特許第6565149号(P6565149)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6565149
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】塗工方法及び塗工装置
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/38 20060101AFI20190819BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20190819BHJP
   B05C 1/10 20060101ALI20190819BHJP
   B05C 9/06 20060101ALI20190819BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20190819BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
   B05D1/38
   B05D7/24 301E
   B05C1/10
   B05C9/06
   H01M4/139
   H01M4/04 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-183913(P2014-183913)
(22)【出願日】2014年9月10日
(65)【公開番号】特開2016-55254(P2016-55254A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(72)【発明者】
【氏名】丸山 佳樹
(72)【発明者】
【氏名】布施 賢
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−097509(JP,A)
【文献】 特開昭62−250973(JP,A)
【文献】 特開2011−119144(JP,A)
【文献】 特許第5403153(JP,B2)
【文献】 国際公開第2011/155060(WO,A1)
【文献】 特開2005−259639(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/114835(WO,A1)
【文献】 特開2007−280657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00− 7/26
B05C 1/00− 21/00
C09D 1/00− 10/00
C09D101/00−201/10
B32B 1/00− 43/00
H01M 4/00− 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
版を用いて被塗布体に対してスラリーを多層に塗布する塗工方法であって、
多層のうち最上層を第2層、前記第2層の直ぐ下を第1層としたときに、少なくとも前記第1層を塗布する第1層塗工工程と、前記第1層塗工工程に続いて、前記第2層を塗布する第2層塗工工程と、を有し、
前記被塗布体はリチウムイオン電池もしくはリチウムイオンキャパシタの電極を構成する金属箔であり、
前記スラリーは、所定の粘度と乾燥した状態での吸水性とを備え、活物質を主とした電極材であり、
前記第1層塗工工程は、前記第1層の直ぐ下の層又は前記金属箔の上に、前記版を用いて前記スラリーを転写させて前記第1層を形成するとともに、その表面を平滑化させた後に、前記第1層を乾燥させ、
前記第2層塗工工程は、乾燥した前記第1層の上に、前記版を用いて前記スラリーを転写させて前記第2層を形成するとともに、その水分を前記第1層に吸収させた後に、前記第2層を乾燥させ、
前記第2層塗工工程において、前記版は、孔版からなりメッシュを有するスクリーンであり、前記スクリーンに前記スラリーを塗布し、前記メッシュを通過した前記スラリーが前記第1層の上に転写されることを特徴とする塗工方法。
【請求項2】
前記スラリーは、活物質と、増粘剤と、結合剤と、水とからなることを特徴とする請求項1に記載の塗工方法。
【請求項3】
