特許第6565399号(P6565399)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6565399
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】歯車加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23F 5/16 20060101AFI20190819BHJP
   B23F 21/06 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
   B23F5/16
   B23F21/06
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-137636(P2015-137636)
(22)【出願日】2015年7月9日
(65)【公開番号】特開2017-19034(P2017-19034A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2018年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】夏田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】大谷 尚
(72)【発明者】
【氏名】中野 浩之
【審査官】 津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−058505(JP,A)
【文献】 実公昭44−029280(JP,Y1)
【文献】 特開2011−218455(JP,A)
【文献】 中国実用新案第202804382(CN,U)
【文献】 特開2014−210335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 1/04
B23F 1/06
B23F 1/08
B23F 5/16
B23F 5/28
B23F 21/06
B23F 21/10
B23D 43/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に複数の突条工具刃を有する加工用工具と、
前記加工用工具をその中心軸線回りに回転させ、且つ、工作物をその中心軸線回りに回転させ、前記加工用工具を前記工作物に対して相対的に移動することで、前記工作物に歯車を形成する駆動装置と、
を備える歯車加工装置であって、
前記駆動装置は、
前記加工用工具の中心軸線と前記工作物の中心軸線とをねじれた状態にし、前記工作物の回転と前記加工用工具の回転とを同期させながら、前記加工用工具を前記工作物に対して前記工作物の中心軸線方向に直進させ、前記複数の突条工具刃で前記工作物に歯車を加工し、
前記加工用工具は、
前記複数の突条工具刃のそれぞれの径方向外面、前記加工用工具の中心軸線と平行で且つ前記加工用工具の工具先端から工具後端に向かうに従って段階的に拡径となる多段に形成され
前記段階的に拡径となる多段の前記突条工具刃における径方向外面の周方向幅が、前記加工用工具の工具先端から工具後端に向かうに従って段階的に狭小幅となるように形成される、
歯車加工装置。
【請求項2】
前記加工用工具は、前記複数の突条工具刃を一体で形成される、請求項1に記載の歯車加工装置。
【請求項3】
前記加工用工具は、各段の前記突条工具刃のピッチ円上の刃厚、モジュール及び刃数が同一となるように形成される、請求項1又は2に記載の歯車加工装置。
【請求項4】
前記加工用工具は、工具先端側の前記突条工具刃が荒加工用に形成され、工具後端側の前記突条工具刃が仕上げ加工用に形成される、請求項1〜の何れか一項に記載の歯車加工装置。
【請求項5】
前記仕上げ加工用の前記突条工具刃の一刃当たりの切込断面積は、前記荒加工用の前記突条工具刃の一刃当たりの切込断面積よりも小さくなるように形成される、請求項4に記載の歯車加工装置。
【請求項6】
前記加工用工具は、前記仕上げ加工用に形成される前記突条工具刃を除く前記突条工具刃の1刃当たりの切込断面積が同一となるように形成される、請求項4又は5に記載の歯車加工装置。
