特許第6565247号(P6565247)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6565247
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】旋回式クレーン
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/22 20060101AFI20190819BHJP
【FI】
   B66C13/22 N
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-57297(P2015-57297)
(22)【出願日】2015年3月20日
(65)【公開番号】特開2016-175745(P2016-175745A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2018年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】100092875
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 孝治
(72)【発明者】
【氏名】西本 昌司
(72)【発明者】
【氏名】赤松 幹夫
【審査官】 八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−291392(JP,A)
【文献】 特開昭55−052884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00−15/06;23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊り荷の吊り下げ長さから吊り荷の荷振れの周期を演算する荷振れ周期演算手段と、ブームの旋回角を検出するブーム旋回角検出手段と、該ブーム旋回角検出手段によって検出されたブームの旋回角が旋回限界位置付近に近づくと、上記荷振れ周期演算手段によって演算された荷振れ周期に合わせてブームの旋回速度を低下させながらブームの旋回を自動的に停止させるブーム旋回停止制御手段とを有する旋回式クレーンにおいて、ウインチを停止させるウインチ停止制御手段と、該ウインチ停止制御手段がウインチの停止制御を開始してからウインチが停止するまでに必要なウインチ停止時間を演算するウインチ停止時間演算手段と、上記ウインチ停止制御開始時のブーム旋回速度に基づいて、上記ウインチ停止時間演算手段により演算されたウインチ停止時間と上記荷振れ周期演算手段により演算された荷振れ周期とを加えた時間が経過した時点における上記ブームの旋回角を演算するブーム旋回角演算手段と、該ブーム旋回角演算手段で演算されたブーム旋回角が、上記ブームの旋回限界位置付近であるか否かを判定するブーム旋回限界判定手段を設け、該ブーム旋回限界判定手段により、上記ブーム旋回角演算手段で演算されたブーム旋回角だけ移動した上記ブームの旋回位置が上記ブームの旋回限界位置付近であると判定された場合には、上記ウインチ停止制御手段によって上記ウインチを停止させた後、上記ブーム旋回停止制御手段によって、上記荷振れ周期演算手段により演算された荷振れ周期に合わせて旋回速度を低下させながら上記ブームの旋回を停止させるようにしたことを特徴とする旋回式クレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願の発明は、吊り荷の荷振れを生じさせることなくブームの旋回操作を自動的、かつ緩やかに停止させることができる旋回停止制御機能を備えた旋回式クレーンに関し、さらに詳しくは、ブームの旋回操作に加えて、ウインチの巻き上げ、巻き下げ操作を伴う場合にも、ブームの旋回操作のみの場合と同様に吊り荷の荷振れを生じさせることなく、ブームの旋回操作を自動的、かつ緩やかに停止させることができる旋回停止制御機能を備えた旋回式クレーンの構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブームを旋回可能とした旋回式クレーンの中には、作業範囲の制限領域(旋回限界)に対応してブームの旋回操作を安全に自動停止させるために、ブーム旋回角検出手段により実際のブームの旋回角を検出しながらブームの旋回操作が予め定められた旋回限界付近に近づくと、少しずつ旋回速度を落として、緩やかに自動停止させるブーム旋回停止制御機能を備えたものがある。
