特許第6565350号(P6565350)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6565350フローコントローラ及びそれを用いたガスクロマトグラフ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6565350
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】フローコントローラ及びそれを用いたガスクロマトグラフ装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/32 20060101AFI20190819BHJP
【FI】
   G01N30/32 A
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-116674(P2015-116674)
(22)【出願日】2015年6月9日
(65)【公開番号】特開2017-3390(P2017-3390A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2017年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114030
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿島 義雄
(72)【発明者】
【氏名】増田 真吾
(72)【発明者】
【氏名】古賀 聖規
(72)【発明者】
【氏名】福島 大貴
【審査官】 大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−101176(JP,A)
【文献】 特開平09−043220(JP,A)
【文献】 特開平10−330737(JP,A)
【文献】 特開2008−076255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアガス供給流路中に配置された流路抵抗と、
前記流路抵抗の下流側に設けられた開度調節可能な制御弁と、
前記流路抵抗の上流側の供給圧力pinを検出する圧力検出部と、
前記流路抵抗の上流側の供給圧力pinと下流側の圧力との差圧Δpを検出する差圧検出部とを備えるフローコントローラであって、
第一設定供給圧力Pin,ref1における差圧Δpと全流量ftemp1との相関を示す第一検量線と、第一設定供給圧力Pin,ref1より大きい第二設定供給圧力Pin,ref2における差圧Δpと全流量ftemp2との相関を示す第二検量線とを記憶する記憶部を備え、
前記圧力検出部で検出された供給圧力pinと、前記差圧検出部で検出された差圧Δp情報と、前記第一検量線と、前記第二検量線とに基づいて、キャリアガスの全流量fが算出され、
前記圧力検出部で検出された供給圧力pinが第一設定供給圧力Pin,ref1未満であるときには、下記式(1)に基づいて、キャリアガスの全流量fが算出され、
供給圧力pinが第一設定供給圧力Pin,ref1以上第二設定供給圧力Pin,ref2未満であるときには、下記式(2)に基づいて、キャリアガスの全流量fが算出され、
供給圧力pinが第二設定供給圧力Pin,ref2以上であるときには、下記式(3)に基づいて、キャリアガスの全流量fが算出されることを特徴とするフローコントローラ。
f=ftemp1×(pin/Pin,ref1) ・・・(1)
f=((pin−Pin,ref1)×ftemp2+(Pin,ref2−pin)×ftemp1)/(pin,ref2−Pin,ref1) ・・・(2)
f=((pin−Pin,ref1)×ftemp2−(pin−Pin,ref2)×ftemp1)/(pin,ref2−Pin,ref1) ・・・(3)
【請求項2】
大気圧p’を検出する大気圧検出部を備え、
前記第一検量線及び前記第二検量線は、大気圧P’refで作成されたものであり、
前記大気圧検出部で検出された大気圧p’と、大気圧P’refとに基づいて、キャリアガスの全流量fが補正されることを特徴とする請求項1に記載のフローコントローラ。
【請求項3】
請求項1〜請求項2のいずれか1項に記載のフローコントローラと、
試料が注入され当該試料を気化する試料導入部と、
前記試料導入部に接続されたキャリアガス供給流路と、
前記試料導入部に接続されたカラムと、
前記キャリアガス供給流路中を流通するキャリアガスの全流量fを計測する制御部とを備えることを特徴とするガスクロマトグラフ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリアガスの全流量fを計測するためのフローコントローラ及びそれを用いたガスクロマトグラフ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスクロマトグラフ装置では、試料気化室内に液体試料を注入し、気化した試料をキャリアガスに乗せてカラムに導入している。このとき、試料導入部に供給されるキャリアガスの全流量fは、分析の定量、定性を正確にするべく精密に制御される必要があるため、差圧センサと圧力センサとを用いてキャリアガス供給流路中のキャリアガスの全流量fを計測している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図3は、従来のガスクロマトグラフ装置の一例を示す概略構成図である。
