(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の配線基板における前記導電配線および前記第2の配線基板における前記導電配線のうちの一方を検出配線、他方を駆動配線として、前記第1の配線基板における前記導電配線と前記第2の配線基板における前記導電配線との間の静電容量の変化を検出する検出部と、
を備え、
前記検出部が検出した静電容量の変化に基づいて、タッチセンシングを行う、
請求項10に記載の液晶表示装置。
請求項7に記載の配線基板であって、かつ前記導電配線は、第3の面に複数形成され、平面視にて等間隔かつ平行に配列された第3の導電配線と、前記第3の面と積層方向における位置が異なる第4の面において、絶縁層を介して前記第3の導電配線と重なるように配置され、平面視にて前記第3の導電配線の配列方向と異なる方向に等間隔かつ平行に配列された第4の導電配線と、を有する第3の配線基板と、
前記第3の配線基板における前記基板と前記第3の配線基板における前記第3の導電配線との間に配置され、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、および半導体であるチャネル層を含む複数のトランジスタと、
前記第3の配線基板における前記基板上に一定方向に延びて配置され、前記ゲート電極と電気的に接続する分岐部を含むゲート配線と、
を備え、
前記第4の導電配線は、
前記ソース電極に電気的に接続するソース配線である、
半導体装置。
前記第3の面上において、平面視にて前記チャネル層を覆う位置に形成され、前記第3の導電配線と同一の層構成を有するとともに前記第3の導電配線とは電気的に独立した遮光層を備える、
請求項12に記載の半導体装置。
前記第1の配線基板における前記導電配線、前記半導体装置における前記第3の導電配線、前記半導体装置における前記ゲート配線、および前記半導体装置における前記第4の導電配線からなる配線群のうちから選んだ一つの配線と、前記配線群のその他の配線のうちから選んだ一つの配線とからなる一対の配線は、平面視にて互いに配列方向が異なっており、
前記一対の配線うち一方を検出配線、他方を駆動配線として、前記一対の配線の間の静電容量の変化を検出する検出部を備え、
前記検出部が検出した静電容量の変化に基づいて、タッチセンシングを行う、
請求項16に記載の液晶表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。すべての図面において、実施形態が異なる場合であっても、同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
各図面において、見易さのため、構成要素の厚さ、寸法の比率等は誇張されている。各図面において、見易さのため、構成要素の形状が簡略化されたり、構成要素の個数が減らされたりしている場合がある。
【0036】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態の配線基板について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態の配線基板の構成の一例を示す模式的な断面図である。
【0037】
図1に示すように、本実施形態の配線基板100は、基板15と、導電配線11とを備える。
配線基板100は、種々の電子機器として、あるいは電子機器の一部として用いることができる。配線基板100は、例えば、半導体を含む半導体装置であってもよい。配線基板100は、画像または映像を表示する電子機器である表示装置の一部であってもよい。例えば、配線基板100は、液晶表示装置、有機EL表示装置などの表示装置に用いることができる。
【0038】
基板15は、ナトリウム(Na)やカリウム(K)のようなアルカリ金属元素を実質的に含まない基板である。ここで、「実質的に含まない」とは、基板におけるアルカリ金属元素の含有率が1000ppm以下であることと定義する。
例えば、基板15は、ガラス基板のうち、いわゆる無アルカリ基板を用いてもよい。無アルカリ基板は、光透過性を有する。無アルカリ基板の例としては、例えば、アルミノ珪酸塩ガラス製の基板が挙げられる。
例えば、基板15は、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルムなどの透明樹脂基板であってもよい。
例えば、基板15は、シリコンウェハでもよい。
【0039】
後述する導電配線11に含まれる銅は、アルカリイオンおよび水分の存在下で、マイグレーションを起こすことがある。
基板15は、アルカリ金属元素を実質的に含まないため、基板15に含まれるアルカリ金属元素に起因する銅のマイグレーションを抑制することができる。
【0040】
導電配線11は、基板15上に形成される。導電配線11は、基板15側から、第1の導電酸化物層1、銅合金層2、および第2の導電酸化物層3がこの順に積層されて構成される。
以下では、基板15上の位置関係を説明するため、
図1に示すXYZ座標軸を参照する場合がある。X軸、Y軸は、基板15の板厚方向の表面に平行な平面において互いに直交する2軸である。Z軸は、X軸およびY軸に直交する軸である。Z軸の正方向は、基板15の板厚方向における一方の表面15aからその反対側の表面15bに向かう方向である。
【0041】
図1に示す例では、第1の導電性酸化物層1は、基板15の表面15aに積層されている。
銅合金層2は、第1の導電性酸化物層1において基板15と反対側の表面に積層されている。
第2の導電性酸化物層3は、銅合金層2において第1の導電性酸化物層1と反対側の表面に積層されている。
【0042】
導電配線11の平面視形状(Z軸方向から見た形状)は、特に限定されない。
図1には、一例として、Y軸方向に延びる複数の導電配線11がX軸方向に間をあけて配列されたストライプ状のパターンである。各導電配線11は互いに平行である。各導電配線11の配列間隔は変化していてもよいし、等間隔でもよい。
導電配線11の本数は、図示では3本であるが、4本以上であってもよい。
導電配線11の線幅は、配列方向によって変化していてもよいし、延在方向にわたって変化していてもよい。
図1では、一例として、各導電配線11の線幅は、延在方向において一定であり、かつ配列方向においても変化しない場合の例を図示している。
例えば、配線基板100を液晶表示装置などの表示装置に用いる場合、導電配線11の線幅は、0.5μm以上、6μm以下としてもよく、6μmを超えてもよい。
例えば、配線基板100を半導体装置に用いる場合、導電配線11は、半導体用の描画装置や露光装置を用いて、サブミクロンの線幅とすることができる。
【0043】
導電配線11の延在方向において線幅が変化している場合でも、あるいは線幅が一定の場合でも、導電配線11の配列方向(X軸方向)における端面は、表面15aに略直交している(直交している場合を含む)。このため、導電配線11において、第1の導電性酸化物層1、銅合金層2、および第2の導電性酸化物層3の線幅は、互いに等しい。
ここで、線幅が「互いに等しい」とは、導電配線11の延在方向に直交する断面(ZX平面)において、導電配線11の中心軸線CからX軸方向の端面までの距離のバラツキが、第1の導電性酸化物層1、銅合金層2、および第2の導電性酸化物層3の各層間で、±0.4μmの範囲内に入ることと定義する。
【0044】
このような構成により、第1の導電性酸化物層1と第2の導電性酸化物層3とは、銅合金層2の積層方向における表面に全体に密着し、銅合金層2を層厚方向に挟んでいる。このため、銅合金層2の積層方向の表面は、第1の導電性酸化物層1と第2の導電性酸化物層3とによって覆われている。
【0045】
このような第1の導電性酸化物層1、銅合金層2、および第2の導電性酸化物層3の線幅が互いに等しい導電配線11は、後述するように、1回の露光工程を含むフォトリソグラフィによって形成することができる。
【0046】
第1の導電性酸化物層1および第2の導電性酸化物層3は、いずれも、酸化インジウム、酸化亜鉛、および酸化錫を含む複合酸化物(混合酸化物)で形成される。
第1の導電性酸化物層1(第2の導電性酸化物層3)における酸化インジウムの量は、電気抵抗を低減するために、酸化亜鉛および酸化錫に比べて多くなるようにする。具体的には、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、および錫(Sn)の原子比で、インジウムが0.8以上にする。
すなわち、第1の導電性酸化物層1(第2の導電性酸化物層3)におけるインジウム、亜鉛、および錫の原子比は、複合酸化物に含まれるインジウム、亜鉛、および錫の原子数を、それぞれN
In、N
Zn、N
Sn(ただし、N
In、N
Zn、N
Sn>0)と表すとき、下記式(1)を満足するようにする。
【0047】
(N
Zn+N
Sn)/(N
In+N
Zn+N
Sn)<0.2 ・・・(1)
【0048】
第1の導電性酸化物層1(第2の導電性酸化物層3)において、上記式(1)の範囲の原子比となるように、酸化亜鉛と酸化錫とを含むことは、後述する銅合金層2との接触電位差を小さくすることにつながるため、導電配線11の信頼性向上の一助にもなる。
【0049】
第1の導電性酸化物層1(第2の導電性酸化物層3)の抵抗値をさらに低減するため、第1の導電性酸化物層1(第2の導電性酸化物層3)において、インジウム、亜鉛、および錫の原子比で、インジウムが0.9以上であってもよい。すなわち、下記式(1a)を満足してもよい。
【0050】
(N
Zn+N
Sn)/(N
In+N
Zn+N
Sn)<0.1 ・・・(1a)
【0051】
導電配線11をフォトリソグラフィで形成する場合に、ウェットエッチングによる加工性は、酸化錫が多いほど悪化し、酸化亜鉛が多いほど向上する。
そこで、本実施形態では、第1の導電性酸化物層1(第2の導電性酸化物層3)における亜鉛と錫との原子比は、下記式(2)を満足する。
【0052】
N
Zn/N
Sn>1.1 ・・・(2)
【0053】
第1の導電性酸化物層1(第2の導電性酸化物層3)において、酸化亜鉛が多くなりすぎると、比抵抗(電気抵抗率)が大きくなる。このため、第1の導電性酸化物層1(第2の導電性酸化物層3)における亜鉛の原子比は、下記式(3)を満足してもよい。
【0054】
N
Zn/(N
In+N
Zn+N
Sn)<0.15 ・・・(3)
【0055】
亜鉛の原子比は小さいほど比抵抗が小さくなる。導電配線11の比抵抗を小さくするため、第1の導電性酸化物層1(第2の導電性酸化物層3)における亜鉛の原子比は、下記式(3a)を満足してもよい。
【0056】
N
Zn/(N
In+N
Zn+N
Sn)<0.11 ・・・(3a)
【0057】
