【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)平成29年8月29日に、2017年電子情報通信学会ソサイエティ大会予稿集にて公表 (2)平成29年9月13日に、2017年電子情報通信学会ソサイエティ大会で発表 (3)平成29年10月9日に、IEEE International Symposium on Personal,Indoor and Mobile Radio Communications 論文集にて公表 (4)平成29年10月11日に、IEEE International Symposium on Personal,Indoor and Mobile Radio Communicationsで発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、支出負担行為担当官、総務省大臣官房会計課企画官、研究テーマ「複数周波数帯域の同時利用による周波数利用効率向上技術の研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
菅 宜理 他,IEEE802.11無線LANに適した畳み込み符号化OFDM伝送のビット誤り率予測,電子情報通信学会技術研究報告,2017年 3月 2日,第116巻,第506号,p.167−172
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ペアワイズ誤り率算出手段は、前記インターリーブ処理と前記分割処理の構成から前記送信データ列のビットがマッピングされる周波数帯を計算し、前記周波数帯間の電力差を表す係数により、前記周波数帯ごとの受信電力の違いを考慮し、誤りビットがマッピングされる前記周波数帯の変調方式から信号点間の距離を算出して、前記ペアワイズ誤り率を算出する、請求項1または2記載のフレームエラーレート予測装置。
前記ペアワイズ誤り率算出手段は、前記インターリーブ処理と前記分割処理の構成から前記送信データ列のビットがマッピングされる周波数帯を計算し、前記周波数帯間の電力差を表す係数により、前記周波数帯ごとの受信電力の違いを考慮し、誤りビットがマッピングされる前記周波数帯の変調方式から信号点間の距離を算出して、前記ペアワイズ誤り率を算出する、請求項7または8記載の無線通信装置。
【背景技術】
【0002】
近年、ISM(industrial, scientific, and medical radio)帯においてモバイルトラヒックのオフロードが進展しており、無線LAN(local area network)の周波数利用効率向上が望まれている。高い周波数利用効率の実現に向けては、実用上十分に低いフレーム誤り率(FER: frame error rate)を達成可能で、かつできるだけ高い伝送レートを用いる必要がある。一般に、FER が1%から10%程度となるよう、伝搬状況に応じてMCS(modulation and coding scheme)を制御することが考えられる。ここで、MCSとは、変調方式・チャネル符号化率について、予め定められた組合せのテーブルをいう(たとえば、特許文献1を参照)。たとえば、受信機の受信状態が悪い場合や、低誤り率での通信が必要な送信データは、低い伝送レートのMCSを用い、逆に、受信機の受信状態が良い場合や、比較的高い誤り率を許容する送信データは、高い伝送レートのMCSを用いるなどの決定方法を用いるような適応的な制御が行われる。
【0003】
無線LANにおいて、適切なMCSに制御する方式として、伝送成功率や再送回数に応じてMCSを調節し、伝搬状況に適したMCSを選択する方式が知られている(非特許文献1を参照)。しかし、この方式では最適なMCSを選択するまで伝搬状況に合わないMCSでフレーム送信を行うため、再送や低レート送信によって、スループットが低下する恐れがある。このため、伝送効率の改善には事前にFER(Frame Error Rate)を予測し、その結果に基づいてMCSの決定を行うことが望ましいが、その実現には高精度なFER予測が必要となる。
【0004】
FERはフレームサイズと復号後のビット誤り率(BER: bit error rate)から算出できることから、復号後のBERを予測することによってFER予測が可能となる。
【0005】
一般に、無線LANでFERが1%から10%程度となることを精度よく予測する場合、ペアワイズ誤り率(PEP: pairwise error probability)によって精度よくFERを求められることが知られている(非特許文献2)。
【0006】
現在普及しているIEEE802.11a以降の無線LANにおいてPEPによって誤り率を求める場合、畳み込み符号化OFDM(COFDM: coded orthogonal frequency division multiplexing)におけるPEPを求める必要がある。COFDMにおけるPEPについては、これまで非特許文献3などで検討されている。
【0007】
非特許文献3では、インターリーブ後のビット誤りがランダムとみなせる場合の、PEPの解析を行っている。ランダム誤りとみなせる場合、ハミング距離が最小自由距離だけ離れたエラーパスが支配的となり、かつ伝搬路の周波数応答もランダムとみなすことができる。この性質を用いて非特許文献3では、PEPの定式化を行っている。
【0008】
