【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成27年8月11日にthe 14th edition of the IEEE/RAS−EMBS International Conference on Rehabilitation Robotics (ICORR2015)にて発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、脳科学研究戦略推進プログラム「BMIリハビリテーションのための上肢・下肢外骨格ロボットの開発と制御」委託研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された構成では、エンコーダが、ロボットハンドの関節構造の可動部の外部に設けられている。このため、関節構造の外部から衝撃等の外力が加わった場合に、エンコーダが故障する可能性が高い。特に、介護ロボットや外骨格型ロボットの場合には、関節構造に人や環境が頻繁に接触することが予想されるため、関節構造の軸受に対して外部に配置するエンコーダの故障の可能性はより高まるものと考えられる。このことは、メンテナンスの手間が増えることになり、好ましくない。さらに、従来の産業用ロボットとは異なり、介護ロボットや外骨格型ロボットの場合には、使用者の負荷軽減のためにロボット自体を軽量かつコンパクトに構成する必要があり、剛性を高くすることができないことが多い。ロボットを構成するリンクおよび関節は、軽量化のために軽金属・エンジニアリンクプラスチック樹脂・および繊維強化ナイロンなどで構成されることが多い。意図的に剛性を低くすることで、過剰な負荷がかかった場合にもロボット側が変形することで安全性を担保する等、関節構造の内部が大きく変形することが想定される。しかし、その一方で、外骨格型ロボットを安全に制御するには、エンコーダの情報を確実に取得する必要があり、これらは相反する技術課題であった。
【0007】
また、特許文献1に開示された構成では、エンコーダの厚みを薄くすることができるものの、エンコーダを設けた分だけ、関節構造のサイズが軸方向に大きくなることに変わりはない。さらに、エンコーダにかかる応力を受けるために、関節構造の軸受とは別にエンコーダ用の軸受部品が設けられている。これにより、部品点数と組み立て工数が増加し、関節構造の重量も増加する。このため、関節構造全体をコンパクトかつ軽量に実現することが困難である。
【0008】
また、ロボットの関節構造には、フレーム等の他の部材と容易に分離・連結させることができ、かつ、連結した他の部材がぐらつくことなく位置決め精度良く固定されるような連結構造が求められている。
【0009】
特許文献3に開示された構成では、関節構造がフレーム材と分離・連結可能であるものの、正確な位置決めのためには位置決めピンなどの部品が必要である。これにより、加工および組み立て工数が増えることになり、好ましくない。
【0010】
前記の問題に鑑み、本発明は、例えばロボットの関節構造として用いられる、エンコーダを有する回転構造について、外力によるエンコーダの故障を未然に防止し、かつ、コンパクトかつ軽量に部品数少なく実現可能にすることを目的とする。また、本発明は、回転構造について、他の部材を精度良く容易にかつ確実に分離・連結可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1態様は、回転構造であって、基部部材と、前記基部部材に一端が固定され、当該回転構造の軸方向に延びる軸体と、前記軸体に軸受を介して取り付けられており、前記軸体周りに回動可能である回転部材と、前記回転部材の回転角を検出するエンコーダとを備え、当該回転構造内部における前記軸体の周りにおいて、前記基部部材と前記回転部材とが対向している中空部が形成されており、前記エンコーダは、前記中空部において、前記軸体の周りに、前記回転部材および前記基部部材の一方と一体となって回転するように設けられており、周方向において物理量が変化する被検出体と、前記被検出体の物理量を検出可能であり、前記中空部において、前記被検出体の物理量を検出できる位置に、前記回転部材および前記基部部材の他方と一体となって回転するように設けられた検出部とを有している。
【0012】
この構成によると、回転構造内部における回転軸の外周側周方向に、基部部材と回転部材とが対向している中空部が形成されている。エンコーダは、周方向において物理量が変化する被検出体と、被検出体の物理量を検出可能な検出素子とを有している。中空部において、被検出体は、軸体の周りに、回転部材および基部部材の一方と一体となって回転するように設けられており、検出部は、被検出体の物理量を検出できる位置に、回転部材および基部部材の他方と一体となって回転するように設けられている。これにより、被検出体または検出部が、回転部材の回転に伴って軸体周りに回転するため、検出部の出力から回転部材の回転角を検出することができる。このように、回転構造の内部に形成された中空部にエンコーダを設けることができるので、たとえ回転構造の外部から衝撃等の外力が加わったとしても、エンコーダが故障する可能性は格段に低い。また、エンコーダを保護するケースが不要となる。また、エンコーダが回転構造の内部に設けられるため、回転構造をコンパクトに実現することができる。また、エンコーダ用の軸受は回転構造の軸受と共通化でき、エンコーダ用のケーシング機能が回転構造部品によって達成されているため、部品点数を減らすことができ、組立工数の削減と軽量化が実現できる。
【0013】
本発明の第2態様は、第1態様において、前記基部部材と前記回転部材との間に、前記軸体を囲むように設けられた、環状のスラスト軸受を備え、前記中空部は、前記スラスト軸受の内周面と前記軸体の外周面との間に、形成されている。
【0014】
この構成によると、エンコーダは、基部部材と回転部材との間のスラスト軸受の内周面と、軸体の外周面との間に形成されている中空部に、設けられる。これにより、エンコーダを設けるための中空部を新たに形成する必要がなく、回転構造を確実にコンパクトに実現することが可能となる。
【0015】
本発明の第3態様は、第1または第2態様において、前記エンコーダは、光学式のエンコーダであって、前記被検出体は、周方向において、光反射率が周期的に変化するように目盛りが付されている反射式スケール、または、周方向において、光透過率が周期的に変化するように目盛りが付されている透過式スケールであり、前記検出部は、前記反射式スケールまたは前記透過式スケールに光を照射し、反射光または透過光を受け、反射光または透過光に応じた電気信号を出力する検出素子である。