【0003】
一方、同旋回式クレーンでは、ブームの旋回操作時に吊り荷の吊り下げ長さに応じた大きさの荷振れが生じるので、そのままでは安全に停止させることができない。
【0004】
そこで、上記のようなブーム旋回操作の停止制御機能を備えた旋回式クレーンの場合、上記ブーム旋回操作の停止時に、その時の吊り荷の吊り下げ長さに応じた荷振れの周期と同じ時間でブームの旋回速度を低下させるブーム旋回停止制御方法が採用されている(吊り荷を目標位置に位置させたときの荷振れを抑制する荷振れ抑制機能を備えた旋回式クレーンの例として、たとえば特許文献1を参照)。
【0005】
このようなブーム旋回自動停止制御方法によれば、吊り荷の荷振れを生じさせることなく、ブームの旋回操作を自動的、かつ緩やかに停止させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−74579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、旋回式クレーンでは、上記のようなブームの旋回操作を行う場合において、単にブームの旋回操作だけでなく、ブームの旋回操作を行いながら、同時にウインチの巻き上げ又は巻き下げを行うケースも多い(例えば図4のタイムチャートの(a)に示すブーム操作信号に加えたウインチ操作信号出力を参照)。
【0008】
そして、このようなブームの旋回操作に加えてウインチの巻き上げ又は巻き下げ操作を伴う場合においても、上記のように荷振れ周期t1(秒)に応じたブームの旋回動作の停止に合わせて、当該ウインチの動作をも自動的、かつ緩やかに停止させるようにすることが考えられる(例えば上記図4のタイムチャートの旋回出力信号(b)およびウインチ出力信号(c)を参照)。
【0009】
しかし、このようにブームの旋回速度を下げながら、ウインチの巻き上げ又は巻き下げ速度を下げるようにした場合、荷振れを抑制すべきブームの旋回中にウインチの巻き上げ又は巻き下げが行われることから、吊り荷の吊り下げ長さが時々刻々と変化する。
【0010】
その結果、上記荷振れの周期t1(秒)が定まらなくなり、上記ブームの旋回操作のみの場合のように、荷振れの周期t1(秒)と同じ時間でブームの旋回速度を低下させることができず、吊り荷の荷振れを防止しながら、旋回操作を緩やかに自動停止させることができない問題があった。
【0011】
この出願の発明は、このような課題を解決するためになされたもので、ウインチの停止制御を開始してからウインチが停止するまでに必要なウインチ停止時間を演算し、ブームの旋回限界位置に対応して吊り荷の吊り下げ長さに応じた荷振れ周期で旋回速度を低下させる旋回停止制御が開始される時点ではウインチが停止しているように、ウインチの停止時間に応じた早めのウインチの停止制御を行うことによって、ブームの旋回操作とともにウインチの巻き上げ又は巻き下げ操作を行っていた場合にも、吊り荷の荷振れを生じさせることなく、ブームの旋回操作を緩やかに停止させることができるようにした旋回式クレーンを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この出願の発明は、上記の課題を解決するために、次のような課題解決手段を備えて構成されている。
(1)第1の課題解決手段
