(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の凹部または凸部を有する凹凸構造層をさらに含み、前記透光性基板の第1面上に、凹凸構造層、透明電極、発光層および陰極がこの順に積層されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の有機EL素子。
プリズム構造をさらに含み、前記プリズム構造は、前記透光性基板と前記凹凸構造層との間に設けられており、前記プリズム構造は1.7以下の屈折率を有することを特徴とする請求項4に記載の有機EL素子。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであって、有機EL素子の陰極における表面プラズモン吸収を効果的に緩和し、光取り出し効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の実施態様の有機EL素子は、第1面および第2面を有する透光性基板と、前記第1面上に形成された、透明電極、陰極、および前記透明電極と前記陰極との間に設けられた発光層と、前記第2面上に配置された凹凸を有する光取り出しフィルムとを含む有機EL素子であって、前記陰極の前記発光層側の表面に複数の凹部または凸部を有し、前記陰極の前記発光層側の表面のフーリエ変換像は、式(I)
【0011】
【数1】
【0012】
(式中、ε
1は前記発光層の比誘電率であり、ε
2は前記陰極の比誘電率であり、Re()は複素数の実部を取り出す関数であり、λは発光層の発光スペクトルの中心波長である)
で求められる空間周波数νを含む1つまたは複数の表面プラズモン吸収抑制領域と、空間周波数ν以上の空間周波数を含まない1つまたは複数の光散乱領域とを有することを特徴とする。
【0013】
本発明の第2の実施態様の有機EL素子は、第1の実施態様の有機EL素子において、1つまたは複数の表面プラズモン吸収抑制領域がν
1以上ν
2以下の空間周波数νを含み、1つまたは複数の光散乱領域がν
1以上ν
2以下の空間周波数νを含まないことを特徴とする。ここで、ν
1およびν
2は、発光層の発光スペクトルのピーク波長をλ
pとし、波長λにおける強度をS(λ)とし、S(λ)>S(λ
p)/100が成立する最小波長をλ
minとし、S(λ)>S(λ
p)/100が成立する最大波長をλ
maxとし、kを0.8より大きい実数とし、式(II)および式(III)
λ
1=k×λ
min (II)
λ
2=(1/k)×λ
max (III)
で得られるλ
1およびλ
2を、式(I)のλに代入して求められる。
【0014】
本発明の第3の実施態様の有機EL素子は、第1の実施態様の有機EL素子において、発光層の発光スペクトルが複数の発光ピーク波長λ
p1……λ
pnを有し、前記表面プラズモン吸収抑制領域が、λ
p1……λ
pnを式(I)のλに代入して求められる空間周波数ν
p1……ν
pnを含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の第4の実施態様の有機EL素子は、第1から第3の実施態様の有機EL素子において、複数の凹部または凸部を有する凹凸構造層をさらに含み、前記透光性基板の第1面上に、凹凸構造層、透明電極、発光層および陰極がこの順に積層されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の第5の実施態様の有機EL素子は、第4の実施態様の有機EL素子において、凹凸構造層が1.7以上の屈折率を有することを特徴とする。
【0017】
本発明の第6の実施態様の有機EL素子は、第4の実施態様の有機EL素子において、凹凸構造層が光散乱性微粒子を含むことを特徴とする。
【0018】
本発明の第7の実施態様の有機EL素子は、第4の実施態様の有機EL素子において、プリズム構造をさらに含み、前記プリズム構造は、前記透光性基板と前記凹凸構造層との間に設けられており、前記プリズム構造は1.7以下の屈折率を有することを特徴とする。
【0019】
本発明の第8の実施態様の有機EL素子は、第4の実施態様の有機EL素子において、凹凸構造層の複数の凸部または凹部は、1mm以下の面内寸法を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の第1の実施態様の有機EL素子は、陰極の表面に、光取り出し凹凸フィルムの光取り出し容易方向に対応する表面プラズモン吸収の抑制に有効な空間周波数を有する凹凸構造と、光取り出し凹凸フィルムの光取り出し困難方向に対応する光の散乱に有効な空間周波数を有する凹凸構造とを設けることにより、高い光取り出し効率を有する。
【0021】
本発明の第2の実施態様の有機EL素子は、陰極の表面プラズモン吸収の抑制に有効な空間周波数を有する凹凸構造において、空間周波数を発光層の発光スペクトルに適合させることによって、陰極の表面における表面プラズモン吸収をより効率的に抑制することを可能にする。
【0022】
