(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1カムおよび前記第2カムのそれぞれは、複数の係合部を有し、前記複数の係合部のうち、平面視で、前記第1カムおよび前記第2カムのそれぞれの回転軸の中心に対する第1係合部と第2係合部の成す角度は、180°以外である、請求項1〜3の何れかに記載の打込機。
前記第2カムは、前記第1カムより回転速度が小さく、前記第2カムが有する複数の係合部において、前記ビットが解放される前の前記係合部と前記ビットの突起部との最終接触時に、前記突起部に接触する第1係合部と前記第2カムの回転軸の中心とを結ぶ仮想線より前記ピストン側の領域に、第2係合部が位置している、請求項1に記載の打込機。
前記ピストンの動作によって圧力が変化する蓄圧室が設けられ、前記第1カムおよび前記第2カムのそれぞれの回転によって前記ビットおよび前記ピストンが動作すると、前記蓄圧室の圧力が上昇し、
前記蓄圧室の圧力が上昇した後に、前記第1カムおよび前記第2カムのそれぞれの係合部と前記ビットの突起部とが離れると、前記蓄圧室の圧力で前記ビットが動作して対象物を打撃する、請求項1に記載の打込機。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態の打込機を、
図1〜
図8を参照して説明する。
【0012】
図1〜
図3に示す打込機10は、打込機本体11を有する。打込機本体11は、筒形状のハウジング14と、止具を射出する射出口23を備えたノーズ部15と、ハウジング14に連続するモータケース16と、ハウジング14に連続するグリップ17と、グリップ17およびモータケース16に連続する装着部18と、を有する。ノーズ部15は、ハウジング14の中心線C1に沿った方向に延ばされている。
【0013】
そして、装着部18へ着脱するバッテリ12が設けられている。また、打込機本体11に着脱するマガジン13が設けられている。さらに、打込機10は、電動モータ19および打撃機構20を有している。電動モータ19は、モータケース16内に収容されている。マガジン13は、
図2に示すように多数の棒状の釘(止具)24を収容しており、マガジン13は釘24を1本づつ射出口23へ供給する。
【0014】
打撃機構20は、ビット(打撃子であり、ドライバブレード等とも呼ぶ)22およびピストン21を備えている。さらに、グリップ17にトリガ25が設けられている。バッテリ12は、収容ケースと、収容ケース内に収容した複数の電池セルとを有する。電池セルは、充電及び放電が可能な二次電池であり、電池セルは、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、リチウムイオンポリマー電池、ニッケルカドミウム電池等を用いることができる。バッテリ12は直流電源である。バッテリ12の電力が電動モータ19に供給される。
【0015】
電動モータ19は、モータケース16に固定されたステータと、モータケース16内に回転可能に設けられたロータと、を備えている。電動モータ19は、ブラシレスモータを用いることができる。ステータは、鋼板に通電用のコイルを巻いたものである。ロータは、回転軸に永久磁石を固定したものである。つまり、電動モータ19の部品は鋼材である。コイルに電流が流れて回転磁界が形成され、ロータが回転する。
【0016】
また、筒形状のハウジング14内には、シリンダ33が設けられている。シリンダ33は円筒形状であり、シリンダ33は、ハウジング14に対して、中心線C1に沿った方向で固定されている。さらに、ハウジング14内にダンパ34が固定されている。ダンパ34は、シリンダ33の開口端に配置されている。具体的には、シリンダ33のうち、ノーズ部15に近い開口端にダンパ34が配置されている。ダンパ34は、弾性体(ゴムやウレタン材)により一体成形されている。ダンパ34は、中心線C1を中心として環状に形成されており、ダンパ34は軸孔35を備えている。
【0017】
