特許第6565380号(P6565380)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6565380
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】切削装置、切削方法及び環状工具
(51)【国際特許分類】
   B23D 3/00 20060101AFI20190819BHJP
   B23D 13/00 20060101ALI20190819BHJP
   B23C 5/02 20060101ALI20190819BHJP
   B23B 27/08 20060101ALN20190819BHJP
   B23B 27/12 20060101ALN20190819BHJP
【FI】
   B23D3/00
   B23D13/00
   B23C5/02
   !B23B27/08 A
   !B23B27/12
【請求項の数】23
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-130856(P2015-130856)
(22)【出願日】2015年6月30日
(65)【公開番号】特開2017-13158(P2017-13158A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2018年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】堀田 将司
(72)【発明者】
【氏名】東 孝幸
【審査官】 村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】 特表平11−509899(JP,A)
【文献】 実開昭52−006286(JP,U)
【文献】 英国特許出願公告第124260(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 3/00
B23C 5/02
B23D 13/00
B23B 27/08
B23B 27/12
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の先頭刃及び前記先頭刃より工具先端側に設けられる1つ以上の後続刃を有し、前記工具先端側が仕上げ加工刃として形成され、工具根本側が荒加工刃として形成され、前記仕上げ加工刃の切り込みが前記荒加工刃の切り込みより小さい環状工具と、
前記環状工具を取り付け、前記環状工具を当該環状工具の軸線回りに回転させる工具主軸と、
工作物を保持する工作物保持台と、
前記工具主軸と前記工作物保持台との相対位置及び前記工具主軸の回転を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記工具主軸及び前記工作物保持台を、前記先頭刃の外周面がすくい面となり、前記先頭刃の端面が逃げ面となる相対位置関係に配置し、
前記先頭刃で前記工作物の加工を行いながら、前記先頭刃で加工された箇所を前記後続刃で加工を行う、切削装置。
【請求項2】
環状の先頭刃及び前記先頭刃より工具先端側に設けられる1つ以上の後続刃を有し、前記工具先端に向かうに従って高硬度の刃となるように形成される環状工具と、
前記環状工具を取り付け、前記環状工具を当該環状工具の軸線回りに回転させる工具主軸と、
工作物を保持する工作物保持台と、
前記工具主軸と前記工作物保持台との相対位置及び前記工具主軸の回転を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記工具主軸及び前記工作物保持台を、前記先頭刃の外周面がすくい面となり、前記先頭刃の端面が逃げ面となる相対位置関係に配置し、
前記先頭刃で前記工作物の加工を行いながら、前記先頭刃で加工された箇所を前記後続刃で加工を行う、切削装置。
【請求項3】
環状の先頭刃及び前記先頭刃より工具先端側に設けられる1つ以上の後続刃を有し、前記後続刃は、外周面がすくい面となる環状に形成され、前記工具先端に向かうに従って工具軸線に直角な方向から見た前記外周面の成すすくい角が大きい刃となるように形成される環状工具と、
前記環状工具を取り付け、前記環状工具を当該環状工具の軸線回りに回転させる工具主軸と、
工作物を保持する工作物保持台と、
前記工具主軸と前記工作物保持台との相対位置及び前記工具主軸の回転を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記工具主軸及び前記工作物保持台を、前記先頭刃の外周面がすくい面となり、前記先頭刃の端面が逃げ面となる相対位置関係に配置し、
前記先頭刃で前記工作物の加工を行いながら、前記先頭刃で加工された箇所を前記後続刃で加工を行う、切削装置。
【請求項4】
環状の先頭刃及び前記先頭刃より工具先端側に設けられる1つ以上の後続刃を有し、前記工具先端側が駆動源により強制駆動される刃として形成され、工具根本側が切削力により従動駆動される刃として形成される環状工具と、
前記環状工具を取り付け、前記環状工具を当該環状工具の軸線回りに回転させる工具主軸と、
工作物を保持する工作物保持台と、
前記工具主軸と前記工作物保持台との相対位置及び前記工具主軸の回転を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記工具主軸及び前記工作物保持台を、前記先頭刃の外周面がすくい面となり、前記先頭刃の端面が逃げ面となる相対位置関係に配置し、
前記先頭刃で前記工作物の加工を行いながら、前記先頭刃で加工された箇所を前記後続刃で加工を行う、切削装置。
【請求項5】
前記先頭刃と前記後続刃は、同軸上に設けられる、請求項1−4の何れか一項に記載の切削装置。
【請求項6】
前記環状工具は、前記工具先端に向かうに従って小径の刃となるように形成される、請求項1−5の何れか一項に記載の切削装置。
【請求項7】
