特許第6565217号(P6565217)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6565217
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】スライド式等速ジョイント
(51)【国際特許分類】
   F16D 3/205 20060101AFI20190819BHJP
【FI】
   F16D3/205 M
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-40694(P2015-40694)
(22)【出願日】2015年3月2日
(65)【公開番号】特開2016-136061(P2016-136061A)
(43)【公開日】2016年7月28日
【審査請求日】2018年2月13日
(31)【優先権主張番号】特願2015-6590(P2015-6590)
(32)【優先日】2015年1月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128211
【弁理士】
【氏名又は名称】野見山 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100145171
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩行
(72)【発明者】
【氏名】小畠 啓志
【審査官】 増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平3−37417(JP,A)
【文献】 特許第2763624(JP,B2)
【文献】 特開2010−7701(JP,A)
【文献】 特開2008−75683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 3/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に中心軸方向に延びる複数の軌道溝が形成された筒部、前記筒部の一端部を閉塞する底部、及び前記底部から前記筒部とは反対側に突出する軸状のステム部を有する外方部材と、
シャフトに連結される環状のボス部、及び前記ボス部の外周面から前記ボス部の径方向外方に延びるように立設されて前記軌道溝にそれぞれ挿入される複数の脚軸を有する内方部材と、
前記脚軸と前記軌道溝の両側面との間に、前記脚軸に対して揺動可能に配置された中間部材と、
前記軌道溝の両側面と前記中間部材との間に、前記中間部材の外面に沿って転動可能に配置された複数の転動体と、
前記複数の転動体を前記中間部材の外面に沿って循環可能に保持する保持器とを備え、
前記保持器は、前記複数の転動体を挟む一対の循環路形成部材を互いに連結してなり、前記外方部材の径方向から見た正面視において角丸長方形状を呈しており、
前記一対の循環路形成部材は、それぞれの四隅に設けられた連結部で連結され、これらの連結部が前記複数の転動体の循環移動軌跡の外側でかつ前記外方部材に接触しない位置に設けられており、
前記内方部材が前記外方部材の前記筒部内を前記底部側に移動するとき、前記保持器は前記複数の転動体を介して前記中間部材に押圧されて前記外方部材の前記中心軸に沿って移動する、
スライド式等速ジョイント。
【請求項2】
前記保持器は、前記一対の循環路形成部材が前記複数の転動体の循環移動軌跡の外側で互いに連結された、
請求項1に記載のスライド式等速ジョイント。
【請求項3】
前記転動体は、円柱状の胴部を有する軸状の転動体であり、
前記中間部材は、前記内方部材が前記外方部材の前記筒部内を前記底部側に移動するときに前記複数の転動体の前記胴部に当接する当接面を前記外方部材の前記底部側の端部に有し、
前記当接面は、前記外方部材の前記中心軸と前記シャフトの中心軸とがなすジョイント角が0°の状態において前記外方部材の前記中心軸に対して垂直である、
請求項1又は2に記載のスライド式等速ジョイント。
【請求項4】
前記中間部材の前記当接面と前記転動体の前記胴部との間には、前記転動体に対する前記中間部材の傾きを許容する隙間が形成されている、
請求項3に記載のスライド式等速ジョイント。
【請求項5】
前記当接面は、前記軌道溝の両側面に平行な断面において前記転動体側に膨出するように形成された断面円弧状の突部を有し、
前記断面における前記突部の曲率半径は、前記中間部材が前記脚軸からの押し付け力を受ける受け面の中心位置と前記突部の頂点との距離よりも小さい、
請求項4に記載のスライド式等速ジョイント。
【請求項6】
前記当接面は、前記断面における前記脚軸の軸方向に平行な方向の端部に、前記転動体の前記胴部への接触によって前記転動体に対する前記中間部材の傾きを規制する傾き規制部を有する、
請求項5に記載のスライド式等速ジョイント。
【請求項7】
前記中間部材は、前記複数の転動体に対して前記外方部材の径方向に移動可能であり、前記シャフトが所定のジョイント角をもって回転するとき、当該回転に伴って前記脚軸と共に前記複数の転動体に対して移動する、
請求項3乃至6の何れか1項に記載のスライド式等速ジョイント。
【請求項8】
前記保持器は、前記中間部材に対する前記脚軸の軸方向への相対移動によって前記中間部材に接触する移動規制部を有し、前記移動規制部によって前記脚軸の軸方向の少なくとも一方側への前記中間部材との相対移動が規制される、
請求項7に記載のスライド式等速ジョイント。
【請求項9】
前記保持器は、前記移動規制部が前記中間部材の前記当接面に接触することで、前記中間部材との相対移動が規制される、