しかしながら、現実的な無線LANの運用を想定した場合、その通信路は、必ずしもランダム誤りとみなせる環境とはならない。IEEE802.11aなどの無線LANでは、帯域幅、インターリーブサイズが十分に広くなく、かつ、数百(ns)程度の遅延分散までしか考慮されていないため、ビット誤りの発生を十分に分散させることができない場合がある。したがって、非特許文献3のPEPの定式化では、無線LAN環境におけるPEPを適切に表現できていない。
【0009】
このような問題を解決するために、非特許文献4に開示された技術では、畳み込み符号化OFDM方式で通信する通信システムにおいて、ビット誤り率(BER:bit error rate)予測として、送信機、受信機、あるいはその両方において推定された通信経路による電力の減衰を表す情報および雑音電力とに基づいて、PEPを導出する。マルチパス環境下のOFDM通信の場合、伝搬路の影響はサブキャリアの周波数応答によって異なる。さらに、無線LANでは多値変調も利用される。そのため、各符号語ビットは異なる影響を受けるため、PEPはトレリスの各時点で異なる。
非特許文献4に開示された技術ではトレリスの位置によるPEPの違いを考慮するため、インターリーバサイズに相当するトレリスの区間内の各時点においてPEPを計算し、得られたPEPから復号後にビット誤りとなるビット数の期待値を算出しBER予測を行う。
【0010】
図8は、このような非特許文献4の処理の概念を説明するための図である。
【0011】
図8に示されるように、非特許文献4では、畳み込み符号化された信号は、インターリーブ部によりインターリーブ処理がされた後に、単一帯域にマッピングされるものとして、エラーパス中の誤りビットがマッピングされるサブキャリアのSNRと変調方式によって定まる信号点間距離からペアワイズ誤り率(PEP)を計算している。
【0012】
一方で、非特許文献5および非特許文献6では、スペクトルの効率を増加させるために、5GHz、2.4GHzおよび920MHzのような多数のバンドを同時に使用するWLANシステムが提案されている。ここで、提案された複数周波数帯のWLANシステムは、キャリアセンシングにより複数の周波数帯から利用可能な無線資源を探索する。2個以上の利用可能なバンドが見つかる場合、フレーム中の符号化されたペイロードは複数の部分に分割され、それらは利用可能なバンド上にマッピングされ、適切に変調され、変調されたシンボルは同時に送信される。受信機側では、多数のバンドに分割されたフレームは統合されデコードされる。バンド毎に異なる伝搬特性となるので、ここで提案されたシステムは、複数のバンドに分散したアイドル状態の資源を利用することによりスペクトルの効率を改善することができると同時に周波数ダイバーシチを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の実施の形態の無線通信システムおよび無線通信装置の構成を説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素および処理工程は、同一または相当するものであり、必要でない場合は、その説明は繰り返さない。
(複数帯域同時伝送の通信システムでのフレームエラーレート予測の課題)
以下では、本発明の実施の形態の説明をする前提として、上述した非特許文献4に開示された技術を、非特許文献5や非特許文献6に開示されたような複数帯域同時伝送を用いる通信システムに適用する場合の問題点について、簡単にまとめる。
【0048】
構成ビットが全て0の符号語を生じるトレリスパス(以下、真のパス)とハミング距離d
H離れた符号語を生じるパス(以下、エラーパス)を考える(畳み込み符号は線形符号であるので、上述のように真のパスとエラーパスを設定しても一般性は失われない)。
図3は、拘束長3、生成多項式(5, 7)
8を有する畳み込み符号のd
H=5におけるエラーパスを示す図である。
【0049】
この場合、真のパスは符号語…, 0, 0, 0, 0, 0, 0,…に対応し、エラーパスは符号語…,1, 1, 0, 1, 1, 1,… に対応する。エラーパスはトレリス上のある位置(
図3では、t=2)で真のパスから離れ、その後合流するため、この区間のみ異なるビットのパターンを持つ。
【0050】
さらに、後述するように、所定の畳み込み符号について発生しうる、このようなエラーパターンに基づいて、フレームエラーレートが予測される。なお、以下では、文字xにアンダーバーが付されているものを「x(アンダーバー)」と表記し、文字xが、ベクトルであることを表すものとする。
条件付きPEPは、非特許文献4によれば、以下の式で表される。
【0051】
【数1】
エラーパス
et,p(アンダーバー)をインターリーブし、エラーパターンのw番目の誤りビットがマッピングされたサブキャリア番号をk
w、当該サブキャリアで送信するシンボル内ビット位置をi
wとする。また、Δ
w(i
w)で表される距離は誤りビットが割り当てられたシンボルについて、誤りがない場合の信号点と、誤りビットを含んだ場合の信号点間の2乗ユークリッド距離とする。また、
Hkは第kサブキャリアの周波数応答を表し、H
kwはw番目の誤りビットがマッピングされたサブキャリアの周波数応答である。さらに、
H、
ΔはそれぞれH
kw、Δ
w(i
w)を要素に持つベクトルである。
【0052】
この場合、PEPは
H、
Δについて期待値を求めることにより、次式で与えられる。
【0053】
【数2】
ここで、E{…}