前記環状工具は、前記工具先端側が仕上げ加工刃として形成され、工具根本側が荒加工刃として形成され、前記仕上げ加工刃の切り込みが前記荒加工刃の切り込みより小さい、請求項2−6の何れか一項に記載の切削装置。
【請求項8】
前記環状工具は、前記仕上げ加工刃と前記荒加工刃との間に中仕上げ加工刃が形成され、前記中仕上げ加工刃の切り込みが前記仕上げ加工刃の切り込みより大きく前記荒加工刃の切り込みより小さい、請求項1又は7に記載の切削装置。
【請求項9】
前記環状工具は、前記工具先端に向かうに従って高硬度の刃となるように形成される、請求項1又は3−8の何れか一項に記載の切削装置。
【請求項10】
前記環状工具は、工具先端側がシャープエッジな刃となるように形成され、工具根本側が刃先処理された刃となるように形成される、請求項2又は9に記載の切削装置。
【請求項11】
前記後続刃は、外周面がすくい面となる環状に形成され、
前記環状工具は、前記工具先端に向かうに従って前記環状工具の軸線に直角な方向から見た前記外周面の成すすくい角が大きい刃となるように形成される、請求項1,2,4−10の何れか一項に記載の切削装置。
【請求項12】
前記先頭刃は、外周面の成すすくい角を負のすくい角とし、
前記後続刃は、外周面の成すすくい角を正のすくい角とする、請求項3又は11に記載の切削装置。
【請求項13】
前記環状工具は、工具先端側の刃にチップブレーカが形成される、請求項1−12の何れか一項に記載の切削装置。
【請求項14】
前記環状工具は、工具先端側が駆動源により強制駆動される刃として形成され、工具根本側が切削力により従動駆動される刃として形成される、請求項1−3,5−13の何れか一項に記載の切削装置。
【請求項15】
前記環状工具は、工具最先端に砥石が形成され、前記工具最先端以外の部分に切削刃が形成される、請求項4又は14に記載の切削装置。
【請求項16】
環状の先頭刃及び前記先頭刃より工具先端側に設けられる1つ以上の後続刃を有し、前記工具先端側が仕上げ加工刃として形成され、工具根本側が荒加工刃として形成され、前記仕上げ加工刃の切り込みが前記荒加工刃の切り込みより小さい環状工具と、前記環状工具を取り付け、前記環状工具を当該環状工具の軸線回りに回転させる工具主軸と、工作物を保持する工作物保持台と、を備える切削装置の切削方法であって、
前記工具主軸及び前記工作物保持台を、前記先頭刃の外周面がすくい面となり、前記先頭刃の端面が逃げ面となる相対位置関係に配置する配置工程と、
前記先頭刃で前記工作物の加工を行いながら、前記先頭刃で加工された箇所を前記後続刃で加工を行う加工工程と、
を備える、切削方法。
【請求項17】
環状の先頭刃及び前記先頭刃より工具先端側に設けられる1つ以上の後続刃を有し、前記工具先端に向かうに従って高硬度の刃となるように形成される環状工具と、前記環状工具を取り付け、前記環状工具を当該環状工具の軸線回りに回転させる工具主軸と、工作物を保持する工作物保持台と、を備える切削装置の切削方法であって、
前記工具主軸及び前記工作物保持台を、前記先頭刃の外周面がすくい面となり、前記先頭刃の端面が逃げ面となる相対位置関係に配置する配置工程と、
前記先頭刃で前記工作物の加工を行いながら、前記先頭刃で加工された箇所を前記後続刃で加工を行う加工工程と、
を備える、切削方法。
【請求項18】
環状の先頭刃及び前記先頭刃より工具先端側に設けられる1つ以上の後続刃を有し、前記後続刃は、外周面がすくい面となる環状に形成され、前記工具先端に向かうに従って工具軸線に直角な方向から見た前記外周面の成すすくい角が大きい刃となるように形成される環状工具と、前記環状工具を取り付け、前記環状工具を当該環状工具の軸線回りに回転させる工具主軸と、工作物を保持する工作物保持台と、を備える切削装置の切削方法であって、
前記工具主軸及び前記工作物保持台を、前記先頭刃の外周面がすくい面となり、前記先頭刃の端面が逃げ面となる相対位置関係に配置する配置工程と、
前記先頭刃で前記工作物の加工を行いながら、前記先頭刃で加工された箇所を前記後続刃で加工を行う加工工程と、
を備える、切削方法。
【請求項19】
環状の先頭刃及び前記先頭刃より工具先端側に設けられる1つ以上の後続刃を有し、前記工具先端側が駆動源により強制駆動される刃として形成され、工具根本側が切削力により従動駆動される刃として形成される環状工具と、前記環状工具を取り付け、前記環状工具を当該環状工具の軸線回りに回転させる工具主軸と、工作物を保持する工作物保持台と、を備える切削装置の切削方法であって、
前記工具主軸及び前記工作物保持台を、前記先頭刃の外周面がすくい面となり、前記先頭刃の端面が逃げ面となる相対位置関係に配置する配置工程と、
前記先頭刃で前記工作物の加工を行いながら、前記先頭刃で加工された箇所を前記後続刃で加工を行う加工工程と、
を備える、切削方法。
【請求項20】
外周面がすくい面となり、端面が逃げ面となる環状の先頭刃及び前記先頭刃より工具先端側に設けられる1つ以上の後続刃を有し、前記工具先端側が仕上げ加工刃として形成され、工具根本側が荒加工刃として形成され、前記仕上げ加工刃の切り込みが前記荒加工刃の切り込みより小さく、前記先頭刃で工作物の加工を行いながら、前記先頭刃で加工された箇所を前記後続刃で加工を行う、環状工具。
【請求項21】
外周面がすくい面となり、端面が逃げ面となる環状の先頭刃及び前記先頭刃より工具先端側に設けられる1つ以上の後続刃を有し、前記工具先端に向かうに従って高硬度の刃となるように形成され、前記先頭刃で工作物の加工を行いながら、前記先頭刃で加工された箇所を前記後続刃で加工を行う、環状工具。
【請求項22】
外周面がすくい面となり、端面が逃げ面となる環状の先頭刃及び前記先頭刃より工具先端側に設けられる1つ以上の後続刃を有し、前記工具先端に向かうに従って工具軸線に直角な方向から見た前記外周面の成すすくい角が大きい刃となるように形成され、前記先頭刃で工作物の加工を行いながら、前記先頭刃で加工された箇所を前記後続刃で加工を行う、環状工具。
【請求項23】