請求項8に記載のスライド式等速ジョイント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の駆動力伝達系に用いられるスライド式等速ジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の等速ジョイントとして、内周面に中心軸方向に延びる3本の軌道溝が形成された有底筒状の外輪と、外輪の軌道溝にそれぞれ挿入される3本のトリポード軸部を有するトリポード部材と、トリポード軸の外周面と軌道溝の内面との間に介在する複数の転動体とを備えたスライド式等速ジョイントがある(特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1に記載のスライド式等速ジョイントは、トリポード軸と軌道溝の内面との間に、複数の転動体を有するローラユニットを備えている。このローラユニットは、トリポード軸部に対して揺動可能に配置された中間部材と、軌道溝の内面と中間部材の動力伝達面との間に配置された複数の転動体と、これら複数の転動体を中間部材の外周を循環可能に保持する保持器とを備えて構成されている。保持器は、複数の転動体の軸方向両端部をそれぞれ保持するように対向して連結された一対の循環路形成部材からなる。これら一対の循環路形成部材は、外輪の中心軸に沿った中間部材の両側の連結部で連結されている。
【0004】
このスライド式等速ジョイントは、トリポード部材に嵌合される中間シャフトと共にドライブシャフトを構成し、例えば特許文献2の図1及び図2に記載されたように車両に組み付けられる。すなわち、外輪に設けられた軸状のステムがディファレンシャル装置のサイドギヤの中心部に形成された挿入孔に挿入され、スナップリング等のリング状の抜け止め具によって抜け止めされる。外輪のステムは、抜け止め具が嵌着される環状溝を先端部に有し、例えばスプライン嵌合によってサイドギヤに相対回転不能に連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−7701号公報
【特許文献2】特開平10−9248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたスライド式等速ジョイントは、車両への組み付けの際に、ローラユニットが外輪の底部側に押し付けられる場合がある。つまり、作業者がトリポード部材に連結されたシャフトを把持し、ステムの環状溝に抜け止め具を嵌着した状態でディファレンシャルケースの外側からサイドギヤの挿通孔に外輪のステムを挿通させると、ローラユニットがトリポード部材及び中間部材を介して外輪の底部側に押し付けられ、押圧力を受ける。抜け止め具は、サイドギヤの挿通孔を通過する際には弾性的に縮径して環状溝に収容され、挿通孔を通過すると元の大きさに復元し、外周側の一部が環状溝から突出する。これにより、サイドギヤからのステムの抜け止めがなされる。
【0007】
この組み付けの際、中間部材が一対の循環路形成部材の連結部に当接するので、作業者がシャフトを押し付ける力が保持器の強度に対して過大であると、連結部が変形してしまい、転動体の円滑な転動が妨げられるおそれがある。このため、例えば一対の循環路形成部材の厚さを厚くすること等により保持器の強度を確保しなければならず、スライド式等速ジョイントの小型軽量化やコスト低減の妨げとなっていた。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両への組み付けの際にトリポード部材が外輪の底部側に押し付けられても、その押し付け力が保持器に伝達されることを抑制することができるスライド式等速ジョイントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、内周面に中心軸方向に延びる複数の軌道溝が形成された筒部、前記筒部の一端部を閉塞する底部、及び前記底部から前記筒部とは反対側に突出する軸状のステム部を有する外方部材と、シャフトに連結される環状のボス部、及び前記ボス部の外周面から前記ボス部の径方向外方に延びるように立設されて前記軌道溝にそれぞれ挿入される複数の脚軸を有する内方部材と、前記脚軸と前記軌道溝の両側面との間に、前記脚軸に対して揺動可能に配置された中間部材と、前記軌道溝の両側面と前記中間部材との間に、前記中間部材の外面に沿って転動可能に配置された複数の転動体と、前記複数の転動体を前記中間部材の外面に沿って循環可能に保持する保持器とを備え、前記保持器は、前記複数の転動体を挟む一対の循環路形成部材を互いに連結してなり、前記外方部材の径方向から見た正面視において角丸長方形状を呈しており、前記一対の循環路形成部材は、それぞれの四隅に設けられた連結部で連結され、これらの連結部が前記複数の転動体の循環移動軌跡の外側でかつ前記外方部材に接触しない位置に設けられており、前記内方部材が前記外方部材の前記筒部内を前記底部側に移動するとき、前記保持器は前記複数の転動体を介して前記中間部材に押圧されて前記外方部材の前記中心軸に沿って移動する、スライド式等速ジョイントを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るスライド式等速ジョイントによれば、車両への組み付けの際にトリポード部材が外輪の底部側に押し付けられても、その押し付け力が保持器に伝達されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の第1の形態に係るスライド式等速ジョイントの一部を破断して示す全体図である。
図2】スライド式等速ジョイントの外輪を、その回転軸方向から見た平面図である。
図3】トリポード部材をローラユニットと共に示す分解斜視図である。
図4】ローラユニットを示し、(a)は正面図、(b)は(a)のB−B線断面図である。
図5】(a)及び(b)は、連結部を形成する加締め工程を示す説明図であり、(a)は加締め前の状態を、(b)は加締め後の状態を、それぞれ示している。
図6】(a)及び(b)は、第1の実施の形態の変形例に係る連結部の構成を示す説明図である。
図7】第2の実施の形態に係るローラユニットを示し、(a)は分解斜視図、(b)は全体斜視図である。
図8】(a)はローラユニットの正面図であり、(b)は(a)のC−C線断面図、(c)は、分割体の形状を説明するための模式図である。