本発明の第3の実施態様の有機EL素子は、複数の発光波長ピークを有する発光層に対応して陰極の表面プラズモン吸収の抑制のための空間周波数を設定することにより、発光スペクトルの分布の変化を小さくすると同時に、陰極の表面における表面プラズモン吸収をより効率的に抑制することを可能にする。
【0023】
本発明の第4の実施態様の有機EL素子は、陰極の表面に加えて、陽極および発光層に凹凸構造を導入して、それら界面における光の散乱性を高め、より高い光取り出し効率の実現を可能とする。
【0024】
本発明の第5の実施態様の有機EL素子は、凹凸構造層と陽極との界面における全反射を抑制して、より高い光取り出し効率の実現を可能とする。
【0025】
本発明の第6の実施態様の有機EL素子は、凹凸構造層内で光を散乱させることにより、透光性基板と空気との界面における全反射を抑制して、より高い光取り出し効率の実現を可能とする。
【0026】
本発明の第7の実施態様の有機EL素子は、凹凸構造層と透光性基板との界面における全反射を抑制して、より高い光取り出し効率の実現を可能とする。
【0027】
本発明の第8の実施態様の有機EL素子は、リークスポットが発生した場合であっても、その寸法を1mm以下の区域に限定して、動作時の良好な外観を維持することを可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0029】
通常、有機EL素子の発光層が発する光は、外部へ放射されるまでに損失する。光の損失の主要な原因は、1)透光性基板と空気との界面での全反射、2)透明電極と透光性基板との界面での全反射、および3)陰極での表面プラズモン吸収を含む。
【0030】
透光性基板の空気側の表面に光を散乱させる構造を設けることで、1)透光性基板と空気との界面での全反射を抑制することができる。また、透光性基板の透明電極側の面に光を散乱させる構造を設けることで、2)透明電極と透光性基板との界面での全反射を抑制することができる。3)陰極での表面プラズモン吸収については、陰極に凹凸構造を設けることにより、表面プラズモン吸収による光の損失を抑制することが知られている。
【0031】
図1は、基板10の上に、凹凸構造層20、陰極30、発光層40、および陽極(透明電極)50がこの順に積層され、陽極50の上に透光性基板60を設けたトップエミッション型有機EL素子の1つの構成例を示す。
図2は、透光性基板60の上に、凹凸構造層20、陽極(透明電極)50、発光層40、および陰極30がこの順に積層されたボトムエミッション型有機EL素子の1つの構成例を示す。
図1および
図2の構造において、凹凸構造層20の表面の凹凸構造にならって、陰極30の発光層40側表面に凹凸構造が形成される。
図1および
図2の構造では、凹凸構造層20を設けることによって、陰極30の表面に加えて、陽極および発光層にも凹凸構造が導入される。凹凸構造の導入は、それらの層の間の界面における光の散乱性を高め、より高い光取り出し効率を実現する。
【0032】
透光性基板60は、高い透明性および発光層40の劣化を防ぐための高いバリア性が要求される。そのため、一般的には、透光性基板60はガラス基板であるが、これに限定されない。透光性基板60を形成するための材料は、ガラス、各種プラスチック、およびシリコンを含む。透光性基板60は、単一層であってもよいし、複数の層を含む積層構造であってもよい。透光性基板60は、0.1mm〜1mmの厚さを有することが望ましい。
【0033】
凹凸構造層20は、熱硬化性樹脂、酸化重合性樹脂、反応性硬化型樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などを用いて形成することができる。凹凸構造の形成を容易にするために、紫外線硬化性樹脂または電子線硬化性樹脂を用いることが望ましい。あるいはまた、紫外線などの化学線を照射した部位の現像液に対する溶解性が向上する、いわゆる「ポジ型」フォトレジストを用いて、凹凸構造層20を形成してもよい。
【0034】
陽極50は、高い透明性および導電性を備えた材料が用いて形成される。陽極50は、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、ZnO、CuI、SnO
2などの無機導電膜、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物(PEDOT/PSS)などの有機導電膜、または、高分子材料に銀ナノワイヤーを分散させた銀ナノワイヤインクなどの複合導電膜であってもよいが、これらに限定されない。陽極50は、用いる材料の特性に依存して、蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法などの当該技術において知られている任意の方法で形成することができる。
【0035】