外周面がすくい面となり、端面が逃げ面となる環状の先頭刃及び前記先頭刃より工具先端側に設けられる1つ以上の後続刃を有し、前記工具先端側が駆動源により強制駆動される刃として形成され、工具根本側が切削力により従動駆動される刃として形成され、前記先頭刃で工作物の加工を行いながら、前記先頭刃で加工された箇所を前記後続刃で加工を行う、環状工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削装置、切削方法及び環状工具に関する。
【背景技術】
【0002】
切削装置では、バイト等の切削工具でチタン合金やインコネル等の難削材でなる工作物を切削加工すると、切削工具の切れ刃は工作物と大きな切削抵抗力で長時間接触することになるので、切れ刃の接触部分に高温の切削熱が発生し易く、工具寿命が低下するおそれがある。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1には、回転可能な丸駒形状の切削工具の回転軸を切削方向と平行に配置し、切削工具を回転させながら工作物を切削加工するロータリー切削方法が提案されている。このロータリー切削方法では、切削工具が回転しているので、切れ刃に発生する切削熱は全周に分散されることになり、工具寿命を向上できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−161628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、難削材でなる工作物を切削加工するときの切り込み量は、難削材以外の工作物を切削加工するときの切り込み量よりも小さくする必要があり、上述のロータリー切削方法においても同様である。このため、難削材でなる工作物の加工時間は、長時間になる傾向にある。難削材でなる工作物の加工時間を短縮するには、切り込み量を大きくすればよいが、切れ刃の摩耗は激しくなり、工具寿命が低下する。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、加工時間の短縮化及び工具寿命の向上を図れる切削装置、切削方法及び環状工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(切削装置)
本発明の切削装置は、環状の先頭刃及び前記先頭刃より工具先端側に設けられる1つ以上の後続刃を有し、前記工具先端側が仕上げ加工刃として形成され、工具根本側が荒加工刃として形成され、前記仕上げ加工刃の切り込みが前記荒加工刃の切り込みより小さい環状工具と、前記環状工具を取り付け、前記環状工具を当該環状工具の軸線回りに回転させる工具主軸と、工作物を保持する工作物保持台と、前記工具主軸と前記工作物保持台との相対位置及び前記工具主軸の回転を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記工具主軸及び前記工作物保持台を、前記先頭刃の外周面がすくい面となり、前記先頭刃の端面が逃げ面となる相対位置関係に配置し、前記先頭刃で前記工作物の加工を行いながら、前記先頭刃で加工された箇所を前記後続刃で加工を行う。
【0008】
この環状工具による切削加工では、先頭刃で加工した工作物の加工箇所を加工しながら後続刃で加工を行うので、1回の環状工具の送りでの切り込み量は、1回の従来の工具の送りでの切り込み量よりも多くなり、加工時間の短縮化を図れる。また、従来の工具で加工した切り込み量と同一の切り込み量を環状工具で加工した場合、1つの刃に作用する力を低減でき、工具寿命を向上できる。また、環状工具は、工具先端側が仕上げ加工刃として形成され、工具根本側が荒加工刃として形成され、仕上げ加工刃の切り込みが荒加工刃の切り込みより小さいので、加工面精度を向上できる。
【0009】
(切削方法)
本発明の切削方法は、環状の先頭刃及び前記先頭刃より工具先端側に設けられる1つ以上の後続刃を有し、前記工具先端側が仕上げ加工刃として形成され、工具根本側が荒加工刃として形成され、前記仕上げ加工刃の切り込みが前記荒加工刃の切り込みより小さい環状工具と、前記環状工具を取り付け、前記環状工具を当該環状工具の軸線回りに回転させる工具主軸と、工作物を保持する工作物保持台と、を備える切削装置の切削方法であって、前記工具主軸及び前記工作物保持台を、前記先頭刃の外周面がすくい面となり、前記先頭刃の端面が逃げ面となる相対位置関係に配置する配置工程と、前記先頭刃で前記工作物の加工を行いながら、前記先頭刃で加工された箇所を前記後続刃で加工を行う加工工程と、を備える。本発明の切削方法によれば、上述した切削装置における効果と同様の効果を奏する。
【0010】
(環状工具)
本発明の環状工具は、外周面がすくい面となり、端面が逃げ面となる環状の先頭刃及び前記先頭刃より工具先端側に設けられる1つ以上の後続刃を有し、前記工具先端側が仕上げ加工刃として形成され、工具根本側が荒加工刃として形成され、前記仕上げ加工刃の切り込みが前記荒加工刃の切り込みより小さく、前記先頭刃で工作物の加工を行いながら、前記先頭刃で加工された箇所を前記後続刃で加工を行う。本発明の環状工具では、先頭刃で加工した工作物の加工箇所を加工しながら後続刃で加工を行うので、1回の環状工具の送りでの切り込み量は、1回の従来の工具の送りでの切り込み量よりも多くなり、加工時間の短縮化を図れる。また、従来の工具で加工した切り込み量と同一の切り込み量を環状工具で加工した場合、1つの刃に作用する力を低減でき、工具寿命を向上できる。また、環状工具は、工具先端側が仕上げ加工刃として形成され、工具根本側が荒加工刃として形成され、仕上げ加工刃の切り込みが荒加工刃の切り込みより小さいので、加工面精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係る切削装置の全体構成を示す図である。
図2A図1の切削装置に用いられる第1形態の環状工具を工具軸方向から見た図である。
図2B図2Aの環状工具を工具軸に直角な方向から見た図である。
図3】環状工具を用いた切削加工方法を説明するためのフローチャートである。