ガスクロマトグラフ装置101は、試料が注入され試料を気化する試料気化室10と、カラム11と、検出器12と、キャリアガス供給流路20と、パージ流路30と、スプリット流路40と、制御部150と、フローコントローラ160とを備える。
【0004】
試料気化室10の頭部に設けられた開口には、シリコンゴム製のセプタム(図示せず)が嵌挿されている。また、試料気化室10の内部には、キャリアガスを導入するためのキャリアガス供給流路20の出口端と、セプタムで発生する不所望の成分を外部へ排出するためのパージ流路30の入口端と、キャリアガスとともに余分な気化試料を外部へ排出するためのスプリット流路40の入口端と、カラム11の入口端とが接続されている。このような試料気化室10を用いた分析時において、分析者は、液体試料が収容されたマイクロシリンジ13の針をセプタムに突き刺すことにより、試料気化室10内部に液体試料を滴下することができるようになっている。そして、セプタムは弾力性を有しているため、針が挿入されたときに開いた孔は、針が抜去されると即座に閉塞する。
【0005】
キャリアガス供給流路20には、上流側から順に、キャリアガスが封入されたボンベ14と、キャリアガスに適度な圧力降下を生じさせる層流管(流路抵抗)21と、キャリアガスの全流量fを調節するための開度調節可能な制御プロポーショナルバルブ(制御弁)24とが配置されている。また、層流管21の上流側の供給圧力pinを検出する圧力センサ(圧力検出部)22と、層流管21の上流側の供給圧力pinと下流側の圧力との差圧Δpを検出する差圧センサ(差圧検出部)23とが設けられている。
【0006】
そして、パージ流路30には、入口圧力pを検出する圧力センサ31と、開閉可能なパージバルブ32と、パージ圧力pを検出する圧力センサ33とが設けられており、スプリット流路40には、開閉可能な排出弁41が配置されている。したがって、試料気化室10内の入口圧力pが急激に上昇したときには、排出弁41を開放することにより試料気化室10内の一定割合のキャリアガスや試料がスプリット流路40を介して外部へ排出される。
【0007】
制御部150は、パーソナルコンピュータにより具現化され、CPU151とメモリ(記憶部)152とを備える。また、CPU151が処理する機能をブロック化して説明すると、圧力センサ22からの供給圧力pinと差圧センサ23からの差圧Δpとを所定時間間隔で取得する取得部51aと、キャリアガス供給流路20中のキャリアガスの全流量fを所定時間間隔で計測する計測部151bと、得られた全流量f等に基づいてフローコントローラ160を制御する流量制御部151cとを有する。
【0008】
このようなガスクロマトグラフ装置101による計測では、まず、全所定流量fのキャリアガスを試料気化室10に供給する。そして、試料気化室10内部に液体試料が滴下されると、試料気化室10内で気化された試料がキャリアガスとともにカラム11に送出され、カラム11で成分分離される。
【0009】
次に、ガスクロマトグラフ装置101の計測部151bでキャリアガスの全流量fを計測する計測方法について説明する。この計測方法は、フローコントローラ160の共通検量線を作成する作成工程(A’)と、ガスクロマトグラフ装置101にフローコントローラ160を取り付ける取付工程(B’)と、共通検量線に基づいて全流量fを算出する算出工程(C’)とを含む。
【0010】
(A’)作成工程
設計者等は、所定の大気圧P’ref時にフローコントローラ160を用いて供給圧力pinを設定供給圧力Pin,ref(例えば600kPa)に制御した上で、制御プロポーショナルバルブ24を制御することで差圧Δpを差圧ΔPにしたときの実測全流量Fを計測する。さらに、制御プロポーショナルバルブ24を制御することで差圧Δpを圧力値ΔPにしたときの実測全流量Fを計測する。このように、所定の大気圧P’ref時に供給圧力pinを設定供給圧力Pin,refに制御したままで、様々な差圧ΔPにしたときの各実測全流量Fを計測していく。そして、差圧Δpと全流量ftempとの相関を示す共通検量線を作成する。
【0011】
(B’)取付工程
設計者等は、フローコントローラ160をガスクロマトグラフ装置101に取り付け、共通検量線をメモリ152に記憶させる。つまり、共通検量線は、ユニット(ガスクロマトグラフ装置)の機差にかかわらず、全てのユニットについて使用される。
【0012】
(C’)算出工程
分析者等による試料分析時において、計測部151bでは、まず、差圧センサ23で検出された差圧Δpを共通検量線に代入することにより、仮全流量ftempを算出する。次に、計測部151bは、圧力センサ22で検出された供給圧力pinと、仮全流量ftempと、設定供給圧力Pin,refとを下記式(4)に代入することにより、全流量fを求める。