第1の導電性酸化物層1(第2の導電性酸化物層3)において、亜鉛の原子比を小さくすると、上記式(2)の関係から、錫の原子比が小さくなる。しかし、酸化錫の量が低下しすぎると、第1の導電性酸化物層1(第2の導電性酸化物層3)の低い電気抵抗が得にくくなる。
一方、酸化錫の量が多くなりすぎると、第1の導電性酸化物層1(第2の導電性酸化物層3)のエッチングの加工性が低下する。このため、第1の導電性酸化物層1(第2の導電性酸化物層3)における錫の原子比は、下記式(4)を満足してもよい。
【0058】
0.01<N
Sn/(N
In+N
Zn+N
Sn)<0.08 ・・・(4)
【0059】
上述したように、第1の導電性酸化物層1(第2の導電性酸化物層3)のウェットエッチングによる加工性は、酸化亜鉛および酸化錫の相対量によって変化する。第1の導電性酸化物層1(第2の導電性酸化物層3)のウェットエッチングによる加工性は、銅合金層2のウェットエッチングによる加工性と同程度にするとよい。第1の導電性酸化物層1(第2の導電性酸化物層3)と銅合金層2とのウェットエッチングによる加工性に差がありすぎると、一方が選択的にエッチングされてしまう。この場合、第1の導電性酸化物層1、銅合金層2、および第2の導電性酸化物層3の間の線幅を等しくすることが難しくなるおそれがある。
【0060】
第1の導電性酸化物層1(第2の導電性酸化物層3)と銅合金層2との線幅のバラツキを低減するためには、第1の導電性酸化物層1(第2の導電性酸化物層3)における亜鉛のインジウムに対する原子比は、下記式(5)を満足してもよい。第1の導電性酸化物層1(第2の導電性酸化物層3)における亜鉛のインジウムに対する原子比は、下記式(5a)を満足することがより好ましい。
【0061】
0.02<N
Zn/N
In<0.2 ・・・(5)
0.02<N
Zn/N
In<0.15 ・・・(5a)
【0062】
第1の導電性酸化物層1(第2の導電性酸化物層3)の比抵抗を低減するためには、第1の導電性酸化物層1(第2の導電性酸化物層3)における錫の原子比は、下記式(6)を満足してもよい。
【0063】
0.005<N
Sn/N
In<0.06 ・・・(6)
【0064】
第1の導電性酸化物層1(第2の導電性酸化物層3)において、錫のインジウムに対する原子比が、上記式(6)を満足することで、第1の導電性酸化物層1(第2の導電性酸化物層3)の比抵抗を小さくすることができる。
錫の原子比が0.07を超えると、上記式(1)、(2)の範囲で、亜鉛の添加も伴うため、第1の導電性酸化物層1(第2の導電性酸化物層3)の比抵抗が大きくなってしまう。
上記式(1)、(3)、(5)、(6)の範囲内で錫および亜鉛の添加量を調整することで、比抵抗をおおよそ、5×10
−4Ωcmから3×10
−4Ωcmの範囲内に収めることができる。
【0065】
第1の導電性酸化物層1(第2の導電性酸化物層3)には、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)など、インジウム、亜鉛、錫以外の金属元素の酸化物を少量、添加してもよい。
【0066】
第1の導電性酸化物層1および第2の導電性酸化物層3の層厚は、配線基板100の後工程、あるいは配線基板100に必要な信頼性条件に基づいて、適宜設定すればよい。
ただし、第2の導電性酸化物層3は、導電配線11の最表面に位置するため、製造時の後工程において、外力を受けやすい。このため、第2の導電性酸化物層3の層厚は、30nmより厚いことが好ましい。
第1の導電性酸化物層1の層厚は、例えば、10nm以上80nm以下としてもよい。
第2の導電性酸化物層3の層厚は、例えば、30nm以上100nm以上としてもよい。
【0067】
銅合金層2は、銅(Cu)と、第1の金属元素と、第2の金属元素とを含んで構成される。
第1の金属元素は、銅の原子量よりも大きな原子量を有し、銅と固溶体を形成する。
第2の金属元素は、銅の原子量よりも大きな原子量を有し、銅と固溶体を形成しない。
本明細書では「金属元素」は、いわゆる「半金属」を含む広義の意味で用いる。
金属元素同士の固体としての溶解度は、それらの原子半径、価電子の総数eと総原子数aとの比e/a(電子濃度)、あるいは化学的親和力などから推定できる。
しかしながら簡便には、金属元素同士の2元状態図から判断できる。
本実施形態では、金属元素が銅と固溶体を形成するかどうかは、配線基板100の保存環境温度および使用時の温度範囲等を考慮した温度範囲における銅と金属元素との2元状態図に基づいて判定する。例えば、判定に用いる温度範囲の例としては、−40℃以上250℃以下が挙げられる。
判定に用いる温度範囲において、銅の中に金属元素が50at%未満固溶する結晶αが90at%以上形成される場合に、金属元素は銅と固溶体を形成すると判定する。結晶αが形成されないか、または90at%未満形成される場合には、金属元素は銅と固溶体を形成しないと判定する。
【0068】
銅は、マイグレーションを起こしやすく、ウィスカーを形成しやすいため、信頼性に問題がある金属である。銅が多く含まれる銅合金にも同様な問題が生じる可能性がある。
本発明者らは、銅合金に含まれる銅以外の金属元素を選択する場合に、グレイン(結晶粒)内で銅の動きを抑え得る金属元素と、グレイン境界(結晶粒界)での銅の動きを抑制し得る金属元素とを選択することが重要であると考えた。
本発明者らは、検討を重ねた結果、銅合金層2に用いる銅合金の種類によっては、銅のマイグレーション等を抑制できることを見出した。
さらに、これらの観点で選択される金属元素の種類および添加量は、銅合金薄膜の導電率が低下しすぎないように選ばれることが好ましい。
【0069】
銅合金層2において、第1の金属元素は、主として、グレイン内で銅の動きを抑えるために添加される。
銅の動きを抑制するために添加される金属元素は、銅よりも重い金属元素が有効である。このため、第1の金属元素は、銅より大きな原子量を有する金属元素から選ばれる。
銅合金層2における第1の金属元素の添加量は、0.2at%以上、3at%以下としてもよい。
第1の金属元素の添加量が3at%を超えると、銅合金層2の導電率が低下してしまう。
第1の金属元素の添加量が0.2at%未満であると、銅の動きを抑える効果が低下してしまう。
【0070】
上記温度条件等で、銅に固溶し得る金属元素のうち、0.2at%以上固溶し得る金属元素としては、例えば、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、パラジウム(Pd)、金(Au)などが挙げられる。
これらの金属元素は、銅のグレイン内の銅原子と置換して銅と固溶体を形成する。このため、固溶強化によって、銅合金の強度が銅に比べて向上する。
第1の金属元素は、このような金属元素のうち、銅に比べて大きな原子量を有する金属元素からすることができる。第1の金属元素として、好適な金属元素の例としては、亜鉛、ガリウム、パラジウム、金のうち、1以上を選択できる。
上記金属元素のうち、亜鉛および金は、添加時に銅合金としての導電率の低下がより少ないため、より好適である。特に、亜鉛は、金に比べて低価格であるためより好ましい。
【0071】
銅合金層2において、第2の金属元素は、主として、グレイン境界での銅の動きを抑制するために添加される。
例えば、第2の金属元素は、ジルコニウム、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、セリウム(Ce)、ネオジウム(Nd)、サマリウム(Sm)、錫、アンチモン(Sb)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、およびビスマス(Bi)からなる群から1以上選択して用いることができる。
ビスマスは、銅の原子量の3倍以上の原子量を有するため、原子量の大きさ観点で好ましい。ビスマスは、広範囲の温度において、銅に固溶しない。
アンチモンは、銅の原子量の約2倍の原子量を有する。さらに、アンチモンは、銅合金化したときのスパッタレートが銅と大差ないため、銅合金のスパッタリング成膜の観点で特に好ましい。
【0072】
グレイン境界での銅の動きは、ナトリウム、水分などの存在下で加速されやすいと考えられる。銅薄膜や銅合金薄膜に応力などのストレスがさらに加わると、さらに銅が動きやすくなる。
このような銅の動きを抑制するため、本発明者らは、グレイン境界に異種の金属元素をアンカーとして配置させればよいと考えた。異種の金属元素は、銅よりも重いことで、アンカーとして機能する。
第2の金属元素は、銅と固溶体を形成しないため、結晶αの内部に固溶できず、グレイン境界に分布する。第2の金属元素は、グレイン境界に析出することで、グレイン境界のおける銅の移動を抑制するとともに、銅合金膜の機械的強度も向上させる。
【0073】
第2の金属元素の添加量は、0.05at%以上、0.6at%以下としてもよい。
第2の金属元素の添加量が0.6at%を超えると、銅合金層2の導電率が低下してしまう。
第1の金属元素の添加量が0.05at%未満であると、銅の動きを抑える効果が低下してしまう。
【0074】
銅合金層2の層厚は特に限定されない。
例えば、銅合金層2に遮光性を持たせなくてもよい場合には、銅合金層2の層厚は、100nm未満でもよい。
銅合金の薄膜の厚さが100nm以上であると、銅合金の薄膜は可視光をほとんど透過しない。このため、銅合金層2の層厚は、例えば、100nm以上300nm以下とすることで、銅合金層2を、可視光を遮光する遮光層として用いることが可能になる。
さらに、銅合金層2の層厚が300nmよりも厚い場合には、遮光性に加えて、電気抵抗をより低減することができる。
【0075】
次に、配線基板100の製造方法について説明する。
まず、基板15上において、少なくとも導電配線11を形成する領域を含む範囲に、第1の導電性酸化物層1、銅合金層2、および第2の導電性酸化物層3を、この順に連続成膜する(成膜工程)。
成膜装置としては、スパッタリング装置などの真空装置を用いることができる。本工程における連続成膜は、真空を破らずに(装置内の真空状態を維持して)行われる。
【0076】
酸化インジウム、酸化亜鉛、および酸化錫を含む複合酸化物(以下、3元系複合酸化物と称する)をスパッタリングによって成膜するため、出発材料として、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化錫の混合酸化物を焼結して、例えば、厚さ7mm程度のターゲットを製作する。
【0077】
ITOと呼称される酸化インジウムと酸化錫との混合酸化物のターゲットは、導電性がある。DCスパッタリングは、高周波でのRFスパッタリングよりも安定し、かつ、高速の成膜が可能である。また、高周波電源より直流電源のほうが安価である。このため、ITOは、多くの場合、DCスパッタリングで成膜される。
