(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも複合樹脂が、水系媒体中に分散している複合樹脂水性分散体であって、前記複合樹脂は、少なくとも、ポリウレタン樹脂(A)と、前記ポリウレタン樹脂(A)に内包されたビニル重合体(B)とからなり、前記ポリウレタン樹脂(A)は、少なくとも、脂環構造を有するポリカーボネートポリオール(a)と、酸性基含有ポリオール(b)と、ポリイソシアネート(c)とを反応させて得られるものであって、前記ポリウレタン樹脂(A)と、前記ビニル重合体(B)との総質量に対し、前記ポリウレタン樹脂(A)の質量が、70〜90質量%であることを特徴とする複合樹脂水性分散体。
ポリウレタン樹脂(A)が、脂環構造を有するポリカーボネートポリオール(a)と、酸性基含有ポリオール(b)と、ポリイソシアネート(c)と、鎖伸長剤(d)とを反応させて得られるポリウレタン樹脂である請求項1に記載の複合樹脂水性分散体。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、少なくとも複合樹脂が、水系媒体中に分散している複合樹脂水性分散体であって、
前記複合樹脂は、少なくとも、ポリウレタン樹脂(A)と、前記ポリウレタン樹脂(A)に内包されたビニル重合体(B)とからなり、
前記ポリウレタン樹脂(A)は、少なくとも、脂環構造を有するポリカーボネートポリオール(a)と、酸性基含有ポリオール(b)と、ポリイソシアネート(c)とを反応させて得られるものであって、
前記ポリウレタン樹脂(A)と、前記ビニル重合体(B)との総質量に対し、前記ポリウレタン樹脂(A)の質量が、70〜90質量%であることを特徴とする複合樹脂水性分散体に関する。
【0015】
<ポリウレタン樹脂(A)>
本発明で用いられるポリウレタン樹脂(A)は、少なくとも、脂環構造を有するポリカーボネートポリオール(a)と、酸性基含有ポリオール(b)と、ポリイソシアネート(
【0017】
さらに、脂環構造を有するポリカーボネートポリオール(a)と酸性基含有ポリオール(b)以外のその他のポリオールや、鎖延長剤(d)を反応させて得られるポリウレタン樹脂(A)であってもよい。
【0018】
<<脂環構造を有するポリカーボネートポリオール(a)>>
本発明で使用するポリカーボネートポリオールは、複合樹脂水性分散体の貯蔵安定性に優れ、密着性に優れる塗膜が得られる点から、主鎖に脂環構造を有するポリカーボネートポリオールを用いることが好ましい。主鎖に脂環構造を有するポリカーボネートポリオール(a)(以下、「ポリカーボネートポリオール(a)」、又は、「(a)」ということもある。)は、例えば、主鎖に脂環構造を有するポリオールと炭酸エステルとを反応させて得られるポリカーボネートポリオールや、主鎖に脂環構造を有するポリオールと他のポリオールと炭酸エステルとを反応させて得られる共重合ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
【0019】
ポリカーボネートポリオール(a)の数平均分子量は、400〜3000であることが好ましく、400〜1500であることがより好ましく、500〜1300であることが特に好ましい。
【0020】
ポリカーボネートポリオール(a)の数平均分子量が小さすぎると、ソフトセグメントとしての性能に劣り、得られた複合樹脂水性分散体を用いて塗膜を形成した場合に割れが発生し易い傾向がある。ポリカーボネートポリオール(a)の数平均分子量が大きすぎると、ポリカーボネートポリオール(a)とイソシアネート化合物との反応性が低下し、ウレタンプレポリマーの製造工程に時間がかかったり、反応が充分に進行しない場合や、ポリカーボネートポリオール(a)の粘度が高くなり、取り扱いが困難になる場合がある。
【0021】
本発明において、数平均分子量は、JIS K 1557に基づき水酸基価を測定し、末端基定量法により、下記式で算出した。
[数1]
数平均分子量=(56.1×1000×2)/水酸基価
上記式中において、水酸基価の単位は、[mgKOH/g]である。
【0022】
前記主鎖に脂環構造を有するポリオールとしては、特に制限されず、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘプタンジオール、2,5−ビス(ヒドロキシメチル)−1,4−ジオキサン、2,7−ノルボルナンジオール、テトラヒドロフランジメタノール、1,4‐ビス(ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカンジメタノールに代表されるトリシクロデカンジメタノールの各構造異性体又はその混合物等の主鎖に脂環構造を有するジオールなどが挙げられ、なかでも入手の容易さから1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
【0023】
前記他のポリオールは、特に制限されず、例えば、脂肪族ポリオール、側鎖に脂環構造を有するポリオール、芳香族ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。本明細書において、脂環構造には、環内に酸素原子や窒素原子等のヘテロ原子を有するものも含む。
【0024】
前記脂肪族ポリオールは、特に制限されず、例えば、炭素数3〜12の脂肪族ポリオール等が挙げられる。具体的には、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等の直鎖状脂肪族ジオール;2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,9−ノナンジオール等の分岐鎖状脂肪族ジオール;1,1,1−トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能以上の多価アルコール等が挙げられる。
【0025】
前記芳香族ポリオールは、特に制限されず、例えば、1,4−ベンゼンジメタノール、1,3−ベンゼンジメタノール、1,2−ベンゼンジメタノール、1,8−ナフタレンジメタノール、2,3−ナフタレンジメタノール、2,7−ナフタレンジメタノール等が挙げられる。
【0026】
前記ポリエステルポリオールは、特に制限されず、例えば、6−ヒドロキシカプロン酸とヘキサンジオールとのポリエステルポリオール等のヒドロキシカルボン酸とジオールとのポリエステルポリオール、アジピン酸とヘキサンジオールとのポリエステルポリオール等のジカルボン酸とジオールとのポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0027】
前記ポリエーテルポリオールは、特に制限されず、例えば、ポリエチレングリコール(例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等)やポリプロピレングリコールやポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール等が挙げられる。
【0028】
前記炭酸エステルは、特に制限されず、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の脂肪族炭酸エステル、ジフェニルカーボネート等の芳香族炭酸エステル、エチレンカーボネート等の環状炭酸エステル等が挙げられる。その他に、ポリカーボネートポリオールを生成することができるホスゲン等も使用できる。中でも、前記ポリカーボネートポリオールの製造のし易さから、脂肪族炭酸エステルが好ましく、ジメチルカーボネートが特に好ましい。
【0029】