すなわち、この発明の第1の課題解決手段は、 吊り荷の吊り下げ長さから吊り荷の荷振れの周期を演算する荷振れ周期演算手段と、ブームの旋回角を検出するブーム旋回角検出手段と、該ブーム旋回角検出手段によって検出されたブームの旋回角が旋回限界位置付近に近づくと、上記荷振れ周期演算手段によって演算された荷振れ周期に合わせてブームの旋回速度を低下させながらブームの旋回を自動的に停止させるブーム旋回停止制御手段とを有する旋回式クレーンにおいて、ウインチを停止させるウインチ停止制御手段と、該ウインチ停止制御手段がウインチの停止制御を開始してからウインチが停止するまでに必要なウインチ停止時間を演算するウインチ停止時間演算手段と、上記ウインチ停止制御開始時のブーム旋回速度に基づいて、上記ウインチ停止時間演算手段により演算されたウインチ停止時間と上記荷振れ周期演算手段により演算された荷振れ周期とを加えた時間が経過した時点における上記ブームの旋回角を演算するブーム旋回角演算手段と、該ブーム旋回角演算手段で演算されたブーム旋回角が、上記ブームの旋回限界位置付近であるか否かを判定するブーム旋回限界判定手段を設け、該ブーム旋回限界判定手段により、上記ブーム旋回角演算手段で演算されたブーム旋回角だけ移動した上記ブームの旋回位置が上記ブームの旋回限界位置付近であると判定された場合には、上記ウインチ停止制御手段によって上記ウインチを停止させた後、上記ブーム旋回停止制御手段によって、上記荷振れ周期演算手段により演算された荷振れ周期に合わせて旋回速度を低下させながら上記ブームの旋回を停止させるようにしている。
【0013】
すなわち、この発明の第1の課題解決手段の構成では、まず、ウインチ停止制御手段に加えて、ウインチ停止時間演算手段が設けられており、ウインチ停止制御手段がウインチの停止制御を開始してから実際にウインチが停止するまでにかかるウインチ停止時間が演算されるようになっている。
【0014】
次に、それに加えて、上記ウインチ停止制御手段によるウインチ停止制御開始時のブーム旋回速度に基づいて、上記ウインチ停止時間演算手段により演算されたウインチ停止時間と上記荷振れ周期演算手段により演算された荷振れ周期とを加えた時間が経過した時点におけるブームの旋回角を演算するブーム旋回角演算手段と、該ブーム旋回角演算手段で演算されたブーム旋回角だけ移動したブームの旋回位置が、予め定められているブームの旋回限界位置付近であるか否かを判定するブーム旋回限界判定手段が設けられている。
【0015】
そして、これにより、上記ウインチ停止制御開始時のブーム旋回速度に基づいて、上記ウインチ停止時間および荷振れ周期を合わせた時間が経過した時点におけるブームの旋回位置を予測し、該予測されたブームの旋回位置が、予め設定されているブームの旋回限界位置付近であるか否かが判定される。
【0016】
そして、該判定されたブームの旋回位置が、上記ブームの旋回限界位置付近であった時には、まずウインチチ停止制御手段によってウインチの停止制御を行い、上記ウインチ停止時間が経過した時点から、上記ブーム旋回停止制御手段を作動させて、上記荷振れ周期に合わせたブーム旋回操作の停止制御を開始して、ブームの旋回動作を緩やかに停止させる。
【0017】
他方、上記判定されたブームの旋回位置が上記ブームの旋回限界位置付近でない時には、そのまま旋回操作を継続させる。
【0018】
このような構成によると、少なくともブーム旋回角検出手段により検出される実際のブームの旋回角が作業範囲制限領域等の旋回限界位置付近に近づき、その旋回速度を低下させながら、旋回を停止させなければならない段階になると、ウインチの動作は自動的に停止されていることになる。
【0019】
したがって、ブームの旋回操作を行いながら、ウインチの操作を行っていた複合操作時にも、ウインチ操作を行っていなかった単独操作の場合と同様に、吊り荷の荷振れを生じさせることなく、ブームの旋回を緩やかに自動停止させることができるようになる。
【発明の効果】
【0020】
以上の結果、この出願の発明によると、ブームの旋回操作とともにウインチの巻き上げ又は巻き下げ操作を行っていた場合にも、ブームの旋回操作のみであった場合と同様に吊り荷の荷振れを生じさせることなく、ブームの旋回操作を緩やかに自動停止させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】この出願の発明の実施の形態に係る旋回式クレーンのクレーン本体部分の基本的な構成を示す概略図である。