【0016】
この構成によると、エンコーダはベルトやギアなどの伝達要素を用いることなく回転角度を計測可能であるため、バックラッシュに起因した誤差が生じることがなく、回転部材の回転角を正確に検出することができる。
【0017】
本発明の第4態様は、第1または第2態様において、前記エンコーダは、光学式のエンコーダであって、前記被検出体は、周方向において、光反射率が周期的に変化するように目盛りが付されている反射式スケール、または、周方向において、光透過率が周期的に変化するように目盛りが付されている透過式スケールであり、前記検出部は、前記反射式スケールまたは前記透過式スケールに光を照射する送光用光ファイバと、反射光または透過光を受ける受光用光ファイバとを備えたものである。
【0018】
この構成によると、エンコーダはベルトやギアなどの伝達要素を用いることなく回転角度を計測可能であるため、バックラッシュに起因した誤差が生じることがなく、回転部材の回転角を正確に検出することができる。さらに、当該回転構造の内部に電子回路を用いずに光学回路のみによってエンコーダを構成することができるので、例えばfMRI(functional magnetic resonance imaging)スキャナ等の内部で当該回転構造を使用する場合において、強い磁場が発生しており電子回路のノイズが問題になる場合や、水中もしくは高温多湿の環境で電子回路が使えない状況であっても、エンコーダを機能させることができる。
【0019】
本発明の第5態様は、第2態様において、前記被検出体と前記検出部とは、軸方向において対向しており、軸方向において、前記被検出体と前記検出部との間のスペースは、前記スラスト軸受が設けられた範囲と、重なりを有している。
【0020】
この構成によると、被検出体と検出部に所定の幅が必要な場合、軸方向において、スラスト軸受が配置される幅の少なくとも一部が共有されるため、軸体を軸方向において短くできるので、当該回転構造をコンパクトに構成できる。
【0021】
本発明の第6態様は、第2態様において、前記スラスト軸受は、シールド形ベアリングまたはシール付きベアリングである。
【0022】
この構成によると、例えば粉塵が多い環境で使用する場合であってもエンコーダへの異物侵入を阻止することができるので、ゴミ・ほこり等の影響を低減することができる。
【0023】
本発明の第7態様は、第1態様において、前記中空部は、当該回転構造の外部に対し密閉されている。
【0024】
この構成によると、水中や高温多湿の環境、もしくは高圧下の環境であっても、エンコーダを機能させることが可能となる。
【0025】
本発明の第8態様は、第1態様において、前記エンコーダは、光学式のエンコーダであり、前記中空部は、当該回転構造の外部から光が入らないように、遮光されている。
【0026】
この構成によると、エンコーダによる回転角検出において、外からの光によるノイズを防ぐことができる。
【0027】
本発明の第9態様は、第1〜8態様のうちいずれか1つにおいて、前記軸体は、軸方向に貫通している中空構造を有している。
【0028】
この構成によると、軸体の中空構造に配線を通過させる、いわゆる軸内配線を実現することができる。
【0029】
本発明の第10態様は、第1〜9態様のうちいずれか1つにおいて、前記基部部材および前記回転部材のうち少なくともいずれか一方は、前記軸体の周方向における外周面に、他の部材を連結するための平面である連結面が形成されており、前記連結面は、断面形状が逆T字状である溝部が形成されている。
【0030】
この構成によると、基部部材または回転部材の連結面に、断面形状が逆T字状の溝部が形成されている。この溝部を用いて、T字形のくさび部材を用いたくさび連結方式によって、回転構造に他の部材を容易に連結させることができる。
【0031】
本発明の第11態様は、第10態様において、前記他の部材は、でっぱりのある頭部と、貫通孔が形成された胴部とを有するT字形のくさび部材を用いて、前記連結面に連結されるものであり、前記くさび部材は、連結の際に、前記頭部が前記溝部に挿入され、前記胴部が、前記他の部材の端面に形成された穴に挿入され、前記貫通孔を通る、テーパー部分を有するねじによって前記他の部材に固定された状態になり、前記基部部材および前記回転部材のうち少なくともいずれか一方は、前記連結面の表面に、連結の際に前記他の部材の側面に当接する、突起部が形成されている。
【0032】
この構成によると、回転構造に他の部材を連結させた際に、連結面の表面に形成された突起部が他の部材の側面に当接するので、連結された他の部材のぐらつきを防止し、なおかつ回転構造と部材とを正確に位置決めできる。
【0033】
本発明の第12態様は、回転構造であって、基部部材と、前記基部部材に一端が固定され、当該回転構造の軸方向に延びる軸体と、前記軸体に軸受を介して取り付けられており、前記軸体周りに回動可能である回転部材と、前記軸体を囲むように設けられており、内周面に前記回転部材が当接し、外周面に前記基部部材が当接する、環状のクロスローラ軸受と、前記回転部材の回転角を検出するエンコーダとを備え、当該回転構造内部における前記軸体の周りにおいて、前記基部部材と前記回転部材とが対向している中空部が形成されており、前記エンコーダは、前記中空部において、前記軸体の周りに、前記回転部材および前記基部部材の一方と一体となって回転するように設けられており、周方向において物理量が変化する被検出体と、前記被検出体の物理量を検出可能であり、前記中空部において、前記被検出体の物理量を検出できる位置に、前記回転部材および前記基部部材の他方と一体となって回転するように設けられた検出部とを有している。
【0034】
この構成によると、回転構造内部における回転軸の周りにおいて、基部部材と回転部材とが対向している中空部が形成されている。エンコーダは、周方向において物理量が変化する被検出体と、被検出体の物理量を検出可能な検出素子とを有している。中空部において、被検出体は、軸体の周りに、回転部材および基部部材の一方と一体となって回転するように設けられており、検出部は、被検出体の物理量を検出できる位置に、回転部材および基部部材の他方と一体となって回転するように設けられている。これにより、被検出体または検出部が、回転部材の回転に伴って軸体周りに回転するため、検出部の出力から回転部材の回転角を検出することができる。このように、回転構造の内部に形成された中空部にエンコーダを設けることができるので、たとえ回転構造の外部から衝撃等の外力が加わったとしても、エンコーダが故障する可能性は格段に低い。また、エンコーダを保護するケースが不要となる。また、エンコーダが回転構造の内部に設けられるため、回転構造をコンパクトに実現することができる。また、スラスト荷重に加えてラジアル荷重も受けることができるクロスローラ軸受を用いることによって、部品点数を減らすことができ、回転構造をよりコンパクトに実現することができる。さらに、クロスローラ軸受の内周面に回転部材が当接し、クロスローラ軸受の外周面に基部部材が当接するように構成しているため、より径の大きなクロスローラ軸受を利用することができ、回転部材がより大きな力を受けられることに加え、エンコーダをより外周側に配置できるようになるため、回転角の解像度を高くすることができる。