前記ポリオール及び炭酸エステルからポリカーボネートポリオールを製造する方法としては、例えば、反応器中に炭酸エステルと、この炭酸エステルのモル数に対して過剰のモル数のポリオールとを加え、温度160〜200℃、圧力50mmHg程度で5〜6時間反応させた後、更に数mmHg以下の圧力において200〜220℃で数時間反応させる方法が挙げられる。前記反応においては副生するアルコールを系外に抜き出しながら反応させることが好ましい。その際、炭酸エステルが副生するアルコールと共沸することにより系外へ抜け出る場合には、過剰量の炭酸エステルを加えてもよい。また、前記反応において、チタニウムテトラブトキシド等の触媒を使用してもよい。
【0030】
前記ポリカーボネートポリオール(a)における脂環構造含有率は、20〜65質量%であることが好ましく、30〜55質量%であることがより好ましい。脂環構造含有率がこの範囲より小さい場合、塗膜の耐アルコール性が低下する場合がある。その一方で、脂環構造の含有率が大きい場合、複合樹脂水性分散体製造時のウレタンプレポリマーの粘度が高くなり取り扱いが困難となったり、複合樹脂水性分散体の貯蔵安定性が低下する場合がある。
【0031】
ここで、ポリカーボネートポリオール(a)における脂環構造含有率は、ポリカーボネートポリオール(a)に占める、脂環構造基の質量割合をいう。前記脂環構造基は、シクロアルカンから2つの水素原子を除いた部分とする。
【0032】
前記脂環構造基は、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノールの場合はシクロヘキサンから2つの水素原子を除いた部分である。
【0033】
<<酸性基含有ポリオール(b)>>
酸性基含有ポリオール(b)は、1分子中に2個以上の水酸基と、1個以上の酸性基を含有するものである。酸性基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、フェノール性水酸基等が挙げられる。酸性基含有ポリオール(b)として、1分子中に2個の水酸基と1個のカルボキシ基を有する化合物を含有するものが好ましい。酸性基含有ポリオール(b)は、単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
【0034】
酸性基含有ポリオール(b)としては、具体的には、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸等のジメチロールアルカン酸、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)グリシン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アラニン、3,4−ジヒドロキシブタンスルホン酸、3,6−ジヒドロキシ−2−トルエンスルホン酸等が挙げられる。中でも入手の容易さの観点から、2個のメチロール基を含む炭素数4〜12のジメチルロールアルカン酸が好ましく、ジメチロールアルカン酸の中でも、2,2−ジメチロールプロピオン酸及び/又は2,2−ジメチロールブタン酸がより好ましく、2,2−ジメチロールプロピオン酸が特に好ましい。
【0035】
本発明において、ポリオール(a)と、酸性基含有ポリオール(b)との合計の水酸基当量数は、120〜600であることが好ましい。水酸基当量数が、この範囲であれば、得られたポリウレタン樹脂を含む複合樹脂水性分散体の製造が容易であり、硬度の点で優れた塗膜が得られやすい。得られる複合樹脂水性分散体の貯蔵安定性と塗布して得られる塗膜の硬度の観点から、水酸基当量数は、好ましくは130〜600、より好ましくは150〜500、特に好ましくは170〜400である。
【0036】
水酸基当量数は、以下の式(1)及び(2)で算出することができる。
各ポリオールの水酸基当量数=各ポリオールの分子量/各ポリオールの水酸基の数・・・(1)
ポリオールの合計の水酸基当量数=M/ポリオールの合計モル数・・・(2)
ポリウレタン樹脂(A)の場合、式(2)において、Mは、[〔ポリオール(a)の水酸基当量数×ポリオール(a)のモル数〕+〔酸性基含有ポリオール(b)の水酸基当量数×酸性基含有ポリオール(b)のモル数〕]を示す。
【0037】
<<その他のポリオール>>
前記ポリカーボネートポリオール(a)及び前記酸性基含有ポリオール(b)以外に、その他のポリオールを用いることができる。その他のポリオールとしては、ポリマーポリオール等の高分子ポリオールや低分子ポリオールが挙げられる。高分子ポリオールとしては、数平均分子量が400〜6000のものが挙げられる。ポリオールは、ジオールであっても、3価以上の多価アルコールであってもよい。その他のポリオールは、単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。塗膜の硬度が高くなるという点から、低分子ポリオールが好ましく、中でも低分子ジオールが好ましい。
【0038】
前記高分子ポリオールは、特に制限されず、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、(メタ)アクリルポリオール、ポリジエンポリオール、主鎖に脂環構造を有しないポリカーボネートポリオールを好適に用いることができる。
【0039】
前記ポリエステルポリオール、特に制限されず、例えば、ポリエチレンアジペートポリオール、ポリブチレンアジペートポリオール、ポリエチレンブチレンアジペートポリオール、ポリへキサメチレンイソフタレートアジペートポリオール、ポリエチレンサクシネートポリオール、ポリブチレンサクシネートポリオール、ポリエチレンセバケートポリオール、ポリブチレンセバケートポリオール、ポリ−ε−カプロラクトンポリオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンアジペート)ポリオール、1,6−ヘキサンジオールとダイマー酸の重縮合物等を挙げることができる。
【0040】
前記ポリエーテルポリオールは、特に制限されず、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキシドとブチレンオキシドとのランダム共重合体やブロック共重合体等を挙げることができる。さらに、エーテル結合とエステル結合とを有するポリエーテルポリエステルポリオール等を用いることもできる。
【0041】
前記ポリジエンポリオールは、特に制限されず、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、クロロプレン、シクロペンタジエン等から誘導される単位を含むポリジエンポリオール等を挙げることができる。前記ポリジエンポリオールの具体的例としては、例えば、水酸基末端液状ポリブタジエン(出光興産社製「Poly bd」)や二官能性水酸基末端液状ポリブタジエン(出光興産社製「KRASOL」)、水酸基末端液状ポリイソプレン(出光興産社製「Poly ip」)、水酸基末端液状ポリオレフィン(出光興産社製「エボール」)等が挙げられる。
【0042】
ポリ(メタ)アクリルポリオールは、特に制限されず、例えば、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーの重合体や、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーと水酸基を有さない(メタ)アクリルモノマーとの共重合体などが挙げられる。
なお、本明細書における「(メタ)アクリルモノマー」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」等の記載については、いずれもアクリロイル基を有する化合物と、メタクリロイル基を有する化合物とを包含する概念であり、アクリロイル基、メタクリロイル基のいずれか、又は両方を有していても良い。
【0043】
前記水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーや水酸基を有さない(メタ)アクリルモノマーは、それぞれ、1種類のモノマーを単独で用いてもよいし、複数種類のモノマーを併用してもよい。
【0044】
