(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6565294
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】溶射装置及び溶射方法
(51)【国際特許分類】
B05B 7/16 20060101AFI20190819BHJP
B05D 1/10 20060101ALI20190819BHJP
C23C 4/12 20160101ALI20190819BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20190819BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
B05B7/16
B05D1/10
C23C4/12
B05D7/24 301A
B05D3/00 D
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-83946(P2015-83946)
(22)【出願日】2015年4月16日
(65)【公開番号】特開2016-203042(P2016-203042A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092200
【弁理士】
【氏名又は名称】大城 重信
(74)【代理人】
【識別番号】100110515
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 益男
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100189083
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 圭介
(72)【発明者】
【氏名】國廣 一郎
【審査官】
赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−293062(JP,A)
【文献】
実開昭60−031358(JP,U)
【文献】
実開昭55−159756(JP,U)
【文献】
実開昭55−065164(JP,U)
【文献】
特公昭42−005167(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00− 17/06
B05D 1/00− 7/26
C23C 4/00− 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶射ノズルを複数備えた溶射装置であって、
前記溶射ノズルは、粉体を噴出する粉体ノズルと、加熱ガスを噴出する加熱ガス流路部材とを有し、
前記加熱ガス流路部材の先端側に、周状溶射ノズル部を有し、
前記粉体ノズルが、前記周状溶射ノズル部の出口近傍で加熱ガスと合流するように粉体を噴出するように構成され、
複数の溶射ノズルは、それぞれ粉体ノズルの噴出孔が、周状に複数配列されるとともに、前記粉体ノズルの噴出孔の周方向の位置が異なるように配置されていることを特徴とする溶射装置。
【請求項2】
前記加熱ガス流路部材が、前記粉体ノズルを内挿する筒状に構成され、
前記加熱ガス流路部材と前記粉体ノズルとの間に周状の加熱ガス流路が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の溶射装置。
【請求項3】
前記粉体ノズルが、粉体の噴出孔を周状に複数有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の溶射装置。
【請求項4】
前記周状溶射ノズル部が、前記加熱ガス流路部材の出口延長部と、前記出口延長部との間に所定の噴出流路を形成する内側ノズル部材を有することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の溶射装置。
【請求項5】
前記内側ノズル部材が、前記粉体ノズルの先端側に着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の溶射装置。
【請求項6】
前記出口延長部が、前記加熱ガス流路部材の先端側に着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の溶射装置。
【請求項7】
前記粉体ノズルの上流側に、粉体を定量ずつ切り出すシャッター部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の溶射装置。
【請求項8】