f=ftemp×(pin/Pin,ref) ・・・(4)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平10−300737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上述したような計測方法では、共通検量線は、作成工程(A’)において設定供給圧力Pin,ref(例えば600kPa)に制御された上で作成されているため、算出工程(C’)において式(4)を用いているが、供給圧力pinと設定供給圧力Pin,refとの差が大きいほど、算出される全流量fの精度が低くなるという問題点があった。
【0015】
また、取付工程(B’)では、作成工程(A’)で作成された共通検量線をメモリ152に記憶させており、作成工程(A’)での層流管21の抵抗値と算出工程(C’)での層流管21の抵抗値とが異なる場合には、算出された全流量fに誤差が生じるという問題点もあった。
そこで、本発明は、キャリアガスの全流量fを正確に計測することができるフローコントローラ及びそれを用いたガスクロマトグラフ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するためになされた本発明のフローコントローラは、キャリアガス供給流路中に配置された流路抵抗と、前記流路抵抗の下流側に設けられた開度調節可能な制御弁と、前記流路抵抗の上流側の供給圧力pinを検出する圧力検出部と、前記流路抵抗の上流側の供給圧力pinと下流側の圧力との差圧Δpを検出する差圧検出部とを備えるフローコントローラであって、第一設定供給圧力Pin,ref1における差圧Δpと全流量ftemp1との相関を示す第一検量線と、第一設定供給圧力Pin,ref1より大きい第二設定供給圧力Pin,ref2における差圧Δpと全流量ftemp2との相関を示す第二検量線とを記憶する記憶部を備え、前記圧力検出部で検出された供給圧力pinと、前記差圧検出部で検出された差圧Δp情報と、前記第一検量線と、前記第二検量線とに基づいて、キャリアガスの全流量fが算出されるようにしている。
【0017】
ここで、「第一設定供給圧力Pin,ref1」とは、設計者等によって予め決められた任意の数値であり、フローコントローラの使用時(仕様)における供給圧力pinの下限値であることが好ましい。
また、「第二設定供給圧力Pin,ref2」とは、設計者等によって予め決められた任意の数値であり、フローコントローラの使用時(仕様)における供給圧力pinの上限値であることが好ましい。
また、「差圧Δp情報」とは、差圧Δp等である。
【0018】
本発明のフローコントローラには、第一設定供給圧力Pin,ref1で作成された第一検量線と、第二設定供給圧力Pin,ref2で作成された第二検量線(2本以上の検量線)が記憶される。よって、フローコントローラの使用時に、圧力検出部で検出された供給圧力pinが第一設定供給圧力Pin,ref1に近ければ、主に第一検量線を用いて全流量fを算出し、一方、圧力検出部で検出された供給圧力pinが第二設定供給圧力Pin,ref2に近ければ、主に第二検量線を用いて全流量fを算出することになる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明のフローコントローラによれば、圧力検出部で検出された供給圧力pinとの差が小さい「第一設定供給圧力Pin,ref1」の第一検量線や「第二設定供給圧力Pin,ref2」の第二検量線を用いているので、キャリアガスの全流量fを正確に計測することができる。
【0020】
(その他の課題を解決するための手段及び効果)
また、本発明のフローコントローラは、前記圧力検出部で検出された供給圧力pinが第一設定供給圧力Pin,ref1未満であるときには、下記式(1)に基づいて、キャリアガスの全流量fが算出され、供給圧力pinが第一設定供給圧力Pin,ref1以上第二設定供給圧力Pin,ref2未満であるときには、下記式(2)に基づいて、キャリアガスの全流量fが算出され、供給圧力pinが第二設定供給圧力Pin,ref2以上であるときには、下記式(3)に基づいて、キャリアガスの全流量fが算出されるようにしてもよい。
【0021】
f=ftemp1×(pin/Pin,ref1) ・・・(1)
f=((pin−Pin,ref1)×ftemp2(Pin,ref2−pin)×ftemp1)/(pin,ref2−Pin,ref1) ・・・(2)
f=((pin−Pin,ref1)×ftemp2(pin−Pin,ref2)×ftemp1)/(pin,ref2−Pin,ref1) ・・・(3)
【0022】
以上のように、本発明のフローコントローラによれば、「第一設定供給圧力Pin,ref1」の第一検量線と、「第二設定供給圧力Pin,ref2」の第二検量線とを用いて内分または外分しているので、キャリアガスの全流量fを正確に計測することができる。
