(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6565150
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】チャック付き包装袋
(51)【国際特許分類】
B65D 33/25 20060101AFI20190819BHJP
【FI】
B65D33/25 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-184009(P2014-184009)
(22)【出願日】2014年9月10日
(65)【公開番号】特開2016-55902(P2016-55902A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】杉山 守広
【審査官】
田中 佑果
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05511884(US,A)
【文献】
特開2010−202224(JP,A)
【文献】
特開2012−131563(JP,A)
【文献】
実開昭57−035238(JP,U)
【文献】
特開2011−020715(JP,A)
【文献】
特開2013−212853(JP,A)
【文献】
特表2001−509119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 30/00−33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三辺を熱シール部によって貼りあわされた包装袋の開口部にあって繰り返し開封、密封することのできる、熱可塑性樹脂からなるチャックの一部に、オス、メス3箇所づつの非嵌合部を設けたことで、前記非嵌合部の計6箇所および前記熱シール部の2箇所で形成される前記開口部が8角形を保持しうることを特徴とするチャック付き包装袋。
【請求項2】
前記非嵌合部が、物理的加工を用いてチャックの両側に形成されたことを特徴とする請求項1に記載のチャック付き包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチャック付き包装袋に関するものであり、特に易開封性を有するチャック付き包装袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
包装袋のうちプラスチックフィルムを用いたものはさまざまな用途に用いられているが、繰り返しの開封、密封のためにはチャック付き包装袋がある。チャック付き包装袋は、開口部に設けられているプラスチック材料からなる一対のオス、メス形状のチャックによって開封、密封を手で行うことができるものである。
【0003】
チャック付き包装袋は安価な上に開封、密封が簡単にできるという利便性から、さまざまな大きさのものが袋として市販されている。そのほかたとえば食品メーカーで、保存性のある素材を用いたチャック付き包装袋に内容物を充填して、商品として販売する場合もある。
【0004】
チャック付き包装袋本体がポリエチレンのフィルム単体のような単純な構成のものは価格も安価なことから雑貨店などでも扱われており、そのほか通信販売や文房具店などさまざまな販路で販売されている。
【0005】
また包装袋の素材もポリエチレンを素材としたもののほか、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムなど、用途に応じてさまざまな素材が用いられている。
【0006】
また用途によって内容物の保存性などが要求される場合には、包装袋を構成する材料として、たとえばプラスチックフィルムにアルミニウム箔などのガスバリア性を有する素材をラミネートして用いることもある。食品などの用途にも多く用いられており、メーカーで内容物を充填した後、消費者が包装袋を開封した後には、開口部とは別に取り付けられたチャック部分を用いて繰り返し包装袋の開封、密封が可能となっている。たとえばスタンディングパウチなどに応用する例も知られている。チャック付き包装袋は現代生活において不可欠な存在となっており、その用途もますます広がりを見せている。
【0007】
チャックはプラスチック材料からなる一対のチャックテープがオス、メス嵌合することによってその機能を持つが、一方のオスの形状が他方のメスの形状にはまり込んで、密封の役割をはたし、はまり込んだ一対のチャックテープを引き剥がし分離することで開封状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4347616号公報
【特許文献2】特許第4351403号公報
【特許文献3】特許第4603824号公報
【特許文献4】特許第5113559号公報
【特許文献5】特許第5123844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら実際には、その密封性の簡便さに比べて、手で開封する際には困難が伴う
場合が多かった。たとえば開封する場合にはチャックの上のフィルム部分を手でつまんで引っ張って開くことになり、両手でそれぞれ一枚づつフィルムをつまむことがかなりの細かい作業となることに加えて引っ張る際に指が滑ったりすることも多く、引き開けることが容易ではない場合が多かった。
【0010】
チャックはプラスチック材料からなる一対のチャックテープがオス、メス嵌合することによって密封がなされているため、開封しようとした場合には嵌合している部分を無理に引き開けることになり、力を要することになるためである。
【0011】
さらには、チャックの部分の剛性は袋本体に比べて大きいため、いったん開いた開口部も元に戻ろうとして閉じる方向に反発弾性の力が働き、内容物の取り出しにおいても不便を感じることが多くあった。
【0012】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、開封が容易で、内容物の取り出しも容易なチャック付き包装袋を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、