前記第2層塗工工程において、前記版は、ロール状のスクリーンであり、前記スクリーンの内径側に前記スラリーが溜められ、前記金属箔の送りと同期して前記スクリーンが回転すると前記スラリーがスキージによって押し付けられ、前記メッシュを通過した前記スラリーが前記第1層の上に転写されることを特徴とする請求項2に記載の塗工方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項の塗工方法によって前記金属箔に前記スラリーを塗布する塗工装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、版を用いてスラリーを塗布する塗工方法及び塗工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電池の電極は、活物質を主とした電極材であるスラリーを金属箔に塗布及び乾燥させて塗工することにより製造される。この電極は、金属箔にスラリーを2層で塗布し、2層のうち上層は表面を凹凸形状にすることで表面積を拡大し、電子の移動を早めて電池の出力特性を向上させることができる。上層の凹凸形状は、孔版であるスクリーン版に乳剤を凹凸形状のパターンで塗布後、硬化させ、このスクリーン版を用いることによって形成している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−66613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のスクリーン版を用いた塗工方法では、スクリーン版を用いて金属箔にスラリーを塗布し、その日の作業が終了すると、スクリーン版に付着したスラリーを取り除くためスクリーン版をブラシなどで洗浄する。この洗浄により、スクリーン版上の乳剤は、樹脂であるため脱落し易く、メンテナンス性に問題ある。また、この塗工方法は、専用のスクリーン版であるためコスト高となっている。そこで、塗工方法及び塗工装置は、表面を凹凸形状に塗布する際に用いる版のメンテナンスが容易であるとともに、低コスト化を図ることが課題となっていた。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、表面を凹凸形状に塗布する際に用いる版のメンテナンスが容易であるとともに、低コスト化を図ることができる塗工方法及び塗工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る塗工方法の構成上の特徴は、版を用いて被塗布体に対してスラリーを多層に塗布する塗工方法であって、多層のうち最上層を第2層、前記第2層の直ぐ下を第1層としたときに、少なくとも前記第1層を塗布する第1層塗工工程と、前記第1層塗工工程に続いて、前記第2層を塗布する第2層塗工工程と、を有し、 前記被塗布体はリチウムイオン電池もしくはリチウムイオンキャパシタの電極を構成する金属箔であり、前記スラリーは、所定の粘度と乾燥した状態での吸水性とを備え、活物質を主とした電極材であり、前記第1層塗工工程は、前記第1層の直ぐ下の層又は前記金属の上に、前記版を用いて前記スラリーを転写させて前記第1層を形成するとともに、その表面を平滑化させた後に、前記第1層を乾燥させ、前記第2層塗工工程は、乾燥した前記第1層の上に、前記版を用いて前記スラリーを転写させて前記第2層を形成するとともに、その水分を前記第1層に吸収させた後に、前記第2層を乾燥させ、前記第2層塗工工程において、前記版は、孔版からなりメッシュを有するスクリーンであり、前記スクリーンに前記スラリーを塗布し、前記メッシュを通過した前記スラリーが前記第1層の上に転写されることである。
【0007】
請求項1の塗工方法によれば、最上層の第2層は、乾燥した第1層の上に、版を用いてスラリーを転写すると同時に、その水分が第1層に吸収されるので、スラリーの形状がくずれて平滑化されるのを防ぐことができる。これにより、この塗工方法では、第2層は、版のパターンのままに塗工されて表面が凸形状となり、従来のように乳剤を凸パターンで設ける必要がないので、版のメンテナンスが容易であるとともに、低コスト化を図ることができる。さらに、表面を凸形状に塗布する際に用いる版が、一般的に流通している多様な版を選択でき、版の低コスト化を図ることができる。リチウムイオン電池の電極の塗工に用いる活物質を主とした電極材のスラリーは、乾燥すると水分の吸収性がよく、好適である。
【0008】
請求項2に係る塗工方法の構成上の特徴は、前記スラリーは、活物質と、増粘剤と、結合剤と、水とからなることである。
【0009】
請求項2の塗工方法によれば、スラリーは、活物質と、増粘剤と、結合剤と、水とからなるので、第1層の乾燥したスラリーは、水分の吸収性がよい。
【0010】
請求項3に係る塗工方法の構成上の特徴は、前記第2層塗工工程において、前記版は、ロール状のスクリーンであり、前記スクリーンの内径側に前記スラリーが溜められ、前記金属箔の送りと同期して前記スクリーンが回転すると前記スラリーがスキージによって押し付けられ、前記メッシュを通過した前記スラリーが前記第1層の上に転写されることである。
【0011】
