(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記固気分離機からの分離ガスのうち、前記返送系統に移行する量と、前記放散系統に移行する量の流量比を調整する流量比調整手段を備える請求項2記載の有機性廃棄物の処理装置。
前記固気分離機を粉粒体の貯留槽上部に設置し、前記固気分離機によって分離された粉粒体をそのまま貯留槽へ投入する構成とした請求項1記載の有機性廃棄物の処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(攪拌伝熱式装置)
前記のとおり、攪拌伝熱式装置は、複数の攪拌板を互いに接近させ、隣接するシャフトに設置された他方の攪拌板及びケーシングへ付着した乾燥原料を自動的に掻きとるクリーニング効果を生じさせる必要があるため、加工精度が高くなければならず、製造コストが高いという問題があった。また、運転によりディスクが損耗した場合は、前記したクリーニング効果を保持するために、定期的な補修が必要となり、補修コストが高く、補修期間も長いという問題もあった。
【0007】
(解砕機付き気流乾燥機)
前述のとおり、乾燥工程の有機性廃棄物は付着性に富むことから、これを改善するために、乾燥機から排出した乾燥物の一部を乾燥機の入口へ返送し、供給する有機性廃棄物と混ぜて、水分調整を行っている。この操作が必要なため、補機類の容量が大きくなるという問題があった。また、有機性廃棄物中には硬度が高い石などの異物が混入している場合があり、この異物が高速回転する解砕機のパドルと接触すると、解砕機が破損したり損傷したりする。そのため、定期的なメンテナンスや解砕機の交換が必要になるという問題もあった。また、乾燥処理のために熱風が必要であるが、前述したとおり乾燥物の一部を乾燥機に戻すため、処理量の増大につながり、結果より多くの熱風が必要となっている。
【0008】
そこで本発明の目的は、製造コストや補修コスト、ランニングコストが安く、小型の乾燥機を用いた処理装置を提供することにある。また、有機性廃棄物の処理工程で生じた分離ガスを有効利用する処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
(請求項1)
熱風を生成する熱風発生器と、
有機性廃棄物の脱水物と、前記熱風発生器からの熱風とを接触させ、前記脱水物を乾燥して粉粒体にする連続式熱風乾燥機と、
前記連続式熱風乾燥機からの排ガスに含まれる粉粒体を分離する固気分離機と、
前記固気分離機によって粉粒体と分離した分離ガスの一部を前記熱風発生器へ返送する返送系統と、
前記固気分離機から排出された粉粒体を貯留槽に空気輸送する空気輸送系統と、
を備え
、
前記空気輸送に用いた輸送用外気を前記熱風発生器に送り込む構成であることを特徴とする有機性廃棄物の処理装置。
【0010】
(作用効果)
固気分離機から排気した分離ガスの一部を熱風発生器へ返送し、熱風発生器で熱風にする構成とした。分離ガスの一部を返送することにより、熱風発生器へ新たな外気を送る必要性が減り、外気を送る送風ファンの容量や運転量を小さくすることができる。
粉粒体を貯留槽へ輸送する際に使用する外気を熱風発生器へ送り込む構成とした。輸送用外気を脱臭してから大気へ放散する場合と比べて、熱風発生器に新たな外気を送る送風ファンの容量や運転量を小さいものにすることができる。また、輸送用外気を脱臭する必要が無くなるため、輸送用外気脱臭用の脱臭器を設ける必要がなくなる。
【0011】
(請求項2)
前記分離ガスの残部を脱臭後に大気に放散する放散系統をさらに有する請求項1記載の有機性廃棄物の処理装置。
【0012】
(作用効果)
分離ガスの一部を熱風発生器へ返送し、残部を大気に放散する構成にしたため、固気分離機から排気した分離ガスの全てを脱臭し、大気に放散する場合と比べて、脱臭器で脱臭するガス量が少なくなり、脱臭器の容量を小さくすることができる。また、メンテナンスの頻度を少なくすることもできる。
【0013】
(請求項3)
前記放散系統には、燃焼脱臭器および熱交換器が配置され、
前記返送系統には、前記熱交換器が配置され、
前記燃焼脱臭器で燃焼脱臭され、昇温した脱臭分離ガスと、