前記周状の加熱ガス流路には、前記加熱ガス流路部材と前記粉体ノズルとの間を隔離するシールドエア流路部材を有することを特徴とする請求項2乃至請求項7のいずれかに記載の溶射装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の溶射装置によって周状に溶射する溶射方法であって、
前記溶射ノズルは、それぞれ粉体ノズルの噴出孔が、周状に複数配列され、
前記粉体ノズルの噴出孔の周方向の位置が異なるように複数回溶射することを特徴とする溶射方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の表面に周状に溶射す
る溶射装置及び溶射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物の表面を樹脂等で被覆する手段として、溶融樹脂をホットメルトガンで吐出する方法が一般的に行われているが、適用できる樹脂が限定的であり用途範囲が狭い。
また、ノズルから吐出後に樹脂の糸引き現象が生じるため、狭領域への正確な被覆が困難であり、かつ樹脂の無駄が生じるとともにサイクルアップが難しいという問題点がある。
ホットメルトガンに替わりホットランナーを用いることで適用樹脂範囲が広がるものの、同様の糸引き現象が生じる。
また、樹脂溶液コートやエマルジョンコート等の湿式方法もあるが、材料が限定的であり、かつ塗布後に溶剤を気化させなければならず溶剤の環境負荷も高いなどの問題点がある。
【0003】
さらに、射出成形機と同様に樹脂原料を加熱しながらスクリューで押し出して溶融化した溶融樹脂を、金属等の対象物表面に微粒子状に噴射して被膜を形成する方法も提案されている(特許文献1参照)。
この装置は、大型対象物の表面への樹脂被覆には適していても、微量の樹脂の正確な間欠噴射は困難であり、例えば紙コップ等の開口カール部の段差部に少量の樹脂盛りをする等の用途には適用困難であり、かつ装置の小型化・高速化が困難であるとともに、設備コストも高い等の問題点がある。
【0004】
また、他の方法として、溶射ガンにより接着性樹脂粉末を対象物表面にアセチレン、プロパン等による火炎を利用するフレーム溶射で樹脂被覆することも知られている(特許文献2参照)。
しかし、この場合も間欠処理化やスプレーパターン制御が困難であり、狭領域への確実な溶射被覆は困難であり、且つ対象物や被覆樹脂自体が火炎により熱劣化を起こす虞がある。
これらの問題を解決するため、本出願人は、合成樹脂を主体とする粉体を間欠的に、加熱ガスで噴出する溶射(被覆)装置及び溶射(被覆)方法を提案した(特願2014-112617号)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−201833号公報
【特許文献2】特開昭63−141666号公報
【特許文献3】特開昭62−186972号公報
【特許文献4】特開平06−206025号公報
【特許文献5】特開2014−19468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来公知の技術や、本出願人が提案した技術において、対象物の表面に対して周状に溶射したい場合には、溶射ノズル又は対象物を回転させたり周に沿って移動させる必要がある。
溶射ノズル又は対象物の一方を固定し、他方を回転させるものは公知(例えば、特許文献3、4等参照。)である。
特許文献3、4で公知の技術のように、対象物が比較的大きく、高速処理を求められていない場合は問題がないが、特許文献5で公知の技術のように、紙コップの内面底部周縁を被覆する場合等は、高速な処理が求められる製造ラインで適用すると、処理の完了までに所定の時間を要し、製造ライン全体の効率が低下するという問題があった。
また、紙コップ等の強度の低い対象物の場合、高速の製造ラインで正確に位置決めして固定することが難しく、設備の複雑化や処理速度の低下を招くという問題があった。
【0007】
本発明は、前述した問題点を解決するものであり、ライン全体の効率を低下させることなく、正確に効率よく周状に溶射することができ
る溶射装置及び溶射方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る溶射
装置は、
溶射ノズルを複数備えた溶射装置であって、溶射ノズルは、粉体を噴出する粉体ノズルと、加熱ガスを噴出する加熱ガス流路部材とを有し、加熱ガス流内に粉体を噴出して対象物に溶射する溶射ノズルであって、前記加熱ガス流路部材の先端側に、周状溶射ノズル部を有し、前記粉体ノズルが、前記周状溶射ノズル部の出口近傍で加熱ガスと合流するように粉体を噴出するように構成さ
れ、前記複数の溶射ノズルは、それぞれ粉体