【請求項7】
外周に複数の突条工具刃を有する加工用工具と、
前記加工用工具をその中心軸線回りに回転させ、且つ、工作物をその中心軸線回りに回転させ、前記加工用工具を前記工作物に対して相対的に移動することで、前記工作物に歯車を形成する駆動装置と、
を備える歯車加工装置であって、
前記駆動装置は、
前記加工用工具の中心軸線と前記工作物の中心軸線とをねじれた状態にし、前記工作物の回転と前記加工用工具の回転とを同期させながら、前記加工用工具を前記工作物に対して前記工作物の中心軸線方向に直進させ、前記複数の突条工具刃で前記工作物に歯車を加工し、
前記加工用工具は、
前記複数の突条工具刃のそれぞれの径方向外面が、前記加工用工具の中心軸線と平行で且つ前記加工用工具の工具先端から工具後端に向かうに従って段階的に拡径となる多段に形成され、
前記複数の突条工具刃を一体で形成される、
歯車加工装置。
【請求項8】
外周に複数の突条工具刃を有する加工用工具と、
前記加工用工具をその中心軸線回りに回転させ、且つ、工作物をその中心軸線回りに回転させ、前記加工用工具を前記工作物に対して相対的に移動することで、前記工作物に歯車を形成する駆動装置と、
を備える歯車加工装置であって、
前記駆動装置は、
前記加工用工具の中心軸線と前記工作物の中心軸線とをねじれた状態にし、前記工作物の回転と前記加工用工具の回転とを同期させながら、前記加工用工具を前記工作物に対して前記工作物の中心軸線方向に直進させ、前記複数の突条工具刃で前記工作物に歯車を加工し、
前記加工用工具は、
前記複数の突条工具刃のそれぞれの径方向外面が、前記加工用工具の中心軸線と平行で且つ前記加工用工具の工具先端から工具後端に向かうに従って段階的に拡径となる多段に形成され、
各段の前記突条工具刃のピッチ円上の刃厚、モジュール及び刃数が同一となるように形成される、
歯車加工装置。
【請求項9】
外周に複数の突条工具刃を有する加工用工具と、
前記加工用工具をその中心軸線回りに回転させ、且つ、工作物をその中心軸線回りに回転させ、前記加工用工具を前記工作物に対して相対的に移動することで、前記工作物に歯車を形成する駆動装置と、
を備える歯車加工装置であって、
前記駆動装置は、
前記加工用工具の中心軸線と前記工作物の中心軸線とをねじれた状態にし、前記工作物の回転と前記加工用工具の回転とを同期させながら、前記加工用工具を前記工作物に対して前記工作物の中心軸線方向に直進させ、前記複数の突条工具刃で前記工作物に歯車を加工し、
前記加工用工具は、
前記複数の突条工具刃のそれぞれの径方向外面が、前記加工用工具の中心軸線と平行で且つ前記加工用工具の工具先端から工具後端に向かうに従って段階的に拡径となる多段に形成され、
工具先端側の前記突条工具刃が荒加工用に形成され、工具後端側の前記突条工具刃が仕上げ加工用に形成される、
前記仕上げ加工用に形成される前記突条工具刃を除く前記突条工具刃の1刃当たりの切込断面積が同一となるように形成される、
歯車加工装置。
【請求項10】
前記駆動装置は、
前記加工用工具の中心軸線と前記工作物の中心軸線とをねじれた状態にするとき、前記工作物の中心軸線と前記加工用工具の中心軸線とを平行に配置して加工するときの加工点を前記工作物の仮想加工点と定義し、前記工作物の中心軸線と前記工作物の仮想加工点を通る平面を平面Aと定義し、前記平面Aに直交し且つ前記工作物の中心軸線を通る平面を平面Bと定義し、前記平面A及び前記平面Bに直交し且つ前記工作物の仮想加工点を通る平面を平面Cと定義し、
前記平面Cに対して前記工作物及び前記加工用工具を前記平面Cの法線方向から投影した場合に、前記仮想加工点に位置する前記加工用工具の中心軸線を前記工作物の中心軸線回りに所定角度だけ回転した状態とし、
前記平面Bに対して前記工作物及び前記加工用工具を前記平面Bの法線方向から投影した場合に、前記工作物の中心軸線と前記加工用工具の中心軸線とを所定角度を有して傾斜した状態とし、
