(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の導電層(X)は、カルボキシル基を有するジオール化合物(a1)、数平均分子量500〜8000の他のポリオール(a2)および有機ジイソシアネート(a3)を反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(a4)と、ポリアミノ化合物(a5)とを反応させて得られるポリウレタンポリウレア樹脂(A)と、2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(B)と、前記ポリウレタンポリウレア樹脂(A)と前記エポキシ樹脂(B)との合計100重量部に対して導電性フィラー(D):10〜700重量部と、アジリジン系硬化剤(E)を、前記ポリウレタンポリウレア樹脂(A)中のカルボキシル基1モルに対し、アジリジニル基を0.05〜4モルの範囲で含有し、ゲル分率が30〜90重量%である、センサー用導電層形成材料より構成される。
本発明の電極シートは、当該センサー用導電層形成材料を硬化せしめて成る、導電層(X)自体を電極シートとして使用することができる。また他の使用方法として、導電層(X)、絶縁層(Y)、誘電層(Z)を目的に応じて適宜積層することにより、静電容量型近接センサー、静電容量型生体センサー、生体インピーダンス測定機用の電極シートとして使用することができる。
【0021】
<ポリウレタンポリウレア樹脂(A)>
センサー用導電層形成材料を構成する熱硬化性ポリウレタンポリウレア樹脂(A)は、カルボキシル基を有するジオール化合物(a1)と、数平均分子量500〜8000である、(a1)以外のポリオール(a2)及び有機ジイソシアネート(a3)とを反応させて得られる、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(a4)と、ポリアミノ化合物(a5)とを反応させて得られるものである。
【0022】
カルボキシル基を有するジオール化合物(a1)としては、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールペンタン酸等のジメチロールアルカン酸や、ジヒドロキシコハク酸、ジヒドロキシ安息香酸等が挙げられる。特に反応性、溶解性点から、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸が好ましい。
【0023】
数平均分子量500〜8000である、(a1)以外のポリオール(a2)は、一般にポリウレタン樹脂を構成するポリオール成分として知られている、カルボキシル基を有するジオール化合物(a1)以外のポリオールである。前記ポリオール(a2)の数平均分子量(Mn)は、得られるポリウレタンポリウレア樹脂(A)のフレキシブル性、耐熱性、接着強度、溶解性等を考慮して適宜決定されるが、好ましくは1000〜5000である。Mnが500未満であると、得られるポリウレタンポリウレア樹脂(A)中のウレタン結合が多くなり過ぎ、ポリマー骨格の柔軟性が低下して、電極シートを構成する他層との接着性が低下する傾向があり、また、Mnが8000を越えると、ジオール化合物(a1)由来のカルボキシル基の、ポリウレタンポリウレア樹脂(A)中における数が減少する。その結果、エポキシ樹脂との反応点が減少するため、得られる導電層(X)の耐熱性が低下する傾向にある。
【0024】
数平均分子量500〜8000である、(a1)以外のポリオール(a2)としては、各種のポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、ポリブタジエングリコール類等が使用できる。
【0025】
ポリエーテルポリオール類としては、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフランなどの重合体または共重合体等が挙げられる。
【0026】
ポリエステルポリオール類としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4−ブチレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、もしくはダイマージオール等の飽和または不飽和の低分子ジオール類とアジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、もしくはセバシン酸等のジカルボン酸類、またはこれらの無水物類を反応させて得られるポリエステルポリオール類や、n−ブチルグリシジルエーテル、又は2−エチルヘキシルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル類、バーサティック酸グリシジルエステル等のモノカルボン酸グリシジルエステル類と上記のジカルボン酸類の無水物類とをアルコール類などの水酸基含有化合物の存在下で反応させて得られるポリエステルポリオール類、または環状エステル化合物を開環重合して得られるポリエステルポリオール類が挙げられる。
【0027】
ポリカーボネートポリオール類としては、例えば、
1)グリコールまたはビスフェノールと炭酸エステルとの反応生成物、あるいは、
2)グリコールまたはビスフェノールにアルカリの存在下でホスゲンを反応させて得られる反応生成物等が使用できる。
【0028】
上記1)または2)の場合に用いられるグリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル、2,2,8,10−テトラオキソスピロ〔5.5〕ウンデカンが挙げられる。
【0029】
また、上記1)または2)の場合に用いられるビスフェノールとしては、例えば、ビスフェノールAやビスフェノールF等のビスフェノール類や、これらのビスフェノール類にエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させた化合物等が挙げられる。
【0030】
また、上記1)の場合に用いられる炭酸エステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。
【0031】
数平均分子量500〜8000である、(a1)以外のポリオール(a2)として例示した各種ポリオールは、単独で用いても、2種類以上併用してもよい。
【0032】
更に、得られるポリウレタンポリウレア樹脂(A)の性能が失われない範囲内で、カルボキシル基を有するジオール化合物(a1)と、数平均分子量500〜8000である、(a1)以外のポリオール(a2)及び有機ジイソシアネート(a3)とを反応させる際に、カルボキシル基を有するジオール化合物(a1)以外の低分子ジオール類を併用しても良い。併用可能な低分子ジオール類としては、たとえば、数平均分子量500〜8000である、(a1)以外のポリオール(a2)の製造に用いられる各種低分子ジオール等が挙げられる。
【0033】
ウレタンプレポリマー(a4)を合成する際に、カルボキシル基を有するジオール化合物(a1)と、数平均分子量500〜8000である、(a1)以外のポリオール(a2)とは、数平均分子量500〜8000の他のポリオール(a2)1モルに対して、カルボキシル基を有するジオール化合物(a1)0.1モル〜4.0モルとなる比率で用いることが好ましく、0.2モル〜3.0モルとなる比率で用いることがより好ましい。(a2)1モルに対する(a1)の使用量が0.1モルより少ないと、エポキシ樹脂(B)と架橋可能なカルボキシル基が少なくなり、耐熱性が低下する傾向にある。また、4.0モルより多いと、接着性が低下する傾向にある。
【0034】
有機ジイソシアネート(a3)としては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族イソシアネート、またはこれらの混合物を使用できるが、特にイソホロンジイソシアネートが好ましい。
【0035】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4′−ベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、またはキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0036】
脂肪族ジイシシアネートとしては、例えば、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、またはリジンジイソシアネート等が挙げられる。
【0037】
脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、またはメチルシクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。
【0038】
末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(a4)は、カルボキシル基を有するジオール化合物(a1)と、数平均分子量500〜8000である、(a1)以外のポリオール(a2)及び有機ジイソシアネート(a3)とを反応させることにより得られる。末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(a4)を合成する際の条件は、イソシアネート基が過剰になるようにする他にとくに限定はないが、イソシアネート基/水酸基の当量比が1.2/1〜3/1の範囲内になるような割合で、カルボキシル基を有するジオール化合物(a1)と、数平均分子量500〜8000である、(a1)以外のポリオール(a2)及び有機ジイソシアネート(a3)とを反応させることが好ましい。また、反応温度は通常常温〜120℃であるが、更に製造時間、副反応の制御の面から好ましくは60〜100℃である。
【0039】
ポリウレタンポリウレア樹脂(A)は、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(a4)と、ポリアミノ化合物(a5)とを反応させて得られる。
【0040】
ポリアミノ化合物(a5)としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジアミンの他、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等の水酸基を有するアミン類も使用することができる。なかでも、イソホロンジアミンが好適に使用される。
【0041】
末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(a4)とポリアミノ化合物(a5)とを反応させてポリウレタンポリウレア樹脂(A)を合成するときには、分子量を調整する為に反応停止剤を併用することができる。反応停止剤としては、ジ−n−ブチルアミン等のジアルキルアミン類、ジエタノールアミン等のジアルカノールアミン類や、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類が使用できる。
【0042】
末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(a4)、ポリアミノ化合物(a5)及び必要に応じて反応停止剤を反応させる際の条件は、とくに限定はないが、ウレタンプレポリマー(a4)が有するイソシアネート基に対する、ポリアミノ化合物(a5)及び反応停止剤中のアミノ基の合計の当量比が0.5〜1.3の範囲内であることが好ましい。当量比が0.5未満の場合には、耐熱性が不十分になりやすく、1.3より多い場合には、ポリアミノ化合物(a5)や反応停止剤が未反応のまま残存し、臭気が残りやすくなる。
【0043】
ポリウレタンポリウレア樹脂(A)を合成する際に用いられる溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤が挙げられる。これらの溶剤は、1種を単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0044】
得られるポリウレタンポリウレア樹脂(A)の重量平均分子量は、5000〜100000の範囲にあることが好ましい。重量平均分子量が5000に満たない場合には、耐熱性が劣る傾向にあり、100000を越える場合には、接着性が低下する傾向にある。
【0045】
<エポキシ(B)>
本発明においてエポキシ樹脂(B)は、1分子に2個以上のエポキシ基を有する化合物である。その性状は、液状および固形状を問わない。
エポキシ樹脂(B)は、グリジシルエーテル型エポキシ樹脂、グリジシルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、環状脂肪族(脂環型)エポキシ樹脂等が好ましい。
【0046】
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂は、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、α−ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、およびテトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン等が挙げられる。
【0047】
前記グリシジルアミン型エポキシ樹脂は、例えばテトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール、トリグリシジルメタアミノフェノール、およびテトラグリシジルメタキシリレンジアミン等が挙げられる。
【0048】
前記グリシジルエステル型エポキシ樹脂は、例えばジグリシジルフタレート、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、ジグリシジルテトラヒドロフタレート等が挙げられる。
【0049】
前記環状脂肪族(脂環型)エポキシ樹脂は、例えばエポキシシクロヘキシルメチル−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(エポキシシクロヘキシル)アジペートなどが挙げられる。
これらの中でもビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、およびテトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタンは、接着強度および耐熱性がより向上するため好ましい。
【0050】
本発明で用いられるセンサー用導電層形成材料において、エポキシ樹脂と(B)とポリウレタンポリウレア樹脂(A)との比率は、ポリウレタンポリウレア樹脂(A)100重量部に対して、エポキシ樹脂(B)3〜200重量部であることが好ましく、5〜100重量部であることがより好ましい。(A)100重量部に対して(B)が3重量部より少ないと、耐熱性が低くなる傾向がある。一方、(B)が200重量部より多いと、接着性が低下する傾向がある
【0051】
<導電性フィラー(D)>
また、センサー用導電層形成材料に含有される導電性フィラーは、導電層(X)に導電性を付与するものであり、導電性フィラーとしては、金属フィラー、カーボンフィラー及びそれらの混合物が用いられる。
【0052】
金属フィラーとしては、金、銀、銅、白金、錫、パラジウム、アルミニウム、鉛、亜鉛、鉄およびニッケル等の金属ならびにその合金からなる導電性金属粒子、前記導電性金属の複合粒子、ITO、ATO、FTO等の金属酸化物粒子、カーボンフィラーとしてはカーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンファイバーなどの炭素材料等が挙げられる。複合粒子としては、銀コート銅粒子、銀コートニッケル粒子、金コート銅粒子、および金コートニッケル粒子等が挙げられる。なかでも、導電率の高い銀フィラーが好ましく、特にフィラー同士の接触を得やすい比表面積0.5〜2.5m2/gで
ある銀フィラーが好ましい。また、導電性フィラーの形状としては、球状、フレーク状、樹枝状、繊維状などが挙げられる。
【0053】
センサー用導電層形成材料における導電性フィラーの含有量は、ポリウレタンポリウレア樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)との合計100重量部に対して、導電性フィラー10〜700重量部の割合にすることが好ましい。導電性フィラーの含有量が10重量部を下回ると、導電性フィラー同士が十分に接触せず、高い導電性が得られない。また、導電性フィラーの含有量が700重量部を超えても、導電層(X)の表面抵抗値は下がらなくなり、電導率が飽和状態に達する上に、導電層(X)中の導電性フィラーの量が過多となり、導電層(X)のフレキシブル性、密着性や接着力が低下する。
【0054】