発光層40は、当該技術において知られている任意の低分子材料および/または高分子材料を用いて形成される。発光層40は、発光機能を有する少なくとも1つの層(狭義の「発光層」)を含むことを条件として、単一層であっても、複数種の層の積層構造であってもよい。発光層40は、狭義の発光層に加えて、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、および/または電子注入層を含んでもよい。発光層40は、用いる材料の特性に依存して、蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法などの当該技術において知られている任意の方法で形成することができる。
【0036】
陰極30は、反射性を有する金属材料を用いて形成される。用いることができる反射性を有する金属材料は、アルミニウム、銀などを含む。
【0037】
図3(a)に、周期的に配列された凹凸構造を有する、従来技術の陰極の上面図を示す。
図3(a)において、凸部を黒色で示し、凹部を白色で示している。なお、黒色部を凸部とし、白色部を凹部としても、同様の光学的な効果が得られる。
図3(a)の凹部は、段違いに周期的に配列された四角形状を有する。しかしながら、円、楕円、多角形などの他の形状を有する凹部または凸部も、周期的に配列することによって、表面プラズモン吸収による光の損失を抑制する効果がある。凹部または凸部は、段違いにせずに正方行列状に配列してもよい。あるいはまた、前述の段違い配列または正方行列状配列に若干のランダム性を付与してもよい。
【0038】
このような周期的凹凸構造は、表面プラズモン吸収の抑制に一定の効果がある。周期性を検証するために、
図3(a)の構造のフーリエ変換すると
図3(b)の二次元周波数スペクトルが得られる。具体的には、
図3(a)の座標(x,y)における凹部の深さf(x,y)について、x軸方向の空間周波数成分uおよびy軸方向の空間周波数成分vを変数とするF(u,v)を以下の式で求める。以下の式において、x方向の標本数Mおよびy方向の標本数Nは、大きくなるほど構造を正確に表すことができる。構造の凸部および凹部を一組とした単位周波数の幅に対して標本化定理により、それぞれ、x方向およびy方向の両方において、標本点の間隔を単位周波数の幅の半分以下となるように決定される。
【0040】
図3(b)は、図の中心がu=0およびv=0の原点であり、中心から離れるほど空間周波数uおよびvの絶対値が大きくなる、一般的なフーリエ変換像を示す。なお、空間周波数νは、ν=(u
2+v
2)
1/2の式で求められる。
【0041】
図3(a)に線100aで示した凹部の配列は、線102aで示す方向に周期性を有し、
図3(b)に線104aで示す方向の空間周波数を有する。一方、
図3(a)に線100bで示した凹部の配列は、線102bで示す方向に周期性を有し、
図3(b)に線104bで示す方向の空間周波数を有する。以上のように、
図3(a)の凹凸構造は、
図3(b)の画像の中心部から輝点に向かう方向に、周期性を有することが分かる。
図3(b)に白色点で示した位置の空間周波数(u
2+v
2)
1/2と、以下の式(I)で求められる表面プラズモン吸収抑制のための空間周波数νとを一致させることで、発生した表面プラズモンを光に再変換し、表面プラズモン吸収を抑制できることが知られている。
【0043】
(式中、ε
1は前記発光層の比誘電率であり、ε
2は前記陰極の比誘電率であり、Re()は複素数の実部を取り出す関数であり、λは発光層の発光スペクトルの中心波長である)
【0044】
しかしながら、表面プラズモン吸収の抑制に有効である方向は、凹凸構造が周期性を有する方向のみであり、
図3(b)の画像の中心と輝点とを結んだ方向のみである。
【0045】
別法として、
図4に示す円環状の二次元空間周波数スペクトルを用いることが提案されている(特許文献2参照)。
図4の二次元空間周波数スペクトル106を逆フーリエ変換しすると、
図5に示す凹凸構造が得られる。
図5においても、凸部を黒色で示し、凹部を白色で示している。
図5に示す凹凸構造を有する陰極は、全方位において高い光取り出し効果(表面プラズモン吸収を抑制する効果)を示すが、透光性基板60の外側に配置される光取り出し凹凸フィルムとのマッチングが課題となる。
【0046】
図6および
図7に、光取り出し凹凸フィルムの一般的な構成例を示す。
図6(a)および(b)は、透明支持体90の上に半球状の凸部92を設けた光取り出し凹凸フィルムの上面図および断面図を示す。
図7(a)および(b)は、透明支持体90の上に四角錐状の凹部92を設けた光取り出し凹凸フィルムの上面図および断面図を示す。
図6および
図7においては、凸部または凹部を規則的に配列した構成例を示した。しかしながら、凸部または凹部をランダムに配置させてもよい。
【0047】
平坦な面は、透明支持体90と空気との界面における全反射を起こしやすく、光の損失を発生させる。したがって、
図6または
図7に示すような凹凸形状を付与することで、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0048】
図5および