前記平面Aに対して前記工作物及び前記加工用工具を前記平面Aの法線方向から投影した場合に、前記工作物の中心軸線と前記加工用工具の中心軸線とを平行な状態とする、請求項1〜の何れか一項に記載の歯車加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マシニングセンタ等の工作機械を用いて切削加工により工作物に内歯又は外歯を創成する有効な手法として、例えば、特許文献1に記載の加工方法がある。この加工方法は、中心軸線(工具軸線)回りに回転可能な加工用工具と、加工用工具の工具軸線に対して所定の角度で傾斜した中心軸線(工作物軸線)回りに回転可能な工作物とを同期回転させ、加工用工具を工作物の工作物軸線方向に複数回送って切削加工することにより歯を創成する加工方法である。
【0003】
この加工方法で用いられる加工用工具には、1回の工作物軸線方向の送りで工作物を所定量で切削可能な複数の突条工具刃が設けられる。各突条工具刃は、径方向外面(刃先面)が平坦(1段)で刃先幅が同一に形成されている。このため、この加工用工具では、荒加工から仕上げ加工まで突条工具刃の同一の箇所が工作物と接触するので、当該箇所の摩耗が激しく工具寿命が短くなる。摩耗した突条工具刃は、再研磨すればよいが、複数の突条工具刃の刃先面を包絡する形状は円錐面状に形成されているため、再研磨により突条工具刃の精度が低下する傾向にある。
【0004】
特許文献2には、摩耗した工具刃を再研磨した後でも、工具刃の精度を維持できる工具刃の軸直角断面刃形輪郭を所定の方法で求め、当該軸直角断面刃形輪郭で形成した歯車の加工用工具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−45687号公報
【特許文献2】特開2005−66815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1,2に記載の加工用工具では、荒加工から仕上げ加工まで順次行うので、加工時間の短縮に限界がある。また、特許文献2に記載の加工用工具は、シェーパー加工用の工具であり、特許文献1に記載の加工用工具と工作物とを同期回転させて切削加工により歯を創成する方法には適用できない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、加工用工具と工作物とを同期回転させて切削加工により歯車を創成する際の加工時間の短縮化及び工具寿命の向上を図れる歯車加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の歯車加工装置は、外周に複数の突条工具刃を有する加工用工具と、前記加工用工具をその中心軸線回りに回転させ、且つ、工作物をその中心軸線回りに回転させ、前記加工用工具を前記工作物に対して相対的に移動することで、前記工作物に歯車を形成する駆動装置と、を備える歯車加工装置であって、前記駆動装置は、前記加工用工具の中心軸線と前記工作物の中心軸線とをねじれた状態にし、前記工作物の回転と前記加工用工具の回転とを同期させながら、前記加工用工具を前記工作物に対して前記工作物の中心軸線方向に直進させ、前記複数の突条工具刃で前記工作物に歯車を加工し、前記加工用工具は、前記複数の突条工具刃のそれぞれの径方向外面、前記加工用工具の中心軸線と平行で且つ前記加工用工具の工具先端から工具後端に向かうに従って段階的に拡径となる多段に形成され、前記段階的に拡径となる多段の前記突条工具刃における径方向外面の周方向幅が、前記加工用工具の工具先端から工具後端に向かうに従って段階的に狭小幅となるように形成される。
【0009】
この加工用工具では、工作物に対し工作物の中心軸線方向に直進させることにより、多段の突条工具刃で順次切削を行うことになる。よって、従来の加工用工具のように複数回の工作物軸線方向の送りを行わなくても大きな切削量を得ることができるので、加工時間の短縮化を図れるとともに、工具摩耗を抑制して工具寿命の向上を図れる。そして、工具先端の突条工具刃は、最も幅広の周方向幅で形成されるので、剛性を高めることができ、極端な摩耗を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係る歯車加工装置の全体構成を示す斜視図である。