前記返送系統の返送分離ガスを、
前記熱交換器で熱交換させ、
前記熱交換により昇温した返送分離ガスを前記熱風発生器へ返送する構成とした請求項2記載の有機性廃棄物の処理装置。
【0014】
(作用効果)
放散系統を流れる分離ガスを燃焼脱臭器で燃焼して、昇温させることで脱臭する。そして、脱臭後の脱臭分離ガスを熱源として利用して、熱交換器で返送分離ガスを昇温させる構成とした。これにより、熱風発生器へ返送する返送分離ガスの温度が上がるため、熱交換器による昇温を行わない場合と比べて、熱風発生器で使用する燃料を少なくすることができる。
【0015】
(請求項4)
前記返送系統に外気を取り込む外気取込手段を備える請求項1記載の有機性廃棄物の処理装置。
【0016】
(作用効果)
一部の分離ガスを熱風発生器へ返送し、その他の分離ガスは大気へ放散する構成であるため、何の手立ても設けないと、処理装置全体で必要なガス量が次第に不足してしまう。そこで、外気取込手段によって返送系統に外気を取り込み、分離ガスを大気へ放散することにより不足した量を補充する構成とした。
【0017】
(削除)
【0018】
(削除)
【0019】
(請求項
5)
前記返送系統に外気を取り込む外気取込手段と、
前記固気分離機から排出された粉粒体を貯留槽に空気輸送する空気輸送系統を備え、
前記外気取込手段により取り込んだ外気と、前記空気輸送に用いた輸送用外気の両者を、前記熱風発生器に送り込む構成とした請求項1記載の有機性廃棄物の処理装置。
【0020】
(作用効果)
外気取込手段によって取り込んだ外気と、輸送用外気の両者を熱風発生器へ送り込む構成とした。このとき、輸送用外気をすべて熱風発生器へ送り、この輸送用外気によっても不足する分の外気を、外気取込手段によって取り込むようにすると良い。これにより、輸送用外気を最大限有効活用することができるとともに、外気取込手段によって取り込む外気量が少なくなるため、省エネになるからである。
【0021】
(請求項
6)
前記固気分離機からの分離ガスのうち、前記返送系統に移行する量と、前記放散系統に移行する量の流量比を調整する流量比調整手段を備える請求項2記載の有機性廃棄物の処理装置。
【0022】
(作用効果)
前記流量比調整手段として、例えば返送系統と放散系統のそれぞれにバルブを設けることができる。この流量比調整手段によって、返送系統を流れる分離ガス量と放散系統を流れる分離ガス量が目的の比率になるように、調整することができる。
【0023】
(請求項
7)
前記固気分離機を粉粒体の貯留槽上部に設置し、前記固気分離機によって分離された粉粒体をそのまま貯留槽へ投入する構成とした請求項1記載の有機性廃棄物の処理装置。
【0024】
(作用効果)
固気分離機によって分離された粉粒体をそのまま貯留槽へ投入する構成にすることで、処理装置全体をコンパクトにすることができる。
【0025】
(請求項
8)
前記有機性廃棄物の脱水物を、機械的搬送手段を使用することなく重力により落下させて、前記連続式熱風乾燥機へと導く流下流路を備え、
前記流下流路を通じて連続式熱風乾燥機に供給された脱水物が、前記熱風発生器からの熱風によって気流搬送される構成とした請求項1記載の有機性廃棄物の処理装置。
【0026】
(作用効果)
有機性廃棄物の脱水物を、機械的搬送手段を使用することなく落下重力により、流下流路を介して、連続式熱風乾燥機の供給口へ導くようにすることにより、不純物(スクリューコンベア、ベルトコンベアなどの使用に伴う磨耗粉や破片)が最終製品に混じらなくなる。また、最終製品の粒子形状が崩れたり、粒度分布が変化したりすることもなくなる。
【0027】
さらに、機械的搬送手段を使用しないで、脱水物を直接的に連続式熱風乾燥機内に導くようにすると、機械的搬送手段を使用した場合と比較して相対的に短時間で移送できる。そのため、脱水物の温度低下を抑制でき、乾燥機における乾燥負荷の低減や、温度低下に起因した品質劣化要因の排除を図ることができる。
【0028】
(請求項
9)
熱風発生器を用いて、熱風を生成する熱風発生工程と、
連続式熱風乾燥機を用いて、有機性廃棄物の脱水物と、前記熱風発生器からの熱風とを接触させ、前記脱水物を乾燥して粉粒体にする乾燥工程と、