ノズルの噴出孔が、周状に複数配列されるとともに、前記粉体
ノズルの噴出孔の周方向の位置が異なるように配置されていることにより、前記課題を解決するものである。
また、本発明に係る溶射方法は、前述の溶射
装置によって周状に溶射する溶射方法であって、前記溶射ノズルは、それぞれ粉体噴出孔が、周状に複数配列され、前記粉体噴出孔の周方向の位置が異なるように複数回溶射することにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0009】
本請求項1に係る溶射
装置によれば、加熱ガス流路部材の先端側に、周状溶射ノズル部を有することにより、溶射ノズルや対象物を回転させたり周に沿って移動させることなく、対象物の表面に対して周状に溶射することが可能となるため、製造ラインに組み込んだ場合でも、ライン全体の効率を低下させることなく、正確に効率よく周状に溶射することができる。
また、複数の溶射ノズルは、それぞれ粉体ノズルの噴出孔が、周状に複数配列されるとともに、粉体ノズルの噴出孔の周方向の位置が異なるように配置されていることにより、少ない量で短時間の溶射でも、複数回に分けることで、全周にわたって正確に周状に溶射することが可能となる。
また、溶射ノズルを複数配置しているため、連続して対象物を処理可能でライン全体の速度の低下はなく、さらに、1回あたりの溶射量を減らし、溶射時間を短くすることで速度を向上させ、効率を高めることも可能となる。
【0010】
本請求項2に記載の構成によれば、加熱ガス流路部材が、粉体ノズルを内挿する筒状に構成され、加熱ガス流路部材と粉体ノズルとの間に周状の加熱ガス流路が形成されていることにより、簡単な構成で、周状に均一に加熱ガスを噴出することが可能となり、さらに正確に効率よく周状に溶射することができる。
本請求項3に記載の構成によれば、粉体ノズルが、粉体の噴出孔を周状に複数有していることにより、溶射すべき粉体を周方向で均等に噴出することが可能となり、さらに正確に効率よく周状に溶射することができる。
本請求項4に記載の構成によれば、周状溶射ノズル部が、加熱ガス流路部材の出口延長部と、出口延長部との間に所定の噴出流路を形成する内側ノズル部材を有することにより、ノズルの構造が単純化される。
本請求項5に記載の構成によれば、内側ノズル部材が、粉体ノズルの先端側に着脱可能に設けられていることにより、周状溶射ノズル部の内面のメンテナンスが容易となり、正確な溶射を維持することが可能となる。
【0011】
本請求項6に記載の構成によれば、出口延長部が、加熱ガス流路部材の先端側に着脱可能に設けられていることにより、周状溶射ノズル部全体を着脱可能とすることができ、さらに確実にメンテナンスすることが可能となる。
本請求項7に記載の構成によれば、粉体ノズルの上流側に、粉体を定量ずつ切り出すシャッター部を有することにより、さらに正確に溶射を行うことが可能となる。
本請求項8に記載の構成によれば、周状加熱ガス流路には、加熱ガス流路部材と粉体ノズルとの間を隔離するシールドエア流路部材を有することにより、粉体ノズルとシールドエア流路部材の間に断熱のためのエアを供給することが可能となり、周状加熱ガス流路内の熱により粉体ノズルが過熱することなく、粉体噴出孔からの粉体の噴出が安定し、さらに正確に溶射を行うことが可能となる。
【0012】
本請求項9に係
る溶射方法によれば、粉体ノズルの噴出孔の周方向の位置が異なるように複数回溶射することにより、少ない量で短時間の溶射でも、複数回に分けることで、全周にわたって正確に周状に溶射することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る
溶射装置の溶射ノズルの断面図。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る
溶射装置の溶射ノズルの溶射説明図。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る
溶射装置の溶射ノズル及び清掃手段の説明図。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る
溶射装置の溶射ノズルの清掃時の説明図。
【
図8】本発明の第3実施形態に係る
溶射装置の溶射ノズル及び清掃手段の説明図。
【
図9】本発明の第3実施形態に係る
溶射装置の溶射ノズルの清掃時の説明図。
【
図10】本発明の第3実施形態に係る
溶射装置の溶射ノズルの他の形態の清掃手段の説明図。
【
図11】本発明の第4実施形態に係る
溶射装置の溶射ノズル及び清掃手段の説明図。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0014】
