特許第6565342号(P6565342)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6565342
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】蒸気発生装置および地熱発電システム
(51)【国際特許分類】
   F03G 4/00 20060101AFI20190819BHJP
   F24T 10/15 20180101ALI20190819BHJP
【FI】
   F03G4/00 511
   F24T10/15
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-111368(P2015-111368)
(22)【出願日】2015年6月1日
(65)【公開番号】特開2016-223377(P2016-223377A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2018年5月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】安藤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】長井 千明
(72)【発明者】
【氏名】川村 彩子
【審査官】 金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0245729(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0041500(US,A1)
【文献】 特開2009−162459(JP,A)
【文献】 特開平01−117990(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0174581(US,A1)
【文献】 米国特許第06789608(US,B1)
【文献】 特表2013−543948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03G 4/00
F24T 10/10−10/17
E21B 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービン式発電装置に備えたタービンを回転させた後の作動媒体が液体状態で供給され、供給された該作動媒体に地熱資源から熱量を伝導した後、該作動媒体を前記蒸気タービン式発電装置に供給する蒸気発生装置であって、
前記蒸気発生装置が、地中に埋設された単管よりなり、一方の端部に前記作動媒体を前記蒸気タービン式発電装置に供給するための作動媒体出口と、
他方の端部に前記作動媒体を前記蒸気タービン式発電装置から流入させる作動媒体入口と、
中間部に前記地熱資源と前記作動媒体との間で熱交換するための熱交換部と、
前記作動媒体入口と前記熱交換部との間に形成される作動媒体入口路と、
前記作動媒体出口と前記熱交換部との間に形成される作動媒体出口路と、を備え、
該熱交換部が、横臥状態に配置され
前記作動媒体出口路と地山との間に、断熱空間が設けられ、
前記作動媒体出口路の管径が、前記熱交換部より大きいことを特徴とする蒸気発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蒸気発生装置において、
前記断熱空間に、自硬性断熱材を充填することを特徴とする蒸気発生装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の蒸気発生装置を備えた地熱発電システムであって、
前記蒸気発生装置より供給された前記作動媒体にて、前記蒸気タービン式発電装置に備えたタービンを回転させて発電することを特徴とする地熱発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービン式発電装置に備えたタービンを回転させて発電する際に用いる作動媒体を供給するための蒸気発生装置、および蒸気発生装置を備えた地熱発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、地中から地熱流体を取り出し、該地熱流体にてタービンを回転させて発電する地熱発電装置が知られている。地熱流体は、地中に形成された地熱貯留槽に貯留した貯留物であることから不純物を大量に含んでいるため、これら不純物がスケールとなって地熱発電装置を構成する発電設備に付着しやすく、発電出力の減少や発電設備の早期劣化を招きやすい。
【0003】
そこで、引用文献1では、地熱流体を用いずに水等の液体にてタービンを回転させて発電するべく、地熱資源を利用して液体を受熱させることの可能な蒸気発生装置が開示されている。
【0004】
