(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一例である実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0022】
[画像形成装置用の環状体]
図1は、本実施形態に係る環状体の構成の一例を示す概略斜視図である。
本実施形態に係る画像形成装置用の環状体(以下、単に「環状体」とも称す)15は、
図1に示すように、UL94規格のHB水準又はV−2水準以上の難燃性を有する樹脂(以下、「特定の樹脂」とも称す)と、導電剤と、赤外線吸収剤と、を含む樹脂層からなる単層体で構成される。なお、環状体15は、前記樹脂層を少なくとも表面層に有する積層体で構成されていてもよい。
そして、環状体15は、600nm以上1000nm以下の少なくとも一部の波長領域の赤外線(以下、単に「赤外線」とも称す)に対する透過性を有する。
ここで、「赤外線に対して透過性を有する」とは、少なくとも前記範囲のうち一部の波長領域の赤外線について、透過率が80%以上(好ましくは90%以上)であることをいう。本実施形態に係る環状体によれば、例えば、半導体レーザー装置により出射された赤外線レーザ光を吸収する赤外線吸収剤(例えば、近赤外線吸収色素)を含有するため、発熱効果を有する。
【0023】
本実施形態に係る環状体15は、赤外線を透過する性質を有し、かつ樹脂層に赤外線吸収剤を含有する。このため、例えば環状体15に赤外線のレーザ光(以下、「赤外線レーザ光」とも称す)を照射すると、赤外線レーザ光の一部は、赤外線吸収剤に吸収され、残りの赤外線レーザ光の一部は環状体15を透過する。赤外線レーザ光を吸収した環状体15の部分(赤外線吸収剤を含む領域)は局所的に熱を放出して自己発熱する。つまり、環状体15は、赤外線レーザ光(600nm以上1000nm以下の領域)により発熱する自己発熱性の環状体である。
また、樹脂層は、UL94規格のHB水準又はV−2水準以上の難燃性を有する樹脂を含有する。この難燃性により、環状体15は、インクの液滴(例えば紫外線硬化性インク)若しくはトナー像が転写又は定着される際の加熱環境下で熱分解しにくくなる。
また、環状体15は、導電剤を含有しており導電性を有する。この導電性により、静電気による帯電が抑制される。例えば、環状体15を用いてトナー像を転写定着又は定着するときは、トナー像の一部が記録媒体に転写定着又は定着されずに環状体15に付着する現象(トナーオフセット)が抑制される。また、環状体15を用いてトナー像を転写定着するときは、像保持体の表面からトナー像を環状体15の外周面に静電的に一次転写して保持しやすくなる。
本実施形態では、この自己発熱性の環状体15を各種画像形成装置の部材(例えば転写部材、転写定着部材、定着部材)に適用する。これにより、インクの液滴若しくはトナー像の記録媒体への転写性、定着性が向上し、画像不良が抑制されることとなる。
なお、環状体15の各種画像形成装置への適用例については、後述する実施形態で詳細に説明する。
【0024】
以下、本実施形態に係る環状体15の構成について具体的に説明する。
【0025】
(樹脂層)
樹脂層は、例えば、特定の樹脂と、導電剤と、赤外線吸収剤と、を含む。また、樹脂層は、必要に応じて、その他添加剤を含んでもよい。
−特定の樹脂−
特定の樹脂は、UL94規格のHB水準又はV−2水準以上の難燃性を有し、赤外線を透過する性質を有する樹脂であれば特に限定されない。樹脂としては、一般にエンジニアリングプラスチックと呼ばれるものが適している。
エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)(例えばナイロン9、ナイロン12)、ポリアミドイミド(PAI)、強化ポリエチレンテレフタレート(強化PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスルホン(PSU)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアリレート(PAR)、ポリアセタール(POM)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、フッ素樹脂(FR)、ポリエーテルイミド(PEI)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリエステルエラストマー(TPC)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリシクロオレフィン(COP)、ポリメチルペンテン(PMP)、全芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)等が挙げられる。
【0026】
これらの中でも、耐熱性に優れるポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエチレンナフタレートが好ましい。また、加工性の観点からは、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホンが好ましい。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、上記樹脂は、硬化性溶液の被硬化層、硬化性インクのインク層又はトナー像に対する環状体15からの離型性を向上する観点から、分子内にフッ素原子を含有することが好ましい。
【0027】
ポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とからの縮合物であるポリアミック酸をイミド化反応(脱水閉環反応)させたポリイミドが挙げられる。
具体的には、ポリイミドは、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを1:1のモル比で混合し、有機極性溶媒中で重合反応した後、ポリアミック酸をイミド化反応させて得られたポリイミドが挙げられる。
なお、塗布液には、ポリイミドの前駆体であるイミド化反応前のポリアミック酸を含ませ、塗布後、ポリアミック酸をイミド化反応して、ポリイミドを形成する。
【0028】
テトラカルボン酸二無水物としては、特に限定されず、芳香族系、脂肪族系のいずれの化合物であってもよい。
テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物(6FDA)、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(DMCBDA)、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ノルボルネンジカルボン酸二無水物、が好適に用いられる。
これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独で又は2種以上組み合わせて用いる。
【0029】
ジアミン化合物は、分子構造中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物であれば特に限定されない。
ジアミン化合物としては、例えば、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンビス(p−フェニレンオキシ)ジアミン(APPF)、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(TFMB)が挙げられる。
また、ジアミン化合物としては、ジフェニルエーテル骨格を有するジアミン化合物であってもよい。ジフェニルエーテル骨格を有するジアミン化合物としては、例えば、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジエトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、パラ−フェニレンジアミン(PDA)、メタ−フェニレンジアミンなどの芳香族ジアミンが挙げられる。
これらのジアミン化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて併用してもよい。
【0030】
上記のテトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物は、環状体の赤外線に対する透過性と機械的強度、柔軟性の観点から、脂肪族の環構造を有するものが好ましい。また、上記のテトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の少なくとも一つは、前記特定の樹脂に離型性を付与する観点から、フッ素原子を有する置換基で置換されていることが好ましい。フッ素原子を有する置換基としては、トリフルオロメチル基(CF
3基)、フッ素(F基)が好ましい。
【0031】
ポリアミドイミドは、トリカルボン酸とジアミン化合物とからの縮合物であるポリアミド−ポリアミック酸を脱水閉環反応させたポリアミドイミドが挙げられる。
具体的には、ポリアミドイミドは、例えば、
(1)トリカルボン酸無水物とジアミンとの等モル量を有機極性溶媒中、脱水触媒存在下、高温で重縮合・イミド化反応(脱水閉環反応)をさせる方法、
(2)無水トリカルボン酸モノクロリドとジアミンとの等モル量を有機極性溶媒中、低温で重縮合・イミド化反応をさせる方法、
(3)トリカルボン酸無水物とジイソシアネートとを有機極性溶媒中、高温で重縮合・イミド化反応させる方法、
等によって得られるポリアミドイミドが挙げられる。
なお、塗布液には、ポリイミドの前駆体であるイミド化反応前のポリアミド−ポリアミック酸を含ませ、塗布後、ポリアミド−ポリアミック酸をイミド化反応して、ポリアミドイミドを形成する。
【0032】
トリカルボン酸無水物としては、トリメリット酸無水物又は無水トリメリット酸モノクロリドが挙げられる。
【0033】
ジアミン化合物としては、上記ポリアミック酸の合成に用いられるジアミン化合物が挙げられる。
【0034】
上記トリカルボン酸無水物及びジアミン化合物としては、環状体の赤外線に対する透過性と機械的強度、及び柔軟性の観点から、脂肪族の環構造を有するものが好ましい。また、上記トリカルボン酸無水物及びジアミン化合物の少なくとも一つは、前記特定の樹脂に離型性を付与する観点から、フッ素原子を有する置換基で置換されていることが好ましい。フッ素原子を有する置換基としては、トリフルオロメチル基(CF
3基)、フッ素(F基)がよい。
【0035】
ジイソシアネート化合物としては、ポリアミック酸の合成に用いられるジアミン化合物中の2つのアミノ基がイソシアネート基に置換されたものが挙げられる。
【0036】
ポリエーテルスルホンは、パラフェニレン基がスルホン基とエーテル基で交互に結合した樹脂である。ポリエーテルスルホンとしては、市販品、例えば、ソルベイアドバンストポリマー社製品レーデルシリーズ、BASF社製品ウルトラゾールシリーズ、住友化学工業製品スミカエクセルPESシリーズ、ICI社製品ビクトレックスPESが挙げられる。
【0037】
−導電剤−
導電剤としては、赤外線の透過率の低下が抑制される導電剤が好ましく、イオン導電剤が好適である。
【0038】
イオン導電剤としては、例えば、四級アンモニウム塩(例えばラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オクタドデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸・ジメチルエチルアンモニウニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エトサルフェート塩、ハロゲン化ベンジル塩(例えば、臭化ベンジル塩、塩化ベンジル塩等)等)、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加硫酸エステル塩、高級アルコール燐酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加燐酸エステル塩、各種ベタイン、高級アルコールエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル、各種イオン液体、フッ素系帯電防止剤などが挙げられる。
