーブルを取得してもよい。
【0201】
なお、無線通信装置の構成の一部分は、無線通信装置の構成の他の部分と物理的に離隔して配置されていてもよい。離隔した各部分は、互いに通信を行うための通信回路を備える必要がある。例えば、ハンドオーバー制御部は、無線通信装置が属するネットワークを制御するコントローラに実装されてもよい。
【0202】
また、上記実施の形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。集積回路は、上記実施の形態の説明に用いた各機能ブロックを制御し、入力と出力を備えてもよい。これらは個別に1チップ化されてもよいし、各機能ブロックの一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0203】
また、集積回路化の手法にはLSIに限らず、専用回路または汎用プロセッサを用いて実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又は、LSI内部の回路セルの接続、設定が再構成可能なリコンフィグラブル・プロセッサーを利用してもよい。
【0204】
更には、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、別技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてあり得る。
【0205】
なお、本開示は、無線通信装置、または制御装置において実行される制御方法として表現することが可能である。また、本開示は、かかる制御方法をコンピュータにより動作させるためのプログラムとして表現することも可能である。更に、本開示は、かかるプログラムをコンピュータによる読み取りが可能な状態で記録した記録媒体として表現することも可能である。すなわち、本開示は、装置、方法、プログラム、記録媒体のうち、いずれのカテゴリーにおいても表現可能である。