【0035】
本発明の第13態様は、回転構造であって、基部部材と、前記基部部材に一端が固定され、当該回転構造の軸方向に延びる軸体と、前記軸体に軸受を介して取り付けられており、前記軸体周りに回動可能である回転部材とを備え、前記基部部材および前記回転部材のうち少なくともいずれか一方は、前記軸体の周方向における外周面に、他の部材を連結するための平面である連結面が形成されており、前記連結面は、断面形状が逆T字状である溝部が形成されており、前記他の部材は、でっぱりのある頭部と、貫通孔が形成された柄部とを有するT字形のくさび部材を用いて、前記連結面に連結されるものであり、前記くさび部材は、連結の際に、前記頭部が前記溝部に挿入され、前記柄部が、前記他の部材の端面に形成された穴に挿入され、前記貫通孔を通る、テーパー部分を有するねじによって前記他の部材に固定された状態になり、前記基部部材および前記回転部材のうち少なくともいずれか一方は、前記連結面の表面に、連結の際に前記他の部材の側面に当接する、突起部が形成されている。
【0036】
この構成によると、基部部材または回転部材の連結面に、断面形状が逆T字状の溝部が形成されている。この溝部を用いて、T字形のくさび部材を用いたくさび連結方式によって、回転構造に他の部材を容易に連結させることができる。さらに、回転構造に他の部材を連結させた際に、連結面の表面に形成された突起部が他の部材の側面に当接するので、連結された他の部材のぐらつきを防止することができる。
【0037】
本発明の第14態様は、アシストシステムであって、基部と、基部部材と、前記基部部材に一端が固定された軸体と、前記軸体に軸受を介して取り付けられており、前記軸体周りに回動可能である回転部材と、前記回転部材の回転角を検出するエンコーダとを有しており、前記基部部材が前記基部に連結された、回転構造と、前記回転部材に連結されたフレームを有し、利用者の腕を支持するための支持体と、供給される空気圧に応じて、前記基部に対する前記支持体の位置を調整可能なように設けられた空気圧シリンダと、前記回転構造の前記エンコーダによって検出された回転角を基にして、前記空気圧シリンダの空気圧を制御する制御部とを備えたものである。
【0038】
この構成によると、回転構造の基部部材が基部に連結されている。そして、利用者の腕を支持するための支持体は、回転構造の回転部材に連結されたフレームを有している。空気圧シリンダは、供給される空気圧に応じて、基部に対する支持体の位置を調整する。制御部は、回転構造のエンコーダによって検出された回転角を基にして、空気圧シリンダの空気圧を制御する。したがって、制御部による制御によって、支持体を、基部に対して所望の角度に動作させることができる。
【0039】
本発明の第15態様は、第14態様のアシストシステムが、前記回転構造として、第1〜12態様のうちいずれか1つの回転構造を備えている。
【0040】
この構成によると、回転構造について、エンコーダが外力によって故障する可能性が格段に低減することになり、かつ、回転構造をコンパクトに実現可能になる。
【0041】
本発明の第16態様は、第1〜13態様のうちいずれか1つの回転構造を、関節構造として備えたロボットである。
【発明の効果】
【0042】
本発明によると、エンコーダを備えた回転構造について、外力によるエンコーダの故障や読み取り不良を未然に防止することができ、かつ、コンパクトに少ない部品点数で実現することができる。また、本発明によると、回転構造に他の部材を、容易に、確実に、高い剛性で、かつ精度良く連結させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0045】
図1Aは実施形態に係る回転構造10の概略外観図である。本実施形態で説明する回転構造は、例えばロボットの関節構造として用いられる。なお、ロボット以外の用途にも利用してもよい。回転構造10は、基部部材11と、基部部材11に一端が固定され、回転構造10の軸方向に延びる軸体12と、軸体12が通る孔13Aが形成されており、軸体12に軸受を介して取り付けられた回転部材13とを備えている。回転部材13は軸体12周りに回動可能である。ここでは軸体12は、軸方向に貫通している中空構造を有しているものとする。また、回転構造10には、後述するように、その内部に回転部材13の回転角を検出するエンコーダが内蔵されている。基板18はエンコーダの検出信号を回転構造10から出力する。基板18は、フレキシブル基板(FPC(Flexible Printed Circuit))としてもよい。
【0046】
フレーム14が基部部材11に連結されており、フレーム15が回転部材13に連結されている。フレーム14,15は、例えばロボットのアームとなる。ここでは、フレーム14,15は、後述するくさび連結方式によって、基部部材11および回転部材13にそれぞれ連結されている。くさび連結方式の詳細については後述する。また、回転構造10は、基部部材11側を固定して回転部材13を回転させるように用いてもよいし、回転部材13側を固定して基部部材11および軸体12を回転させるように用いてもよい。
【0047】
図2は
図1Aの回転構造10の模式断面斜視図である。基部部材11は、例えばねじなどによって軸体12に固定されている。基部部材11と軸体12は一体化した部品としてもよい。軸体12は中空構造であり、軸方向において貫通している。回転部材13は、軸受16を間に挟んで軸体12に取り付けられている。すなわち、回転部材13の孔13Aに軸体12が挿通されており、軸体12の外周面12Aと孔13Aの内周面との間に、環状の軸受16が設けられている。また、基部部材11と回転部材13との間に、環状のスラスト軸受17が設けられている。スラスト軸受17は、ハウジング軌道盤17Aと、軸軌道盤17Bと、ころがり軸受17Cとから構成される。スラスト軸受17は、基部部材11における回転部材13と対向する側の面上に設けられており、ハウジング軌道盤17Aが、回転部材13の基部部材11側表面に当接している。回転部材13が軸体12周りを回転するとき、ハウジング軌道盤17Aがころがり軸受17C上を摺動する。
