(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
重量平均分子量が55万以上でありガラス転移温度が−50℃以下であるスチレンブタジエンゴムを含むゴム成分、加硫剤としてのジチオモルフォリン、加硫促進剤、カーボンブラック及びオイルを含有し、
前記スチレンブタジエンゴムの含有量が、前記ゴム成分に対して、85質量%以上である、コンベヤベルト用ゴム組成物。
前記加硫促進剤に対する前記ジチオモルフォリンの質量比(ジチオモルフォリン/加硫促進剤)が、0.2〜0.3である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコンベヤベルト用ゴム組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について以下詳細に説明する。
なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、成分が複数の種類の物質を含む場合、上記成分の含有量とは、複数の種類の物質の合計の含有量を指す。
本発明において、耐熱性、ゴム物性及び省電力性のうちのいずれかがより優れる場合を「本発明の効果により優れる」という。
【0011】
[コンベヤベルト用ゴム組成物]
本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物(本発明のゴム組成物)は、
重量平均分子量が55万以上でありガラス転移温度が−50℃以下であるスチレンブタジエンゴムを含むゴム成分、加硫剤としてのジチオモルフォリン、加硫促進剤、カーボンブラック及びオイルを含有し、
前記スチレンブタジエンゴムの含有量が、前記ゴム成分に対して、85質量%以上である、コンベヤベルト用ゴム組成物である。
【0012】
本発明のゴム組成物はこのような構成をとるため、所望の効果が得られるものと考えられる。その理由は明らかではないが、およそ以下のとおりと推測される。
コンベヤベルトのローラー乗越え時の走行抵抗を低減させ、稼動時の電力を削減するために、ガラス転移温度が低い、例えば、ブタジエンゴムのようなポリマーを用いる等の手法が有効であると考えられた。
しかし、耐熱性が要求されるコンベヤベルトにおいては、熱時物性や熱老化後の物性を保持する必要があり、ガラス転移温度が低いポリマーなどを用いると耐熱性を満足させることができない場合があることを本発明者は知見した。
これに対して、本発明は、重量平均分子量が55万以上でありガラス転移温度が−50℃以下であるスチレンブタジエンゴム(SBR)を特定量で含み、加硫剤としてのジチオモルフォリンを使用することによって、耐熱性、省電力性、ゴム物性(特に破断強度、耐摩耗性)に優れると考えられる。
詳細には、加硫剤としてジチオモルフォリンを用いることでモノスルフィド結合を形成することができるため、耐熱性が優れると考えられる。また、ガラス転移温度が低いSBRを用いることでポリマー自体のエネルギーロスが小さくなり省電力性に優れると考えられる。SBRの重量平均分子量が高く、SBRの含有量がゴム成分の85質量%以上であることによってゴム物性に優れると考えられる。
次に、本発明のゴム組成物に用いられる各成分について詳述する。
【0013】
<ゴム成分>
本発明のゴム組成物に含有されるゴム成分は、重量平均分子量が55万以上でありガラス転移温度が−50℃以下であるスチレンブタジエンゴムを含む。
【0014】
<スチレンブタジエンゴム>
本発明のゴム組成物に含有されるスチレンブタジエンゴムは、その重量平均分子量が55万以上でありガラス転移温度が−50℃以下である。
スチレンブタジエンゴムは、スチレンとブタジエンとの共重合体である。
本発明において、スチレンブタジエンゴムの重量平均分子量は55万以上であり、本発明の効果(特にゴム物性と省電力性)により優れるという観点から、55万〜80万が好ましく、58万〜78万がより好ましい。
スチレンブタジエンゴムの重量平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値をもとにした標準ポリスチレン換算値である。
【0015】
本発明において、スチレンブタジエンゴムのガラス転移温度は−50℃以下であり、本発明の効果(特に省電力性)により優れるという観点から、−50〜−80℃が好ましく、−53〜−75℃がより好ましい。
スチレンブタジエンゴムのガラス転移温度は、JIS K7121:2012に準拠し、示差熱分析機器を用いて20℃/分の昇温温度で熱流速の変化を測定した時に得られる曲線において、変曲点を読み取った値である。
【0016】
スチレンブタジエンゴムはその製造方法について特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