上記モノマー重合方法としては、乳化重合、懸濁重合、分散重合、溶液重合等が挙げられる。乳化重合では段階的に重合することもできる。
【0045】
前記水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシブチル、グリセリンの(メタ)アクリル酸モノエステル、グリセリンの(メタ)アクリル酸ジエステル、トリメチロールプロパンの(メタ)アクリル酸モノエステル、トリメチロールプロパンの(メタ)アクリル酸ジエステル等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル;N−メチロールアクリルアミド等の水酸基を有する(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコールなどが挙げられる。
【0046】
前記水酸基を有さない(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸;(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等の不飽和アミド;メタクリル酸グリシジル、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、フマル酸ジブチルなどが挙げられる。
【0047】
前記主鎖に脂環構造を有しないポリカーボネートポリオールは、特に制限されず、例えば、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール、ポリへキサメチレンカーボネートジオール等の脂肪族ポリカーボネートジオール;ポリ1,4−キシリレンカーボネートジオール等の芳香族ポリカーボネートジオール;複数種類の脂肪族ジオールと炭酸エステルとの反応生成物である共重合ポリカーボネートジオール;脂肪族ジオールと芳香族ジオールと炭酸エステルとの反応生成物である共重合ポリカーボネートジオール、脂肪族ジオールとダイマージオールと炭酸エステルとの反応生成物である共重合ポリカーボネートジオール等の共重合ポリカーボネートジオール等を用いることができる。
【0048】
前記共重合ポリカーボネートジオールとしては、例えば、1,3−プロパンジオールと1,4−ブタンジオールと炭酸エステルとの反応生成物である共重合ポリカーボネートジオール、1,4−ブタンジオールと1,5−ペンタンジオールと炭酸エステルとの反応生成物である共重合ポリカーボネートジオール、1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールと炭酸エステルとの反応生成物である共重合ポリカーボネートジオール、1,4−ブタンジオールと1,6−ヘキサンジオールと炭酸エステルとの反応生成物である共重合ポリカーボネートジオール、1,3−プロパンジオールと1,6−ヘキサンジオールと炭酸エステルとの反応生成物である共重合ポリカーボネートジオール等が挙げられる。
【0049】
前記低分子ポリオールは、特に制限されず、数平均分子量が60以上400未満であるものが挙げられる。例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等の炭素数2〜9の脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシエチル)シクロヘキサン、2,7−ノルボルナンジオール、テトラヒドロフランジメタノール、2,5−ビス(ヒドロキシメチル)−1,4−ジオキサン等の炭素数6〜12の脂環構造を有するジオール;1,4−ベンゼンジメタノール、1,3−ベンゼンジメタノール、1,4−ジヒドロキシベンゼン等の芳香族ジオール等を挙げることができる。また、前記低分子量ポリオールとして、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の三官能以上の低分子量多価アルコールを用いてもよい。
【0050】
ポリカーボネートポリオール(a)に対するその他のポリオールの割合は、脂環構造を有するポリカーボネートポリオールに対して、40質量%以下であることが好ましい。この範囲であれば、得られる塗膜の耐アルコール性が低下したり、複合樹脂水性分散体の製造が困難になったりすることを回避し易い。その他のポリオールの割合は、より好ましくは、脂環構造を有するポリカーボネートポリオールに対して、20質量%以下である。
【0051】
<<ポリイソシアネート(c)>>
ポリイソシアネート(c)としては、特に制限されないが、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0052】
芳香族ポリイソシアネートとしては、具体的には、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4’’−トリフェニルメタントリイソシアネート、m−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、p−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート等が挙げられる。
【0053】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、具体的には、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート等が挙げられる。
【0054】
脂環式ポリイソシアネートとしては、具体的には、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水素添加TDI)、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート、2,5−ノルボルナンジイソシアネート、2,6−ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
【0055】
ポリイソシアネートの1分子当たりのイソシアナト基は通常2個であるが、本発明におけるポリウレタン樹脂がゲル化をしない範囲で、トリフェニルメタントリイソシアネートのようなイソシアナト基を3個以上有するポリイソシアネートも使用することができる。
【0056】
ポリイソシアネートの中でも、活性エネルギー線(例えば、紫外線)による硬化後の硬度が高くなるという観点から、脂環構造を有する脂環式ポリイソシアネートが好ましく、反応の制御が行いやすいという点から、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)が特に好ましい。
【0057】
ポリイソシアネートは、単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
【0058】
<<鎖延長剤(d)>>
本発明におけるポリウレタン樹脂(A)は、場合により、さらに鎖延長剤(d)を反応させたポリウレタン樹脂とすることができる。前記鎖延長剤(d)としては、例えば、エチレンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,4−ヘキサメチレンジアミン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、キシリレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、ヒドラジン、アジポイルジヒドラジド、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のアミン化合物、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等のジオール化合物、ポリエチレングリコールに代表されるポリアルキレングリコール類、水等が挙げられ、中でも得られる塗膜の硬度、耐アルコール性の点から、鎖延長剤(d)は有機化合物であることが好ましく、ポリアミン化合物であることがより好ましく、アミノ基を有するポリアミン化合物であることが特に好ましい。これらは、単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