また、ピストン21は、シリンダ33内で中心線C1に沿って動作可能である。すなわち、ピストン21は、シリンダ33内に往復動可能に設けられている。
【0018】
また、ビット22は、中心線C1に沿った方向に所定の長さを有するブレード形状であり、ビット22の長手方向の端部がピストン21に固定されている。ビット22は、中心線C1に沿って配置され、かつ、軸孔35および射出口23内を移動可能である。すなわち、ビット22は、その長手方向の一端がピストン21に取り付けられ、シリンダ33内の圧力によって止具を打撃するものである。
【0019】
本実施の形態の打込機10は、ピストン21をシリンダ33内で、ノーズ部15の先端側と反対側の方向、すなわち密閉された圧力室(後述する蓄圧室42)側に移動させる巻き上げ機構(移動機構)26を備えている。巻き上げ機構26は、
図3に示すように、ビット22を挟んでビット22の左右両側に配置され、かつそれぞれにビット22に係合する回転部材である高速側カム(第1カム)29および低速側カム(第2カム)30を含んでいる。
【0020】
高速側カム29および低速側カム30は、両者とも電動モータ19の出力軸19aにギヤを介して係合しており、電動モータ19の駆動によりギヤ(後述するモータ駆動ギヤ37)を介して回転する。
【0021】
したがって、打込機10は、木材等の対象物にノーズ部15の先端側のプッシュロッド38を押し付け、この状態でトリガ25を引くと、電動モータ19の駆動が開始し、巻き上げ機構26の高速側カム29と低速側カム30とが回転し、この2つのカムの回転力によってビット22を持ち上げる(巻き上げる)。そして、ビット持ち上げ後、ビット22を解放し、この解放されたビット22が射出して止具を打撃する。
【0022】
つまり、本実施の形態の打込機10は、
図2および
図3に示すように、ビット22を挟んで2つのカム(高速側カム29と低速側カム30)がビット22の両側面に配置され、これら2つのカムを使ってビット22の巻き上げを行うものである。このように2つのカムを用いることで、カムの大きさを小さくし、さらに電動モータ19の大きさも小さくして、打込機10の小型化を図ることができる。すなわち、打込機10をコンパクトにすることができる。また、打込機10の重量も軽くすることができる。
【0023】
また、2つのカムを用いてビット22の巻き上げ動作を行うことで、カムの小型化を図ることができ、カムを覆うハウジング部分の形状も盛り上がりを少なくした形状とすることができる。
【0024】
これにより、打込機10による打込作業時に、打込機の射出口付近が見え易くなり、打込作業を容易に行うことができる。すなわち、打込機10による打込みの作業性を向上させることができる。
【0025】
なお、ビット22の両側面には、それぞれ突起部が設けられており、ビット22の両側面に配置されたそれぞれのカムに設けられたピン(係合部)と上記突起部とが係合することでビット22の巻き上げ動作を行う。ここで、
図3に示すように、2つのカム(高速側カム29と低速側カム30)は、それぞれ異なる方向に回転する。そして、2つのカムでビット22の巻き上げ動作を引継ぎながらビット22を巻き上げる構造となっている。
【0026】
また、
図1に示すように、打込機10のノーズ部15の先端側にはプッシュロッド38が設けられている。プッシュロッド38は、ノーズ部15に対して、中心線C1の所定範囲で移動可能である。プッシュロッド38の移動範囲は、ストッパで規制されている。プッシュロッド38は、バネの力で中心線C1に沿った方向に押されて停止している。具体的には、プッシュロッド38は、バネの力でダンパ34から離れる向きに押されている。プッシュロッド38を物体に押し付けると、プッシュロッド38は、バネの力に抗してダンパ34に近づく向きで移動し、プッシュロッド38はストッパに接触して停止する。
【0027】
また、ハウジング14内には、壁部材39が設けられている。壁部材39は、円筒部40と、円筒部40に連続する円板部41と、を有している。そして、シリンダ33の長さ方向で、ダンパ34とは反対側の端部が、円筒部40内に配置されている。円筒部40はシリンダ33に固定されている。