【0017】
本発明において、スチレンブタジエンゴムの含有量はゴム成分の全量に対して85質量%以上であり、本発明の効果(特にゴム物性)により優れるという観点から、85〜95質量%が好ましく、87〜93質量%がより好ましい。
【0018】
本発明において、スチレンブタジエンゴムは変性されていないことが好ましい態様の1つとして挙げられる。ここで変性されたスチレンブタジエンゴムは官能基を有するスチレンブタジエンゴムを意味する。官能基としては例えば、フィラーと相互作用することが可能な官能基が挙げられる。具体的な官能基としては例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基が挙げられる。
【0019】
スチレンブタジエンゴムはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
複数の種類のスチレンブタジエンゴムを組合せて使用する場合、その組み合わせとしては例えば、重量平均分子量が55万以上60万未満のSBR(i)と重量平均分子量が60万以上80万以下のSBR(ii)との組合せ(組合せ1)が挙げられる。
本発明の効果(特に、耐熱性、ゴム物性(耐摩耗性、熱時の破断強度))により優れる点で、重量平均分子量が55万以上60万未満のSBR(i)と重量平均分子量が60万以上70万以下のSBRとの組合せが好ましい。
【0020】
組合せ1において、SBR(ii)に対するSBR(i)の質量比[SBR(i)/SBR(ii)]は、本発明の効果(特に、耐熱性、ゴム物性(耐摩耗性、熱時の破断強度))により優れる点で、1〜10であることが好ましく、1.5〜8であることがより好ましい。
【0021】
また、複数の種類のスチレンブタジエンゴムの組み合わせとしては例えば、ガラス転移温度が−54℃より高く−50℃以下のSBR(iii)と−80℃以上−54℃以下のSBR(iv)との組合せ(組合せ2)が挙げられる。
本発明の効果(特に、耐熱性、ゴム物性(耐摩耗性、熱時の破断強度))により優れる点で、ガラス転移温度が−54℃より高く−50℃以下のSBR(iii)と−70℃以上−54℃以下のSBRとの組合せが好ましい。
【0022】
組合せ2におけるSBR(iv)に対するSBR(iii)の質量比[SBR(iii)/SBR(iv)]は、SBR(ii)に対するSBR(i)の質量比と同様である。
【0023】
また、上記組合せとしては例えば、重量平均分子量が55万以上60万未満でありかつガラス転移温度が−54℃より高く−50℃以下であるSBR(v)と、重量平均分子量が60万以上80万以下でありかつガラス転移温度が−80℃以上−54℃以下であるSBR(vi)との組合せ(組合せ3)が挙げられる。
本発明の効果(特に、耐熱性、ゴム物性(熱時の破断強度))により優れる点で、重量平均分子量が55万以上60万未満でありかつガラス転移温度が−54℃より高く−50℃以下であるSBR(v)と、重量平均分子量が60万以上70万以下でありかつガラス転移温度が−70℃以上−54℃以下であるSBRとの組合せが好ましい。
【0024】
組合せ3において、SBR(v)に対するSBR(vi)の質量比[SBR(v)/SBR(vi)]は、SBR(ii)に対するSBR(i)の質量比と同様である。
【0025】
(ブタジエンゴム)
本発明のゴム組成物は、更にブタジエンゴムを含有することができる。ブタジエンゴムは特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
本発明のゴム組成物はブタジエンゴムを更に含有することによって、本発明の効果により優れる。
【0026】
ブタジエンゴムの重量平均分子量は、本発明の効果(特にゴム物性と省電力性)により優れるという観点から、20万〜90万であるのが好ましく、30万〜70万であるのがより好ましい。BRの重量平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算により測定された。
ブタジエンゴムのガラス転移温度は、本発明の効果(特に省電力性)により優れるという観点から、−90〜−110℃が好ましく、−100〜−110℃がより好ましい。ブタジエンゴムのガラス転移温度は、JIS K7121:2012に準拠し、示差熱分析機器を用いて20℃/分の昇温温度で熱流速の変化を測定した時に得られる曲線において、変曲点を読み取った値である。
【0027】
ブタジエンゴムの製造方法は特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
ブタジエンゴムはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