aはaに関する期待値演算を表す。式(1)では伝送フレームごとに伝搬路が変化することを想定し、複数フレームを伝送した場合の復号後FERを導出するため、サブキャリアの周波数応答H
kwに関して期待値を求めている。また、Δ
w(i
w)は真のパスとエラーパス、インターリーバ構造から決定できるが、実際には真のパスは符号器の入力ビットに依存するためΔ
w(i
w)は確率変数となる。そのため、式(1)ではΔ
w(i
w)に関しても期待値を求めている。さらに、非特許文献4によると条件付きPEPは次式で与えられる。
【0054】
【数3】
式(1)によると、PEPを導出するためには式(2)について、H
kw,Δ
w(i
w)に関する期待値を求めればよい。その準備としてまず、式(2)の分子を以下のように変形する。
【0055】
【数4】
次にPA´Pを固有値分解すると、以下のようになる。
【0056】
【数5】
ここで、λ
lはl番目に大きなユークリッドノルムを持つPA´Pの非零の固有値、v
lはvのl番目の要素でその振幅は、以下の確率密度関数のレイリー分布に従う。
【0057】
【数6】
rは、ダイバーシチ次数である。ただし、rank(…)は行列のランク、min(…)は最小値を表す。
【0058】
ここで、PEPについては以下のようにいうことができる。
【0059】
送信されたビット列はトレリス線図上の1つのパスで表すことができ、送信したビット列以外のパスが受信側で選ばれるとき復号後ビット誤りが生じる。受信側では各パスのメトリックを計算し、最大のメトリックを持つパスを選ぶことになる。「PEP」とはあるエラーパスのメトリックが真のパスのメトリックを超える確率であり、低FER領域ではエラーパスに対応する系列が復号結果として得られる確率に漸近する。
【0060】
式(8)を式(2)に代入して次式を得る。
【0061】
【数7】
v
lに関して期待値を求めることにより次式を得る。
【0062】
【数8】
さらに、Δ
w(i
w)に関して期待値を求める。
Δ
w(i
w)はシンボル内のビット位置i
wによって異なる確率密度を持つ有限な離散確率変数であり、λ
lはPA´Pの固有値であるため、あるエラーパス
et,pが与えられている場合、Δ
w(i
w)から一意に決定できる。
【0063】
Δ
w(i
w)は有限な離散確率変数であるから、λ
lも有限な離散確率変数となる。したがって、以下のようになる。
【0064】
【数9】
ここで,離散確率変数Δ
w(i
w)の取りうる値がm
iw通りとすると、以下の関係がなりたつ。
【0065】
【数10】
エラーレートが低い領域では、シンボル誤りは隣接する信号点に誤る場合が支配的になることが予想される。
信号点間の最小ユークリッド距離をd
minとすると、w=1,…,d
Hに対してΔ
w(i
w)=d
min2となる項がJ個の項の中で支配的になると期待される。また、この支配的になる項のP
jをP
minと表記する。すなわち、P
minはw=1,…,d
Hに対してΔ
w(i
w)=d
min2となる確率を表し、変調方式とエラーパス、インターリーバ構造から決定される。
【0066】
また、λ
l,minは、以下の式で算出される行列PA
min´Pの固有値である。
【0067】
【数11】
本実施の形態では、送信機側と受信機側とで、インターリーバ構造は、予め既知である。したがって、式(11)の計算を実行する場合は、送信機側で、電力遅延プロファイルの情報(行列PA´Pの計算に必要)、雑音電力(σの算出に必要)と符号器の構成(すなわち、MCSの情報)があれば、実行できることになる。
【0068】
式(11)の総乗部分はダイバーシチ次数rが大きくなるにつれて減少し、ダイバーシチ次数の大きなエラーパスのPEPはダイバーシチ次数の小さなエラーパスのPEPより低くなる。しかし、無線LANを想定した場合、遅延分散が小さいためd
H≧Lとなる可能性がある。このとき、すべてのエラーパスのダイバーシチ次数が等しくLとなり、FERが低い領域においても最小自由距離より離れたパスのPEPが無視できなくなる可能性がある。そのため、真のパスからハミング距離d
f+φ離れたエラーパスのPEP まで考慮する。ここで、φの値は、実験的に、予め適切な値を設定しておくものとする。
【0069】
上記の式において、d
Hは、上述のとおり、エラーパスのハミング距離であって、符号器の構成から決定される。
【0070】
また、H
kwは、伝搬路の周波数応答であり、受信機側で推定することが可能である。
【0071】
また、Hからチャネルインパルス応答、および電力遅延プロファイルも推定できる。
【0072】
ところが、上式を複数帯域同時伝送のシステムに適用するには、以下の問題がある。
【0073】
1)単一帯域での通信を想定しており、帯域内の平均SNRが単一である定式化がなされている。したがって、複数帯域同時伝送のような帯域ごとにSNRが大きく異なる場合のPEPを計算できない。
【0074】
2)また、Δ
w(i
w)=d
min2としているので、帯域ごとに変調方式を変更した場合に、信号点間距離が異なることを取り入れていない。
【0075】
そこで、以下では、このような問題点に対処するための構成について説明する。
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1の無線通信システムの構成を説明するためのブロック図である。
【0076】