本発明の第1実施形態に係る
溶射装置の溶射ノズル100は、
図1に示すように、粉体を噴出する粉体ノズル110と、加熱ガスを噴出する加熱ガス流路部材120とを有し、合成樹脂等の粉体を加熱ガス中に噴出して対象物表面に溶射するものである。
加熱ガス流路部材120の先端側には、加熱ガス流路部材120の出口延長部122と内側ノズル部材123で構成された周状溶射ノズル部121を有しており、粉体ノズル110の先端の噴出孔111から噴出される粉体が、周状溶射ノズル部121の出口近傍で加熱ガスと合流するように構成されている。
【0015】
加熱ガス流路部材120は粉体ノズル110を内挿する筒状に構成され、加熱ガス流路部材120と粉体ノズル110との間に周状の加熱ガス流路が形成され、加熱ガス供給管124から加熱ガスが供給され、周状溶射ノズル部121から加熱ガスが噴出するように構成されている。
また、本実施形態では、周状の加熱ガス流路に、加熱ガス流路部材120と粉体ノズル110との間を隔離する筒状のシールドエア流路部材130が設けられ、加熱ガスがシールドエア流路部材130の外側を流れように構成されている。
【0016】
粉体ノズル110は、
図2に示すように、粉体の噴出孔111を周状に等間隔に8個有している。
粉体ノズル110の上流側には、粉体を定量ずつ切り出すシャッター部(図示せず)を有しており、所望の量の粉体を所望のタイミングで噴出孔111から噴出可能に構成されている。
なお、噴出孔111の数を等間隔に8個としたが、その間隔や数は、溶射対象に対する溶射量や溶射態様に応じて、適宜設定すればよい。
また、開口形状も、図示では円形としたが、周方向に長い形状としてもよく、周方向に連続するスリット状に形成してもよい。
【0017】
以上のように構成された第1実施形態の
溶射装置の溶射ノズル100により、容器Cの内面底部周縁に樹脂を溶射して被覆する動作について、
図3に基づいて説明する。
溶射ノズル100と溶射対象である容器Cが相対的に移動して、容器Cの内面底部周縁に溶射可能な位置まで溶射ノズル100が容器Cに挿入される。
この挿入移動時は、加熱ガスHGのみが噴出されて、溶射位置に達した際に、
図3に示すように、粉体ノズル110の噴出孔111から樹脂の粉末PWが所定量噴出される。
【0018】
噴出された粉末PWは、周状溶射ノズル部121の出口近傍で加熱ガスHGと合流し、加熱ガスHGの熱により溶融又は半溶融状態となって容器Cの内面底部周縁に付着し、所望の樹脂被覆が得られる。
その後の加熱ガスHGは、排気EGとなって容器Cの上方から排出される。
なお、本実施形態では、粉体ノズル110とシールドエア流路部材130の間に、粉体ノズル110が加熱ガスHGの熱の影響を受けないように、冷却ガスCGが供給されているが、その供給量は、断熱効果を発揮できる程度の少量でよく、加熱ガスHGの温度や流れに影響を与えることはない。
【0019】
噴出孔111からの溶射は、噴出方向を中心線から離れるほど溶射量が少なくなるため、周状に等間隔に配置された噴出孔111からの溶射では容器Cの内面底部周縁の全周が均等に被覆できない場合がある。
容器Cの内面底部周縁の全周が長く、1回の溶射量を多くしなければならない場合がある。
そのような場合には、例えば、
図4aに示す噴出孔111aの位置と、周方向に半ピッチ分にずらした
図4bに示す噴出孔111bの位置の、2回溶射することで、1回の溶射量を減らし、より均等な被覆を行うことが可能となる。
2回溶射を行うには、溶射ノズル100全体を回転させてもよく、容器Cの製造ライン中に、
図4aに示す粉体ノズル110aを有する溶射ノズルと、
図4bに粉体ノズル110bを有する溶射ノズルとを準備し、2ステップで溶射してもよい。
さらに、周方向にずらすピッチを1/n(n≧2:nは整数)とし、n回溶射するようにしてもよい。
【0020】
また、内面底部周縁が円形ではない、例えば、楕円形の容器の場合、
図5に示すように、粉体ノズル110cを楕円形とし、他の構成も全てこれに合わせて断面形状を構成することで対応可能である。
このような形状の場合、溶射ノズル全体を回転させる方法は採用できないため、n回溶射する場合は、噴出孔111の位置の異なる溶射ノズルをn個準備する方法を採用することとなる。
【実施例2】
【0021】
本発明の第2実施形態に係る
溶射装置の溶射ノズルは、
図6に示すように、内側ノズル部材123が、粉体ノズル110の先端中央部に設けられた取付部112に、図示の上下方向に移動可能に取付けられており、その他の構成は前述の第1実施形態と同様である(図示も簡略化した。)。