【0059】
<ビニル重合体(B)>
本発明の複合樹脂水性分散体は、ビニル重合体(B)を含む。前記ビニル重合体(B)は、1種又は複数種のビニル基を有する重合性ビニルモノマーが、付加重合した物であれば、特に制限されない。
【0060】
前記重合性ビニルモノマーとしては、1種又は複数種の重合性ビニルモノマーを用いることができる。前記重合性ビニルモノマーとしては、その50質量%以上が、(メタ)アクリル酸又は/及び(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。
【0061】
前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、モノ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、モノ(メタ)アクリル酸アリールエステル、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ポリ(メタ)アクリル酸アリールエステル等が挙げられる。
【0062】
上記モノ(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0063】
上記モノ(メタ)アクリル酸アリールエステルとしては、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコールポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げらえる。
【0064】
上記ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ポリ(メタ)アクリル酸アリールエステルとしては、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0065】
ジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコールーテトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2分子の(メタ)アクリル酸と1分子の1,6−ヘキサンジオールジグリシジルとの反応生成物(例えばナガセケムテック社製「DA−212」)、2分子のエポキシ(メタ)アクリル酸と1分子のネオペンチルグリコールジグリシジルとの反応生成物、2分子の(メタ)アクリル酸と1分子のビスフェノールAジグリシジルとの反応生成物(例えばナガセケムテック社製「DA−250」)、2分子の(メタ)アクリル酸とビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物のジグリシジル体との反応生成物、2分子の(メタ)アクリル酸と1分子のフタル酸ジグリシジルとの反応生成物(例えばナガセケムテック社製「DA−721」)、2分子の(メタ)アクリル酸と1分子のポリエチレングリコールジグリシジルとの反応生成物(例えばナガセケムテック社製「DM−811」、「DM−832」、「DM−851」)、2分子の(メタ)アクリル酸と1分子のポリプロピレングリコールジグリシジルとの反応生成物等の(メタ)アクリル酸とポリオールジグリシジルとの反応生成物、グリシジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸の付加物等が挙げられる。
【0066】
トリ(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(6モル)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(BASF社製Laromer(登録商標) LR8863)等のアルキレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(BASF社製Laromer(登録商標) PO33F)等が挙げられる。
【0067】
テトラ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(4モル)変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(ダイセル・サイテック社、Ebecryl 40)等のアルキレンオキシド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0068】
ペンタ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0069】
ヘキサ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0070】
ポリマー類の(メタ)アクリレート化合物としては、公知のものを用いることができる。ポリマー類の(メタ)アクリレート化合物としては、モノ(メタ)アクリレートの他、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0071】
その他の重合性ビニルモノマーとしては、メタクリルアミド誘導体、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、酢酸ビニルなどのビニルエステル類、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニルアミド類、スチレンやα―メチルスチレンなどのスチレン誘導体、1,3−ブタジエンなどの1,3−ジエン誘導体などが挙げられる。
【0072】
これらの重合性ビニルモノマーは、1種類のみを用いてもよいし、複数種類を併用いてもよい。
【0073】
ビニル重合体(B)は、目的とする複合樹脂水性分散体の用途等に応じて適宜選択できる。このようなビニル重合体(B)のガラス転移温度(Tg)としては、特に制限されないが、耐アルコール性に優れる点に加えて、電着板との密着性が向上する点から、例えば20℃以下のものを好適に使用することができる。さらに、−10℃以下、−20℃以下、−50℃以下であるものをより好適に使用することができる。また耐アルコール性に優れる点に加えて、高硬度の塗膜が得られる点等からは、ガラス転移温度(Tg)が−10℃以上のものを好適に使用することができる。さらに、20℃以上のもの、50℃以上、70℃以上、100℃以上のものをより好適に使用することができる。
【0074】
なお、ビニル重合体(B)のガラス転移温度(Tg)は、以下の式(3)から算出することができる。
1/Tg=Σ(mi/Tgi) ・・・(3)
Tg:重合体のガラス転移温度
mi:重合性ビニルモノマーi成分の重量分率
Tgi:重合性ビニルモノマーi成分の単独重合体のガラス転移温度(K)
【0075】
ポリウレタン樹脂(A)とビニル重合体(B)との合計質量に対する、ポリウレタン樹脂(A)の割合は70〜90質量%である。ポリウレタン樹脂(A)の割合が少なすぎても、多すぎても、得られる塗膜の耐アルコール性が低下する。
【0076】
本発明の複合樹脂水性分散体は、ポリウレタン樹脂(A)とビニル重合体(B)とが水系媒体中に分散されており、前記ビニル重合体(B)は、前記ポリウレタン樹脂(A)に内包されている。水系媒体としては、水や、水と親水性有機溶媒との混合媒体等が挙げられる。
【0077】
前記水としては、例えば、上水、イオン交換水、蒸留水、超純水等が挙げられる。中でも入手の容易さや塩の影響で粒子が不安定になること等を考慮して、イオン交換水を用いることが好ましい。
【0078】