導電剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
環状体15(樹脂層)に含まれる導電剤の含有量は、例えば、樹脂層100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下の範囲であることがよく、好ましくは0.1質量部以上3質量部以下である。
樹脂層100質量部に対する導電剤の含有量を、0.01質量部以上とすることで除電性が得られ、回転による電荷蓄積が発生し難くなる。
一方、樹脂層100質量部に対して導電剤の含有量を10質量部以下とすることで樹脂との相溶性が高く、白化、不透明化し難く、かつ導電化による帯電性の低下が抑制され易くなる。
【0040】
導電剤の含有量は、樹脂層の体積抵抗率が、例えば10
6Ωcm以上10
14Ωcm以下となるように調整するとよい。
【0041】
−赤外線吸収剤−
赤外線吸収剤としては、600nm以上1000nm以下の波長域に吸収ピークを有するものであれば公知のものを用い得る。
赤外線吸収剤としては、例えば酸化インジウム系金属酸化物、酸化スズ系金属酸化物、酸化亜鉛系金属酸化物、スズ酸カドミウム、特定のアミド化合物、ランタノイド系化合物、シアニン化合物、メロシアニン化合物、ベンゼンチオール系金属錯体、メルカプトフェノール系金属錯体、芳香族ジアミン系金属錯体、ジイモニウム化合物、アミニウム化合物、ニッケル錯体化合物、フタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、スクアリリウム系化合物、アズレニウム系化合物、トリフェニルアミン系化合物、トリアズレン系化合物、トリアゾ系化合物、(Ph)
2C=C−C
+−C=C(Ph)
2骨格を有する化合物等が挙げられる。なお、(Ph)
2C=C−C
+−C=C(Ph)
2で表される骨格を有する化合物において、「Ph」は、ベンゼン環を表す。
赤外線吸収剤の中でも、環状体15の自己発熱性を高める観点から、近赤外線吸収色素が好適に用いられる。近赤外線吸収色素の中でも、フタロシアニン系化合物、スクアリリウム系化合物、アズレニウム系化合物、トリフェニルアミン系化合物、トリアズレン系化合物、トリアゾ系化合物、(Ph)
2C=C−C
+−C=C(Ph)
2で表される骨格を有する化合物を用いることが好ましい。これらの赤外線吸収剤は単独で用いても、混合して用いてもよい。
【0042】
赤外線吸収剤の含有量は、環状体15の赤外線に対する透過性を妨げない範囲(透過率が80%以上となる範囲)で調整される。環状体15が適用される画像形成装置の種類、環状体15の用途にもよるが、樹脂層100質量部に対して0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、0.1質量%以上3質量%以下がより好ましい。
赤外線吸収剤の含有量により、赤外線を照射した際における環状体15への赤外線の吸収量が調整され、環状体15の自己発熱量が調整される。
【0043】
−その他添加剤−
その他添加剤としては、例えば、樹脂層に離型性を付与するための離型材料(例えば、フッ素化合物(フッ素樹脂、又はその粒子等)等)、樹脂層の熱劣化を防止するための酸化防止剤や、流動性を向上させるための界面活性剤、耐熱老化防止剤等、特に、画像形成装置の環状体(例えば無端ベルト)に配合される周知の添加剤が挙げられる。
【0044】
以上に説明した実施形態では、環状体15が樹脂層からなる単層体で構成された形態を説明したが、環状体15は、前記樹脂層を少なくとも表面層に有していれば、2層以上の積層体で構成されていてもよい。この場合、環状体15は、例えば、基材と、基材の表面に積層された前記樹脂層からなる表面層とを含む。また、必要に応じて、基材と表面層との間に中間層(例えば弾性層)を設けてもよいし、基材自体が2層以上の積層体で構成されていてもよい。
【0045】
−基材−
基材は、赤外線に対する透過性を有するものであれば特に限定されない。基材としては、例えばポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂が挙げられる。これらの基材は単独で用いても、混合して用いてもよい。
【0046】
−表面層−
表面層は、前記樹脂層と同様の構成を有する。
【0047】
−環状体の特性等−
環状体15(樹脂層)の総厚みとしては、例えば10μm以上1000μm以下が挙げられ、30μm以上500μm以下が好ましく、50μm以上300μm以下がより好ましい。
また、赤外線に対する透過性を有し、剛性の低下を抑制し、かつ回転使用による端部疲労による割れの発生の防止、及び座屈や脆化を抑制する観点より、膜厚バラツキは10%以下に抑えることが好ましい。
また、環状体15が、基材と表面層との積層体で構成される場合、基材の厚みとしては、例えば10μm以上300μm以下が挙げられ、40μm以上300μm以下が好ましく、50μm以上150μm以下がより好ましい。
表面層の厚みとしては、例えば0.1μm以上50μm以下が挙げられ、0.5μm以上30μm以下が好ましく、1μm以上20μm以下がより好ましい。
【0048】
環状体15の弾性率は、環状体15の形状を保ちながら回転させる観点から、例えば1GPa以上、好ましくは2GPa以上4GPa以下であることがよい。
なお、弾性率の測定は、JIS−K7162(1994、1BA形、速度1mm/min)に準拠する。
環状体15は、例えば体積抵抗率が10
5Ωcm以上10
13Ωcm以下であることが好ましい。
【0049】
環状体15の引張り破断強度は、剛性を緩和調整して、高解像度を得る能力が保持される点で、100MPa以上であることが好ましく、100MPa以上300MPa以下であることがより好ましい。
また、環状体15は、破断伸びが5%以上であることが好ましく、5%以上20%以下であることがより好ましい。
引張り破断強度及び破断伸びの測定は、以下のようにして行う。
作製した環状体15より、ダンベル3号を用いて試料片を打ち抜き成形する。試料片を引張り試験機に設置し、下記条件で、試料片が引張り破断する引張り破断強度(印加荷重)及び破断伸びを測定する。マイクロメーターを用いて測定された膜厚値を基に、破断強度を算出する。
・試験装置:アイコーエンジニアリング社製引張り試験機1605型
・試料長さ:30mm
・試料幅:5mm
・引張り速度:10mm/min
【0050】
また、環状体15は、赤外線に対する透過性を妨げない範囲で、さらに、透明な繊維(フッ素樹脂粉末、ポリエステル、ポリアミド、ガラス繊維等)やフィラー(シリカなどの無機粒子)を配合して補強したものであってもよい。
【0051】
−環状体の製造方法−
環状体15は、例えば、上記特定の樹脂と、導電剤と、赤外線吸収剤と、必要に応じて、その他添加剤とを、それぞれ目的とする配合量で混練、混合し、この混合物を押出し機を用いて円筒状に押し出し、冷却固化(結晶化を制御)させ、円筒状の成形体(環状体)を得る。また、上記混合物を用いて、遠心成形、インフレーション成形、浸漬成形、Tダイ成形、フロー成形により環状体15を得てもよい。
例えば、環状体15として、単層体からなるポリイミド環状体を製造する場合、例えば、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン化合物とを有機溶媒中において、例えば250℃以下で重縮合させ、ポリアミック酸プレポリマーを作製する。次いで、ポリアミック酸プレポリマーをアルコール等の貧溶媒で再沈降させて精製し粉末を得る。この粉末を極性溶媒に再度溶解させ、この溶液を芯体に塗布(例えば遠心塗布、浸漬塗布、フロー塗布)することで塗膜を形成する。次いで、この塗膜を乾燥(例えば80℃以上250℃以下)させ、その後加熱(例えば250℃以下)してイミド化する。そして、イミド化された被膜を芯体から取り外すことで環状体15を得る。なお、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン化合物との重縮合を促進する観点から、上記有機溶媒中に触媒を添加することが好ましい。触媒としては、無水酢酸等の酸成分、ピリジン等のアミン成分が挙げられる。
上記極性溶媒としては、特に限定されないが、例えばジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン、シクロペンタノン、ジクロロメタンが好適に用いられる。
【0052】
また、環状体15として、積層体からなるポリイミド環状体を製造する場合、例えば上記特定の樹脂と、導電剤と、赤外線吸収剤と、必要に応じて、その他添加剤とを含む表面層形成用溶液を作製し、基材上に表面層形成用溶液を塗布して塗膜を形成した後、加熱することで得る。塗布方法としては、浸漬塗布、スプレー塗布、フロー塗布、ロール塗布等が挙げられる。なお、表面層形成用溶液には、表面層に離型性を付与するための離型材料(例えば、フッ素化合物(フッ素樹脂、又はその粒子等)等)を配合してもよい。
【0053】
以上に説明した本実施形態に係る環状体15は、例えば、画像形成装置用の部材(例えば、中間転写ベルト、転写定着ベルト、定着ベルト、記録媒体搬送転写ベルト)に適用され得る。
【0054】
<第1実施形態>
本実施形態に係る環状体15を画像形成装置に適用した例ついて説明する。
図2は、第1実施形態に係る画像形成装置101の構成を示す概略図である。第1実施形態に係る画像形成装置101では、環状体15が中間転写ベルト(中間転写体の一例)として搭載されている。なお、画像形成装置101の中間転写ベルトに適用する環状体15は、600nm以上1000nm以下の少なくとも一部の波長領域の赤外線に対する透過性を有し、360nm以上420nm以下の少なくとも一部の波長領域の紫外光に対する透過性を有する。中間転写ベルトの紫外光に対する透過率は80%以上(好ましくは90%以上)である。
第1実施形態に係る画像形成装置101は、
図2に示すように、環状体からなる中間転写ベルト15と、紫外線硬化性の材料を含む硬化性溶液12Aを中間転写ベルト15上へ供給し、被硬化層12Bを形成する被硬化層形成装置(供給装置の一例)12と、中間転写ベルト15上に形成された被硬化層12Bにインクの液滴14Aを吐出するインクジェット記録ヘッド(吐出装置の一例)14と、インクの液滴14Aが吐出された被硬化層12Bを中間転写ベルト15から記録媒体Pへ転写する転写装置16と、中間転写ベルト15の内側から、中間転写ベルト15を介して、被硬化層12Bに紫外線の光を照射する紫外光照射装置18と、中間転写ベルト15の内側から、中間転写ベルト15に赤外線のレーザ光Iを照射する赤外光照射装置70と、を備えている。また、画像形成装置101は、中間転写ベルト15に形成された被硬化層12Bが転写される記録媒体Pを搬送する搬送手段(図示省略)を備えている。
なお、第1実施形態に係る画像形成装置101は、環状体としての中間転写ベルト15と、赤外光照射装置70とを含む部分が、環状体ユニットに相当する。
【0055】
搬送手段としては、記録媒体Pを静電力等により外周面に付着させて搬送する搬送ベルト・搬送ドラムや、記録媒体Pを挟んで搬送する搬送ロール対で構成される。なお、記録媒体Pは、
図2において矢印A方向に搬送される。
【0056】
記録媒体Pとしては、例えば、用紙(具体的には普通紙、インクジェットコート紙、アート紙、合成紙等)などが用いられる。なお、記録媒体Pとしては、用紙に限られず、例えば、樹脂等で形成されたフィルム(具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、TAC:酢酸セルロース)などであってもよく、被硬化層12Bが転写し得るものであればよい。