ブタジエンゴムの含有量は、本発明の効果(特に省電力性)により優れるという観点から、ゴム成分の全量に対して15質量%以下であることが好ましく、5〜12質量%がより好ましい。
【0029】
<ジチオモルフォリン>
本発明のゴム組成物は加硫剤としてジチオモルフォリンを含有する。
ジチオモルフォリンは下記式で表される化合物である。
【化1】
【0030】
ジチオモルフォリンはその製造方法について特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
【0031】
ジチオモルフォリンの含有量は、本発明の効果(特に耐熱性)により優れるという観点から、ゴム成分100質量部に対して、0.5〜2.0質量部であることが好ましく、0.8〜1.5質量部であることがより好ましい。
【0032】
本発明のゴム組成物は加硫剤として硫黄を実質的に含有しないのが好ましい態様の1つとして挙げられる。硫黄を実質的に含有しないとは、本発明のゴム組成物全量に対して、硫黄の量が、0〜0.1質量%であることを意味する。
【0033】
<加硫促進剤>
本発明のゴム組成物に含有される加硫促進剤は特に制限されない。例えば、チウラム系、アルデヒド・アンモニア系、グアニジン系、チオウレア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、ジチオカルバミン酸塩系等の加硫促進剤が挙げられる。
【0034】
チウラム系加硫促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラム・モノスルフィド(TS)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられる。
【0035】
アルデヒド・アンモニア系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、ヘキサメチレンテトラミン(H)等が挙げられる。
グアニジン系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、ジフェニルグアニジン等が挙げられる。
チオウレア系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、エチレンチオウレア等が挙げられる。
チアゾール系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、ジベンゾチアジルジスルフィド(DM)、2−メルカプトベンゾチアゾールおよびそのZn塩等が挙げられる。
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CZ)、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(NS)等が挙げられる。
ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、Na−ジメチルジチオカーバメート、Zn−ジメチルジチオカーバメート、Te−ジエチルジチオカーバメート、Cu−ジメチルジチオカーバメート、Fe−ジメチルジチオカーバメート、ピペコリンピペコリルジチオカーバメート等が挙げられる。
【0036】
なかでも、チウラム系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤が好ましい。
加硫促進剤はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
加硫促進剤の含有量は、本発明の効果(特に耐熱性)により優れるという観点から、ゴム成分100質量部に対して、3.0〜4.5質量部であることが好ましく、3.5〜4.0質量部であることがより好ましい。
【0038】
加硫促進剤に対するジチオモルフォリンの質量比(ジチオモルフォリン/加硫促進剤)は、本発明の効果(特に耐熱性)により優れるという観点から、0.2〜0.3であることが好ましく、0.22〜0.28であることがより好ましい。
【0039】
<カーボンブラック>
本発明のゴム組成物に含有されるカーボンブラックは特に限定されない。例えば、ISAF(Intermediate Super Abrasion Furnace)、HAF(High Abrasion Furnace)、SAF(Super Abrasion Furnace)、FEF(Fast Extruding Furnace)、GPF(General Purpose Furnace)、SRF(Semi−Reinforcing Furnace)、FT(Fine Thermal)、MT(Medium Thermal)等が挙げられる。