第1の導電性酸化物層1および第2の導電性酸化物層3を形成するための3元系複合酸化物の成膜も、DCスパッタリングで成膜されることがより好ましい。
3元系複合酸化物は、DCスパッタリングを行う既存のITO成膜装置において、ターゲットの代えるだけで、ITOと同様に成膜できる。
銅合金の成膜も、直流電源を用いたDCスパッタリングで成膜されることが多く、この観点からも、3元系複合酸化物の成膜もDCスパッタリングで成膜することがより好ましい。
【0078】
DCスパッタリングを行う場合、ターゲットには導電性が必要である。しかしながら、酸化インジウム、酸化亜鉛、および酸化錫の混合酸化物を焼結させたターゲットにおいて、酸化亜鉛と酸化錫との合計量が、上記式(1)の左辺式で表される原子比で、0.2を超えると、ターゲットの導電性が大きく低下する。このため、DCスパッタリングを用いる場合には、ターゲットにおける上記式(1)の左辺式で表される原子比で、0.2以下であることがより好ましい。
【0079】
第1の導電性酸化物層1に含まれるインジウム、亜鉛、錫の原子比としての例としては、例えば、N
In:N
Zn:N
Sn=90:8:2としてもよい。
【0080】
銅合金層2に含まれる第1の金属元素としては亜鉛、第2の金属元素としてはアンチモンあるいはビスマスを用いてもよい。この場合、銅、亜鉛、アンチモンの原子比の例としては、銅、アンチモンの原子数をそれぞれN
Cu、N
S bとするとき、例えば、N
Cu:N
Zn:N
Sb=99.0:0.8:0.2としてもよい。銅、亜鉛、ビスマスの原子比の例としては、銅、ビスマスの原子数をそれぞれN
Cu、N
Biとするとき、例えば、N
Cu:N
Zn:N
Bi=99.0:0.8:0.2としてもよい。
【0081】
第2の導電性酸化物層3に含まれるインジウム、亜鉛、錫の原子比としての例としては、例えば、N
In:N
Zn:N
Sn=91:7:2としてもよい。
【0082】
第1の導電性酸化物層1、銅合金層2、および第2の導電性酸化物層3の層厚は、それぞれ、30nm、200nm、50nmとしてもよい。
【0083】
本工程において、第1の導電性酸化物層1、銅合金層2、および第2の導電性酸化物層3の成膜後、200℃以上の熱処理を施してもよい。この場合、非晶質であった導電性酸化物層が、結晶化するため、導電配線11の信頼性をさらに向上できる。
本工程では、真空を破らずに連続成膜が行われることによって、基板15、第1の導電性酸化物層1、銅合金層2、および第2の導電性酸化物層3における各界面に水分などが付着することを抑制できる。このため、成膜時に、水分などが付着して、層間の界面が汚染されることに起因する配線基板100の信頼性低下を防ぐことができる。
【0084】
成膜工程の終了後、第1の導電性酸化物層1、銅合金層2、および第2の導電性酸化物層3の積層体のパターニングを行う。
本実施形態では、周知のフォトリソグラフィの手法を用いて、第1の導電性酸化物層1、銅合金層2、および第2の導電性酸化物層3の積層体を一括してウェットエッチングすることによりパターニングを行う。例えば、上述した例の積層体を、線幅4μm、間隔21μmのストライプ状の細線パターンに加工してもよい。
以上で、
図1に示すような、配線基板100が製造できる。
【0085】
本実施形態の配線基板100によれば、銅合金層2の層厚方向の各表面は、それぞれに密着する第1の導電性酸化物層1と第2の導電性酸化物層3とによって覆われている。
このため、銅合金層2の層厚方向の各表面は、第1の導電性酸化物層1および第2の導電性酸化物層3によって保護される。このため、層厚方向の表面からの銅のマイグレーション、あるいは酸化等の化学反応が抑制される。
【0086】
第1の導電性酸化物層1および第2の導電性酸化物層3は、酸化インジウム、酸化亜鉛、および酸化錫を含む複合酸化物で構成されるため、硬度が高い導電性セラミックである。
導電配線11は、銅合金層2を、第1の導電性酸化物層1および第2の導電性酸化物層3で挟持する3層構造を有することにより、電気的に安定した強固な実装が可能である。例えば、配線基板100に外力が作用しても、銅合金層2は、高強度の第1の導電性酸化物層1および第2の導電性酸化物層3に挟持されているため、銅合金層2の断線が防止される。
【0087】
銅、銅合金、あるいはこれらの酸化物、窒化物は、ガラスなど透明基板、カラーフィルタ(後述する黒色層含む)などとの密着性がよくない。このため、銅合金層を基板15の表面に直接密着させると基板15との界面で剥がれを生じる可能性がある。
銅合金層の剥がれは、例えば、高温高湿環境や、熱処理を伴う製造工程にて発生しやすい。例えば、配線基板を形成した後、導電配線上にカラーフィルタを形成するような製造工程における熱処理によっても銅合金層の剥がれが発生するおそれがある。
加えて、銅、銅合金、あるいはこれらの酸化物、窒化物は、通常、電気的な接続が不安定で信頼性に欠ける。たとえば、銅表面に経時的に形成される酸化銅や硫化銅は絶縁体に近く、電気的な実装に問題を生じる。
【0088】
しかしながら、本実施形態における導電配線11は、第1の導電性酸化物層1を介して、基板15に密着しているため、基板15から剥がれにくくなっている。
第1の導電性酸化物層1は、基板15との密着性が良好である。このため、第1の導電性酸化物層1は、銅合金層2が直接的に基板15に積層される場合に比べて、基板15に堅固に固定され、基板15からの剥がれが防止される。
さらに、銅合金層2は、真空状態における連続成形において、第1の導電性酸化物層1と第2の導電性酸化物層3とに挟持されて形成される。このため、銅合金層2の表面が第1の導電性酸化物層1および第2の導電性酸化物層3によって被覆されるため、化学反応の進行を抑制できる。この結果、電気的な実装に耐える状態を経時的に維持することができる。
【0089】
以上説明したように、導電配線11の銅合金層2は、第1の導電性酸化物層1および第2の導電性酸化物層3に挟持されているため、銅合金層2の表面が露出する場合に比べて高い信頼性を有する。
ただし、導電配線11では、銅合金層2が完全に被覆されているわけではない。例えば、導電配線11の線幅方向の端面にて銅合金層2が露出している。例えば、第1の導電性酸化物層1あるいは第2の導電性酸化物層3にピンホールなどがあると、銅合金層2の一部が露出する。このため、銅合金層2においてマイグレーションが起こりやすい場合には、露出された銅合金層2から、銅が移動し、マイグレーションなどの問題を発生する可能性がある。
【0090】
これに対して、導電配線11の銅合金層2は、第1の金属元素を含む。このため、銅合金層2における銅合金の結晶には、第1の金属元素が固溶し、グレイン内の銅原子が、銅原子よりも原子量の大きな第1の金属元素が置換される。この第1の金属元素によって、グレイン内での銅の移動が抑制される。
第1の金属元素は固溶強化をもたらすため、銅合金層2のグレイン自体の強度が向上される。
【0091】
さらに、導電配線11の銅合金層2は、第2の金属元素を含む。このため、銅合金層2における銅合金の結晶のグレイン境界に、銅原子よりも原子量の大きな第2の金属元素が析出する。この第2の金属元素は、グレイン境界のアンカーとして機能するため、グレイン境界における銅の移動が抑制される。
第2の金属元素がグレイン境界に介在することによって、銅合金層2全体としての機械的強度が向上される。
【0092】
このように、本実施形態の配線基板100によれば、銅合金層2自体がマイグレーションを起こしにくく、機械的強度も向上している。このため、第1の導電性酸化物層1および第2の導電性酸化物層3によって、挟持されることと相俟って配線基板100は、良好な信頼性を備える。
上述した製造方法における数値例に基づいて、配線基板100を製造したところ、導電配線11の電気的特性、および基板15に対する密着性は、例えば、温度85℃、湿度85%の高温高湿下で1000時間放置した信頼性試験において変化がほとんどなく良好であった。この信頼性試験後、導電配線11を観察したところ、銅のマイグレーションは発生していなかった。銅合金層2においてウィスカーおよびボイドは形成されていなかった。
【0093】
第1の導電性酸化物層1および第2の導電性酸化物層3に用いる導電性酸化物は、上述したように本発明者らが見出したインジウム、亜鉛、および錫の原子比の範囲で、酸化亜鉛と酸化錫とを含むため、導電性が良好であって、かつウェットエッチングの加工性が良好である。このため、第1の導電性酸化物層1、銅合金層2、および第2の導電性酸化物層3の積層体を1回のウェットエッチングによって、線幅一定の導電配線11を容易に製造することができる。
このため、導電配線11の細線化が可能になる。
【0094】
以上説明したように、本実施形態の配線基板100は、銅配線を用いても良好な信頼性を有し、かつ容易に製造することができる。
【0095】
[第1変形例]
次に、上記第1の実施形態の変形例(第1変形例)の配線基板について説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態の変形例(第1変形例)の配線基板の構成の一例を示す模式的な断面図である。
【0096】
図2に示すように、本変形例の配線基板110は、上記第1の実施形態の配線基板100に、第1の黒色層4と、透明樹脂層9とが追加されて構成される。
以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0097】
上記第1の実施形態の配線基板100の場合、基板15が透明基板であると、第1の導電性酸化物層1は光透過性を有するため、表面15bの方から基板15を見ると銅合金層2が見えてしまう。さらに、表面15bから入射する光が、銅合金層2で反射されて、表面15bから出射されることになる。
配線基板100の用途によっては、銅合金層2が見えたり、外光が銅合金層2によって反射されたりすることは好ましくない。
本変形例の配線基板110では、第1の黒色層4は、表面15b側から銅合金層2が見えたり、表面15bから入射する外光が銅合金層2によって反射されたりすることを防止するために設けられる。第1の黒色層4は、基板15と、第1の導電性酸化物層1との間において、Z軸方向から見て、第1の導電性酸化物層1を覆うように配置される。
【0098】
第1の黒色層4は、例えば、黒色の色材を分散させた着色樹脂で構成される。
第1の黒色層4の反射率は、色材の種類、色材の含有量、ベース樹脂の種類、層厚などを適宜選択することによって、必要に応じた反射率、光学濃度、色合いにすることができる。