【0057】
中間転写ベルト15の内周側には、中間転写ベルト15が巻き掛けられる被巻掛部材の一例としての複数の巻掛ロール16B、10C、10A、10Bが設けられている。巻掛ロール16Bは、後述の紫外光照射装置18に対して、記録媒体Pの搬送方向における上流側(
図2において左側)に配置され、巻掛ロール10Cは、巻掛ロール16Bおよび紫外光照射装置18に対して、記録媒体Pの搬送方向における下流側(
図2において右側)に配置されている。
【0058】
巻掛ロール10Aは、巻掛ロール10Cに対して、記録媒体Pの搬送方向における下流側(
図2において右側)であって、後述の平板22の配置側とは反対側(
図2において上側)に配置されている。巻掛ロール10Bは、巻掛ロール16Bに対して、記録媒体Pの搬送方向における上流側(
図2において左側)であって、後述の平板22の配置側とは反対側(
図2において上側)に配置されている。
【0059】
また、中間転写ベルト15は、記録媒体Pの幅と同等またはそれ以上の幅(軸方向長さ)を有している。端部にはベルト蛇行防止のためリブを付与して、左右のベルトの蛇行を防止抑制してもよい。
【0060】
中間転写ベルト15の外周側(
図2において側方)には、中間転写ベルト15の表面に離型剤24Aを供給して、離型剤層24Bを中間転写ベルト15の表面に形成する離型剤層形成装置24が設けられている。具体的には、離型剤層形成装置24は、中間転写ベルト15において巻掛ロール10Aが巻き掛けられている部分に対して対向しており、中間転写ベルト15における上記部分に対し、離型剤24Aを供給して離型剤層24Bを形成するようになっている。
【0061】
また、離型剤層形成装置24は、中間転写ベルト15の幅方向(中間転写ベルト15の回転方向と直交する方向)に沿って長さを有しており、その幅方向に沿った長さが、中間転写ベルト15における被吐出領域以上(被画像形成領域以上)とされている。
【0062】
離型剤層形成装置24は、例えば、離型剤24Aを収容する筐体24Cと、筐体24C内に設けられ離型剤24Aを中間転写ベルト15へ供給する供給ローラ24Dと、供給ローラ24Dから中間転写ベルト15へ供給された離型剤24A(例えばシリコーン系、フッ素系、ワックス系オイルなど)により形成された離型剤層24Bの層厚を規定するブレード24Eと、を備えている。離型剤層形成装置24は、離型剤24Aを加熱溶融させる加熱手段(図示せず)を含んでいてもよい。
【0063】
離型剤層形成装置24は、供給ローラ24Dが中間転写ベルト15に連続的に接触するようにしてもよいし、中間転写ベルト15から離間する構成としてもよい。また離型剤層形成装置24としては、上記構成に限られず、公知の塗布法(例えば、バーコーター塗布、スプレー方式の塗布、インクジェット方式の塗布、エアーナイフ方式の塗布、スリットダイコーター塗布、ブレード方式の塗布、ロール方式の塗布、コンマコーターによる塗布、アニロックスロールによる塗布等)などを利用した装置を適用してもよい。
【0064】
離型剤24Aとしては、具体的には、シリコーン系オイル、フッ素系オイル、炭化水素系・ポリアルキレングリコール、脂肪酸エステル、フェニルエーテル、リン酸エステルおよび疎水性界面活性剤等が挙げられ、これらの中でもシリコーン系オイル、フッ素系オイル、ポリアルキレングリコールおよび疎水性界面活性剤などが望ましい。
【0065】
なお、本実施形態では、中間転写ベルト15の表面に離型剤層24Bを形成する構成について説明したが、表面離型性を有する場合には、離型剤層24Bを形成しなくてもよい。
【0066】
離型剤層形成装置24に対する中間転写ベルト15の回転方向下流側には、紫外線硬化性の材料を含む硬化性溶液(以下、単に「硬化性溶液」とも称す)12Aを中間転写ベルト15の表面に供給して被硬化層12Bを形成する被硬化層形成装置(スリットダイコーターを用いた供給装置)12が設けられている。
【0067】
具体的には、被硬化層形成装置12は、中間転写ベルト15において巻掛ロール10Aと巻掛ロール10Bとの間の部分に対向しており、中間転写ベルト15における上記部分に対し、硬化性溶液12Aを供給して被硬化層12Bを形成するようになっている。
【0068】
また、被硬化層形成装置12は、中間転写ベルト15の幅方向(中間転写ベルト15の回転方向と直交する方向)に沿って長さを有しており、その幅方向に沿った長さが、中間転写ベルト15における被吐出領域以上(被画像形成領域以上)とされている。
【0069】
なお、被硬化層形成装置12は、中間転写ベルト15の外周側(
図2において上側)において巻掛ロール10Aの上方に配置され、中間転写ベルト15における巻掛ロール10Aに巻き掛けられている部分に対して被硬化層12Bを形成する構成であってもよい。
【0070】
被硬化層形成装置12は、例えば、硬化性溶液12Aを収容する筐体12Cと、筐体12C内に設けられ、硬化性溶液12Aを中間転写ベルト15へ供給する供給ローラ12Dと、供給ローラ12Dから中間転写ベルト15へ供給された硬化性溶液12Aにより形成された被硬化層12Bの層厚を規定するブレード12Eと、を備えている。
【0071】
被硬化層形成装置12は、その供給ローラ12Dが中間転写ベルト15に連続的に接触するようにしてもよいし、中間転写ベルト15から離間する構成としてもよい。また、被硬化層形成装置12は、独立した溶液供給システム(図示せず)より硬化性溶液12Aを筐体12Cへ供給させ、硬化性溶液12Aの供給がとぎれないようにしてもよい。
硬化性溶液12Aは、紫外線の光により硬化する紫外線硬化性の材料を少なくとも含んでいる。紫外線硬化性の材料を硬化することにより得られる「紫外線硬化性樹脂」としては、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイミド樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂などが挙げられる。紫外線硬化性の材料は、紫外線硬化性のモノマー、紫外線硬化性のマクロマー、紫外線硬化性のオリゴマー、および紫外線硬化性のプレポリマーの少なくとも1種を含んでいる。また、紫外線硬化反応を進行させるための紫外線重合開始剤を含んでいることが望ましい。さらに、必要に応じて、重合反応をより進行させるための、反応助剤、重合促進剤、増粘剤等を含んでいてもよい。
【0072】
ここで、紫外線硬化性のモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル(例えばアルコール、多価アルコール又はアミノアルコールのアクリル酸エステル)、メタクリル酸エステル(例えばアルコール又は多価アルコールのメタクリル酸エステル)、アクリル脂肪族アミド、アクリル脂環アミド、アクリル環状アミド(モルフィリン)類等のラジカル硬化性材料;エポキシモノマー、オキセタンモノマー、ビニルエーテルモノマー等のカチオン硬化性材料;などが挙げられる。上記紫外線硬化性のマクロマー、紫外線硬化性のオリゴマー、紫外線硬化性のプレポリマーとしては、これらモノマーを重合させたものの他、エポキシ骨格、ウレタン骨格、ポリエステル骨格又はポリエーテル骨格に、アクリロイル基やメタクリロイル基の付加した(メタ)アクリレート(例えばエポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ウレタンメタクリレート、ポリエステルメタクリレート)等のラジカル硬化性材料が挙げられる。
【0073】
被硬化層形成装置12としては、上記構成に限られず、公知の供給法(塗布法:例えば、ダイコータ、バーコーター塗布、スプレー方式の塗布、インクジェット方式の塗布、エアーナイフ方式の塗布、ブレード方式の塗布、ロール方式の塗布等)などを利用した装置を適用してもよい。
【0074】
被硬化層形成装置12に対する中間転写ベルト15の回転方向下流側には、被硬化層形成装置12によって形成された被硬化層12Bの表面にインクの液滴(以下、「インク滴」とも称す)14Aを吐出して、画像を形成するインクジェット記録ヘッド14が、中間転写ベルト15の外周側(
図2において上側)に設けられている。具体的には、インクジェット記録ヘッド14は、中間転写ベルト15において巻掛ロール10Aと巻掛ロール10Bとの間の平坦部分(非屈曲部分)に対向しており、中間転写ベルト15における上記部分に対してインク滴14Aを吐出して画像を形成するようになっている。
【0075】
インクジェット記録ヘッド14は、例えば、中間転写ベルト15の回転方向上流側から順に、黒色のインク滴を吐出するインクジェット記録ヘッド14Kと、シアン色のインク滴を吐出するインクジェット記録ヘッド14Cと、マゼンタ色のインク滴を吐出するインクジェット記録ヘッド14Mと、イエロー色のインク滴を吐出するインクジェット記録ヘッド14Yと、を備えている。
【0076】
具体的には、インクジェット記録ヘッド14は、インクジェット方式によってインク滴14Aを複数のノズルから吐出する記録ヘッドであり、圧電式(ピエゾ)、サーマル式、ストリーム方式などにより駆動され、相対移動する被硬化層12Bの表面にインク滴14Aを吐出するように構成されている。
【0077】
また、インクジェット記録ヘッド14は、中間転写ベルト15の幅方向(中間転写ベルト15の回転方向と直交する方向)に沿って長さを有しており、その幅方向に沿った吐出幅が、中間転写ベルト15における被吐出領域以上(被画像形成領域以上)とされている。すなわち、インクジェット記録ヘッド14は、中間転写ベルト15に対してその幅方向に相対移動することなく、被吐出領域(被画像形成領域)の幅方向(主走査方向)の1ラインを形成し得るよう構成されている。
【0078】
インクジェット記録ヘッド14では、制御部28によって、使用するノズルおよび吐出タイミングが画像情報に基づき決定され、インク滴14Aを吐出することにより、画像情報に応じた画像を形成するようになっている。
インク滴14Aに含まれるインクとしては、特に限定されず、溶媒として水性溶媒を含む水性インク、溶媒として油性溶媒を含む油性インクが挙げられる。なお、紫外線硬化型インクであってもよい。
【0079】
水性インクとしては、例えば、水溶性染料又は顔料を水性溶媒に分散又は溶解したインクが挙げられる。また、油性インクとしては、例えば、油溶性染料を油性溶媒に溶解したインク、記録材として染料又は顔料を逆ミセル化して分散したインクが挙げられる。
紫外線硬化型インクとしては、紫外線により硬化する硬化性材料を少なくとも含む。硬化性材料については、上記硬化性溶液12Aに含まれる硬化性材料と同様である。
【0080】
なお、インクジェット記録ヘッド14としては、上記の構成に限られず、中間転写ベルト15の幅方向に移動しながらインクを吐出して、被吐出領域(被画像形成領域)の幅方向(主走査方向)の1ラインを形成し得るスキャン型のインクジェット記録ヘッドであってもよく、被硬化層12Bに対して画像が形成し得るものであればよい。
【0081】
インクジェット記録ヘッド14に対する中間転写ベルト15の回転方向下流側には、インク滴14Aが吐出された被硬化層12Bを中間転写ベルト15から記録媒体Pへ転写する転写装置16が設けられている。転写装置16は、具体的には、中間転写ベルト15が巻き掛けられた巻掛ロール16B,10Cと、中間転写ベルト15を挟んで巻掛ロール16Bと対向して配置された加圧ロール16Aと、巻掛ロール16B,10Cとの間の中間転写ベルト15の外周面に対向して配置された平板(プラテン)22と、を備えている。
【0082】
転写装置16では、加圧ロール16Aが巻掛ロール16B側へ圧力を加えた状態で、記録媒体Pが中間転写ベルト15と加圧ロール16Aとで挟まれて搬送される。さらに、記録媒体Pは、中間転写ベルト15の下部(巻掛ロール16Bから離れて巻掛ロール10Cに接触する部分)と、平板22とで挟まれて搬送される。
【0083】