<アジリジン硬化剤(E)>
また、本発明でセンサー用導電層形成材料に用いられるアジリジン系硬化剤(E)としては、アジリジニル基を2つ以上有する化合物であることが好ましい。具体的には、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N‘−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N‘−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)等が挙げられる。
【0055】
アジリジン系硬化剤(E)を使用することにより、アジリジニル基とポリウレタンポリウレア樹脂(A)中のカルボキシル基との高い反応性を利用して、特別なエージングを必要とせず、両者を反応させ、半硬化状態にさせる。つまり、両者を反応させ、センサー用導電層形成材料のゲル分率を30〜90重量%とすることによって、加熱圧着時のセンサー用導電層形成材料の流動を低減することができる。導電層形成材料のゲル分率は、50〜85重量%であることが好ましく、60〜80重量%であることがより好ましい。
【0056】
センサー用導電層形成材料のゲル分率が30重量%未満、即ちポリウレタンウレア樹脂(A)の大半が未反応で残っている場合、加熱圧着工程におけるセンサー用導電層形成材料の流動の低減をほとんど期待できない。一方、センサー用導電層形成材料のゲル分率が90重量%を超える場合、加熱圧着工程に至る前にポリウレタンウレア樹脂(A)の大半がアジリジン系硬化剤(E)と既に反応・硬化してしまっているので、被着体との接着性を確保しにくくなる。
【0057】
ゲル分率が30〜90重量%のセンサー用導電層形成材料を得るためには、センサー用導電層形成材料において、ポリウレタンポリウレア樹脂(A)中のカルボキシル基1モルに対して、アジリジニル基が0.05〜4モルの範囲でアジリジン系硬化剤(E)を含有することが重要であり、0.2〜2モルの範囲で含有することが好ましく、0.4〜1モルの範囲で含有することがより好ましい。
【0058】
ポリウレタンポリウレア樹脂(A)中のカルボキシル基1モルに対して、アジリジン系硬化剤(E)のアジリジニル基が0.05モル倍未満の場合、加熱圧着工程時の導電層形成材料の流動を効果的に低減するほどには、センサー用導電層形成材料を得る際に、ポリウレタンポリウレア樹脂(A)の硬化・架橋が進行しない。他方、カルボキシル基1モルに対して、アジリジニル基が4モルより多いと、ポリウレタンポリウレア樹脂(A)の反応・硬化が過度に進行してしまうので、加熱圧着工程の際にセンサー用導電層形成材料が被着体を十分に濡らすことができず、ポリウレタンポリウレア樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)との反応も期待できず、被着体に対する接着性が確保できない。
【0059】
本発明のセンサー用導電層形成材料のゲル分率は30〜90重量%であり、50〜85重量%であることが好ましく、60〜80重量%であることがより好ましい。
【0060】
つまり、アジリジン系硬化剤(E)を使用し、センサー用導電層形成材料のゲル分率を30〜90重量%とすることによって、加熱圧着時のセンサー用導電層形成材料のはみ出しを低減することができる。センサー用導電層形成材料のゲル分率が30重量%未満、即ちポリウレタンウレア樹脂(A)の大半が未反応で残っている場合、加熱圧着工程におけるセンサー用導電層形成材料のはみ出しの低減をほとんど期待できない。一方、ゲル分率が90重量%を超える場合、加熱圧着工程に至る前にポリウレタンウレア樹脂(A)の大半がアジリジン系硬化剤(E)と既に反応・硬化してしまっているので、被着体との接着性を確保しにくくなる。
【0061】
尚、本発明でいう「ゲル分率」とは以下のようにして求めることができる。
100メッシュの金網を幅30mm、長さ100mmに裁断し、重量(W1)を測定する。
続いて、剥離性フィルム上に形成したセンサー用導電層形成材料から剥離性フィルを除去した幅10mm、長さ80mmのセンサー用導電層形成材料を、それぞれ前述の金網で包み試験片とし、重量(W2)を測定する。作製した試験片をメチルエチルケトン(以下、MEKという)中に浸漬させ室温で1時間振後、試験片をMEKから取り出し、150℃で10分間乾燥した後、重量(W3)を測定する。下記計算式[I]を用いて、溶解せずに金網に残った成分の重量分率をゲル分率として算出する。
【0062】
(W3−W1)/(W2−W1)×100 [%] [I]
【0063】
<その他>
センサー用導電層形成材料には、ポリウレタンポリウレア樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)との反応や、エポキシ樹脂(B)の単独での反応を促進させる目的で、硬化促進剤、硬化剤を含有させることができる。エポキシ樹脂(B)の硬化促進剤としては、3級アミン化合物、ホスフィン化合物、イミダゾール化合物等が使用でき、硬化剤としては、ジシアンジアミド、カルボン酸ヒドラジド、酸無水物等が使用できる。
【0064】
硬化促進剤のうち、3級アミン化合物としては、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノネン−5等が挙げられる。また、ホスフィン化合物としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等が挙げられる。また、イミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール化合物が挙げられ、更にはイミダゾール化合物とエポキシ樹脂を反応させて溶剤に不溶化したタイプ、またはイミダゾール化合物をマイクロカプセルに封入したタイプ等の保存安定性を改良した潜在性硬化促進剤が挙げられるが、これらの中でも、潜在性硬化促進剤が好ましい。
【0065】
硬化剤としてのカルボン酸ヒドラジドとしては、コハク酸ヒドラジド、アジピン酸ヒドラジド等が挙げられる。また、酸無水物としては、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水トリメリット酸等が挙げられる。
【0066】
これらの硬化促進剤または硬化剤としては、それぞれ2種類以上を併用してもよく、その使用量は合計で(硬化促進剤または硬化剤のどちらか一方のみを使用する場合も含まれる)、エポキシ樹脂(B)100重量部に対して0.1〜30重量部の範囲であることが好ましい。
【0067】
また、センサー用導電層形成材料には、導電性、接着性、耐熱性を劣化させない範囲で、シランカップリング剤、酸化防止剤、顔料、染料、粘着付与樹脂、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング調整剤,充填剤,難燃剤等を添加してもよい。
【0068】
センサー用導電層形成材料には、耐熱性や耐折り曲げ性等の性能を損なわない範囲で、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、ユリア系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂などを含有させることができる。
【0069】
<絶縁層(Y)>
絶縁層(Y)は、センサー用絶縁層形成材料から形成されてなり、フレキシブル性で柔軟性に富む。絶縁層(Y)は、導電層(X)と電気的に外界と絶縁させ、導電層(X)を物理的に保護する
センサー用絶縁層形成材料が、フィルム・シート状である場合は、その材料をそのまま、若しくは必要に応じて接着剤を介して貼りあわせて用いることができる。
センサー用絶縁層形成材料が、液状である場合は、塗工したのちに乾燥、必要に応じて硬化させて形成した樹脂塗膜などを使用することができる。
【0070】
センサー用絶縁層形成材料は、具体的には、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルウレタンやポリエーテルウレタン、ポリカーボネートウレタンのようなウレタン樹脂、ポリエステルウレタンウレアやポリカーボネートウレタンウレアのようなウレタンウレア樹脂、ポリエステルウレアやポリエーテルウレア、ポリカーボネートウレアのようなウレア樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂のようなオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコールやポリビニルブチラールのようなポリアセタール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノキシ系樹脂、ポリフェノール樹脂、ナイロン樹脂、ビニロン樹脂、アラミド樹脂、セルロース樹脂などの合成樹脂を主成分とし、必要に応じてこれら樹脂を架橋させるための硬化剤やその促進のための触媒、その他塗工性、安定性、耐久性等を付与するための種々の添加剤を含む樹脂組成物、またはそれらを用いた不織布、木綿、絹、麻、ウールなどの天然繊維、ガラス繊維等が挙げられる。
【0071】
絶縁層(Y)は、導電層(X)と電気的に外界と絶縁させ、導電層(X)を物理的に保護するための実用上最適な膜厚で良いが、薄すぎると導電層(X)の物理的保護や、外界との絶縁性確保が困難となる。また厚すぎるとフレキシブル性が損なわれるため、5μm以上、100000μm未満であることが好ましい。
【0072】
以下に、絶縁層(Y)の例として、ポリウレタンポリウレア樹脂、およびカルボキシル基含有変性エステル樹脂の2例について説明する。
ポリウレタンウレア樹脂の例
【0073】
カルボキシル基を有するジオール化合物(c1)、数平均分子量500〜8000の他のポリオール(c2)および有機ジイソシアネート(c3)を反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(c4)と、ポリアミノ化合物(c5)とを反応させて得られるポリウレタンポリウレア樹脂(A1)と、2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(B1)とアジリジン系硬化剤(F)を、前記ポリウレタンポリウレア樹脂(A1)中のカルボキシル基1モルに対し、アジリジニル基を0.05〜4モルの範囲で含有する、ポリウレタンポリウレア樹脂組成物からなるセンサー用絶縁層形成材料は、硬化されて絶縁層(Y)となる。
【0074】
導電層(X)と積層される絶縁層(Y)によって、貼着・硬化後においては柔軟性に富むと共に、導電層(X)の導電性の耐久を向上する。また上記範囲でアジリジン系硬化剤(F)を含有することによって、貼着・硬化時の過度な伸びを抑制することができる。アジリジン系硬化剤(F)は、前記ポリウレタンポリウレア樹脂(A1)中のカルボキシル基1モルに対し、アジリジニル基を0.2〜2モルの範囲で含有することが好ましく、0.4〜1モルの範囲で含有することがより好ましい。
【0075】
ポリウレタンポリウレア樹脂(A1)中のカルボキシル基1モルに対して、アジリジン系硬化剤(F1)のアジリジニル基が0.05モル倍未満の場合、ポリウレタンポリウレア樹脂中のカルボン酸の多くが未反応で存在するため、加熱貼付する際に、センサー用絶縁層形成材料が過度に伸びることによって、機械的強度の低下を発生させる。他方、カルボキシル基1モルに対して、アジリジニル基が4モルより多いと、センサー用絶縁層形成材料の流動性が過度に抑制され、絶縁層(Y)を製造する際、導電層(X)や誘電層(Z)との密着性が低下する。
センサー用絶縁層形成材料に含有されるポリウレタンポリウレア樹脂(A1)としては、導電層形成材料で例示した、ポリウレタンポリウレア樹脂(A)と同様のものを挙げることができる。
【0076】
2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(B1)についても、センサー用導電層形成材料を構成するエポキシ樹脂(B)と同様のものを挙げることができる。また、アジリジン系硬化剤(E1)についても、センサー用導電層形成材料を構成する、アジリジン系硬化剤(E)と同様のものを挙げることができる。
【0077】
エポキシ樹脂(B1)とポリウレタンポリウレア樹脂(A1)との比率も、エポキシ樹脂(B)とポリウレタンポリウレア樹脂(A)との比率と同様に、ポリウレタンポリウレア樹脂(A1)100重量部に対して、エポキシ樹脂(B1)3〜200重量部であることが好ましく、5〜100重量部であることがより好ましい。
【0078】
さらにセンサー用導電層形成材料と同様に、センサー用絶縁層形成材料には、耐熱性や耐屈曲性等の性能を損なわない範囲で、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、ユリア系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂などを含有させることができる。
【0079】
また、ポリウレタンポリウレア樹脂(A1)とエポキシ樹脂(B1)との反応や、エポキシ樹脂(B1)の単独での反応を促進させる目的で、硬化促進剤、硬化剤を含有させることができる点についても、センサー用導電層形成材料の場合と同様である。
【0080】
また、フィルム形成能を有するセンサー用絶縁層形成材料の場合は、接着性、耐熱性を劣化させない範囲で、シランカップリング剤、酸化防止剤、顔料、染料、粘着付与樹脂、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング調整剤,充填剤,難燃剤等を添加してもよい。
本事例の絶縁層(Y)のゲル分率は30〜90重量%であり、50〜85重量%であることが好ましく、60〜80重量%であることがより好ましい。
【0081】
つまり、アジリジン系硬化剤(E)を使用し、センサー用絶縁層形成材料のゲル分率を30〜90重量%とすることによって、加熱圧着時の接着剤層のはみ出しを低減することができる。センサー用絶縁層形成材料のゲル分率が30重量%未満、即ちポリウレタンウレア樹脂(A)の大半が未反応で残っている場合、加熱圧着工程における接着剤層のはみ出しの低減をほとんど期待できない。一方、センサー用絶縁層形成材料のゲル分率が90重量%を超える場合、加熱圧着工程に至る前にポリウレタンウレア樹脂(A)の大半がアジリジン系硬化剤(E)と既に反応・硬化してしまっているので、被着体との接着性を確保しにくくなる。
【0082】
また、アジリジン系硬化剤(E1)を使用し、センサー用絶縁層形成材料のゲル分率を30〜90重量%とすることによって、センサー電極の過度の伸びを抑制し、機械的強度を保持することができる。
【0083】
ゲル分率が30重量%未満、即ちポリウレタンウレア樹脂(C)の大半が未反応で残っている場合、センサー用絶縁層形成材料が過度に伸びることによって、機械的強度の低下といった不良を発生させる。一方、センサー用絶縁層形成材料のゲル分率が90重量%を超える場合、該センサー用絶縁層形成材料のの流動性が過度に抑制され、製造工程において、剥離性フィルム、およびセンサー電極を構成する他の層との密着性が低下する。
【0084】
尚、本発明でいう「ゲル分率」とは以下のようにして求めることができる。
100メッシュの金網を幅30mm、長さ100mmに裁断し、重量(W1)を測定する。続いて、剥離性フィルム上に形成したセンサー用絶縁層形成材料から剥離性フィルムを除去した幅10mm、長さ80mmのセンサー用絶縁層形成材料をそれぞれ前述の金網で包み試験片とし、重量(W2)を測定する
。作製した試験片をメチルエチルケトン(以下、MEKという)中に浸漬させ室温で1時間振後、試験片をMEKから取り出し、150℃で10分間乾燥した後、重量(W3)を測定する。下記計算式[I]を用いて、溶解せずに金網に残った成分の重量分率をゲル分率として算出する。
【0085】
(W3−W1)/(W2−W1)×100 [%] [I]
【0086】
以下にセンサー用絶縁層形成材料の一例として、カルボキシル基含有変性エステル樹脂を含むセンサー用絶縁層形成材料について詳細に説明する。
センサー用絶縁層形成材料は、カルボキシル基含有変性エステル樹脂(A3)、エポキシ基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、およびブロック化イソシアネート基含有化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種である化合物(B3)、および熱硬化助剤(C3)を含むものであり、これを硬化せしめて絶縁層(Y)となる。
カルボキシル基含有変性エステル樹脂の例
【0087】