前記親水性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級1価アルコール;エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;N−メチルモルホリン、ジメチルスルホキサイド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等の非プロトン性の親水性有機溶媒等が挙げられる。水系媒体中の親水性有機溶媒の量としては、0〜20質量%が好ましい。
【0079】
本発明において、複合樹脂水性分散体の酸価は、80mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは8〜70mgKOH/gであり、更に好ましくは10〜60mgKOH/gである。この範囲であれば、良好な水系媒体への分散性及び塗膜の耐水性を確保し易い。
【0080】
酸価は、具体的には、下記式(4)によって導き出すことができる。
〔複合樹脂水性分散体の酸価〕=〔酸性基含有ポリオール(b)の酸性基のモル数〕×56.11/〔複合樹脂水性分散体中の全樹脂分の質量(g)〕・・・(4)
「複合樹脂水性分散体の全樹脂分の質量」とは、ポリウレタン樹脂(A)とビニル重合体(B)とを含む樹脂の質量である。複合樹脂水性分散体が、前記ポリウレタン樹脂(A)と前記ビニル重合体(B)以外の樹脂を含有する場合には、その樹脂の質量も、「複合樹脂水性分散体の全樹脂分の質量」に含まれる。
【0081】
<複合樹脂水性分散体>
本発明の複合樹脂水性分散体において、その固形分は、複合樹脂水性分散体全体の1〜70質量%であることが好ましく、5〜50質量%であることがより好ましい。
【0082】
本発明において、複合樹脂水性分散体の固形分とは、複合樹脂水性分散体を基材に塗布して乾燥させ、光照射又は/及び加熱により架橋させた後に塗膜として残る成分である。水系媒体や中和剤は固形分に含まれない。
【0083】
また、本発明の複合樹脂水性分散体は、後述する重合開始剤を含有していてもよい。
【0084】
<複合樹脂水性分散体の製造方法>
次に、複合樹脂水性分散体の製造方法について説明する。
【0085】
本発明の複合樹脂水性分散体の製造方法は、上述した鎖延長剤(d)を用いる場合と、鎖延長剤を用いない場合とで少し異なる。
【0086】
鎖延長剤(d)を用いる場合の本発明の複合樹脂水性分散体の製造方法は、例えば、脂環構造を有するポリカーボネートポリオール(a)と酸性基含有ポリオール(b)とポリイソシアネート(c)とを反応させてポリウレタンプレポリマー(A1)を得る工程(α)と、
前記ポリウレタンプレポリマー(A1)の酸性基を中和する工程(β)と、
前記ポリウレタンプレポリマー(A1)を水系媒体中に分散させる工程(γ)と、
前記ポリウレタンプレポリマー(A1)のイソシアナト基と反応性を有する鎖延長剤(d)とを反応させてポリウレタン樹脂(A)を得る工程(δ)と、
重合性ビニルモノマー(B1)を水系媒体中に添加して撹拌し、ポリウレタン樹脂(A)に重合性ビニルモノマー(B1)を内包させる工程(ε)と、
前記重合性ビニルモノマー(B1)を重合させ、ビニル重合体(B)を得る工程(ζ)とを含むことができる。
【0087】
また、鎖延長剤(d)を用いない場合の本発明の複合樹脂水性分散体の製造方法は、例えば、脂環構造を有するポリカーボネートポリオール(a)と酸性基含有ポリオール(b)とポリイソシアネート(c)とを反応させてポリウレタン樹脂(A)を得る工程(α’)と、
前記ポリウレタン樹脂(A)の酸性基を中和する工程(β’)と、
前記ポリウレタン樹脂(A)を水系媒体中に分散させる工程(γ’)と、
重合性ビニルモノマー(B1)を水系媒体中に添加して撹拌し、ポリウレタン樹脂(A)に重合性ビニルモノマー(B1)を内包させる工程(ε’)と、
前記重合性ビニルモノマー(B1)を重合させ、ビニル重合耐(B)を得る工程(ζ’)とを含むことができる。
【0088】
ポリウレタンプレポリマー(A1)を得る工程(α)は、イソシアナト基の不必要な消費を避けるため、窒素存在下で行うのが好ましい。また、前記ポリウレタンプレポリマー(A1)を得る工程(α)の温度は、40〜120℃で行うことができる。好ましくは60〜100℃で行うのが好ましい。
【0089】
また、前記ポリウレタンプレポリマー(A1)の酸性基を中和する工程(β)及び前記ポリウレタン樹脂(A)の酸性基を中和する工程(β’)において使用できる酸性基中和剤としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン等の有機アミン類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ類、アンモニア等が挙げられる。中でも、好ましくは有機アミン類を用いることができ、より好ましくは3級アミンを用いることができ、最も好ましくはトリエチルアミンを用いることができる。
【0090】
酸性基中和剤の使用量は、ポリウレタンプレポリマー(A1)の酸性基やポリウレタン樹脂(A)の酸性基に対し、ポリウレタンプレポリマー(A1)やポリウレタン樹脂(A)1モルに対し、0.8〜1.5モルになるように使用するのが好ましい。酸性基中和剤の使用量が、この量より、少ない場合、ポリウレタンプレポリマー(A1)の水への分散性が低下したり、複合樹脂水性分散体の貯蔵安定性が低下したりする場合がある。酸性基中和剤の使用量が、この量より、多い場合、複合樹脂水性分散体の臭気が強くなる場合がある。
【0091】
ポリウレタンプレポリマー(A1)やポリウレタン樹脂(A)の酸性基を中和する工程(β)及び工程(β’)と、ポリウレタンプレポリマー(A1)やポリウレタン樹脂(A)を水系媒体中に分散させる工程(γ)及び工程(γ’)と、ポリウレタンプレポリマー(A1)のイソシアナト基と反応性を有する鎖延長剤(d)とを反応させて水性ポリウレタン樹脂を得る工程(δ)と、重合性ビニルモノマー(B1)を水系媒体中に添加して撹拌し、ポリウレタン樹脂(A)に重合性ビニルモノマー(B1)を内包させる工程(ε)及び工程(ε’)と、前記重合性ビニルモノマー(B1)を重合し、ビニル重合体(B)を得る工程(ζ)及び工程(ζ’)は、その方法及び操作順序等は、ポリウレタン(A)とビニル重合体(B)が水系媒体に分散できれば、特に制限されない。例えば、(A1)と(B1)を水系媒体中に分散させ、(B1)の重合を行った後、(A1)の鎖伸長を行う方法や、(A1)と(B1)水系媒体中に分散させ、(A1)の鎖伸長を行った後、(B1)の重合を行う方法や、(A1)を混合して水系媒体中に分散させた後、(A1)の鎖伸長を行い、次いで、(B1)の水系媒体中への分散、重合を行う方法等が挙げられる。
【0092】
前記の混合や撹拌、分散には、ホモミキサーやホモジナイザー等の公知の撹拌装置を用いることができる。また、ポリウレタンプレポリマー(A1)や重合性ビニルモノマー(B1)には、粘度調製や作業性向上、分散性向上のために、混合前に予め前記親水性有機溶媒や水等を加えておくこともできる。
【0093】
また、前記ポリウレタンプレポリマー(A1)や前記ポリウレタン樹脂(A)を混合する工程(γ)及び工程(γ’)において、重合性ビニルモノマー(B1)が存在する際には、重合性不飽和結合の不必要な消費を避けるため、酸素存在下で行うのが好ましい。また、必要に応じて重合禁止剤を添加してもよい。前記ポリウレタンプレポリマー(A1)と重合性ビニルモノマー(B1)を混合する際の温度は、重合性不飽和結合の不必要な消費を回避するため、0〜100℃で行うことが好ましく、0〜80℃で行うのがより好ましく、0〜70℃で行うのがさらに好ましく、50〜70℃で行うのが特に好ましい。
【0094】
本発明の製造方法において、前記ポリウレタンプレポリマー(A1)の酸性基を中和する工程(β)や前記ポリウレタン樹脂(A)の酸性基を中和する工程(β’)と、前記ポリウレタンプレポリマー(A1)を水系媒体中に分散させる工程(γ)前記ポリウレタン樹脂(A)を水系媒体中に分散させる工程(γ’)とは、どちらを先に行ってもよいし、同時に行うこともできる。この場合、(A1)や(A)と水系媒体と酸性基中和剤とを一度に混合してもよいし、前記酸性基中和剤を予め水系媒体に混合しておき、これらと(A1)や(A)とを混合してもよい。