これにより、中間転写ベルト15および記録媒体Pが加圧ロール16Aおよび巻掛ロール16Bにより挟み込まれた位置(以下、「接触開始位置」と称する場合がある)から、巻掛ロール10Cおよび平板22により挟み込まれた位置(以下、「剥離位置」と称する場合がある)までの転写領域R1において、中間転写ベルト15の表面の被硬化層12Bが記録媒体Pに接触した状態となる。
【0084】
加圧ロール16Aに対する中間転写ベルト15の回転方向下流側には、中間転写ベルト15及びその上に形成された被硬化層12Bに対し、中間転写ベルト15の内側から赤外線レーザ光Iを照射する赤外光照射装置70が、中間転写ベルト15の内周側に設けられている。この赤外光照射装置70は、転写領域R1において、後述する紫外線の光(以下、「紫外光」とも称す)で被硬化層12Bが硬化される前に、中間転写ベルト15及びその上に形成された被硬化層12Bを予め加熱するように構成されている。なお、赤外光照射装置70の詳細については後述する。
【0085】
また、赤外光照射装置70に対する中間転写ベルト15の回転方向下流側には、インクジェット記録ヘッド14によって画像が形成された被硬化層12Bを記録媒体Pに転写し、かつ中間転写ベルト15上に形成された被硬化層12Bに対し、中間転写ベルト15の内側から紫外光を照射する紫外光照射装置18が、中間転写ベルト15の内周側に設けられている。この紫外光照射装置18は、転写領域R2において、記録媒体Pに接触した状態の被硬化層12Bに紫外光を照射することにより被硬化層12Bを硬化させて、その被硬化層12Bを中間転写ベルト15から記録媒体Pへ転写するように構成されている。
【0086】
なお、紫外光照射装置18は、被硬化層12Bにおいて紫外光の照射が施される領域(紫外光照射領域)R2の中間転写ベルト周方向の長さが5mm以上300mm以下の範囲に調整され、更には100mm以上250mm以下(塗布印字幅に依存)であることが好ましい。
【0087】
紫外光照射装置18としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、デイープ紫外線ランプ、マイクロ波を用い外部から無電極で水銀灯を励起するランプ、紫外線レーザ、キセノンランプ、UV−LEDなどが適用される。
【0088】
紫外光の照射量としては、被硬化層12Bが、完全に硬化する量であることが望ましい。具体的には、例えば、照射量(積算光量)で10mJ/cm
2以上1000mJ/cm
2以下の範囲が望ましい。但し、実際の硬化速度に依存して最適光量は調整される。
【0089】
紫外光照射装置18に対する中間転写ベルト15の回転方向下流側には、中間転写ベルト15の表面に残留している硬化性溶液12Aや離型剤24Aを除去する除去装置20が、中間転写ベルト15の外周側に設けられている。具体的には、除去装置20は、中間転写ベルト15の側部(巻掛ロール10Cから離れて巻掛ロール10Aに接触するまでの部分)に対向している。
【0090】
除去装置20は、中間転写ベルト15に接触して、中間転写ベルト15に残留した硬化性溶液12Aを掻き取る除去部材20Aを備えている。除去部材20Aは、例えば、ゴム材料で形成された板状のブレードで構成されている。また、除去装置20は、除去部材20Aが掻き取った硬化性溶液12Aや離型剤24Aを収容する収容部20Bを備えている。収容部20Bは、中間転写ベルト15への対向側が開放された箱体で構成され、除去部材20Aが掻き取って落下した硬化性溶液12Aや離型剤24Aを受ける受け部となっている。
【0091】
ここで、赤外光照射装置70の構成について説明する。
図3は、赤外光照射装置70の構成の一例を示す概略構成図である。
赤外光照射装置70は、赤外線レーザ光Iを照射する赤外光照射部70Aと、矢印R方向に回転する赤外線透過部材30とを備えている。
赤外線透過部材30は、回転自在に支持された環状の保護部材71と、赤外光照射部70Aから発せられた赤外線レーザ光Iを集光するレンズ部材72と、矢印B方向に回転(移動)する中間転写ベルト15に対向し、かつ接触する位置においてレンズ部材72と保護部材71との間に配置された摺動部材74と、を有する。
また、赤外線透過部材30には、保護部材71の内周面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給部材76と、レンズ部材72、摺動部材74及び潤滑剤供給部材76を支持する支持部材78とが設けられている。
【0092】
赤外光照射部70Aとしては、中間転写ベルト15の内側(内周側)に配置され、波長が600nm以上1000nm以下の赤外線レーザ光Iを発する光源が使用される。具体的には、例えば、半導体レーザや固体レーザ等の光源が挙げられる。
赤外線レーザ光Iの照射強度は、中間転写ベルト15中に含まれる赤外線吸収剤(図示省略)が赤外線レーザ光Iを吸収して熱を放出できる強度であることが望ましい。赤外線レーザ光Iの照射強度としては、例えば、赤外線透過部材30と中間転写ベルト15との対向領域(接触部)において10mW/cm
2以上1000mW/cm
2以下となる強度が挙げられる。
【0093】
−保護部材−
保護部材71は、内側に配置されているレンズ部材72を保護する環状の部材であり、赤外線を透過するガラス又は樹脂によって成形されている。
保護部材71を構成する樹脂としては、フッ素含有樹脂を含み、赤外線に対して透過性(例えば前記赤外線の透過率が80%以上)を有するものであれば特に限定されない。
前記フッ素含有樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオライド共重合体(THV)、及びポリビニリデンフルオライド(PVDF)、全フッ化環状エーテルポリマー等が挙げられ、PFA、ポリビニリデンフルオライド、全フッ化環状エーテルポリマー等が好ましい。
また、レンズ部材72を保護する保護部材71の表面に、中間転写ベルト15の表面保護層としてコーティング材を付与してもよい。フッ素系コート材としてルミフロン(登録商標)系共重合フッ素樹脂ポリマーや、シリコン系の無機ナノグラスコート等の離型性コーティングをスプレー塗布、ディップ塗装により表面保護層を設けることが好ましい。
【0094】
−レンズ部材−
レンズ部材72は、波長が600nm以上1000nm以下の赤外線に対して透過性を有し、赤外線レーザ光Iを集光するものであれば限定されない。レンズ部材72に用いられる材料としては、例えば、ガラス、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル樹脂等が挙げられる。
レンズ部材72は、例えば、中間転写ベルト15と赤外線透過部材30との対向領域(接触部)に赤外線レーザ光Iの焦点が来る焦点距離を有するものを選択してもよく、レンズ部材72及び赤外光照射装置70の位置を調整することで前記焦点の位置を制御してもよい。
【0095】
−摺動部材−
摺動部材74は、保護部材71の回転時に保護部材71の内周面とレンズ部材72とが直接接触してこれらの部材の表面が傷つくことを防ぎ、例えばレンズ部材72の表面に傷がつくことによる赤外線の透過率低下等を防ぐための部材である。
摺動部材74としては、波長が600nm以上1000nm以下の赤外線に対して透過性を有し、保護部材71に対して摩擦係数が小さく耐摩耗性に優れた材質で構成されたものが適している。
摺動部材74の材質としては、例えば、赤外線に対して透過性を有する樹脂(具体的には、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の潤滑性フィラーを分散させたウレタンゴム、オレフィンゴム等)、ガラス等の繊維によって補強されたPFA樹脂、シリコーンオイル、及びシリコン系界面活性剤等で含浸又は表面処理された透明液状シリコーンゴム等が挙げられる。
また摺動部材74の厚みとしては、例えば、0.01mm以上1mm以下が挙げられる。
さらに摺動部材74の内部に、ワックスやシリコーンオイル等を含浸させた発泡部材を設けることで潤滑性を向上させ、保護部材71が回転するときにおける摺動部材74と保護部材71との摩擦抵抗及び擦れを軽減させ、これらの部材に対する影響を軽減させてもよい。
【0096】
−潤滑剤供給部材−
潤滑剤供給部材76は、潤滑剤を保持し、保護部材71の内周面に潤滑剤を供給する部材である。
潤滑剤としては、例えばシリコーンオイル、パラフィンオイル、フッ素オイル、その他固形物質と液体とを混合させた合成潤滑油グリース、ワックス等が挙げられる。
なお、本実施形態では潤滑剤を保護部材71の内周面に供給する形態であるが、潤滑剤を用いない形態でもよい。
【0097】
次に、本実施形態に係る画像形成動作を説明する。
【0098】
本実施形態に係る画像形成装置101では、中間転写ベルト15が回転駆動され、まず、離型剤層形成装置24により中間転写ベルト15の表面に離型剤層24Bが形成され、この離型剤層24Bの表面に、被硬化層形成装置12により硬化性溶液12Aが供給されて、被硬化層12Bが形成される。
【0099】
次に、インクジェット記録ヘッド14により、制御部28の制御によって被硬化層12Bの表面へ、形成対象の画像データの画像の各画素に応じたドットを記録するためのインク滴14Aが吐出される。これによって、この被硬化層12Bには、吐出されたインク滴14Aにより記録されたドットにより画像領域T1が形成される。
【0100】
なお、本実施形態では、この被硬化層12Bの表面にインク滴14Aが吐出されることで記録されたドットの形成された領域を、「画像領域T1」と称して説明する。
【0101】
なお、このインクジェット記録ヘッド14によるインク滴14Aの吐出は、張力の掛けられた状態で回転支持された中間転写ベルト15における非屈曲領域の表面で行われる。つまり、ベルト表面がたわみの少ない状態で被硬化層12Bにインク滴14Aが吐出される。
【0102】
次に、転写装置16の加圧ロール16Aおよび巻掛ロール16Bにより記録媒体Pと中間転写ベルト15とを挟み込んで圧力をかける。このとき、転写領域R1では、中間転写ベルト15の表面の被硬化層12Bが記録媒体Pに接触し(接触開始位置)、その後、巻掛ロール10Cおよび平板22によって挟まれた位置(剥離位置)まで、被硬化層12Bが中間転写ベルト15および記録媒体Pの両方に接触した状態が維持される。
【0103】
そして、中間転写ベルト15と記録媒体Pとに挟み込まれた状態の被硬化層12Bが転写領域R1の接触開始位置を通過し、赤外光照射装置70の照射部材(赤外線透過部材30)と対向する領域に到達すると、中間転写ベルト15及びその上に形成された被硬化層12Bの幅方向の全域にわたって、中間転写ベルト15の内側から赤外線レーザ光Iが照射され、中間転写ベルト15及び被硬化層12Bが加熱される。その後、中間転写ベルト15上に形成された被硬化層12Bに対し、中間転写ベルト15の内側から紫外光が照射される。これにより、転写領域R1では、被硬化層12Bが記録媒体Pに転写され、かつ被硬化層12Bが硬化される。なお、転写領域R1での赤外線レーザ光I及び紫外線の光の作用については後述する。
【0104】
次に、剥離位置において被硬化層12Bが中間転写ベルト15から剥離される。これにより、記録媒体P上に硬化性樹脂層からなる画像領域T1が形成される。
【0105】
そして、被硬化層12Bが記録媒体Pへ転写された後の中間転写ベルト15表面に残った硬化性溶液12Aや離型剤24Aの残留物や異物を除去装置20により除去する。以上のように、本実施形態に係る画像形成装置101における一連の画像形成動作が行われる。
【0106】
ここで、転写領域R1での赤外線レーザ光I及び紫外線の光の作用について説明する。