図1を参照して、送信装置1000は、送信系列のデータに対して、畳み込み符号による誤り訂正符号化処理を行うための誤り訂正符号化部1002と、誤り訂正符号化後のデータに対してインターリーブ処理を行うインターリーブ部1004と、インターリーブ後のデータ列に対して、複数帯域ごとのデータストリームに分割するパーサー1006と、パーサー1006からの出力に対して、それぞれ直列並列変換をし、後述するように選択されたMCSに基づいて、データ列をサブキャリア数に分割し、それぞれ分割したデータにサブキャリア変調を行うための変調部1010.1〜1010.3とを備える。
【0077】
特に限定されないが、
図1においては、複数帯域としては、3バンドを使用するものとし、これら3バンドにそれぞれ対応して、変調部1010.1〜1010.3が設けられているものとして説明する。以下では、一例として、このような3バンドとしては、ISM帯の5GHz、2.4GHzおよび920MHzバンドを使用するものとする。
【0078】
さらに、送信装置1000は、変調部1010.1〜1010.3の出力のデジタル信号に対して、逆フーリエ変換処理およびガードインターバルの付加処理を実行して直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)シンボルを生成し、デジタルアナログ変換処理をそれぞれ実行するためのOFDM変調部1012.1〜1012.3と、OFDM変調後の信号に対して、直交変調処理、アップコンバート処理、電力増幅処理などをそれぞれ実行する高周波処理部(RF部)1014.1〜1014.3と、RF部1014.1〜1014.3からの高周波信号を送出するためのアンテナ1020.1〜1020.3とを含む。
【0079】
なお、アンテナ1020.1〜1020.3で受信した信号に対して、RF部1014.1〜1014.3は、低雑音増幅処理、ダウンコンバート処理および直交復調処理なども実行するものとする。
【0080】
また、サブキャリア変調の変調方式には、特に限定されないが、たとえば、BPSK、QPSK、16QAM、64QAMなどの種類があるものとする。
さらに、送信装置1000は、受信装置2000側からの平均受信電力と電力遅延プロファイルおよび雑音電力の推定値をRF部1014.1〜1014.3を介して受信し、復調および復号処理を実行するための受信処理部1100と、平均受信電力と電力遅延プロファイルおよび雑音電力の推定値に基づいて、適応的にMCSを変更する制御を実施して、誤り訂正符号化部1002の符号化率や変調部1010.1〜1010.3での変調方式を制御する適応レート制御部1110とを含む。
【0081】
なお、受信装置2000からの平均受信電力、電力遅延プロファイルおよび雑音電力の推定値の通信方式については、データの送信と同様の通信方式でもよいし、他の通信方式を採用してもよい。
【0082】
受信装置2000は、上述した3バンドにそれぞれ対応したアンテナ2002.1〜2002.3と、アンテナ2002.1〜2002.3の信号の低雑音増幅処理、ダウンコンバート処理および直交復調処理などを実行するRF部2010.1〜2010.3と、RF部2010.1〜2010.3からの信号に対して、それぞれ、アナログデジタル変換処理、ガードインターバルの除去処理、フーリエ変換処理などのOFDM復調処理を実行するためのOFDM復調部2012.1〜2012.3と、OFDM復調部2012.1〜2012.3からの信号に対して、変調部1010.1〜1010.3のそれぞれの逆処理により、受信データ列を生成するための復調部2014.1〜2014.3と、復調部2014.1〜2014.3からの信号に対して、パーサー1006の逆処理を実行するデパーサー2015と、デパーサー2015からの信号列に対してデインターリーブ処理を実行するためのデインターリーブ部2016と、畳み込み符号に対する復号により誤り訂正処理を実行するための誤り訂正部2018とを含む。
【0083】
受信装置2000においても、RF部2010.1〜2010.3は、平均受信電力、電力遅延プロファイルおよび雑音電力の推定値の送信のための直交変調処理、アップコンバート処理、電力増幅処理などを実行するものとする。
受信装置2000は、さらに、RF部2010.1〜2010.3を介して受信した信号における、たとえば、パイロット信号などにより、平均受信電力と電力遅延プロファイルの推定値および雑音電力の推定値の算出を行うための平均受信電力/電力遅延プロファイル/雑音電力推定部2100と、平均受信電力/電力遅延プロファイル/雑音電力推定部2100からの推定値を送信信号に変換して、RF部2010.1〜2010.3を介してアンテナ2002から送信装置1000に向けて送信するための送信処理部2110とを含む。
【0084】
図2は、
図1に示したOFDM方式での送信および受信処理を模式的に説明するための概念図である。
【0085】
図2に示すように、畳み込み符号化されインターリーブされた送信信号は、所定の変調方式で、複素信号としてサブキャリアごとにマッピングされ、逆フーリエ変換の後に、デジタルアナログ変換されて、直交変調などを含む周波数変換処理がされて、伝送路に送出される。
【0086】
伝送路から受信した信号は、直交検波などを含む周波数逆変換処理を経て、アナログデジタル変換されて、フーリエ変換され、逆マッピングされた受信信号は、デインターリーブ処理および畳み込み符号による誤り訂正処理が実行される。
【0087】
構成ビットが全て0の符号語を生じるトレリスパス(以下、真のパス)とハミング距離d