固気分離機を用いて、前記連続式熱風乾燥機からの排ガスに含まれる粉粒体を分離する固気分離工程と、
前記固気分離機によって粉粒体と分離した分離ガスの一部を前記熱風発生器へ返送する返送工程と、
前記固気分離機から排出された粉粒体を貯留槽に空気輸送する工程と、
前記空気輸送に用いた輸送用外気を前記熱風発生器に送り込む工程と、
を有することを特徴とする有機性廃棄物の処理方法。
【0029】
(作用効果)
請求項1と同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る処理装置によれば、有機性廃棄物の処理工程で生じた分離ガスを有効利用することで、プロセス全体の熱効率を改善することができる。
【0031】
特に、間接加熱式乾燥機や解砕機付きの気流乾燥機の代わりに、解砕機無しの気流乾燥機を用いると、設備費用や維持管理費用を削減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の説明及び図面は、本発明の一実施形態を示したものにすぎず、本発明の内容をこの実施形態に限定して解釈すべきでない。
【0034】
(第1実施例)
図1は、本発明に係る処理装置1の第1実施形態のフロー図である。この処理装置1は、脱水機3、熱風発生器4、連続式熱風乾燥機5、固気分離機6、燃焼脱臭器9、熱交換器10、外気取込手段15、放散系統DL、返送系統RLおよび空気輸送系統CLなどを備えている。以下に、この処理装置1の構成と処理の流れについて詳述する。
【0035】
(有機性廃棄物W)
本発明に係る処理装置1は、有機性廃棄物Wを処理するものである。この有機性廃棄物Wの具体例としては、汚泥を挙げることができる。より詳しくは、下水汚泥(余剰汚泥、初沈汚泥、混合生汚泥、混合汚泥、消化汚泥、バイオマスを混合消化した汚泥等を含む)、排水処理汚泥、製紙汚泥、活性汚泥、ビルピット汚泥、排水処理汚泥、その他の有機性汚泥を挙げることができる。これらの汚泥のうち、特に下水汚泥の処理に好適である。また、有機性廃棄物Wには、無機物が混入しているものも含まれる。この有機性廃棄物Wは、有機性廃棄物貯留槽2に貯留されており、供給ポンプ21によって脱水機3に供給される。
【0036】
(脱水機3)
供給された有機性廃棄物Wは、脱水機3によって脱水された後、連続式熱風乾燥機5へ送られる。この脱水機3は、有機性廃棄物Wの脱水に適したものであり、例えばベルトプレス脱水機、スクリュープレス脱水機、回転加圧脱水機、多重円板型脱水機、多重板型スクリュープレス脱水機および遠心脱水機等を挙げることができる。
【0037】
なお、前記遠心脱水機には、一液調質法、二液調質法および機内二液調質法に用いる異なる形態の脱水機がある。このうちの機内二液調質型遠心脱水機は、脱水物のメジアン径を小さく、含水率を低くすることができるため、本発明に係る処理装置1の脱水機3として適している。
【0038】
前記機内二液調質型遠心脱水機は、外側に回転ボウルが配され、この回転ボウル内にスクリューコンベアが設けられている。また、この回転ボウルの一端側には供給口が、他端側には排出口が設けられている。供給口から回転ボウル内に供給された有機性廃棄物Wは、スクリューコンベアによって撹拌されながら他端側へと運ばれ、脱水物として排出口から排出される。また、有機性廃棄物Wは、回転ボウル内を移動する過程で、遠心力により脱水される。
【0039】
また、回転ボウル内において、有機性廃棄物Wに対して、高分子凝集剤HCおよび無機凝集剤ICが添加される。高分子凝集剤HCとしては、例えばポリアクリルアミド系、ポリアクリル酸エステル系のものを用いることができ、無機凝集剤ICとしては、例えば塩化第二鉄、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、ポリ硫酸第2鉄(ポリ鉄)などを用いることができる。これらの二種類の凝集剤を用いることで、脱水物のメジアン径を小さくするとともに、含水率を低くすることができる。具体的には、メジアン径を10mm以下、含水率を74%以下にすることができる。
【0040】