図9】第3の実施の形態に係るローラユニットを示し、(a)は分解斜視図、(b)は全体斜視図である。
図10】(a)はローラユニットの正面図であり、(b)は(a)のD−D線断面図であり、(c)は(a)のE−E線断面図である。(d)は、(c)の部分拡大図である。
図11】(a)は分割体の構成を詳細に示す説明図であり、(b)及び(c)は分割体と複数の転動体との相対的な位置関係が変位した状態を示す説明図である。
図12】第4の実施の形態に係るローラユニットを示し、(a)は正面図、(b)は(a)のF−F線断面図、(c)は(a)のG−G線断面図、(d)は(c)の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の第1の実施の形態に係るスライド式等速ジョイントについて、図1乃至図5を参照して説明する。なお、以下に示す実施の形態は、本発明を実施する上での好適な一具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0013】
図1は、本実施の形態に係るスライド式等速ジョイントの一部を破断して示す全体図である。図2は、スライド式等速ジョイントの外輪を、その回転軸O方向から見た平面図である。図1に示す断面は、図2におけるA−A線断面である。以下、このスライド式等速ジョイントを単に「等速ジョイント」という。
【0014】
この等速ジョイント1は、車両のディファレンシャル装置の出力部材である図略のサイドギヤとシャフト(ドライブシャフトの中間シャフト)7との間に配置され、車輪を回転させる駆動力をシャフト7に伝達する。この等速ジョイント1は、トリポード型等速ジョイントとも称され、外方部材としての外輪2と、内方部材としてのトリポード部材3と、3つのローラユニット10(図1には、1つのローラユニット10のみを示す)とを有して構成されている。外輪2は、ディファレンシャル装置のサイドギヤと一体回転するように連結され、トリポード部材3は、シャフト7と一体回転するように連結される。ローラユニット10は、トリポード部材3の複数(3本)のトリポード軸部32(図1には、1本のトリポード軸部32のみを示す)に嵌め合される。以下、これら各部材等の構成について、詳細に説明する。
【0015】
(外輪2の構成)
外輪2は、内周面に中心軸方向に延びる複数(3本)の軌道溝211が形成された筒部21、筒部21の一端部を閉塞する底部22、及び底部22の中央部から筒部21とは反対側に突出する軸状のステム部23を有している。筒部21及び底部22は、有底筒状を呈し、筒部21の内部には、トリポード部材3、及び3つのローラユニット10を収容する収容空間20が形成されている。なお、筒部21の中心軸は、外輪2の回転軸Oと一致している。
【0016】
3本の軌道溝211は、図2に示すように、筒部21の周方向に沿って等間隔に形成されている。3つのローラユニット10は、これら3つの軌道溝211のそれぞれに収容される。以下の説明では、軌道溝211の内面であって、車両の前進加速時にローラユニット10の複数の転動体5(後述)が転動する側面を第1の側面211aといい、この第1の側面211aに対向する軌道溝211の側面を第2の側面211bという。第1の側面211a及び第2の側面211bは、互いに平行に対向する平面である。
【0017】
底部22には、トリポード部材3が筒部21の収容空間20の奥側に移動した際にローラユニット10の転動体5が当接する平面状の底面22aが、外輪2の回転軸Oに平行な方向に対して直交するように形成されている。
【0018】
ステム部23には、ディファレンシャル装置とサイドギヤにスプライン嵌合するスプライン嵌合部231が形成されている。また、ステム部23におけるスプライン嵌合部231よりも先端側(底部22側の基端部とは反対側)の端部には、スナップリング等のリング状の抜け止め具(図示せず)を保持するための環状溝232が形成されている。ステム部23の先端部は、抜け止め具が環状溝232に嵌着された状態でサイドギヤの挿通孔に挿入される。この際、抜け止め具は、環状溝232内で弾性的に縮径してサイドギヤの挿通孔を通過し、通過後に元の大きさに復元する。これにより、ステム部23のサイドギヤからの抜け止めがなされる。
【0019】
(トリポード部材3の構成)
図3は、トリポード部材3を、1つのトリポード軸部32に嵌め合わされるローラユニット10と共に示す分解斜視図である。図4は、ローラユニット10を示し、(a)は正面図、(b)は(a)のB−B線断面図である。
【0020】
トリポード部材3は、シャフト7に連結される環状のボス部31、及びボス部31の外周面31aからボス部31の径方向外方に延びるように立設されて外輪2の軌道溝211にそれぞれ挿入される3本の脚軸としてのトリポード軸部32を有する。ボス部31は、中心部にシャフト7を挿通させる挿通孔30が形成され、シャフト7の端部に形成されたスプライン嵌合部71と相対回転不能に嵌合する。また、トリポード部材3は、シャフト7に嵌着されたスナップリング70(図1参照)によって抜け止めされている。なお、ボス部31の挿通孔30の内周面には、複数のスプライン突起が形成されているが、図3では、このスプライン突起の図示を省略している。
【0021】
3本のトリポード軸部32は、ボス部31の周方向に沿って等間隔に設けられ、その先端部は部分球面状に形成されている。3本のトリポード軸部32には、それぞれローラユニット10が揺動可能かつトリポード軸部32の軸方向に摺動可能に嵌め合わされる。
【0022】
(ローラユニット10の構成)
ローラユニット10は、トリポード軸部32に対して揺動可能に配置された中間部材4と、中間部材4の外面に沿って転動可能に配置された複数の転動体5と、複数の転動体5を中間部材4の外面に沿って循環可能に保持する保持器6とを備えて構成されている。複数の転動体5は、軌道溝211の第1及び第2側面211a,211bと中間部材4との間に配置されている。