【0048】
そして、環状のスラスト軸受17の内周面17Dと、軸体12の外周面12Aとの間に、基部部材11と回転部材13とが対向している中空部Xが形成されている。中空部Xは、軸体12の周りに、ここでは環状に形成されている。この中空部Xに、回転部材13の回転角を検出するエンコーダ20が設けられている。
【0049】
エンコーダ20は、ここでは光学反射式のエンコーダである。エンコーダ20は、被検出体の一例である反射式スケール21と、検出部の一例としての検出素子22とを備えている。反射式スケール21は環状であり、中空部X内において、スラスト軸受17を構成するハウジング軌道盤17Aと一体に構成された部材17A‘の表面に固定されている。反射式スケール21は、回転部材13に、軸体12と同心に設けられている。検出素子22は、中空部X内において、基部部材11の表面における反射式スケール21の一部と対向する位置に配置されている。反射式スケール21は、その表面に、周方向において光の反射率が周期的に変化するように、目盛りが形成されている。検出素子22は、光を投射し、反射式スケール21における反射光を受け、反射光に応じた電気信号を基板18に送る。ここで、基板18は基部部材11に配置され、基板18上には電気信号を取り出すためのコネクタ18Aが設けられている。また、軸体12の先端に雄ねじ部12Bが設けられており、ナット23が回転構造10を保持している。
【0050】
図3は回転構造10を分解した状態を示す図である。
図3では、エンコーダ20の構成を分かりやすく示すために、回転部材13を外した状態を示している。なお、反射式スケール21が配置される位置を破線で示している。検出素子22は、スラスト軸受17の内周面17Dと軸体12の外周面12Aとの間に、回転部材13側に投光する向きに設けられている。検出素子22の配線23は、スラスト軸受17の下側を通り、基板18に接続されている。検出素子22および配線23の位置決めは、例えば、基部部材11に取り付け用の溝を形成することで行えばよい。反射式スケール21の位置決めは、例えば、位置決めピンなどを用いて行えばよい。
【0051】
このような構成により、回転構造10内部における軸体12の外周側周方向に、基部部材11と回転部材13とが対向している環状の中空部Xが形成されている。エンコーダ20は、環状の反射式スケール21と、検出素子22とを有している。中空部Xにおいて、反射式スケール21は、回転部材13に、軸体12と同心に設けられており、検出素子22は、基部部材11の、反射式スケール21の一部と対向する位置に設けられている。回転部材13に設けられた反射式スケール21が、回転部材13の回転に伴って軸体12周りに回転するため、検出素子22の検出信号から回転部材13の回転角を検出することができる。このように、回転構造10の内部に形成された中空部Xにエンコーダ20を設けることができるので、ケースを用いることなく外部との接触を防止することが可能である。また、たとえ回転構造10の外部から衝撃等の外力が加わったとしても、エンコーダ20が故障する可能性は格段に低い。また、エンコーダ20を固定する部品として、回転構造を構成するスラスト軸受17を利用しており、部品点数および組立工数の削減が可能である。また、エンコーダ20が回転構造10の内部に設けられるため、回転構造10をコンパクトに実現可能になる。すなわち、エンコーダ20を備えた回転構造10について、エンコーダ20が外力により故障する可能性を格段に低減させることができ、部品点数および組立工数の削減を実現でき、かつ、コンパクトに実現することができる。
【0052】
また、上の構成では、エンコーダ20が、回転構造10内部の、スラスト軸受17が潤滑する2つの面の間で、軸受16の近傍に設けられている。このため、基部部材11が例えば外力を受けて軸体12等に対して歪んだ場合であっても、回転角の測定誤差が、エンコーダを回転構造の外部に設けた場合と比べて小さくなる。さらに、スケール21と検出素子22が軸軌道盤17Bとハウジング軌道盤17Aに隣接しており、基部部材11と回転部材13に外力が加わりスラスト軸受17が応力を受けた状況でも、スケール21と検出素子22との間の対向距離はほとんど変化しない。このため、外力が加わる状況でも安定して、回転部材13の軸体12に対する回転角を安定して検出できる。すなわち、本実施形態の構成により、回転角の測定精度が高くなるという効果も得られる。
【0053】
また、上の構成では、スケール21と検出素子22とが、軸方向において対向しており、軸方向において、スケール21と検出素子22との間のスペースは、スラスト軸受17が設けられた範囲と、重なりを有している。これにより、スケール21と検出素子22に所定の幅が必要な場合、軸方向において、スラスト軸受17が配置される幅の少なくとも一部が共有されるため、軸体12を軸方向において短くできるので、回転構造1をコンパクトに構成できる。
【0054】
また、上の構成では、エンコーダ20は、基部部材11と回転部材13との間のスラスト軸受17の内周面17Dと、軸体12の外周面12Aとの間に形成されている中空部Xに、設けられている。これにより、エンコーダ20を設けるための中空部を新たに形成する必要がなく、回転構造10を確実にコンパクトに実現することが可能となる。
【0055】
また、上の構成では、エンコーダ20として光学式のエンコーダが用いられており、スケール21は回転部材13と一体となって回転するように設けられており、検出素子22は基部部材11および軸体12と一体となって回転するように設けられている。このため、回転をベルト・ギア・カップリング等の伝達部品を介して外付けエンコーダで計測する方式に比べて、バックラッシュや滑りに起因した誤差が生じることがなく、回転部材13の軸体12に対する回転角を正確に検出することができる。
【0056】
また、上の構成では、エンコーダ20を内蔵した回転構造10の軸体12を中空構造にすることができるので、軸体12の中空構造に配線を通過させる、いわゆる軸内配線を実現することができる。なおもちろん、中空構造を有しない軸体を用いてもかまわない。
【0057】