前記機内二液調質型遠心脱水機としては、例えば、2015年4月20日付けの地方共同法人日本下水道事業団ホームページの「技術情報・研究」「133号 2012/12/13 技術情報<技術の紹介>「機内二液調質型遠心脱水機」‐低含水率脱水汚泥の実現」の欄に記載されたものを用いることができる。
【0041】
なお、前記メジアン径(「中位径」ともいう。)は、例えば以下の方法を用いて定める。詳述すると、脱水物の粒径が500ミクロン以上の場合は、JIS M 8801 石炭試験方法に記載された方法でふるい分けをし、ふるい分け結果をロジンラムラー分布で表し、積算質量(ふるい上)が50%に相当する時の粒子径をメジアン径(D
50)として定める。また、脱水物の粒径が500ミクロン未満の場合は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、商品名SALD−3100、島津製作所社製)を用いて粒度分布を測定し、累積体積が50%に相当する時の粒子径をメジアン径(D
50)として定める。
【0042】
(流下流路30)
前記脱水機3から排出された脱水物を、機械的搬送手段(スクリューコンベア、ベルトコンベアなど)を使用することなく重力による落下により、後述する連続式熱風乾燥機5の導入部5Aに設けられた供給口へ導く流下流路30を備えることが好ましい。その作用効果は、前記のとおりである。
【0043】
(熱風発生器4)
脱水機3から排出された脱水物は、連続式熱風乾燥機5へ送られ、乾燥機5内で熱風と接触して乾燥する。この乾燥機5に用いる熱風は、熱風発生器4によって生成する。詳しくは、燃料タンクから燃料F(LPG等)を供給されたバーナー4Aが、返送系統RLや空気輸送系統CLから送られてくるガスを加熱して、熱風を生成する。なお、有機性廃棄物Wが下水汚泥である場合、下水汚泥を消化処理した際に発生する消化ガスを燃料Fとして用いるようにしても良い。
【0044】
この熱風発生器4の制御は、熱風発生器4の出口温度を計測し、目的の温度となるように、熱風発生器4へ供給される燃料Fと空気Aの量を制御する。
【0045】
(連続式熱風乾燥機5)
連続式熱風乾燥機5は、前記脱水機3からの脱水物と、前記熱風発生器4からの熱風とを接触させ、前記脱水物を乾燥して粉粒体にする。
【0046】
この連続式熱風乾燥機5としては、(1)噴霧乾燥機、気流乾燥機、流動層乾燥機、回転乾燥機などのように、熱風中に脱水物を分散させて乾燥させる形態のもの、(2)通気バンド乾燥機、トンネル乾燥機(並行流バンド乾燥機)、噴出流乾燥機などのように、脱水物を静置した状態のまま移送し、その移送過程で脱水物に熱風を接触させて乾燥させる形態のもの、(3)撹拌乾燥機などのように、脱水物を機械的に攪拌しながら、その脱水物に熱風を接触させて乾燥させる形態のものを例示することができる。なお、連続式熱風乾燥機5の「連続式」とは、バッチ式ではないことを指す。
【0047】
なお、前述のとおり、機内二液調質型遠心脱水機を用いて脱水した場合は、脱水物のメジアン径を10mm以下、含水率を74%以下にすることができる。このメジアン径や含水率は、ベルトプレス脱水機等の他の脱水機を用いて脱水した場合よりも低い値である。そのため、多用されている間接加熱式乾燥機(攪拌伝熱式装置)を用いずに、より安価でメンテナンス性に優れる気流乾燥機を用いることができる。
【0048】
前記気流乾燥機にも様々な種類があるが、機内二液調質型遠心脱水機3を用いることで脱水物の付着性が弱くなっていることから、脱水物を解砕せずに投入する解砕機無しの気流乾燥機を採用することができる。
【0049】
図1〜
図3に、連続式熱風乾燥機5の一例である気流乾燥機を示した。この気流乾燥機は、熱気流が通る配管(以下、「パイプ」ともいう。)を環状に配置した環状気流乾燥機5である。図示した気流乾燥機5は、パイプを直線状に配置した導入部5Aと、この導入部5Aに続くパイプを環状に1回転させた主部5Bを有する。そして、この主部5Bは、導入部5Aと同一直線上に延在するパイプ5Baと、前記パイプ5Baから上方へ延在するパイプ5Bbと、前記パイプ5Bbから引き返す方向へ水平に延在するパイプ5Bcと、前記パイプ5Bcから下方へ延在するパイプ5Bdとからなる。隣り合う各パイプの間(例えば、パイプ5Baとパイプ5Bbの間)には、R状に湾曲したパイプが位置している。また、パイプ5Bdの先端部5Cは、導入部5Aの先端部5Dと接合されており、この接合部分においてパイプの内部が相互に繋がっている。また、導入部5Aの基端部には、熱風の給気口5Eが設けられ、前記パイプ5Bdの中間部分には排気口5Fが設けられている。