【0028】
また、シリンダ33の内部から壁部材39の内部に亘って蓄圧室42が形成されている。蓄圧室42は、シール部材により気密にシールされており、蓄圧室42に圧縮性流体である空気(気体)が封入されている。蓄圧室42の圧力は、ピストン21が動作すると変化する。ピストン21は、蓄圧室42の圧力を受けて、ダンパ34に近づく向きで中心線C1に沿った方向に付勢される。
【0029】
これにより、回転部材である第1カムや第2カムの回転によってビット22およびピストン21が動作すると、蓄圧室42の圧力が上昇する。そして、蓄圧室42の圧力が上昇した後に、上記回転部材の係合部(
図3に示すピン29a,30a(第1係合部),29b,30b(第2係合部))とビット22の後述する
図7の突起部27a〜27d、28a〜28bとが離れる(リリースされる)と、蓄圧室42の圧力によりビット22が動作(発射、射出)して対象物を打撃する。
【0030】
なお、打込機10は、プッシュロッド38が物体に押し付けられたことを検知する押し付け検知センサおよびトリガ25が操作されたことを検知するトリガスイッチ43を備えている。さらに、高速側カム29および低速側カム30の回転角度を検出する角度検出センサが設けられている。また、打込機10は、押し付け検知センサ、トリガスイッチ43、角度検出センサの信号を処理して、電動モータ19を回転および停止するコントローラを備えている。
【0031】
また、装着部18に制御基板44が設けられており、コントローラは制御基板44に取り付けられている。制御基板44は、バッテリ12と電動モータ19とを接続する電気回路を備えており、電気回路にスイッチング素子が設けられている。そして、コントローラは、スイッチング素子をオンおよびオフする。
【0032】
次に、本実施の形態の打込機10におけるビット22の巻き上げ機構(移動機構)26について詳しく説明する。
【0033】
図3に示すように、本実施の形態の打込機10では、ビット22を挟んでビット22の両側面にカムが配置されている(第1カム(高速側カム29)と第2カム(低速側カム30))。そして、第1カムと第2カムとには、それぞれ複数(例えば、2つ)のピン29a,29b,30a,30b(係合部)が設けられており、これらのピン29a,29b,30a,30bがビット22の
図7の突起部27a〜27d、28a〜28bと係合して各突起部をビット22の延在方向に向けて押し出すことでビット22を蓄圧室42に向けて巻き上げる(移動させる)構造となっている。
【0034】
なお、2つのカム(回転部材)である第1カムと第2カムは、電動モータ19の駆動により回転し、それぞれのカムに設けられたピンと、ビット22に設けられた突起部とが係合することにより、ビット22を蓄圧室42側に移動させる。
【0035】
そして、打込機10では、第1カムと第2カムとでそれらの回転速度(単位時間当たりの回転数)が異なっている。これは、第1カムと第2カムとが同じ回転速度で回転すると、一方のカムのピンが任意の位置で突起部をリリースする時、他方のピンも同じ回転速度で回転していると、一方のピンと他方のピンの相対的位置が変わらないため、他方のピンがビット22の突起部から離れずにビット22をリリースできない(発射できない)という現象が起こる可能性がある。
【0036】
この現象を避けるため、意図的に2つのカムの回転速度(単位時間当たりの回転数)を変えている。そして、第1カムと第2カムの回転速度を変えるにあたり、第1カムと第2カムの回転速度の比率を、1/整数(2以上の整数)とすることが好ましい。これは、2つのカムの回転速度を設定する際、整数:1の方がピンの位置を想定し易いためである。
【0037】
そこで、最もピンの位置が想定し易いのは、第1カムと第2カムの回転速度の比率を2:1とすることである。この場合、第1カムが180°回転すれば、第2カムは、90°回転するため、両方のカムのピンの位置を把握し易く、ピンの位置の設定を容易にすることができる。
【0038】
例えば、第1カムと第2カムの回転速度の比率が2:1であり、