図2】同実施の形態に係る旋回式クレーンの旋回停止制御装置の制御回路部分の構成を示すブロック図である。
図3】同実施の形態に係る旋回式クレーンの旋回停止制御装置の図2の制御回路によるウインチの停止制御およびそれを前提とするブームの旋回停止制御作用を示すタイムチャ−トである。
図4】ウインチの巻き上げ又は巻き下げ操作を伴う場合における従来の旋回式クレーンのブーム旋回停止制御装置よる問題点を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この出願の発明を実施するための所定の形態の構成および作用について、添付の図1図3を参照して詳細に説明する。
【0023】
<この出願の発明が適用される旋回式クレーンの基本的な構成>
まず、図1は、この出願の発明の旋回式クレーンにおけるブーム旋回停止制御装置が適用される旋回式クレーンのクレーン本体部分の基本的な構成を示している。この実施の形態では、旋回式クレーンの一例として、たとえば移動式の旋回式クレーン(トラッククレーン)が採用されている。
【0024】
すなわち、この実施の形態の旋回式クレーンは、車輪1a,1a・・と、運転席1bを有して走行可能に構成された車両(キャリア)1と、該車両1の車体1cの上部に旋回支持体2を介して旋回可能に設けられた旋回体3と、該旋回体3のブーム支持部にヒンジ(フートピン)4を介して基端側を枢着され、起伏シリンダ5を介して上下方向に起伏可能に、また伸縮シリンダ(図示せず)を介して長さ方向に伸縮可能に設けられた作業用のブーム6と、該ブーム6の基端側旋回体3上のウインチ30から同ブーム6の先端側ブームヘッド部分(シーブ部分)に延び、同ブームヘッド部分から下方に延設されたワイヤロープ7と、該ワイヤロープ7に吊り下げられたフックブロック8とからなっている。
【0025】
そして、吊り荷作業時には、上記フックブロック8に所定の荷重の吊り荷31が吊り下げられ、上記ウインチ30のウインチドラム(図示省略)を回転させるウインチモータ(図2中の符号24を参照)の駆動により、巻き上げられ、また巻き下げられる。また、それと同時に、上記ブーム6の起伏、伸縮、旋回によって必要な吊り荷作業が行われる。
【0026】
同ブーム6の起伏、伸縮、旋回操作は、当該クレーンに設けられている作業範囲制限装置における作業範囲制限パラメータによって可動範囲が制限されているほか、後述するように旋回操作が旋回限界位置近傍に近づいた時には、同ブーム6の旋回操作を荷振れ周期に合わせて自動的に停止させるブーム旋回自動停止制御装置により停止されるようになっている。
【0027】
また、上記車両1の車体1cの前後には、左右各方向に張り出すアウトリガ9,9・・が設けられている。また、上記旋回体3の前端側にはクレーン作業用の運転席3aが設けられている一方、後端側にはカウンタウエイト3bが設けられている。
【0028】
この実施の形態の場合、上記ブーム6は、たとえばベースブーム6a、中間ブーム6b、トップブーム6cの3本のブーム(3段ブーム)で構成されている。
【0029】
上記旋回支持体2は、図示はしないが、車体1c側に支持された受台と、該受台上部に固定された大径の固定歯車(旋回輪)と、上記受台の上面にあって、上記旋回体3を水平回転可能に支持するボールベアリングと、上記受台の中心軸部分を上下に貫通する筒状のセンタージョイント(ロータリージョイント)と、該センタージョイントの上部に同心状態で設けられた筒体構造のスリップリング部とからなっている。
【0030】
また、上記旋回体3側には、油圧モータ(または電気モータ)よりなるブーム旋回モータ(図2中の符号25を参照)が設けられており、該ブーム旋回モータのピニオンを上記大径の固定歯車に噛み合わせ、同ブーム旋回モータにより回転駆動することによって、上記旋回体3が上記センタージョイントを回転中心として、上記ボールベアリング上を右方向または左方向に任意に旋回せしめられるようになっている。
【0031】