本実施形態に係る中間転写ベルト15は、赤外線に対する透過性を有し、かつ赤外吸収剤を含有するため、上述のように、赤外線透過部材30との対向領域(接触部)において、中間転写ベルト15及びその上に形成された被硬化層12Bの幅方向の全域にわたって、赤外光照射装置70により赤外線レーザ光Iが照射されると、赤外線レーザ光Iの一部は中間転写ベルト15中に含まれる赤外線吸収剤(図示省略)に吸収され、残りの赤外線レーザ光Iの一部は中間転写ベルト15を透過して中間転写ベルト15上に形成された被硬化層12Bに到達する。赤外線レーザ光Iを吸収した中間転写ベルト15の部分(赤外線吸収剤を含む領域)は、局所的に熱を放出し、自己発熱する。
このため、転写領域R1において、中間転写ベルト15上に形成された被硬化層12Bは、中間転写ベルト15を透過して被硬化層12Bに到達した赤外線レーザ光Iと、中間転写ベルト15の自己発熱の熱との両者によって加熱される。これにより、被硬化層12Bの温度が上昇する。
【0107】
次いで、紫外光照射領域R2では、この温度が上昇した状態の被硬化層12Bに、紫外光が照射されるため、被硬化層12Bの硬化が効率的に進行する。具体的には、被硬化層12Bが硬化される際に、インク中に含まれる溶媒の蒸発速度、重合開始剤の分解速度等が高まり、記録媒体Pへの被硬化層12Bの転写性が向上する。これにより、画像不良が抑制される。
【0108】
更に、本実施形態に係る画像形成装置101では、被硬化層12Bの硬化が効率的に進行するため、中間転写ベルト15及びその上に形成された被硬化層12Bと、記録媒体Pとの接触時間を低減できる。つまり、転写領域R1の距離を短縮できる。これにより、高速転写し得、かつ、エネルギー損失が低減される。
【0109】
また、本実施形態では、中間転写ベルト15の内側に赤外光照射装置70が設けられ、赤外線レーザ光Iによって、記録媒体Pへの転写が行われるため、画像形成装置の小型化が実現される。
【0110】
なお、本実施形態では、中間転写ベルト15の内側に赤外光照射装置70を設け、赤外線レーザ光Iを中間転写ベルト15の内周側から照射する態様について説明したが、赤外線レーザ光Iを前記内周側から照射する態様であれば、照射方法は特に限定されない。例えば、赤外光照射装置70を中間転写ベルト15の外周側に設け、赤外線レーザ光Iを反射鏡等を介して中間転写ベルト15の内周側から照射してもよい。
【0111】
また、本実施形態では、転写領域R1において、中間転写ベルト15及びその上に形成された被硬化層12Bに対し、最初に赤外線レーザ光Iを照射し、その後紫外光を照射したが、最初に紫外光を照射し、その後赤外線レーザ光Iを照射してもよい。
【0112】
また、本実施形態では、紫外光照射装置18によって、中間転写ベルト15および記録媒体Pの両方に接触した状態の被硬化層12Bに中間転写ベルト15を介して紫外光を付与することで、被硬化層12Bを硬化させる場合を説明したが、さらに、記録媒体Pに転写された後の被硬化層12Bを完全に硬化させるための硬化装置(図示省略)を更に備えた構成としてもよい。
【0113】
<第2実施形態>
本実施形態に係る環状体15を画像形成装置に適用した他の例ついて説明する。
図4は、第2実施形態に係る画像形成装置102の構成を示す概略図である。第2実施形態に係る画像形成装置102では、環状体15が中間転写ベルト(中間転写体の一例)として搭載されている。なお、画像形成装置102の中間転写ベルトに適用する環状体15は、600nm以上1000nm以下の少なくとも一部の波長領域の赤外線に対する透過性を有し、360nm以上420nm以下の少なくとも一部の波長領域の紫外光に対する透過性を有する。中間転写ベルトの紫外光に対する透過率は80%以上(好ましくは90%以上)である。
第2実施形に係る画像形成装置102は、
図4に示すように、環状体からなる中間転写ベルト15と、紫外線硬化性の材料を含む硬化性インクの液滴(以下、単に「インク滴」とも称す)14Aを中間転写ベルト15上に吐出し、インク層14Bを形成するインクジェット記録ヘッド(吐出装置の一例)14と、インク層14Bを中間転写ベルト15から記録媒体Pへ転写する転写装置16と、中間転写ベルト15の内側から、中間転写ベルト15を介して、インク層14Bに紫外線の光を照射する紫外光照射装置18と、中間転写ベルト15の内側から、中間転写ベルト15に赤外線のレーザ光Iを照射する赤外光照射装置70と、を備えている。
なお、第2実施形態に係る画像形成装置102は、環状体としての中間転写ベルト15と、赤外光照射装置70とを含む部分が、環状体ユニットに相当する。
【0114】
以下の説明では、第1実施形態と同一のものには同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0115】
第2実施形態に係る画像形成装置102では、第1実施形態における被硬化層12Bを形成せずに、インクジェット記録ヘッド14から硬化性インクの液滴14Aを吐出し、インク層14Bを形成する。つまり、第2実施形態に係る画像形成装置102では、インクとして硬化性インクを使用し、被硬化層形成装置12を備えていない以外は第1実施形態に係る画像形成装置101と同様の構成である。
【0116】
第2実施形態に係る画像形成動作について説明する。
第2実施形態に係る画像形成動作では、まず、離型剤層形成装置24により中間転写ベルト15の表面に離型剤層24Bが形成される。
【0117】
次に、インクジェット記録ヘッド14により、離型剤層24Bの表面へインク滴14Aが吐出され、インク滴14Aからなるインク層14Bが形成される。
【0118】
次に、転写装置16の加圧ロール16Aおよび巻掛ロール16Bにより記録媒体Pと中間転写ベルト15とを挟み込んで圧力をかける。このとき、転写領域R1では、接触開始位置から剥離位置まで、インク層14Bが中間転写ベルト15および記録媒体Pの両方に接触した状態が維持される。
【0119】
そして、中間転写ベルト15と記録媒体Pとに挟み込まれた状態でインク層14Bが接触開始位置を通過し、赤外線透過部材30と対向する領域に到達すると、インク層14Bを保持した中間転写ベルト15の幅方向の全域(中間転写ベルト15のインク層14Bの形成可能な領域の幅方向の全域)にわたって、中間転写ベルト15の内側から赤外線レーザ光Iが照射され、中間転写ベルト15及びインク層14Bが加熱される。その後、中間転写ベルト15上に形成されたインク層14Bに対し、中間転写ベルト15の内側から当該中間転写ベルト15を介して紫外光が照射される。これにより、転写領域R1では、インク層14Bが記録媒体Pに転写され、かつインク層14Bが硬化される。
次に、転写領域R1の剥離位置においてインク層14Bが中間転写ベルト15から剥離される。これにより、記録媒体P上に硬化性樹脂層からなる画像領域T1が形成される。
【0120】
ここで、転写領域R1での赤外線レーザ光I及び紫外線の光の作用について説明する。
第2実施形態に係る画像形成装置102では、第1実施形態と同様の構成の中間転写ベルト15を備えるため、転写領域R1での赤外線レーザ光I及び紫外線の光の作用により、第1実施形態と同様の効果が得られると考えられる。
具体的に、転写領域R1において、中間転写ベルト15上に形成されたインク層14Bは、中間転写ベルト15を透過してインク層14Bに到達した赤外線レーザ光Iと、中間転写ベルト15の自己発熱の熱との両者によって加熱されるため、第1実施形態と同様に、インク層14Bの硬化が効率的に進行し、記録媒体Pへのインク層14Bの転写性が向上する。これにより、画像不良が抑制される。
また、インク層14Bの硬化が効率的に進行するため、第1実施形態と同様の理由により、中間転写ベルト15及びその上に形成されたインク層14Bと、記録媒体Pとの接触時間を低減できる。つまり、転写領域R1の距離を短縮できる。これにより、高速転写し得、かつ、エネルギー損失が低減される。
なお、本実施形態では、継続的にインク層14Bを保持した中間転写ベルト15の幅方向の全域(中間転写ベルト15のインク層14Bの形成可能な領域の幅方向の全域)にわたって、赤外線レーザ光Iを照射する態様について説明したが、例えば、インク層14Bが中間転写ベルト15を介して赤外線透過部材30と対向したときのみ、中間転写ベルト15の幅方向の全域に赤外線レーザ光Iを照射してもよい。また、例えば、インク層14Bが中間転写ベルト15を介して赤外線透過部材30と対向したときに、インク層14Bが形成された幅のみ赤外線レーザ光Iを照射してもよい。これにより、中間転写ベルト15の過剰な発熱が抑制される。
【0121】
<第3実施形態>
本実施形態に係る環状体15を画像形成装置に適用した他の例ついて説明する。
図5は、第3実施形態に係る画像形成装置103の構成を示す概略図である。第3実施形態に係る画像形成装置103では、環状体15が転写定着ベルト(転写定着部材の一例)として搭載されている。なお、画像形成装置103の転写定着ベルトに適用する環状体15は、600nm以上1000nm以下の少なくとも一部の波長領域の赤外線に対する透過性を有する。
第3実施形に係る画像形成装置103は、
図5に示すように、感光体11(像保持体の一例)と、感光体11の表面を帯電する帯電器23(帯電装置の一例)と、帯電した感光体11の表面に潜像を形成するレーザ露光器13(潜像形成装置の一例)と、感光体11の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像器19(現像装置の一例)と、画像形成装置用の環状体からなる転写定着ベルト15と、感光体11の表面に形成されたトナー像を転写定着ベルト15の表面に一次転写する一次転写ロール21(一次転写装置の一例)と、トナー像を記録媒体Pに二次転写するとともに定着する二次転写定着装置60と、を備えている。
そして、二次転写定着装置60は、赤外線レーザ光Iを照射する赤外光照射装置70を有し、転写定着ベルト15の内側から、転写定着ベルト15を介して、転写定着ベルト15の表面に一次転写されたトナー像に赤外線レーザ光Iを照射し、トナー像を記録媒体Pに二次転写するとともに定着する。
なお、第3実施形態に係る画像形成装置103は、環状体としての転写定着ベルト15と、赤外光照射装置70とを含む部分が、環状体ユニットに相当する。
【0122】
図5に示す画像形成装置103は、二次転写定着装置60を備えた一般にタンデム型と呼ばれる画像形成装置であって、電子写真方式により各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kと、各画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kにより形成された各色成分トナー像を転写定着ベルト15に順次転写(一次転写)させる一次転写部10と、転写定着ベルト15上に転写された重畳トナー像を記録媒体Pに一括転写(二次転写)させるとともに、転写定着ベルト15の内側に配置されている赤外光照射装置70から、転写定着ベルト15を介して赤外線レーザ光Iを照射することにより重畳トナー像を記録媒体Pに定着させる二次転写定着部90と、を備えている。また、画像形成装置103は、各装置(各部)の動作を制御する制御部40を有している。
【0123】
画像形成装置103の各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、表面に形成されるトナー像を保持する像保持体の一例として、矢印A方向に回転する感光体11を備えている。
【0124】
感光体11の周囲には、帯電装置の一例として、感光体11を帯電させる帯電器23が設けられ、潜像形成装置の一例として、感光体11上に静電潜像を書込むレーザ露光器13(図中露光ビームを符号Bmで示す)が設けられている。
【0125】
また、感光体11の周囲には、現像装置の一例として、各色成分トナーが収容されて感光体11上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像器19が設けられ、感光体11上に形成された各色成分トナー像を一次転写部10にて転写定着ベルト15に転写する一次転写装置の一例として、一次転写ロール21が設けられている。
【0126】