カルボキシル基含有変性エステル樹脂は、ポリオール化合物(a3)と、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b3)とを反応させてカルボキシル基含有エステル樹脂(c3)を生成し、前記カルボキシル基含有エステル樹脂(c3)と1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d3)とを反応させて側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e3)を生成し、さらに、側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e3)に脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b)を反応させることにより得ることができる。
【0088】
本発明で用いるポリオール化合物(a3)は、2個以上の水酸基を有し、さらにその構造中に重合度2以上の繰り返し単位を有するものである。また、ポリオール化合物(a3)としては水酸基を2個含有する化合物が好ましく用いられ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」ともいう)測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量が、好ましくは500〜50000の化合物である。ポリオール化合物(a3)としては、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリブタジエンポリオール類、およびポリシロキサンポリオール類などが挙げられる。なお、本願において、特に断らない限り、重量平均分子量は、GPC測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
【0089】
本発明に用いるポリエステルポリオール類としては、例えば、多官能アルコール成分と二塩基酸成分とが縮合反応したポリエステルポリオールがある。多官能アルコール成分のうちジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3'−ジメチロール
ヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールAなどが挙げられ、3個以上の水酸基を有する多官能アルコール成分としては、トリメチロールエタン、ポリトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ポリトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、アラビトール、キシリトール、ガラクチトール、グリセリン等が挙げられる。
【0090】
二塩基酸成分としては、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸等の脂肪族あるいは芳香族二塩基酸ないしはそれらの無水物が挙げられる。
【0091】
また、β−ブチロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−ヘプタノラクトン、α−メチル−β−プロピオラクトン等のラクトン類等の環状エステル化合物の開環重合により得られるポリエステルポリオールも使用できる。
【0092】
リン原子を有するポリエステルポリオールも使用することができ、具体的には、2−(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−イル)メチルコハク酸あるいはその酸無水物と、エチレングリコールとの重縮合物、または2−(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−オキサイド−10−ホスファフェナントレン−10−イル)メチルコハク酸−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−エステル、あるいはその重縮合によって得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0093】
ポリエステルポリオールにおいて具体的には、クラレ株式会社のクラレポリオールPシリーズを用いることができる。そのなかでもP−1041、P−2041、P−2010、P−2020、P−1030、P−2030は絶縁信頼性と耐熱性があるため好ましい。
【0094】
本発明に用いられるポリカーボネートポリオール類とは、下記一般式(1)で示される構造を、その分子中に有するものである。
【0095】
一般式(1)
−[−R
8−O−CO−]
m−
(式中、R
8は、2価の有機残基、mは、1以上の整数を表す。)
【0096】
ポリカーボネートポリオールは、例えば、(1)グリコールまたはビスフェノールと炭酸エステルとの反応、(2)グリコールまたはビスフェノールにアルカリの存在下でホスゲンを作用させる反応などで得られる。
【0097】
(1)の製法で用いられる炭酸エステルとして具体的には、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどが挙げられる。
【0098】
(1)および(2)の製法で用いられるグリコールまたはビスフェノールとして具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3,3'−ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、あるいはビスフェノールAやビスフェノールF等のビスフェノール類、前記ビスフェノール類にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させたビスフェノール類等も用いることができる。これらの化合物は1種または2種以上の混合物として使用することができる。
【0099】
ポリカーボネートポリオールにおいて具体的には、クラレ株式会社のクラレポリオールCシリーズを用いることができる。そのなかでもPMHC−1050、PMHC−2050、C−1090、C−2090、C−1065N、C−2065N、C−1015N、C−2015Nは柔軟性があるため好ましい。また、宇部興産株式会社のエタナコールUC−100、UM−90(1/3)、UM−90(1/1)、UM−90(3/1)は耐熱性に優れるため好ましい。
【0100】
本発明に用いるポリエーテルポリオール類としては、例えば、テトラヒドロフラン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの重合体、共重合体、およびグラフト共重合体;
ヘキサンジオール、メチルヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール若しくはこれらの混合物の縮合により得られるポリエーテルポリオール類;
ビスフェノールAやビスフェノールF等にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させてなるビスフェノール類等の芳香族ジオール類;
トリメチロールエタン、ポリトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ポリトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、アラビトール、キシリトール、ガラクチトール、グリセリン等の多価アルコールを原料の一部として用いて合成されたポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドのブロック共重合体またはランダム共重合体、ポリテトラメチレングリコール、テトラメチレングリコールとネオペンチルグリコールとのブロック共重合体またはランダム共重合体等のポリエーテルポリオール類;
などの水酸基が2個以上のものを用いることができる。
【0101】
本発明に用いるポリブタジエンポリオール類としては、例えば、その分子内の不飽和結合を水添したものも含み、ポリエチレン系ポリオール、ポリプロピレン系ポリオール、ポリブタジエン系ポリオール、水素添加ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、水素添加ポリイソプレンポリオール等が挙げられる。
【0102】
ポリブタジエンポリオールの市販品としては、日本曹達株式会社のNISSSO PB(Gシリーズ)、出光石油化学株式会社のPoly−Pd等の両末端に水酸基を有する液状ポリブタジエン;日本曹達株式会社のNISSSO PB(GIシリーズ)、三菱化学株式会社のポリテールH、ポリテールHA等の両末端に水酸基を有する水素添加ポリブタジエン;出光石油化学株式会社製のPoly−iP等の両末端に水酸基を有する液状C5系重合体;出光石油化学株式会社製のエポール、クラレ株式会社製のTH−1、TH−2、TH−3等の両末端に水酸基を有する水素添加ポリイソプレンなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0103】
本発明に用いられるポリシロキサンポリオール類としては、一般式(2)および(3)で表される化合物が挙げられる。
【0105】
(Xは、水酸基を表し、R
1、R
2はそれぞれ炭素数1〜6のアルキレン基を表し、nは、5以上の整数を表す。)
【0107】
(Yは、水酸基を表し、R
3は炭素数1〜6のアルキル基、R
4、R
5、R
6は、それぞれ炭素数1〜6のアルキレン基、R
7は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表し、n
は、5以上の整数を表す。)
【0108】
これらポリオール化合物(a3)の中でも、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールからなるポリエステルジオール、1,6−ヘキサンジオールのみをグリコールとして使用してなるポリカーボネートポリオールや、1,6−ヘキサンジオールと3−メチル−1,5−ペンタンジオールとをグリコールとして使用してなるポリカーボネートジオール、1,9−ノナンジオールと2−メチル−1,8−オクタンジオールとをグリコールとして使用してなるポリカーボネートジオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、もしくはテトラメチレングリコールとネオペンチルグリコールとの共重合ポリエーテルポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリシロキサンポリオール等は、骨格の柔軟性、耐熱性、耐加水分解性に優れることから、本発明のカルボキシル基含有変性エステル樹脂としての電気絶縁性、屈曲性、耐熱性、耐湿性等に優れ、特に好ましい。
【0109】
本発明において、これらポリオール化合物(a3)は、単独で使用しても良いし、複数を併用しても良い。
【0110】
本発明は、前記ポリオール化合物(a3)と脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b3)とを反応させて得られるカルボキシル基含有エステル樹脂(c3)中のエステル結合基が、嵩高い置換基で保護されていることを最大の特徴とする。
【0111】
本発明で用いる脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b3)としては、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、メチル無水ナジック酸、水素化メチル無水ナジック酸、スチルエンドスチレンテトラヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸等の脂環式二塩基酸無水物;水添トリメリット酸無水物、水添ピロメリット酸無水物等の三塩基酸以上の脂環式多塩基酸無水物;無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、無水トリメリット酸等の芳香族二塩基酸無水物;無水ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の三塩基酸以上の芳香族多塩基酸無水物を挙げることができる。
【0112】
これら酸無水物基含有化合物(b3)の中でも、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、メチル無水ナジック酸、水素化メチル無水ナジック酸等は、ポリオール化合物(a3)との反応によってカルボキシル基含有エステル樹脂(c3)を生成する際に、絶縁信頼性に劣るとされているエステル結合基を嵩高い置換基で保護し、この嵩高い置換基で保護されたエステル結合基によって主鎖が構成されるため、従来のポリエステル骨格を主鎖として用いた樹脂に比べ、高い接着性を保持したまま、絶縁信頼性、耐熱性等を著しく向上できることから特に好ましい。また、無水トリメリット酸や無水ピロメリット酸等は、ポリオール化合物(a3)との反応によってカルボキシル基含有エステル樹脂(c3)の末端カルボキシル基の数を増加させることができ、続く1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d3)との反応において、高分子量化できるという点で本発明では好ましい。高分子量化により樹脂の凝集力が増大するため、フレキシブル性を保持したまま、塗膜形成後もより耐性に優れる強靭な塗膜を形成することができるという点で好ましい。
【0113】
本発明で任意に用いるヒドロキシル基含有化合物(a3−1)は、ヒドロキシル基を1個以上有する化合物であるが、前記「ポリオール化合物(a3)」に属する化合物を除く化合物であり、その代表例としては、例えば、分子中に1個のヒドロキシル基を有するモノアルコール化合物(a3−1−1)、分子中に2個のヒドロキシル基を有するジオール化合物(a3−1−2)、分子中に3個以上のヒドロキシル基を有する化合物(a3−1−3)を挙げることができる。これらは、分子中に、ヒドロキシル基と、ヒドロキシル基以外の官能基を併有していてもよい。また、単独で使用してもよいし、複数を併用して用いてもよい。
【0114】
分子中に1個のヒドロキシル基を有するモノアルコール化合物(a3−1−1)としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、ターシャリーブタノール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコールなどの脂肪族モノアルコール;
シクロヘキサノール等の脂環族モノアルコール;
ベンジルアルコール、フルオレノール、等の芳香族モノアルコール;
フェノール、メトキノン等のフェノール類;
ヒドロキシル基以外の官能基を併有するモノアルコール化合物として、12−ヒドロキシステアリン酸等のヒドロキシル基含有カルボン酸化合物、グリシドールなどのヒドロキシル基含有エポキシ化合物、オキセタンアルコールなどのヒドロキシル基含有オキセタン化合物が挙げられる。その他、片末端メトキシ化ポリエチレングリコール、片末端メトキシ化ポリプロピレングリコール、モノアルコールを開始剤としたカプロラクトン付加重合物、などのオリゴマー型モノアルコールが挙げられる。
【0115】
本発明において、これら分子中に1個のヒドロキシル基を有するモノアルコール化合物(a3−1−1)を用いる場合、得られるカルボキシル基含有エステル樹脂(c3)の末端を封止することができるため、意図的に低分子量のカルボキシル基含有変性エステル樹脂を合成する際など、分子量の調整が必要な時に、好適に用いることができる。また、ヒドロキシル基以外の官能基を併有するヒドロキシル基含有化合物を使用した場合、カルボキシル基含有エステル樹脂(c3)の末端にカルボキシル基以外の官能基を導入することができるため、カルボキシル基含有変性エステル樹脂の末端変性が必要な時に、好適に用いることができる。本発明において、ヒドロキシル基の反応性や重合制御を考慮すると、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、シクロヘキサノール、12−ヒドロキシステアリン酸、グリシドール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等を用いることが好ましい。
【0116】
また、分子中に2個のヒドロキシル基を有するジオール化合物(a3−1−2)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3,5−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3,3'−ジメチロールヘプタン、プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、3−ブチル−3−エチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール,トリシクロデカンジメタノール、シクロペンタジエンジメタノール、ダイマージオール、水素添加ビスフェノールA、スピログリコール等の脂肪族あるいは脂環族ジオール類;