そして、これにより、上記作業範囲制限装置により定められた作業範囲制限領域内(作業現場においてビルなどの障害物がある場合を含む)において、上記ブーム6が右方向又は左方向に所定の旋回角範囲で旋回操作される。
【0032】
<ブーム旋回操作の停止制御およびその前提となるウインチの停止制御に必要な各種検出手段>
この出願の発明は、前述のように、その時のウインチ30のウインチドラムの回転速度に基づいて、ウインチ30の停止制御を開始(停止指令信号を出力)してから実際にウインチ30(ウインチモータ24およびウインチドラム)が停止するまでに必要なウインチ停止時間t2を演算し、それに対応して、上記吊り荷31の吊り下げ長さlに応じた荷振れ周期t1で上記ブーム6の旋回操作を停止させるブーム旋回停止制御の開始よりも先に、まずウインチ30の停止制御を開始し、上記ウインチ30の停止時間が経過した時点から上記ブーム6の旋回停止制御が開始されるようにすることによって、上記ブーム旋回停止制御が開始される時点ではウインチ30が停止しているようにし、ウインチ30の巻き上げ又は巻き下げを行ないながらブーム6の旋回操作が行われていた場合にも、そうでなかった場合と同様に吊り荷31の荷振れを生じさせることなく、ブーム6の旋回操作を緩やかに自動停止させることができるようにしている。
【0033】
そして、そのような制御を可能とするために、上記図1の旋回式クレーンには、たとえば図2の制御回路図に示されるような検出手段が設けられている。
【0034】
すなわち、上記ウインチ30部分には同ウインチ30のウインチドラムの回転量nを検出するウインチドラム回転量検出手段12が、また上記ブーム6部分には上記ブーム6の実際の旋回角φを検出するブーム旋回角検出手段14がそれぞれ設けられている。
【0035】
上記ウインチドラム回転量検出手段12は、例えばパルスエンコーダにより構成されており、上記ウインチドラムの回転量に応じて出力されるパルス数によりウインチドラムの回転量nを検出する。
【0036】
これら各検出手段で検出された検出データは、次に述べるようなクレーンの旋回停止制御装置を構成するマイコン式の旋回停止制御ユニット10における制御回路の所定の演算手段部分に入力されて、必要な演算処理、制御処理が施されるようになっている。
【0037】
<クレーンの旋回停止制御ユニットの制御回路部分の構成>
すなわち、この実施の形態のクレーンの旋回停止制御ユニット10は、例えば図2に詳細に示すように、上記ウインチドラム回転量検出手段12により検出されたウインチドラムの回転量nに基づいて吊り荷31の吊り下げ長さ(ワイヤロープ7によるブームヘッドからの吊り下げ長さ)lを演算する吊り下げ長さ演算手段16と、該吊り下げ長さ演算手段16により演算された吊り荷31の吊り下げ長さlに基づいて吊り荷31の荷振れの周期t1を演算する荷振れ周期演算手段17と、上記ウインチドラム回転量検出手段12により検出されたウインチドラムの回転量nを入力し、同ウインチドラムの単位時間当たりの回転量(パルスエンコーダからのパルス数)から得られたウインチドラムの回転速度に基づいて、後述するウインチ停止制御手段22によるウインチ30の停止制御が開始されてから実際にウインチ30(ウインチモータ24)が停止するまでのウインチ停止時間t2を演算するウインチ停止時間演算手段18と、上記ブーム旋回角検出手段14により検出された実際のブーム旋回角φに基づいて上記ブーム6の旋回速度ωを演算するブーム旋回速度演算手段15と、このブーム旋回速度演算手段15により演算された実際のブーム旋回速度ω、上記ウインチ停止時間演算手段18により演算されたウインチ停止時間t2、上記荷振れ周期演算手段17により演算された吊り荷31の吊り下げ長さに応じた荷振れ周期t1を各々入力し、現在のブーム旋回速度ωで旋回しながら、上記ウインチ30の停止時間t2と上記荷振れ周期t1とを合わせた時間(t1+t2)が経過した時の当該ブーム6の旋回角φ1を演算するブーム旋回角演算手段19と、予め作業範囲制限領域に応じたブーム6の旋回限界位置φ2を設定するブーム旋回限