【0050】
前記熱風発生器4で生成した熱風は、給気口5Eを通じて導入部5Aに供給される。また、前記機内二液調質型遠心脱水機3の排出口から落下した脱水物は、導入部5Aの熱風(熱気流)中へ落下する。落下した脱水物は、熱風中で粉粒状に分散する。そして、その粉粒体は、熱気流と並流に送られながら(熱風により気流搬送されながら)、瞬間的に乾燥する。詳しくは、粉粒体を伴う熱風は、導入部5A、パイプ5Ba、パイプ5Bb、パイプ5Bc、パイプ5Bdと流れ、その一部が排気口5Fから器外へ排気される。他方、排気口5Fから排気されなかった熱風は、新しく導入部5Aから送られてきた熱風と合流し、再びパイプ5Ba、パイプ5Bb、パイプ5Bc、パイプ5Bdと流れ、その一部が排気口5Fから器外へ排気される。以上のように、熱風の一部は排気口5Fから排気され、その他の熱風は主部5B内を循環することになる。このように、新しく投入された脱水物と管内を循環する脱水物は、管内で混合し、それによって付着性や含水量が調整される。
【0051】
気流乾燥機5の運転においては、気流乾燥機5の導入部5Aの風速を20m/s以上とし、主部5Bの風速を10m/s以上にすることが好ましい。導入部5Aや主部5Bの風速が前記値よりも低い場合は、気流乾燥機5内での被処理物Wの運搬に支障をきたすからである。また、前記主部5Bの気流の風速は、被処理物を円滑に空送するため、15m/s以上にすることがより好ましい。
【0052】
このとき、導入部5Aの風速を主部5Bの風速よりも速くすることが好ましい。排気口5Fから排気されずにパイプ5Bdからパイプ5Baに流れる熱風に対して、熱風発生器4から送られてきた新たな熱風を高速で衝突させることで、循環している熱風中の被処理物を分散させることができるからである。
【0053】
また、気流温度は、特に限定されない。しかし、好ましくは350℃〜450℃、より好ましくは390℃〜410℃、さらに好ましくは400℃にすると良い。気流温度が低い場合は、被処理物を十分に乾燥させることができず、乾燥物の含水率が高くなるからである。また、気流温度が高い場合は、熱風発生器4の燃料費が嵩み、経済性が悪くなるからである。以上のように、乾燥物の含水率と燃料費という経済性のバランスをとると、400℃前後の温度にすることが最も適当である。
【0054】
また、製造コストや補修コストが高くなるが、連続式熱風乾燥機5として前記攪拌伝熱式乾燥機を設け、固気分離機6からの分離ガスの一部を熱風発生器4に返送し、分離ガスの有効利用を図るようにしても良い。同様に、補機類の容量が大きくなるとともに、定期的なメンテナンスや解砕機の交換が必要になるが、連続式熱風乾燥機5として解砕機付きの気流乾燥機を設け、固気分離機6からの分離ガスの一部を熱風発生器4に返送し、分離ガスの有効利用を図るようにしても良い。
【0055】
(固気分離機6)
粉粒体を乾燥させることで湿度が増した熱風は、排ガスとして前記連続式熱風乾燥機5から排気され、固気分離機6へ送られる。この排ガスには粉粒体が含まれているため、固気分離機6を用いて、粉粒体と分離ガス(粉粒体と分離したガス)に分離する。
【0056】
この固気分離機6の例としては、重力により集塵を行う重力沈降室、慣性により集塵を行うミストセパレーター12、遠心力により集塵を行うサイクロン、洗浄により集塵を行うベンチュリースクラバー、濾布により集塵を行うバグフィルター、充てん層により集塵を行う移動粒子層エアフィルター、電気により集塵を行う電気集塵機等を挙げることができる。
【0057】
(吸引ファン7)
固気分離機6の排気口の下流には、吸引ファン7が設けられている。この吸引ファン7により、熱風発生器4で生成した熱風を吸引している。よって、連続式熱風乾燥機5から吸引ファン7に至る経路の圧力は、常に負圧(例えば、−2kPa〜−3kPa)にすることが好ましい。そこで、連続式熱風乾燥機5から固気分離機6の間に圧力計8を設け、この圧力計8で計測した圧力が負圧でない場合は、吸引ファン7の吸引量を増加させる制御を行っている。このように負圧にすることで、連続式熱風乾燥機からのガス漏れを防ぐことができる。