【0095】
前記ポリウレタンプレポリマー(A1)を水系媒体中に分散させる工程(γ)と、前記ポリウレタンプレポリマー(A1)と前記鎖延長剤(d)とを反応させて水性ポリウレタン樹脂を得る工程(δ)とは同時に行うこともできる。
【0096】
この場合、(A1)と(d)と水系媒体とを一度に混合してもよいし、(d)を予め水系媒体に混合しておき、これらと(A1)とを混合してもよい。
【0097】
前記ポリウレタンプレポリマー(A1)の酸性基を中和する工程(β)と、前記ポリウレタンプレポリマー(A1)を水系媒体中に分散させる工程(γ)と、前記ポリウレタンプレポリマー(A1)と前記鎖延長剤(d)とを反応させて水性ポリウレタン樹脂を得る工程(δ)とを同時に行うこともできる。この場合、(A1)と(d)と酸性基中和剤と水系媒体とを一度に混合してもよいし、(d)や酸性基中和剤を、予め水系媒体に混合しておき、これらと(A1)とを混合してもよい。
【0098】
前記ポリウレタンプレポリマー(A1)と、前記ポリウレタンプレポリマー(A1)のイソシアナト基と反応性を有する鎖延長剤(d)とを反応させて水性ポリウレタン樹脂を得る工程(δ)において、反応は冷却下でゆっくりと行ってもよく、また場合によっては60℃以下の加熱条件下で反応を促進して行ってもよい。冷却下における反応時間は、0.5〜24時間程度とすることができ、60℃以下の加熱条件下における反応時間は、0.1〜6時間程度である。
【0099】
鎖延長剤(d)の添加量は、得られるポリウレタンプレポリマー(A1)中の鎖延長起点となるイソシアナト基の当量以下であることが好ましく、より好ましくはイソシアナト基の0.7〜0.99当量である。イソシアナト基の当量を超えて鎖延長剤(d)を添加した場合には、鎖延長されたポリウレタンポリマー(A)の分子量が小さくなってしまい、得られた複合樹脂水性分散体を塗布して得た塗膜の強度が低下する。鎖延長剤(d)は、ポリウレタンプレポリマー(A1)を水系媒体中に分散した後に添加してもよく、分散中に添加してもよい。鎖延長は水によっても行うことができる。この場合は分散媒としての水が鎖延長剤を兼ねることになる。
【0100】
前記重合性ビニルモノマー(B1)を重合し、ビニル重合体(B)を得る工程(ζ)及び工程(ζ’)は、重合開始剤を添加して行われる。重合開始剤としては、通常の乳化重合で異様される重合開始剤を使用することができる。例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、ベンゾイルパーオキサイド、ラウオイルパーオキサイド等の有機過酸化物などのラジカル重合開始剤が挙げられ、これらは、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。また、これらラジカル重合開始剤と、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、酒石酸、L−アスコルビン酸などの還元剤とを併用してレドックス系重合開始剤として使用することもできる。重合性ビニルモノマー(B1)の重合温度は、30℃〜100℃が好ましい。
【0101】
複合樹脂水性分散体中のポリウレタン樹脂(A)の数平均分子量は、1,000〜1,000,000であることが好ましい。
【0102】
複合樹脂水性分散体中のビニル重合体(B)の数平均分子量は、1,000〜1,000,000であることが好ましい。
【0103】
本発明の複合樹脂水性分散体には、必要に応じて、増粘剤、光増感剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、表面調整剤、沈降防止剤等の添加剤を添加することもできる。添加剤は、単独であってもよいし、複数種を併用してもよい。本発明の複合樹脂水性分散体は、得られる塗膜の硬度、耐薬品性の点から、実質的に、保護コロイド、乳化剤、界面活性剤を含まないことが好ましい。
【0104】
<塗料組成物及びコーティング剤組成物>
本発明は、上記複合樹脂水性分散体を含有する塗料組成物及びコーティング剤組成物にも関する。
【0105】
本発明の塗料組成物及びコーティング剤組成物には、上記複合樹脂水性分散体以外にも、他の樹脂を添加することもできる。他の樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。これらは単独であってもよいし、複数種を併用してもよい。他の樹脂は、1種以上の親水性基を有することが好ましい。親水性基としては、水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基、ポリエチレングリコール基等が挙げられる。
【0106】
他の樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0107】
ポリエステル樹脂は、通常、酸成分とアルコ−ル成分とのエステル化反応又はエステル交換反応によって製造することができる。酸成分としては、ポリエステル樹脂の製造に際して酸成分として通常使用される化合物を使用することができる。酸成分としては、例えば、脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸、芳香族多塩基酸等を使用することができる。
ポリエステル樹脂の水酸基価は、10〜300mgKOH/g程度が好ましく、50〜250mgKOH/g程度がより好ましく、80〜180mgKOH/g程度が更に好ましい。前記ポリエステル樹脂の酸価は、1〜200mgKOH/g程度が好ましく、15〜100mgKOH/g程度がより好ましく、25〜60mgKOH/g程度が更に好ましい。
【0108】
ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、500〜500,000が好ましく、1,000〜300,000がより好ましく、1,500〜200,000が更に好ましい。
【0109】
アクリル樹脂としては、水酸基含有アクリル樹脂が好ましい。水酸基含有アクリル樹脂は、水酸基含有重合性不飽和モノマー及び該水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーとを、例えば、有機溶媒中での溶液重合法、水中でのエマルション重合法等の既知の方法によって共重合させることにより製造できる。
【0110】
水酸基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ1個以上有する化合物である。例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;これらのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール;分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0111】
水酸基含有アクリル樹脂は、アニオン性官能基を有することが好ましい。アニオン性官能基を有する水酸基含有アクリル樹脂については、例えば、重合性不飽和モノマーの1種として、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基等のアニオン性官能基を有する重合性不飽和モノマーを用いることにより製造できる。
【0112】
水酸基含有アクリル樹脂の水酸基価は、組成物の貯蔵安定性や得られる塗膜の耐水性等の観点から、1〜200mgKOH/g程度が好ましく、2〜100mgKOH/g程度がより好ましく、3〜60mgKOH/g程度が更に好ましい。
【0113】
また、水酸基含有アクリル樹脂がカルボキシル基等の酸基を有する場合、該水酸基含有アクリル樹脂の酸価は、得られる塗膜の耐水性等の観点から、1〜200mgKOH/g程度が好ましく、2〜150mgKOH/g程度がより好ましく、5〜100mgKOH/g程度が更に好ましい。