【0023】
また、本発明のフローコントローラは、大気圧p’を検出する大気圧検出部を備え、前記第一検量線及び前記第二検量線は、大気圧P’refで作成されたものであり、前記大気圧検出部で検出された大気圧p’と、大気圧P’refとに基づいて、キャリアガスの全流量fが補正されるようにしてもよい。
以上のように、本発明のフローコントローラによれば、フローコントローラ使用時の大気圧がp’であったときに、(p−P’ref+p’)と置き換えることで補正することができるため、大気圧変化の影響を低減できる。
【0024】
そして、本発明のフローコントローラは、上述したようなフローコントローラと、試料が注入され当該試料を気化する試料導入部と、前記試料導入部に接続されたキャリアガス供給流路と、前記試料導入部に接続されたカラムと、前記キャリアガス供給流路中を流通するキャリアガスの全流量fを計測する制御部とを備えるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係るガスクロマトグラフ装置の一例を示す概略構成図。
図2】第一検量線と第二検量線とを示す図。
図3】従来のガスクロマトグラフ装置の一例を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0027】
図1は、本発明に係るガスクロマトグラフ装置の一例を示す概略構成図である。なお、ガスクロマトグラフ装置101と同様のものについては、同じ符号を付すことにより説明を省略する。
ガスクロマトグラフ装置1は、試料が注入され試料を気化する試料気化室10と、カラム11と、検出器12と、キャリアガス供給流路20と、パージ流路30と、スプリット流路40と、制御部50と、フローコントローラ60とを備える。
【0028】
制御部50は、パーソナルコンピュータにより具現化され、CPU51とメモリ(記憶部)52とを備える。また、CPU51が処理する機能をブロック化して説明すると、圧力センサ22からの供給圧力pinと差圧センサ23からの差圧Δpとを所定時間間隔で取得する取得部51aと、キャリアガス供給流路20中のキャリアガスの全流量fを所定時間間隔で算出する計測部51bと、得られた全流量f等に基づいてフローコントローラ60を制御する流量制御部51cとを有する。
【0029】
さらに、メモリ52には、第一設定供給圧力Pin,ref1(例えば400kPa)における差圧Δpと全流量ftemp1との相関を示す第一検量線と、第二設定供給圧力Pin,ref2(例えば800kPa)における差圧Δpと全流量ftemp2との相関を示す第二検量線とを記憶するための検量線記憶領域52aが設けられている。図2は、ガスクロマトグラフ装置1により得られた第一検量線と第二検量線とを示す図である。
【0030】
計測部51bは、圧力センサ22からの供給圧力pinと、差圧センサ23からの差圧Δpと、第一検量線と、第二検量線とに基づいて、キャリアガスの全流量fを算出する制御を行う。具体的には、まず計測部51bは、供給圧力pinが、(a)第一設定供給圧力Pin,ref1未満か、(b)第一設定供給圧力Pin,ref1以上第二設定供給圧力Pin,ref2未満か、(c)第二設定供給圧力Pin,ref2以上かのいずれであるかを判定する。
【0031】
(a)第一設定供給圧力Pin,ref1未満であるとき
計測部51bは、差圧センサ23で検出された差圧Δpを第一検量線に代入することにより、仮全流量ftemp1を算出する。次に、計測部51bは、圧力センサ22で検出された供給圧力pinと、仮全流量ftemp1と、第一設定供給圧力Pin,ref1とを式(1)に代入することにより、全流量fを求める。つまり、第一検量線を用いて全流量fを求める。
【0032】
(b)第一設定供給圧力Pin,ref1以上で第二設定供給圧力Pin,ref2未満であるとき
計測部51bは、差圧センサ23で検出された差圧Δpを第一検量線に代入することにより、仮全流量ftemp1を算出するとともに、第二検量線に代入することにより、仮全流量ftemp2を算出する。次に、計測部51bは、圧力センサ22で検出された供給圧力pinと、仮全流量ftemp1と、仮全流量ftemp2と、第一設定供給圧力Pin,ref1と、第二設定供給圧力Pin,ref2とを式(2)に代入することにより、全流量fを求める。つまり、第一検量線と第二検量線とを用いて内分することで全流量fを求める。
【0033】
(c)第二設定供給圧力Pin,ref2以上であるとき
計測部51bは、差圧センサ23で検出された差圧Δpを第一検量線に代入することにより、仮全流量ftemp1を算出するとともに、第二検量線に代入することにより、仮全流量ftemp2を算出する。次に、計測部51bは、圧力センサ22で検出された供給圧力pinと、仮全流量ftemp1と、仮全流量ftemp2と、第一設定供給圧力Pin,ref1と、第二設定供給圧力Pin,ref2とを式(3)に代入することにより、全流量fを求める。つまり、第一検量線と第二検量線とを用いて外分することで全流量fを求める。