三辺を熱シール部によって貼りあわされた包装袋の開口部にあって繰り返し開封、密封することのできる、熱可塑性樹脂からなるチャックの一部に、
オス、メス3箇所づつの非嵌合部を設けたこと
で、前記非嵌合部の計6箇所および前記熱シール部の2箇所で形成される前記開口部が8角形を保持しうることを特徴とするチャック付き包装袋である。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、前記非嵌合部が、物理的加工を用いてチャックの
両側に形成されたことを特徴とする請求項1に記載のチャック付き包装袋である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば開封が容易で、内容物の取り出しも容易なチャック付き包装袋を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は本発明によるチャック付き包装袋の一実施形態を示す平面模式図である。
【
図2】
図2は本発明によるチャック付き包装袋の他の実施形態を示す平面模式図である。
【
図3】
図3は本発明によるチャック付き包装袋の他の実施形態の開封した状態を開口部から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本発明を実施するための形態について、
図1〜
図3を参照しながら詳細に説明を加える。
【0020】
図1は本発明によるチャック付き包装袋(10)の一実施形態を示す平面模式図である。包装袋の開口部に設けられたチャック(1)は熱可塑性樹脂から成り、一対のチャックがオス、メス嵌合することによって密封がなされ、開封に際しては嵌合しているチャックの上部を両側から矢印Aおよび矢印Bの方向に引っ張って開封する。この密封と開封は繰り返し行うことができる。
【0021】
本発明は、チャック(1)の一部に非嵌合部(2)を設けることにより、その部分が開封のきっかけとなって従来より少ない力で容易に該包装袋を開封することができる。非嵌合部はチャックの一箇所設けるのでも良く、二箇所あるいはそれ以上設けるのでも良い。
【0022】
図2は三箇所に設けた例である。開封時の引っ張りは開口部の中央付近を使うことが大半であるために、非嵌合部(2)は少なくとも一箇所がチャック(1)の中央付近にあることが望ましい。
【0023】
チャックの(1)一部に非嵌合部(2)があることにより、開封に際して矢印A及び矢印Bの相反する方向に手で引っ張りの力を加えると非嵌合部(2)がきっかけとなって開封が開始されるために、従来のように嵌合している部分を引き開ける場合に比べて少ない力で容易に開封を行うことができる。
【0024】
チャック付き包装袋(10)の形状は特に指定するものではないが、たとえば三辺を熱シール部(3)によって貼りあわされた包装袋の口部にチャック(1)が設けられているものがある。チャック付き包装袋として販売されることもあり、メーカーなどで内容物を充填した後、商品として流通、販売される場合もある。
【0025】
内容物を充填した商品として販売される場合には、たとえば三辺熱シールの場合には、開口部をさらに熱シールして四辺の熱シール部で囲む包装袋とし、開封に当たってはチャックと四辺目の熱シール部の間を切り裂いて開封し、以降繰り返しの密封、開封の繰り返しはチャックを用いて行うことができる。
【0026】
本発明においては熱可塑性樹脂からなるチャックの一部に、非嵌合部を設けてあるために、開封作業が容易になる利点がある。開封は通常開封する部分の中央付近を指でつまんで、矢印Aおよび矢印Bの方向に引っ張って行うため、非嵌合部はほとんど抵抗なく分離、開封される。
【0027】
この開封された部分がきっかけとなり隣接するチャックの部分の分離、開封が開始される。チャックの部分の分離、開封がいったん始まればその抵抗は少なく、従来より少ない力で容易に分離、開封を行なうことができる。
【0028】
密封作業については非嵌合部と関係なく、チャックの部分を指で圧してオス、メス嵌合させればよい。本発明においては易開封の機能が得られる代わりにチャック部分の密封性は若干損なわれるが、たとえば飴のように個包装されている製品の外装やふりかけのように粒径の大きい製品においてはその影響を受けることは無い。
【0029】
チャックは熱可塑性樹脂からなるため、非嵌合部を設けるには、物理的加工が用いられる。たとえば熱シールバー、冷却シールバー、ポイントシールバーなどによる物理的加工を用いて熱、圧力を加え、オス、メスどちらか一方、もしくは両方のチャックを平らに押しつぶすことにより設けることが可能である。熱可塑性樹脂としてたとえばポリエチレンあるいはポリプロピレンなどを使用することができる。
【0030】
あるいは、チャック付き包装袋の設計段階において、あらかじめチャックのオス、メス形状の少なくとも片方の一部を省いて欠損したデザインにして非嵌合部を設けてもよい。
【0031】
チャックに非嵌合部を設けることにより、それが熱シールバー、冷却シールバー、ポイ
ントシールバーなどによる物理的加工による押しつぶしの方法であっても、チャックの一部を省いてある形であっても、チャックのその部分の剛性は低下するために反発弾性が失われ、開封において開口した形状を保持し易くなり内容物の取り出しが容易になる。
【0032】
図3は本発明によるチャック付き包装袋の他の実施形態の開封した状態を開口部から見た模式図である。この例では非嵌合部(2)は3箇所あり、チャックのオス、メスの対応する部分にそれぞれ3箇所づつ設けてある。
【0033】
この例ではこれらオス、メス3箇所づつの非嵌合部(2)があることにより、非嵌合部(2)の計6箇所および熱シール部(4)の2箇所で形成される開口部(5)は8角形を保持し易くなる。この開口部(5)によって内容物の取り出しが容易になり、たとえばスプーンを用いて取り出そうとする場合などにおいては特に好都合である。
【0034】
このように本発明によれば開封が容易で、内容物の取り出しも容易なチャック付き包装袋を提供することができる。
【符号の説明】
【0035】
1・・・チャック
2・・・非嵌合部
3・・・熱シール部
4・・・熱シール部
5・・・開口部
10・・・チャック付き包装袋