図2A図1の歯車加工装置で使用される加工用工具の概略を工具軸線方向から見た図である。
図2B図2Aの加工用工具を工具軸線に直角な方向から見たA−A線断面図である。
図3図2Aの加工用工具の第1、第2、第3突条工具刃の拡大斜視図である。
図4A図2Aの加工用工具の第1突条工具刃での工作物の切削量を示す工具軸線方向から見た部分断面図である。
図4B図2Aの加工用工具の第2突条工具刃での工作物の切削量を示す工具軸線方向から見た部分断面図である。
図4C図2Aの加工用工具の第3突条工具刃での工作物の切削量を示す工具軸線方向から見た部分断面図である。
図5図2の加工用工具の第1、第2、第3突条工具刃での工作物の切削状態を工具軸線に直角な方向から見た断面図である。
図6図2の加工用工具で工作物に歯車を加工するときの配置状態を示す斜視図である。
図7A図6を工具軸線方向から見た図である。
図7B図6を工具軸線に直角であって水平方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1.歯車加工装置の構成)
歯車加工装置の一例として、5軸マシニングセンタを例に挙げ、図1を参照して説明する。つまり、当該歯車加工装置1は駆動軸として、相互に直交する3つの直進軸(X,Y,Z軸)及び2つの回転軸(A軸、C軸)を有する装置である。
図1に示すように、歯車加工装置1は、ベッド10と、コラム20と、サドル30と、回転主軸40と、テーブル50と、チルトテーブル60と、ターンテーブル70と、制御装置100等とを備える。なお、図示省略するが、ベッド10と並んで既知の自動工具交換装置が設けられる。
【0012】
ベッド10は、ほぼ矩形状からなり、床上に配置される。このベッド10の上面には、コラム20がベッド10に対してX軸方向に移動可能に設けられる。コラム20のX軸に平行な側面(摺動面)20aには、サドル30がコラム20に対してY軸方向に移動可能に設けられる。
回転主軸40は、サドル30に対して回転可能に設けられ、加工用工具90を支持する。加工用工具90は、工具ホルダ80に保持されて回転主軸40の先端に固定され、回転主軸40の回転に伴って回転する。また、加工用工具90は、コラム20及びサドル30の移動に伴ってベッド10に対してX軸方向及びY軸方向に移動する。
【0013】
ベッド10の上面には、テーブル50がベッド10に対してZ軸方向に移動可能に設けられる。テーブル50の上面には、チルトテーブル60を支持するチルトテーブル支持部61が設けられる。そして、チルトテーブル支持部61には、チルトテーブル60が水平方向のA軸回りで回転(揺動)可能に設けられる。チルトテーブル60には、ターンテーブル70がA軸に直角なC軸回りで回転可能に設けられる。ターンテーブル70には、工作物Wがチャッキングされる。
制御装置100は、駆動装置としてコラム20、サドル30、回転主軸40、テーブル50、チルトテーブル60、及びターンテーブル70の移動を制御して、工作物Wと加工用工具90とをX軸方向、Z軸方向、Y軸方向、A軸回り及びC軸回りに相対移動することにより、工作物Wの切削加工を行う。
【0014】
(2.加工用工具の形状)
上述の歯車加工装置1は、加工用工具90を工作物Wの中心軸線(工作物軸線Rw)方向に送って切削加工することにより歯を創成する。この歯車加工装置1に用いられる加工用工具90は、図2A,2Bに示すように、円筒形状に形成され、外周に複数の突条工具刃91を有する。そして、各突条工具刃91は、第1突条工具刃91A、第2突条工具刃91B及び第3突条工具刃91Cを有する。
【0015】
第1、第2、第3突条工具刃91A,91B,91Cの径方向外面(刃先面)91a,91b,91cは、加工用工具90の中心軸線(工具軸線Rt)と平行で且つ加工用工具90の工具先端から工具後端に向かうに従って段階的に拡径となる多段(本例では、3段)に形成される。なお、加工用工具90の工具先端とは、加工時に加工用工具90と工作物Wとが始めに接する側をいう。
【0016】