引用文献1の蒸気発生装置は、底部を閉塞した外管と、底部にオリフィスを設置した内管とよりなる二重管よりなり、該二重管の底部が地熱資源の高温度帯域中に達するよう地中に鉛直状に設置されている。そして、外管と内管との間の空間に前記液体を供給すると、外管の底部にて地熱資源と液体との間で熱交換が行われて前記液体は熱水となり、この熱水が内管に流入してオリフィスを通過することで蒸気となる。この蒸気がそのまま内管を上昇して地熱発電装置に供給され、タービンを回転して発電することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−227962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、引用文献1の蒸気発生装置は、外管の底部近傍にて一点集中的に液体を受熱させるシステムである。そして、地熱発電に広く用いられているフラッシュ式の地熱発電装置は、150℃以上の蒸気でタービンを回転させるものである。
【0007】
このため、引用文献1の蒸気発生装置では、地熱資源と液体との熱交換効率や液体が地熱発電装置に供給されるまでの間に生じる放熱を考慮し、地熱資源の高温度帯域の中でも特に250℃を超えるような高温となる深部まで二重管の底部を到達させている。しかし、このような構成では外管が高温に晒されることとなり、高温腐食が早期に生じやすく、また、二重管の全長が長大となるため、施工に要する費用が増大するとともに、内管の下部を外管に対して同軸に配置する作業も煩雑となる。
【0008】
加えて、内管と外管との間を流下する液体が、タービンを回転させた後に復水器にて冷却された状態となっていることから、内管内を上昇する蒸気は、上昇する過程でこの冷却された液体に熱を奪われやすい。このように地熱発電装置に供給される蒸気に温度低下が生じると、発熱効率が低減することから、内管に断熱処理を施す必要があり、内管を外管に設置する際の手間が煩雑となりやすい。
【0009】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、蒸気タービン式発電装置に備えたタービンを回転させる作動媒体に対して、簡略な構成で、かつ地熱資源の高温度帯域の中でも比較的低温である浅部から、発電可能な程度に前記タービンを回転させるための所定の熱量を伝導させ、作動媒体を発電に適した温度とすることの可能な、蒸気発生装置および蒸気発生装置を備えた発電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するため、本発明の蒸気発生装置は、蒸気タービン式発電装置に備えたタービンを回転させた後の作動媒体が液体状態で供給され、供給された該作動媒体に地熱資源から熱量を伝導した後、該作動媒体を前記蒸気タービン式発電装置に供給する蒸気発生装置であって、前記蒸気発生装置が、地中に埋設された単管よりなり、一方の端部に前記作動媒体を前記蒸気タービン式発電装置に供給するための作動媒体出口と、他方の端部に前記作動媒体を前記蒸気タービン式発電装置から流入させる作動媒体入口と、中間部に前記地熱資源と前記作動媒体との間で熱交換するための熱交換部と、前記作動媒体入口と前記熱交換部との間に形成される作動媒体入口路と、前記作動媒体出口と前記熱交換部との間に形成される作動媒体出口路と、を備え、該熱交換部が、横臥状態に配置され、前記作動媒体出口路と地山との間に、断熱空間が設けられ、前記作動媒体出口路の管径が、前記熱交換部より大きいことを特徴とする。また、上記の蒸気発生装置は、前記断熱空間に、自硬性断熱材を充填することを特徴とする。
【0011】
上記の蒸気発生装置によれば、蒸気発生装置が単管よりなることから、その構造がシンプルになるとともに、従来技術のような蒸気発生装置を二重管とする場合に必要としていた、内管の断熱処理や内管と外管とを同軸に配置するための作業等を不要にできるため、施工性が良いだけでなく施工費用を大幅に削減することが可能となる。
【0012】
また、前記蒸気発生装置の熱交換部が横臥状態に配置されることから、横方向の広がりをもって地中に存在する地熱資源に対して接触距離を長く確保できる。これにより、両者の間で熱交換時間を長く確保することができるため、熱交換部と接触する地熱資源が少なくとも150℃を超える温度を有するものであれば、250℃を超えるような高温を有していなくても、作動媒体に対して発電可能な程度に前記タービンを回転させるための所定の熱量を伝導し、発電に適した温度とすることが可能となる。
【0013】
このように、蒸気発生装置の熱交換部は、地熱資源の高温度帯域の中でも比較的低温である浅部に接触させればよいことから、地熱資源の高温度帯域を深く掘り下げる必要がないため、施工性が向上するだけでなく、蒸気発生装置をなす鋼管に対して、高温腐食の進行を遅滞させることも可能となる。
【0016】
上記の蒸気発生装置によれば、作動媒体入口路と作動媒体出口路が熱交換部を挟んだ両側に離間して配置されることから、作動媒体出口路を上昇する作動媒体は、作動媒体入口路を流下する液体状の作動媒体に熱を奪われることがない。また、作動媒体出口路と地山との間に断熱空間を設けることから、地表に近づくにしたがって温度が低下する地山にも作動媒体出口路を上昇する作動媒体は熱を奪われることがない。このため、発電可能な程度に前記タービンを回転させるための所定の熱量が伝導され、発電に適した温度となった状態の作動媒体を、無駄な放熱を回避しつつ、蒸気タービン式発電装置に供給することができ、蒸気タービン式発電装置における発電効率を大幅に向上させることが可能となる。