図6に示すように、凸部または凹部の形状および配列方法を種々変化させ得る。しかしながら、形状及び/または配列方法に依存して、光取り出し容易方向および光取り出し困難方向が発生する。
図6に示す半球状の凸部を配列した構成例においては、どうしても平坦面が発生し、
図7に示す四角錐状の凹部を配列した構成例よりも光取り出し効率が低下する。
図8(a)は、
図6に示す半球状の凸部を配列した構成例の光取出し容易方向122および光取り出し困難方向124を示す。一方、
図8(b)は、
図7に示す四角錐状の凹部を配列した構成例の光取り出し容易方向122および光取り出し困難方向124を示す。
【0049】
図6に示す半球状の凸部を設けた場合の光挙動を
図9に示す。
図9(a)は、光取り出し容易方向122に沿った断面を示す。この断面では、陰極の凹凸により表面プラズモン吸収を抑制して発する光を、半球状の凸部92を通過させることによって、外部に取り出すことができる。
図9(b)は、光取り出し容易方向124に沿った断面を示す。この断面では、半球状の凸部92の密度が低下し、透明支持体90の平坦面において全反射する確率が増加する。よって、陰極の凹凸により表面プラズモン吸収を抑制したとしても、発光層が発する光を外部に取り出す効率が低下する。
【0050】
光取り出し凹凸フィルムの光取り出し容易方向122および光取り出し困難方向124は、たとえば、分光放射輝度計(株式会社トプコンテクノハウス製TOPCON―SR3ARなど)を用いて有機EL素子の外部放射光の配向角を測定することで判断することが可能である。最初に、凹凸構造を有さない透明支持体90の表面にシリンドリカルレンズを密着させて配向角を測定することにより、有機EL素子内部の光の配向角を測定する。シリンドリカルレンズの密着には、透明支持体90およびシリンドリカルレンズの材料と同等の屈折率(たとえば、ガラスの場合、1.52)を有する液体を使用する。次に、凹凸構造を有する光取り出し凹凸フィルムを透明支持体の表面に貼り合わせて配向角を測定することにより、外部に取り出される光の配向角を測定する。内部および外部の光の配向角を比較することで、光取り出し容易方向122および光取り出し困難方向124を決定することが可能となる。別法として、レイトレースによる光学シミュレーションにより、光取り出し容易方向122および光取り出し困難方向124を求めてもよい。この場合には、上記の測定を行うことなしに、両方向を把握することができる。
【0051】
本発明の有機EL素子は、第1面および第2面を有する透光性基板と、前記第1面上に形成された、透明電極、陰極、および前記透明電極と前記陰極との間に設けられた発光層と、前記第2面上に配置された凹凸を有する光取り出しフィルムとを含む有機EL素子であって、前記陰極の前記発光層側の表面に複数の凹部または凸部を有し、前記陰極の前記発光層側の表面のフーリエ変換像は、式(I)
【0053】
(式中、ε
1は前記発光層の比誘電率であり、ε
2は前記陰極の比誘電率であり、Re()は複素数の実部を取り出す関数であり、λは発光層の発光スペクトルの中心波長である)
で求められる空間周波数νを含む1つまたは複数の表面プラズモン吸収抑制領域と、前記空間周波数ν以上の空間周波数を含まない1つまたは複数の光散乱領域とを有することを特徴とする。
【0054】
本発明において、「空間周波数νを含む領域」とは、当該領域内の全ての空間周波数νにおいて、F(u,v)の値が閾値Th以上であることを意味する。「空間周波数νを含まない領域」とは、当該領域内の全ての空間周波数νにおいて、F(u,v)の値が閾値Th未満であることを意味する。閾値Thは、フーリエ変換像全体におけるF(u,v)の最大値の10%以上であってもよく、好ましくは50%以上であってもよい。
【0055】
本発明の陰極のフーリエ変換像の1つの例を
図10に示す。
図10に示すフーリエ変換像の例は、(u,v)=(0,0)の原点を中心として、8つの扇形の領域に分割される。互いに隣接しない4つの領域が式(I)で求められる空間周波数νを含む表面プラズモン吸収抑制領域142である。その余の4つの領域が、式(I)で求められる空間周波数ν以上の空間周波数を含まない光散乱領域144である。言い換えると、光取り出し凹凸フィルムの光取り出し容易方向122における凹凸構造の空間周波数を、表面プラズモン吸収抑制領域142で表される空間周波数とし、
図11(a)に示すように、表面プラズモンの再変換により発生する光を外部に取り出せるようにする。一方、光取り出し凹凸フィルムの光取り出し困難方向122においては、表面プラズモンの再変換により光を発生させても、光取り出し凹凸フィルムの表面における全反射により外部へ取り出すことが困難である。そこで、光取り出し凹凸フィルムの光取り出し困難方向122における凹凸構造の空間周波数を、光散乱領域144で表される空間周波数とし、
図11(b)に示すように、発光層を発して陰極で反射する光を拡散させ、凹凸フィルム表面における全反射を抑制して、より多くの光を外部に取り出せるようにする。
【0056】
図12は、