H離れた符号語を生じるパス(以下、エラーパス)を考える(畳み込み符号は線形符号であるため、真のパス、エラーパスを上述のように設定しても一般性を失わない)。
【0088】
図4は、本実施の形態のフレームエラーレート予測について説明する概念図であり、
図8と対比される図である。
【0089】
図4に示されるように、本実施の形態では、パーサーにより送信データ系列の各バンドへの分割処理がなされるため、エラーパス中の誤りビットが異なる帯域にマッピングされる場合を考慮する。
【0090】
すなわち、後述するように、インターリーバとパーサーの構成からマッピングされる帯域を計算し、帯域間の電力差を表す係数を導入して、帯域ごとの受信電力の違いを考慮し、さらに、誤りビットがマッピングされる帯域の変調方式から信号点間の距離を算出して、ペアワイズ誤り率を算出して、フレームエラーレートを予測する。
[FERの予測処理の構成]
図5は、
図1に示した適応レート制御部1110の構成を説明するためのブロック図である。
【0091】
図5を参照して、適応レート制御部1110は、予め設定されたMCSの組の情報を格納するためのMCS記憶部3020と、受信装置2000側から送られてきた平均受信電力の推定値、電力遅延プロファイルの推定値および雑音電力の推定値を受けて、MCS記憶部3020に格納された各MCSについて、通信に使用されるフレームサイズの情報に基づいて、フレームエラーレート(FER)を、各MCSについて予測するFER予測部3030と、予測されたFERの値に基づいて、システムにおいて予め設定され要求されているFERを下回るMCSの中で最大のスループットを達成するMCSを選択するMCS選択部3040とを含む。
【0092】
なお、FER予測部3030の動作については、後ほど、より詳しく説明する。
【0093】
図6は、実施の形態1の適応レート制御について説明するためのフローチャートである。
【0094】
図6を参照して、まず、受信装置2000側において、平均受信電力、電力遅延プロファイル/雑音電力推定部2100が、平均受信電力と電力遅延プロファイルと雑音電力との推定を実行する(S100)。
【0095】
電力遅延プロファイルの推定と雑音電力の推定には、特に限定されないが、たとえば、以下の文献に開示の手法を用いることができる。
【0096】
公知文献1:T. Cui and C. Tellambura, ”Power delay profile and noise variance estimation for OFDM,” IEEE Communications Letters, vol. 10, no. 1, pp. 25-27, Jan 2006.
また、平均受信電力の推定には、特に限定されないが、たとえば、以下の文献に開示の手法を用いることができる
公知文献2:S. Hong, Y. Li, Y.C. He, G.Wang, and M. Jin, ”A cyclic correlation based blind SINR estimation for OFDM systems,” Communications Letters, IEEE, vol.16, no.11, pp.1832-1835, Nov. 2012.
電力遅延プロファイルの推定にあたり、受信電力も含む形で推定される(すなわち、ρ
bP
bとして)場合は、平均受信電力の推定を別途行う必要はなく、電力遅延プロファイルのみを推定する。
【0097】
推定値は、受信装置2000から送信されて(S102)、送信装置1000で受信され(S104)、送信装置1000のFER予測部3030では、フレーム内の各時点についてエラーパスのペアワイズ誤り率のフレーム内での総和を算出することで、各MCSについてフレームエラーレートの予測値を算出し(S108)、MCS選択部3040が、算出されたフレームエラーレートに基づいて、所定のMCSのうちで、規定のFERを達成する範囲で、最大のスループットとなるMCSを選択する(S110)。
【0098】
選択されたMCSに応じて、選択された符号化率で誤り訂正符号化部1002が畳み込み符号化を実行して、変調部1010が選択された多値変調方式でのサブキャリア変調を実行する(S112)。
【0099】
変調後のデータが送信装置1000から送信され(S114)、受信装置2000において受信される(S116)。
【0100】
このような処理であれば、受信装置側で、平均受信電力、電力遅延プロファイルと雑音電力との推定を行い、送信装置側にフィードバックした時点で、適応的に符号化率や変調方式を変更できる。したがって、フレーム誤り率(FER)を正確に予測することによって伝搬状況に合わないMCSでのフレーム送信回数を低減しスループットを向上できる。
[FER予測部3030が実行する動作]
以下では、FER予測部3030が実行する動作について、数式に従い説明する。
【0101】
1.本実施の形態の手法の特徴
以下の説明で明らかとなるように、本実施の形態のFERの予測では、以下のような特徴がある。
【0102】
1)帯域によって異なるSNRに対応するために、帯域毎の受信信号電力を含んだ定式化を行い、符号語誤りビットがマッピングされる帯域(インターリーバとパーサーの構成から逆算可能)によって受信信号電力を切り替えることで帯域ごとに異なるSNRの影響を考慮したPEPの計算を可能にする。
【0103】
2)誤りビットがマッピングされた帯域によって、信号点間距離d
min2を切り替えることにより、帯域ごとに異なる変調方式の影響を考慮したPEP計算を可能にする。