【0018】
上記の蒸気発生装置によれば、熱交換部にて発電可能な程度に前記タービンを回転させるための所定の熱量が伝導された作動媒体は、作動媒体出口路に入ると確実に減圧されることから効率よく沸騰して蒸気となるため、出口路を上昇する作動媒体の上昇速度を速めることが可能となる。
【0019】
上記の蒸気発生装置を備えた地熱発電システムは、前記蒸気発生装置より供給された前記作動媒体にて、前記蒸気タービン式発電装置に備えたタービンを回転させて発電することを特徴とする。
【0020】
上記の地熱発電システムによれば、作動媒体を蒸気発生装置から蒸気タービン式発電装置に供給し発電することができるため、地熱流体を用いる場合と比較して蒸気タービン式発電装置に劣化が生じにくい、また、蒸気発生装置が地熱資源の高温度帯域の中でも比較的低温である浅部に接触するため、高温腐食による劣化を抑制できる。これにより、地熱発電システム全体のメンテナンスが容易になるとともに、地熱発電システムを長期にわたり稼働させることが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、単管よりなる蒸気発生装置を地中に埋設し、中間部に備えた熱交換部を横臥状態で地熱資源の高温度帯域に接触させるのみの簡略な構成で、地熱資源の高温度帯域の中でも比較的低温である浅部にて、作動媒体に対して発電可能な程度に前記タービンを回転させるための所定の熱量を伝導させ、作動媒体を発電に適した温度とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施の形態における地熱発電システムの概略を示す図である。
図2】本実施の形態における蒸気発生装置の構築方法を示す図である(その1)
図3】本実施の形態における蒸気発生装置の構築方法を示す図である(その2)
図4】本実施の形態における蒸気発生装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の蒸気発生装置は、蒸気タービン式発電装置に備えたタービンを回転させて発電する際に用いる作動媒体を供給するための装置であり、蒸気タービン式発電装置とともに地熱発電システムを構成するものである。以下に、本発明の蒸気発生装置および地熱発電システムを、図1図4を用いて説明する。
【0024】
なお、地熱発電システム10に用いる作動媒体3は、蒸気となってタービン22を回転することができる流体であれば、水、アンモニア水、ペンタン等いずれを採用してもよい。
【0025】
蒸気発生装置1は、蒸気タービン式発電装置2が備えるタービン22を回転させた後の作動媒体3が流入するものであり、この流入した作動媒体3と地熱との間で熱交換をさせた後、発電に適した温度となった作動媒体3を蒸気にして再度蒸気タービン式発電装置2に供給するための装置である。そして、一方の端部には作動媒体3を蒸気タービン式発電装置2に供給するための作動媒体出口15が、他方の端部には作動媒体3を蒸気タービン式発電装置2から流入させるための作動媒体入口11がそれぞれ備えられ、中間部には作動媒体3と地熱資源4との間で熱交換を行う熱交換部13が備えられている。
【0026】
これら作動媒体出口15と作動媒体入口11はともに地表近傍に、熱交換部13は地熱貯留槽等の地熱資源4に接するようにそれぞれ配置されており、また、熱交換部13と作動媒体入口11との間に作動媒体入口路12、熱交換部13と作動媒体出口15との間には作動媒体出口路14が形成されている。つまり、蒸気発生装置1全体は、地盤中に埋設された単管より構成されており、本実施の形態では耐高温腐食性の鋼管を採用している。なお、管径は、従来の地熱井に用いられる鋼管と同様の約7〜8インチとしている。
【0027】
また、蒸気発生装置1との間で作動媒体3が循環される蒸気タービン式発電装置2は、少なくとも気水分離器21、タービン22、発電機23、復水器24、循環水タンク25及びポンプを備えており、地熱流体にて発電する際に広く採用されているフラッシュ式の発電装置と同様の設備である。
【0028】
上述する構成の蒸気発生装置1と蒸気タービン式発電装置2によりなる地熱発電システム10では、蒸気発生装置1の熱交換部13にて地熱資源4との間で熱交換された作動媒体3が、作動媒体出口路14に流入すると蒸気と熱水が混合した状態となる。これら作動媒体3は作動媒体出口路14を上昇し、作動媒体出口15を介して蒸気タービン式発電装置2に供給され、気水分離器21を通過することにより蒸気と熱水に分離された後、蒸気のみがタービン22に送られて発電機23を回して発電する。なお、熱水は、復水器24に供給される。
【0029】
一方、タービン22を回した作動媒体3は復水器24に供給され、気水分離器21にて分離された作動媒体3の熱水とともに、冷却水により凝縮されて液体となり、循環水タンク25に送られた後、ポンプ圧送により作動媒体入口11を介して蒸気発生装置1に流入する。流入した作動媒体3は、作動媒体入口路12を流下して再度熱交換部13に供給され、上記と同様の処理を繰り返す。こうして地熱発電システム10は、蒸気発生装置1と地熱発電設備2との間で作動媒体3を循環させながら、発電するものである。