図4A】環状工具を用いた切削加工状態を工具軸方向から見た図である。
図4B図4Aの切削加工状態を工具軸に直角な方向から見た図である。
図5図4Bの環状工具の切れ刃付近の拡大図である。
図6A】切れ刃に刃先処理を施した環状工具を工具軸に直角な方向から見た拡大図である。
図6B】切れ刃に別の刃先処理を施した環状工具を工具軸に直角な方向から見た拡大図である。
図7A】チップブレーカを設けた環状工具を工具軸に直角な方向から見た図である。
図7B】別のチップブレーカを設けた環状工具を工具軸方向から見た図である。
図8A図1の切削装置に用いられる第2形態の環状工具を工具軸に直角な方向から見た図である。
図8B図8Aの環状工具での切削加工状態を工具軸に直角な方向から見た図である。
図9図1の切削装置に用いられる第3形態の環状工具を工具軸に直角な方向から見た図である。
図10】第1形態の環状工具によるプランジ方向の切削状態を工具軸に直角な方向から見た図である。
図11】第1形態の環状工具によるトラバース方向の切削状態を工具軸に直角な方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1.切削装置の機械構成)
切削装置の一例として、5軸立形マシニングセンタを例に挙げ、図1を参照して説明する。つまり、当該切削装置1は駆動軸として、相互に直交する3つの直進軸(X,Y,Z軸)及び2つの回転軸(A軸、C軸)を有する機械である。
図1に示すように、切削装置1は、ベッド2と、送りテーブル3と、コラム4と、スライダ5と、主軸ヘッド6と、工具主軸7と、チルトテーブル8と、ターンテーブル9(本発明の「工作物保持台」に相当)と、自動工具交換装置30と、制御装置100等とを備える。
【0013】
ベッド2は、矩形板状に形成され床上に配置される。ベッド2上には、テーブル3及び自動工具交換装置30が配設される。ベッド2の後方側には、コラム4が立設される。
送りテーブル3は、ベッド2上に配設される前後方向(Y軸線方向)に延びるガイド部材31にY軸線方向にスライド可能に設けられる。送りテーブル3をY軸線方向にスライドさせるボールネジ機構32を有する送りテーブル用モータ33は、ガイド部材31に備えられる。
コラム4は、門形状に形成され、コラム4の上部材41には、スライダ5が配設される。
【0014】
スライダ5は、コラム4の上部材41の前面に形成される案内面41aに沿って左右方向(X軸線方向)に移動可能に設けられる。スライダ5をX軸線方向に移動させるボールネジ機構51を有するスライダ用モータ52は、コラム4の上部材41に備えられる。
主軸ヘッド6は、スライダ5の前面に形成される案内面5aに沿って上下方向(Z軸線方向)に移動可能に設けられる。主軸ヘッド6をZ軸線方向に移動させるボールネジ機構61を有する主軸ヘッド用モータ62は、スライダ5に備えられる。
【0015】
工具主軸7は、主軸ヘッド6にZ軸線方向に延在し、且つZ軸線回りで回転可能に支持される。工具主軸7をZ軸線回りで回転させるギヤ機構71を有する主軸用モータ72は、主軸ヘッド6に内蔵される。工具主軸7の下端には、工具ホルダ73が取り付けられ、工具ホルダ73には、工作物Wを切削加工する環状工具90(190,290)が着脱可能に装着される。つまり、環状工具90(190,290)は、主軸ヘッド6に対して、Z軸線回りに回転可能に取り付けられる。
【0016】
チルトテーブル8は、クレードル状に形成され、送りテーブル3に対してY軸線と平行なA軸線回りに回転(揺動)可能なように、一対のチルトテーブル支持部81に支持される。チルトテーブル8の上面には、ターンテーブル9が配設される。チルトテーブル8をA軸線回りに回転(揺動)駆動するチルトテーブル用モータ82は、一方のチルトテーブル支持部81に備えられる。
【0017】
ターンテーブル9は、円板状に形成され、チルトテーブル8に対してZ軸線と平行なC軸線回りに回転可能なように、チルトテーブル8に支持される。ターンテーブル9をC軸線回りに回転駆動するターンテーブル用モータ99は、チルトテーブル8に備えられる。ターンテーブル9上には、工作物Wが載置固定される。
自動工具交換装置30には、図略の複数種の環状工具90が備えられる。そして、自動工具交換装置30は、工具主軸7との間で環状工具90(190,290)を自動的に交換可能に構成される。
【0018】
制御装置100は、送りテーブル移動制御部101と、スライダ移動制御部102と、ヘッド移動制御部103と、主軸回転制御部104と、チルトテーブル回転制御部105と、ターンテーブル回転制御部106等とを備える。ここで、各部101〜106は、それぞれ個別のハードウエアにより構成することもできるし、ソフトウエアによりそれぞれ実現する構成とすることもできる。
【0019】
送りテーブル移動制御部101は、送りテーブル用モータ33の回転駆動を制御して送りテーブル3をガイド部材31に沿ってY軸線方向に往復移動させる。
スライダ移動制御部102は、スライダ用モータ52の回転駆動を制御してスライダ5を案内面41aに沿ってX軸線方向に往復移動させる。
ヘッド移動制御部103は、主軸ヘッド用モータ62の回転駆動を制御して主軸ヘッド6を案内面5aに沿ってZ軸線方向に往復移動させる。
【0020】
主軸回転制御部104は、主軸用モータ72の回転駆動を制御して工具主軸7をZ軸線回りで回転駆動させる。
チルトテーブル回転制御部105は、チルトテーブル用モータ82の回転駆動を制御してチルトテーブル8をA軸線回りで所定角度だけ回転(揺動)駆動させる。
ターンテーブル回転制御部106は、ターンテーブル用モータ99の回転駆動を制御してターンテーブル9をC軸線回りで回転駆動もしくは所定角度だけ回転駆動させる。
【0021】