【0058】
(返送系統RL)
前記固気分離機6によって粉粒体と分離した分離ガスの一部は、前記熱風発生器4へ返送される。この返送系統RLには、後述する熱交換器10を設け、分離ガスの温度を上昇させることが好ましい。熱交換器10で温度を上昇させてから熱風発生器4へ送ることで、熱交換器10を設けなかった場合よりも、熱風発生器4の火力を弱くすることができる。そして結果的に、燃焼燃料Fの使用量を削減することができる。
【0059】
(放散系統DL)
前記固気分離機6によって粉粒体と分離した分離ガスのうち、熱風発生器4へ返送されない分離ガス(分離ガスの残部)は、脱臭された後に大気Eに放散される。この放散系統DLには、脱臭を行う脱臭器が配置される。また、後述する熱交換器10を設けることが好ましい。
【0060】
なお、返送系統RLの熱交換器10と放散系統DLの熱交換器10は共通(同一)のものである。すなわち、固気分離機6から排気された放散系統DLの分離ガスは、燃焼脱臭器9によって昇温した後、返送系統RLと共通の熱交換器10に熱源として供給される。そして、熱交換器10で返送系統RLの分離ガスと熱交換して降温した後、排煙処理塔11やミストセパレーター12等による除塵処理を経て、排気ダクト13から大気Eへ放散される。
【0061】
(燃焼脱臭器9)
返送系統RLと放散系統DLに共通の熱交換器10を設ける場合、放散系統DLの分離ガスを熱源として利用する。そのため、放散系統DLに設ける脱臭器は、燃焼脱臭器9にすることが好ましい。この燃焼脱臭器9は、固気分離機6と熱交換器10の間に配置される。
【0062】
ここで、分離ガスのフローについて説明する。固気分離機6から排気された分離ガスのうち、放散系統DLに従って流れる分離ガス(「放散分離ガス」という。)は、燃焼脱臭器9の本体9Bに供給される。そして、燃焼脱臭器9に供給された分離ガスは、燃料タンクから燃焼脱臭器9に供給された燃料F(LPG等)を用いて、燃焼脱臭器9のバーナー9Aで燃焼され、この燃焼によって脱臭する。詳しくは、分離ガスの臭気成分だけが酸化分解される。また、分離ガスの温度が、この燃焼によって上昇する。例えば、固気分離機6から排気された分離ガスの温度が約200℃であった場合、燃焼脱臭器9の燃焼によって、約800℃まで上昇する。このようにして脱臭された放散分離ガス(「脱臭分離ガス」という。)は、放散系統DLに従って熱交換器10へ流れる。なお、有機性廃棄物Wが下水汚泥である場合、下水汚泥を消化処理した際に発生する消化ガスを燃料Fとして用いるようにしても良い。
【0063】
なお、前記燃焼脱臭器9の代わりに、スクラバーを用いるようにしても良い。また、薬品洗浄による脱臭器を用いるようにしても良い。前記スクラバーや薬品洗浄脱臭器を用いて脱臭処理を行った場合、放散分離ガスの温度が低下してしまう。そのため、脱臭後の分離ガスを昇温させる昇温装置(図示しない)を別途設け、昇温させてから熱交換器10へ送るようにすると良い。
【0064】
(熱交換器10)
一方、固気分離機6から排気された分離ガスのうち、返送系統RLに従って流れる分離ガス(「返送分離ガス」という。)は、特に加熱されることなく、熱交換器10へ供給される。すなわち、固気分離機6から排気された分離ガスの温度が約200℃であった場合、その温度のまま、熱交換器10へ供給される。
【0065】
熱交換器10では、返送分離ガスと脱臭分離ガスが熱交換を行う。すなわち、脱臭分離ガスを熱源として用いて、返送分離ガスの温度を上昇させる。具体的には、熱交換器10に供給された返送分離ガスの温度が約200℃であった場合、この熱交換によって約300℃まで上げることができる。こうして温度上昇した返送分離ガスは、返送系統RLに従って熱風発生器4へ送られ、熱風発生器4のバーナーで燃焼されて熱風となる。一方、温度降下した脱臭分離ガス(放散分離ガス)は、排煙処理塔11及びミストセパレーター12で除塵処理された後、大気Eへ放散される。なお、有機性廃棄物Wが下水汚泥である場合、排煙処理塔11の循環水(温水)を熱回収して、消化汚泥の加温に充当してもよい。