例えば、第1の黒色層4の反射率は7%以下になるようにしてもよい。例えば、配線基板100が液晶表示装置に用いられる場合、バックライトユニットからの光の再反射防止や観察者の視認性向上を配慮して、第1の黒色層4の反射率は、3%以下とすることがより好ましい。
例えば、第1の黒色層4の透過測定での光学濃度は、後述するフォトリソグラフィでの露光やパターンの位置合わせ(アライメント)を優先して、2以下にしてもよい。
例えば、第1の黒色層4の反射率は、基板15の屈折率を考慮し、基板15との界面における反射率が3%以下となるようにしてもよい。
【0099】
第1の黒色層4の体積抵抗は、10
13Ωcm以上としてもよい。
第1の黒色層4の層厚は、必要に応じて決めればよい。例えば、第1の黒色層4の層厚は、0.2μm以上、3μm以下としてもよい。
【0100】
第1の黒色層4に用いる黒色の色材の例としては、カーボン、カーボンナノチューブ、複数の有機顔料の混合物などの例が挙げられる。
第1の黒色層4に用いる色材は、カーボン以外に、黒色の色調整として複数の有機顔料の混合物を用いて形成してもよい。
例えば、第1の黒色層4に用いる色材は、カーボンを主たる色材として含み、青もしくは赤などの有機顔料を添加して用いてもよい。ここで、主たる色材とは、色材全体のうち51質量%以上を占める色材を意味する。
この場合、青もしくは赤などの有機顔料の種類および配合量によって、反射色の調整が可能である。
【0101】
第1の黒色層4における黒色の色材にカーボンを用いる場合、カーボン濃度は、樹脂、硬化剤、および顔料を含めた全体の固形分(以下、全固形分という)に対して、4質量%以上50質量%以下としてもよい。例えば、液晶表示装置において、表示画面内の銅合金層2の視認性を抑制する用途では、全固形分に対するカーボン濃度を、約40質量%程度にすればよい。
カーボン濃度は、50質量%を超えるカーボン量としてもよいが、全体の固形分に対してカーボン濃度が50質量%を超えると塗膜適性が低下する傾向にある。
カーボン濃度が4質量%未満の場合には、十分な黒色を得ることができず、下地の銅合金層2の反射によって、銅合金層2が視認されやすくなる。
【0102】
透明樹脂層9は、基板15の表面15aおよび導電配線11上を覆うように形成される。
透明樹脂層9は、表面15a上で、導電配線11を封止し、導電配線11間を絶縁する絶縁保護膜として機能する。
透明樹脂層9を形成する樹脂の種類は特に限定されない。
【0103】
配線基板110は、第1の黒色層4および透明樹脂層9を形成する点を除けば、上記第1の実施形態と同様にして製造することができる。
配線基板110を製造するには、第1の導電性酸化物層1を成膜する前に、少なくとも導電配線11を形成する領域を含む範囲の表面15a上に、第1の黒色層4を形成する黒色塗布液を用いて一様な黒色層を成膜する。
この後、この黒色層上に、上記第1の実施形態と同様にして、第1の導電性酸化物層1、銅合金層2、および第2の導電性酸化物層3の積層体を形成する。
この後、上記第1の実施形態と同様に、フォトリソグラフィ手法を用いて、この積層体と一様な黒色層とを一括してウェットエッチングすることによりパターニングを行う。
以上で、基板15上に、第1の黒色層4、導電配線11がこの順に積層された配線パターンが形成される。
この後、各導電配線11を覆うように、透明樹脂層9を形成する樹脂を塗布する。
この後、塗布された樹脂を硬化させる。
以上で、配線基板110が製造される。
【0104】
本変形例の配線基板110は、上記第1の実施形態と同様の導電配線11を備えるため、上記第1の実施形態と同様、銅配線を用いても良好な信頼性を有し、かつ容易に製造することができる。
さらに、配線基板110は、第1の黒色層4を備えるため、視認方向8から見た際に、第1の導電性酸化物層1および銅合金層2が、第1の黒色層4によって覆われる。この結果、基板15の表面15b側から見たときに、銅合金層2が視認されないようにすることができる。また、銅合金層2における外光の反射を抑制することができる。
さらに、配線基板110は、導電配線11が、透明樹脂層9によって封止されるため、導電配線11の信頼性をより向上することができる。
【0105】
銅、銅合金、あるいはこれらの酸化物、窒化物は、色材が樹脂内に分散された第1の黒色層4との密着性もよくない。
しかし、本変形例では、銅合金層2と第1の黒色層4との間には、第1の導電性酸化物層1を介している。第1の導電性酸化物層1と第1の黒色層4との間の密着性は、銅合金層2と第1の黒色層4との密着性に比べると高い。このため、銅合金層2が第1の黒色層4と直接密着される場合に比べると、第1の導電性酸化物層1は、第1の黒色層4に対する剥がれに強い。
【0106】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態の配線基板、および液晶表示装置について説明する。
図3は、本発明の第2の実施形態の液晶表示装置の構成の一例を示すブロック図である。
図4は、本発明の第2の実施形態の液晶表示装置の主要部の構成の一例を示す模式的な断面図である。
図5は、本発明の第2の実施形態の配線基板の模式的な平面図である。
図6は、
図5におけるA−A断面図である。
【0107】
図3に示すように、本実施形態の液晶表示装置600は、表示部601と、表示部601を制御するための制御部602とを備える。液晶表示装置600は、図示略のバックライトを備えてもよい。
【0108】
図4に示すように、表示部601は、配線基板200、液晶層60、およびアレイ基板210(配線基板)を備える。表示部601において、配線基板200、液晶層60、およびアレイ基板210はこの順に積層される。
以下では、表示部601の各装置部分における位置関係を説明するため、
図4に示すXYZ座標軸を参照する場合がある。Z軸は、配線基板200、液晶層60、およびアレイ基板210の積層方向である。Z軸の正方向は、配線基板200からアレイ基板210に向かう方向である。X軸、Y軸は、互いに直交するとともに、それぞれZ軸に直交する2軸である。このXYZ座標軸は、
図5、
図6にも同様の位置関係を表すように図示されている。
【0109】
図5、
図6に示すように、配線基板200は、基板65、導電配線11、絶縁層19、および導電配線31を備える。基板65、導電配線11、絶縁層19、および導電配線31は、絶縁層19が形成された領域では、Z軸の正方向においてこの順に積層される。
【0110】
基板65は、無アルカリ基板からなる。
図5に示すように、基板65の表面65b(第1の面)上には、X軸方向を配列方向として、上記第1の実施形態と同様の構成の複数の導電配線11(第1の導電配線)が、等間隔をあけて互いに平行に配列される。本実施形態では、導電配線11はタッチセンシングの検出配線として用いられる。
図5は見易さのため、導電配線11が11本しか図示されていないが、導電配線11の本数および間隔は、タッチセンシングに必要な検出精度やタッチセンシングの解像度に応じて適宜設定できる。
【0111】
図6に示すように、導電配線11は、上記第1の実施形態と同様の積層構造を有する。すなわち、導電配線11は、Z軸方向の正方向において、第1の導電性酸化物層1、銅合金層2、および第2の導電性酸化物層3がこの順に積層される。
ただし、第1の導電性酸化物層1、銅合金層2、および第2の導電性酸化物層3の線幅は、後述するタッチセンシングに必要な検出精度に応じて適宜設定できる。本実施形態の導電配線11の線幅は、上記第1の実施形態と同様、0.5μm以上6μm以下としてもよく、6μmを超えてもよい。
各導電配線11はX軸方向に延ばされる。各導電配線11は、Y軸方向を配列方向として、等間隔をあけて互いに平行に配列される。各導電配線11は、基板65の内側の矩形状の領域に配置される。
【0112】
絶縁層19は、透明樹脂によって形成される。
図5に示すように、絶縁層19は、各導電配線11におけるX軸方向の一方の端部を除いて、各導電配線11を覆う矩形状領域に形成される。絶縁層19の基板65側の界面19a(
図6参照)は、各導電配線11の第2の導電性酸化物層3の表面と、各導電配線11の線幅方向の側面とを覆っている。
絶縁層19において、界面19aと反対側の表面19b(第2の面)は、表面65bと平行な平面である。
各導電配線11において、絶縁層19から延出した部分は、後述する導電部64との電気的実装に用いられる端子部10aを構成する。
絶縁層19の体積抵抗は、10
13Ωcm以上としてもよい。
【0113】
導電配線31は、表面65b、および絶縁層19において導電配線11と密着した表面と反対側の表面において、複数設けられている。本実施形態では、導電配線31はタッチセンシングの駆動配線として用いられる。
各導電配線31は、第1配線部31a(第2の導電配線)と、第2配線部31bとを備える。
【0114】
各第1配線部31aは、平面視で導電配線11と直角をなして交差するように、X軸方向に延ばされた配線部である。各第1配線部31aは、延在方向におけるいずれか一方の端部が、絶縁層19の外側に延出されて基板65の表面65b上に密着している。
各第1配線部31aは、Y軸方向を配列方向として、等間隔をあけて互いに平行に配列される。第1配線部31aの間隔は、導電配線11の配列方向における間隔と異なっていてもよいが、本実施形態では、導電配線11の配列方向における間隔と同一である。
図5、
図6は、見易さのため、導電配線31の本数は適宜間引かれている。
各第1配線部31aは、基板65上に、導電配線11および絶縁層19を介して間接的に配置された導電配線になっている。
【0115】
各第2配線部31bは、各第1配線部31aを後述する導電部64に電気的に接続するための配線部である。各第2配線部31bは、表面65b上に延出された第1配線部31aの端部から、Y軸方向において導電配線11の絶縁層19からの延出方向と同方向に延ばされる。各第2配線部31bの延在方向における端部は、各導電配線11における端子部10aとX軸方向において並ぶ位置まで延びている。各第2配線部31bの延在方向における端部は、後述する導電部64との電気的実装に用いられる端子部10bを構成する。
【0116】
各導電配線31は、上記第1の実施形態における導電配線11と同様の積層構造を有する。すなわち、
図6に示すように、導電配線31は、Z軸方向の正方向において、第1の導電性酸化物層1、銅合金層2、および第2の導電性酸化物層3がこの順に積層される。
【0117】
配線基板200を製造するには、上記第1の実施形態と同様にして、基板65上に、導電配線11を形成した後、表面65bおよび導電配線11上に絶縁層19を積層する。絶縁層19は、透明酸化物あるいは窒化物を真空成膜してもよく、あるいはアクリル樹脂などの透明樹脂を塗布形成してもよい。さらには、透明樹脂と無機膜との積層構成であってもよい。