制御装置100は、例えば、直方体状の工作物Wの平坦な面を切削加工する場合、チルトテーブル用モータ82を駆動制御して工作物Wを所定角度に傾斜させ、主軸用モータ72を駆動制御して、環状工具90を回転させ、送りテーブル用モータ33、スライダ用モータ52及び主軸ヘッド用モータ62を駆動制御して、環状工具90(190,290)と工作物WとをX軸線方向、Y軸線方向及びZ軸線方向に相対移動することにより、環状工具90(190,290)を工作物Wの例えば平坦な上面に切り込ませて工作物Wの上面の切削加工を行う。
【0022】
(2.第1の形態の環状工具の形状)
図2A及び図2Bに示すように、第1形態の環状工具90は、工具軸線Rtと同軸上で工具軸線Rt方向に異なる位置に設けられる3つの直円錐台状の工具本体91A,91B,91Cと、工具本体91Aの小径端面91Aaから延びる円柱状の工具軸92とで構成される。3つの工具本体91A,91B,91Cは、この順で環状工具90の工具根本(工具軸92側)から工具先端に向かって並べて設けられる。第1形態の環状工具90では、工具本体91Aは、先頭刃に相当し、工具本体91B及び工具本体91Cは、後続刃に相当する。
【0023】
各工具本体91A,91B,91Cの外周面は、直円錐面状のすくい面91Ab,91Bb,91Cbとして形成され、各工具本体91A,91B,91Cの大径端面は、平坦な逃げ面91Ac,91Bc,91Ccとして形成される。工具本体91Bの根元側の小径端面91Baは、工具本体91Aの逃げ面91Acと密接するように設けられ、工具本体91Cの根元側の小径端面91Caは、工具本体91Bの逃げ面91Bcと密接するように設けられる。そして、工具本体91A,91B,91C及び工具軸92は、一体物で形成される。
【0024】
各工具本体91A,91B,91Cのすくい面91Ab,91Bb,91Cbと逃げ面91Ac,91Bc,91Ccとの成す稜線は、連続した円形状、すなわち途中で分断されていない円形状の切れ刃91Ar,91Br,91Crとして形成される。切れ刃91Ar,91Br,91Crの径da,db,dcは、工具先端に向かうに従って小径となるように、すなわち切れ刃91Arの径daが最も大径に形成され、切れ刃91Crの径dcが最も小径に形成され、切れ刃91Brの径dbが中間の径に形成される。
【0025】
工具軸線Rtに対し直角な方向から見たときの各工具本体91A,91B,91Cのすくい面91Ab,91Bb,91Cbと逃げ面91Ac,91Bc,91Ccとの成す刃先角αは、同一角度に形成される。この刃先角αは、切れ刃91Ar,91Br,91Crの強度を保持するため、45度以上、好ましくは70度から80度で形成される。図5に示すように、環状工具90は、直方体状の工作物Wの平坦な上面WsをG方向に切削加工するとき、各切れ刃91Ar,91Br,91Crのすくい角φ、すなわち工具軸Rtに直角な方向から見たすくい面91Ab,91Bb,91Cbと上面Wsに垂直な直線Ltとの成す角φが正の同一の角度となるように形成される。
【0026】
そして、図5に示すように、環状工具90の各切れ刃91Ar,91Br,91Crのうち、工作物Wの上面Wsに最初に切り込んでいく切れ刃91Arは荒加工刃として形成され、次に切り込んでいく切れ刃91Brは中仕上げ加工刃として形成され、最後に切り込んでいく切れ刃91Crは仕上げ加工刃として形成される。すなわち、切れ刃91Arが切り込み量taで切り込んだ箇所を切れ刃91Brが切り込み量tb(≦ta)で切り込み、切れ刃91Brが切り込んだ箇所を切れ刃91Crが切り込み量tc(≦tb)で切り込むように形成される。
【0027】
荒加工刃の切れ刃91Arは、切り込み量taが他の切り込み量tb,tcより多いため、高耐熱性及び高耐久性が要求され、仕上げ加工刃の切れ刃91Crは、加工精度を高めるため、高切削性が要求され、中仕上げ加工刃の切れ刃91Brは、中間の耐熱性、耐久性及び切削性が要求される。よって、切れ刃91Ar,91Br,91Crは、工具先端に向かうに従って高硬度の刃となるように形成されることが望ましい。例えば、切れ刃91Crは、ダイヤモンド工具とし、切れ刃91Ar,91Brは、セラミック工具とする。
【0028】
さらに、荒加工刃の切れ刃91Arの刃先形状と中仕上げ加工刃の切れ刃91Br及び仕上げ加工刃の切れ刃91Crの刃先形状が異なるように形成されることが望ましい。例えば、切れ刃91Br,91Crは、シャープエッジ、すなわち刃先が鋭角に尖った形状に形成され、切れ刃91Arは、刃先処理、すなわち図6Aに示すR形状もしくは図6Bに示すC面取り形状に形成される。なお、切れ刃91Arは、上述のように最も大径に形成されているため、回転による冷却効果が高く、荒加工刃に適している。
【0029】
以上のような形状の環状工具90は、3つの切れ刃91Ar,91Br,91Crを備えているため、1回の環状工具90の送りでの切り込み量が多くなり、加工時間の短縮化を図れる。また、従来の工具で加工した切り込み量と同一の切り込み量を環状工具90で加工した場合、1つの切れ刃91Ar又は91Br又は91Crに作用する力を低減でき、工具寿命を向上できる。また、3つの切れ刃91Ar,91Br,91Crが荒加工刃、中仕上げ加工刃、仕上げ加工刃にできるので、1回の環状工具90の送りでの加工面精度の向上を図れる。
【0030】
また、環状工具90の工具本体91Cの外周面の周速度、例えば切れ刃91Crの周速度と、工作物Wと切れ刃91Crとの接触点(切削点)の移動速度との速度比を+1.0(周速度≧移動速度)とし、工具本体91B、工具本体91Aの順で速度比を上昇させた場合は以下の効果が得られる。すなわち、切れ刃91Crでは仕上げ精度を向上でき、切れ刃91Br及び91Arでは切屑が工具本体91B及び工具本体91Aの各外周面に引っ張られて分断されるので、切屑の排出効果を高められる。また、工具本体91Aの上記速度比を1.0とし、工具本体91B、工具本体91Cの順で速度比を下降させた場合は、切れ刃91Ar、切れ刃91Br、切れ刃91Crの順で摩耗を抑えられる。なお、工具本体91Bの上記速度比を1.0とした場合は、平均化された上記効果が得られる。
【0031】