図10に示すフーリエ変換像を逆フーリエ変換して得られる陰極の表面凹凸構造を示す。本発明における逆フーリエ変換は、x軸方向の空間周波数成分uおよびy軸方向の空間周波数成分vにおけるF(u,v)について、座標(x,y)を変数とする凹部の深さf(x,y)を以下の式で求める。
【0058】
逆フーリエ変換して得られた凹凸構造用の画像データを、たとえば電子線描画装置を用いてレジスト上に描画し、現像処理をすることで、レジスト上へ凹凸構造を作製することができる。レジスト上に形成した凹凸構造をそのまま凹凸構造層20として用いてもよい。しかしながら、凹凸構造から電鋳版を作製し、さらにその電鋳版の凹凸構造を樹脂膜に転写することで、量産性を向上させることができる。電鋳版からの樹脂膜への転写は、電鋳版をロールに巻き付け、たとえばPETなどのロールフィルム上の樹脂膜に電鋳版を押圧することでロール−トゥ−ロールでの成形も可能となる。ここで、熱硬化性樹脂または紫外線硬化性樹脂からなる樹脂膜を用いて、加熱または紫外線照射による樹脂膜の硬化を行ってもよい。
【0059】
表面プラズモン吸収抑制領域142に含まれる空間周波数νは、発光層の発光スペクトルと、発光スペクトルをカバーする比率を決定する変数kとを用いて決定してもよい。たとえば、発光層の発光スペクトルのピーク波長をλ
pとし、波長λにおける強度をS(λ)とし、S(λ)>S(λ
p)/100が成立する最小波長をλ
minとし、S(λ)>S(λ
p)/100が成立する最大波長をλ
maxとし、kを0.8より大きい実数とする。ここで、
λ
1=k×λ
min (II)
で得られるλ
1を式(I)のλに代入して求められる空間周波数ν
1とし、
λ
2=(1/k)×λ
max (III)
で得られるλ
2を式(I)のλに代入して求められる空間周波数ν
2とする。ただし、kの値を調整して、λ
1<λ
2を満たすようにする。表面プラズモン吸収抑制領域142は、ν
2以上ν
1以下の範囲の空間周波数を含んでもよい。このように、発光層の発光スペクトルS(λ)を基準として表面プラズモン吸収抑制領域142に含まれる空間周波数の範囲を決定することにより、陰極30表面において表面プラズモン吸収より効率的に抑制することができる。
【0060】
式(II)および(III)において、kの値を0.5〜1.2までの8水準に変化させて、(ν
1,ν
2)の8個の組を得た。続いて、白色部の内側円周の空間周波数をν
2とし、外側円周の空間周波数をν
1とする、
図4(本発明の範囲外)の二次元空間周波数スペクトルを逆フーリエ変換して、凹凸構造を計算した。ここで、凹凸構造の最大高さ(凹凸面の最低点と最高点との間のz方向の距離)を50nmとした。さらに、透光性基板60の上に、上記の計算で得られた凹凸構造を有する凹凸構造層20を形成した。凹凸構造層20の上に、50nmの膜厚を有する酸化インジウムスズ(ITO)からなる陽極30、70nmの膜厚を有する4,4’−ビス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル(α−NPD)膜および60nmの膜厚を有するトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq
3)膜からなる発光層40、および100nmの膜厚を有するアルミニウムからなる陰極50を積層して、
図2に示す有機EL素子を作製した。
【0061】
なお、凹凸構造層20の表面の凹凸構造の高さを大きくするほど、光学的特性は良好となる。しかしながら、凹凸構造の高さの増大は、有機EL素子中の陰極30と陽極50とのショートの危険性を高める。素子構造にも依存するが、凹凸構造層20の表面の凹凸構造の高さを、約20nm〜約100nmの範囲内とすることが好ましい。
【0062】
凹凸構造層20を形成せずに作製した有機EL素子から外部に取り出される全光束を1.0として、上記の有機EL素子の光取り出し倍率を測定した。結果を
図13に示す。
図13から分かるように、k=0.5〜0.7の範囲では光取り出し倍率が低く、kが0.8以上の範囲で光取り出し倍率の向上が認められた。kの値の増大は、
図4の白色部の幅の縮小を意味する。このことから、表面プラズモン吸収抑制領域142に含まれる空間周波数νの幅が特定の値よりも小さいことが、有機EL素子の光取り出し効率の向上に有効であることが分かる。
【0063】
また、発光層が赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の各成分を含む発光スペクトルを有する白色発光有機EL素子についても、各成分の発光ピーク波長λ
p1……λ
pnを式(I)のλに代入して求められる空間周波数ν
p1……ν
pnを含む空間周波数スペクトルを逆フーリエ変換して求められる凹凸構造を有する陰極を用いることで、表面プラズモン吸収抑制により光取り出し効率が向上する。
図14に、R、G、Bの3成分に対応するν
pR、ν
pG、およびν