更に、感光体11の周囲には、感光体11上の残留トナーが除去される感光体クリーナ17が設けられ、帯電器23、レーザ露光器13、現像器19、一次転写ロール21および感光体クリーナ17の電子写真用デバイスが感光体11の回転方向に沿って順次配設されている。これらの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、転写定着ベルト15の上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の順に、略直線状に配置されている。
【0127】
転写定着ベルト15は、各種ロールによって
図5に示すB方向に定められた速度で循環駆動(回転)されている。この各種ロールとして、定速性に優れたモータ(図示せず)により駆動されて転写定着ベルト15を回転させる駆動ロール31、各感光体11の配列方向に沿って略直線状に延びる転写定着ベルト15を支持する支持ロール32、転写定着ベルト15に対して一定の張力を与えると共に転写定着ベルト15の蛇行を防止する補正ロールとして機能する張力付与ロール33、二次転写定着部90に設けられる赤外線透過部材30、転写定着ベルト15上の残留トナーを掻き取るクリーニング部に設けられるクリーニング背面ロール34を有している。
【0128】
一次転写部10には、転写定着ベルト15を挟んで感光体11に対向して一次転写ロール21が配置されている。一次転写ロール21は、例えば、シャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とで構成されている。シャフトは、鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層はカーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴムで形成され、体積抵抗率が10
7.5Ωcm以上10
8.5Ωcm以下のスポンジ状の円筒ロールである。
【0129】
一次転写ロール21は転写定着ベルト15を挟んで感光体11に対向して配置され、更に一次転写ロール21にはトナーの帯電極性(マイナス極性とする。以下同様。)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が印加されるようになっている。これにより、各々の感光体11上のトナー像が転写定着ベルト15に順次、静電吸引され、転写定着ベルト15の外周面において重畳されたトナー像が形成されて保持されるようになっている。
【0130】
二次転写定着部90には、二次転写定着装置60が配置されている。二次転写定着装置60は、赤外線レーザ光Iを照射する赤外光照射装置70と、対向ロール36とを備えている。なお、赤外光照射装置70については、第1実施形態における赤外光照射装置70の構成と同様である(
図3参照)。
【0131】
対向ロール36は転写定着ベルト15を挟んで赤外線透過部材30を加圧するように対向配置されている。
【0132】
二次転写定着部90の下流側には、二次転写定着後の転写定着ベルト15上の残留トナーや紙粉を除去し、転写定着ベルト15の表面をクリーニングする転写定着ベルトクリーナ35が接離自在に設けられている。
なお、転写定着ベルトクリーナ35の形態はこれに限定されず、ブラシ、ブレード、静電的なクリーニングロール、発泡パッドが挙げられる。
【0133】
一方、イエローの画像形成ユニット1Yの上流側には、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにおける画像形成タイミングをとるための基準となる基準信号を発生する基準センサ(ホームポジションセンサ)42が配設されている。また、黒の画像形成ユニット1Kの下流側には、画質調整を行うための画像濃度センサ43が配設されている。この基準センサ42は、転写定着ベルト15の裏側に設けられたマークを認識して基準信号を発生しており、この基準信号の認識に基づく制御部40からの指示により、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは画像形成を開始するように構成されている。
【0134】
更に、本実施形態に係る画像形成装置103では、記録媒体Pを搬送する搬送手段として、記録媒体Pを収容する記録媒体収容部50、記録媒体収容部50に集積された記録媒体Pを予め定められたタイミングで取り出して搬送する給紙ロール51、給紙ロール51により繰り出された記録媒体Pを搬送する搬送ロール52、搬送ロール52により搬送された記録媒体Pを二次転写定着部90へと送り込む搬送ガイド53、二次転写定着部90においてトナー像が二次転写定着された記録媒体Pを搬送する搬送ベルト55、記録媒体Pを排出部に設けられた排紙収容部(不図示)に導くガイド56を備えている。
【0135】
次に、本実施形態に係る画像形成装置の基本的な作像プロセスについて説明する。
第3実施形態に係る画像形成装置103では、図示しない画像読取装置や図示しないパーソナルコンピュータ(PC)等から出力される画像データは、図示しない画像処理装置により画像処理が施された後、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって作像作業が実行される。
【0136】
画像処理装置では、入力された反射率データに対して、シェーディング補正、位置ズレ補正、明度/色空間変換、ガンマ補正、枠消しや色編集、移動編集等の各種画像編集等の画像処理が施される。画像処理が施された画像データは、Y、M、C、Kの4色の色材階調データに変換され、レーザ露光器13に出力される。
【0137】
レーザ露光器13では、入力された色材階調データに応じて、例えば半導体レーザから出射された露光ビームBmを画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各々の感光体11に照射している。画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各感光体11では、帯電器23によって表面が帯電された後、このレーザ露光器13によって表面が走査露光され、静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、各々の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって、Y、M、C、Kの各色のトナー像として現像される。
【0138】
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの感光体11上に形成されたトナー像は、各感光体11と転写定着ベルト15とが接触する一次転写部10において、転写定着ベルト15上に転写される。より具体的には、一次転写部10において、一次転写ロール21により転写定着ベルト15の基材に対しトナーの帯電極性(マイナス極性)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が付加され、トナー像を転写定着ベルト15の表面に順次重ね合わせて一次転写が行われる。
【0139】
トナー像が転写定着ベルト15の表面に順次一次転写された後、転写定着ベルト15は矢印B方向に移動してトナー像が二次転写定着部90に搬送される。トナー像が二次転写定着部90に搬送されると、搬送手段では、トナー像が二次転写定着部90に搬送されるタイミングに合わせて給紙ロール51が回転し、記録媒体収容部50から目的とするサイズの記録媒体Pが供給される。給紙ロール51により供給された記録媒体Pは、搬送ロール52により搬送され、搬送ガイド53を経て二次転写定着部90に到達する。この二次転写定着部90に到達する前に、記録媒体Pは一旦停止され、トナー像が保持された転写定着ベルト15の移動タイミングに合わせてレジストロール(図示せず)が回転することで、記録媒体Pの位置とトナー像の位置との位置合わせがなされる。
【0140】
二次転写定着部90では、転写定着ベルト15を介して、対向ロール36が赤外線透過部材30に加圧される。このとき、タイミングを合わせて搬送された記録媒体Pは、転写定着ベルト15と対向ロール36との間に挟み込まれる。その際に、転写定着ベルト15と対向ロール36との接触部(二次転写定着部90)に向け、未定着トナー像(以下、単に「トナー像」とも称す)を保持した転写定着ベルト15の幅方向の全域(転写定着ベルト15のトナー像の形成可能な領域の幅方向の全域)にわたって、赤外光照射装置70から赤外線レーザ光Iが照射される。そして、転写定着ベルト15の外周面に保持されたトナー像は、対向ロール36と赤外線透過部材30とによって加圧される二次転写定着部90において、記録媒体P上に一括して静電転写(二次転写)されるとともに定着される。
【0141】
なお、転写定着ベルト15の外周面に保持されたトナー像を記録媒体Pにより確実に二次転写させるため、例えば、対向ロール36は接地されて赤外線透過部材30との間に二次転写バイアスが形成され、二次転写定着部90に搬送される記録媒体P上にトナー像を静電的に二次転写させてもよい。
中間転写ベルト上のトナー像を記録媒体Pに転写した後、定着装置によって定着を行う装置では、記録媒体の膜厚、粗さ、抵抗、表面物性の影響を受けやすく、画像劣化(ブラー、画像乱れ、スミヤ、スマッジ等)をより受けやすい。一方、第3実施形態に係る転写定着ベルト15によって転写定着を行う画像形成装置103では、記録媒体Pの上記影響を受け難く、搬送ベルトとしても機能するため高速での画像形成に適している。
【0142】
トナー像が二次転写定着された記録媒体Pは、対向ロール36によって転写定着ベルト15から剥離された状態でそのまま搬送され、対向ロール36の記録媒体搬送方向下流側に設けられた搬送ベルト55へと搬送される。さらに、搬送ベルト55では、ガイド56により案内され、記録媒体Pを画像形成装置103の排出部に設けられた排紙収容部(不図示)に搬送される。
【0143】
一方、記録媒体Pへの転写が終了した後、転写定着ベルト15上に残った残留トナーは、転写定着ベルト15の回転に伴ってクリーニング部まで搬送され、クリーニング背面ロール34および転写定着ベルトクリーナ35によって転写定着ベルト15上から除去される。
【0144】
ここで、二次転写定着部90での赤外線レーザ光Iの作用について説明する。
画像形成装置103では、二次転写定着部90において、転写定着ベルト15の表面に一次転写されたトナー像に対し、転写定着ベルト15の内側から赤外線レーザ光Iが照射される。本実施形態に係る転写定着ベルト15は、赤外線に対する透過性を有し、かつ赤外吸収剤を含有するため、前記トナー像に対し、赤外光照射装置70により赤外線レーザ光Iが照射されると、赤外線レーザ光Iの一部は転写定着ベルト15中に含まれる赤外線吸収剤(図示省略)に吸収され、残りの赤外線レーザ光Iの一部は転写定着ベルト15を透過してトナー像に到達する。赤外線レーザ光Iを吸収した転写定着ベルト15の部分(赤外線吸収剤を含む領域)は、局所的に熱を放出し、自己発熱する。
このため、転写定着ベルト15の表面に一次転写されたトナー像は、赤外線レーザ光Iと、転写定着ベルト15の自己発熱の熱との両者によって加熱される。これにより、トナー像は、転写定着ベルト15及び対向ロール36によって圧力がかけられつつ温度が上昇する。二次転写定着部90では、この温度が上昇して溶融した状態のトナー層が記録媒体Pへ二次転写及び定着(二次転写定着)されるため、トナー層の二次転写及び定着(二次転写定着)が効率的に進行する。具体的には、二次転写定着部90でのトナーの蒸発速度等が高まり、記録媒体Pへのトナー像の二次転写性及び定着性(二次転写定着性)が向上する。これにより、画像不良が抑制される。
【0145】
なお、転写定着ベルト15の外周面に保持されたトナー像を記録媒体Pにより確実に二次転写定着させるため、トナー像を記録媒体P上に静電的に二次転写させてもよい。
【0146】