なお、工具本体91Cの速度比を+1.0とした場合、切屑の排出効果が得られ難いが、すくい面91Cbにチップブレーカを設けることで切屑の排出効果が得られる。具体的には、図7Aに示すように、すくい面91Cbの高さ方向の中央付近に環状の溝91Cdを設けることで、また、図7Bに示すように、すくい面91Cbの高さ方向に延びる環状の溝91Ceをすくい面91Cbの周方向に90度間隔で設けることで、溝91Cd,91Ce部分で切屑が分断されるので、切屑の排出効果が得られる。なお、溝91Cd,91Ceの形成本数は、任意の数でよい。
【0032】
(3.環状工具を用いた切削加工方法)
次に、環状工具90を用いた切削方法を、図3のフローチャート及び図4A,Bの切削加工状態図を参照して直方体状の工作物Wの平坦な上面Wsを切削加工する場合について説明する。なお、初期状態においては、チルトテーブル8は、C軸線とZ軸線が平行になるように位置決めされているとする。
【0033】
先ず、制御装置100は、チルトテーブル8をA軸線回りで回転(揺動)させ、工作物Wの上面Wsを傾斜させる(図3のステップS1)。具体的には、図4A,Bに示すように、チルトテーブル回転制御部105は、チルトテーブル用モータ82の回転駆動を制御してチルトテーブル8をA軸線回りで90度−θ度回転(揺動)駆動させる。ここで、θは、刃先角αとすくい角φとの差である。
【0034】
そして、制御装置100は、環状工具90を回転させる(図3のステップS2)。具体的には、図4A,Bに示すように、主軸回転制御部104は、主軸用モータ72の回転駆動を制御して工具主軸7を環状工具90とともに回転軸線Rt回りで回転方向rtに回転駆動させる。
【0035】
そして、制御装置100は、工作物Wの上面Wsの切削点Pta,Ptb,Ptcに環状工具90の切れ刃91Ar,91Br,91Crをそれぞれ位置決めする(図3のステップS3)。具体的には、図4A,Bに示すように、送りテーブル移動制御部101は、送りテーブル用モータ33の回転駆動を制御して送りテーブル3をガイド部材31に沿ってY軸線方向に移動させ、スライダ移動制御部102は、スライダ用モータ52の回転駆動を制御してスライダ5を案内面41aに沿ってX軸線方向に移動させ、ヘッド移動制御部103は、主軸ヘッド用モータ62の回転駆動を制御して主軸ヘッド6を案内面5aに沿ってZ軸線方向に移動させることで、工作物Wの外周面Wsの切削点Pta,Ptb,Ptcに環状工具90の切れ刃91Ar,91Br,91Crをそれぞれ位置決めする。
【0036】
そして、制御装置100は、環状工具90及び工作物Wを相対移動させて工作物Wの上面Wsを切削加工する(図3のステップS4)。具体的には、図4A,Bに示すように、送りテーブル移動制御部101は、送りテーブル用モータ33の回転駆動を制御して送りテーブル3をガイド部材31に沿ってY軸線方向に移動させ、スライダ移動制御部102は、スライダ用モータ52の回転駆動を制御してスライダ5を案内面41aに沿ってX軸線方向に移動させ、ヘッド移動制御部103は、主軸ヘッド用モータ62の回転駆動を制御して主軸ヘッド6を案内面5aに沿ってZ軸線方向に移動させることで、環状工具90及び工作物WをX軸線方向、Y軸線方向及びZ軸線方向に移動させて工作物Wの上面WsをG方向に切削加工する。
【0037】
このとき、環状工具90は、図5に示すように、切れ刃91Arが切り込み量taで切り込んだ箇所を切れ刃91Brが切り込み量tb(≦ta)で切り込み、切れ刃91Brが切り込んだ箇所を切れ刃91Crが切り込み量tc(≦tb)で切り込む。よって、工作物Wの上面Wsは、1回の環状工具90の送りで荒加工、中仕上げ加工及び仕上げ加工が施される。また、環状工具90は、工具本体91A,91B,91Cの工具外周面をすくい面91Ab,91Bb,91Cbが回転しながら工作物Wの外周面Wsに対し切り込んでいく引き切り作用を示す。このため、引き切り作用により切削抵抗力を低減して切れ刃91Ar,91Br,91Crの温度を低減できるので、環状工具90の工具寿命の向上を図れる。よって、工作物Wが、切れ刃91Ar,91Br,91Crの温度が問題となるチタン合金やインコネル等の難切削材で形成されていても、環状工具90を用いた切削加工ではより高能率な切削が可能となる。
【0038】
そして、制御装置100は、切削加工が完了したか否かを判断し(図3のステップS5)、切削加工が完了していないと判断したときは切削加工を継続する。一方、切削加工が完了したと判断したときは次工作物Wの有無を判断し(図3のステップS6)、次工作物Wが有ると判断したときは現工作物Wを次工作物Wと交換し(図5のステップS7)、ステップS1に戻って上述の処理を繰り返す。一方、次工作物Wが無いと判断したときは環状工具90の回転を停止し(図5のステップS8)、全ての処理を終了する。
【0039】
(4.第2の形態の環状工具の形状)
第1の形態の環状工具90は、工作物Wの平坦な上面Wsを切削加工するとき、各切れ刃91Ar,91Br,91Crのすくい角φが正の同一の角度となるように形成したが、すくい角が負となる切れ刃を形成した環状工具としてもよい。例えば、図8Aに示すように、環状工具190は、工具軸線Rtと同軸上で工具軸線Rt方向に異なる位置に設けられる2つの直円錐台状の工具本体91D,91Eと、工具本体91Dの小径端面91Daから延びる円柱状の工具軸92とで構成される。2つの工具本体91D,91Eは、この順で環状工具190の工具根本(工具軸92側)から工具先端に向かって並べて設けられる。第2形態の環状工具190では、工具本体91Dは、先頭刃に相当し、工具本体91Eは、後続刃に相当する。
【0040】
各工具本体91D,91Eの外周面は、直円錐面状のすくい面91Db,91Ebとして形成され、各工具本体91D,91Eの大径端面は、平坦な逃げ面91Dc,91Ecとして形成される。工具本体91Eの根元側の小径端面91Eaは、工具本体91Dの逃げ面91Dcと密接するように設けられる。そして、工具本体91D,91E及び工具軸92は、一体物で形成される。各工具本体91D,91Eのすくい面91Db,91Ebと逃げ面91Dc,91Ecとの成す稜線は、連続した円形状、すなわち途中で分断されていない円形状の切れ刃91Dr,91Erとして形成される。切れ刃91Dr,91Erの径dd,deは、工具先端に向かうに従って小径となるように形成される。