【0023】
中間部材4は、対称形状の一対の分割体41,41からなる。これら一対の分割体41,41は、トリポード軸部32をその外周側から挟み込むように配置される。一対の分割体41,41のうち、一方の分割体41は、トリポード軸部32と軌道溝211の第1の側面211aとの間に配置され、他方の分割体41は、トリポード軸部32と軌道溝211の第2の側面211bとの間に配置される。すなわち、中間部材4は、トリポード軸部32と、外輪2の軌道溝211の第1及び第2側面211a,211bとの間に配置されている。
【0024】
それぞれの分割体41のトリポード軸部32との対向面には、球面凹状の接触球面41aが形成されている。トリポード軸部32の先端部における部分球面状の外周面32aは、外輪2からシャフト7に駆動力が伝達されるとき、接触球面41aに面接触して分割体41から押圧力を受ける。すなわち、分割体41の接触球面41aは、トリポード軸部32からの押し付け力を受ける受け面として機能する。また、中間部材4は、シャフト7が外輪2に対して所定のジョイント角をもって回転するとき、当該回転に伴ってトリポード部材3に対して揺動する。なお、図1では、外輪2の回転軸Oとシャフト7の回転軸Oとがなす角度であるジョイント角が0°である状態を図示している。
【0025】
転動体5は、円柱状の胴部51と、胴部51の軸方向の両端面に立設された一対の針状突起52,52とを備えた軸状である。本実施の形態では、18個の転動体5が中間部材4の外周囲に配置されている。ただし、転動体5の個数は、等速ジョイント1のトルク伝達容量等に応じて適宜変更することが可能である。
【0026】
保持器6は、複数の転動体5をその軸方向に挟む一対の循環路形成部材61,62を互いに連結してなり、外輪2の径方向から見た正面視において、角の丸い長方形状(角丸長方形状)を呈している。以下の説明では、一対の循環路形成部材61,62のうち、外輪2の収容空間20内において回転軸Oから遠い径方向外側に配置される一方の循環路形成部材を外側循環路形成部材61といい、他方の循環路形成部材を内側循環路形成部材62という。外側循環路形成部材61及び内側循環路形成部材62は、板状の金属からなる素材をプレスして成形される。
【0027】
保持器6は、複数の転動体5の一方の針状突起52が係合する溝状の外側循環路611と、複数の転動体5の他方の針状突起52が係合する溝状の内側循環路621とを有している。外側循環路611は、外側循環路形成部材61に形成され、内側循環路621は、内側循環路形成部材62に形成されている。複数の転動体5は、一方の針状突起52が外側循環路611に案内され、かつ他方の針状突起52が内側循環路621に案内されて、中間部材4の外面に沿って循環可能である。
【0028】
外側循環路形成部材61には、外側循環路611に転動体5の一方の針状突起52を導入するための導入口612が2箇所に形成されている。また、内側循環路形成部材62には、内側循環路621に転動体5の他方の針状突起52を導入するための導入口622が、外側循環路形成部材61の導入口612に対応する位置に形成されている。ローラユニット10の組み立て時には、一対の針状突起52が外側循環路形成部材61及び内側循環路形成部材62のそれぞれの導入口612,622を通過して、複数の転動体5が外側循環路611及び内側循環路621の間に導入される。
【0029】
保持器6は、外側循環路形成部材61と内側循環路形成部材62とが、4つの連結部60において連結されている。この連結部60は、複数の転動体5の循環移動軌跡の外側であって、外輪2に接触しない位置に設けられている。図4(a)では、この複数の転動体5の循環移動軌跡の外郭線5aを一点鎖線で示している。この外郭線5aは、保持器6の外側循環路611及び内側循環路621の形状に対応して、角丸長方形状をなしている。連結部60は、この外郭線5aの外側であって、外郭線5aの角部を除く直線部同士を延長して形成される長方形5bの内側に設けられている。図4(a)では、この長方形5bを二点鎖線で示している。
【0030】
連結部60は、外側循環路形成部材61の四隅から内側(内側循環路形成部材62側)に延びる舌片613と、内側循環路形成部材62の四隅から外側(外側循環路形成部材61側)に延びる舌片623とを重ね合わせ、これらの舌片613,623同士を加締めることにより形成されている。
【0031】
図5(a),(b)は、連結部60を形成する加締め工程を示す説明図であり、(a)は加締め前の状態を、(b)は加締め後の状態を、それぞれ示している。
【0032】
連結部60における加締めは、重ね合された舌片613,623を第1及び第2の金型81,82で挟むことにより行われる。第1の金型81には、凹部810が形成され、第2の金型82には、凹部810に対応した形状の凸部820が形成されている。外側循環路形成部材61の舌片613の幅と内側循環路形成部材62の舌片623の幅は同等であり、第1の金型81の凹部810の幅、及び第2の金型82の凸部820の幅は、舌片613,623の幅よりも狭く形成されている。
【0033】
本実施の形態では、凹部810が断面円弧状に窪み、凸部820が断面円弧状に突出しているが、これらの形状に特に限定はなく、舌片613,623同士を結合できる形状であればよい。また、本実施の形態では、内側循環路形成部材62の舌片623が外側循環路形成部材61の舌片613よりも内側(循環移動軌跡の外郭線5a側)に配置され、第1の金型81が内側循環路形成部材62の舌片623に対向し、第2の金型82が外側循環路形成部材61の舌片613に対向するが、これらの配置は逆でもよい。
【0034】
第1の金型81と第2の金型82との間に舌片613,623が挟まれると、図5(b)に示すように、外側循環路形成部材61の舌片613の一部が破断して内側循環路形成部材62の舌片623に食い込み、舌片613,623同士が結合されて、外側循環路形成部材61と内側循環路形成部材62とが連結される。