【0066】
(外気取込手段15)
外気取込手段15としては、例えば送風ファンを例示できる。そして、この外気取込手段15からの外気Aは、固気分離機6と熱交換器10の間の返送系統RLに送られる。返送系統RLに取り込まれた外気Aは、返送分離ガスとともに熱交換器10へ送られて昇温した後、熱風発生器4へ送られる。なお、外気取込手段15からの外気Aを、熱交換器10と熱風発生器4の間の返送系統RLに送るようにしても良い。しかし、外気Aの温度が高いほど、熱風発生器4の使用燃料Fが少なくなるため、熱交換器10よりも上流の返送系統RLに外気Aを送り込み、熱交換器10で外気Aを昇温してから、熱風発生器4へ送ることが好ましい。
【0067】
前記固気分離機6から排気される分離ガスのうち、返送分離ガスと放散分離ガスの割合(比率)は、例えば3:1とすることができる。この比率によると、固気分離ガスから排気される分離ガス(100%)のうち、75%は返送分離ガスとして熱風発生器4へ返送されるが、25%は放散分離ガスとして大気Eに放散されてしまう。この大気Eへの放散により、処理装置1内のガス(空気)が25%不足するため、この不足を補うために外気取込手段15を設けることが好ましい。
【0068】
なお、処理装置1内を循環しているガス(以下、「循環ガス」という。)の湿度は、有機性廃棄物を乾燥させる工程で上昇するため、入れ替えを行わないと湿度が次第に上昇してしまう。そこで、前記のように循環ガスの入れ替えを行うことで、循環ガスの湿度を適正化(例えば、絶対湿度で約0.01〜3.2kg/kgDA)することができる。すなわち、入れ替えを行わない場合と比べて循環ガスの湿度を低くすることができる。そのため、熱風発生器において、循環ガスの温度が上がりやすくなり、燃費が向上する。また、連続式熱風乾燥機においても、有機性廃棄物の液分が蒸発する効率(蒸発効率)が高くなる。
【0069】
なお、返送分離ガスと放散分離ガスの比率は、返送系統RLと放散系統DLのそれぞれに設けたバルブ14、14によって調整している。この比率は、処理装置1の運転開始前に決定し、運転中はその比率を固定することが好ましい。処理装置1を運転している最中に、この比率を変更することもできるが、外気Aの取込量など、様々な要素を変更する必要が生じ、制御が煩雑となるからである。
【0070】
また、前記比率を決めて運転を開始した後は、粉粒体の乾燥の状態を見ながら、熱風発生器4の温度を調整する。すなわち、乾燥汚泥貯留コンテナ16内に貯まった粉粒体を採取し、その粉粒体の含水率等を求め、希望とする含水率(例えば、含水率5%〜40%)となるように、熱風発生器4の温度を上下させる。
【0071】
また、固気分離機6から排気される分離ガスのすべてを、熱風発生器4へ返送する構成とした場合、前記のとおり循環ガスの湿度が次第に高くなるこの場合は返送系統RLに除湿機を設ける必要が生じて設備費が高騰してしまうが、それでも良い場合は、分離ガスのすべてを熱風発生器4へ返送しても良い。
【0072】
(空気輸送系統CL)
固気分離機6から排出された粉粒体は、粉粒体貯留槽16に運ばれ、粉粒体貯留槽16で保存される。この固気分離機6から粉粒体貯留槽16までの輸送には、外気A(空気)が用いられる。すなわち、空気輸送系統CLに外気Aが送り込まれ、この外気Aによって、粉粒体が粉粒体貯留槽16まで輸送される。
【0073】
従来、粉粒体を輸送した後の空気には、粉粒体の臭気が移っているため、脱臭器で脱臭し、大気Eに放散していた。本発明においては、この輸送空気を有効利用するため、粉粒体を輸送した後の空気をバグフィルターに通して除塵した後、熱風発生器4へ送る構成とした。そして、熱風発生器4に送られた輸送空気は、バーナーで燃焼されて脱臭された後、熱風として連続式熱風乾燥機5へ送られる。このように本発明の空気輸送系統CLは、固気分離機6から粉粒体貯留槽16までではなく、熱風発生器4まで延在されている点に特徴を有する。
【0074】