1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,2−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、4,4'−メチレンジフェノール、4,4'−(2−ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4'−ジヒドロキシビフェノール、o−,m−,およびp−ジヒドロキシベンゼン、4,4'−イソプロピリデンフェノール、1,2−インダンジオール、1,3−ナフタレンジオール、1,5−ナフタレンジオール、1,7−ナフタレンジオール、9,9'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9'−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオ
レン等の芳香族ジオール類等を挙げることができる。その他、リン原子含有ジオール、硫黄原子含有ジオール、臭素原子含有ジオールなどが挙げられる。
【0117】
また、ヒドロキシル基以外の官能基を有する化合物も挙げられる。ヒドロキシル基以外に、例えば、3級アミノ基を含有する化合物としては、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロピルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ブチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ヘキシルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)オクチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ベンジルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシルアミンなどの3級アミノ基含有ジオール化合物が挙げられ、また、カルボキシル基を含有する化合物としては、例えば、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロピオン酸、3−ヒドロキシサリチル酸、4−ヒドロキシサリチル酸、5−ヒドロキシサリチル酸、2−カルボキシ−1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
【0118】
中でも、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロピオン酸は、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b3)と反応させて得られる、カルボキシル基含有エステル樹脂(c3)の末端カルボキシル基の数を増加させることができ、続く1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d3)との反応において、高分子量化できるという点で本発明では好ましい。また、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アニリン等の3級アミノ基含有ジオール化合物を使用する場合、最終的に得られる塗膜の凝集力が増大し、可撓性を保持したまま、より耐性に優れる強靭な塗膜を形成することができるという点で好ましい。
【0119】
また、分子中に3個以上のヒドロキシル基を有する化合物(a3−1−3)としては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、アラビトール、キシリトール、ガラクチトール、グリセリン等の多価アルコール化合物が挙げられる。
【0120】
本発明において、これら分子中に3個以上のヒドロキシル基を有する化合物(a3−1−3)を用いる場合、得られるカルボキシル基含有エステル樹脂(c3)の末端カルボキシル基の数を増加させることができるため、最終生成物の高分子量化が可能となり、硬化塗膜の耐性を向上することができる。従って本発明において硬化塗膜の耐性をさらに向上する目的で、必要に応じて使用すればよい。これら分子中に3個以上のヒドロキシル基を有する化合物(a3−1−3)の中でも、反応制御の面でトリメチロールプロパンやペンタエリスリトールを使用することが好ましい。
【0121】
ここで、ポリオール化合物(a3)と、ヒドロキシル基含有化合物(a3−1)は本発明で目的に応じて任意の割合で用いることができ、ポリオール化合物(a3)中のヒドロキシル基1.0モルに対し、ヒドロキシル基含有化合物(a3−1)中のヒドロキシル基を0.01モル〜1.00モル、好ましくは0.05モル〜0.50モルの割合で用いる。ポリオール化合物(a3)中のヒドロキシル基1.0モルに対し、ヒドロキシル基含有化合物(a3−1)中のヒドロキシル基を0.01モル未満の割合で使用する場合(すなわちポリオール化合物(a3)単独で使用する場合)、ポリオール化合物(a3)だけでも十分な絶縁信頼性、耐熱性、接着強度を発現することができるが、より高い耐熱性を付与しにくくなる。また、1.00モルより多い場合、最終的に得られる塗膜の凝集力が増大しすぎてしまい、接着強度が低下する傾向にある。
【0122】
また、カルボキシル基含有エステル樹脂(c3)を合成する際に、その出発材料を反応させる割合は、ポリオール化合物(a3)、および場合により添加するヒドロキシル基含有化合物(a3−1)について、これらに含まれるヒドロキシル基の合計を1モルとした場合に、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b3)に含まれる酸無水物基の合計が、0.70モル〜1.30モルの割合で反応させることが好ましく、0.90モル〜1.10モルの割合で反応させることがより好ましい。酸無水物基の合計が0.70モル未満の場合、得られるカルボキシル基含有エステル樹脂(c3)のカルボキシル基の量が少なくなり、次の1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d3)との反応工程で、充分な反応が起こりにくくなり、最終的に得られるカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A3)の重量平均分子量が十分に大きくならない場合がある。また、酸無水物基の合計が1.30モルより多い場合、次の1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d3)と反応させる際に副反応が多く起こり、反応途中でゲル化を引き起こす場合がある。
【0123】
また、0.90モル〜1.10モルの範囲内において、1.00モルに近い割合で反応させる場合、次の1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d3
)との反応工程の途中で上記のような問題が発生しにくくなるため、最終的に得られるカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A3)の重量平均分子量を十分に大きくすることができ、硬化塗膜の耐熱性や屈曲性、密着性を向上することができる。
【0124】
本発明において、カルボキシル基含有エステル樹脂(c3)の合成条件は特に限定されるものではなく、公知の条件で行うことができる。例えば、フラスコにポリオール化合物(a3)および溶剤[ならびに場合によりヒドロキシル基含有化合物(a3−1)]を仕込み、窒素気流下、20〜120℃で加熱・攪拌することで均一に溶解した後、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b3)を投入し、攪拌しながら50〜150℃で加熱することでカルボキシル基含有エステル樹脂(c3)を得ることができる。
【0125】
反応に際しては、必要に応じて3級アミノ基含有化合物等を使用してもよい。また、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b3)を投入する前に、予めフラスコに仕込んだポリオール化合物(a3)および溶剤を100℃以上で加熱・攪拌し、溶剤の一部を脱溶剤してもよい。この操作は、通常、系内の水分を除去(脱水処理)するために行い、この操作によって、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b3)を反応させる際に、水による酸無水物基の開環反応を抑制することができる。
【0126】
次に、本発明の1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d3)について説明する。本発明で用いる1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d3)は、好ましくはエポキシ基を分子内に2個含有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、ビフェノール・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、グリセリン・エピクロロヒドリン付加物のポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、ジヒドロキシアントラセン型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジフェニルスルホンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシベンゾフェノンジグリシジルエーテル、ビフェノールジグリシジルエーテル、ジフェニルメタンジグリシジルエーテル、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスクレゾールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、特開2004−156024号公報、特開2004−315595号公報、特開2004−323777号公報に開示されている柔軟性に優れたエポキシ化合物や、下記式(1)−(3)で表される構造のエポキシ化合物等が挙げられる。
【0130】
中でも、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルは、最終的に得られるカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A3)に柔軟性を付与させる場合に好ましく、ビスフェノールA・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂は、最終的に得られるカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A3)に耐熱性を付与させる場合に好ましい。このように本発明において、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d3)は目的に応じて選択することが可能であり、これらは単独で使用しても良いし、複数を併用することも好ましい。
【0131】
ここで、カルボキシル基含有エステル樹脂(c3)と1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d3)を反応させる割合は、カルボキシル基含有エステル樹脂(c3)のカルボキシル基を1.0モルとした場合に、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d3)中のエポキシ基を0.50モル〜1.50モルの割合で反応させることが好ましく、0.70モル〜1.30モルの割合で反応させることがより好ましい。カルボキシル基含有エステル樹脂(c3)のカルボキシル基1.0モルに対し、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d3)中のエポキシ基の割合が0.50モル未満の場合、最終的に得られるカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A3)の分子量が低くなり、所望の塗膜耐性や成膜性が得られにくくなる。また、カルボキシル基含有エステル樹脂(c3)のカルボキシル基1.0モルに対し、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d3)中のエポキシ基の割合が1.50モルより多い場合、末端エポキシ基の量が多くなり、最終の合成段階で脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b3)を反応させる際に副反応が多く起こり、反応途中でゲル化を引き起こす場合がある。
【0132】
本発明において、側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e3)の合成条件は特に限定されるものではなく、公知の条件で行うことができる。例えば、フラスコにカルボキシル基含有エステル樹脂(c3)及び1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d3)、溶剤を仕込み、攪拌しながら100〜150℃で加熱することで側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e3)を得ることができる。この際、必要に応じてトリフェニルホスフィンや、3級アミノ基含有化合物等の触媒を使用してもよい。
【0133】
次に、本発明のカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A3)について説明する。本発明のカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A3)は、側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e3)と、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b3)とを反応させることで得ることができる。
【0134】
ここで、カルボキシル基含有変性エステル樹脂(A3)を合成する際に、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b3)を反応させる割合は、側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e3)中のヒドロキシル基を1.0モルとした場合に、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b3)中の酸無水物基を0.05モル〜1.0モルの割合で反応させることが好ましく、0.10モル〜0.90モルの割合で反応させることがより好ましい。側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e3)中のヒドロキシル基1.0モルに対し、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b3)中の酸無水物基の割合が0.05モル未満の場合、変性の割合が少なくなりすぎて主鎖への架橋性官能基導入の効果が得られにくい。また、1.0モルより多い場合、余剰の酸無水物基含有化合物が残存し最終塗膜のフレキシブル性や耐熱性、絶縁信頼性が低下する傾向にある。
【0135】
本発明において、カルボキシル基含有変性エステル樹脂(A3)の合成条件は特に限定されるものではなく、公知の条件で行うことができる。例えば、フラスコに側鎖ヒドロキシル基含有変性エステル樹脂(e3)及び、脂環式多塩基酸無水物および芳香族多塩基酸無水物から選ばれる少なくとも1種である酸無水物基含有化合物(b3)、溶剤を仕込み、攪拌しながら50〜100℃で加熱することでカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A3)を得ることができる。この反応は無触媒下でも進行するが、必要に応じてや、3級アミノ基含有化合物等の触媒を使用してもよい。
【0136】