【0035】
中間部材4を構成する一対の分割体41は、外輪2の第1及び第2の側面211a,211bに複数の転動体5を挟んで対向する平面が動力伝達面41bとして形成されている。つまり、外輪2の第1の側面211a又は第2の側面211bと一方の分割体41の動力伝達面41bとの間に介在する転動体5によって、外輪2から当該一方の分割体41に駆動力が伝達される。また、外輪2の回転軸Oに対してシャフト7の回転軸Oが傾斜した状態で外輪2が回転すると、転動体5は、外輪2の第1の側面211a又は第2の側面211bと分割体41の動力伝達面41bとの間で転動しながら駆動力を伝達する。
【0036】
前述のように、分割体41の動力伝達面41bは平面であるので、中間部材4は、複数の転動体5に対して外輪2の径方向(回転軸Oに対して直交する方向)に移動可能である。そして、シャフト7が所定のジョイント角をもって回転するとき、中間部材4は、当該回転に伴ってトリポード軸部32と共に、複数の転動体5に対して外輪2の径方向に移動する。つまり、シャフト7が所定のジョイント角をもって回転すると、その回転位相に応じてトリポード軸部32の部分球面状の先端部と外輪2の回転軸Oとの距離が変化する一方、複数の転動体5と外輪2の回転軸Oとの距離は一定であるので、中間部材4が複数の転動体5に対して外輪2の径方向に進退移動する。
【0037】
また、中間部材4を構成する一対の分割体41は、トリポード部材3が外輪2の筒部21内を底部22側に移動するときに複数の転動体5の胴部51に当接する第1の当接面41cを外輪2の底部22側の端部に有している。この第1の当接面41cは、ジョイント角が0°の状態において外輪2の中心軸(回転軸O)に対して垂直をなす平面であり、トリポード部材3が外輪2の筒部21内を底部22側に移動するとき、転動体5の胴部51と線状に接触する。
【0038】
またさらに、中間部材4を構成する一対の分割体41は、トリポード部材3が外輪2の筒部21内を収容空間20の開口側に移動するときに複数の転動体5の胴部51に当接する第2の当接面41dを、第1の当接面41cとは反対側の端部に有している。第2の当接面41dは、第1の当接面41cと平行な平面であり、トリポード部材3が外輪2の筒部21内を収容空間20の開口側に移動するとき、転動体5の胴部51と線状に接触する。
【0039】
複数の転動体5は、中間部材4の外面である動力伝達面41b,第1の当接面41c,及び第2の当接面41dに沿って循環する。そして、トリポード部材3が外輪2の筒部21内を底部22側に移動するとき、保持器6は、複数の転動体5を介して中間部材4に押圧されて、外輪2の中心軸に沿って移動する。
【0040】
等速ジョイント1の車両への組み付け時において、トリポード部材3がシャフト7と共に外輪2の底部22側に押し付けられると、中間部材4の第1の当接面41cと底部22における軌道溝211の底面22aとの間に転動体5が挟まれる。これにより、作業者がシャフト7に付与する押し付け力は、トリポード部材3から中間部材4及び転動体5を経て外輪2に伝達され、外輪2のステム部23がサイドギヤの挿通孔に挿通される。この際、保持器6は、押し付け力の伝達経路に含まれないため、作業者がシャフト7に付与する押し付け力によって保持器6に変形等が生じることがない。
【0041】
(第1の実施の形態の効果)
以上説明した第1の実施の形態によれば、以下に述べる作用及び効果が得られる。
【0042】
(1)トリポード部材3がシャフト7と共に外輪2の底部22側に押し付けられても、その押し付け力が保持器6の一部を経ることなく中間部材4から転動体5に伝達されるので、押し付け力が保持器6に伝達されることを抑制することができる。これにより、例えば外側循環路形成部材61及び内側循環路形成部材62の板厚を薄くすることができるので、等速ジョイント1の小型軽量化やコスト低減も可能となる。
【0043】
(2)保持器6は、外側循環路形成部材61及び内側循環路形成部材62が複数の転動体5の循環移動軌跡の外側に設けられた複数の連結部60で互いに連結されているので、複数の転動体5を中間部材4の外面(動力伝達面41b,第1の当接面41c,及び第2の当接面41d)に沿って循環可能としながら、連結部60を容易に形成することが可能となる。
【0044】
(3)第1の当接面41cは、ジョイント角が0°の状態において外輪2の中心軸に対して垂直な平面であるので、シャフト7を外輪2の回転軸Oに沿わせた状態でトリポード部材3がシャフト7と共に外輪2の底部22側に押し付けられたとき、中間部材4が転動体5の胴部51と線状に接触する。これにより、例えば第1の当接面41cが凸状に湾曲した曲面である場合に比較して、第1の当接面41cが転動体5から受ける最大面圧が低くなり、車両への組み付け時において中間部材4や転動体5が損傷を受けることを抑制できる。
【0045】
(4)中間部材4(分割体41)の動力伝達面41bは平面であるので、中間部材4は、複数の転動体5に対して外輪2の径方向(回転軸Oに対して直交する方向)に移動可能である。これにより、外輪2とシャフト7が所定のジョイント角を以って回転しても、複数の転動体5は、その回転軸を軌道溝211の延伸方向に対して直交させた状態で、第1の側面211a又は第2の側面211bを円滑に転動可能である。
【0046】
(第1の実施の形態の変形例)
上記第1の実施の形態では、外側循環路形成部材61と内側循環路形成部材62とを相互に加締めることにより連結する場合について説明したが、これに限らず、他の連結手段によって外側循環路形成部材61と内側循環路形成部材62とを連結してもよい。具体的には、図6(a)及び(b)に示すように、両端部91,92が胴部90よりも細径に形成されたリベット状の連結部材9を用いて外側循環路形成部材61と内側循環路形成部材62とを連結してもよい。
【0047】