【0040】
なかでも、本発明の効果(特にゴム物性)により優れるという観点から、ISAFカーボンブラックが好ましい。
【0041】
カーボンブラックとしては、市販品を用いることができる。具体的には、ISAFとしてはショウブラックN220(昭和キャボット社製)、SAFとしてはシースト9(東海カーボン社製)、HAFとしてはシースト3(東海カーボン社製)、FEFとしてはHTC#100(新日化カーボン社製)等が例示される。また、GPFとしては旭#55(旭カーボン社製)、シーストV(東海カーボン社製)、SRFとしては旭#50(旭カーボン社製)、三菱ダイアブラックR(三菱化学社製)、FTとしては旭#15(旭カーボン社製)、HTC#20(新日化カーボン社製)等を用いることができる。
【0042】
カーボンブラックの含有量は、本発明の効果(特にゴム物性)により優れるという観点から、ゴム成分100質量部に対して、40〜60質量部であることが好ましく、45〜55質量部であることがより好ましい。
【0043】
<オイル>
本発明のゴム組成物はオイルを含有する。オイルはゴム組成物に使用できるオイルであれば特に制限されない。例えば、プロセスオイル、アロマオイル、油展品のゴムに含まれるオイルが挙げられる。
オイルはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0044】
オイルの含有量は、本発明の効果(特に省電力性と耐熱性)により優れるという観点から、ゴム成分100質量部に対して、ゴム成分100質量部に対して、5〜20質量部であることが好ましく、7〜19質量部であることがより好ましい。
【0045】
(その他の成分)
本発明のゴム組成物は、上記各成分以外に、必要に応じて、所定のスチレンブタジエンゴム及びBR以外のゴム;ジチオモルフォリン及び硫黄以外の加硫剤;カーボンブラック以外の充填剤;酸化亜鉛、ステアリン酸、オレイン酸およびこれらのZn塩等のような加硫助剤;加硫遅延剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤、揺変成付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、溶剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、防錆剤、接着付与剤、帯電防止剤などの添加剤が挙げられる。上記その他の成分の量は適宜選択することができる。
【0046】
カーボンブラック以外の充填剤としては、例えば、シリカが挙げられる。本発明のゴム組成物に使用することができるシリカは特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
シリカの含有量は、本発明の効果(特にゴム物性)がより優れる点で、ゴム成分100質量部に対して、5〜15質量部であることが好ましく、7.5〜12.5質量部であることがより好ましい。
【0047】
(製造方法)
本発明のゴム組成物の製造方法としては、例えば、ゴム成分、カーボンブラック、オイル及び必要に応じて使用することができる各種添加剤を、ロール、ニーダー、バンバリーミキサー等で混練して混合物を得て、ついで、上記のとおり得られた混合物に加硫剤、加硫促進剤を加えこれらを混練ロール機等で混練することによって製造する方法が挙げられる。
また、本発明のゴム組成物は、通常行われる条件で加硫することができる。例えば、温度140〜150℃程度の条件下で、0.5〜1時間、加熱することによって加硫することができる。加硫は必要に応じて加圧してもよい。
【0048】
(用途)
本発明のゴム組成物の用途としては、例えば、コンベヤベルトが挙げられる。
【0049】
[コンベヤベルト]
本発明のコンベヤベルトについて以下に説明する。
本発明のコンベヤベルトは、本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物を用いて製造されるコンベヤベルトである。
本発明のコンベヤベルトに使用されるゴム組成物は本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物であれば特に制限されない。
【0050】
本発明のコンベヤベルトは、上面カバーゴム層、補強層および下面カバーゴム層を有するコンベヤベルトであるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
下面カバーゴム層を構成する層の数は、1以上であればよい。2以上とすることができる。上面カバーゴム層も同様である。
下面カバーゴム層を構成する層の数が複数である場合、下面カバーゴム層の各層を形成するゴム組成物は同じでも異なってもよい。上面カバーゴム層も同様である。