なお、上の構成では、エンコーダ20について、反射式スケール21は回転部材13側に設けられ、検出素子22は基部部材11側に設けられているものとしたが、反射式スケール21と検出素子22の位置は、入れ替わってもよい。すなわち、反射式スケール21が基部部材11側に設けられ、検出素子22が回転部材13側に設けられていてもよい。この場合、基板18は回転部材13側に配置されるため、エンコーダ20の配線を回転部材13側で取り出すことが可能になる。
【0058】
また、上の構成では、エンコーダ20は光学反射式であるものとしたが、これに限られるものではない。例えば、光学透過式であってもよい。この場合は、被検出体の一例として、周方向において光の透過率が周期的に変化する透過式スケールを用いて、発光部および受光部を備えた検出素子を、透過式スケールの一方の面側から発光した光を他方の面側で受光するように、配置すればよい。その他にも、エンコーダは例えば磁気方式や電気抵抗方式であってもよい。例えば、磁気方式のエンコーダは、周方向に磁力の変化するスケールと磁力を検出するホール素子等の検出素子とで構成することができる。例えば、磁気方式のエンコーダとして、AVAGO社製のマグネッティックエンコーダ(型番:AEAT-6600-T16等)を利用することができる。また、磁気方式のエンコーダとして、レゾルバ(例えば、多摩川精機株式会社製:Singlsyn(登録商標)等)を利用することもできる。すなわち、エンコーダを構成する被検出体は、周方向において物理量が変化するものであればよく、検出素子は被検出体の物理量を検出可能なものであればよい。
【0059】
また、上の構成では、中空部Xにおいて、エンコーダ20を構成するスケール21と検出素子22とはスラスト面で対向しているものとしたが、この他にも例えば、軸体12の外周面12Aとスラスト軸受17の内周面17Dとにおいて、スケール21と検出素子22とを対向させる構成としてもよい。
【0060】
また、中空部Xは、エンコーダ20を構成するスケール21と検出素子22とが対向する空間が確保されていればよく、例えば、環状の一部の空間であってもよい。すなわち、扇状に構成されていてもよい。
【0061】
また、エンコーダ20が光学式のものである場合には、中空部Xは、回転構造10の外部から光またはゴミ・ほこり等が入らないように、シールドまたはシールされていることが好ましい。例えば、
図2の構成において、スラスト軸受17として、シールド形ベアリングを使用すれば、粉塵が多い環境で使用する場合であってもエンコーダ20への異物侵入を阻止することができるので、ゴミ・ほこり等の影響を低減することができる。さらに、軸受16およびスラスト軸受17についてシール付きベアリングを使用し、基板18とスラスト軸受17の間をシールし、基部部材11と軸体12との間をシールすれば、中空部Xが外部に対し密閉される構造になる。これにより、ゴミ・ほこり等の影響を低減する効果に加え、水中や高温多湿の環境、もしくは高圧下の環境であっても、エンコーダ20を機能させることが可能となる。なお、シール付きスラスト軸受に関しては、特許文献4等に開示されている。
【0062】
さらに、軸受16またはスラスト軸受17に潤滑油を使用する場合は、シールド形ベアリングまたはシール付きベアリングを利用することによって、ベアリング内部の潤滑油が反射式スケール21や検出素子22に付着してエンコーダ20が機能しなくなるという問題も回避できる。また、エンコーダが磁気式・電気誘導式の場合は、ベアリング内部で発生する磁性体粉による電磁気回路への影響も低減できる。さらに、中空部Xは、回転構造10自体により遮光されており、エンコーダ20による回転角検出において、外からの光によるノイズを防ぐことができる。さらに、シールド形ベアリングまたはシール付きベアリングを使用することにより、開放形ベアリングと比較して、より高い遮光率が実現できる。
【0063】
また、反射式または透過式の光学式エンコーダの場合には、基板、検出素子および配線を回転構造の外部に配置し、回転構造の内部に光ファイバを配置して、スケールに対する投光および受光を行うことも可能である。この場合には、回転構造に内蔵するエンコーダの構成要素から、金属を省くことが可能になる。これにより、基部部材11や樹脂製のベアリングやブッシュ等を軸受部品として用いることによって、回転構造10全体を、金属を用いずに構成することが可能になる。さらに、非磁性体で構成することによって、fMRI(functional magnetic resonance imaging)装置など強磁場の中でも、回転構造10の角度情報のセンシングが可能である。
【0064】
図4は透過式の光学式エンコーダと光ファイバを用いた回転構造の模式断面図である。
図2と共通の構成要素には
図2と同一の符号を付しており、ここではその詳細な説明を省略する。
図4の構成において、透過式スケールであるスリット26が、スラスト軸受17を構成するハウジング軌道盤17Aと一体に構成されている。そして、送光用光ファイバ24が、スリット26の基部部材11側に設けられており、受光用光ファイバ25が、スリット26の回転部材13側に設けられている。送光用光ファイバ24および受光用光ファイバ25は、軸体12外周面に固定された支持部材27によって支持されている。すなわち、
図4の構成では、検出部が、被検出体の一例である透過式スケールに光を照射する送光用光ファイバ24と、透過光を受ける受光用光ファイバ25とを備えたものとなっている。なお、送光用光ファイバ24をスリット26の回転部材13側に設けて、受光用光ファイバ25をスリット26の基部部材11側に設けるようにしてもよい。また、被検出体として反射式スケールを用いる場合には、検出部は、反射式スケールに光を照射する送光用光ファイバと、反射光を受ける受光用光ファイバとを備えたものとすればよい。
【0065】
また、検出素子22の信号送受信は、無線モジュールを用いて行うことも可能である。この場合は、配線23は不要になる。
【0066】
また、上の構成では、エンコーダ20は、スラスト軸受17の内周面17Dと軸体12の外周面12Aとの間に形成された中空部Xに設けられるものとしたが、これに限られるものではない。すなわち、回転構造の内部において、基部部材と回転部材とが対向している中空部であれば、上の構成と同様にエンコーダを設けることが可能である。例えば、エンコーダ20を設けるための中空部を、別途形成するようにしてもよい。
【0067】
また、上の構成では、回転構造10の平面形状(軸方向に見た形状)は、ほぼ円形であるが、回転構造の平面形状はこれに限られるものではない。例えば、回転構造の平面形状は、六角形などの多角形であってもよいし、楕円形であってもよい。
【0068】
<くさび連結方式>