この後、表面65b、19b上において、上記第1の実施形態と同様の成膜工程を行う。
この後、この成膜工程で形成された第1の導電性酸化物層1、銅合金層2、および第2の導電性酸化物層3の積層体のパターニングが行われる。このパターニングは、上記第1の実施形態と同様のフォトリソグラフィの手法で行われる。ただし、露光パターンは、導電配線31の配線パターンが用いられる。
【0118】
図4に示すように、液晶層60は、互いに平行に配置された基板65と後述するアレイ基板210における基板62との各基板面に対し水平配向の液晶である。
液晶層60は、後述するアレイ基板210上の画素電極61と、図示を省略した共通電極との間のフリンジ電界で駆動される。共通電極は、画素電極61の下部(Z軸方向の正方向側)の絶縁層23を介してアレイ基板210上に配置される。
図4では、液晶装置において周知の配向膜、偏光板など光学フィルム、共通電極、駆動のためのTFT(薄膜トランジスタ)につながるゲート配線やソース配線などの図示は省略されている。
【0119】
アレイ基板210は、液晶層60を駆動するため、図示略の複数のTFTがマトリクス状に配置される。
アレイ基板210は、基板62、絶縁層21、22、23、画素電極61、および導電配線63を備える。
絶縁層21および導電配線63は、基板62の板厚方向において液晶層60の方に向く表面62a上に配置される。絶縁層22、23、および画素電極61は、絶縁層21上において、Z軸方向の負方向にこの順に積層される。
【0120】
基板62は、無アルカリ基板からなる。基板62において表面62aと反対側の表面62bに対向する位置には、図示略のバックライトが配置されてもよい。
【0121】
アレイ基板210は、詳細の図示は省略するが、半導体プロセスで形成された種々の半導体素子、配線を備える。
アレイ基板210は、少なくとも、液晶層60を駆動するため、液晶層60の画素配置に応じてマトリクス状に配置された複数のTFTを備える。各TFTのソース電極、ゲート電極は、それぞれソース配線、ゲート配線を介して、後述する映像信号タイミング制御部603と電気的に接続される。各TFTは、ソース配線およびゲート配線を介して入力される映像信号タイミング制御部603からの制御信号に基づいて動作する。
アレイ基板210は、TFTの他の半導体素子として、例えば、ダイオード、スイッチング素子、あるいはメモリーなどの機能素子のいずれかを備えてもよい。
【0122】
画素電極61は、液晶層60の各画素に対応して複数形成される。各画素電極61は、図示略の配線によってTFTを含む駆動回路と電気的に接続される。各画素電極61は、映像信号タイミング制御部603からの制御信号に基づいてTFTが駆動されると、液晶駆動電圧が印加される。
画素電極61に駆動電圧が印加されると、液晶層60における図示略の共通電極との間にフリンジ電界が発生して液晶が駆動される。なお、液晶駆動のために画素電極61に印加される電圧は液晶駆動電圧と呼ぶ。以下の記載において、タッチセンシング駆動のために導電配線に印加される電圧は、タッチ駆動電圧と呼ぶことがある。
【0123】
導電配線63は、配線基板200における導電配線11と導電配線31との間の静電容量C1を検出するため、各端子部10a、10bと同数形成される。
図3に示すように、導電配線63は、後述する制御部602のタッチセンシング走査信号制御部604と電気的に接続される。
導電配線63は、上記第1の実施形態における導電配線11と同様の積層構造を有する。すなわち、導電配線63は、Z軸方向の負方向において、第1の導電性酸化物層1、銅合金層2、および第2の導電性酸化物層3がこの順に積層される。
各導電配線63の平面視の配線パターン、線幅等は、特に限定されない。
【0124】
図4に示すように、液晶表示装置600は、以上に説明した配線基板200とアレイ基板210との間に、液晶層60が挟まれた状態で貼り合わされる。液晶層60の外周における基板65、62の間には、液晶層60を封止するシール部67が形成される。
シール部67は、例えば、電気絶縁性を有する樹脂で形成される。
【0125】
シール部67の内部に、端子部10a、端子部10b(
図5参照)と、導電配線63とを電気的に接続する導電部64が配置されてもよい。あるいは、端子部10aを延線することによって、電気的な接続がシール部67外で行われてもよい。
端子部10a、10bおよび導電配線63の表面は、オーミックコンタクトの極めて容易な第2の導電性酸化物層3で構成されるため、基板65、62間に延びる導電部64によって、相互の電気的接続が行われる。
図4は寸法が誇張されているため、導電部64を柱状に描いているが、導電部64の形状は柱状には限定されない。
導電部64としては、例えば、樹脂球を金属膜で覆う導電性ボール、はんだボールのような金属球、異方性導電膜など、周知の様々な導電体を適用することができる。
【0126】
端子部10a、10bの個数は、液晶層60の画素数に応じて膨大になるため、導電配線11、63の線幅が微細になる。しかし、第2の導電性酸化物層3は、コンタクト抵抗は小さくかつ安定している。さらに、第2の導電性酸化物層3は機械的強度も高い。このため、第2の導電性酸化物層3を表面に備える導電配線11、63は、コンタクト領域が狭い微細構造における電気的接続には好適である。
配線基板200およびアレイ基板210の電気的実装において、端子部10a、10b、導電配線63には、電気的実装のやり直しや取り扱い時の不具合で傷つきの原因ともなるストレスがかかりやすい。
しかし、本実施形態では、端子部10a、10b、導電配線63の表面における第2の導電性酸化物層3は、金属よりも硬いセラミックでもあるため、銅合金層2が保護され、断線を防止できる。
【0127】
導電部64は、基板65、62間で対向する導電配線11、63同士をZ軸方向において電気的に接続する。このため、導電部64は、液晶層60の外周の狭い額縁領域でも容易に配置することができる。この結果、液晶表示装置600の配線の引き回しを簡素化することができるとともに、液晶表示装置600の外形および額縁領域の小型化を図ることができる。
【0128】
図3に示すように、制御部602は、映像信号タイミング制御部603、タッチセンシング走査信号制御部604(検出部)、およびシステム制御部605(検出部)を備える。
【0129】
映像信号タイミング制御部603は、図示略の共通電極を定電位とするとともに、表示部601のアレイ基板210のソース配線211およびゲート配線212に信号を送る。
ソース配線211、ゲート配線212から送られたアレイ基板210に送られた信号は、TFTを含む駆動回路に入力されることで、共通電極と各画素電極61との間に映像信号に基づいた液晶駆動電圧が印加される。液晶層60では、液晶駆動電圧が印加された画素において、液晶分子が駆動され、各画素における液晶分子の駆動状態に応じて画像が表示される。
【0130】
タッチセンシング走査信号制御部604は、検出配線である複数の導電配線11を定電位とし、駆動配線である複数の導電配線31にタッチ駆動電圧を印加する。
タッチセンシング走査信号制御部604は、導電配線31と導電配線11との間の静電容量の変化を検出し、タッチセンシングを行う。
【0131】
システム制御部605は、液晶駆動とタッチセンシングとを行うため、映像信号タイミング制御部603およびタッチセンシング走査信号制御部604を制御する。
液晶駆動と、タッチセンシングにおける静電容量の変化の検出とは、時分割で行ってもよい。
アクティブ素子(TFT)を用いた液晶駆動は、それぞれの画素電極にアクティブ素子を介して液晶駆動電圧が印加され白表示(映像表示)を行う。例えば、白表示のあと、駆動電圧が印加されない黒表示(black state)のときに、バックライトユニットの発光をオフとし、この黒表示の期間にタッチセンシング駆動を行ってもよい。
例えば、液晶駆動とタッチセンシングのタッチ駆動とは、それぞれの駆動周波数が変えられてもよい。
あるいは、液晶駆動およびタッチ駆動のどちらかの駆動電圧のパルスのタイミングをずらして干渉しないようにすることで、タッチセンシングのS/N比を向上できる。
【0132】
以上に説明した液晶表示装置600は、制御部602によって、表示部601の液晶層60を駆動制御することによって、表示部601による画像表示を行うことができる。
さらに、液晶表示装置600は、配線基板200に形成された導電配線11、31と、タッチセンシング走査信号制御部604、システム制御部605とを備えることにより、タッチセンシングを行うことができる。
【0133】
ここで、液晶表示装置600におけるタッチセンシングの動作について簡単に説明する。
システム制御部605の制御によって、タッチセンシング走査信号制御部604は時分割で静電容量の検出動作を行う。
静電容量の検出動作において、タッチセンシング走査信号制御部604は、導電配線31に、交流矩形波または直流矩形波を印加し、平面視で導電配線31と導電配線11とが交差する部位(以下、交差部という)に、それぞれ静電容量C1を付与する。
例えば、
図4に矢印Tで示すように、基板65の表面65aに、指などポインターが振れると、ポインターが触れた部分の静電容量C1が変化する。タッチセンシング走査信号制御部604は、交差部の静電容量を順次走査することで、ポインターによってタッチされた交差部の位置を特定する。
タッチが検出されると、タッチセンシング走査信号制御部604は、タッチされた交差部の位置情報をシステム制御部605に送出する。
【0134】
本実施形態の液晶表示装置600の配線基板である配線基板200は導電配線11、31を、同じくアレイ基板210は、導電配線63を、それぞれ備える。
導電配線11、31、63は、いずれも上記第1の実施形態と同様の積層構造を有するため、配線基板200およびアレイ基板210は、上記第1の実施形態の導電配線11と同様、銅配線を用いても良好な信頼性を有し、かつ容易に製造することができる。
【0135】
配線基板200は、基板65上に、第1の導電配線である複数の導電配線11と、絶縁層19を介して第2の導電配線である複数の第1配線部31aとを備える。複数の導電配線11と、複数の第1配線部31aとは、互いに異なる配列方向に等間隔かつ平行に配列される。このため、導電配線11、31は、タッチセンシングに好適な導電配線になっている。
導電配線11、31は、銅合金層2を用いることで高い導電性が得られるため低ノイズのタッチセンシングが可能である。さらに、導電配線11、31は、マイグレーション、酸化等による導電性能の経時的な劣化を防止することができるため、タッチセンシング性能(感度、S/N比など)が経時的にも安定する。