【0041】
工具軸線Rtに対し直角な方向から見たときの工具本体91Dのすくい面91Dbと逃げ面91Dcとの成す刃先角αdは、工具本体91Eのすくい面91Ebと逃げ面91Ecとの成す刃先角αeより大きくなるように形成される。すなわち、図8Bに示すように、環状工具190は、工作物Wの平坦な上面Wsを切削加工するとき、切れ刃91Drのすくい角φdは負となり、切れ刃91Erのすくい角φeは正となるように形成される。これにより、切れ刃91Drは、剛性を高められ、切れ刃91Erは、切削性を高められる。
【0042】
(5.第3の形態の環状工具の形状)
第1、第2の形態の環状工具90,190は、切削刃を有する工具として形成したが、切削刃及び砥石を有する工具として形成してもよい。例えば、図9に示すように、環状工具290は、工具軸線Rtと同軸上で工具軸線Rt方向に異なる位置に設けられる1つの直円錐台状の工具本体91Fと、1つの半球形状の砥石91Gと、砥石91Gに接続される工具軸92Fとで構成される。第3形態の環状工具290では、工具本体91Fは、先頭刃に相当し、砥石91Gは、後続刃に相当する。
【0043】
工具本体91Fの外周面は、直円錐面状のすくい面91Fbとして形成され、工具本体91Fの大径端面は、平坦な逃げ面91Fcとして形成される。工具本体91Fのすくい面91Fbと逃げ面91Fcとの成す稜線は、連続した円形状、すなわち途中で分断されていない円形状の切れ刃91Frとして形成される。砥石91Gの径は、工具本体91Fの切れ刃91Frの径よりも小径となるように形成される。
【0044】
工具軸92Fは、工具本体91Fの中央に穿設された貫通穴91Fdに一端側が軸受91bbを介して挿入され、他端側が小径端面91Faから延びるように設けられる。砥石91Gは、主軸用モータ72により強制的に任意の速度で駆動回転し、工具本体91Fは、環状工具290の送り方向に直角な方向の切削力と、環状工具290の送り方向の送り力との合成力によるつれ回りで第1工具軸92Fに対し従動的に駆動回転する。この環状工具290では、砥石91Gで超仕上げ加工が可能となるので、1回の送りでの加工面精度をさらに向上できる。
【0045】
(6.その他)
なお、上述の実施形態では、第1形態の環状工具90の工具本体91A,91B,91C及び工具軸92は、一体物で形成する構成としたが、工具本体91A,91B,91C及び工具軸92の一部もしくは全部を別体で設け、ボルト等により接続する構成としてもよい。第2形態の環状工具190の工具本体91D,91E及び工具軸92も同様である。また、第1形態の環状工具90は、3つの工具本体91A,91B,91Cを備える構成としたが、2つもしくは4つ以上の工具本体を備える構成としてもよい。第2形態の環状工具190も3つ以上の工具本体を備える構成としてもよい。
【0046】
また、第1形態の環状工具90の切れ刃91Ar,91Br,91Crの径da,db,dcは、工具先端に向かうに従って小径となるように形成したが、同一径となるように形成してもよい。第2形態の環状工具190も同様である。また、第1形態の環状工具90の切れ刃91Ar,91Br,91Crの切り込み量ta,tb,tcは、切れ刃91Ar,91Br,91Crの径で調整する構成としたが、工具本体91A,91B,91Cの工具軸線Rt方向の厚みで調整する構成、又は径及び厚みで調整する構成としてもよい。
【0047】
また、環状工具90の工具本体91は、円錐台状に形成したが、軸直角断面が円であればよく、例えば円柱状もしくは逆円錐台状に形成してもよい。この場合の環状工具は、すくい面を正とすると逃げ面が工作物Wと干渉するおそれがあるため、すくい面を負とするか逃げ面となる部分を凹ませて工作物Wとの干渉を防止する。また、砥石91Gは、半球状に形成したが、環状砥石でもよく、例えば円筒状や円錐台状等に形成してもよい。
【0048】
また、上述の実施形態では、直方体状の工作物Wの平坦な上面Wsを切削加工する場合について説明したが、円筒状の工作物WWの外周面WWsを周方向に切削する場合、すなわちX(プランジ)方向送りでの加工も同様である。すなわち、図10に示すように、環状工具90の工具軸線Rtと、切れ刃91Arの切削点Ptaを通る接線Lfとの成す角がθの状態になるようにセットする。そして、環状工具90を工具軸線Rt回りで回転方向rtに回転させるとともに、工作物Wを回転軸線Rw回りで回転方向rwに回転させることにより、工作物WWの外周面WWsをGp方向に切削加工する。
【0049】
また、円筒状の工作物WWの外周面WWsを回転軸線Rw方向に切削する場合、すなわちZ(トラバース)方向送りでの加工も同様である。すなわち、図11に示すように、環状工具90の工具軸線Rtと、工作物WWを回転軸線Rwとの成す角がθの状態になるようにセットする。そして、環状工具90を工具軸線Rt回りで回転方向rtに回転させるとともに、工作物Wを回転軸線Rw回りで回転方向rwに回転させ、環状工具90Aを工作物WWの回転軸線Rwに平行な方向に送ることにより、もしくは環状工具90の送りはせずに工作物WWを回転軸線Rwに平行な方向に送ることにより、工作物WWの外周面WWsをGt方向に切削加工する。
【0050】
(7.効果)
本実施形態の切削装置1は、環状の先頭刃91A,91D,91F及び先頭刃91A,91D,91Fより工具先端側に設けられる後続刃91B,91C,91E,91Gを有する環状工具90,190,290と、環状工具90,190,290を取り付け、環状工具90,190,290を当該環状工具の軸線Rt回りに回転させる工具主軸71と、工作物Wを保持する工作物保持台9と、工具主軸71と工作物保持台9との相対位置及び工具主軸71の回転を制御する制御装置100と、を備える。そして、制御装置100は、工具主軸71及び工作物保持台9を、先頭刃91A,91D,91Fの外周面がすくい面91Ab,91Db,91Fbとなり、先頭刃91A,91D,91Fの端面が逃げ面91Ac,91Dc,91Fcとなる相対位置関係に環状工具90,190,290を配置し、先頭刃91A,91D,91Fで工作物Wの加工を行いながら、先頭刃91A,91D,91Fで加工された箇所を後続刃91B,91C,91E,91Gで加工を行う。