すなわち、工具先端側の第1刃先面91aは、突条工具刃91の延在方向に亘って同一の最も小径の外径d1に形成され、工具根本側の第3刃先面91cは、突条工具刃91の延在方向に亘って同一の最も大径の外径d3に形成される。そして、第1刃先面91aと第3刃先面91cの中間に位置する第2刃先面91bは、突条工具刃91の延在方向に亘って同一の外径d1と第3刃先面91cの外径d3の中間の大きさの外径d2に形成される。また、周方向に隣り合う突条工具刃91,91間の谷部92は、同一の外径diに形成される。
【0017】
また、図3に示すように、第1、第2、第3突条工具刃91A,91B,91Cの第1、第2、第3刃先面91a,91b,91cの工具軸線Rt方向の長さは、加工時に工作物Wに干渉しない同一長さkで形成される。そして、第1、第2、第3刃先面91a,91b,91cの周方向幅は、各刃先面91a,91b,91cにおいて突条工具刃91の延在方向(工具先端から工具後端に向かう方向)に亘って同一幅(長さkの間の各刃先面91a,91b,91cの周方向幅w1,w2,w3が同一幅)で、加工用工具90の工具先端から工具後端に向かうに従って段階的に狭小幅(w1>w2>w3)となるように形成される。
【0018】
すなわち、第1刃先面91aは、突条工具刃91の延在方向に亘って同一の最も幅広の周方向幅w1で形成され、第3刃先面91cは、突条工具刃91の延在方向に亘って同一の最も狭小の周方向幅w3で形成され、第2刃先面91bは、突条工具刃91の延在方向に亘って同一の周方向幅w1と周方向幅w3の中間の大きさの周方向幅w2で形成される。また、周方向に隣り合う突条工具刃91,91の谷部92の幅は、同一の幅wに形成される。
【0019】
また、第1、第2、第3突条工具刃91A,91B,91Cは、一体で形成、すなわち1つの金属ブロックから切削されて形成される。これにより、第1、第2、第3突条工具刃91A,91B,91Cは、高精度な同位相となる。そして、加工用工具90は、第1、第2、第3突条工具刃91A,91B,91Cのピッチ円P上の刃厚d、圧力角θ、モジュール及び刃数が同一となるように形成される。
【0020】
これにより、第1突条工具刃91Aの刃端面の輪郭形状は、第2突条工具刃91Bの刃端面の輪郭形状に含まれ、第2突条工具刃91Bの刃端面の輪郭形状は、第3突条工具刃91Cの刃端面の輪郭形状に含まれることになる。よって、第1突条工具刃91Aで切削加工された工作物Wの切削箇所は、第2突条工具刃91Bでは切削加工されず、第2突条工具刃91Bは、第1突条工具刃91Aよりも径方向に突出した部分で工作物Wを切削加工することになる。そして、第2突条工具刃91Bで切削加工された工作物Wの切削箇所は、第3突条工具刃91Cでは切削加工されず、第3突条工具刃91Cは、第2突条工具刃91Bよりも径方向に突出した部分で工作物Wを切削加工することになる。
【0021】
この加工用工具90は、第1突条工具刃91Aが荒加工用に形成され、第2突条工具刃91Bが中仕上げ加工用に形成され、第3突条工具刃91Cが仕上げ加工用に形成される。すなわち、加工用工具90は、工作物Wの工作物軸線方向Rwへの1回の送りのみで工作物Wに所定の歯を創成できる。そして、加工用工具90は、図4A,B,Cに示すように、荒加工用の第1突条工具刃91A及び中仕上げ加工用の第2突条工具刃91Bは、1刃当たりの切込断面積Eaが同一となるように形成され、仕上げ加工用の第3突条工具刃91Cは、1刃当たりの切込断面積Ebが上記切込断面積Eaよりも小さくなるように形成される。
【0022】
そして、図4A,B,C及び図5に示すように、第1突条工具刃91Aは、工作物Wに加工する歯車の隣り合う歯の歯先面間の部分を所定の切り込み量t1で切削し、第2突条工具刃91Bは、第1刃先面91aで切削した箇所をさらに所定の切り込み量t2(=(d2−d1)/2>t1)で切削し、第3突条工具刃91Cは、第2刃先面91bで切削した箇所をさらに所定の切り込み量t3(=(d3−d2)/2<t1<t2)で切削する。なお、第3突条工具刃91Cの切り込み量t3は、仕上げ加工に必要な最低限の切り込み量でよい。これにより、工作物Wに加工する歯車の歯底面が形成される。また、第1、第2、第3突条工具刃91A,91B,91Cの各切削により、工作物Wに加工する歯車の隣り合う歯の対向する各歯面も同時に形成される。