界位置設定手段21と、上記ブーム旋回角演算手段19で演算されたブーム旋回角φ1だけ移動した上記ブーム6の旋回位置(予測旋回位置)が、上記ブーム旋回限界位置設定手段21で設定されているブーム6の旋回限界位置φ2付近であるか否かを判定し、上記ブーム6の旋回位置(予測旋回位置)が上記ブーム旋回限界位置設定手段21で設定されている上記ブーム6の旋回限界位置φ2付近である場合には、ウインチ停止制御手段22に対してウインチ停止指令信号S1を出力してウインチモータ24を停止させるとともに、同ウインチ停止指令信号S1を出力してから上記ウインチ停止時間t2が経過すると、上記荷振れ周期演算手段17によって演算された荷振れ周期t1に合わせて上記ブーム6の旋回を停止させるブーム旋回停止制御手段23に対してブーム旋回停止指令信号S2を出力するブーム旋回限界判定手段20と、該ブーム旋回限界判定手段20から供給されたウインチ停止指令信号S1に対応して上記ウインチモータ24を停止させるウインチ停止制御手段22と、上記ブーム旋回限界判定手段20からブーム旋回停止指令信号S2の入力があった時(ウインチ停止時間演算手段18により演算されたウインチ停止時間t2が経過した時)に、上記荷振れ周期演算手段17によって演算された荷振れ周期t1に合わせて上記ブーム旋回モータ25を制御し、上記ブーム6の旋回速度ωを低下させながら上記ブーム6の旋回を停止させるブーム旋回停止制御手段23とから構成されている。
【0038】
なお、上記吊り荷31の吊り下げ長さlを演算する上記吊り下げ長さ演算手段16による吊り下げ長さの演算は、上述のように、その時のブーム6の長さ(伸縮量)Lとウインチドラムの回転量nの変化から求められるが、より具体的には、当該ウインチドラムの直径、ワイヤロープの掛け数等をも考慮して演算される。
【0039】
また、上記ブーム6の旋回速度を演算するブーム旋回速度演算手段15は、たとえばポテンショメータ等を用いて構成された上記ブーム旋回角検出手段14から出力される実際のブーム旋回角φの検出値を所定のサンプリング周期で入力し、同サンプリング周期ごとのブーム旋回角φの変化から現在のブーム旋回速度ωを演算するようになっている。
【0040】
また、上記荷振れ周期演算手段17は、上記吊り荷長さ演算手段16により演算された吊り荷31の吊り下げ長さlに基づいて荷振れ周期t1を演算する(t1=2π√l/g ただし、gは重力加速度を示す)。
【0041】
また、以上の説明における、上記吊り荷31の吊り下げ長さl、荷振れ周期t1、ウインチ停止時間t2、ブーム旋回角φ、ブーム旋回角φ1、ブーム旋回限界位置φ2、ブーム旋回速度ω等の単位は、次の通りである(以下の説明においても同じである)。
【0042】
吊り荷31の吊り下げ長さl:m、荷振れ周期t1:s(秒)、ウインチ停止時間t2:s(秒)、ブーム旋回角φ:rad、ブーム旋回角φ1:rad、ブーム旋回限界位置φ2:rad、ブーム旋回速度ω:rad/s
<ブーム旋回操作の停止制御およびそれを前提とするウインチの停止制御>
次に、この実施の形態では、上記図2の構成の制御回路を用いて、次のようなブーム旋回操作の停止制御および同ブーム旋回操作停止制御の前提となるウインチの停止制御が行われる。
【0043】
これらウインチの停止制御およびブーム旋回操作の停止制御は、たとえば図3のタイムチャートの(b)〜(a)に示すように、相互にリンクし、かつ連続した制御シーケンスとして実行されるようになっている。
【0044】
すなわち、上記図2の制御回路の構成では、まずウインチ30の駆動状態を制御するウインチ停止制御手段22に加えて、ウインチ停止時間演算手段18が設けられており、その時のウインチ30のウインチドラムの回転速度に基づき、ウインチ停止制御手段22がウインチ30の停止制御を開始してから実際にウインチ30(ウインチモータ24)が停止するまでにかかるウインチ停止時間t2が演算されるようになっている。
【0045】