また、本実施形態では、その加熱加圧時間(すなわち、トナー像が温度上昇により溶融し、転写定着ベルト15の加圧により平坦化される時間)が数msecと短く、高速転写定着し得、かつ、高エネルギーの赤外線レーザ光によりトナー像が瞬時に加熱されるため、記録媒体Pを温めずにトナー像の転写定着が行われる。そのため、両面転写定着時の定着性も安定しており、記録媒体の剥離性も変化しないことにより、薄紙から厚紙、エンボス紙、連張紙、塗工紙、PETフィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ナイロンフィルム、シュリングフィルム等までの非浸透メディアなど広範囲の記録媒体の適応性が得られる。
【0147】
また、本実施形態では、転写定着ベルト15の内側に赤外光照射装置70が設けられ、赤外線レーザ光Iによって、記録媒体Pへのトナー像の二次転写定着が行われるため、画像形成装置の小型化とともに、トナー像の転写及び定着の高速化が実現され、エネルギー損失も低減される。
更に、本実施形態では、記録媒体Pに転写されたトナー像が定着装置を通過せずに二次転写定着が行われるため、トナー像を記録媒体Pに二次転写した後、定着装置を通過させて定着を行う場合に比べ、画像の劣化が抑制される。
【0148】
以上に説明した第3実施形態に係る画像形成装置103は上記の態様に限定的に解釈されるものではなく、種々の変形、変更、改良を行ってもよい。
本実施形態では、転写定着ベルト15の内側に赤外光照射装置70を設け、赤外線レーザ光Iを転写定着ベルト15の内周側から照射する態様について説明したが、赤外線レーザ光Iを前記内周側から照射する態様であれば、照射方法は特に限定されない。例えば、赤外光照射装置70を転写定着ベルト15の外周側に設け、赤外線レーザ光Iを反射鏡等を介して転写定着ベルト15の内周側から照射してもよい。
また、本実施形態では、転写定着ベルト15と対向ロール36との接触部(二次転写定着部90)において、継続的にトナー像を保持した転写定着ベルト15の幅方向の全域(転写定着ベルト15のトナー像の形成可能な領域の幅方向の全域)にわたって、赤外線レーザ光Iを照射する態様について説明したが、例えば、トナー像が転写定着ベルト15を介して赤外線透過部材30と対向したときのみ、転写定着ベルト15の幅方向の全域に赤外線レーザ光Iを照射してもよい。また、例えば、トナー像が転写定着ベルト15を介して赤外線透過部材30と対向したときに、トナー像が形成された幅のみ赤外線レーザ光Iをライン照射してもよい。これにより、転写定着ベルト15の過剰な発熱が抑制される。また、トナーの過剰な溶融が抑制され、トナーオフセットが発生しにくくなる。
また、本実施形態では、転写定着ベルト15を挟んで赤外光照射装置70に対向する回転部材として対向ロール36を備える場合について説明したが、ロールに限らず、例えばベルト状の回転部材(駆動、テンション、寄り止め蛇行防止ロール等)を備えてもよい。
【0149】
<第4実施形態>
本実施形態に係る環状体15を画像形成装置に適用した他の例ついて説明する。
図6は、第4実施形態に係る画像形成装置104の構成を示す概略図である。第4実施形態に係る画像形成装置104では、環状体15が定着ベルト(定着部材の一例)として搭載されている。なお、画像形成装置104の二次転写ベルトに適用する環状体15Aは、600nm以上1000nm以下の少なくとも一部の波長領域の赤外線に対する透過性を有する。
第4実施形に係る画像形成装置104は、
図6に示すように、感光体11(像保持体の一例)と、感光体11の表面を帯電する帯電器23(帯電装置の一例)と、帯電した感光体11の表面に潜像を形成するレーザ露光器13(潜像形成装置の一例)と、感光体11の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像器19(現像装置の一例)と、二次転写ベルト15Aと、感光体11の表面に形成されたトナー像を二次転写ベルト15Aに一次転写させる一次転写ロール21と、二次転写ベルト15Aの表面に一次転写されたトナー像を記録媒体Pに二次転写させる二次転写ロール39と、二次転写ベルト15Aを介して二次転写ロール39に対向して設けられた背面ロール38と、定着装置160と、を備えている。なお、一次転写ロール21と、二次転写ベルト15Aと、二次転写ロール39と、背面ロール38とは、転写装置の一例に相当する。
そして、定着装置160は、画像形成装置用の環状体からなる定着ベルト15と、定着ベルト15の表面に接触して周方向に回転し、定着ベルト15との間に記録媒体Pを挟んで搬送する回転部材45と、定着ベルト15の内側から、定着ベルト15を介して、記録媒体Pに転写されたトナー像に赤外線レーザ光Iを照射し、トナー像を記録媒体Pに定着する赤外光照射装置170と、を有する。
なお、第4実施形態に係る画像形成装置104は、環状体としての定着ベルト15と、赤外光照射装置70とを含む部分が、環状体ユニットに相当する。
【0150】
以下の説明では、第3実施形態と同一のものには同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0151】
第4実施形態に係る画像形成装置104では、二次転写部90Aに赤外線レーザ光Iを照射せずに、記録媒体Pへのトナー像の二次転写を行う。その後、別途設けた
図7に示す定着装置160で、接触部80(定着部)に対し、赤外線レーザ光Iを照射しながらトナー像の定着を行う。つまり、第4実施形態に係る画像形成装置104では、二次転写ベルト15Aの内側に赤外光照射装置70を設けず、定着装置160に赤外光照射装置170を設けた以外は第3実施形態に係る画像形成装置103と同様の構成である。
【0152】
図6に示す画像形成装置104では、二次転写部90Aにおいて、二次転写ベルト15A上のトナー像が記録媒体Pに二次転写される。その後、記録媒体Pは、搬送ベルト55
によって定着装置160に搬送される。
【0153】
トナー像が二次転写された記録媒体Pは、二次転写ベルト15Aから剥離され、二次転写ロール39の記録媒体Pの搬送方向下流側に設けられた搬送ベルト55によって、定着装置160に搬送される。そして、定着装置160では、接触部80(定着部)に向かって赤外線レーザ光Iが照射され、記録媒体Pへのトナー像の定着が行われる。その後、トナー像が定着された記録媒体Pは、回転部材45によって定着ベルト15から剥離され、搬送ベルト(図示省略)により、画像形成装置104の排出部に設けられた排紙収容部(不図示)に搬送される。
【0154】
ここで、画像形成装置104が備える定着装置160について説明する。
図7に示すように、定着装置160は、例えば、赤外線に対して透過性を有し無端ベルト状(環状)である定着ベルト15と、定着ベルト15が巻き掛けるように接して設けられた回転部材45と、定着ベルト15の外部に設けられた赤外光照射装置170と、を備えている。なお、赤外光照射装置170の構成については、第1実施形態に係る画像形成装置101が備える赤外光照射装置70と同一のものには同一符号を付し、重複する説明は省略する。
定着ベルト15は、内部に配置された駆動ロール82と支持ロール84とによって支持されている。また定着ベルト15の内部に互いに間隔を持って設けられた押しつけロール86及び押しつけロール87が、定着ベルト15を介して回転部材45に押し付けることで、定着ベルト15における押しつけロール86と押しつけロール87との間の領域が内側に変形し、接触部80が形成される。
また、赤外光照射装置170は、赤外線レーザ光Iを照射する赤外光照射部70Aと、赤外線レーザ光Iを集光するレンズ部材72と、定着ベルト15の内周面とレンズ部材72との間に設けられた摺動部材74と、を備えている。レンズ部材72は、定着ベルト15の内部において、定着ベルト15を介して回転部材45に加圧される状態で配置されている。そして摺動部材74は、定着ベルト15の内周面とレンズ部材72との摺動抵抗を小さくし、定着ベルト15の内周面とレンズ部材72とが直接接触することによる傷の発生を防ぐため、レンズ部材72における定着ベルト15と接する面に設けられている。
【0155】
定着ベルト15は、駆動ロール82の回転によって定着ベルト15が矢印S方向に回転し、それに伴って回転部材45が定着ベルト15の回転方向と反対の方向へ回転する。
一方、レンズ部材72及び摺動部材74は不図示の支持部材によって固定され、定着ベルト15が回転してもレンズ部材72及び摺動部材74は停止したままである。
また、摺動部材74が定着ベルト15の内周面とレンズ部材72との間に設けられていることによって、定着ベルト15の回転時に、レンズ部材72は摺動部材74を介して定着ベルト15の内周面に接触する。
【0156】
そして、表面にトナー像T2が形成された記録媒体Pが、定着ベルト15の回転に伴って矢印U方向に搬送され、接触部80において、トナー像T2が定着ベルト15の外周面に直接接触するように、定着ベルト15と回転部材45とに挟み込まれる。その状態で赤外光照射装置170から接触部80に向け、トナー像T2を保持した記録媒体Pの幅方向の全域(記録媒体Pのトナー像T2の形成可能な領域の幅方向の全域)にわたって、赤外線レーザ光Iが発せられ、レンズ部材72によって集光された赤外線レーザ光Iがトナー像T2に照射されることで、トナー像T2が記録媒体Pに定着されて定着画像Fとなる。
【0157】
接触部80の幅(ニップ幅)としては、例えば0.005cm以上1cm以下が挙げられる。接触部80の幅を長くすると、例えば赤外線レーザ光Iを照射してから記録媒体Pに定着されるまでの時間が比較的長いトナーを用いても、良好な定着性が得られる。
【0158】
ここで、接触部80(定着部)での赤外線レーザ光Iの作用について説明する。
画像形成装置104では、接触部80において、定着ベルト15の表面に一次転写されたトナー像に対し、定着ベルト15の内側から赤外線レーザ光Iが照射される。本実施形態に係る定着ベルト15は、赤外線に対する透過性を有し、かつ赤外吸収剤を含有するため、前記トナー像に対し、赤外光照射装置170により赤外線レーザ光Iが照射されると、赤外線レーザ光Iの一部は定着ベルト15中に含まれる赤外線吸収剤(図示省略)に吸収され、残りの赤外線レーザ光Iの一部は定着ベルト15を透過してトナー像に到達する。赤外線レーザ光Iを吸収した定着ベルト15の部分(赤外線吸収剤を含む領域)は、局所的に熱を放出し、自己発熱する。
このため、定着ベルト15の表面に一次転写されたトナー像は、赤外線レーザ光Iと、定着ベルト15の自己発熱の熱との両者によって加熱される。これにより、トナー像は、定着ベルト15及び回転部材45によって圧力がかけられつつ温度が上昇する。接触部80では、この温度が上昇して溶融した状態のトナー層が記録媒体Pに定着されるため、トナー層の定着が効率的に進行する。具体的には、接触部80でのトナーの蒸発速度等が高まり、記録媒体Pへのトナー像の定着性が向上する。これにより、画像不良が抑制される。
【0159】
また、本実施形態では、その加熱加圧時間(すなわち、トナー像が温度上昇により溶融し、定着ベルト15の加圧により平坦化される時間)が数msecと短く、高速定着し得、かつ、高エネルギーの赤外線レーザ光Iによりトナー像が瞬時に加熱されるため、記録媒体Pを温めずにトナー像の定着が行われる。そのため、両面定着時の定着性も安定しており、記録媒体の剥離性も変化しないことにより、薄紙から厚紙、エンボス紙、連張紙、塗工紙、PETフィルム、シュリングフィルム等までの非浸透メディアなど広範囲の記録媒体の適応性が得られる。
また、本実施形態では、接触部80において、継続的にトナー像を保持した記録媒体Pの幅方向の全域(記録媒体Pのトナー像T2の形成可能な領域の幅方向の全域)にわたって、赤外線レーザ光Iを照射する態様について説明したが、例えば、トナー像が中間転写ベルト15を介して赤外線透過部材30と対向したときのみ、記録媒体Pの幅方向の全域に赤外線レーザ光Iを照射してもよい。また、例えば、トナー像が記録媒体Pを介して赤外線透過部材30と対向したときに、トナー像が形成された幅のみ赤外線レーザ光Iをライン照射してもよい。これにより、定着ベルト15の過剰な発熱が抑制される。また、トナーの過剰な溶融が抑制され、トナーオフセットが発生しにくくなる。