【0136】
液晶表示装置600では、タッチセンシングの検出配線および駆動配線が1つの配線基板200上に設けられた場合の例になっている。この場合、配線基板200を製造する過程で、検出配線および駆動配線の相対位置関係が決まるため、検出配線と駆動配線との交差部の位置を基板65に対して容易に位置決めすることができる。
【0137】
液晶表示装置600では、タッチセンシングの検出配線および駆動配線を基板65上に設け、これらをタッチセンシング走査信号制御部604に電気的に接続する導電配線63が、液晶層60を介して基板65に向かい合う基板62上に設けられる。導電配線11、31と導電配線63との接続は、基板65、62間にわたる導電部64によって、液晶層60の外周部で行われる。
このため、液晶層60の配線の引き回しが簡素化されるともに、小型化が可能である。
さらに、導電部64は、コンタクト抵抗が小さく信頼性が高い導電配線11、31、63と接続されるため、配線基板200とアレイ基板210との間の配線接続の信頼性も向上できる。
【0138】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態の配線基板、半導体装置、および液晶表示装置について説明する。
図7は、本発明の第3の実施形態の配線基板および液晶表示装置の構成の一例を示す模式的な断面図である。
図8は、
図7におけるB部の拡大図である。
図9は、
図7におけるC−C断面図である。
図10は、
図7におけるD−D断面図である。
【0139】
図3に示すように、本実施形態の液晶表示装置700は、上記第2の実施形態の液晶表示装置600の表示部601に代えて、表示部701を備える。液晶表示装置700は、図示略のバックライトを備えてもよい。
以下、上記第2の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0140】
図7に示すように、表示部701は、上記第2の実施形態における配線基板200、液晶層60、アレイ基板210に代えて、配線基板300(第1の配線基板)、液晶層70、アレイ基板310(配線基板、半導体装置、第2の配線基板、第3の配線基板)を備える。表示部701において、配線基板300、液晶層70、およびアレイ基板310はこの順に積層される。
以下では、表示部701の各装置部分における位置関係を説明するため、上記第2の実施形態と同様に配置されたXYZ座標軸(
図7参照)を参照する場合がある。
【0141】
配線基板300は、上記第2の実施形態における配線基板200の導電配線31、絶縁層19が削除され、第1の黒色層4、第2の黒色層5、カラーフィルタ層FR、FG、FB、および透明樹脂層12が追加されて構成される。
本実施形態の配線基板300における各導電配線11は、上記第2の実施形態と同様、タッチセンシングにおける検出配線として用いられる。各導電配線11の端子部10a(図示略)は、上記第2の実施形態と同様の構成によって、それぞれ、後述するアレイ基板310内の配線702(
図3参照)に電気的に接続される。
図3に示すように、配線702はタッチセンシング走査信号制御部604に電気的に接続される。
【0142】
本実施形態における第1の黒色層4は、上記第1の実施形態の第1変形例と同様の構成を備える。ただし、本実施形態の第1の黒色層4は、表示部701の外表面である表面65a側から導電配線11の銅合金層2が見えたり、表面65aから入射する外光が銅合金層2によって反射されたりすることを防止するために設けられる。
図8に示すように、本実施形態の第1の黒色層4は、基板65と、導電配線11の第1の導電性酸化物層1との間において、Z軸方向から見て、第1の導電性酸化物層1を覆うように配置される。
【0143】
第2の黒色層5は、表示部701の内部に伝播する光による反射光量を低減して、アレイ基板310に入射するノイズ光を抑制するために設けられる。
第2の黒色層5は、第1の黒色層4との間で導電配線11を挟むように配置される。第2の黒色層5は、導電配線11の第2の導電性酸化物層3を直接被覆する。ただし、第2の黒色層5は、例えば、端子部10aなどにおいて電気的接続に用いられる部位などには形成されない。
第2の黒色層5の線幅は導電配線11の線幅と等しい。
第2の黒色層5の構成は、上記第1の実施形態において説明された第1の黒色層4として可能な構成のうちから適宜選択することができる。
第2の黒色層5の反射率は、ノイズ光の許容量に基づいて適宜設定することができる。
【0144】
カラーフィルタ層FR、FG、FBは、それぞれ、赤色、緑色、青色に着色された樹脂製のフィルタである。
カラーフィルタ層FR、FG、FBは、基板65の表面65b上において隣り合う導電配線11の間に配置される。カラーフィルタ層FR、FG、FBは、それぞれ、液晶層70における赤画素、緑画素、青画素を覆う位置に配置される。
カラーフィルタ層FR、FG、FBの層厚は、表面65bから第2の黒色層5の表面までの高さよりも厚く、それぞれ第2の黒色層5の一部を覆っている。第1の黒色層4、導電配線11、および第2の黒色層5は、カラーフィルタ層FR、FG、FBのうち、Y軸方向において互いに隣り合う2つのカラーフィルタ層によって覆われる。
【0145】
透明樹脂層12は、光透過性を有し、配線基板300において基板65と反対側の表面を形成する層状部である。透明樹脂層12は、基板65と反対側のカラーフィルタ層FR、FG、FB上に積層される。
【0146】
液晶層70は、上記第2の実施形態の液晶層60と同様、水平配向の液晶であり、フ
後述するアレイ基板310上の画素電極71と、共通電極72との間のフリンジ電界で駆動される。
図7では、液晶装置において周知の配向膜、偏光板など光学フィルムの図示は省略している。
【0147】
図7に示すように、アレイ基板310は、上記第2の実施形態のアレイ基板210と同様の基板62および絶縁層21、22、23と、画素電極71および共通電極72を備える。
以下では、アレイ基板310の相対位置を参照する際、簡単のため、
図7における図示に合わせて、Z軸方向における正方向側を下側、負方向側を上側と称する場合がある。
【0148】
図9に示すように、画素電極71は、X軸方向に延びて画素ごとに配置される。
図10に示すように、画素電極71は、絶縁層23において上側(Z軸方向の負方向側)の表面23a(第3の面)に配置される。
共通電極72は、絶縁層22の上側の表面22aにおいて、絶縁層23を介して画素電極71と対向する位置に配置される。このため、共通電極72は、絶縁層23を挟んで画素電極71の下側(Z軸方向の負方向側)に配置される。
【0149】
絶縁層21、22には、画素電極71に駆動電圧を印加するTFT73が形成される。TFT73は、画素と同数形成される。
各TFT73は、ゲート電極76、ソース電極77、ドレイン電極78、およびチャネル層79をそれぞれ備える。
ゲート電極76は、基板62の表面62a上においてY軸方向に延ばされる。
【0150】
チャネル層79は、絶縁層21を介してゲート電極76の上側に配置される。
チャネル層79は、ポリシリコン、アモルファスシリコンなどのシリコン半導体で形成されてもよい。チャネル層79は、酸化物半導体を用いることがより好ましい。チャネル層79に用いる酸化物半導体としては、IGZOなどの酸化物半導体がより好ましい。IGZOは、ガリウム、インジウム、亜鉛、錫、ゲルマニウム、マグネシウム、アルミニウムのうちの2種以上の金属酸化物を含む酸化物半導体である。
【0151】
シリコン半導体が用いられる場合、チャネル層79のパターン形成ではドライエッチングが用いられる。しかし、例えば、ゲート配線などに銅や銅合金を含む導電配線が形成されていると、このドライエッチング工程で銅がシリコン半導体に拡散し、半導体機能にダメージを与えてしまうおそれがある。
これに対して、IGZOなど酸化物半導体が用いられる場合、チャネル層79のパターン形成では、ウェットエッチングを用いることができる。このため、チャネル層79のパターン形成の工程で、銅が拡散してチャネル層79を汚染することがない。
【0152】
チャネル層79にIGZOなどの酸化物半導体を用いることで、ドット反転駆動において生じるカップリングノイズの影響を緩和することができる。
IGZOなどの酸化物半導体を用いたアクティブ素子は、映像信号である液晶駆動の矩形信号を極めて短い時間(例えば、3msec)で処理することができ、この矩形信号印加後の電圧保持期間でタッチセンシング信号処理を行うことができる。
IGZOなどの酸化物半導体は、映像信号印加後の液晶表示において画素電極に印加された電圧を保持することができるメモリー性を有する。換言すれば、矩形信号での液晶駆動電圧印加後、表示画素にかかった液晶駆動電圧を保持できる。
このため、矩形信号印加後の電圧保持期間の間では、新たなノイズ発生はなく、液晶駆動で生じるタッチセンシングへのノイズの影響を更に減少させることができる。
【0153】
IGZOなどの酸化物半導体は、電気的な耐圧が高いので、高めの電圧で液晶を高速で駆動させることができ、3次元映像表示に有力である。
IGZOなどの酸化物半導体をチャネル層に用いるトランジスタは、メモリー性が高いため、例えば、液晶駆動周波数を0.1Hzから60Hz程度の低周波としてもフリッカー(表示のちらつき)を生じにくいメリットがある。酸化物半導体をチャネル層に用いるトランジスタの採用は、タッチセンシングのS/N比の向上のみでなく、低消費電力でフリッカーの少ない液晶表示装置を実現することができる。
【0154】
絶縁層21の上側の表面21aおよびチャネル層79の上側には、X軸方向に対向して、ソース電極77およびドレイン電極78が形成される。
ソース電極77およびドレイン電極78は、周知の構成を採用できる。
ソース電極77およびドレイン電極78は、上記第1の実施形態における導電配線11と同様の積層構造を有してもよい。
【0155】
上記第1の実施形態における導電配線11と同様の積層構造は、特に、チャネル層79が酸化物半導体の場合に特に好適である。この点について簡単に説明する。
IGZOなど酸化物半導体は、信頼性を確保するため、例えば300℃〜700℃の高温での熱処理を必要としている。このとき、この酸化物半導体の表面に、銅または銅合金が直接、接触していると、銅または銅合金に含まれる銅が酸化物半導体の表面を還元したり、銅または銅合金に含まれる銅が半導体内に拡散したりする。これによりIGZOなど酸化物半導体の半導体機能が損なわれるおそれがある。