【0105】
2.システムモデル
以下では、複数周波数帯の同時通信のシステムとして、利用可能なバンドの個数をB個とする。
図1の例では、B=3である。
【0106】
また、特に限定されないが、一例として、情報ビットは、誤り訂正符号化部1002へR=1/2の符号化率で与えられるものとする。
【0107】
このとき、生成されたコードワードは、以下の式で表される。
【0108】
【数12】
L
frameがコードワードの長さであり、c
j∈{0,1}は、コードワードc(アンダーバー)におけるj番目の符号化されたビットである。
【0109】
コードワードは、インターリーブ部1004およびパーサー1006により、インターリーブされ、利用可能な複数のバンドに分割される。
【0110】
その後、上述したように、分割されたコードワードはそれぞれ、各バンドで個々に変調され、対応するサブキャリアに写像される。
【0111】
j番目の符号化されたビットc
jがb番目のバンド中のk番目のサブキャリア上の変調されたシンボルのi番目のビットにマッピングされる場合、この写像は以下のように表わされる。
【0112】
【数13】
送信されるフレームは、サブキャリアにマップされた変調されたシンボルに、OFDM変調処理を適用することにより生成される。
【0113】
さて、以下の実施の形態においては、伝搬路(チャンネル)がフレーム内では静的であるものの、フレームごとには独立して変動する(ブロック・フェージング)、と考える。
b番目の帯域のチャンネル・インパルス応答h'
b(アンダーバー)は、以下のように表わされる。
【0114】
【数14】
h
b(アンダーバー)が、平均0および分散1の複合ガウス分布に従う任意のベクトルである場合、P
bは、主対角成分上の非負の実数値p
lを有するL
b×L
b対角行列である(L
bはチャンネル・インパルス応答の長さである)。
【0115】
対角線成分p
lは、L
b個のタップの周波数選択チャネルの電力遅延プロファイルであり、以下の式を満たす。
【0116】
【数15】
第1次の到来パスからのマルチパスの最大遅延時間は、ガードインターバル(GI)の長さを超えないものと仮定する。
【0117】
受信機側では、OFDM復調後の各帯域のk番目のサブキャリアの受信信号は、以下の式(15)によって表されるものとする。
【0118】
【数16】
ここで、ρ
bがb番目の帯域の受信信号パワーとするとき、X
k、bは、平均電力を1に規格化した送信シンボルであり、Z
k、bは、平均0および分散σ
2の複素加法性ホワイトガウスノイズ(AWGN:additive white Gaussian noise)の周波数領域表現であり、H
k,bは、b番目の帯域中のk番目のサブキャリアの周波数領域のチャネル係数である。
【0119】
この実施の形態では、電力遅延プロファイルP
b、雑音分散σ
2および各バンド中の受信パワーρ
bが、受信側で推定され、送信側にフィードバック情報として返信されるものとする。
【0120】
ここで、H
k,bは、以下の式(4)で与えられる。
【0121】
【数17】
ここで、K
fft、bはb番目の帯域の高速フーリエ変換(FFT)サイズであり、g
HKfft,b (k)は、FFTマトリックスのk番目の列から抽出されたベクトルである。
【0122】
伝送された情報ビットの最尤推定を行なうために、トレリス図上のすべての考慮されうるパスのメトリックを計算する。
【0123】
パスメトリックは、パスに沿うブランチメトリックの合計により与えられる。j番目のビット・メトリックは以下の式(17)で与えられる。
【0124】
【数18】
ここでψ
-1は、式(13)におけるψの逆写像であり、f(Y
k、b|X,H
k、b)は、式(15)中の受信信号の条件付き確率密度関数であり、χ
iq (b)は、b番目のバンドの変調方式のi番目のビットがq∈{0,1}である信号点の集合である。
【0125】
したがって、伝達情報ビットの最尤推定は、以下の式(18)によって得られる。
【0126】
【数19】
ここで、c′(アンダーバー)は、候補コードワードであり、Cは可能なコードワードの集合である。
[フレームエラーレート(FER)予測]
トレリス図は畳み込み符号を分析するために広く使用され、
図3でも示したように、トレリス図では、コードワードは、トレリスパスに1対1で対応する。
【0127】
任意のエラーパスのメトリックが正しいパスより大きい場合、エラーイベントが、ビタビ復号処理後に生じことになる。
【0128】
例えば、
図3では、生成多項式(5, 7)
8を備えたトレリス図を示したが、畳み込み符号が線形であるので、この実施の形態の説明においては、正しいパスは全ゼロパスであると考えることにしたとしても、一般性を失わない。
【0129】
図3において、[0,0,1,1,0,1,1,1,0,0,…]として描かれるエラーパスは、t=2で正しいパスから離れ、t = 5で正しいパスに合流している。
【0130】
この正しいパスから離れている期間に、エラーパスは、正しいパスとは異なったビットパターンを持っており、本実施の形態ではこの異なるビットのパターンをエラーパターンと呼ぶ。例えば、
図3では、エラーパターンは[1, 1, 0, 1, 1, 1] である。
【0131】
エラーパターンは生成多項式によって決定される。また、各エラーパターンに番号pを付ける。t番目のトレリス位置で始まるp番目のエラーパターンを持っているエラーパスは、e