次に、それに加えて、上記ウインチ停止制御手段22によるウインチ停止制御開始時のブーム旋回速度ωに基づいて、上記ウインチ停止時間演算手段18により演算されたウインチ停止時間t2と上記荷振れ周期演算手段17により演算された荷振れ周期t1とを加えた時間(t1+t2)が経過した時点におけるブーム6の旋回角φ1を演算(予測)するブーム旋回角演算手段19と、該ブーム旋回角演算手段19で演算(予測)されたブーム旋回角φ1だけ移動した時のブーム6の旋回位置が、たとえば作業範囲制限領域に対応してブーム旋回限界位置設定手段21により予め定められているブーム6の旋回限界位置φ2付近であるか否かを判定するブーム旋回限界判定手段20が設けられている。
【0046】
そして、これにより、上記ウインチ停止制御開始時のブーム旋回速度ωに基づいて、上記ウインチ停止時間t2および荷振れ周期t1を合わせた時間(t1+t2)が経過した時点におけるブーム6の旋回角φ1を演算(予測)し、該演算(予測)されたブーム旋回角φ1だけ移動した時のブーム6の旋回位置が、上記予め設定されている作業範囲制限領域におけるブーム6の旋回限界位置φ2付近であるか否かが判定される。
【0047】
そして、該判定されたブーム6の旋回位置が、上記ブーム6の旋回限界位置φ2付近であった時には、先ず上記ウインチ停止制御手段22によりウインチモータ24の駆動を停止し、ウインチ30の作動を停止させる。このウインチモータ24の駆動停止指令時には、それと同時に上記ブーム6の伸縮、起伏等の旋回操作以外の全ての操作を停止させて、作業半径、吊り荷31の吊り下げ長さが変化しないようにする(図3の(b)参照)。
【0048】
そして、その後、上記ウインチ停止時間t2が経過すると、同ウインチ停止時間t2の経過時点(図3の(b)参照)から、上記ブーム旋回停止制御手段23を作動させて、上記荷振れ周期t1に合わせたブーム旋回操作の停止制御を開始して、上記ブーム6の旋回を緩やかに停止させる(図3の(a)参照)。
【0049】
他方、上記判定されたブーム6の旋回角位置が、上記ブーム6の旋回限界位置φ2付近でない時には、そのまま旋回操作を継続させる。
【0050】
このような構成によると、少なくともブーム旋回角検出手段14により検出される実際のブーム6の旋回角φが作業範囲制限領域の旋回限界位置φ2付近に近づき、その旋回速度ωを低下させながら、旋回を停止させなければならない段階になると、ウインチ30の動作は自動的に停止されていることになり、それに続いてブームの旋回停止制御が開始されることになる。
【0051】
したがって、ブーム6の旋回操作を行いながら、ウインチ30の巻き上げ又は巻き下げ操作を行っていた複合操作時にも、ウインチ30の巻き上げ又は巻き下げ操作を行っていなかった場合と同様に、吊り荷31の荷振れを生じさせることなく、ブーム6の旋回操作を緩やかに自動停止させることができるようになる。
【0052】
この場合、上記ウインチ30の停止制御を開始してから実際に停止するまでの間、上記ブーム6は、少なくとも旋回操作自体は可能であり、通常の旋回速度で旋回させることができる。またウインチ30の停止後も、旋回自体は可能であるが、その旋回速度が徐々に低減される(図3の(a)参照)。
【0053】
これらの結果、上記実施の形態によると、ブーム6の旋回操作とともにウインチ30の巻き上げ又は巻き下げ操作を行っていた時にも、ブーム6の旋回操作のみであった場合と同様に吊り荷31の荷振れを生じさせることなく、ブーム6の旋回操作を緩やかに自動停止させることが可能となる。
【符号の説明】
【0054】
1は車両、2は旋回支持体、3は旋回体、5は起伏シリンダ、6はブーム、7はワイヤロープ、8はフックブロック、10はクレーンの旋回自動停止制御ユニット、12はウインチドラム回転量検出手段、14はブーム旋回角検出手段、16は吊り下げ長さ検出手段、17は荷振れ周期演算手段、18はウインチ停止時間演算手段、19はブーム旋回角演算手段、20はブーム旋回限界判定手段、21はブーム旋回限界位置設定手段、22はウインチ停止制御手段、23はブーム旋回停止制御手段、24はウインチモータ、25はブーム旋回モータである。
図1
図2
図3
図4