【0030】
ところで、作動媒体3にてタービン22を回転し発電するためには、蒸気タービン式発電装置2に供給された際の作動媒体3が少なくとも150℃以上に達している必要がある。
【0031】
そこで、蒸気発生装置1の熱交換部13を、水平に配置して地熱資源4における横方向の広がりに沿って延在させることとし、熱交換部13と地熱資源4との接触距離を長く確保した。こうすると、熱交換部13を一点に集約させる場合と比較して、地熱資源4が低温であっても効率よく作動媒体3との熱交換を行うことができ、作動媒体3を発電に最適な所望の温度とすることが可能となる。
【0032】
これにより、作動媒体3が熱交換部13を通過する際に、発電可能な程度にタービン22を回転させるための熱量を地熱資源4から得るべく、熱交換部13が接する地熱資源4を、高温度帯域の中でも250℃を超えるような高温となる深部とする必要がない。よって、本実施の形態では、熱交換部13が接する地熱資源4を、図1で示すように、高温度帯域の中でも約150〜200℃の比較的低温である浅部とした。そして、熱交換部13を通過後の作動媒体3が、発電に適した温度として約200℃となるように、熱交換部13と地熱資源4との接触距離を設定した。
【0033】
なお、熱交換部13と接触する地熱資源4の温度が、150℃より低い場合、作動媒体3に対して発電可能な程度に前記タービン22を回転させるための熱量を伝導することが困難であり、200℃を大きく超えると、蒸気発生装置1をなす鋼管の高温腐食が早期に進行しやすい。
【0034】
また、熱交換部13と地熱資源4との接触距離は、作動媒体入口11から流入する際の作動媒体3の温度、熱交換部13が接している地熱資源4の温度、蒸気タービン式発電装置2が発電するべき発電量(一般には約2000Kw)、作動媒体3を気水分離器21に供給した際に得られる蒸気量(一般には作動媒体3全体に対して約20%)、熱交換部13を通過する作動媒体3の流速、作動媒体3として採用する液体の種類等を考慮し、適宜設定すれよい。
【0035】
上述したように、蒸気発生装置1の熱交換部13が横臥状態で地中に埋設されるので、熱交換部13を地熱資源4の高温度帯域の中でも比較的低温である浅部に対して、必要な接触距離をもって接触させることができる。このため、地熱資源の高温度帯域を深く掘り下げる必要がないことから、施工性が向上するだけでなく、蒸気発生装置1をなす鋼管に対して、高温腐食の進行を遅滞させることも可能となる。
【0036】
そして、蒸気発生装置1は、作動媒体出口15と作動媒体入口11とを地表近傍に離間して配置しており、熱交換部13を挟んで作動媒体入口路12と作動媒体出口路14がそれぞれ位置している。このように、作動媒体入口路12と作動媒体出口路14が接触しないため、熱交換部13を通過した後の作動媒体出口路14を上昇する作動媒体3は、熱交換部13を通過する前の作動媒体入口路12を流下する液体状の作動媒体3に、熱を奪われることがない。これにより、作動媒体3は、熱交換部13にて得た発電可能な程度にタービン22を回転させるための熱量の一部が無駄に消失することを回避し、発電に適した温度を維持しつつ、作動媒体出口15より蒸気タービン式発電装置2に供給されることとなる。
【0037】
なお、本実施の形態では、熱交換部13を水平に形成したが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、地熱資源4における横方向の広がり形状に応じて傾斜部を有するように配置する、もしくは曲線状に配置するものでもよく、横臥状態とは、鉛直方向に対して角度をもって延在するすべての状態を含むものである。
【0038】
同じく、作動媒体入口路12および作動媒体出口路14についても、必ずしも傾斜して配置することに限定されるものではなく、鉛直や曲線状に配置する構成としてもよい。
【0039】
次に、上述する構成の蒸気発生装置1の構築方法の一例を以下に示す。蒸気発生装置1は、いずれの方法にて構築してもよいが、本実施の形態では、方向・傾斜を自在にコントロールして計画方向に地盤を掘削する方法として知られている、コントロールボーリングにて構築する。
【0040】
なお、コントロールボーリングとしては、高温下でも動作可能な地熱井掘削時坑底情報検知システム(MWD)を搭載したダウンホールモーター(DHM)を使用して方位・傾斜を調整し掘削する方法や、屈曲させたい位置にスタビライザーを組み込み、このスタビライザーにて傾斜を調整して掘削する方法等、従来より地熱井を掘削する際に採用されているいずれの方法を採用してもよいことは言うまでもない。
【0041】
<パイロット孔の構築>