【0023】
以上により、この加工用工具90は、工作物Wに対し工作物軸線Rw方向に1回のみ直進させることにより、第1、第2、第3突条工具刃91A,91B,91Cで順次切削を行って歯を創成することになる。よって、従来の加工用工具のように複数回の工作物軸線方向の送りを行わなくても大きな切削量を得ることができるので、加工時間の短縮化を図れるとともに、工具摩耗を抑制して工具寿命の向上を図れる。
【0024】
また、第1突条工具刃91Aの第1刃先面91aは、最も幅広の周方向幅w1で形成されるので、剛性を高めることができ、荒加工時における極端な摩耗を抑制できる。また、第3突条工具刃91Cの切削抵抗は、第1、第2突条工具刃91A,91Bの切削抵抗よりも小さくなるので、切削面の加工精度を向上でき、また最も狭小の周方向幅w3で形成されていても仕上げ加工時における極端な摩耗を抑制できる。また、加工用工具90は、円筒形状であるため、従来の円錐状の加工用工具と比較して製作が容易でコストを低減できる。
【0025】
(3.歯車加工の基本動作)
次に、上述した加工用工具90を用いて、工作物Wの内周面に歯車を加工する際の基本動作について、図6及び図7A,Bを参照して説明する。本実施形態においては、工作物Wの内周面に歯車を加工する場合を例に挙げるが、外周面に歯車を加工する場合も実質的に同様である。ここで、図7A,Bにおいて、加工用工具90の外周には、図6に示すように第1、第2、第3突条工具刃91A,91B,91Cを有するが、簡略しているため第1、第2、第3突条工具刃91A,91B,91Cを図示していない。
【0026】
この歯車加工では、工作物Wと加工用工具90を、図6及び図7A,Bに示すように、ねじれた状態とする。すなわち、図7Aに示すように、加工用工具90の工具軸線Rtは、工作物Wの工作物軸線Rw回りに所定角度回転した状態にあり、図7Bに示すように、工作物Wの工作物軸線Rwは、加工用工具90の工具軸線Rtに対し所定角度傾斜した状態にあり、工作物Wの工作物軸線Rwと加工用工具90の工具軸線Rtとは、平行な状態にある。なお、加工用工具90の工具軸線Rtの方向をZ軸方向とし、加工用工具90の工具軸線Rtに直角な水平方向をX軸方向とし、加工用工具90の工具軸線Rtに直角な垂直方向をY軸方向とする。つまり、図7Aは、図6をZ軸方向から見た図であり、図7Bは、図6をX軸方向から見た図である。
【0027】
ここで、図7A,Bの二点鎖線で示すように、工作物Wの工作物軸線RwをZ軸方向に平行に配置して工作物軸線Rw´とし、工作物Wの工作物軸線Rw´と加工用工具90の工具軸線RtをX軸方向に平行に配置して加工するときの加工点を工作物Wの仮想加工点Psと定義する。そして、工作物Wの工作物軸線Rw´(加工用工具90の工具軸線Rt)と工作物Wの仮想加工点Psを通る平面を平面Aと定義する。つまり、平面Aは、X−Z平面に平行な平面である。また、平面Aに直交し且つ工作物Wの工作物軸線Rw´を通る平面を平面Bと定義する。つまり、平面Bは、Y−Z平面に平行な平面である。また、平面A及び平面Bに直交し且つ工作物Wの仮想加工点Psを通る平面を平面Cと定義する。つまり、平面Cは、X−Y平面に平行な平面である。
【0028】
このとき、図7Aに示すように、平面C(X−Y平面に平行な平面)に対して工作物W及び加工用工具90を平面Cの法線方向(Z軸方向)から投影した場合に、仮想加工点Psに位置する加工用工具90の工具軸線Rtを、工作物Wの工作物軸線Rw回りに第一角度βだけ回転した状態とする。第一角度βは、加工用工具90の第1、第2、第3突条工具刃91A,91B,91Cに加工時のすくい角及び逃げ角を形成するためのオフセット角である。加工時の逃げ角を確保することにより、第1、第2、第3突条工具刃91A,91B,91Cにおける加工点Pt以外の部分が、工作物Wに接触することを回避できる。つまり、加工用工具90を上記のように簡易な形状としたとしても、確実に加工時の逃げ角を確保することができる。
【0029】