図3に示すように、それぞれのカムに2つずつピン(ピン29a,29bとピン30a,30b)を設けた場合、第1カムが高速側カム29であり、第2カムが低速側カム30となる。すなわち、回転速度が大きい第1カムは高速で回転するため高速側カム29とし、第1カムより小さい回転速度で回転する第2カムは低速して回転するため低速側カム30とする。
【0039】
なお、2つのカムの回転速度の比率を2:1と設定するのは、ギヤを用いた変速機構で
設定することが可能である。
【0040】
図3に示す状態は、一例として、高速側カム29においてピン29aと係合していたビット22の突起部27a(
図7参照)を蓄圧室42側に押し上げてリリースすると、このリリースと略同時に高速側カム29においてビット22の突起部27bに対するピン29bの係合が始まり、ピン29bによって突起部27bを蓄圧室42側に押し上げていく。
【0041】
このように本実施の形態の打込機10では、2つのカムにおける何れかのピンがビット22の突起部を押し上げ、これをリリースするのと略同時に、別の何れかのピンが突起部の押し上げ動作を引き継いでビット22を蓄圧室42側に向けて巻き上げて(押し上げて)いくように各突起部と各ピンとが設けられている。
【0042】
つまり、高速側カム29と低速側カム30とで繰り返してビット22の巻き上げ動作を引継ぎ、間を空けることなくビット22を巻き上げていく。そして、最終段のピンが突起部から離れた状態、すなわち、全てのピンが突起部からリリースされた状態になると、ビット22が放たれて(発射または射出されて)止具を打撃する。
【0043】
このように打込機10において2つのカムが設けられ、これら2つのカムのそれぞれに設けられた複数のピンによってビット22の巻き上げ動作を、それぞれのピン同士で間を空けることなく引継ぎながら行うことで、ビット22を常に蓄圧室42側に向かって巻き上げることができ、短時間で止具を打ち込める状態にすることができる。
【0044】
ただし、2つのカムの全ての回転角度において、常に何れかのピンがビット22の突起部と係合するようなピン配置であると、ビット22のリリースを行うことができない。したがって、2つのカムのピン配置においては、必ず何れのピンもビット22の突起部と係合しない状態が形成されるようなピン配置となっていなければならない。
【0045】
また、巻き上げ終了直後にビット22をリリース(発射、射出)する際の最終段の巻き上げは、小さい回転速度のカム(低速側カム30)が減速して回転している状態において、最終のピンからの突起部のリリースを行う方が好ましい。つまり、減速して回転されたカムによってビット解放直前の最終段の巻き上げが行われる方が好ましい。これは、巻き上げ時にピストン21に対する反力が最も大きくなる巻き上げの最終段において、減速されたカム(低速側カム30)によって巻き上げることで、トルクを大きくすることができ、電動モータ19の負荷を小さくして巻き上げることができる。
【0046】
これにより、打込機10の寿命を延ばすことができ、さらに打込機10の信頼性を高めることができる。
【0047】
そして、打込機10では、第1カムおよび第2カムは、電動モータ19の回転軸(出力軸19a)に設けられた
図5に示すモータ駆動ギヤ37に、それぞれギヤ介して係合しており、そして、モータ駆動ギヤ37と第1カム用の第1カムギヤとのギヤ比が、モータ駆動ギヤ37と第2カム用の第2カムギヤとのギヤ比と異なるような変速機構を備えている。これにより、第1カムの回転速度より第2カムの回転速度を減速することができる。
【0048】
次に、打込機10に組み込まれる巻き上げ機構26について、
図4〜
図6を用いて詳細に説明する。ここでは、第1カムが高速側カム29であり、かつ第2カムが低速側カム30であり、さらに、高速側カム29と低速側カム30の回転速度の比率が、2:1の場合を一例として取り上げて説明する。
【0049】