この場合、図6(a)に示すように、外側循環路形成部材61に形成された挿通孔61aに連結部材9の一方の端部91を挿通させ、かつ内側循環路形成部材62に形成された挿通孔62aに連結部材9の一方の端部91を挿通させ、図6(b)に示すように両端部91,92を加締めることにより、外側循環路形成部材61と内側循環路形成部材62とを連結する。このような連結構造によっても、上記実施の形態と同様の作用及び効果を得ることができる。またさらに、連結部材9の両端部91,92に螺旋状のネジ山を形成し、これに螺合するナットによって外側循環路形成部材61と内側循環路形成部材62とを連結してもよい。
【0048】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について、図7及び図8を参照して説明する。第2の実施の形態に係る等速ジョイントは、ローラユニット10の構成が第1の実施の形態のものと異なり、その他の構成は第1の実施の形態に係る等速ジョイント1と同様であるので、以下、この違いの部分について詳細に説明する。また、図7及び図8において、第1の実施の形態について説明した構成要素と共通する構成要素については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0049】
図7は、第2の実施の形態に係るローラユニット10を示し、(a)は分解斜視図、(b)は全体斜視図である。図8(a)は、ローラユニット10の正面図であり、図8(b)は図8(a)のC−C線断面図である。図8(c)は、分割体41の形状を説明するための模式図である。
【0050】
本実施の形態に係るローラユニット10は、第1の実施の形態と同様に、中間部材4と、中間部材4の外面に沿って転動可能に配置された複数の転動体5と、複数の転動体5を中間部材4の外面に沿って循環可能に保持する保持器6とを備えて構成されている。
【0051】
保持器6は、外側循環路形成部材61と内側循環路形成部材62とが、複数の転動体5の循環移動軌跡の外側であって外輪2に接触しない位置に設けられた4つの連結部60において連結されている。転動体5は、円柱状の胴部51と一対の針状突起52,52とを備え、一対の針状突起52,52がそれぞれ外側循環路形成部材61の外側循環路611及び内側循環路形成部材62の内側循環路621によって案内される。
【0052】
中間部材4は、第1の実施の形態と同様、対称形状の一対の分割体41,41からなるが、その形状が第1の実施の形態とは異なっている。すなわち、第1の実施の形態では、第1の当接面41c及び第2の当接面41dが平面であったが、本実施の形態では、第1の当接面41c及び第2の当接面41dが、外輪2の第1及び第2の側面211a,211bに平行な断面(図8(b)に示す断面)において転動体5側に膨出するように形成された断面円弧状の突部によって形成されている。
【0053】
また、本実施の形態では、第1の当接面41c及び第2の当接面41dが転動体5に向かって突出する凸曲面であることにより、第1の当接面41c及び第2の当接面41dと転動体5の胴部51との間には、転動体5に対する中間部材4(分割体41)の傾きを許容する隙間S,Sが形成されている。換言すれば、これらの隙間S,Sが存在することにより、中間部材4が転動体5に対して傾くことが可能となっている。
【0054】
またさらに、本実施の形態では、図8(c)に示すように、接触球面41aの中心位置を中心点41aとし、第1の当接面41c及び第2の当接面41dの突出方向の先端位置を頂点41e,41fとすると、上記の断面における第1の当接面41cの曲率半径rは、接触球面41aの中心点41aと第1の当接面41cの頂点41eとの距離dよりも小さい。また、上記の断面における第2の当接面41dの曲率半径rは、接触球面41aの中心点41aと第2の当接面41dの頂点41fとの距離dよりも小さい。
【0055】
これにより、第1の当接面41cの曲率中心Cは、中心点41aよりも第1の当接面41c側に位置し、第2の当接面41dの曲率中心Cは、中心点41aよりも第2の当接面41d側に位置している。また、頂点41e,41f、曲率中心C,C、及び中心点41aは、分割体41の長手方向(軌道溝211の延伸方向)に沿って直線状に並んでいる。
【0056】
(第2の実施の形態の効果)
以上説明した第2の実施の形態によっても、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。すなわち、トリポード部材3がシャフト7と共に外輪2の底部22側に押し付けられても、その押し付け力が保持器6の一部を経ることなく中間部材4から転動体5に伝達されるので、押し付け力が保持器6に伝達されることを抑制することができる。
【0057】
また、第2の実施の形態によれば、分割体41が接触球面41aにおいてトリポード軸部32からの押し付け力を受け、この押し付け力によって発生する摩擦力によって分割体41がトリポード軸部32と共に保持器6に対して傾動しても、この傾動により転動体5が保持器6の外周側に向かって強く押し付けられることがない。これにより、複数の転動体5を保持器6によって円滑に循環させることが可能となる。
【0058】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について、図9乃至図11を参照して説明する。第3の実施の形態に係る等速ジョイントは、ローラユニット10の構成が第1の実施の形態のものと異なり、その他の構成は第1の実施の形態に係る等速ジョイント1と同様であるので、以下、この違いの部分について詳細に説明する。また、図9乃至図11において、第1又は第2の実施の形態について説明した構成要素と共通する構成要素については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0059】