さらに、図7Bに示すように、平面B(Y−Z平面に平行な平面)に対して工作物W及び加工用工具90を平面Bの法線方向(X軸方向)から投影した場合に、工作物Wの工作物軸線Rwと加工用工具90の工具軸線Rtとを、第二角度αを有して傾斜した状態とする。第二角度αは、第1、第2、第3突条工具刃91A,91B,91Cの加工用工具90の工具軸線Rtに対するねじれ角と、工作物Wに形成される歯車のねじれ角との合計となる交差角である。本例では、加工用工具90のねじれ角は0度であるため、第二角度αは、工作物Wに形成する歯車のねじれ角と同一の角度となる。そして、平面Aに対して工作物W及び加工用工具90を平面Aの法線方向から投影した場合に、工作物Wの中心軸線Rwと加工用工具90の中心軸線Rwとを平行な状態とする。
【0030】
続いて、工作物Wを工作物軸線Rw回りに回転させると共に、加工用工具90を工具軸線Rt回りに回転させる。このとき、工作物Wの回転と加工用工具90の回転とは、加工点Ptにおけるそれぞれの周速が同一となるように同期されている。ただし、上述したように、工作物Wの工作物軸線Rwと加工用工具90の工具軸線Rtとはねじれているため、それぞれの周速が同一であったとしても、加工点Ptにおけるそれぞれの接線ベクトル方向が異なるため、両者に相対速度を有することになる。これにより、加工用工具90により工作物Wを加工することができる。さらに、両者を同期回転させながら、加工用工具90を工作物Wに対して工作物軸線Rw方向に直進させる(図7Bの太い矢印にて図示)。本実施形態においては、加工用工具90をZ軸方向に固定しておき、工作物WをZ軸方向に移動させる。その結果、工作物Wには、歯車が形成される。
【0031】
(4.その他)
なお、上述した実施形態では、加工用工具90は、3段の第1、第2、第3突条工具刃91A,91B,91Cを一体で形成する構成としたが、3段の第1、第2、第3突条工具刃91A,91B,91Cを別々に形成してボルト等により締結する構成としてもよい。また、第1、第2、第3突条工具刃91A,91B,91Cは、ピッチ円P上の刃厚dを同一に形成したが、第1、第2、第3突条工具刃91A,91B,91Cの順にピッチ円P上の刃厚dを大きくするように形成してもよい。また、加工用工具90は、3段の第1、第2、第3突条工具刃91A,91B,91Cを備える構成としたが、2段もしくは4段以上の突条工具刃を備える構成としてもよい。
【0032】
また、各刃先面91a,91b,91cの周方向幅w1,w2,w3は、突条工具刃91の延在方向に亘って同一とせず、工具先端側の端部のみ周方向幅w1,w2,w3とし、長さkの間で周方向幅w1,w2,w3が徐々にもしくは段階的に狭小となるようにしてもよい。また、第1、第2、第3突条工具刃91A,91B,91Cの径方向外面(刃先面)91a,91b,91cは、平面でも曲面でもよい。
【0033】
また、5軸マシニングセンタである歯車加工装置1は、工作物WをA軸旋回可能とするものとした。これに対して、5軸マシニングセンタは、縦形マシニングセンタとして、加工用工具90をA軸旋回可能とする構成としてもよい。また、本発明をマシニングセンタに適用する場合を説明したが、歯車加工の専用機に対しても同様に適用可能である。
【0034】
(5.効果)
本実施形態の歯車加工装置1は、外周に複数の突条工具刃91A,91B,91Cを有する加工用工具90と、加工用工具90をその中心軸線Rt回りに回転させ、且つ、工作物Wをその中心軸線Rw回りに回転させ、加工用工具90を工作物Wに対して相対的に移動することで、工作物Wに歯車を形成する駆動装置20,30,40,50,60,70と、を備える。そして、複数の突条工具刃91A,91B,91Cのそれぞれの径方向外面は、加工用工具90の中心軸線Rtと平行で且つ加工用工具90の工具先端から工具後端に向かうに従って段階的に拡径となる多段に形成される。そして、駆動装置20,30,40,50,60,70は、加工用工具90の工具軸線Rtと工作物Wの工作物軸線Rwとをねじれた状態にし、工作物Wの回転と加工用工具90の回転とを同期させながら、加工用工具90を工作物Wに対して工作物Wの工作物軸線Rw方向に直進させ、複数の突条工具刃91A,91B,91Cで工作物Wに歯車を加工する。