pBを含む空間周波数スペクトルの1つの例を示した。複数の成分を発する発光層を用いる場合、特定の成分のピーク波長に対応する空間周波数を含む二次元空間周波数スペクトルを採用することによって、特定の成分のみにおいて表面プラズモン吸収を抑制することができる。この場合には、各成分の光取り出し効率を調整して、外部放射光の発光スペクトルの形状を変化させることができる。発光スペクトルの形状変化は、有機EL素子の演色評価指数および/または色温度の調整に有効である。
【0064】
図15に、本発明において用いることができる陰極の凹凸構造のフーリエ変換像の別の例を示す。
図15(a)は、
図10に示すフーリエ変換像の表面プラズモン吸収抑制領域142が、式(I)で求められる空間周波数νに加えて、空間周波数ν未満の散乱に寄与する空間周波数も含む変形例を示す。
図15(b)は、
図15(a)のフーリエ変換像において、光散乱領域144の空間周波数の上限を減少させ、表面プラズモン吸収抑制領域142内の散乱に寄与する空間周波数の上限を減少させた変形例を示す。
図15(c)は、
図15(b)に示すフーリエ変換像において、表面プラズモン吸収抑制領域142の形状を扇型からu軸およびy軸に平行な辺からなる矩形に変更した変形例を示す。
図15(d)は、
図15(c)に示すフーリエ変換層において、表面プラズモン吸収抑制領域142内の散乱に寄与する空間周波数の領域において、原点(u,v)=(0,0)を中心とする扇型の領域を除外した変形例を示す。
【0065】
なお、発光層40を発して陰極30に向かう光については、以上で説明した表面プラズモン吸収を抑制する構造が効果的である。一方、発光層を発して陽極50および透光性基板60に向かう光については、陰極30に入射しないため、表面プラズモン吸収による光損失が小さい。ただし、凹凸構造層20が一般的な樹脂の屈折率である1.5程度の屈折率を有する場合、
図16(a)に示すように、凹凸構造層20と陽極50との界面で全反射して損失が発生する可能性がある。よって、凹凸構造層20の屈折率を1.7以上にすることが好ましい。この場合には、
図16(b)に示すように、凹凸構造層20と陽極50との界面での全反射を抑制して、発光層からの光を外部に取り出すことが可能となる。凹凸構造層20の屈折率の調整には、ZrO
2またはTiO
2の微粒子を用いることができる。この場合のZrO
2微粒子およびTiO
2微粒子は、屈折率を調整する機能のみを有し、光を散乱する機能をほとんど持たない。また、これら微粒子の粒径はナノメートルのオーダーであり、光散乱性微粒子と区別することが可能である。
【0066】
1/282nm
-1の空間周波数を含む
図4(本発明の範囲外)の二次元空間周波数スペクトルを逆フーリエ変換して、凹凸構造を計算した。ZrO
2の微粒子を添加して屈折率を調整した材料を用いて、透光性基板60の上に、上記で得られた凹凸構造を有する凹凸構造層20を形成した。さらに、凹凸構造層20の上に、50nmの膜厚を有するITOからなる陽極30、70nmの膜厚を有するα−NPD膜および60nmの膜厚を有するAlq
3膜からなる発光層40、および100nmの膜厚を有するアルミニウムからなる陰極50を積層して、
図2に示す有機EL素子を作製した。
【0067】
凹凸構造層20を形成せずに作製した有機EL素子から外部に取り出される全光束を1.0として、上記の有機EL素子の光取り出し倍率を測定した。結果を
図17に示す。
図17から、凹凸構造層20の屈折率を1.7以上とすることによって、光取り出し効率が向上することが分かった。
【0068】
また、
図18に示すように凹凸構造層20に光散乱性微粒子70を配合することによって、光の取り出し効率を更に向上できることが分かった。ZrO
2の微粒子を添加して屈折率を調整した材料に、0.5μmの粒径を有するSiO
2微粒子を30重量%添加した。得られた光散乱性材料を用いて、上記と同様に凹凸構造層20を形成し、その上に陽極30、発光層40および陰極50を形成した。凹凸構造層20を形成せずに作製した有機EL素子から外部に取り出される全光束を1.0として、上記の有機EL素子の光取り出し倍率を測定した。結果を
図17に示す。
図17から、全ての屈折率において、光取り出し倍率が向上したことが分かる。特に、1.7以上の屈折率において、光取り出し倍率の向上が顕著である。
【0069】
用いることができる光散乱性微粒子70は、TiO
2、SiO
2、Al
2O
3、ZrO、CaCO
3、BaSO
4、およびMg
3Si
4O
10(OH)
2を含む。光酸酸性微粒子70は、数十nmから数百μmまでの粒径を有してもよい。
【0070】
凹凸構造層20の膜厚は、0.005〜100μmの範囲内であることが好ましい。この範囲内の膜厚を有することにより、光酸酸性微粒子を導入して光散乱層として機能することが容易となり、一方で、含有する水分量を少なくして発光層40にダークスポットが発生することを抑制できる。また、凹凸構造層20の表面に設けられる凹凸構造の高さは、陰極30と陽極50とが接触するリークスポットの発生を抑制できる程度にすることが望ましい。