回転構造10とフレーム14,15との連結構造について説明する。なお、以下で説明する連結構造は、上述した回転構造10以外の回転構造にも適用可能である。
【0069】
図1Aにもどり、回転部材13とフレーム15とは、T字形のくさび部材31(太破線で図示)によって連結されている。
図1Bに示すように、軸体12の周方向における回転部材13の外周面には、フレーム15を連結するための平面である連結面32が形成されており、連結面32には、軸方向と垂直をなす方向に延びる溝部32Aが形成されている。溝部32Aの断面形状は、逆T字状になっている。ねじ33は、くさび部材31をフレーム15に固定するとともに、フレーム15への挿入によってくさび部材31をフレーム15側に引っ張る機能を有する。
【0070】
図5Aおよび
図5Bはくさび連結方式の詳細を示す模式断面図である。
図5Aおよび
図5Bでは、T字形のくさび部材31を用いて、部材Aと部材Bとを連結する。例えば
図1Aでは、回転部材13が部材Aに相当し、他の部材の一例であるフレーム15が部材Bに相当する。くさび部材31は、でっぱりのある頭部31aと、胴部31bとを有している。部材Aの連結面32には、断面形状が逆T字形の溝部32Aが形成されている。この溝部32Aに、くさび部材31の頭部31aが挿入される。くさび部材31の胴部31bには、当該くさび部材31の軸方向と垂直をなす方向に貫通する貫通孔31Aが形成されている。また、部材Bには、くさび部材31を挿入するための穴35Aが形成されている。さらに、穴35Aと連通し、くさび部材31を挿入する方向と垂直をなす方向に貫通する孔35B,35Cが形成されている。この孔35B,35Cにねじ33が挿入される。例えば、孔35Cにねじ33と螺合するねじ山が切られている。
【0071】
図5Bに示すように、部材Aの溝部32Aに頭部31aが挿入されたくさび部材31を部材Bの穴35Aに挿入し、ねじ33を部材Bの孔35Bに挿入する。ねじ33のテーパー部分33Aが、くさび部材31の孔31Aの部材B側のテーパー状の内周面31Bに当接し、ねじ33を締めることによって、くさび部材31は部材Bの方に引っ張られる。これにより、部材Aと部材Bとが強い力で互いに押しつけられることになり、部材Aと部材Bとが連結固定される。ここで、部材Aの連結面32と孔31Aの中心線との間の間隔WAは、連結面32と当接する部材Bの面と孔35Cの中心線との間の間隔WBよりも、わずかに短くなるように設定する。
【0072】
すなわち、部材Bは、でっぱりのある頭部31aと、貫通孔31Aが形成された胴部31bとを有するT字形のくさび部材31を用いて、連結面32に連結されるものであり、くさび部材31は、連結の際に、頭部31aが溝部32Aに挿入され、胴部31bが、部材Bの端面に形成された穴35Aに挿入され、貫通孔31Aを通る、テーパー部分33Aを有するねじ33によって部材Bに固定された状態になる。上述したような連結構造によって、回転構造10とフレーム14,15とを、容易に連結させることができる。また、複数個の回転構造10を容易に連結することができる。
【0073】
図6はフレーム15の端面15Aの形状と、端面15Aが回転部材13と連結した状態を示す図である。フレーム15の端面15Aには、くさび部材31を挿入するための穴35Aが開口している。回転部材13の連結面32表面に、突起部36が形成されている。
図6では、突起部36は、平面形状が矩形である4個の突起からなるものとしている。突起部36は、フレーム15を回転部材13に連結したとき、フレーム15の側面に当接するように形成されている。これにより、フレーム15を回転部材13に連結した際のぐらつきを防止することができる。
【0074】
なお、
図6に示したフレーム15の端面形状はあくまでも一例であり、他の端面形状であってもかまわない。また、
図6では、突起部36は、平面形状が矩形状である4個の突起からなるものとして図示しているが、連結面32表面に形成する突起部の形状や個数は、これに限られるものではない。すなわち、連結の際に、フレームの側面に当接する突起部であれば、どのような形態のものであってもよい。また、ここで説明したくさび連結方式は、先に説明したエンコーダ構造を備えた回転構造以外の回転構造にも適用可能であることはいうまでもない。
【0075】
また、
図1Aおよび
図6に示すように、フレーム15の側面にも、断面形状が逆T字形である溝部15Bが形成されている。この溝部15Bを利用して、上述したくさび連結方式を用いることによって、他の部材をフレーム15に容易に連結することができる。さらに、溝部15Bの長手方向におけるくさび部材の位置を調整することによって、フレーム15に対する他の部材の連結位置を容易に調整することができる。
【0076】
<回転構造の利用例>
以下に、上述した回転構造を利用したシステム構成の一例について説明する。
【0077】
(その1:肩アシストシステム)
図7は肩アシストシステムの構成例を示す斜視図である。
図7の肩アシストシステム1は、上述した回転構造10を備えている。アシストシステムの一例である肩アシストシステム1は、支柱2と、支柱に固定されたプレート3と、利用者の腕を支持するための支持体4とを備えている。支柱2およびプレート3がアシストシステムにおける基部に相当する。そして、上述した回転構造10が、プレート3に固定されている。回転構造10の基部部材11がプレート3に連結されており、支持体4を構成するフレーム41が、回転構造10の回転部材13に連結されている。
【0078】
支柱2には、伸縮自在のロッド6を有する空気圧シリンダ5が取り付けられている。空気圧シリンダ5は、支柱2に取り付けられた箇所を中心軸として、支持体4の回転平面と平行に回転可能になっている。空気圧シリンダ5は、供給される空気圧に応じて内蔵するピストンを動作させ、ロッド6を往復運動させる。ロッド6の先端は、支持体4を構成する部材42に回動可能なように取り付けられている。ロッド6の往復運動によって、支持体4が、回転構造10の軸体12の周りを回転する。支持体4の回転角は、回転構造10に内蔵されたエンコーダ20によって検出可能である。ここでは、支持体4の回転角を示す電気信号が基板18から出力される。制御部(図示せず)は、基板18から出力される電気信号を受け、エンコーダ20によって検出された回転角を基にして、空気圧シリンダ5の空気圧を制御する。
【0079】
図8は
図7の肩アシストシステム1を実際に利用する状態を示す図である。
図8の状態では、支持体4が利用者Hの腕を支えている。なお、回転構造10の部分は、美観を保つためにカバー7で覆われている。
【0080】