【0034】
ここで、ガスクロマトグラフ装置1の計測部51bでキャリアガスの全流量fを計測する計測方法について説明する。この計測方法は、フローコントローラ60をガスクロマトグラフ装置1に取り付ける取付工程(A)と、第一検量線を作成する第一検量線作成工程(B1)と、第二検量線を作成する第二検量線作成工程(B2)と、第一検量線及び第二検量線に基づいて全流量fを算出する算出工程(C)とを含む。
【0035】
(A)取付工程
設計者等は、フローコントローラ60をガスクロマトグラフ装置1に取り付ける。
【0036】
(B1)第一検量線作成工程
設計者や分析者等は、ガスクロマトグラフ装置1を用いて所定の大気圧P’ref時に供給圧力pinを供給圧力Pin,ref1(例えば400kPa)に制御した上で、制御プロポーショナルバルブ24を制御することで差圧Δpを差圧ΔPにしたときの実測全流量Fを計測する。さらに、制御プロポーショナルバルブ24を制御することで差圧Δpを圧力値ΔPにしたときの実測全流量Fを計測する。このように、所定の大気圧P’ref時に供給圧力pinを供給圧力Pin,ref1に制御したままで、様々な差圧ΔPに設定したときの各実測全流量Fを計測していく。そして、差圧Δpと全流量ftemp1との相関を示す第一検量線を作成する。
【0037】
(B2)第二検量線作成工程
設計者や分析者等は、ガスクロマトグラフ装置1を用いて所定の大気圧P’ref時に供給圧力pinを供給圧力Pin,ref2(例えば800kPa)に制御した上で、制御プロポーショナルバルブ24を制御することで差圧Δpを差圧ΔPにしたときの実測全流量Fを計測する。さらに、制御プロポーショナルバルブ24を制御することで差圧Δpを圧力値ΔPにしたときの実測全流量Fを計測する。このように、所定の大気圧P’ref時に供給圧力pinを供給圧力Pin,ref2に制御したままで、様々な差圧ΔPに設定したときの各実測全流量Fを計測していく。そして、差圧Δpと全流量ftemp2との相関を示す第二検量線を作成する。
【0038】
(C)算出工程
分析者等による試料分析時に、計測部51bは、上述したような制御を行う。
【0039】
以上のように、本発明のガスクロマトグラフ装置1によれば、「第一設定供給圧力Pin,ref1」の第一検量線と、「第二設定供給圧力Pin,ref2」の第二検量線とを用いて内分または外分することにより、キャリアガスの全流量fを正確に計測することができる。
【0040】
<他の実施形態>
<1>上述したガスクロマトグラフ装置1において、式(1)〜(3)を用いてキャリアガスの全流量fを算出する構成としたが、これに代えて大気圧p’を検出する大気圧検出部を備え、大気圧検出部で検出された大気圧p’と大気圧P’refとに基づいて、キャリアガスの全流量fが補正されるような構成としてもよい。
【0041】
<2>上述したガスクロマトグラフ装置1において、式(1)〜(3)を用いてキャリアガスの全流量fを算出する構成としたが、これに代えて(a)〜(c)の区間に供給圧力pinによる全流量fの変化が非線形である区間(変曲点がある区間)がある場合には、供給圧力pinを変数とする二次以上(多項式)の補正式によって補正を行うような構成としてもよい。
【0042】
<3>上述したガスクロマトグラフ装置1において、第一検量線作成工程(B1)を用いて第一検量線を作成する構成としたが、これに代えて下記の第一検量線作成工程(B1’)を用いて第一検量線を作成するような構成としてもよい。なお、第二検量線も同様に作成する構成としてもよいことはもちろんである。
【0043】
(B1’)第一検量線作成工程
設計者や分析者等は、フローコントローラ60を用いて供給圧力pinを供給圧力Pin,ref(例えば400kPa)に制御した上で、制御プロポーショナルバルブ24を制御することで基準全流量Frefにしたときの実測基準差圧ΔPref1を計測する。そして、基準全流量Frefと実測基準差圧ΔPref1とを用いて下記式(5)を作成して、様々な差圧Δpを式(5)に代入して全流量ftemp1を算出していくことにより、差圧Δpと全流量ftemp1との相関を示す第一検量線を作成する。
temp1=Fref×(Δp/ΔPref1) ・・・(5)
【0044】
上記のような第一検量線作成工程(B1’)のように第一検量線を規格化すると、二次以上の影響は低減できないが、基準全流量Frefにしたときの実測基準差圧ΔPref1を計測するのみで第一検量線を作成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、ガスクロマトグラフ装置等に利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
20:キャリアガス供給流路
21:層流管(流路抵抗)
22:圧力センサ(圧力検出部)
23:差圧センサ(差圧検出部)
24:制御プロポーショナルバルブ(制御弁)
52:メモリ(記憶部)
60:フローコントローラ
図1
図2
図3