なお、空気輸送系統CLの外気Aは、粉粒体貯留槽16に併設したファン付きバグフィルター17のファンによって吸引されるとともに、バグフィルター17の下流に設けた送風ブロア22によって、熱風発生器4へ送風される。なお、送風ブロア22は、熱風発生器4のバーナー4Aと本体4Bへ送風するほか、燃焼脱臭器9のバーナー9Aへも送風を行う。
【0075】
また、空気輸送系統CLには、外気Aのほかに、有機物貯留槽2に貯まった空気や、粉粒体貯留槽16に貯まった空気を送り込むようにしても良い。有機物貯留槽2や粉粒体貯留槽16の空気は、有機性廃棄物Wの影響を受けて臭気を伴うが、熱風発生器4で燃焼されることによって、脱臭する。
【0076】
(外気量)
空気輸送系統CLによって熱風発生器4へ送られる外気Aの量が、放散系統DLによって大気Eに放出される分離ガスの量と同じである場合、またはそれよりも多い場合、外気取込手段15によって新たに外気Aを取り込む必要がない。したがって、これらの場合は、外気取込手段15を設けずに空気輸送系統CLのみ設ける構成にすることができる。
【0077】
他方、空気輸送系統CLによって熱風発生器4へ送られる外気Aの量が、放散系統DLによって大気Eに放出される分離ガスの量よりも少ない場合は、その不足している量を、外気取込手段15によって新たに送り込む構成にすることができる。
【0078】
(分岐部18)
ここで
図1を参照すると、固気分離機6から排気された分離ガスは、分岐部18まで流れ、その分岐部18で二手に分かれている。一方は、放散分離ガスとして燃焼脱臭器9へ流れ、他方は、返送分離ガスとして熱交換器10へと流れる。この場合の返送系統RLとは、固気分離機6を始点として、分岐部18、熱交換器10を経て、熱風発生器4へ至る経路(配管など)と、その経路に設置された機器(熱交換器10等)をいう。また、放散系統DLとは、同じく固気分離機6を始点として、分岐部18、燃焼脱臭器9、熱交換器10、排煙処理塔11、ミストセパレーター12を経て排気ダクト13へ至る経路(配管など)と、その経路に設置された機器(燃焼脱臭器9、熱交換器10、排煙処理塔11およびミストセパレーター12等)をいう。なお、固気分離機6から分岐部18までは、返送系統RLと言うことができるとともに、放散系統DLと言うこともできる。
【0079】
また、図示しないが、前記のような分岐部18を設けずに、固気分離機6から返送系統RLと放散系統DLの二手に分かれるような構成にしても良い。
【0080】
また、
図1における空気輸送系統CLとは、外気Aの供給箇所19を始点として、固気分離機6からの粉粒体を受けるT字管20、ファン付きのバグフィルター17を経て熱風発生器4へ至る経路(配管など)と、その経路に設置された機器(T字管、バグフィルター等)をいう。
【0081】
(第2実施例)
本発明に係る処理装置1の第2実施形態のフローを
図2に示した。この実施例においては、固気分離機6から排出された粉粒体が、粉粒体貯留槽16に直接落下する構成となっている。すなわち、第1実施例のように、空気輸送系統CLが存在しない。
【0082】
したがって、放散系統DLで大気Eに放散された分離ガスと同じ量の外気Aを、外気取込手段15によって返送系統RLに送り込む構成にしている。その他の構成は、
図1と同じであるため、説明を省略する。
【0083】
(第3実施例)
本発明に係る処理装置1の第3実施形態のフローを
図3に示した。第3実施形態は、第2実施形態をさらに簡略化したものであり、熱交換器10を備えていない。
【0084】
したがって、固気分離機6から排気された返送分離ガスは、昇温されることなく、そのまま熱風発生器4へ返送される。また、放散分離ガスは、脱臭器で脱臭した後に、排煙処理塔11およびミストセパレーター12で除塵され、大気Eに放散される。なお、第3実施例においては、放散分離ガスを昇温させる必要がないため、燃焼脱臭器9以外の脱臭器22(スクラバー等)を用いるようにしても良い。
【0085】
また、第3実施例は、第2実施例のような熱交換器10を設けず、燃焼脱臭器9よりも安価な脱臭器22を設けることもできるため、処理装置1の設備費を安くすることができる。また、燃焼脱臭器9以外の脱臭器22を設けることで、燃料費が少なくなり、運転費用も安くすることができる。