【0051】
(下面カバーゴム層)
下面カバーゴム層が、本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物によって形成されるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。また下面カバーゴム層の少なくとも表面が本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物によって形成されるのが好ましい。本発明のコンベヤベルトの下面カバーゴム層が本発明のゴム組成物によって製造されている場合、本発明の効果により優れる。
本発明のコンベヤベルトにおいて、下面カバーゴム層の厚さが5〜20mmであるのが好ましく、6〜15mmであるのがより好ましい。ここで、下面カバーゴム層が複数の層で構成される場合、下面カバーゴム層の厚さはこれらの層の合計の厚さをいう。
【0052】
(補強層)
補強層の芯体は特に限定されず、通常のコンベヤベルトに用いられるものを適宜選択して用いることができる。具体例としては、例えば、綿布と化学繊維または合成繊維とからなるものにゴム糊を塗布、浸潤させたもの、RFL処理したものを折り畳んだもの、特殊織のナイロン帆布、スチールコード等が挙げられる。補強層の形状は特に限定されず、例えば、シート状、ワイヤー状の補強線を並列に埋込むものであってもよい。補強層はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0053】
(上面カバーゴム層)
上面カバーゴム層は2層以上から構成されていることが好ましい態様の1つとして挙げられる。例えば、運搬物搬送面となる外層と接着層としての内層を有する場合が挙げられる。上面カバーゴム層を製造するために使用されるゴム組成物は特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
【0054】
本発明のコンベヤベルトを添付の図面を用いて以下に説明する。本発明のコンベヤベルトは図面に限定されない。
【0055】
図1は、本発明のコンベヤベルトの好適な実施態様の一例を模式的に示した断面図である。
図1において、コンベヤベルト1は、補強層3を中心層とし、その両側に上面カバーゴム層2と下面カバーゴム層4が設けられており、上面カバーゴム層2は外層11と内層12の2層から構成され、下面カバーゴム層4は外層16と内層15の2層から構成されている。コンベヤベルト1は運搬物搬送面5を有する。
外層11、内層12、内層15及び外層16からなる群から選ばれる少なくとも1種を本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物によって形成することができる。内層15及び外層16からなる群から選ばれる少なくとも1種を本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物によって形成することが好ましく、少なくとも外層16を本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物によって形成することがより好ましい。
【0056】
(製造方法)
本発明のコンベヤベルトの製造方法は特に限定されず、通常用いられる方法等を採用することができる。具体的には、例えば、まず、ロール、ニーダー、バンバリーミキサー等を用いて各カバーゴム層用の原料を混練りした後、カレンダー等を用いて各カバーゴム層用にシート状に成形し、次に、得られた各層を補強層を挟み込むように所定の順序で積層し、150〜170℃の温度で10〜60分間加圧する方法が好適に例示される。
【0057】
本発明のコンベヤベルトは耐熱性に優れるため、60〜150℃の条件下で使用することができる。
【実施例】
【0058】
<ゴム組成物の製造>
下記表1に示す組成成分(質量部)を混合して各ゴム組成物を製造した。なお油展品であるSBR3については使用量を2段で示し、2段のうちの上段は油展品としてのSBR3の量であり、下段はSBR3に含まれる正味のSBRの量である。SBR4も同様である。
【0059】
<評価>
上記のとおり製造された各ゴム組成物について、以下の評価を行った。結果を下記表1に示す。
【0060】
・破断強度(T
B)
(試験片)
上記のとおり製造された各ゴム組成物を150℃の条件下で30分間加硫した各加硫ゴムから3号ダンベル状に試験片を打ち抜き、これを初期試験片とした。初期試験片の厚さは2.0mmであった。
(耐熱試験)
上記のとおり得られた初期試験片を100℃の条件下で168時間置く耐熱試験を行った。
【0061】
(引張試験)
((引張試験1:BL TB))