そして、溶射すべき容器を保持する容器保持部材Tと集塵部材141のいずれかが、溶射ノズルの下方に来るように、相対的に移動可能に構成されている。
【0022】
以上のように構成された第2実施形態の
溶射装置の溶射ノズルの清掃時の動作について説明する。
まず、
図6に示すように、溶射ノズルの下方に容器保持部材Tが位置している状態で、第1実施形態の溶射ノズルと同様の溶射の動作をした後、溶射ノズルの下方に集塵部材141が位置するように相対移動する。
そして、
図7に示すように、内側ノズル部材123を集塵部材141に押し付け、内側ノズル部材123を粉体ノズル110に向けて移動させて、溶射ノズルの出口間隔を小さくする。
この状態で、清掃用ガスSGを、溶射時の加熱ガスHGと同じ経路で噴出することで、溶射ノズルの出口での清掃用ガスSGの流速を高め、内面に付着した粉末を取り除く。
取り除かれた粉末は、集塵部材141によって集められ、周辺に飛散することはない。
なお、清掃用ガスSGは、溶射時の加熱ガスの供給経路上に導入弁等を設けて供給してもよく、溶射のための加熱ガスをそのまま、あるいは加熱を停止して清掃用ガスSGとして使用してもよい。
【実施例3】
【0023】
本発明の第3実施形態に係る
溶射装置の溶射ノズルは、
図8に示すように、出口延長部122が加熱ガス流路部材120と接続・分離可能に形成され、周状溶射ノズル部121を構成する出口延長部122と内側ノズル部材123が独立して一体となったもので、その他の構成は前述の第1実施形態と同様である(図示も簡略化した。)。
そして、溶射ノズルの側方に清掃ノズル142が配置され、周状溶射ノズル部121が、スライド分離チャック144によって清掃ノズル142の下方に移動可能に構成されている。
【0024】
以上のように構成された第3実施形態の
溶射装置の溶射ノズルの清掃時の動作について説明する。
まず、
図8に示すように、溶射ノズルの下方に容器保持部材Tが位置している状態で、第1実施形態の
溶射装置の溶射ノズルと同様の溶射の動作をした後、スライド分離チャック144が周状溶射ノズル部121を移動させる。
そして、
図9に示すように、周状溶射ノズル部121が清掃ノズル142の下方に位置決めされ、清掃ノズル142が下降して周状溶射ノズル部121に挿入される。
この状態で、清掃ノズル142から清掃用ガスを噴出することで、内面に付着した粉末を取り除く。
なお、周状溶射ノズル部121が円形の場合、清掃ノズル142に代えて、
図10に示すように、一体型清掃ブラシ143を溶射ノズルの側方に配置し、一体型清掃ブラシ143を挿入、回転することで、内面に付着した粉末を取り除いてもよい。
【実施例4】
【0025】
本発明の第4実施形態に係る
溶射装置の溶射ノズルは、
図11に示すように、内側ノズル部材123が、粉体ノズル110の先端中央部に設けられた取付部112に対し、分離可能に取付けられており、その他の構成は前述の第1実施形態と同様である(図示も簡略化した。)。
そして、溶射すべき容器を保持する容器保持部材と上下分離チャック146のいずれかが、溶射ノズルの下方に来るように、相対的に移動可能に構成されている。
また、上下分離チャック146の近傍に、分離型清掃ブラシ145が配置されている。
【0026】
以上のように構成された第4実施形態の
溶射装置の溶射ノズルの清掃時の動作について説明する。
まず、溶射ノズルの下方に容器保持部材が位置している状態で、第1実施形態の溶射ノズルと同様の溶射の動作をした後、溶射ノズルの下方に上下分離チャック146が位置するように相対移動する。
そして、
図11に示すように、上下分離チャック146によって内側ノズル部材123を下方に分離して固定し、分離型清掃ブラシ145によって、加熱ガス流路部材120の出口延長部122及び内側ノズル部材123の周状溶射ノズル部の内面に相当する部分に付着した粉末を取り除く。
【符号の説明】
【0027】
100 ・・・ 溶射ノズル
110 ・・・ 粉体ノズル
111 ・・・ 噴出孔
112 ・・・ 取付部
120 ・・・ 加熱ガス流路部材
121 ・・・ 周状溶射ノズル部
122 ・・・ 出口延長部
123 ・・・ 内側ノズル部材
124 ・・・ 加熱ガス供給管
130 ・・・ シールドエア流路部材
141 ・・・ 集塵部材
142 ・・・ 清掃ノズル
143 ・・・ 一体型清掃ブラシ
144 ・・・ スライド分離チャック
145 ・・・ 分離型清掃ブラシ
146 ・・・ 上下分離チャック
R ・・・ 加熱ガス流路
C ・・・ 容器
T ・・・ 容器保持部材
PW ・・・ 粉体
HG ・・・ 加熱ガス
CG ・・・ 冷却ガス
EG ・・・ 排気
SG ・・・ 清掃用ガス