【0035】
この加工用工具90では、工作物Wに対し工作物Wの中心軸線Rw方向に直進させることにより、多段の突条工具刃91A,91B,91Cで順次切削を行うことになるので、加工用工具90の工作物軸線Rw方向への1回の送りで大きな切削量を得ることができる。よって、従来の加工用工具のように複数回の工作物軸線Rw方向の送りを行わなくても大きな切削量を得ることができるので、加工時間の短縮化を図れるとともに、工具摩耗を抑制して工具寿命の向上を図れる。
【0036】
また、加工用工具90は、突条工具刃91A,91B,91Cの径方向外面の周方向幅を、各段において突条工具刃91A,91B,91Cの延在方向に亘って同一幅で、加工用工具90の工具先端から工具後端に向かうに従って段階的に狭小幅となるように形成される。工具先端の突条工具刃91Aは、最も幅広の周方向幅で形成されるので、剛性を高めることができ、極端な摩耗を抑制できる。
【0037】
また、加工用工具90は、突条工具刃91A,91B,91Cを一体で形成されるので、突条工具刃91A,91B,91Cを高精度な同位相とすることができる。
また、加工用工具90は、各段の突条工具刃91A,91B,91Cのピッチ円上の刃厚、モジュール及び刃数が同一となるように形成される。これにより、工具先端の突条工具刃91Aの刃端面の輪郭形状は、次に並ぶ突条工具刃91Bの刃端面の輪郭形状に含まれ、その突条工具刃91Bの刃端面の輪郭形状は、さらに次に並ぶ突条工具刃91Cの刃端面の輪郭形状に含まれることになる。よって、先に加工された切削箇所は、次からは加工されないので、突条工具刃91B,91Cに掛かる負担を軽減して工具寿命の向上を図れる。
【0038】
また、加工用工具90は、工具先端側の突条工具刃91Aが荒加工用に形成され、工具後端側の突条工具刃91Cが仕上げ加工用に形成される。工具先端側の突条工具刃91Aは、最も幅広の周方向幅で形成されるので、剛性を高めることができ、荒加工時における極端な摩耗を抑制できる。
また、加工用工具90は、仕上げ加工用に形成される突条工具刃91Cを除く突条工具刃91A,91Bの1刃当たりの切込断面積が同一となるように形成される。突条工具刃91Cの切削抵抗は、他の突条工具刃91A,91Bの切削抵抗よりも小さくなるので、切削面の加工精度を向上でき、また最も狭小の周方向幅で形成されていても仕上げ加工時における極端な摩耗を抑制できる。
【0039】
また、駆動装置20,30,40,50,60,70は、加工用工具90の工具軸線Rtと工作物Wの工作物軸線Rwとをねじれた状態にするとき、工作物Wの中心軸線Rwと加工用工具90の中心軸線Rtとを平行に配置して加工するときの加工点を工作物Wの仮想加工点Psと定義し、工作物Wの中心軸線Rwと工作物Wの仮想加工点Psを通る平面を平面Aと定義し、平面Aに直交し且つ工作物Wの中心軸線Rwを通る平面を平面Bと定義し、平面A及び平面Bに直交し且つ工作物Wの仮想加工点Psを通る平面を平面Cと定義する。
【0040】
そして、平面Cに平行な第一平面に対して工作物W及び加工用工具90を第一平面の法線方向から投影した場合に、仮想加工点Psに位置する加工用工具90の中心軸線Rtを工作物Wの中心軸線Rw回りに所定角度だけ回転した状態とし、平面Bに平行な第二平面に対して工作物W及び加工用工具90を第二平面の法線方向から投影した場合に、工作物Wの中心軸線Rwと加工用工具90の中心軸線Rtとを所定角度を有して傾斜した状態とし、平面Aに平行な第三平面に対して工作物W及び加工用工具90を第三平面の法線方向から投影した場合に、工作物Wの中心軸線Rwと加工用工具90の中心軸線Rtとを平行な状態とする。これにより、本実施形態の加工用工具90による高精度な歯車加工が可能となる。
【符号の説明】
【0041】
1:歯車加工装置、 90:加工用工具、 91:突条工具刃、 91A:第1突条工具刃、 91B:第2突条工具刃、 91C:第3突条工具刃、 91a:第1刃先面、 91b:第2刃先面、 91c:第3刃先面、 W:工作物
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7A
図7B