まず、図2で示すように、地表面上であって作動媒体出口15となる位置を発進側、作動媒体入口11となる位置を到達側として設定し、作動媒体出口15となる位置から、ドリルヘッド51を先端に装着したドリルロッド5を斜め下方に発進させ、ドリルヘッド51の掘削方向を制御しながら地熱資源4の目標深さまで掘削する。この後、地熱資源4の中を作動媒体入口11側に向かって横方向に掘削した後、作動媒体入口11となる位置に向かって斜め上方に掘削して地表に到達させる。
【0042】
<埋設管引込工>
次に、作動媒体入口11となる位置付近において、ドリルロッド5の先端からドリルヘッド51を取り外し、ドリルロッド5の先端に蒸気発生装置1をなす鋼管より僅かに大径の孔を掘削することの可能なバックリーマー53を接続し、このバックリーマー53にスイベル54を介して蒸気発生装置1をなす鋼管を接続・連結する。
【0043】
そして、図3で示すように、作動媒体出口15となる位置近傍にてドリルロッド5を張引することにより、バックリーマー53にてパイロット孔52を拡径しながら、その後に蒸気発生装置1をなす鋼管を、作動媒体入口11、熱交換部13、および作動媒体出口15を通過するように敷設する。
【0044】
ところで、地山は地表に近づくにつれてその温度が低下する。そこで、本実施の形態では、バックリーマー53に拡縮可能な拡径ビットを設置しておき、熱交換部13と作動媒体出口15との間に位置する作動媒体出口路14の削孔径を蒸気発生装置1をなす鋼管よりも大きく形成する。こうすると、作動媒体出口路14と蒸気発生装置1をなす鋼管との間には、図3で示すように、断熱空間16が形成され、作動媒体出口路14を上昇する作動媒体3は、熱交換部13にて得た熱量を地山に奪われることがない。
【0045】
なお、断熱空間16は空洞のままでもよいが、蒸気発生装置1をなす鋼管が安定して設置されるよう、本実施の形態では図4で示すように、断熱空間16に自硬性断熱材17を充填している。なお、自硬性断熱材17としては、ポーラスコンクリートや断熱性モルタル等、断熱性を有する自硬性材料であればいずれを採用してもよい。
【0046】
上述するように、蒸気発生装置1が単管よりなり、その構造がシンプルなことから、煩雑な手間を要することなく従来工法を採用して施工を行うことができるため、施工性が良いだけでなく、施工費用を大幅に削減することが可能となる。
【0047】
本発明の蒸気発生装置1および地熱発電システム10は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0048】
例えば、本実施の形態では、作動媒体入口11、作動媒体入口路12、熱交換部13、作動媒体出口路14および作動媒体出口15の管径を一律としたが、必ずしもこれに限定するものではない。例えば、熱交換部13より作動媒体出口路14および作動媒体出口15の管径を大きくすると、熱交換部13より流入する作動媒体3はより確実に減圧され、効率よく沸騰して蒸気となるため、作動媒体出口路14を上昇する作動媒体3の上昇速度をより速めることが可能となる。
【0049】
また、本実施の形態では、作動媒体出口路14と地山の間にのみ断熱空間16を設けたが、作動媒体入口路12と地山との間にも断熱空間16を設置し、蒸気発生装置1に流入する作動媒体3の温度を保温するようにしてもよい。このとき、蒸気発生装置1に流入する作動媒体3の温度を、約50℃〜100℃にしておくと、熱交換部13を通過する際に、発電可能な程度にタービン22を回転させるための熱量を、地熱資源14から効率よく得ることが可能となる。
【0050】
さらに、本実施の形態では、蒸気タービン式発電装置2にフラッシュ式の発電装置を採用したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、バイナリー式の発電装置を採用してもよい。
【0051】
また、本実施の形態では、作動媒体3を蒸気発生装置1と蒸気タービン式発電装置2との間で循環させたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、循環水タンク25において、使用後の作動媒体3と新たな作動媒体3の入れ替えを行ってもよい。
【0052】
本発明によれば、蒸気発生装置1が、単管を地中に埋設したものであって、中間部に備えた熱交換部13を、横臥状態で地熱資源の高温度帯域の中でも比較的低温である浅部に、所定の接触距離をもって接触させるのみの簡略な構成にて、作動媒体3に対して、発電可能な程度にタービン22を回転させるための所定の熱量を伝導させ、作動媒体3を発電に適した温度とすることが可能となる。
【0053】
また、蒸気発生装置1の高温腐食による劣化を抑制できるため、地熱発電システム10全体のメンテナンスが容易になるとともに、地熱発電システム10を長期にわたり稼働させることが可能となる。
【符号の説明】
【0054】
1 蒸気発生装置
11 作動媒体入口
12 作動媒体入口路
13 熱交換部
14 作動媒体出口路
15 作動媒体出口
16 断熱空間
17 自硬性断熱材
2 蒸気タービン式発電装置
21 気水分離器
22 タービン
23 発電機
24 復水器
25 循環水タンク
3 作動媒体
4 地熱資源
5 ドリルロッド
51 ドリルヘッド
52 パイロット孔
53 バックリーマー
54 スイベル
図1
図2
図3
図4