本発明のカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A3)の酸価は、1〜100mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは5〜90mgKOH/gである。酸価が1mgKOH/g未満では硬化性基として機能するカルボキシル基が少なく、硬化後の塗膜に充分な耐性を付与することができない場合がある。また、酸価が100mgKOH/gを超えると塗膜の硬度が高くなり、充分な接着強度が得られない場合がある。また、酸価が1〜100mgKOH/gの範囲内において、1mgKOH/gに近い範囲で設計する場合、得られる塗膜の屈曲性や密着性が向上し、一方、100mgKOH/gに近い範囲で設計する場合、架橋点が多くなることから、最終的に得られる塗膜の耐熱性が向上する。このように、本発明においてカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A3)の酸価は、1〜100mgKOH/gの範囲内で目的に応じて調整することが可能である。
【0137】
本発明のカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A3)の重量平均分子量は、5000〜500000であることが好ましく、より好ましくは、10000〜300000である。重量平均分子量が5000未満では、充分な耐熱性及び可撓性が得られない場合がある。また、重量平均分子量が500000を超えると、塗工時の粘度やハンドリングが課題となる場合がある。また、重量平均分子量が5000〜500000の範囲内において、5000に近い値で設計する場合、得られる樹脂の末端(すなわちカルボキシル基)が多いことから、架橋性に富む樹脂が得られ、最終的に得られる塗膜の耐熱性を向上することができ、一方、500000に近い値で設計する場合、最終的に得られる塗膜は、密着性や屈曲性に優れる。このように、本発明においてカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A3)の重量平均分子量は、5000〜500000の範囲内で目的に応じて調整することが可能である。
【0138】
本発明のセンサー用絶縁層形成材料は、前記カルボキシル基含有変性エステル樹脂(A3)とエポキシ基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、およびブロック化イソシアネート基含有化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種である化合物(B3)と熱硬化助剤(C3)とを含んでなる。ここで、エポキシ基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、およびブロック化イソシアネート基含有化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種である化合物(B3)〔以下、単に「化合物(B3)」とも表記する。〕について説明する。本発明のセンサー用絶縁層形成材料は、上述したカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A3)の硬化剤として化合物(B3)を使用することを特徴とする。
【0139】
本発明におけるエポキシ基含有化合物としては、分子内にエポキシ基を含有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。例えば、分子内にエポキシ基を1個有する化合物としては、N−グリシジルフタルイミド、グリシドール、グリシジル(メタ)アクリレート等の化合物が挙げられる。これらは、次に例示する分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物と、必要に応じて併用することで、硬化物の架橋密度を制御する目的で好適に用いることができる。また、エポキシ基を分子内に2個以上含有する化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、ビスフェノールS・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、ビフェノール・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加体もしくはプロピレンオキシド付加体のエピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、グリセリン・エピクロロヒドリン付加物のポリグリシジルエーテル、ナフタレンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジフェニルスルホンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシベンゾフェノンジグリシジルエーテル、ビフェノールジグリシジルエーテル、ジフェニルメタンジグリシジルエーテル、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスクレゾールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、特開2004−156024号公報、特開2004−315595号公報、特開2004−323777号公報に開示されている柔軟性に優れたエポキシ化合物や、下記式(4)〜(6)で表される構造のエポキシ化合物等が挙げられる。
【0143】
さらに、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートトリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、三菱化学株式会社製「エピコート1031S」、「エピコート1032H60」、「エピコート604」、「エピコート630」の他、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、特開2001-2406
54号公報に開示されているジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、エチレングリコール・エピクロルヒドリン付加物のポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、等が挙げられる。また、エポキシ基以外の他の熱硬化性基を併有する化合物も使用できる。例えば、特開2001−59011号公報や、2003−48953号公報に開示されているシラン変性エポキシ樹脂が挙げられる。
【0144】
特に、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートトリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート等のイソシアヌレート環含有エポキシ化合物は、本発明に使用した場合、ポリイミドや銅に対して接着強度が向上する傾向があり、好ましい。また、三菱化学株式会社製「エピコート1031S」、「エピコート1032H60」、「エピコート604」、「エピコート630」は、多官能であり、かつ、耐熱性に優れるため、本発明において非常に好ましく、また、脂肪族系のエポキシ化合物や、特開2004−156024号公報、特開2004−315595号公報、特開2004−323777号公報記載のエポキシ化合物は、硬化塗膜の柔軟性に優れるため、好ましい。また、特開2001−240654号公報記載のジシクロペンタジエン型エポキシ化合物や、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、などは、本発明において、熱硬化性および吸湿性や耐熱性をはじめとする硬化塗膜の耐久性の面で優れており好ましい。
【0145】
イソシアネート基含有化合物としては、イソシアネート基を分子内に有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。具体的には、ジイソシアネート化合物としては、例えば、炭素数4〜50の芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート等を挙げることができる。
【0146】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4'−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4',4"−トリフェニ
ルメタントリイソシアネート等を挙げることができる。
【0147】
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0148】
芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えばω,ω'−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω'−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω'−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0149】
脂環族ジイソシアネートとしては、例えば3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート[別名:イソホロンジイソシアネート]、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4'−メチレンビス(シクロ
ヘキシルイソシアネート)、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0150】
分子中にイソシアネート基を1個または3個以上有するイソシアネート基含有化合物としては、具体的には、1分子中に1個のイソシアネート基を有する単官能イソシアネートとして、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1−ビス[(メタ)アクリロイルオキシメチル]エチルイソシアネート、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。また、1,6−ジイソシアナトヘキサン、ジイソシアン酸イソホロン、ジイソシアン酸4,4'−ジフェニルメタン、ポリメリックジフェ
ニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,4−ジイソシアン酸トリレン、ジイソシアン酸トルエン、2,4−ジイソシアン酸トルエン、ジイソシアン酸ヘキサメチレン、ジイソシアン酸4−メチル−m−フェニレン、ナフチレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、p−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等のジイソシアン酸エステル化合物と水酸基、カルボキシル基、アミド基含有ビニルモノマーとを等モルで反応せしめた化合物もイソシアン酸エステル化合物として使用することができる。
【0151】
また、1分子中に3個以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、リジントリイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が挙げられ、前述したジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、水と反応したビュウレット体、イソシアヌレート環を有する3量体が挙げられる。
【0152】
ブロック化イソシアネート基含有化合物としては、イソシアネート基がε−カプロラクタムやMEKオキシム等で保護されたイソシアネート基含有化合物であればよく、特に限定されるものではない。具体的には、上記イソシアネート基含有化合物のイソシアネート基を、ε−カプロラクタム、MEKオキシム、シクロヘキサノンオキシム、ピラゾール、フェノール等でブロックしたものなどが挙げられる。
【0153】
本発明において、化合物(B3)は、一種のみを単独で用いてもよいし、複数を併用しても良い。化合物(B3)の使用量は、本発明の硬化性樹脂組成物の用途等を考慮して決定すればよく、特に限定されるものではないが、カルボキシル基含有変性エステル樹脂(A3)100重量部に対して、0.5重量部〜100重量部の割合で加えることが好ましく、1重量部〜80重量部の割合で加えることがより好ましい。化合物(B3)を使用することにより、本発明の硬化性樹脂組成物の架橋密度を適度な値に調節することができるので、硬化後の塗膜の各種物性をより一層向上させることができる。化合物(B3)の使用量が0.5重量部よりも少ないと、加熱硬化後の塗膜の架橋密度が低くなり過ぎ、所望の接着強度や耐熱性が不充分となる場合がある。また、該使用量が100重量部よりも多いと、加熱硬化後の架橋密度が高くなり過ぎ、その結果、塗膜の屈曲性、可撓性が低下し、接着強度をも著しく悪化させる場合がある。
【0154】
次に、本発明の、熱硬化助剤(C3)について説明する。本発明の熱硬化助剤(C3)とは、上記化合物(B3)とカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A3)とを硬化反応させる際に、硬化反応に直接寄与する化合物、あるいは触媒的に寄与する化合物である。
【0155】
熱硬化助剤(C3)として硬化反応に直接寄与する化合物とは、熱により単独で、または水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基などと反応しうる官能基を有する化合物を表し、上記化合物(B3)に属するものは除いたものであり、本発明の熱硬化性樹脂組成物において好ましく用いられる。具体的には、例えば、シアネートエステル化合物、アジリジン化合物、酸無水物基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、オキセタン基含有化合物、ベンゾオキサジン化合物、マレイミド化合物、シトラコンイミド化合物、ナジイミド化合物、アリルナジイミド化合物、ビニルエーテル化合物、ビニルベンジルエーテル樹脂、チオール化合物、メラミン化合物、グアナミン化合物、アミノ樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、トリアリルシアヌレート樹脂、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラートを含有する樹脂、トリアリルトリメリタートを含有する樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、芳香族ジシアナミドの三量化による熱硬化性樹脂などが挙げられる。
【0156】
シアネートエステル化合物としては、ビス(4−シアナトフェニル)エタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、α,α'−ビス(4−シアナトフェニル)−m−ジイソプロ
ピルベンゼン、フェノール付加ジシクロペンタジエン重合体のシアネートエステル化合物等が挙げられ、そのプレポリマーなどが単独もしくは混合して用いられる。その中でも、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパンおよび2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)等が硬化物の誘電特性が特に良好であるため好ましい。シアネートエステル化合物を使用する場合には、必要に応じて金属系反応触媒類が用いられ、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛等の金属触媒類が用いられる。具体的には、2−エチルヘキサン酸塩やナフテン酸塩等の有機金属塩化合物およびアセチルアセトン錯体などの有機金属錯体として用いられる。金属系反応触媒の配合量は、シアネートエステル化合物に対して1〜3000ppmとすることが好ましく、1〜1000ppmとすることがより好ましく、2〜300ppmとすることがさらに好ましい。金属系反応触媒の配合量が1ppm未満では添加の効果が得られ難く、3000ppmを超えると反応の制御が難しくなり、硬化が速くなりすぎる傾向があるが制限するものではない。
【0157】