請求項3の塗工方法によれば、最上層の第2層は、メッシュを通過したスラリーが第1層の上に転写されると同時に、その水分が乾燥した第1層に吸収されて形成される。そして、転写されたスラリーは、周囲に流れることなく、その表面が転写したときの形状に保持されて乾燥し、表面が形状となる。これにより、この塗工方法では、第2層は、スクリーンのメッシュのパターンのままに塗工されて表面が形状となり、従来のように乳剤をパターンで設ける必要がないので、版のメンテナンスが容易であるとともに、低コスト化を図ることができる。また、メッシュを有するスクリーンは、一般的に流通しているので、版の低コスト化を図ることができる。
【0014】
請求項に係る塗工装置の構成上の特徴は、請求項1〜のいずれか1項の塗工方法によって前記金属箔に前記スラリーを塗布することである。

【0015】
請求項5の塗工装置によれば、版のメンテナンスが容易であるとともに、低コスト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、表面を形状に塗布する際に用いる版のメンテナンスが容易であるとともに、低コスト化を図ることができる塗工方法及び塗工装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態であるリチウムイオン電池における電極の塗工工程を説明する図である。
図2図1における第2塗布装置の拡大図である。
図3】(a)は図2におけるスクリーン版のA矢視図であり、(b)は(a)の部分拡大図である。
図4】(a)は図2のB矢視図であり、(b)は(a)の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の塗工方法を具体化した実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施形態であるリチウムイオン電池における電極の塗工工程を説明する図である。図1に示すように、例えばリチウムイオン電池の電極の塗工工程(塗工方法)は、金属箔7(被塗布体)に対して活物質を主とした電極材であるスラリー23,53を2層で塗布する第1層塗工工程1及び第2層塗工工程4からなる。
【0019】
金属箔7は、ロール状に巻かれた状態で巻き出し装置91にセットされる。そして、金属箔7は、上流側である巻き出し装置91から巻き出され、ローラ93、バックアップローラ95,96及びローラ94を経由して、下流側である巻き取り装置92に巻き取られる。
【0020】
上流側に設けられる第1層塗工工程1は、第1塗布装置2と、これより下流側に設けられる第1乾燥装置3とを有している。第1塗布装置2は、孔版であるスクリーン版21を用いてスラリー23をスキージ22によって押し付け、例えば銅箔の金属箔7に転写する。ここで、スラリー23は、例えば材料が活物質である黒鉛と、増粘剤と、結合剤と、水とからなり、粘度を10pa・S(at 2〔1/S〕)としている。また、スクリーン版21は、後述するスクリーン版51と同一のメッシュを設けている。金属箔7に転写されたスラリー23は、金属箔7が水分を吸収しにくいので、スラリー23のレベリング性により塗膜を平滑化する。これによって、第1層24が形成される。そして、第1層24は、平滑な塗膜の状態で第1乾燥装置3によって乾燥される。
【0021】
第2層塗工工程4は、第1層塗工工程1より下流側に設けられ、第2塗布装置5と、これより下流側に設けられる第2乾燥装置6とを有している。第2塗布装置5は、孔版であるスクリーン版51を用いて、スラリー53をスキージ52によって押し付けて第1層24に転写する。これによって、第2層54が形成される。ここで、スラリー53は、例えば材料及び粘度をスラリー23と同一としている。そして、第2層54は、第2乾燥装置6によって乾燥される。第2塗布装置5の詳細は、後述する。
【0022】
図2は、図1における第2塗布装置5の拡大図である。図3(a)は図2におけるスクリーン版51のA矢視図であり、図3(b)は図3(a)の部分拡大図である。図4(a)は図2のB矢視図であり、図4(b)は図4(a)の部分拡大図である。
図3(a),(b)に示すスクリーン版51には、例えば材質がステンレスからなる糸部51aを網目状に編み、糸部51aと糸部51aとの間に開口部51bを形成するメッシュが設けられている。ここでメッシュの仕様は、例えば糸部51aの線径が50μm、オープニングが88μm、開口率が33%、紗厚が116μmとしている。
【0023】
図2に示す第2塗布装置5には、ロール状のスクリーン版51の内径側に、図示しないチューブなどで供給されるスラリー53が溜められる。第1層24を塗工した金属箔7は、上流側から下流側へ、即ち矢印F1で示す方向へ送られる。また、スクリーン版51は、反時計方向の矢印F3で示す方向へ回転する。そして、金属箔7の送りと、スクリーン版51の回転とを同期させることによって、第2塗布装置5における塗工が行われる。