【0071】
光散乱による光取り出し効率の向上の別の方法として、
図19(a)に示すように、有機EL素子内部にプリズム構造80を設けることができる。プリズム構造80は、凹凸構造層20との界面において光を屈折させ、透光性基板60と空気との界面に対する入射角を小さくして、当該界面における全反射を抑制する機能を有する。このため、プリズム構造80は、凹凸構造層20の屈折率より小さい、1.7未満の屈折率を有することが望ましい。プリズム構造80は、複数の略四角錐形状部分からなることが望ましい。略四角錐の側面の傾きは、発光層の材料および膜厚にも依存するが、約45度であることが好ましい。
【0072】
また、
図19(b)に示すように、光散乱性微粒子70を含む凹凸構造層20とプリズム構造80とを併用してもよい。
【0073】
上記のような構造は、ガラス基板のような透光性基板60上に、凹凸構造層20、プリズム構造80、陽極50、発光層40、陰極30などの各構成層を積層することにより得ることができる。また、透光性基板60、凹凸構造層20、プリズム構造80、陽極50などは、ロール−トゥ−ロール・プロセスにて製造することが可能である。また、有機材料からなる発光層40も、発光層40にポリマー材料などを用いることで、ロール−トゥ−ロール・プロセスにて製造することが可能である。ガラス基板上への素子構造部(陽極、陰極、および発光層)を積層して有機EL素子を得る工程と、プラスチック基板上に光散乱性フィルムを形成する工程と、有機EL素子と光散乱性フィルムを粘着剤を用いて密着させる工程とを含む従来法に比較して、ロール−トゥ−ロール・プロセスによる製造は、工程の簡略化、リードタイムの減少、および製造コストの削減の点において有利である。
【実施例】
【0074】
(実施例1)
発光材料として用いるAlq
3は556.3nmの中心波長を有するフォトルミネセンス(PL)発光スペクトルを有する。Alq
3のPL発光スペクトルは、449.4nm〜663.2nmの範囲に、スペクトル全体の95%が包含される。この波長範囲の上限および下限は、前述の式(II)および(III)において、k=1.1として求めたλ
1およびλ
2に相当する。
【0075】
ε
1をAlq
3の比誘電率(3.53)とし、ε
2をAlの比誘電率(−31.47+9.21i)とし、λ
1およびλ
2を式(I)のλに代入して、ν
1およびν
2を、それぞれ1/226nm
-1、および1/334nm
-1に設定した。
図10に示す二次元空間周波数スペクトルの表面プラズモン吸収抑制領域142において、1/334nm
-1〜1/226nm
-1を満たす空間周波数νの範囲における設計上の範囲をF(u,v)の値を最大値1.0(画像の階調としてはグレースケールの255)とし、当該範囲の外におけるF(u,v)の値を0.0(画像の階調としてはグレースケールの0)とした。一方、
図10に示す二次元空間周波数スペクトルの光散乱領域144において、1/334nm
-1未満の空間周波数νの範囲におけるF(u,v)の値を最大値1.0(画像の階調としてはグレースケールの255)とし、1/334nm
-1以上の空間周波数νの範囲におけるF(u,v)の値を0.0(画像の階調としてはグレースケールの0)として計算を行った。本計算では単純に1、0の2階調としたが、外部に取り出された光の色温度や、演色評価指数を考慮し、特定の波長の光取り出しを行いたい場合、そのために、特定の波長の光を抑えたい場合には、取り出したい波長におけるF(u,v)の値を最大値1.0(画像の階調としてはグレースケールの255)とし、抑えたい波長の光を0.0(画像の階調としてはグレースケールの0)に近い値とし、その間の波長をグレースケールでリニアにすることも可能である。このようにして得られた二次元空間周波数スペクトルを逆フーリエ変換して、凹凸構造を求めた。求めた凹凸構造の一部を
図12に示す。ここで、凹凸構造の高さが50nmになるように、凹凸構造のz軸方向の値を調整した。
【0076】
100μmの膜厚を有するPETフィルムの一方の面上に、ZrO
2のナノ粒子を含有する紫外線硬化型樹脂を塗布し、紫外線をパターン状に照射して、上記のようにして得られた凹凸構造を形成した。PETフィルムの他方の面と、ガラス基板の一方の面とを、粘着フィルムを用いて貼り合わせて、透光性基板60および凹凸構造層20の積層体を得た。本実施例の透光性基板60は、PETフィルム、粘着フィルムおよびガラス基板の積層構造を有する。また、得られた凹凸構造層20は、1.7の屈折率を有した。
【0077】
次に、
図7(a)に示すように、PETからなる透明支持体90上に、複数の四角錐状の凹部92を有する光取り出し凹凸フィルムを作製した。四角錐状の凹部92の配列ピッチおよび深さを、それぞれ、50μmおよび25μmとした。したがって、四角錐状の凹部の側面の傾斜角度は45度であった。この光取り出し凹凸フィルムの光取出し容易方向122および光取り出し困難方向124は