アジリジン化合物としては、例えば、N,N'−ジフェニルメタン−4,4'−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、N,N'−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリ−1−アジリジニルホスフィンオキサイド、N,N'−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1、3、5−トリアジン、トリメチロールプロパントリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[3−(1−アジリジニル)ブチレート]、トリメチロールプロパントリス[3−(1−(2−メチル)アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[3−(1−アジリジニル)−2−メチルプロピオネート]、2,2'−ビスヒドロキシメチルブタノールトリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラ[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、ジフェニルメタン−4,4−ビス−N,N'−エチレンウレア、1,6−ヘキサメチレンビス−N,N'−エチレンウレア、2,4,6−(トリエチレンイミノ)−Syn−トリアジン、ビス[1−(2−エチル)アジリジニル]ベンゼン−1,3−カルボン酸アミド等が挙げられる。
【0158】
酸無水物基含有化合物としては、酸無水物基含有化合物(b3)をはじめとして分子内に酸無水物基を含有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。酸無水物基含有化合物(b3)以外の酸無水物基含有化合物としては、具体的には、ジカルボン酸無水物、ヘキサカルボン酸三無水物、ヘキサカルボン酸二無水物、無水マレイン酸共重合樹脂などの多価カルボン酸無水物類等が挙げられる。酸無水物基含有化合物をさらに詳しく例示すると、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸などの他、無水マレイン酸共重合樹脂としては、サートマー社製SMAレジンシリーズ、株式会社岐阜セラック製造所製G,SMシリーズなどのスチレン−無水マレイン酸共重合樹脂、p−フェニルスチレン−無
水マレイン酸共重合樹脂、ポリエチレン−無水マレイン酸などのα−オレフィン−無水マレイン酸共重合樹脂、ダイセル化学工業株式会社製「VEMA」(メチルビニルエ−テルと無水マレイン酸の共重合体)、無水マレイン酸アクリル変性ポリオレフィン(「アウローレンシリーズ」:日本製紙ケミカル株式会社製)、無水マレイン酸共重合アクリル樹脂などが挙げられる。
【0159】
カルボキシル基含有化合物としては、例えば、o−フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ジメチルテレフタル酸、1,3−ジメチルイソフタル酸、5−スルホ−1,3−ジメチルイソフタル酸、4,4−ビフェニルジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4'−ジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン
酸類;
ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸等の脂環族ジカルボン酸類;
シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、スベリン酸、マレイン酸、クロロマレイン酸、フマル酸、ドデカン二酸、ピメリン酸、シトラコン酸、グルタル酸、イタコン酸等の脂肪族ジカルボン酸類等が挙げられる。
【0160】
カルボジイミド基含有化合物としては、日清紡績株式会社のカルボジライトシリーズが挙げられる。その中でもカルボジライトV−01、03、05、07、09は有機溶剤との相溶性に優れており好ましい。
【0161】
オキセタン基含有化合物としては、例えば、1,4−ビス{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}ベンゼン[東亜合成社製、商品名;アロンオキセタンOXT−121等]、3−エチル−3−{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン[東亜合成社製、商品名;アロンオキセタンOXT−221等]、1,3−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ベンゼン、4,4'−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、(2−エチル−2−オキセタニル)エタノールとテレフタル酸とのエステル化物、(2−エチル−2−オキセタニル)エタノールとフェノールノボラック樹脂とのエーテル化物、(2−エチル−2−オキセタニル)エタノールと多価カルボン酸化合物とのエステル化物等が挙げられる。ベンゾオキサジン化合物としては、Macromolecules,36,6010(2003)記載の「P−a」、「P−alp」、「P−ala」、「B−ala」、Macromolecules,34,7257(2001)記載の「P−appe」、「B−appe」、四国化成株式会社製「B−a型ベンゾオキサジン」、「F−a型ベンゾオキサジン」、「B−m型ベンゾオキサジン」などが挙げられる。
【0162】
ビニルベンジルエーテル樹脂としては、V−1000X(昭和高分子株式会社製)、米国特許第4116936号公報、米国特許第4170711号公報、米国特許第4278708号公報、特開平9−31006号公報、特開2001−181383号公報、特開2001−253992号公報、特開2003−277440号公報、特開2003−283076号公報、国際公開第02/083610号パンフレット記載のビニルベンジルエーテル樹脂等が挙げられる。
【0163】
マレイミド化合物としては、分子中にマレイミド基を少なくとも1個有しているもので、例えば、フェニルマレイミド、1−メチル−2,4−ビスマレイミドベンゼン、N,N'−m−フェニレンビスマレイミド、N,N'−p−フェニレンビスマレイミド、N,N'−4,4−ビフェニレンビスマレイミド、N,N'−4,4−(3,3−ジメチルビフェニレン)ビスマレイミド、N,N'−4,4−(3,3−ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N'−4,4−(3,3−ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N'−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N'−4,4−ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N'−4,4−ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N'−4,4−ジフェニルスルフォンビスマレイミド、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−s−ブチル−3,4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]デカン、4,4'−シクロヘキシリデン−ビス[1−(4−マレイミ
ドフェノキシ)フェノキシ]−2−シクロヘキシルベンゼン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンなどがあり、単独でも2種類以上を混合して使用しても良い。
【0164】
シトラコンイミド化合物としては、分子中にシトラコンイミド基を少なくとも1個有している化合物またはその重合体であり、例えば、フェニルシトラコンイミド、1−メチル−2,4−ビスシトラコンイミドベンゼン、N,N'−m−フェニレンビスシトラコンイミド、N,N'−p−フェニレンビスシトラコンイミド、N,N'−4,4−ビフェニレンビスシトラコンイミド、N,N'−4,4−(3,3−ジメチルビフェニレン)ビスシトラコンイミド、N,N'−4,4−(3,3−ジメチルジフェニルメタン)ビスシトラコンイミド、N,N'−4,4−(3,3−ジエチルジフェニルメタン)ビスシトラコンイ
ミド、N,N'−4,4−ジフェニルメタンビスシトラコンイミド、N,N'−4,4−ジフェニルプロパンビスシトラコンイミド、N,N'−4,4−ジフェニルエーテルビスシトラコンイミド、N,N'−4,4−ジフェニルスルフォンビスシトラコンイミド、2,2−ビス[4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−s−ブチル−3,4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル]デカン、4,4'−シクロヘキシリデン−ビス[1−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェノキシ]−2−シクロヘキシルベンゼン、2,2−ビス[4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンなどがあり、単独でも2種類以上を混合して使用しても良い。
【0165】
ナジイミド化合物としては、分子中にナジイミド基を少なくとも1個有している化合物あるいはこれの重合体であって、例えば、フェニルナジイミド、1−メチル−2,4−ビスナジイミドベンゼン、N,N'−m−フェニレンビスナジイミド、N,N'−p−フェニレンビスナジイミド、N,N'−4,4−ビフェニレンビスナジイミド、N,N'−4,4−(3,3−ジメチルビフェニレン)ビスナジイミド、N,N'−4,4−(3,3−ジメチルジフェニルメタン)ビスナジイミド、N,N'−4,4−ジフェニルメタンビスナ
ジイミド、N,N'−4,4−ジフェニルプロパンビスナジイミド、N,N'−4,4−ジフェニルエーテルビスナジイミド、N,N'−4,4−ジフェニルスルホンビスナジイミド、2,2−ビス[4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−s−ブチル−3,4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル]デカン、4,4'−シクロヘキシリデン−ビス[1−(4−ナジイミドフェノキシ)フェノキシ]−2−シクロヘキシルベンゼン、2,2−ビス[4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンなどがあり、単独でも2種類以上を混合して使用しても良い。
【0166】
アリルナジイミド化合物としては、ビス{4−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}メタン、1,6−ヘキサン−ビス−アリルナジイミド、メタキシリレン−ビス−アリルナジイミドなどがあり、単独でも2種類以上を混合して使用しても良い。
【0167】
ビニルエーテル化合物としては、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンメタノールビニルエーテル、エチルシクロヘキサノールビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシペンチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、トリシクロデカンエポキシビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、グリセリンジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、1,4−ジヒドロキシルシクロヘキサンジビニルエーテル、1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサンジビニルエーテル、ハイドロキノンジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ハイドロキノンジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性レゾルシンジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ビスフェノールSジビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、ジペンタエリスリトールポリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンポリビニルエーテルなどがあり、単独でも2種類以上を混合して使用しても良い。
【0168】
チオール化合物としては、2,4,6−トリメルカプト−s−トリアゾール、2−ジブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−アニリノ−4,6−ジメルカプト−S−トリアジン、テトラエチレングリコールビス−3−メルカプトプロピオネート、トリメチロールプロパントリス−3−メルカプトプロピオネート、トリス−(エチル−3−メルカプトプロピオネート)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス−3−メルカプトプロピオネート、ジペンタエリスリトールヘキサ−3−メルカプトプロピオネートなどがあり、単独でも2種類以上を混合して使用しても良い。
【0169】
アミノ樹脂としては、尿素、メラミン、ベンゾグアナミン、およびアセトグアナミンなどとホルムアルデヒドとの付加化合物、またはその部分縮合物が挙げられる。また、フェノール樹脂としては、フェノール、クレゾール類、およびビスフェノール類等の化合物とホルムアルデヒドとの付加化合物、またはその部分縮合物が挙げられる。具体的には、フェノール樹脂、クレゾール樹脂、t−ブチルフェノール樹脂、ジシクロペンタジエンクレゾール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、キシリレン変性フェノール樹脂、テトラキスフェノール樹脂、ビスフェノールA樹脂、ポリ−p−ビニルフェノール樹脂のレゾール型樹脂やノボラック型樹脂が挙げられる。その他、ナフトール系化合物、トリスフェノール系化合物、フェノールアラルキル樹脂等が挙げられる。中でも、フェノール樹脂のレゾール型樹脂は、耐熱性および硬化性の面で非常に優れており、本発明において好適に用いることができる。
【0170】
熱硬化助剤(C3)として硬化反応に触媒的に寄与する化合物としては、3級アミンおよびその塩類、ジシアンジアミド、カルボン酸ヒドラジド、イミダゾール類、ジアザビシクロ化合物類、ホスフィン類、ホスホニウム塩類を挙げることができ、これらを使用すると、より効率的に熱硬化反応が進行し、塗膜の耐性が優れるため好ましい。
【0171】
具体的には、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N−メチルピペラジン等の3級アミン類、およびその塩類;
2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2,4−ジシアノ−6−[2−メチルイミダゾリル−1]−エチル−S−トリアジン、2−エチル−4−メチルイミダゾールテトラフェニルボレート、等のイミダゾール類、およびその塩類;
1,5−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデカン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン、1,4−ジアビシクロ[2,2,2,]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7−テトラフェニルボレート等のジアザビシクロ化合物類;
トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(ジメトキシフェニル)ホスフィン、トリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン、トリス(シアノエチル)ホスフィン等のホスフィン類;
テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、メチルトリブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、メチルトリシアノエチルホスホニウムテトラフェニルボレート等のホスホニウム塩類;
その他、触媒的かつ自らも直接硬化反応に寄与する化合物として、ジシアンジアミド、カルボン酸ヒドラジド等が挙げられる。カルボン酸ヒドラジドとしては、コハク酸ヒドラジド、アジピン酸ヒドラジド等が挙げられる。
【0172】