図4に示すように、ビット22の側面方向の一方の側に高速側カム29がビット22と係合して配置され、その反対の他方の側に低速側カム30が同じくビット22と係合して配置されている。高速側カム29は、ビット22の突起部27bと係合しており、低速側カム30は、ビット22の突起部28aと係合している。
【0050】
また、高速側カム29は高速側カムギヤ(第1カムギヤ)31に連結しており、それぞれ同一の回転軸上に設けられている。同様に、低速側カム30は低速側カムギヤ(第2カムギヤ)32に連結しており、それぞれ同一の回転軸上に設けられている。高速側カムギヤ31はベアリング45aを介して回転自在に取り付けられ、低速側カムギヤ32は、ベアリング45bおよびベアリング45cを介して回転自在に取り付けられている。
【0051】
また、
図6に示すように、電動モータ19の出力軸19aには、モータ駆動ギヤ37が回転自在に取り付けられている。このモータ駆動ギヤ37は、2段変速機構を有しており、ベアリング46bに回転自在に支持されている。電動モータ19の出力軸19aはベアリング46aによって支持されている。
【0052】
モータ駆動ギヤ37の2段変速機構では、R:1/2R、すなわち2:1の変速設定が可能となっており、
図5に示すように、1倍(R)のギヤの方に高速側カムギヤ31が噛み合っている。一方、1/2倍(1/2R)のギヤの方には歯数が多い遊星ギヤ36を介して低速側カムギヤ32が噛み合っており、これにより、低速側カムギヤ32の回転速度は、高速側カムギヤ31の回転速度の1/2となる。
【0053】
すなわち、高速側カム29は、電動モータ19の回転軸(出力軸19a)に設けられたモータ駆動ギヤ37と噛み合う高速側カムギヤ31の回転によって回転し、一方、低速側カム30は、モータ駆動ギヤ37と噛み合う低速側カムギヤ32の回転によって回転する。そして、モータ駆動ギヤ37と高速側カムギヤ31とのギヤ比は、モータ駆動ギヤ37と低速側カムギヤ32とのギヤ比と異なっており、かつ遊星ギヤ36を介して回転する低速側カム30の方が高速側カム29に比べて結果的に1/2の回転速度となっている。
【0054】
以上により、電動モータ19の駆動によりモータ駆動ギヤ37が回転し、このモータ駆動ギヤ37の回転により、高速側カム29と低速側カム30とが回転速度の比率が2:1の割合で回転する。つまり、高速側カム29と低速側カム30とでビット22を巻き上げることができる。また、カムを2つ使用することで、小さい直径のカム2つを用いることができ、打込機10の小型化を図ることができる。さらに、ギヤ比を変えて低速側カム30を用いることでトルクを増やして小型のモータを使用してもビット22の巻き上げを行うことができる。
【0055】
次に、
図7と
図8を用いて本実施の形態の打込機10におけるビット22の巻き上げ動作について説明する。ここでは、第1カム(高速側カム29)と第2カム(低速側カム30)の回転速度の比率が2:1の場合を一例として取り上げて説明する。なお、
図8に示すように、ビット22の高速側の側面には、高速側カム29と係合する4つの突起部27a,27b,27c,27dが所定の間隔で設けられている。一方、ビット22の低速側の側面には、低速側カム30と係合する2つの突起部28a,28bが所定の間隔で設けられている。
【0056】
また、高速側カム29と低速側カム30において、それぞれカムの回転軸の中心C2,C3に対するそれぞれ2つのピン29a,29bおよびピン30a,30bの成す角度は、180°以外となっている。
【0057】
つまり、高速側カム29と低速側カム30のそれぞれに設けられた2つのピンは、それぞれのカムにおいてその回転軸の中心C2,C3を含む直線上には配置されていない。
【0058】
まず、第1ステップの巻き上げ開始において打込機10のトリガ25を操作することで、電動モータ19を駆動させる。電動モータ19の駆動により、高速側カム29と低速側カム30は、その回転速度の比率が2:1の割合で回転する。そして、高速側カム29のピン29aがビット22の突起部27aに係合し、ビット22を巻き上げる。その後、ピン29aが突起部27aをリリースするのと略同時にピン29bがビット22の突起部27bに係合し、ビット22を巻き上げる。