【0051】
環状工具90,190,290は、複数刃を備えているため、1回の送りでの切り込み量は、1回の従来の工具の送りでの切り込み量よりも多くなり、加工時間の短縮化を図れる。また、従来の工具で加工した切り込み量と同一の切り込み量を環状工具90で加工した場合、各刃に作用する力を低減でき、工具寿命を向上できる。
【0052】
また、先頭刃91A,91D,91Fと後続刃91B,91C,91E,91Gは、同軸上に設けられるので、各刃に作用する力を確実に低減できる。
また、環状工具90,190は、工具先端に向かうに従って小径の刃となるように形成されるので、工具根本側の刃91A,91Dは大径となり、回転による冷却効果が得られる。
また、環状工具90は、工具先端側が仕上げ加工刃として形成され、工具根本側が荒加工刃として形成され、仕上げ加工刃の切り込みが荒加工刃の切り込みより小さいので、加工面精度を向上できる。
【0053】
また、環状工具90は、仕上げ加工刃と荒加工刃との間に中仕上げ加工刃が形成され、中仕上げ加工刃の切り込みが仕上げ加工刃の切り込みより大きく荒加工刃の切り込みより小さいので、各刃に作用する力をより低減でき、工具寿命をさらに向上できる。
また、環状工具90,190は、工具先端に向かうに従って高硬度の刃となるように形成されるので、工具先端側の刃91C,91Eは仕上げ加工刃に適したものとなる。
【0054】
また、環状工具90は、工具先端側がシャープエッジな刃となるように形成され、工具根本側が刃先処理された刃となるように形成されるので、工具先端側の刃91Cは仕上げ加工刃に適し、工具根本側の刃91Aは荒加工刃に適したものとなる。
また、後続刃91Eは、外周面がすくい面91Ebとなる環状に形成され、環状工具190は、工具先端に向かうに従って環状工具190の軸線に直角な方向から見た外周面の成すすくい角が大きい刃(換言すると、外周面と端面との成す刃先角が小さい刃)となるように形成される。すなわち、先頭刃91Dは、外周面の成すすくい角φdを負のすくい角とし、後続刃91Eは、外周面の成すすくい角φeを正のすくい角とする(換言すると、後続刃91Eの外周面と端面との成す刃先角αeが、先頭刃91Dの外周面と端面との成す刃先角αdよりも小さい角とする)ので、切れ刃91Drは、剛性を高められ、切れ刃91Erは、切削性を高められる。
【0055】
また、環状工具90は、工具先端側の刃91Cにチップブレーカ91Cd又は91Ceが形成されるので、切屑が工作物W等に絡まることを防止できる。
また、環状工具290は、工具先端側が駆動源により強制駆動される刃91Gとして形成され、工具根本側が切削力により従動駆動される刃91Fとして形成されるので、刃91Gとして砥石を適用できる。
また、環状工具290は、工具最先端に砥石91Gが形成され、工具最先端以外の部分に切削刃91Fが形成されるので、加工面精度をさらに向上できる。
【0056】
本実施形態の切削方法は、環状の先頭刃91A,91D,91F及び先頭刃91A,91D,91Fより工具先端側に設けられる後続刃91B,91C,91E,91Gを有する環状工具90,190,290と、環状工具90,190,290を取り付け、環状工具90,190,290を当該環状工具90,190,290の軸線Rt回りに回転させる工具主軸71と、工作物Wを保持する工作物保持台9と、を備える切削装置1の切削方法であって、工具主軸71及び工作物保持台9を、先頭刃91A,91D,91Fの外周面がすくい面91Ab,91Db,91Fbとなり、先頭刃91A,91D,91Fの端面が逃げ面91Ac,91Dc,91Fcとなる相対位置関係に配置する配置工程と、先頭刃91A,91D,91Fで工作物Wの加工を行いながら、先頭刃91A,91D,91Fで加工された箇所を後続刃91B,91C,91E,91Gで加工を行う加工工程と、を備える。本実施形態の切削方法によれば、上述した切削装置1における効果と同様の効果を奏する。
【0057】
本実施形態の環状工具90,190,290は、外周面がすくい面91Ab,91Db,91Fbとなり、端面が逃げ面91Ac,91Dc,91Fcとなる環状の先頭刃91A,91D,91F及び先頭刃91A,91D,91Fより工具先端側に設けられる後続刃91B,91C,91E,91Gを有し、先頭刃91A,91D,91Fで工作物Wの加工を行いながら、先頭刃91A,91D,91Fで加工された箇所を後続刃91B,91C,91E,91Gで加工を行う。本実施形態の環状工具90,190,290では、先頭刃91A,91D,91Fで加工した工作物Wの加工箇所を加工しながら後続刃91B,91C,91E,91Gで加工を行うので、1回の環状工具90,190,290の送りでの切り込み量は、1回の従来の工具の送りでの切り込み量よりも多くなり、加工時間の短縮化を図れる。また、従来の工具で加工した切り込み量と同一の切り込み量を環状工具で加工した場合、1つの刃に作用する力を低減でき、工具寿命を向上できる。
【符号の説明】
【0058】
1:切削装置、 9:工作物保持台、 71:工具主軸、 100:制御装置、 90,190,290:環状工具、 91Ab,91Bb,91Cb,91Db,91Eb,91Fb:すくい面、 91Ac,91Bc,91Cc,91Fc:逃げ面、 91Ar,91Br,91Cr,91Dc,91Ec,91Dr,91Er,91Fr:切れ刃、 91G:砥石、 W,WW:工作物
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11