これら熱硬化助剤(C3)は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。熱硬化助剤(C3)の使用量は、硬化性樹脂組成物の硬化物性を考慮して決定すればよく、特に限定されるものではないが、本発明のカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A3)100重量部に対して、0.05重量部〜20重量部の範囲内が好ましく、0.1重量部〜10重量部の範囲内がより好ましい。これにより、本発明の熱硬化性樹脂組成物の架橋速度や架橋密度、凝集力を調節することが可能であり、各種物性をより一層向上させることができる。熱硬化助剤(C3)の使用量が0.05重量部よりも少ないと、その添加効果は得られ難く、また、該使用量が20重量部よりも多いと、余剰の熱硬化助剤(C3)が電気絶縁性や接着強度、半田耐熱性を低下させる原因となりやすい。
【0173】
この他、本発明のセンサー用絶縁層形成材料には目的を損なわない範囲で任意成分とて更に溶剤、染料、顔料、難燃剤、酸化防止剤、重合禁止剤、消泡剤、レベリング剤、イオン捕集剤、保湿剤、粘度調整剤、防腐剤、抗菌剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、電磁波シールド剤、フィラー等を添加することができる。特に電子材料用途で回路に直接接するような絶縁部材(例えば回路保護膜、カバーレイ層、層間絶縁材料など)や、回路周辺の高熱となりうる部材(プリント配線板接着剤、支持基板など)に使用する場合は、難燃剤を併用するのが好ましい。
【0174】
難燃剤としては、例えば、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、リン酸グアニジン、ポリリン酸グアニジン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸アミドアンモニウム、ポリリン酸アミドアンモニウム、リン酸カルバメート、ポリリン酸カルバメートなどのリン酸塩系化合物やポリリン酸塩系化合物、赤リン、有機リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスホン酸化合物、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、メチルエチルホスフィン酸アルミニウム、ジフェニルホスフィン酸アルミニウム、エチルブチルホスフィン酸アルミニウム、メチルブチルホスフィン酸アルミニウム、ポリエチレンホスフィン酸アルミニウムなどのホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、ホスホルアミド化合物などのリン系難燃剤、メラミン、メラム、メレム、メロン、メラミンシアヌレートなどのトリアジン系化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、トリアゾール系化合物、テトラゾール化合物、ジアゾ化合物、尿素などの窒素系難燃剤、シリコーン化合物やシラン化合物などのケイ素系難燃剤、ハロゲン化ビスフェノールA、ハロゲン化エポキシ化合物、ハロゲン化フェノキシ化合物などの低分子ハロゲン含有化合物、ハロゲン化されたオリゴマーやポリマーなどのハロゲン系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウムなどの金属水酸化物、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化アンチモン、酸化ニッケル、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、ホウ酸亜鉛、水和ガラスなどの無機系難燃剤などが挙げられる。本発明において、近年取り沙汰されている、環境への影響を配慮すると、リン系難燃剤や窒素系難燃剤等のノンハロゲン系難燃剤を使用することが望ましく、中でも本発明の熱硬化性樹脂組成物との併用によって、難燃性により効果のあるホスファゼン化合物、ホスフィン化合物、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウム、メラミンシアヌレート等を用いることが好ましい。本発明において、これら難燃剤は、単独又は複数を併用して用いることができる。
【0175】
消泡剤、レベリング剤としては、シリコーン系、炭化水素系、アクリル樹脂系の化合物などが挙げられる。
【0176】
イオン捕集剤としては、無機あるいは有機のイオン交換体が好適に用いられる。詳しくは東亜合成株式会社の無機イオン交換体イグゼや三菱化学株式会社のイオン交換樹脂ダイアイオンが用いられるが、イオン捕集能を有するものであればこれらに限定されない。
【0177】
本発明により、接着強度、電気絶縁性、耐熱性、屈曲性、加工性、に優れ、特に、保存安定性と加工安定性とを同時に満足し、更に高い接着強度を保持したまま高度な耐熱性を示し、更には、接着強度と電気絶縁性、耐熱性と屈曲性とを両立し得る、センサー用絶縁層形成材料が得られた。これらを硬化して、絶縁層(Y)に好適に用いることができる。
【0178】
<誘電層(Z)>
誘電層(Z)は、2つの導電層(X)に挟まれる位置に使用され、誘電体として働くことにより、キャパシタ構造のセンサー用電極シートを好適に形成できる。
誘電層(Z)は、フィルム・シート状の樹脂をそのまま、若しくは必要に応じて接着剤を介して貼りあわせたもの、樹脂を含むコーティング剤を塗工したのちに乾燥、必要に応じて硬化させて形成した樹脂塗膜などを使用することができる。
本発明の電極シートは、フレキシブル性及び柔軟性が必要であるため、誘電層(Z)においてもフレキシブルで柔軟性に富むことが要求される。具体的には、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルウレタンやポリエーテルウレタン、ポリカーボネートウレタンのようなウレタン樹脂、ポリエステルウレタンウレアやポリカーボネートウレタンウレアのようなウレタンウレア樹脂、ポリエステルウレアやポリエーテルウレア、ポリカーボネートウレアのようなウレア樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂のようなオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコールやポリビニルブチラールのようなポリアセタール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノキシ系樹脂、ポリフェノール樹脂、ナイロン樹脂、ビニロン樹脂、アラミド樹脂、セルロース樹脂などを主成分として、必要に応じてこれら樹脂を架橋させるための硬化剤やその促進のための触媒、その他塗工性、安定性、耐久性等を付与するための種々の添加剤を含む樹脂組成物などが挙げられ、必要に応じてこれらの材料を二つ以上混ぜて用いても良い。
その中でも、柔軟性や誘電率を考慮すると、ハロゲンを有しないアクリル系またはオレフィン系のゴム、ポリエステル樹脂、ウレタン系樹脂、ウレタンウレア系樹脂、ウレア樹脂、エポキシ系樹脂、フェノキシ系樹脂を主成分とすることが好ましい。
【0179】
また、誘電層(Z)の膜厚は、0.1μm以上、100000μm 未満であることが
好ましく、更には3μm以上、50000μm未満であることが好ましい。0.1μm未
満であると、外部からの少しの衝撃で誘電層(Z)が破断しやすくなり、導電層同士がショートするなどして電気特性の安定性確保が困難となり、100000μm以上であると、電界を安定に誘起することが困難となる。
【0180】
誘電層(Z)の面積や膜厚については、使用用途によってあらかじめ決められていることも多い為、電気特性を向上するためには、比誘電率(εr)の値を可能な限り小さくすることで、静電容量を小さくすることが重要となる。誘電層(Z)の比誘電率(εr)の値は、使用用途にもよるが、5未満であることが好ましく、3未満であることが好ましい。5以上であると、静電容量(C)の値が大きすぎて、電界を安定に検出することが困難となる。
【0181】
また、誘電層(Z)が空気を含むことが好ましい。誘電層(Z)が空気を含むことによって、誘電層(Z)の比誘電率を下げることが可能となり、更に弾力性を付与することもできる。材料としては、誘電層(Z)の主成分に空気を含ませたものが好ましく、これらを用いた発泡塗工シート、ウレタンフォームや発泡スチロールなどが挙げられる。空気を含ませるために、絶縁層にレーザーや荷重によって物理的に穴をあける方法や、延伸法や相分離法等で空孔を作る方法、液状に溶融させて気泡を含ませた状態で塗布し、冷却により気泡を固定させる方法や、発泡材料を含ませる方法などがある。
【0182】
本発明の電極シートは、本硬化の後に打ち抜き加工により所望の形状に加工する場合もある。この場合、半硬化状態の導電層(X)は、所定の伸び率範囲であることでさらに良好な打ち抜き加工性が得られる。具体的には、25℃におけるS−S曲線(応力−ひずみ曲線)から算出される伸び率が50%〜300%であることが好ましい。伸び率が50%以上になることで本硬化後の導電層(X)が破断し難くなる。また300%以下になることで打ち抜き不良が生じにくくなる。
【0183】
本発明の電極シートは、導電層(X)を使用して、例えば、絶縁層(Y)や誘電層(Z)とを仮貼りしたのち高温で加熱することで半硬化状態の導電層(X)を本硬化することができる。本硬化により優れた接着強度および耐熱性が得られる。
本硬化の加熱温度は、130〜210℃が好ましく、140〜200℃がより好ましい。加熱の際に加圧することができるが、その圧力は、0.2〜12MPaが好ましく、0.3〜10MPaがより好ましい。
【0184】
本発明の導電層(X)および電極シートは、次に示すような静電容量型の生体センサー、近接センサー、生体インピーダンスを測定機のセンサー電極部分に使用することができる。但し、ここに示す構成例や使用例に限られたものではない。
【0185】
静電容量型生体センサーの構成例を以下に示す。
【0186】
静電容量型近接センサーの構成例を以下に示す。
【0187】
生体インピーダンス測定機の構成例を以下に示す。
【0188】
図に基づいて、本発明のセンサー用電極シートの種々の態様について説明する。
図1(1)は導電層(X)のみからなるセンサー用電極シートである。
図1(2)は導電層(X)と絶縁層(Y)とからなるセンサー用電極シートであり、請求項3に係るセンサー用電極シートの態様の一例を示す。
図1(3)は導電層(X)と誘電層(Z)とからなるセンサー用電極シートであり、請求項2に係るセンサー用電極シートの態様の一例を示す。
図1(4)は絶縁層(Y)と導電層(X)と誘電層(Z)とをこの順序で具備するセンサー用電極シートであり、請求項3に係るセンサー用電極シートの態様の一例を示す。
図1(5)は2つの導電層(X)間に誘電層(Z)を具備するものであり、請求項4に係るセンサー用電極シートの態様の一例を示す。なお、請求項4では2つの導電層(X)を(X1)、(X2)として区別したが、
図1(5)では(X)として省略する。
図1(6)は2つの導電層(X)間に絶縁層(Y)を具備するものであり、請求項3に係るセンサー用電極シートの態様の一例を示す。
【0189】
図1(7)は、2つの導電層(X)間に誘電層(Z)を具備するセンサー用電極シートの片方の導電層(X)の他面、すなわち誘電層(Z)が接していない面に絶縁層(Y)を設けたものであり、
図1(8)は、2つの導電層(X)間に誘電層(Z)を具備するセンサー用電極シートの両方の導電層(X)の他面に2つの絶縁層(Y)を設けたものであり、いずれも請求項5に係るセンサー用電極シートの態様の一例を示す。なお、請求項5では2つの導電層(X)を(X1)、(X2)として区別したが、
図1(7)、(8)では(X)として省略する。
導電層(X)と絶縁層(Y)という単位に着目すれば、
図1(7)〜(10)は、請求項3に係るセンサー用電極シートの他の態様と言うことができる。
【0190】
図2(11)は3つの導電層(X)と2つの誘電層(Z)を具備し、2の導電層(X)の間に誘電層(Z)を具備するものであり、請求項4に係るセンサー用電極シートの態様の一例を示す。なお、
図2(1)では3つの導電層(X)、2つの誘電層(Z)の記号上の区別は省略する。
導電層(X)と絶縁層(Y)という単位に着目すれば、
図2(12)〜(17)は、請求項3に係るセンサー用電極シートの他の態様と言うことができる。また、絶縁層(Y)と導電層(X)と誘電層(Z)という単位に着目すれば、
図2(12)〜(17)は、請求項4に係るセンサー用電極シートの他の態様と言うこともできる。
【0191】
図3(18)は、絶縁層(Y)の両サイドに、導電層(X)と誘電層(Z)と導電層(X)とをそれぞれ対称に設けたセンサー用電極シートであり、請求項6に係るセンサー用電極シートの態様の一例を示す。請求項6では4つの導電層(X)を(X3)〜(X6)とし、また2つの誘電層(Z)を(Z1)、(Z2)として区別したが、
図3(18)では(X)、(Z)として省略する。
導電層(X)と絶縁層(Y)という単位に着目すれば、
図3(18)は、請求項3に係るセンサー用電極シートの他の態様と言うことができる。また、絶縁層(Y)と導電層(X)と誘電層(Z)という単位に着目すれば、
図3(18)は、請求項4に係るセンサー用電極シートの他の態様と言うこともできる。
【0192】
図3(19)は、
図3(18)に示すセンサー用電極シートにおける一方の表面層である導電層(X)上にさらに絶縁層(Y)を設けたものであり、
図3(20)は、
図3(18)に示すセンサー用電極シートにおける両方の表面層である導電層(X)上にさらに絶縁層(Y)を設けたものであり、いずれも請求項7に係るセンサー用電極シートの態様の一例を示す。
記号の省略は
図3(18)の場合と同様であり、導電層(X)と絶縁層(Y)という単位に着目すれば、請求項3に係るセンサー用電極シートの他の態様と言うことができ、絶縁層(Y)と導電層(X)と誘電層(Z)という単位に着目すれば、請求項4に係るセンサー用電極シートの他の態様と言うこともできる点も、
図3(18)の場合と同様である。
【0193】
図1〜
図3に示す各種態様のセンサー用電極シートは、打ち抜き加工、カッター、はさみ、裁断機などで、所望の種々の大きさ・形状に加工してから、使用することができる。
あるいは、
図1(2)〜
図3に示す各種態様のセンサー用電極シートは、硬化前の導電層に対し、絶縁層(Y)や誘電層(Z)を仮積層した後に、打ち抜き加工やカッター、はさみ、裁断機などで、所望の種々の大きさ・形状に加工してから、導電層形成材料を硬化し、導電層(X)を形成し、することができる。
【0194】
さらに
図4に示す別の態様のセンサー用電極シートについて説明する。
図4(1)は、誘電層(Z)の一方の面に導電層(X)と絶縁層(Y)との帯状の積層部を複数設け、誘電層(Z)の他方の面には導電層(X)と絶縁層(Y)との帯状の積層部を複数設けたものである。
図4(2)は
図4(1)のA−A‘で切った場合の断面図、
図4(3)は
図4(1)のB−B‘で切った場合の断面図、
図4(4)は
図4(1)を上面側から見た図、
図4(5)は
図4(1)を下面側から見た図であり、これら
図4(2)〜(5)に示すように各面における複数の帯状の積層部は、ほぼ直行するように設けられている。
図4(2)におけるC−C‘で切った場合の断面図は、
図1(8)となる。
図4に示す帯状の積層部を複数設けたセンサー用電極シートはそのまま使用することもできるし、帯状部と帯状部との間で切り離し、各小片をセンサー用電極シートして用いることもできる。
【0195】
図5は、誘電層(Z)上に設ける導電層(X)と絶縁層(Y)との積層部が帯状ではなく、断片(切片)となっている点が
図4の場合と異なる。
図5の場合も、
図4の場合と同様、大きいままセンサー用電極シートして用いることもできるし、各断片(切片)を切り離し、各小片をそれぞれセンサー用電極シートして用いることもできる。
なお、図示はしないが、誘電層(Z)の一方の面に設ける積層部を帯状とし、他方の面に設ける積層部を断片(切片)とすることも可能である。
【実施例】
【0196】
なお、実施例中に記載したポリウレタンポリウレア樹脂の重量平均分子量、及びポリエステル樹脂の数平均分子量は、GPC測定で求めたポリスチレン換算の重量平均分子量、及び数平均分子量であり、GPC測定の条件は、以下のとおりである。
【0197】
装置:Shodex GPC System−21(昭和電工製)
カラム:Shodex KF−802、KF−803L、KF−805L
(昭和電工製)の合計3本を連結して使用。
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:1.0ml/min
温度:40℃
試料濃度:0.3重量%
試料注入量:100μl
【0198】
[ポリウレタンポリウレア樹脂(A)の合成]
[合成例1]