図9は、第3の実施の形態に係るローラユニット10を示し、(a)は分解斜視図、(b)は全体斜視図である。図10(a)はローラユニット10の正面図である。図10(b)は図10(a)のD−D線断面図であり、図10(c)は図10(a)のE−E線断面図である。また、図10(d)は、図10(c)の部分拡大図である。図11(a)は、分割体41の構成を詳細に示す説明図であり、図11(b)及び(c)は、分割体41と複数の転動体5との相対的な位置関係が変位した状態を示す説明図である。
【0060】
第1の実施の形態では、外側循環路形成部材61と内側循環路形成部材62とが、複数の転動体5の循環移動軌跡の外側に設けられた4つの連結部60において連結された場合について説明したが、本実施の形態では、外側循環路形成部材61と内側循環路形成部材62とが、複数の転動体5の循環移動軌跡の内側に設けられた2つの連結部60において連結されている。中間部材4を構成する一対の分割体41,41は、これら2つの連結部60を挟んで配置されている。
【0061】
それぞれの分割体41の第1の当接面41c及び第2の当接面41dは、第2の実施の形態と同様に転動体5に向かって突出しており、第1の当接面41c及び第2の当接面41dと転動体5の胴部51とのそれぞれの間には、転動体5に対する傾きを許容する隙間S,Sが形成されている。
【0062】
本実施の形態では、外側循環路形成部材61及び内側循環路形成部材62に、トリポード軸部32の軸方向への保持器6と中間部材4との相対移動を規制する移動規制部として、平板状の突片614,624が形成されている。以下、トリポード軸部32の軸方向に平行な方向を支持軸方向という。この支持軸方向は、トリポード部材3及びローラユニット10が外輪2に組み込まれ、かつジョイント角が0°である場合に、外輪2の径方向に相当する。ローラユニット10は、外輪2に組み込まれる前の製造時における組み付け段階では、トリポード軸部32に支持される。
【0063】
外側循環路形成部材61の突片614は、2つの連結部60のそれぞれを挟む4箇所に形成されている。内側循環路形成部材62の突片624は、転動体5の軸方向に沿って外側循環路形成部材61の突片614に対向するように、2つの連結部60のそれぞれを挟む4箇所に形成されている。これらの突片614,624は、複数の転動体5の移動軌跡よりも内側に突出している。
【0064】
保持器6は、外側循環路形成部材61の突片614が中間部材4(分割体41)の第1及び第2の当接面41c,41dに接触することで、中間部材4に対する支持軸方向の内方(トリポード軸部32の根元側)への移動が規制される。また、保持器6は、内側循環路形成部材62の突片624が中間部材4(分割体41)の第1及び第2の当接面41c,41dに接触することで、中間部材4に対する支持軸方向の外方(トリポード軸部32の先端側)への移動が規制される。これにより、外輪2にローラユニット10及びトリポード部材3を組み込む前の状態において、ローラユニット10がトリポード軸部32の根元側に落ち込んでしまったり、トリポード軸部32から外れてしてしまうことを防ぐことができる。
【0065】
図11(b)では、保持器6が中間部材4に対して外輪2の径方向外方に移動した状態を示している。保持器6が中間部材4に対して支持軸方向の外方に移動すると、内側循環路形成部材62の突片624が第1及び第2の当接面41c,41dに接触し、さらなる支持軸方向外方への移動が規制される。また、図示は省略しているが、保持器6が中間部材4に対して支持軸方向の内方に移動すると、外側循環路形成部材61の突片614が第1及び第2の当接面41c,41dに接触し、さらなる支持軸方向内方への移動が規制される。なお、ローラユニット10をトリポード軸部32に組み付ける際には、内側循環路形成部材62の突片624が第1及び第2の当接面41c,41dを乗り越えるように、内側循環路形成部材62を弾性変形させる。
【0066】
また、本実施の形態では、図11(a)に示すように、第1の当接面41cが、転動体5側に膨出するように形成された突部41c、及び突部41cを挟んでテーパ状に形成された一対のテーパ部41c,41cからなる。これらのテーパ部41c,41cは、第1の当接面41cにおける支持軸方向の両端部に形成されている。また、第2の当接面41dも、第1の当接面41cと同様に形成されている。すなわち、第2の当接面41dは、転動体5側に膨出するように形成された突部41d、及び突部41dを挟んでテーパ状に形成された一対のテーパ部41d,41dからなり、テーパ部41d,41dが第2の当接面41dにおける支持軸方向の両端部に形成されている。
【0067】
第1及び第2の当接面41c,41dの突部41c、41cは、一定の曲率半径を有する断面円弧状であり、その曲率中心は接触球面41aの中心点41aとなっている。突部41c、41cの円弧角θは、例えば30〜40°(30°以上40°以下)である。ただし、第2の実施の形態と同様に、第1の当接面41cにおける突部41cの曲率中心が接触球面41aの中心点41aよりも第1の当接面41c側にあってもよく、第2の当接面41dにおける突部41dの曲率中心が接触球面41aの中心点41aよりも第2の当接面41d側にあってもよい。
【0068】
第1の当接面41cのテーパ部41c,41c、及び第2の当接面41dのテーパ部41d,41dは、外輪2の第1及び第2の側面211a,211bに平行な断面(図11(a)に示す断面)において直線状であり、突部41c、41dと滑らかに連続して形成されている。
【0069】
これらのテーパ部41c,41c,41d,41dは、転動体5の胴部51への接触によって、転動体5に対する中間部材4の傾きを規制する傾き規制部として機能する。すなわち、図11(c)に示すように、中間部材4の分割体41が接触球面41aにおいてトリポード軸部32から受ける摩擦力によって保持器6に対して傾くと、第1の当接面41cのテーパ部41cが転動体5の胴部51に接触すると共に、第2の当接面41dのテーパ部41dが転動体5の胴部51に接触する。これにより、さらなる分割体41の傾きが規制される。