図8(b)に示す通りである。透光性基板60の凹凸構造層20が形成されていない面に対して、光取り出し凹凸フィルムの透明支持体80を貼り合わせた。
【0078】
次に、凹凸構造層20の上に、50nmの膜厚を有するITOからなる陽極50、70nmの膜厚を有するα−NPD膜および60nmの膜厚を有するAlq
3膜からなる発光層40、および100nmの膜厚を有するAlからなる陰極30を形成して、有機EL素子を得た。
【0079】
(実施例2)
ZrO
2のナノ粒子に加えて、30%のSiO
2光散乱性微粒子をさらに含む紫外線硬化型樹脂を用いて凹凸構造層20を形成したことを除いて、実施例1の手順を繰り返して、有機EL素子を得た。
【0080】
(比較例1)
図20に示す、光散乱領域144の存在しない、円環状の二次元空間周波数スペクトルにおいて、外側円周の空間周波数を1/226nm
-1に設定し、内側円周の空間周波数を1/334nm
-1に設定し、円環状領域のF(u,v)の値を最大値1.0(画像の階調としてはグレースケールの255)とし、円環状領域以外の部武運におけるF(u,v)の値を0.0(画像の階調としてはグレースケールの0)とした。このようにして得られた二次元空間周波数スペクトルを逆フーリエ変換して、凹凸構造を求めた。ここで、凹凸構造の高さが50nmになるように、凹凸構造のz軸方向の値を調整した。求めた凹凸構造を用いて、実施例1の手順を繰り返して、有機EL素子を得た。
【0081】
(比較例2)
凹凸構造層20を形成しなかったことを除いて、実施例1の手順を繰り返して、有機EL素子を得た。
【0082】
(評価1)
比較例2の有機EL素子から外部に取り出される全光束を1.0として、実施例1および2、ならびに比較例1の有機EL素子の光取り出し倍率を測定した。その結果、表面プラズモン吸収抑制領域のみからなる二次元空間周波数スペクトルを有する比較例1の有機EL素子は、1.6倍の光取り出し倍率を示した。一方、4つの表面プラズモン吸収抑制領域142および4つの光散乱領域144からなるからなる二次元空間周波数スペクトルを有する実施例1の有機EL素子は、1.82倍の光取り出し倍率を示した。この結果から、光取り出し凹凸フィルムの光取り出し困難方向に対応する光散乱領域144を設けることが、光取り出し効率の向上に有効であることが分かる。
【0083】
さらに、30%の光散乱性微粒子を含有する凹凸構造層20を用いた実施例2の有機EL素子は、2.00倍の光取り出し倍率を示した。この結果から、有機EL素子内部、具体的には凹凸構造層20内における光の散乱が、光取り出し効率の向上に有効であることが分かる。
【0084】
(実施例3)
実施例1で使用した
図12に示す凹凸構造では、凸部を示す黒色エリアが連続している部分が存在する。このような凹凸構造では、素子作製時に異物混入などの要因により、黒色エリアの連続部において陰極30および陽極50がショートして、リークスポットが発生する恐れがある。この点に鑑みて、waterShedのアルゴリズム(非特許文献1参照)を用いて、凸部の連続部を微小単位に分割した
図21に示す凹凸構造を得た。微小単位の面内最大寸法を0.1mmから1.5mmまで変化させた。
図21に示す凹凸構造を用いて実施例1の手順を繰り返して、120mm×120mmの発光区域を有する有機EL素子を形成した。
【0085】
(評価2)
得られた有機EL素子を、1000cd/m
2の輝度で発光させた。この状態で、有機EL素子の非発光点(リークスポット)の存在を、0.5m、1mおよび5mの距離から観察した。また、比較例2の有機EL素子から外部に取り出される全光束を1.0として、有機EL素子の光取り出し倍率を測定した。結果を第1表に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
第1表から分かるように、凹凸構造の微小単位の面内最大寸法を小さくするほど、リークスポットが目立たなくなる。実用上では1m以下の観察距離で使用することがほとんどないため、凹凸構造の微小単位の面内最大寸法を0.1mm以下とすることで十分な性能を有する有機EL素子を得ることができる。
【0088】
一方、凹凸構造の微小単位の面内最大寸法を減少させることは、凹凸構造のフーリエ変換像の高空間周波数成分を増大させることになる。第1表から、凹凸構造の微小単位の面内最大寸法を減少させるにつれて、光取り出し倍率も緩やかに減少することが分かる。光取り出し倍率の緩やかな減少は、高空間周波数成分の増大による最適設計からのズレに起因すると考えられる。
【0089】
(評価3)
実施例1の有機EL素子と、凹凸構造の微小単位の面内最大寸法を1.0mmとした実施例3の有機EL素子とについて、電圧と電流密度との相関を測定した。結果を
図22に示した。
【0090】
図22から、実施例3の有機EL素子の電流密度は、実施例1の有機EL素子よりも全体的に減少しており、凸部の連続部を微小単位に分割した効果が認められた。また、比較例2の有機EL素子から外部に取り出される全光束を1.0とした、実施例3の有機EL素子の光取り出し倍率は1.77倍であった。