この構成によると、回転構造10の基部部材11が、支柱2に固定されたプレート3に連結されている。そして、利用者の腕を支持するための支持体4は、回転構造10の回転部材13に連結されたフレーム41を有している。空気圧シリンダ5は、供給される空気圧に応じて、支柱2に対する支持体4の位置を調整する。制御部は、回転構造10のエンコーダ20によって検出された回転角を基にして、空気圧シリンダ6の空気圧を制御する。したがって、制御部による制御によって、支持体4を、支柱2に対して所望の角度に動作させることができる。
【0081】
なお、ここで説明したアシストシステムがアシストする対象は、肩に限られるものではなく、例えば、肘や手首をアシストするように構成することも可能である。また、
図7の構成では、空気圧シリンダ5は、本体が支柱2に取り付けられ、ロッド6の先端が支持体4を構成する部材42に取り付けられているが、空気圧シリンダ5の設置形態はこれに限られるものではない。
【0082】
また、
図7のアシストシステムでは、支持体4を構成するフレーム41と部材42,43との連結のために、上述したようなくさび連結方式が用いられている。フレーム41の側面(
図7における上下の面)には、断面形状が逆T字形である溝部が形成されており、この溝部に、フレーム41と部材42,43とを連結するためのくさび部材の頭部が挿入されている。このため、ねじ45,46を弛めた状態で、フレーム41の長手方向における部材42,43の位置調整を行うことができる。これにより例えば、利用者は自分が座っている側から、支持体4の長さを容易に調整することができる。
【0083】
またここでは、支持体4を駆動させるために空気圧シリンダ5を用いているため、回転構造10がバックドライバブルになっている。このため、人に対して安全なシステムになっている。また、空気圧シリンダ5は、空気圧を供給するバルブを閉じれば出力を維持でき、支持体4を支え続けられるため、エネルギー消費が少ない。なお、空気圧シリンダ5に代えて、他の方式のアクチュエータを用いてもよい。例えば、空気圧による駆動と電磁気力による駆動とを組み合わせたシリンダを用いてもかまわない。
【0084】
図9は肩アシストシステム1における幾何モデルを表す図である。
図9は正面図であり、回転構造10の軸体12の位置をP1、空気圧シリンダ5の回転軸の位置をP2、空気圧シリンダ5のロッド6の端部の位置をP3としている。位置P1−P3間の長さをa、位置P1−P2間の長さをb、位置P2−P3間の長さをcとする。長さa,bは固定、長さcはロッド6の伸縮により可変である。鉛直方向に対して支持体4が延びる方向がなす角度θが、回転構造10に内蔵されたエンコーダ20によって検出できるものとする。角度θ
0,θ
1は既知である。
【0085】
支持体4によって利用者Hの腕を持ち上げるトルクτは、空気圧シリンダ5の出力fを用いて、次のように表される。
【0087】
dはロッド6の実効モーメントアームであり、次のように表される。
【0091】
このように、支持体4の角度θからロッドの長さcを求め、ロッド6の実効モーメントアームdを求めることができる。したがって、ロッド6の伸縮長を直接検出しなくても、支持体4の角度θを検出することによって、ロッド6の実効モーメントアームdを求めることができる。また、支持体4の角度θから、重力補償トルクを容易に求めることができる。
【0092】
図10は肩アシストシステム1の制御系の一例を示すブロック図である。ここでは、空気圧シリンダ5は2バルブ式であるものとする。
図10において、PDコントローラ61は、支持体4の現在の角度θと所望の角度θ
*との差に従って、運動トルクを求める。重力補償部62は、支持体4の現在の角度θに基づいて、重力補償トルクを求める。シリンダ制御部63は、運動トルクと重力補償トルクとを加えることによって得られた所望のトルクτ
*から、空気圧シリンダ5に与える圧力p1
*,p2
*の出力を求める。なお、PDコントローラ61、重力補償部62およびシリンダ制御部63の機能は、例えばノートPC等によって実現することができる。
【0093】
また、
図11に示すように、物理的なスライダ構造を有するコントローラ73を用いて、肩アシストシステム1の制御を実現可能なように構成してもよい。例えば、ノートPC等のGUI(Graphic User Interface)71を、例えばMIDIドライバ72によってコントローラ73のスライド動作に同期させる。これにより、利用者や利用者の補助者による肩アシストシステム1の操作が容易になる。
【0094】
なお、ここで説明した肩アシストシステム1は、実施形態に係る回転構造以外の、エンコーダ付き回転構造を用いても、実現できることはいうまでもない。
【0095】
(その2:歩行アシストシステム)
図12は歩行アシストシステムの構成例を示す斜視図、
図13は歩行アシストシステムの実際の利用状態を示す図、
図14は歩行アシストシステムにおける回転構造周辺を示す分解斜視図である。
図12の歩行アシストシステム50は、上述した回転構造10を備えている。歩行アシストシステム50は、利用者の足首に固定するための治具51と、治具51に固定されており、前後方向に回動可能な靴部52と、治具51が固定されたフレーム53とを備えている。そして、フレーム53が回転構造10の基部部材11に連結されており、回転構造10の回転部材13が短いフレーム54に連結されている。フレーム54は靴部52の側面に固定されている。また、治具51は、回転構造10の軸体12にも固定される。
【0096】
55はボーデンケーブルであり、一端が、フレーム54に設けられたケーブル固定部56に固定される。57はケーブルカバーである。また、
図14に示すように、回転構造10の中には、上述したとおり、エンコーダ20を構成する反射式スケール21と検出素子22が、スラスト軸受17の内周面17Bと軸体12の外周面12Aとの間に、設けられている。エンコーダ20の検出信号は基板18から出力される。
【0097】
ここで、元の装具の関節はねじ部材58によって固定されているが、実施形態に係る回転構造10は、このねじ部材58を変更することなく容易に装着することができる。すなわち、
図14に示すように、回転構造10は軸体12が中空構造になっているため、ここに円筒形状の部材59を挿入することができる。この部材59は、回転部材13側からねじ部材58によって固定されるとともに、基部部材11側の外側からもねじ(図示せず)で締め込んで固定される。このようにして、回転構造10を装着することによって、歩行アシストシステムを容易に実現することができる。駆動源は、例えば、空圧アクチュエータ、モータ等である。