t,p(アンダーバー)として表わされる。
【0132】
さらに、エラーパスe
t,p(アンダーバー)に関係しているメトリックが、真のパスのメトリックを超えるというイベントは、ε
t,pと表され、その確率Pr(ε
t,p)は、また、PEP(e
t,p(アンダーバー))として表される。
(無線LAN環境におけるユニオンバウンドに基づいたFERの表現)
FERは、少なくとも1つのエラーイベントがフレーム中に生じる確率である。
【0133】
そして、以下では、無線LANを例にとって、FERの予測の表式を導くことにする。
【0134】
以下では、送信される1フレーム内のOFDMシンボルごとにインターリーブ処理がされるものとし、L
symを、OFDMシンボルにおいて符号化されたビット数に等しい、インターリーバーサイズとして定義する。
【0135】
たとえば、IEEE802.11a/n/ac 規格の無線LANシステムでは、インターリーブ処理は、OFDMシンボル毎に繰り返し行なわれる。
【0136】
したがって、c
jおよびc
j+Lsymは同じ帯域中の同じサブキャリア上に写像され、無線LAN環境では、チャンネル変動は、1つのフレーム内では無視できると考えられるので、同じチャンネル・フェージングの影響を受けるとみなしてよい。
【0137】
したがって、PEP(e
t,p(アンダーバー))は周期的であり、以下の式が成り立つ。
【0138】
【数20】
そこで、FERを得るために1つのOFDMシンボルに生じるエラーイベントを考慮する。OFDMシンボル内で少なくとも1つのエラーイベントが生起する確率は、式(19)として表現することができる。
【0139】
【数21】
ここでt′は、1からRLLsymの範囲のインデックスである(Rは符号化率)。式(19)のユニオンバウンドは、以下の式(20)で表される。
【0140】
【数22】
ここで、ユニオンバウンドとは、以下の式で表されるように和事象の確率の上界を表す関係のことをいう。以下の例では、2つの事象について記載しているが、複数事象の和事象でも同様であり、ビタビ復号によって、何らかのエラーイベントが生じてしまう確率の上界は、すべてのイベント誤りが発生する確率の和によって表される。
【0141】
【数23】
その結果、FERは、以下の式(21)として表現される。
【0142】
【数24】
以下の説明では、上記のとおり、インターリーブ処理は、フレーム内のOFDMシンボル毎に、同一の処理が繰り返されているものとして説明する。
【0143】
ただし、より一般には、インターリーブ処理は、フレーム内の所定のブロック毎に、同一の処理が繰り返されているとすることが可能である。この場合、式(21)の右肩の指数は、1フレーム内に存在するブロックの個数となり、RLsymは、トレリス図内の1つのブロックに相当する期間とすることができる。すなわち、フレーム内において、送信ビットは、デインターリーブ処理後の符号化系列に対する伝搬路変動が周期的とみなせるように設定されたブロック長ごとに送信ビットが分割されている場合に、1ブロックに相当するトレリス図の区間でペアワイズ誤り率の総和としてブロック誤り率を計算し、各ブロック誤り率が互いに等しいものとして、ブロック誤り率とフレーム内に含まれるブロック数からフレーム誤り率を予測することになる。
(複数周波数帯の同時通信のためのペアワイズ誤り率)
次に、複数周波数帯の同時通信において、ペアワイズ誤り率PEP(e
t,p(アンダーバー))を導出する。
【0144】
PEP(e
t,p(アンダーバー))は、エラーパスのメトリックが正しいパスのメトリックを超える確率であるので、以下の式(22)が得られる。
【0145】
【数25】
ここで、e
t,p (j)(アンダーバー)は、e
t,p(アンダーバー)のj番目の要素であり、距離d
Hはe
t,p(アンダーバー)のハミング重み(正しいパスとエラーパスとのハミング距離)であり、また、j
wは、e
t,p (j) (アンダーバー)の中のw番目の誤りビットの位置を表す。例えば、
図3に示した例では、エラーパス[0,0,1,1,0,1,1,1,0,…]は、5つの誤りビットがあり、各エラービットの位置は、 j
1=3,j
2=4,j
3=6,j
4=7,およびj
5=8となる。
【0146】
さらに、エラーパスが正しいパスとは異なるd
H個の誤った符号化されたビットを含んでいるという事実から、非特許文献3中の手続きを参照すると、条件付きのPEPは、以下の式(23)と(24)から与えられる。
【0147】
【数26】
ここで、以下のH(アンダーバー)は、チャネル係数ベクトルである。
【0148】
【数27】
また、以下は、正しいシンボルと、サイズd
Hの誤りシンボルとの間の2乗ユークリッド距離ベクトルである。
【0149】
【数28】
さらに、w番目の誤りビットについて、i
w、k
wおよびb
wは、それぞれ、シンボル、サブキャリアおよびバンド中でのビット位置である。それらは、以下のように与えられる。
【0150】
【数29】
また、以下のように定義される。
【0151】
【数30】
図7は、無線LANで使用される16QAMの同相信号のコンスタレーションおよびそのサブセットを示す図である。
【0152】
例えば、
図7では、送信されたビットが、ビット位置i=1およびi=2の上にマップされている。
【0153】
図7においては、正しいシンボルおよび誤ったシンボルは、それぞれ「○」と「×」で表される。
図7から、一般には、Δb
w(i