上記のとおり得られた初期試験片を用い、JIS K6251:2010に準じて、引張速度500mm/分での引張試験を行い、破断強度(T
B)[MPa]を室温(23℃)にて測定した。この結果を「BL TB」として示した。
【0062】
((引張試験2:AG TB・耐熱性の評価))
初期試験片を耐熱試験後の試験片に代えた他は、上記の同様に引張試験を行って破断強度(T
B)[MPa]を室温にて測定した。この結果を「AG TB」として示した。「AG TB」が大きいほど耐熱性(具体的には耐熱老化性)に優れる。
【0063】
((引張試験3:熱時 TB・熱時のゴム物性の評価))
引張試験の温度条件を100℃に代えた他は、上記BL TBと同様に引張試験を行って破断強度(T
B)[MPa]を測定した。この結果を「熱時 TB」として示した。「熱時 TB」が大きいほど熱時のゴム物性(破断強度)に優れる。
【0064】
・耐摩耗性
上記のとおり製造された各ゴム組成物を150℃の条件下で30分間加硫した各加硫ゴムのDIN摩耗試験をJIS K6264−2:2005に準じて行った。室温でDIN摩耗試験を行った際の摩耗量(mm
3)を測定した。摩耗量が少ないほうがゴム物性として耐摩耗性に優れることを示す。
【0065】
・省電力性
上記のとおり製造された各ゴム組成物を150℃の条件下で30分間加硫した各加硫ゴムについて、上島製作所社製の粘弾性測定装置を用い、温度20℃又は80℃、周波数10Hz、歪2%で貯蔵弾性率(E′)及びtanδを測定し、得られた測定値を用いて「tanδ/E′
1/3」を算出した。tanδ/E′
1/3が小さいほど、エネルギーロスが低く、省電力性に優れることを示す。温度20℃でのtanδ/E′
1/3を省電力性(20℃)、温度80℃でのtanδ/E′
1/3を省電力性(80℃)と示す。tanδ/E′
1/3が小さいほうが省電力性に優れる。
【0066】
【表1】
【0067】
上記表1に示す各SBRの詳細は下記表2のとおりである。
【表2】
【0068】
上記表1に示すSBR以外の各成分の詳細は以下のとおりである。
・BR:ブタジエンゴム、Nipol BR1220(日本ゼオン社製)、重量平均分子量57万、ガラス転移温度−105℃
・CB ISAF:カーボンブラックISAF(ショウブラックN220、昭和キャボット社製)
・シリカ:商品名ニップシールAQ、東ソーシリカ社製
・オイル1:アロマオイル(マシン油22、昭和シェル社製)
・ジチオモルフォリン:バルノックR、大内新興化学工業社製
・加硫促進剤1:N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(ノクセラーNS−P(NS)、三新化学工業社製)
・加硫促進剤2:テトラメチルチウラム・モノスルフィド(サンセラーTS、三新化学工業社製)
【0069】
表1に示す結果から明らかなように、スチレンブタジエンゴムの重量平均分子量が所定の範囲外である比較例1は耐熱試験後の試験片を用いて23℃の条件下で測定された破断強度(AG TB)が低く、耐熱性が悪かった。また比較例1は耐摩耗性が低くゴム物性が悪かった。比較例1は省電力性が悪かった。
【0070】
これに対して、実施例1〜3は所望の効果が得られた。
実施例1と実施例2、3とを比較すると、重量平均分子量が55万以上60万未満であるSBRと重量平均分子量が60万以上80万以下であるSBRとを併用する、又は、ガラス転移温度が−54℃より高く−50℃以下であるSBRと−80℃以上−54℃以下であるSBRとを併用する、実施例2、3は、重量平均分子量が55万以上60万未満でありガラス転移温度が−54℃より高く−50℃以下であるSBRを単独で使用する実施例1よりも、本発明の効果(特に、耐熱性、ゴム物性(熱時の破断強度))により優れた。
また、「BL TB」と「AG TB」について実施例1と実施例2、3とを比較すると、「BL TB」については実施例1が実施例2、3よりも高いものの、耐熱試験後に測定された「AG TB」については実施例2、3が実施例1よりも高かった。実施例1では耐熱試験後の「AG TB」が「BL TB」より大きく低下することに対し、実施例2、3ではその低下が非常に小さいことが明らかとなった。
【0071】
また、重量平均分子量が55万以上60万未満でありかつガラス転移温度が−54℃より高く−50℃以下であるSBRに対して、別の種類のSBRをそれぞれ併用する実施例2、3を比較すると、重量平均分子量が60万以上70万以下である、及び/又は、ガラス転移温度が−70℃以上−54℃以下であるSBRを併用する実施例2が、重量平均分子量が70万を超える、及び/又は、ガラス転移温度が−70℃未満であるSBRを併用する実施例3よりも、熱時の破断強度により優れた。