【実施例】
【0160】
以下、実施例により本実施形態を詳細に説明するが、本実施形態は、これら実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0161】
[実施例1]
(環状体1の製造)
2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物(6FDA、ダイキン社製)50部と、4,4’−ジフェニルエーテルジアミン(ODA、和光純薬工業社製)50部と、イオン導電剤としてトリメチルベンジルアンモニウムクロライド(和光純薬工業社製)1部と、近赤外線吸収色素として、昭和電工社製のIR−T(商品名)0.3部と、をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)200部に溶解させ、更にピリジン0.3部と無水酢酸5部とを添加して230℃で加熱処理し、ポリアミック酸プレポリマーを合成した。得られたポリアミック酸プレポリマーをエタノール中で再沈降させ、析出した固体を単離乾燥して粉末を得た。得られた粉末をN−ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解させ(以下、「溶液1」とも称す)、遠心塗布により溶液1を芯体に塗布し、塗膜を形成した。その後、180℃で焼成し、イミド化された被膜を芯体から取り外し、外径φ366mm、膜厚88μmの単層体からなるポリイミド環状体1を得た。環状体1の弾性率は4.1GPa、破断伸びは9%であった。なお、弾性率及び破断伸びの測定は、既述の方法により行った。以下の測定も同様である。
【0162】
[実施例2]
(環状体2の製造)
2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物を1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(DMCBDA:新日本理化製)に代え、ジフェニルエーテルジアミンを2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(TFMB、ダイキン社製)に代えた以外は実施例1と同様にして粉末を得た。得られた粉末をシクロペンタノンに溶解させ(以下、「溶液2」とも称す)、遠心塗布により溶液2を芯体に塗布し、塗膜を形成した。その後、150℃で焼成し、イミド化された被膜を芯体から取り外し、外径φ366mm、膜厚92μmの単層体からなるポリイミド環状体2を得た。環状体2の弾性率は3.2GPa、破断伸びは12%であった。
【0163】
[実施例3]
(環状体3の製造)
押出し成形した透明のポリエーテルスルホン(PES)材料(E2010、外径φ366mm:BASF社製)を基材として用い、基材の外周面に、実施例1で得られた粉末をメチルエチルケトン(MEK)に溶解した溶液(固形分濃度10質量%)をスプレー塗布し、20μmの表面層を作製した。これにより、基材と表面層とを有する外径φ366mm、膜厚108μmの積層体からなるポリエーテルスルホン環状体3を得た。環状体3の弾性率は2.3GPa、破断伸びは15%であった。
【0164】
[実施例4]
(環状体4の製造)
押出し成形した透明のポリカーボネート材料(TF1151−5、外径φ60mm:住化スタイロン社製)を基材として用い、実施例3と同様にして、基材の外周面に表面層としてシリコンコートSV2000(ナノグラスコート社製)をデイップコートし膜厚2μmで作製した。これにより、基材と表面層とを有する外径φ60mm、膜厚120μmの積層体からなるポリカーボネート環状体4を得た。環状体4の弾性率は1.2GPa、破断伸びは15%であった。
【0165】
[比較例1]
(環状体A1の製造)
実施例3で用いた基材と同様の基材を用い、この基材の外周面に、ウレタン接着剤を介して厚み25μmのエチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)フィルム層を形成し、ETFEフィルム層の端部を超音波シーム処理して、基材とETFEフィルム層とを有する外径φ366mm、膜厚113μmの積層体からなる環状体A1を得た。環状体A1の弾性率は2.3GPa、破断伸びは23%であった。
【0166】
[比較例2]
(環状体A2の製造)
赤外線吸収剤を含まない以外は、実施例1と同様にして、外径φ366mm、膜厚73μmの単層体からなる環状体A2を得た。環状体A2の弾性率は3.8GPa、破断伸びは8%であった。
【0167】
[比較例3]
(環状体A3の製造)
赤外線吸収剤を含まない以外は、実施例2と同様にして、外径φ366mm、膜厚88μmからなる環状体A3を得た。環状体A3の弾性率は2.8GPa、破断伸びは15%であった。
【0168】
[評価]
(環状体の透過率)
各実施例及び各比較例で得られた環状体について、赤外線の透過スペクトルを測定し、赤外線レーザ光の波長(808nm)における透過率を算出した。同様に、紫外光透過スペクトルを測定し、紫外光の波長(365nm)における透過率を算出した。結果を表1に示す。また、環状体に主成分として含まれる樹脂のUL94規格の水準を表1に示す。
なお、赤外線レーザ光及び紫外光の透過スペクトルは、測定装置として紫外可視分光光度計(日本分光社製、型番:JASCO−V560)を用い、350nmから950nm領域での測定条件において測定した。以下の測定も同様の方法で行った。
【0169】
(画像形成評価)
各実施例及び各比較例で得られた環状体を、
図2、4、5、6に示す画像形成装置にそれぞれ搭載し、下記要領で、画像形成評価を行った。
<
図2に示す画像形成装置での画像形成評価>
各実施例及び各比較例で得られた環状体を中間転写ベルト15として、
図2と同一の構成を有するインクジェット画像形成装置101に搭載した(中間転写ベルトのプロセス速度:50mm/sec)。
なお、
図2に示す画像形成装置101には、中間転写ベルト15の内側に、
図3に示す赤外光照射装置70と、紫外光照射装置18とを搭載した。赤外光照射装置70及び紫外光照射装置18の設定条件は次の通りである。
【0170】
−赤外光照射装置70の設定条件−
・保護部材71:ガラス管(内径:25mm、外径:28mm)
・レンズ部材72:シリンドリカルレンズ(シグマ光機社製、型番:BK7)
・赤外光照射装置70の光源70A:半導体レーザ(エネオプチック社製、赤外線レーザ光の波長:808nm)
・中間転写ベルト15と赤外線透過部材30との対向領域(接触部)への赤外線レーザ光Iの照射強度:30W/cm
2
・前記接触部の被硬化層12Bへの赤外線レーザ光Iの照射量:800mJ/cm
2
【0171】
−紫外光照射装置18の設定条件−
・紫外光照射装置18の光源:LED(紫外光の波長:365nm)
・紫外光の照射量は、300mJ/cm
2
【0172】
−画像汚れの評価−
画像形成装置101を用い、35℃/85%RHの環境下で1%印字チャートを画像形成し、10万枚目の画像汚れの評価を下記の基準で行った。結果を表2に示す。
G1(○):画像汚れが目視で認められない。
G2(△):画像汚れが目視で若干認められるが許容レベルである。
G3(×):画像汚れが目視で明らかに認められる。
【0173】
<
図4に示す画像形成装置での画像形成評価>
各実施例及び各比較例で得られた環状体を中間転写ベルト15として、
図4と同一の構成を有するインクジェット画像形成装置102に搭載した(中間転写ベルトのプロセス速度:50mm/sec)。
なお、
図4に示す画像形成装置102には、中間転写ベルト15の内側に赤外光照射装置70と、紫外光照射装置18とを搭載した。赤外光照射装置70及び紫外光照射装置18の設定条件は次の通りである。
【0174】
−赤外光照射装置70の設定条件−
・保護部材71:ガラス管(内径:25mm、外径:28mm)
・レンズ部材72:シリンドリカルレンズ(シグマ光機社製、型番:BK7)
・赤外光照射装置70の光源70A:半導体レーザ(エネオプチック社製、赤外線レーザ光の波長:808nm)
・中間転写ベルト15と赤外線透過部材30との対向領域(接触部)への赤外線レーザ光Iの照射強度:80W/cm
2
・前記接触部のインク層14Bへの赤外線レーザ光Iの照射量:300mJ/cm
2
【0175】
−紫外光照射装置18の設定条件−
・紫外光照射装置18の光源:LED(紫外光の波長:365nm)
・紫外光の照射量は、100mJ/cm
2
【0176】
−画像汚れの評価−
画像形成装置102を用い、上記と同様の方法で画像を形成し、同様の基準で画像汚れの評価を行った。結果を表2に示す。
【0177】
<
図5に示す画像形成装置での画像形成評価>
各実施例及び各比較例で得られた環状体を転写定着ベルト15として、
図5と同一の構成を有する電子写真方式画像形成装置(DC4300:富士ゼロックス社製)103に搭載した(転写定着ベルトのプロセス速度:50mm/sec)。
なお、
図5に示す画像形成装置103には、転写定着ベルト15の内側に、
図3に示す赤外光照射装置70を搭載した。赤外光照射装置70の設定条件は次の通りである。
【0178】
−赤外光照射装置70の設定条件−
・保護部材71:ガラス管(内径:25mm、外径:28mm)
・レンズ部材72:シリンドリカルレンズ(シグマ光機社製、型番:BK7)
・赤外光照射装置70の光源70A:半導体レーザ(エネオプチック社製、赤外線レーザ光の波長:808nm)
・二次転写定着部90への赤外線レーザ光Iの照射強度:100W/cm
2
・二次転写定着部90の未定着トナー像への赤外線レーザ光Iの照射量:300mJ/cm
2
【0179】
−画像汚れの評価−
画像形成装置103を用い、上記と同様の方法で画像を形成し、同様の基準で画像汚れの評価を行った。結果を表2に示す。
【0180】
<
図6に示す電子写真方式画像形成装置での画像形成評価>
各実施例及び各比較例で得られた環状体を定着ベルト15として、
図6と同一の構成を有する電子写真方式画像形成装置(DC1225:富士ゼロックス社製)104に搭載した(定着ベルトのプロセス速度:50mm/sec)。
なお、
図6に示す画像形成装置104には、定着ベルト15の内側に、
図7に示す赤外光照射装置170を搭載した。赤外光照射装置170の設定条件は次の通りである。
【0181】
−赤外光照射装置170の設定条件−
・レンズ部材72:シリンドリカルレンズ(シグマ光機社製、型番:BK7)
・赤外光照射装置70の光源70A:半導体レーザ(エネオプチック社製、赤外線レーザ光の波長:808nm)
・接触部80(定着部)への赤外線レーザ光Iの照射強度:30W/cm
2
・接触部80の未定着トナー像への赤外線レーザ光Iの照射量:300mJ/cm
2
【0182】
−画像汚れの評価−
画像形成装置104を用い、上記と同様の方法で画像を形成し、同様の基準で画像汚れの評価を行った。結果を表2に示す。
【0183】
【表1】
【0184】
【表2】
【0185】
表1から、各実施例の環状体は、いずれも赤外線レーザ光及び紫外光に対し透過性を有することがわかる。また、樹脂層に赤外線吸収剤を含有しない比較例2の環状体A2は、赤外線吸収剤を含有する実施例1の環状体1に比べ、赤外線レーザ光に対する透過性が高いことがわかる。同様に、樹脂層に赤外線吸収剤を含有しない比較例3の環状体A3は、赤外線吸収剤を含有する実施例2の環状体2に比べ、赤外線レーザ光に対する透過性が高いことがわかる。
表2から、本実施例では、比較例に比べ、画像汚れが抑制されていることがわかる。この結果、赤外線レーザ光により自己発熱する環状体(中間転写ベルト、転写定着ベルト、定着ベルト)を画像形成装置に適用することで画像汚れが抑制されることがわかる。