w)は、誤りビットが写像されるビット位置およびシンボル位置に依存する。
【0154】
そこで、Δb
w(i
w)は、以下の式のように表される。
【0155】
【数31】
図7では、γb
w(i
w)は、i=1に対して、1または4である。
【0156】
情報ビットは、ランダムに生起するとみなせるので、正しいシンボルの位置もまたランダムとみなせる。
【0157】
したがって、Δb
w(i
w)は離散確率変数であり、その分布は、コンスタレーションとビット位置によって決定される。
【0158】
さて、あらゆる可能なΔ(アンダーバー)のパターン数をUと定義する。送信シンボルはランダムな情報ビットから生成されるので、各パターンは、高いSNRの領域では、等しい確率Pで発生するといえる。
【0159】
確率Pは、誤りビットがマップされたコンスタレーションおよびビット位置を考慮することで計算することができる。
【0160】
したがって、式(23)について、Δ(アンダーバー)に関する期待値は、式(25)として与えられる。
【0161】
【数32】
ここで、式(25)において、Uが大きな値の場合、すべてのパターンの計算は非現実的である。
【0162】
そこで、最隣接した信号位置にあたるシンボル・エラーが、高いSNR領域において支配的であると仮定すると、式(25)は、すべてのシンボル・エラーが近接するシンボルに相当する項だけを考慮することにより、近似される。すなわち、以下の関係式が成り立つ場合を考慮することになる。
【0163】
【数33】
すなわち、バンドごとに異なる変調方式を考慮して、最隣接した信号位置にあたるシンボル・エラーについてのΔb
w(i
w,u)を考慮することに相当する。
【0164】
したがって、式(25)は、以下の式(26)のように近似される。
【0165】
【数34】
すなわち、式(25)において、式(25−1)の条件となる項のみで式(25)を近似したことに相当する。
【0166】
式(26)のようにすることで、上述した課題が以下のようにして解決される。
【0167】
1)任意の帯域の送信電力を1(ρ
bw=1)と仮定し、その帯域のSNRの逆数をσ
2とする。他帯域はσ
2を雑音電力として、SNRが受信時のものとなるよう、ρ
bwによってH
kw,bwのスケーリングを行う。
【0168】
2)信号点間距離d
bw,minを、符号語誤りビットがマッピングされる帯域で用いられる変調方式に応じて切り替える。
【0169】
なお、式(26)中のPEPの表現は、まだ、チャンネル係数ベクトルH(アンダーバー)により条件付けられている。そこで、さらにHについての期待値を求めることで、以下のように表現される。
(伝搬路値が定数とみなせる場合(伝搬路が静的な場合))
この場合は、式(26)おいて、H
kw,bwを定数と置くことに相当する。
(伝搬路値が変動する場合のPEPの計算)
一般には、チャンネル係数H(アンダーバー)は確率変数と見なされる。
【0170】
したがって、式(26)の中でH(アンダーバー)についての期待値をとることで、平均したPEPを得ることができ、式(21)により、FERを得ることができる。
【0171】
H(アンダーバー)に関する期待値は、h(アンダーバー)に関する期待値と等しい。
h(アンダーバー)の各要素hは互いに独立であるために、容易に計算されるため、h(アンダーバー)にわたる期待値を求める。
【0172】
期待値の演算のために、式(26)の根号の中の分子を以下の式(27)および式(28)のように変形する。
【0174】
【数36】
P
bA
bP
bの固有値分解は、V
bΛ
bV
bHとして表現することができる。
ここで、v
b(アンダーバー)=V
bHh
b(アンダーバー)を定義する。また、V
bはユニタリ行列であるので、バンドb中でのv
b(アンダーバー)の各要素の振幅は、以下の確率分布のレイリー分布に従う。
【0175】
【数37】
したがって、以下の式(29)を得る。
【0176】
【数38】
ここで、r
bは以下のようにして決定される。
【0177】
r
b=min(帯域bの伝搬路パス数,帯域bにマッピングされる符号語誤りビット数)
式(26)および(29)から、PEPは、式(30)のように近似できる。
【0178】
【数39】
|v
l,b|について (すなわち、h(アンダーバー))についての期待値をとることで、以下の式(31)を得る。
【0179】
【数40】
ここで、λ
l,bは、電力遅延プロファイルとインターリーバ,パーサーの構成から計算可能である。
【0180】
したがって、式(31)を式(21)に代入することにより、フレームエラーレート(FER)を予測することができる。
【0181】
以上説明したように、本実施の形態の構成によっても、複数帯域同時伝送を用いる通信システムにおいて、帯域ごとに変調方式が異なり、かつ異なる伝搬環境となる場合にも、フレームエラーレートを予測することが可能となる。またこのような、フレームエラーレート予測を用いることで、適切なMCSを適応的に選択して通信を行うことが可能な無線通信装置および無線通信システムが実現できる。
【0182】
今回開示された実施の形態は、本発明を具体的に実施するための構成の例示であって、本発明の技術的範囲を制限するものではない。本発明の技術的範囲は、実施の形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲の文言上の範囲および均等の意味の範囲内での変更が含まれることが意図される。