【0070】
また、図11(c)に示す方向とは逆方向に分割体41が傾いた場合には、第1の当接面41cのテーパ部41cが転動体5の胴部51に接触すると共に、第2の当接面41dのテーパ部41dが転動体5の胴部51に接触し、さらなる分割体41の傾きが規制される。
【0071】
(第3の実施の形態の効果)
以上説明した第3の実施の形態によれば、第1及び第2の実施の形態と同様の効果が得られる。また、ローラユニット10及びトリポード部材3を外輪2に組み込む前の状態において、ローラユニット10のトリポード軸部32に対する軸方向への相対移動を規制することができるので、組み付け性が向上する。またさらに、転動体5に対する中間部材4の傾きが規制されるので、中間部材4のローラユニット10に対する姿勢が安定する。
【0072】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について、図12を参照して説明する。第4の実施の形態に係る等速ジョイントは、保持器6における突片614,624の形状が第3の実施の形態と異なり、その他の構成は第3の実施の形態と同様であるので、この違いの部分について説明する。また、図12において、第1乃至第3の実施の形態について説明した構成要素と共通する構成要素については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0073】
図12は、第4の実施の形態に係るローラユニット10を示し、(a)は正面図、(b)は(a)のF−F線断面図、(c)は(a)のG−G線断面図、(d)は(c)の部分拡大図である。
【0074】
第3の実施の形態では、保持器6の突片614,624が平板状に形成されていたが、本実施の形態では、突片614,624が転動体5の移動軌跡よりも内側で湾曲した返し形状を有している。外側循環路形成部材61の突片614は、内側循環路形成部材62から離間する方向に湾曲し、内側循環路形成部材62の突片624は、外側循環路形成部材61から離間する方向に湾曲している。保持器6における突片614,624の位置及び個数は第3の実施の形態と同様である。
【0075】
(第4の実施の形態の効果)
以上説明した第4の実施の形態によれば、第3の実施の形態について説明した効果に加え、突片614,624が湾曲した返し形状を有していることから、中間部材4の分割体41が突片614,624に接触した際に、第1及び第2の当接面41c,41dに傷が発生しにくくなる。また、保持器6を中間部材4に組み付ける際に、内側循環路形成部材62を弾性変形させやすくなり、組み付け性が向上する。
【0076】
(付記)
以上、本発明のスライド式等速ジョイントを第1乃至第4の実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。
【0077】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記各実施の形態では、保持器6を角丸長方形状に形成した場合について説明したが、これに限らず、例えば軌道溝211の延伸方向における両端部が半円状に形成されたトラック形状であってもよい。この場合でも、トリポード部材3が外輪2の底部22側に押し付けられた際に外輪2に干渉しない部位に連結部60を設けることにより、上記実施の形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0078】
また、上記各実施の形態では、中間部材4は、対称形状の一対の分割体41,41からなる場合について説明したが、これに限らず、例えば分割体が一体化した環状の1つの部品であってもよい。
【0079】
また、上記第3及び第4の実施の形態では、保持器6における外側循環路形成部材61に複数の突片614を形成すると共に、内側循環路形成部材62に複数の突片624を形成した場合について説明したが、これに限らず、外側循環路形成部材61には突片614を形成しなくともよい。この場合でも、内側循環路形成部材62の突片624により、中間部材4からの保持器6の抜け出しを防止することができ、組み付け性の向上に寄与することができる。ただし、外側循環路形成部材61及び内側循環路形成部材62に突片614,624を形成すれば、保持器6を組み付ける際に、その裏表を確認する必要がない。つまり、保持器6を外側循環路形成部材61及び内側循環路形成部材62の何れの側から中間部材4に組み合わせても、抜け出し防止の効果を得ることができる。これにより、組み付け性をより確実に向上させることができる。
【符号の説明】
【0080】
1…等速ジョイント、10…ローラユニット、2…外輪(外方部材)、20…収容空間、21…筒部、211…軌道溝、211a…第1の側面、211b…第2の側面、22…底部、22a…底面、23…ステム部、232…環状溝、3…トリポード部材(内方部材)、30…挿通孔、31…ボス部、31a…外周面、32…トリポード軸部(脚軸)、32a…外周面、4…中間部材、41…分割体、41a…接触球面、41a…中心点、41b…動力伝達面、41c…第1の当接面、41c…突部、41c,41c…テーパ部(傾き規制部)、41d…第2の当接面、41d…突部、41d,41d…テーパ部(傾き規制部)、41e,41f…頂点、5…転動体、51…胴部、52…針状突起、5a…外郭線、5b…長方形、6…保持器、60…連結部、61…外側循環路形成部材、62…内側循環路形成部材、611…外側循環路、621…内側循環路、612,622…導入口、613,623…舌片、614,624…突片(移動規制部)、61a,62a…挿通孔、7…シャフト、70…スナップリング、71…スプライン嵌合部、81…第1の金型、82…第2の金型、810…凹部、820…凸部、9…連結部材、90…胴部、91,92…端部、O,O…回転軸、S,S…隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12