【0059】
次に、第2ステップにおいて高速側カム29のピン29bが突起部27bをリリースするのと略同時に、低速側カム30のピン30bがビット22の突起部28aに係合し、ビット22を巻き上げる。すなわち、高速側カム29から低速側カム30がビット22の巻き上げ動作を引き継ぐ。
【0060】
次に、第3ステップにおいて低速側カム30のピン30bが突起部28aをリリースするのと略同時に、高速側カム29のピン29aがビット22の突起部27cに係合し、ビット22を巻き上げる。すなわち、再度、低速側カム30から高速側カム29がビット22の巻き上げ動作を引き継ぐ。
【0061】
次に、第4ステップにおいて高速側カム29のピン29bが突起部27dを係合してビット22を巻き上げ、その後、ピン29bをリリースするのと略同時に、低速側カム30のピン30aがビット22の突起部28bに係合し、ビット22を巻き上げる。これにより、高速側カム29から低速側カム30がビット22の巻き上げ動作を引き継ぐ。
【0062】
そして、第5ステップの巻き上げ終了において、低速側カム30のピン30aがビット22の突起部28bに係合してビット22を巻き上げ、その直後に、ピン30aはビット22の突起部28bをリリースする。つまり、この巻き上げ動作の最終段は低速側カム30によって行われる。
【0063】
そして、ピン30aによるビット22の突起部28bのリリースにより、ビット22は解放され、蓄圧室42の圧力によりピストン21が押圧されてビット22の射出(発射)となり、
図2に示す釘24を対象物に打込む。
【0064】
なお、上記第5ステップのビット22が解放される直前のピン30aとビット22の突起部28bとの最終接触時に、
図8に示すように、突起部28bに接触するピン(第1係合部)30aと低速側カム30の回転軸の中心C3とを結ぶ仮想線Lより
図7に示すピストン21側の領域に、ピン(第2係合部)30bが位置している。
【0065】
これは、高速側カム29と低速側カム30において、それぞれカムの回転軸の中心C2,C3に対するそれぞれ2つのピン29a,29bおよびピン30a,30bの成す角度が、180°以外の角度となっているためである。これにより、ビット22を解放する直前の最終段の巻き上げを低速側カム30によって行うことができる。
【0066】
その結果、ビット22の巻き上げ時にピストン21に対する反力が最も大きくなる巻き上げの最終段において、減速されたカム(低速側カム30)によって巻き上げを行うため、トルクを大きくすることができ、電動モータ19の負荷を小さくして巻き上げることができる。
【0067】
また、本実施の形態の打込機10では、ラッチ等のような電気的な制御部品が不要であるため、安価に打込機10の小型化を実現できるばかりでなく、より一層小型モータの採用が可能になる。
【0068】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0069】
例えば、上記実施の形態では、第1カムと第2カムの回転速度の比率が2:1の場合を一例として取り上げて説明したが、2つのカムの回転速度の比率は、3:1や4:1等であってもよく、整数(2以上の整数):1であればよい。
【0070】
また、打込機によって打撃される止具は、棒状の釘の他、コ字形に屈曲されたタッカー等であってもよい。
【0071】
また、本実施の形態のように、減速機構を用いて、高速と低速で回転するカムを用いる構成と同等の機能を有する物として、異なる直径の複数のカム例えば、カムの直径を1対2にすることで、双方のカムを等速で回転させても、周速は2対1の関係になるので、本発明の範囲に含まれる。この場合、ピン30a、30bの配置は上記実施の形態と同等の動作となる間隔に適宜配置し得るものである。
【0072】
また、蓄圧室42の形状は、圧縮された気体を貯めることができれば、特に本実施の形態に記載されているものでなくても良い。
【0073】
例えば、シリンダ33の横に蓄圧室42を設けても良いし、シリンダ33を取り囲むように、蓄圧室42を設けても良い。