しかし、ソース電極77およびドレイン電極78が、上記第1の実施形態における導電配線11と同様の積層構造を有する場合、銅合金層2が第1の導電性酸化物層1および第2の導電性酸化物層3によって挟持されるため、銅合金層2に含まれる銅とチャネル層79との接触が防止される。これにより、チャネル層79がIGZOなど酸化物半導体からなる場合にも、チャネル層79の半導体機能が損なわれるおそれがなくなる。
【0156】
ソース電極77およびドレイン電極78が、上記第1の実施形態における導電配線11と同様の積層構造を有する場合、チャネル層79と接触する第1の導電性酸化物層1の表面部位は、酸素リッチに形成されてもよい。
あるいは、チャネル層79と接触する第1の導電性酸化物層1の表面部位には、第1の導電性酸化物層1の酸化を促進させるために、ランタノイド系金属の酸化物が形成されてもよい。あるいは、チャネル層79と接触する第1の導電性酸化物層1の表面部位に、ランタノイド系金属の酸化物が添加されてもよい。
ランタノイド系の酸化物は安定した酸化物であり、IGZOなど酸化物半導体の還元を抑止することができる。
【0157】
図9に示すように、各TFT73の近傍には、Y軸方向に延びるゲート配線75が形成される。ゲート配線75は、TFT73の近傍で、ゲート電極76に向かって分岐し、ゲート電極76と電気的に接続される。
図10に示すように、ゲート配線75は、ゲート電極76と同様、基板62の表面62a上に形成される。
本実施形態では、ゲート電極76およびゲート配線75は、モリブデンによってアルミニウム合金を挟持した、モリブデン/アルミニウム合金/モリブデンの3層構造を有する。
アルミニウム合金を採用すると、後工程での熱処理が加算されるゲート電極76およびゲート配線75の端部(角、エッジ部分)からの銅の汚染を抑止できる。これにより、TFT73の特性の劣化が防止される。
ゲート電極76およびゲート配線75の金属層を銅などで形成した場合、それらの端部上の絶縁層21に、熱履歴によるクラックが生じることがある。このクラックを伝って銅や銅酸化物が拡散することがある。アルミニウムやアルミニウム合金の場合、アルミニウム酸化物として安定した不導態膜が得られるため、拡散による汚染は生じにくい。
【0158】
ドレイン電極78は、絶縁層23、22を貫通するビアを介して、画素電極71と電気的に接続される。
【0159】
図9に示すように、各TFT73の近傍には、X軸方向に延びるソース配線66が形成される。
図10に示すように、ソース配線66は、絶縁層21の表面21a(第4の面)上に形成され、ソース電極77に電気的に接続される。
【0160】
チャネル層79の上側には、絶縁層22、23を介して、遮光パターン84(遮光層、導電配線)が積層される。
遮光パターン84は、アレイ基板210の上側からチャネル層79に向かう光がチャネル層79に入射することを抑制するために設けられる。
チャネル層79に向かう光の例としては、基板65に入射する外光、あるいは、このような外光および図示略のバックライトから表示部701内に入射し、表示部701の各界面で内部反射された光(再反射光)が挙げられる。
【0161】
図9に示すように、表面23aには、各ゲート配線75の上側に、ゲート配線75と同様、Y軸方向に延びる導電配線74(第3の導電配線、駆動配線)が形成される。
各導電配線74は、タッチセンシングにおける駆動配線として用いられる。各導電配線74は、それぞれ、アレイ基板310内の配線703(
図3参照)によって、タッチセンシング走査信号制御部604と電気的に接続される。
【0162】
詳細の断面構成は図示しないが、アレイ基板310において、ゲート配線75、ゲート電極76、ソース配線66、遮光パターン84、および導電配線74は、いずれも、導電配線11と同様の積層構造を有する。
遮光パターン84および導電配線74は、同一プロセスによって一括して製造することが可能である。
なお、導電配線74および遮光パターン84は、樹脂、絶縁性の無機酸化物などで覆われていてもよい。
アレイ基板310において、配線702、703は、導電配線11と同様の積層構造を有していてもよい。ただし、配線702、703は、導電配線11と異なる材質、層数を有する積層構造でもよいし、積層構造を有しない導電配線でもよい。
【0163】
図3に示すように、本実施形態における制御部602は、上記第2の実施形態と同様の制御動作を行う。
ただし、本実施形態における映像信号タイミング制御部603は、上記第2の実施形態におけるソース配線211、ゲート配線211に代えて、ソース配線66、ゲート配線75を介して信号を送出する。
本実施形態におけるタッチセンシング走査信号制御部604は、上記第2の実施形態における複数の導電配線63に代えて、配線702、703と電気的に接続される。タッチセンシング走査信号制御部604は、配線702、703を介して、導電配線11と導電配線74との間の静電容量C2を検出する。タッチセンシング走査信号制御部604は、導電配線11と導電配線74との間の静電容量の変化を検出し、タッチセンシングを行う。
【0164】
以上に説明した液晶表示装置700は、制御部602によって、表示部701の液晶層70を駆動制御することによって、表示部701によるカラーの画像表示を行うことができる。
【0165】
さらに、液晶表示装置700は、配線基板300に形成された導電配線11、アレイ基板310に形成された導電配線74と、タッチセンシング走査信号制御部604、システム制御部605とを備えることにより、タッチセンシングを行うことができる。
導電配線11、74は、Z軸方向の相対位置が異なるのみで、上記第2の実施形態の導電配線11、31と同様の構成を有するため、上記第2の実施形態と同様、タッチセンシングに好適な配線である。
【0166】
表示部701では、TFT73の上側に遮光パターン84を配置している。
遮光パターン84によって、表示部701内に伝播する光がTFT73に入射することを抑制できる。このため、TFT73の誤動作を防止し、画質低下を防ぐことができる。
例えば、300ppi以上といった高精細の画素を備える液晶表示装置においては、画素の大きさに対するTFTの相対的な大きさが増大するため、装置内の光がTFTに入射し易くなる。このため、遮光パターン84を設けることで、高精細であってもTFT73への入射光に起因する誤動作が少なくなり、画質低下を防ぐことができる。
【0167】
本実施形態の表示部701は、上記第2の実施形態の表示部601と略同様に製造することができる。
本実施形態の液晶表示装置700の配線基板である配線基板300は、導電配線11を備える。第3の配線基板であるアレイ基板310は、ソース配線66および導電配線74を備える。
これらの配線は、いずれも上記第1の実施形態の導電配線11と同様の積層構造を有するため、配線基板300およびアレイ基板310は、上記第1の実施形態と同様、銅配線を用いても良好な信頼性を有し、かつ容易に製造することができる。
さらに、アレイ基板310において、ソース電極77およびドレイン電極78も同様の積層構造とする場合には、ソース配線66とソース電極77およびドレイン電極78とを同一のレイヤーに同一の製造プロセスで形成できるため、より製造が容易になる。
特に、チャネル層79がIGZOなど酸化物半導体からなる場合、TFT73の製造プロセス全体にウェットエッチングを用いることができる点でも製造が容易になる。
さらに上述したように、第1の導電性酸化物層1を介することで、チャネル層79のIGZOなど酸化物半導体に銅合金層2が直接触れないようにすることができるため、信頼性をより向上することができる。
【0168】
本実施形態の液晶表示装置700において、TFT73のチャネル層79にIGZOなどの酸化物半導体を用いる場合、TFT73は、低い液晶駆動周波数でのドット反転駆動を行い、かつ、これと異なるタッチ駆動周波数でのタッチセンシング駆動を行うことができる。このようにすれば、液晶表示装置700は、低消費電力で高画質の映像表示を行うことができ、かつ高精度のタッチセンシングを行うことができる。タッチ駆動周波数は、液晶駆動周波数より高い周波数とすることができる。
さらに、液晶駆動方式として、例えば、ドット反転駆動を採用する場合、チャネル層79にメモリー性の良好なIGZOを用いることで、画素電極の電圧を一定電圧(定電位)に維持するための定電圧駆動に必要な補助容量(ストーレッジキャパシタ、あるいは蓄積コンデンサ)を省くことも可能である。この場合、アレイ基板の配線構造をシンプルにできる。
【0169】
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態の配線基板、半導体装置、および液晶表示装置について説明する。
図11は、本発明の第4の実施形態の液晶表示装置の構成の一例を示す模式的な断面図である。
図12は、
図11におけるE部の拡大図である。
【0170】
図3に示すように、本実施形態の液晶表示装置800は、上記第3の実施形態の液晶表示装置700の表示部701に代えて、表示部801を備える。液晶表示装置800は、図示略のバックライトを備えてもよい。
以下、上記第3の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0171】
図11に示すように、表示部801は、上記第3の実施形態における配線基板300、液晶層70、アレイ基板310に代えて、配線基板400(第1の配線基板)、液晶層80、アレイ基板410(配線基板、半導体装置、第2の配線基板)を備える。表示部801において、配線基板400、液晶層80、およびアレイ基板410はこの順に積層される。
なお、
図11では、配向膜、偏光板など光学フィルム、バックライトユニット、TFT等の半導体素子、および半導体素子に接続する配線の図示は省略されている。
以下では、表示部801の各装置部分における位置関係を説明するため、上記第3の実施形態と同様に配置されたXYZ座標軸(
図11参照)を参照する場合がある。
【0172】
配線基板400は、上記第3の実施形態における配線基板300に共通電極13(第2の導電配線、駆動配線)が追加されて構成される。
図12に示すように、導電配線11が第1の黒色層4および第2の黒色層5によって挟持されることは、上記第3の実施形態と同様である。
【0173】
本実施形態の配線基板400における各導電配線11(第1の導電配線、検出配線)は、上記第3の実施形態と同様、タッチセンシングにおける検出配線として用いられる。各導電配線11の端子部10a(図示略)は、上記第2の実施形態と同様の構成によって、それぞれ、後述するアレイ基板410内の配線702(
図3参照)に電気的に接続される。
図3に示すように、配線702はタッチセンシング走査信号制御部604に電気的に接続される。
【0174】
図11に示すように、共通電極13は、後述する液晶層80に液晶駆動電圧を印加する際に定電位に保たれ、液晶駆動時の共通電極として用いられる。