【0114】
水酸基含有アクリル樹脂の重量平均分子量は、1,000〜200,000が好ましく、2,000〜100,000がより好ましく、更に好ましくは3,000〜50,000の範囲内であることが好適である。
【0115】
ポリエーテル樹脂としては、エーテル結合を有する重合体又は共重合体が挙げられ、例えばポリオキシエチレン系ポリエーテル、ポリオキシプロピレン系ポリエーテル、ポリオキシブチレン系ポリエーテル、ビスフェノールA又はビスフェノールF等の芳香族ポリヒドロキシ化合物から誘導されるポリエーテル等が挙げられる。
【0116】
ポリカーボネート樹脂としては、ビスフェノール化合物から製造された重合体が挙げられ、例えばビスフェノールA・ポリカーボネート等が挙げられる。
【0117】
ポリウレタン樹脂としては、アクリル、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート等の各種ポリオール成分とポリイソシアネートとの反応によって得られるウレタン結合を有する樹脂が挙げられる。
【0118】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノール化合物とエピクロルヒドリンの反応によって得られる樹脂等が挙げられる。ビスフェノールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールFが挙げられる。
【0119】
アルキド樹脂としては、フタル酸、テレフタル酸、コハク酸等の多塩基酸と多価アルコールに、更に油脂・油脂脂肪酸(大豆油、アマニ油、ヤシ油、ステアリン酸等)、天然樹脂(ロジン、コハク等)等の変性剤を反応させて得られたアルキド樹脂が挙げられる。
【0120】
ポリオレフィン樹脂としては、オレフィン系モノマーを適宜他のモノマーと通常の重合法に従って重合又は共重合することにより得られるポリオレフィン樹脂を、乳化剤を用いて水分散するか、あるいはオレフィン系モノマーを適宜他のモノマーと共に乳化重合することにより得られる樹脂が挙げられる。また、場合により、前記のポリオレフィン樹脂が塩素化されたいわゆる塩素化ポリオレフィン変性樹脂を用いてもよい。
【0121】
オレフィン系モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−デセン、1−ドデセン等のα−オレフィン;ブタジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、スチレン類、等の共役ジエン又は非共役ジエン等が挙げられ、これらのモノマーは、単独であってもよいし、複数種を併用してもよい。
【0122】
オレフィン系モノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸等が挙げられ、これらのモノマーは、単独であってもよいし、複数種を併用してもよい。
【0123】
本発明の塗料組成物及びコーティング剤組成物は、硬化剤を含むことができ、これにより、塗料組成物又はコーティング剤組成物を用いて得られる塗膜又は複層塗膜、コーティング膜の耐水性等を向上させることができる。
【0124】
硬化剤としては、例えば、アミノ樹脂、ポリイソシアネート、ブロック化ポリイソシアネート、メラミン樹脂、カルボジイミド等を用いることできる。硬化剤は、単独であってもよいし、複数種を併用してもよい。
【0125】
アミノ樹脂としては、例えば、アミノ成分とアルデヒド成分との反応によって得られる部分もしくは完全メチロール化アミノ樹脂が挙げられる。前記アミノ成分としては、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等が挙げられる。アルデヒド成分としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒド等が挙げられる。
【0126】
ポリイソシアネートとしては、例えば、1分子中に2個以上のイソシアナト基を有する化合物が挙げられ、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0127】
ブロック化ポリイソシアネートとしては、前述のポリイソシアネートのポリイソシアナト基にブロック化剤を付加することによって得られるものが挙げられる。前記ブロック化剤としては、フェノール、クレゾール等のフェノール系、メタノール、エタノール等の脂肪族アルコール系、マロン酸ジメチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等のメルカプタン系、アセトアニリド、酢酸アミド等の酸アミド系、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム等のラクタム系、コハク酸イミド、マレイン酸イミド等の酸イミド系、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシム等のオキシム系、ジフェニルアニリン、アニリン、エチレンイミン等のアミン系等のブロック化剤が挙げられる。
【0128】
メラミン樹脂としては、例えば、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン等のメチロールメラミン;これらのメチロールメラミンのアルキルエーテル化物又は縮合物;メチロールメラミンのアルキルエーテル化物の縮合物等をあげることができる。
【0129】
本発明の塗料組成物及びコーティング剤組成物には、着色顔料や体質顔料、光輝性顔料を添加することができる。
【0130】
着色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料等が挙げられる。これらは、単独であってもよいし、複数種を併用してもよい。特に、着色顔料として、酸化チタン及び/又はカーボンブラックを使用することが好ましい。
【0131】
体質顔料としては、例えば、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイト等が挙げられる。これらは、単独であってもよいし、複数種を併用してもよい。特に、体質顔料として、硫酸バリウム及び/又はタルクを使用することが好ましく、硫酸バリウムを使用することがより好ましい。
【0132】
光輝性顔料は、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母等を使用することができる。
【0133】
本発明の塗料組成物及びコーティング剤組成物には、必要に応じて、増粘剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、表面調整剤、沈降防止剤等の通常の塗料用添加剤を含有することができる。これらは、単独であってもよいし、複数種を併用してもよい。
【0134】
本発明の塗料組成物及びコーティング剤組成物の製造方法は、特に制限されないが、公知の製造方法を用いることができる。一般的には、塗料組成物及びコーティング剤組成物は、上記複合樹脂水性分散体と上述した各種添加剤を混合し、水系媒体を添加し、塗装方法に応じた粘度に調製することにより製造される。
【0135】
塗料組成物の被塗装材質又はコーティング剤組成物の被コーティング材質としては、金属、プラスチック、無機物、木材等が挙げられる。
【0136】
本発明の塗料組成物及びコーティング剤組成物は、プラスチックに対する密着性が高く、特にポリ(メタ)アクリル樹脂やABS樹脂に対する密着性が高い。このため、被塗装材質及び被コーティング材質としては、ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂及び/又はABS樹脂が好ましい。
【0137】