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、アジピン酸とテレフタル酸及び3−メチル−1,5−ペンタンジオールから得られる数平均分子量(以下、「Mn」という)=1006であるジオール414部、ジメチロールブタン酸8部、イソホロンジイソシアネート145部、及びトルエン40部を仕込み、窒素雰囲気下90℃で3時間反応させた。これに、トルエン300部を加えて、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの溶液を得た。次に、イソホロンジアミン27部、ジ−n−ブチルアミン3部、2−プロパノール342部、及びトルエン576部を混合したものに、得られたウレタンプレポリマーの溶液816部を添加し、70℃で3時間反応させ、重量平均分子量(以下、「Mw」という)=54,000、酸価5mgKOH/gであるポ
リウレタンポリウレア樹脂の溶液を得た。これに、トルエン144部、2−プロパノール72部を加えて、固形分30%であるポリウレタンポリウレア樹脂溶液(A−1)を得た。
【0199】
[合成例2]
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、導入管、温度計を備えた4口フラスコに、ポリカーボネートジオール(クラレポリオール C−2090:株式会社クラレ製:3−メチル−1
,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=9/1(モル比)共重合ポリカーボネートジオール:水酸基価=56mgKOH/g、Mw=2000)292.1部、テトラヒドロ無水フタル酸(リカシッドTH:新日本理化株式会社製)44.9部、溶剤としてトルエン350部を仕込み、窒素気流下、攪拌しながら60℃まで昇温し、均一に溶解させた。続いてこのフラスコを110℃に昇温し、3時間反応させた。その後、40℃に冷却後、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(YD−8125:東都化成株式会社製:エポキシ当量=175g/eq)62.9部、触媒としてトリフェニルホスフィン4部を添加して110℃に昇温し、8時間反応させた。室温まで冷却後、テトラヒドロ無水フタル酸11.8部を添加し、110℃で3時間反応させた。室温まで冷却後、トルエンで固形分が35%になるよう調整し、本発明のカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)溶液を得た。本製造例によって得たカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)の重量平均分子量は12600、実測による樹脂固形分の酸価は15.3mgKOH/gであった。
【0200】
[製造例1:センサー用導電層形成材料1]
ポリウレタンポリウレア樹脂溶液(A−1)333部に対して、エポキシ樹脂(B−1)20部を加えて接着樹脂組成物を得た。さらに、この接着樹脂組成物353部に対して、導電性フィラー(福田金属箔粉工業製「AgXF−301」)180部、アジリジン系硬化剤(日本触媒製「ケミタイトPZ−33」)1部を加えて攪拌混合し、ポリウレタンポリウレア樹脂とエポキシ樹脂(B−1)との合計100重量部に対して、導電性フィラー150部を含有する、センサー用導電層形成材料1を得た。次いで、剥離性フィルム2として厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に剥離処理を施したフィルムの剥離処理面上に、センサー用導電層形成材料1を塗工し、電気オーブンを用い、100℃で2分、乾燥し、乾燥膜厚が8μmのセンサー用導電層形成材料1を形成した
【0201】
[製造例2:センサー用絶縁層形成材料1の製造例]
ポリウレタンポリウレア樹脂溶液(A−1)333部に対して、エポキシ樹脂(B−1)20部、アジリジン系硬化剤(日本触媒製「ケミタイトPZ−33」)1.5部を加えて攪拌混合し、センサー用絶縁層形成材料1を得た。
これを剥離処理されたポリエステルフィルム上に、乾燥後の膜厚が30μmとなるように均一に塗工して乾燥させ、センサー用絶縁層形成材料1を得た。
【0202】
[製造例3:センサー用絶縁層形成材料2の製造例]
合成例2で得られたカルボキシル基含有変性エステル樹脂(A)溶液の固形分100部に対して、化合物(B)として、多官能グリシジルエーテル型エポキシ樹脂(三菱化学社製「エピコート1031S」)20部、および、熱硬化助剤(C)としてケミタイトPZ(株式会社日本触媒製、多官能アジリジン化合物)1部を混合し、センサー用絶縁層形成材料2を得た。これを剥離処理されたポリエステルフィルム上に、乾燥後の膜厚が30μ
mとなるように均一に塗工して乾燥させ、センサー用絶縁層形成材料2を得た。
【0203】
実施例1:電極シート製造例1
製造例1で得られた、寸法10cm×10cmの導電層形成材料1に、絶縁層(Y)として寸法10cm×10cm、厚さ100μm、のポリイミドフィルム(デュポン(株)製、カプトン400H)を積層し、170℃、2MPa、5分の条件で圧着処理をした後、160℃の電気オーブンで60分加熱をして、寸法10cm×10cmの絶縁層/導電層の電極シートを得た。なお積層の際に10mm×30mmの新日鐵株式会社製ポリイミド銅貼り積層板「エスパネックスM」の銅箔面側の端部を導電層側に正方形の対辺に1つず
つ設置し、抵抗測定、静電容量を測定する際の取り出し電極とした。
【0204】
実施例2:電極シート製造例1−2
製造例1で得られた寸法10cm×10cmのセンサー用導電層形成材料1に、製造例2で得られた寸法10cm×10cmのセンサー用絶縁層形成材料1を積層し、170℃、2MPa、5分の条件で圧着処理をした後、160℃の電気オーブンで60分加熱をして、寸法10cm×10cmの絶縁層/導電層の電極シートを得た。なお積層の際に10mm×30mmの新日鐵株式会社製ポリイミド銅貼り積層板「エスパネックスM」の銅箔面側の端部を導電層側に正方形の対辺に1つずつ設置し、抵抗測定、静電容量を測定する
際の取り出し電極とした。
【0205】
実施例3:電極シート製造例1−3
製造例1で得られた寸法10cm×10cmのセンサー用導電層形成材料1に、製造例3で得られた寸法10cm×10cmのセンサー用絶縁層形成材料2を積層し、170℃、2MPa、5分の条件で圧着処理をした後、160℃の電気オーブンで60分加熱をして、寸法10cm×10cmの絶縁層/導電層の電極シートを得た。なお積層の際に10mm×30mmの新日鐵株式会社製ポリイミド銅貼り積層板「エスパネックスM」の銅箔面側の端部を導電層側に正方形の対辺に1つずつ設置し、抵抗測定、静電容量を測定する
際の取り出し電極とした。
【0206】
実施例4:電極シート製造例2
製造例1で得られた寸法10cm×10cmの導電層形成材料1に、絶縁層(Y)として寸法10cm×10cmの厚さ100μmのポリイミドフィルム(デュポン(株)製、カプトン400H)、誘電層(Z)として、寸法10cm×10cmの厚さ700μmの発泡ホットメルト樹脂(東洋アドレ社製)を用い、絶縁層/導電層形成材料/誘電層/導電層形成材料/絶縁層の順に積層し、170℃、2MPa、5分の条件で圧着処理をした後、160℃の電気オーブンで60分加熱をして、寸法10cm×10cmの絶縁層/導電層/誘電層/導電層/絶縁層の電極シートを得た。なお積層の際に10mm×30mmの新日鐵株式会社製ポリイミド銅貼り積層板「エスパネックスM」の銅箔面側の端部を導電層側に正方形の対辺に1つずつ設置し、抵抗測定、静電容量を測定する際の取り出し電極
とした。
【0207】
実施例5:電極シート製造例2−1
製造例1で得られた寸法10cm×10cmのセンサー用導電層形成材料1に、製造例2で得られた寸法10cm×10cmのセンサー用絶縁層形成材料1を積層して、センサー用絶縁層形成材料/センサー用導電層形成材料を得た。
誘電層(Z)として、寸法10cm×10cmの厚さ700μmの発泡ホットメルト樹脂(東洋アドレ社製)を用い、センサー用絶縁層形成材料/センサー用導電層形成材料/誘電層/センサー用導電層形成材料/センサー用絶縁層形成材料となるように順に積層し、170℃、2MPa、5分の条件で圧着処理をした後、160℃の電気オーブンで60分加熱をして、寸法10cm×10cmの絶縁層/導電層/誘電層/導電層/絶縁層の電極シートを得た。なお積層の際に10mm×30mmの新日鐵株式会社製ポリイミド銅貼り積層板「エスパネックスM」の銅箔面側の端部を導電層側に正方形の対辺に1つずつ設
置し、抵抗測定、静電容量を測定する際の取り出し電極とした。
【0208】
実施例6 電極シート製造例2−2
実施例5において、センサー用絶縁層形成材料1をセンサー用絶縁層形成材料2に変えた以外は同様にして、寸法10cm×10cmの絶縁層/導電層/誘電層/導電層/絶縁層の電極シートを得た。なお積層の際に10mm×30mmの新日鐵株式会社製ポリイミド銅貼り積層板「エスパネックスM」の銅箔面側の端部を導電層側に正方形の対辺に1つずつ設置し、抵抗測定、静電容量を測定する際の取り出し電極とした。
【0209】
実施例7 電極シート製造例3
製造例1で得られた導電層形成材料1に、絶縁層(Y)として寸法10cm×10cmの厚さ100μmのポリイミドフィルム(デュポン(株)製、カプトン400H)、誘電層(Z)として、寸法10cm×10cmの厚さ700の発泡ホットメルト樹脂(東洋アドレ社製)を用い、絶縁層/導電層形成材料/誘電層/導電層形成材料/絶縁層/導電層形成材料/誘電層/導電層形成材料/絶縁層の順に積層し、170℃、2MPa、5分の条件で圧着処理をした後、160℃の電気オーブンで60分加熱をして、寸法10cm×10cmの絶縁層/導電層/誘電層/導電層/絶縁層/導電層/誘電層/導電層/絶縁層の電極シートを得た。なお積層の際に10mm×30mmの新日鐵株式会社製ポリイミド銅貼り積層板「エスパネックスM」の銅箔面側の端部を導電層側に正方形の対辺に1つずつ設置し、抵抗測定、静電容量を測定する際の取り出し電極とした。
【0210】
実施例8 電極シート製造例3−1
製造例1で得られた寸法10cm×10cmのセンサー用導電層形成材料1、製造例2で得られた寸法10cm×10cmのセンサー用絶縁層形成材料1、誘電層(Z)として、寸法10cm×10cmの厚さ700μmの発泡ホットメルト樹脂(東洋アドレ社製)を用い、センサー用絶縁層形成材料1/センサー用導電層形成材料1/誘電層/センサー用導電層形成材料1/センサー用絶縁層形成材料1/センサー用導電層形成材料1/誘電層/センサー用導電層形成材料1/センサー用絶縁層形成材料1の順に積層し、170℃、2MPa、5分の条件で圧着処理をした後、160℃の電気オーブンで60分加熱をして、寸法10cm×10cmの絶縁層/導電層/誘電層/導電層/絶縁層/導電層/誘電層/導電層/絶縁層の電極シートを得た。なお積層の際に10mm×30mmの新日鐵株式会社製ポリイミド銅貼り積層板「エスパネックスM」の銅箔面側の端部を導電層側に正方形の対辺に1つずつ設置し、抵抗測定、静電容量を測定する際の取り出し電極とした。
【0211】
実施例9 電極シート製造例3−2
実施例8において、センサー用絶縁層形成材料1に変えてセンサー用絶縁層形成材料2を用いた以外は同様にして、寸法10cm×10cmの絶縁層/導電層/誘電層/導電層/絶縁層/導電層/誘電層/導電層/絶縁層の電極シートを得た。なお積層の際に10mm×30mmの新日鐵株式会社製ポリイミド銅貼り積層板「エスパネックスM」の銅箔面側の端部を導電層側に正方形の対辺に1つずつ設置し、抵抗測定、静電容量を測定する際
の取り出し電極とした。
【0212】
比較例1 電極シート製造例4
電極シート製造例1において、絶縁層/導電層の代わりに、新日鐵株式会社製ポリイミド銅貼り積層板「エスパネックスM」を用いて、寸法10cm×10cmの絶縁層/導電層の電極シートとした。なお銅貼り積層板「エスパネックスM」は加工して、正方形の対辺に一つずつ、10mm×30mmの抵抗測定、静電容量を測定する際の取り出し電極を設けた。
【0213】
比較例2 電極シート製造例5
電極シート製造例2において、絶縁層/導電層形成材料の代わりに、新日鐵株式会社製ポリイミド銅貼り積層板「エスパネックスM」を用い、誘電層(Z)として、寸法10cm×10cmの厚さ700μmの発泡ホットメルト樹脂(東洋アドレ社製)を用い、絶縁層(エスパネックスMのポリイミド面)/導電層(エスパネックスMの銅面)/誘電層(Z)/導電層(エスパネックスMの銅面/絶縁層(エスパネックスのポリイミド面)の順に積層し、170℃、2MPa、5分の条件で圧着処理をして、寸法10cm×10cmの絶縁層/導電層/誘電層/導電層/絶縁層の電極シートを得た。なお銅貼り積層板「エスパネックスM」は加工して、正方形の対辺に一つずつ、10mm×30mmの抵抗測定、静電容量を測定する際の取り出し電極を設けた。
【0214】
比較例3 電極シート製造例6
絶縁層/導電層形成材料として、新日鐵株式会社製ポリイミド銅貼り積層板「エスパネックスM」、絶縁層形成材料として、製造例2で得られた寸法10cm×10cmのセンサー用絶縁層形成材料1、誘電層(Z)として、寸法10cm×10cmの厚さ700μmの発泡ホットメルト樹脂(東洋アドレ社製)を用い、絶縁層(エスパネックスMのポリイミド面)/導電層(エスパネックスMの銅面)/誘電層(Z)/導電層(エスパネックスMの銅面/絶縁層(エスパネックスのポリイミド面)/センサー用絶縁層形成材料1/絶縁層(エスパネックスMのポリイミド面)/導電層(エスパネックスMの銅面)/誘電層(Z)/導電層(エスパネックスMの銅面/絶縁層(エスパネックスのポリイミド面)の順に積層し、170℃、2MPa、5分の条件で圧着処理をして、寸法10cm×10cmの、絶縁層/導電層/誘電層/導電層/絶縁層/導電層/誘電層/導電層/絶縁層の電極シートを得た。なお銅貼り積層板「エスパネックスM」は加工して、正方形の対辺に一つずつ、10mm×30mmの抵抗測定、静電容量を測定する際の取り出し電極を設けた。
【0215】
得られた電極シートについて、下記評価について物性評価した。
【0216】
<導電層(X)の静電容量測定方法>
アジレント・テクノロジー株式会社製デジタルマルチメーター「34410A」を用い、プローブを実施例1〜9、比較例1〜3の電極シートの導電層の一つの取り出し電極と接続し、静電容量を測定した。実施例1で得られた電極シート(後述の折曲げ試験は実施しないで用いた)の導電層側を対極電極として、測定する電極シートの絶縁層側とを対向させて測定した。電極間には誘電体として、寸法10cm×10cm厚み100μのポリエステルフィルム(東レ(株)製、テトロンS10)を用いた。
【0217】
<導電層(X)の抵抗値測定方法>
アジレント・テクノロジー株式会社製デジタルマルチメーター「34410A」を用い、プローブを実施例1〜9、比較例1〜3の電極シートの導電層の正方形の対辺に位置する二つの取り出し電極と接続し、抵抗を測定した。
【0218】
<折り曲げ試験>
実施例1〜9、比較例1〜3で得られた電極シートをJISK7113に準拠し、寸法10cm×10cmの真ん中で、1)180度に折り曲げ、折り曲げ部に1kgの錘を5秒間載せた。2)次に、折り曲げ部を元のフラットの状態に戻し、同じ位置に1kgの錘を5秒間載せた。この1)〜2)の作業を、1つのサンプルに対して10回、30回、50回行った。
抵抗値および静電容量測定を行い、それぞれの変化率が、次のときにそれぞれ◎〜×の判定とした。
ただし、ここで言う変化率とは、元の値をaとし、処理後の値をbとした場合、
変化率G=(b−a)/a×100[%]
を表す。
静電容量の変化率
0%以上〜30%未満:◎
30%以上〜60%未満:○
60%以上〜100%未満:△
100%以上:×
抵抗値の変化率
0%以上〜30%未満:◎
30%以上〜60%未満:○
60%以上〜100%未満:△
100%以上:×
各構成における抵抗値および静電容量測定部位
[実施例1〜3、比較例1]
絶縁層/導電層(抵抗値測定部位1、静電容量測定部位1)
[実施例4〜6、比較例2]
絶縁層/導電層(抵抗値測定部位1、静電容量測定部位1)/誘電層/導電層(抵抗値測定部位2、静電容量測定部位2)/絶縁層
[実施例7〜9、比較例3]
絶縁層/導電層(抵抗値測定部位1、静電容量測定部位1)/誘電層/導電層/絶縁層/導電層/誘電層/導電層(抵抗値測定部位2、静電容量測定部位2)/絶縁層
【0219】
表に示すように、実施例1〜9は、フレキシブルで柔軟性に富む導電層を有しているために、折り曲げに対して強く耐久性を有し、静電容量変化率、抵抗値変化率が少なく、ウェアラブル用途や、曲面への電極の設置が必要なセンサー、生体情報を検知するセンサーなどのセンサー電極として極めて優れている。一方、比較例1〜3では、導電層がフレキシブル性、耐久性に劣り、折曲げ試験により導電層が破壊されるため、静電容量の変化率が大きく、また電極の劣化により抵抗値が大きく上昇し、ウェアラブル用途や、曲面への電極の設置が必要なセンサー、生体情報を検知するセンサーなどのセンサー電極としては機能が不十分であり、使用に堪えない。
【0220】
【表1】