【0098】
なお、ここで説明した歩行アシストシステム50は、実施形態に係る回転構造以外の、エンコーダ付き回転構造を用いても、実現できることはいうまでもない。
【0099】
(その他)
図15は上述した回転構造を関節構造として用いたロボットの構成例である。
図15の例では、3自由度を持つロボットアームの構成を示している。3個の関節構造81,82,83は、それぞれ、上述した回転構造を備えている。関節構造81は、インナーケーブル91aを有するボーデンケーブル91によって駆動される。関節構造82は、インナーケーブル92aを有するボーデンケーブル92によって駆動される。関節構造83は、インナーケーブル93aを有するボーデンケーブル93によって駆動される。関節構造81,82,83は、ボーデンケーブル91,92,93によって、両方の回転方向に駆動することができる。
【0100】
また、上述した回転構造は、その他にも例えば、ゴニオメーターの回転軸部分に用いてもよいし、また、コイル巻線機の回転部分のような連続回転を行う機構部分に用いてもかまわない。
【0101】
<クロスローラ軸受を利用した回転構造>
上述の実施形態で開示した構成は、クロスローラ軸受を利用した回転構造にも適用することができる。クロスローラ軸受とは、スラスト荷重に加えてラジアル荷重も受けることができるものであり、かつ、コンパクトに構成されている。クロスローラ軸受を利用することによって、エンコーダを備えた回転構造をよりコンパクトに実現することができる。
【0102】
図16はクロスローラ軸受を用いた回転構造10Aの例を示す模式断面図である。基部部材11は、例えばねじなどによって軸体12に固定されている。基部部材11と軸体12は一体化した部品としてもよい。軸体12は中空構造であり、軸方向において貫通している。回転部材13は、軸受16を間に挟んで軸体12に取り付けられている。すなわち、回転部材13の孔13Aに軸体12が挿通されており、軸体12の外周面12Aと孔13Aの内周面との間に、環状の軸受16が設けられている。
【0103】
また、基部部材11と回転部材13との間に、環状のクロスローラ軸受101が設けられている。
図16の回転構造10Aでは、クロスローラ軸受101の内周面101Aに回転部材13が当接しており、クロスローラ軸受101の外周面に基部部材11が当接している。そして、軸体12の周りにおいて、基部部材11と回転部材13とが対向している中空部X1が形成されている。中空部X1は、ここでは環状に形成されている。この中空部X1において、クロスローラ軸受101の内周面101Aよりも内側に、回転部材13の回転角を検出するエンコーダ20が設けられている。
【0104】
エンコーダ20は、ここでは光学反射式のエンコーダである。エンコーダ20は、被検出体の一例である反射式スケール21と、検出部の一例としての検出素子22とを備えている。反射式スケール21は環状であり、中空部X1内において、回転部材13の表面に固定されている。検出素子22は、中空部X内1において、基部部材11の表面における反射式スケール21の一部と対向する位置に配置されている。検出素子22は、光を投射し、反射式スケール21における反射光を受け、反射光に応じた電気信号を基板18に送る。また、軸体12の先端に雄ねじ部12Bが設けられており、ナット23が回転構造10Aを保持している。
【0105】
回転構造10Aにおいて、クロスローラ軸受101の内周面101Aに回転部材13が当接し、クロスローラ軸受101の外周面に基部部材11が当接しているため、回転部材13がクロスローラ軸受101の外周面に当接して中空部を構成する場合と比較して、エンコーダ20が利用できる中空部X1の空間を、より大きくすることができる。このような構成により、径の大きなクロスローラ軸受101を用いることができる。さらに、スケール21をより外周に配置することによって、エンコーダ20の解像度を高くすることができる。
【0106】
また、
図16の構成でも、
図2に示した回転構造10と同様の作用効果が得られる。また、
図2に示した回転構造と同様に、反射式スケール21と検出素子22の位置は、入れ替わってもよい。すなわち、反射式スケール21が基部部材11側に設けられ、検出素子22が回転部材13側に設けられていてもよい。また、
図2に示した回転構造と同様に、エンコーダ20は光学反射式に限られるものではなく、例えば、光学透過式であってもよい。あるいは、磁気方式や電気抵抗方式であってもよい。すなわち、エンコーダを構成する被検出体は、周方向において物理量が変化するものであればよく、検出素子は被検出体の物理量を検出可能なものであればよい。
【0107】
なお、
図16の回転構造10Aにおいて、エンコーダ20の位置を、クロスローラ軸受101の内側にしてもよい。すなわち、軸方向において、対向しているスケール21と検出素子22との間のスペースが、クロスローラ軸受101が設けられた範囲と、重なりを有しているようにしてもよい。これにより、スケール21と検出素子22に所定の幅が必要な場合、軸方向において、クロスローラ軸受101が配置される幅の少なくとも一部が共有されるため、軸体12を軸方向において短くできるので、回転構造10Aをコンパクトに構成できる。
【0108】
図17は回転構造10Aにおいて回転部材13を外した状態を示す斜視図である。
図17では、反射式スケール21が配置される位置を破線で示している。検出素子22は、クロスローラ軸受101の内側に、回転部材13側に投光する向きに設けられている。検出素子22の配線は、クロスローラ軸受101の下側を通り、基板18に接続されている。基板18上には電気信号を取り出すためのコネクタ18Aが設けられている。検出素子22の位置決めは、例えば、基部部材11に取り付け用の溝を形成することで行えばよい。反射式スケール21の位置決めは、例えば、位置決めピンなどを用いて行えばよい。
【0109】
また、
図17では、基部部材11とフレーム14とを連結する連結面32の形状を示している。連結面32には、断面形状が逆T字状である溝部32Aが形成されており、また、フレーム14の側面に当接する突起部36が形成されている。また、連結面32の中央部37が外方へ膨出している。そして、この外方に膨出した中央部37の形状に合うように、フレーム14の端面の中央部14Aが凹みを有している。連結面32の中央部37を外方へ膨出させたことにより、回転構造10Aに、より径の大きいクロスローラ軸受101を設けることができるので、回転構造10Aの耐荷重を向上させることができる。