塗料組成物の塗装方法又はコーティング剤組成物のコーティング方法としては、ベル塗装、スプレー塗装、ロール塗装、シャワー塗装、浸漬塗装等が挙げられる。
【0138】
塗膜の厚さは、特に制限されないが、1〜100μmの厚さが好ましい。より好ましくは、3〜50μmの厚さの塗膜を形成することが好ましい。
【実施例】
【0139】
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0140】
[合成例1]
攪拌機、還流冷却管及び温度計を挿入した反応容器で、ETERNACOLL UM90(3/1)(宇部興産製;数平均分子量916;水酸基価123mgKOH/g;ポリオール成分が1,4−シクロヘキサンジメタノール:1,6−ヘキサンジオール=3:1のモル比のポリオール混合物と炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、1500g)と、2,2−ジメチロールプロピオン酸(220g)と、水素添加MDI(1450g)とを、NMP(1350g)中、ジブチルスズジラウリレート(2.6g)存在下、窒素雰囲気下で、80〜90℃で、6時間加熱した。ウレタン化反応終了時のプレポリマー中のNCO基含有量は3.97質量%であった。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン(149g)を添加・混合した。反応混合物の中から4360gを抜き出して、強攪拌下のもと水(6900g)の中に加えた。ついで、35質量%の2−メチル−1,5−ペンタンジアミン水溶液(626g)を加えて、ポリウレタン樹脂(水性分散体)を得た。
【0141】
[実施例1]
攪拌機及び加熱器を備えた反応装置で、合成例1で得られたポリウレタン樹脂(水性分散体(500g))に、n-ブチルアクリレート(ガラス転移温度(計算値):−54℃、33.4g)と、水(85.8g)とを加え、50℃に加温した。次に、1質量%アスコルビン酸水溶液(9.3g)と、7質量%過酸化ブチル水溶液(2.7g)とを加えた。発熱が収まった後、50℃で、1時間加熱したところ、ビニル重合体を内包するポリウレタン樹脂が水系媒体中に分散した複合樹脂水性分散体が得られた。
【0142】
[実施例2]
攪拌機及び加熱器を備えた反応装置で、合成例1で得られたポリウレタン樹脂(水性分散体(500g))に、2─エチルヘキシルアクリレート(ガラス転移温度(計算値):−85℃、33.4g)と、水(85.8g)とを加え、50℃に加温した。次に、1質量%アスコルビン酸水溶液(9.3g)と、7質量%過酸化ブチル水溶液(2.7g)とを加えた。発熱が収まった後、50℃で、1時間加熱したところ、ビニル重合体を内包するポリウレタン樹脂粒子が水系媒体中に分散した複合樹脂水性分散体2が得られた。
【0143】
[実施例3]
攪拌機及び加熱器を備えた反応装置で、合成例1で得られたポリウレタン樹脂(水性分散体(500g))に、2─エチルヘキシルメタクリレート(ガラス転移温度(計算値):−10℃、33.4g)と、水(85.8g)とを加え、50℃に加温した。次に、1質量%アスコルビン酸水溶液(9.3g)と、7質量%過酸化ブチル水溶液(2.7g)とを加えた。発熱が収まった後、50℃で、1時間加熱したところ、ビニル重合体を内包するポリウレタン樹脂が水系媒体中に分散した複合樹脂水性分散体3が得られた。
【0144】
[実施例4]
攪拌機及び加熱器を備えた反応装置で、合成例1で得られたポリウレタン樹脂(水性分散体(500g))に、n-ブチルメタクリレート(ガラス転移温度(計算値):20℃、33.4g)と、水(85.8g)とを加え、50℃に加温した。次に、1質量%アスコルビン酸水溶液(9.3g)と、7質量%過酸化ブチル水溶液(2.7g)とを加えた。発熱が収まった後、50℃で、1時間加熱したところ、ビニル重合体を内包するポリウレタン樹脂が水系媒体中に分散した複合樹脂水性分散体4が得られた。
【0145】
[実施例5]
攪拌機及び加熱器を備えた反応装置で、合成例1で得られたポリウレタン樹脂(水性分散体(500g))に、メチルメタクリレート(ガラス転移温度(計算値):105℃、33.4g)と、水(85.8g)とを加え、50℃に加温した。次に、1質量%アスコルビン酸水溶液(9.3g)と、7質量%過酸化ブチル水溶液(2.7g)とを加えた。発熱が収まった後、50℃で、1時間加熱したところ、ビニル重合体を内包するポリウレタン樹脂が水系媒体中に分散した複合樹脂水性分散体が得られた。
【0146】
[比較例1]
攪拌機、還流冷却管及び温度計を挿入した反応容器で、ETERNACOLL UM90(3/1)(宇部興産製;数平均分子量916;水酸基価123mgKOH/g;ポリオール成分が1,4−シクロヘキサンジメタノール:1,6−ヘキサンジオール=3:1のモル比のポリオール混合物と炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、1500g)と、2,2−ジメチロールプロピオン酸(220g)と、水素添加MDI(1450g)とを、NMP(1350g)中、ジブチルスズジラウリレート(2.6g)存在下、窒素雰囲気下で、80〜90℃で、6時間加熱した。ウレタン化反応終了時のプレポリマー中のNCO基含有量は3.97質量%であった。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン(149g)を添加・混合した。反応混合物の中から4360gを抜き出して、強攪拌下のもと水(6900g)の中に加えた。ついで、35質量%の2−メチル−1,5−ペンタンジアミン水溶液(626g)を加えて、ポリウレタン樹脂(水性分散体)を得た。
【0147】
[比較例2]
攪拌機及び加熱器を備えた反応装置で、合成例1で得られた水性ポリウレタン樹脂分散体(500g)に、n-ブチルアクリレート(ガラス転移温度(計算値):−54℃、89.2g)と、水(236g)とを加え、50℃に加温した。次に、1質量%アスコルビン酸水溶液(12.4g)と、7質量%過酸化ブチル水溶液(3.5g)とを加えた。発熱が収まった後、50℃で、1時間加熱したところ、ビニル重合体を内包するポリウレタン樹脂が水系媒体中に分散した複合樹脂水性分散体が得られた。
【0148】
[評価]
(耐アルコール性)
実施例1〜5、及び比較例1〜2で得られた複合樹脂水性分散体をガラス板に塗布した。なお、乾燥後の最終膜厚が、10ミクロンとなるように塗布した。その後、120℃で120分加熱乾燥することで、乾燥塗膜を形成し、ガラス基材積層体を得た。
【0149】
得られたガラス基材積層体の乾燥塗膜上に、消毒用アルコールを染み込ませた脱脂綿を置き、5分間静置した。その後、脱脂綿を取り除き、脱脂綿を置いた場所をニードルで引っ掻き、塗膜外観を目視により評価した。その結果を表1に示す。
【0150】
評価基準は、以下のとおりである。
○:塗膜の破れや塗膜の剥離は、観測されなかった。
×:塗膜の破れや塗膜の剥離が、観測された。
【0151】
【0152】
(鉛筆硬度)
実施例1〜5、及び比較例1〜2の複合樹脂水性分散体をガラス板に塗布した。なお、乾燥後の最終膜厚が約20ミクロンになるように均一に塗布した。次いで、80℃にて30分乾燥することで、ガラス基材積層体を得た。得られたガラス基材積層体から、硬化塗膜(樹脂フィルム)をガラス板より剥離して、JIS K 5600−5−4に準拠した方法で鉛筆硬度を測定した。
【0153】
(密着性)
実施例1〜5、及び比較例1〜2で得られた複合樹脂水性分散体を、自動車鋼板カチオン電着塗板(日本テストパネル社製)上に、厚さ40μm(バーコーター#20)で塗布し、140℃で30分間加熱乾燥し、得られた塗膜を用いて碁盤目剥離試験を行った。塗膜に10mm×10mmの面積に縦横1mm間隔で切り目を入れ、粘着テープを貼った後、剥がしたときの状態を下記の基準で評価した。
○:塗膜の剥離がない状態
△:塗膜の一部分が剥離している状態
×:塗膜の全面が剥離している状態
【0154】
【表2】