【0024】
スクリーン版51が回転すると、スラリー53が、スキージ52によって押し付けられてスクリーン版51の開口部51bを通過し、第1層24の上に転写される。転写されたスラリー53は、転写されると同時に、その水分が乾燥した第1層24に吸収され、周囲に流れることなく、その表面が転写したときの形状に保持され凹凸形状となる。これによって、第2層54が形成される。そして、第2層54は、その表面が転写したときの形状の状態で第2乾燥装置6によって乾燥され、表面を凹凸形状としている。
【0025】
ここで、スラリー53は、粘度が高い場合、即ち水分が少ない場合、開口部51bを通過しづらいが、第1層24の上に転写された後は平滑化されにくく、表面は転写したときの形状を保持する。一方、スラリー53は、粘度が低い場合、即ち水分が多い場合、開口部51bを通過しやすいが、第1層24の上に転写された後はレベリング性により平滑化されやすく、表面は転写したときの形状を保持しづらい。そこで、スラリー53は、開口部51bを通過し、且つ、その水分が第1層24に吸収されて平滑化されないように作用する所定の粘度に設定している。また、乾燥したスラリー53は、水分の吸収性がよい。
【0026】
第2塗布装置5によって塗布された塗膜は、図4(a),(b)に示すように、金属箔7の上に平滑化された第1層24を形成し、第1層24の上に表面が凹凸形状の第2層54が形成される。図4(b)に丸印で示される第2層54の凸部は、スラリー53がスクリーン版51の開口部51bを通過して形成されたものであり、第2層54の凹凸形状のパターンは、スクリーン版51のメッシュのパターンと同一である。
【0027】
このように構成される塗工工程によれば、最上層の第2層54は、メッシュの開口部51bを通過したスラリー53が第1層24の上に転写されると同時に、その水分が乾燥した第1層24に吸収されて形成される。そして、転写されたスラリー53は、周囲に流れることなく、その表面が転写したときの形状に保持されて乾燥し、表面が凹凸形状となる。これにより、この塗工工程では、第2層54は、スクリーン版51のメッシュのパターンのままに塗工されて表面が凹凸形状となり、従来のように乳剤を凹凸パターンで設ける必要がないので、スクリーン版51のメンテナンスが容易であるとともに、低コスト化を図ることができる。また、メッシュを有するスクリーン版51は、一般的に流通しているので、低コスト化を図ることができる。
【0028】
また、本実施形態の塗工工程によれば、リチウムイオン電池の電極の塗工に用いる活物質を主とした電極材のスラリー23,53は、乾燥すると水分の吸収性がよく、好適である。
【0029】
なお、本発明は本実施形態に限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の形態で実施することができる。
本実施形態では、リチウムイオン電池の電極を塗工する構成に適用したが、それに限るものではなく、例えば、リチウムイオンキャパシタの電極を塗工する構成などに適用してもよい。
【0030】
また、本実施形態では、スクリーン版51がロール状の版からなる構成としたが、それに限るものではなく、例えば、平版のスクリーン版を用いる構成に適用してもよい。
【0032】
また、本実施形態では、金属箔7に対してスラリー23,53を2層で塗布する構成としたが、それに限るものではなく、例えば、3層などであってもよく、3層の場合、第1層塗工工程1より上流側に第0層塗工工程として下地処理する塗工工程を設けた構成に適用してもよい。
【0033】
また、本実施形態では、第1塗布装置2及び第2塗布装置5における、それぞれのスクリーン版21,51及びスラリー23,53が同一としたが、それに限るものではなく、例えば、スクリーン版21,51及びスラリー23,53は、それぞれの塗布装置の仕様により決定すればよい。
【0034】
本発明の塗工装置の一実施形態としては、本実施形態における第1層塗工工程1及び第2層塗工工程4を有したリチウムイオン電池の電極を塗工する塗工装置であってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1:第1層塗工工程、 2:第1塗布装置、 3:第1乾燥装置、 4:第2層塗工工程、 5:第2塗布装置、 6:第2乾燥装置、 7:金属箔(被塗布体)、 21:スクリーン版、 22:スキージ、 23:スラリー(電極材)、 24:第1層、 51:スクリーン版、 51a:糸部、 51b:開口部、 52:スキージ、 53:スラリー(電極材)、 54:第2層、 91:巻き出し装置、 92:巻き取り装置、 93,94:ローラ 、95,96:バックアップローラ
図1
図2
図3
図4