本実施形態では、共通電極13は、タッチセンシングにおける駆動配線としても用いられる。このため、共通電極13は、平面視で導電配線11と直角をなして交差するように、Y軸方向に延ばされたストライプ状である。共通電極13は、透明電極であり、導電配線11よりも幅広に形成される。
共通電極13は、X軸方向を配列方向として、等間隔に、互いに平行に配列される。共通電極13の配列ピッチは、X軸方向の画素ピッチに等しい。
共通電極13は、透明樹脂層12におけるカラーフィルタ層FR、FG、FBと反対側の表面に形成される。
【0175】
液晶層80は、VA(Vertical Alignment)方式の垂直配向の液晶であり、ノーマリークローズの偏光板構成になっている。
液晶層80は、後述するアレイ基板410の画素電極81と、共通電極13との間に印加される液晶駆動電圧で駆動される。
【0176】
アレイ基板410は、上記第3の実施形態のアレイ基板310における共通電極72、導電配線74が削除され、画素電極71に代えて、画素電極81を備える。
アレイ基板410は、アレイ基板310と同様、基板62、および絶縁層21、22、23がこの順に積層される。
画素電極81は、絶縁層23上において画素ごとに配置される。
【0177】
本実施形態のアレイ基板410は、少なくとも、液晶層80を駆動するため、液晶層80の画素配置に応じてマトリクス状に配置された複数のTFTを備える。各TFTのソース電極、ゲート電極は、それぞれソース配線、ゲート配線を介して、映像信号タイミング制御部603と電気的に接続される。各TFTは、ソース配線およびゲート配線を介して入力される映像信号タイミング制御部603からの制御信号に基づいて動作する。これらTFT、ソース配線、およびゲート配線は、上記第3の実施形態におけるTFT73、ソース配線66、およびゲート配線75で構成されてもよいし、異なる構成を有していてもよい。
アレイ基板410は、TFTの他の半導体素子として、例えば、ダイオード、スイッチング素子、あるいはメモリーなどの機能素子のいずれかを備えてもよい。
【0178】
図3に示すように、本実施形態における映像信号タイミング制御部603は、共通電極13(
図11参照)を定電位とするとともに、表示部801のアレイ基板410のソース配線211およびゲート配線212に信号を送る。
ソース配線211、ゲート配線212から送られたアレイ基板410に送られた信号は、TFTを含む駆動回路に入力されることで、共通電極13と各画素電極81との間に映像信号に基づいた液晶駆動電圧が印加される。液晶層80では、液晶駆動電圧が印加された画素において、液晶分子が駆動され、各画素における液晶分子の駆動状態に応じて画像が表示される。
【0179】
本実施形態におけるタッチセンシング走査信号制御部604は、上記第3の実施形態と同様、配線702、703と電気的に接続される。タッチセンシング走査信号制御部604は、配線702、703を介して、導電配線11と共通電極13との間の静電容量C3を検出し、タッチセンシングを行う。
本実施形態では、共通電極13を定電位(例えば、0V)として、画素電極81側をドット反転駆動とすることで、液晶駆動周波数とタッチ駆動周波数を異なるものにできる。共通電極13が、いわばシールド膜の役割をもつことによって、液晶表示装置800におけるタッチセンシングのS/N比が向上される。
【0180】
以上に説明した液晶表示装置800は、制御部602によって、表示部801の液晶層80を駆動制御することによって、表示部801によるカラーの画像表示を行うことができる。
【0181】
さらに、液晶表示装置800は、配線基板400に形成された導電配線11、共通電極13、タッチセンシング走査信号制御部604、およびシステム制御部605を備えることにより、タッチセンシングを行うことができる。本実施形態では、導電配線11にはタッチ駆動電圧が印加され、共通電極13はタッチ信号の検出配線として用いることでタッチセンシングを行う。導電配線11は、タッチ駆動配線として用いる。
本実施形態では、共通電極13がタッチセンシングの検出配線を兼ねているため、タッチセンシング専用の配線を低減できる。加えて、液晶駆動の周波数よりもタッチ駆動の周波数を高くすることができる。たとえば、タッチセンシングの駆動周波数を1kHz〜100kHzの範囲内とすることができる。液晶駆動のフレーム周波数(駆動周波数)は、酸化物半導体をチャネル層に用いるアクティブ素子で駆動する場合、たとえば、0.1Hz〜480Hzの範囲内とすることができる。
【0182】
[第5の実施形態]
次に、本発明の第5の実施形態の配線基板、半導体装置、および液晶表示装置について説明する。
図13は、本発明の第5の実施形態の液晶表示装置の構成の一例を示す模式的な断面図である。
図14は、本発明の第5の実施形態の配線基板の一例を示す模式的な断面図である。
【0183】
図3に示すように、本実施形態の液晶表示装置900は、上記第3の実施形態の液晶表示装置700の表示部701に代えて、表示部901を備える。液晶表示装置900は、図示略のバックライトを備えてもよい。
以下、上記第3の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0184】
図13に示すように、表示部901は、上記第3の実施形態における配線基板300、液晶層70、アレイ基板310に代えて、配線基板500(第1の配線基板)、液晶層90、アレイ基板510(配線基板、半導体装置、第2の配線基板)を備える。表示部901において、配線基板500、液晶層90、およびアレイ基板510はこの順に積層される。
なお、
図13では、配向膜、偏光板など光学フィルム、バックライトユニット、TFT等の半導体素子、および半導体素子に接続する配線の図示は省略されている。
以下では、表示部901の各装置部分における位置関係を説明するため、上記第3の実施形態と同様に配置されたXYZ座標軸(
図13参照)を参照する場合がある。
【0185】
配線基板500は、上記第3の実施形態における配線基板300の導電配線11および第2の黒色層5の積層体を、基板65の表面65aに移動し、第1の黒色層4に代えて第1の黒色層94を備える。
第1の黒色層94は、第2の黒色層5の表面65b上に配置される点を除くと、上記第3の実施形態における第1の黒色層4と同様に構成される。
第1の黒色層94は、配線基板500において、互いに隣り合うカラーフィルタ層FR、FG、FBの境界にてX軸方向に延びるストライプ状に形成される。
【0186】
配線基板500における導電配線11および第2の黒色層5は、基板65を間に挟んで各第1の黒色層94に対向する位置に配置される。
図14に示すように、導電配線11の第1の導電性酸化物層1、銅合金層2、および第2の導電性酸化物層3は、表面65a上に、この順に積層される。
第2の黒色層5は、上記第3の実施形態と同様に、第2の導電性酸化物層3のZ軸方向の負方向側の表面を覆うように積層される。
本実施形態の第1の黒色層94は、導電配線11の第1の導電性酸化物層1から離間した位置で、第1の導電性酸化物層1を覆う場合の例になっている。
【0187】
本実施形態の配線基板500における各導電配線11は、上記第3の実施形態と同様、タッチセンシングにおける検出配線として用いられる。
図13では図示されない各導電配線11の端部は、
図3に示す配線902を介してタッチセンシング走査信号制御部604に電気的に接続される。
配線902は、後述するアレイ基板510を経由してもよいし、経由しなくてもよい。あるいは、ポリイミドフィルム上に銅配線が形成されたフレキシブル基板などを介して配線902とタッチセンシング走査信号制御部604と電気的に接続してもよい。
【0188】
液晶層90は、FFS(Fringe Field Switching)方式の水平配向の液晶であり、ノーマリークローズの偏光板構成になっている。
液晶層90は、後述するアレイ基板510の画素電極91と、共通電極92との間に印加される液晶駆動電圧で駆動される。
【0189】
アレイ基板510は、上記第3の実施形態のアレイ基板310における導電配線74が削除され、画素電極71、共通電極72に代えて、画素電極91、共通電極92を備える。
画素電極91は、絶縁層23上において画素ごとに配置される。
共通電極92は、液晶層90に駆動電圧を印加する際に定電位に保たれ、液晶駆動時の共通電極として用いられる。
本実施形態では、共通電極92は、タッチセンシングにおける駆動配線あるいは検出配線としても用いられる。このため、共通電極92は、平面視で導電配線11と直角をなして交差するように、Y軸方向に延ばされたストライプ状である。共通電極92は、透明電極であり、X軸方向の画素開口幅程度の幅広に形成される。共通電極92は、X軸方向を配列方向として、等間隔をあけて互いに平行に配列される。共通電極92の配列ピッチは、X軸方向の画素ピッチに等しい。共通電極92は、絶縁層22の表面22a上に形成される。共通電極92は、図示略のゲート配線に平行に配置されている。
【0190】
本実施形態のアレイ基板510は、少なくとも、液晶層90を駆動するため、液晶層90の画素配置に応じてマトリクス状に配置された複数のTFTを備える。各TFTのソース電極、ゲート電極は、それぞれソース配線、ゲート配線を介して、映像信号タイミング制御部603と電気的に接続される。各TFTは、ソース配線およびゲート配線を介して入力される映像信号タイミング制御部603からの制御信号に基づいて動作する。これらTFT、ソース配線、およびゲート配線は、上記第3の実施形態のTFT73、ソース配線66、およびゲート配線75で構成されてもよいし、異なる構成を有していてもよい。
アレイ基板510は、TFTの他の半導体素子として、例えば、ダイオード、スイッチング素子、あるいはメモリーなどの機能素子のいずれかを備えてもよい。
【0191】
図3に示すように、本実施形態における映像信号タイミング制御部603は、共通電極92(
図13参照)を定電位とするとともに、表示部901のアレイ基板510のソース配線211およびゲート配線212に信号を送る。
ソース配線211、ゲート配線212から送られたアレイ基板510に送られた信号は、TFTを含む駆動回路に入力されることで、共通電極92と各画素電極91との間に映像信号に基づいた液晶駆動電圧が印加される。液晶層90では、液晶駆動電圧が印加された画素において、液晶分子が駆動され、各画素における液晶分子の駆動状態に応じて画像が表示される。
【0192】
本実施形態におけるタッチセンシング走査信号制御部604は、検出配線である複数の導電配線11を定電位とし、駆動配線を兼ねる共通電極92に駆動電圧を印加する。
タッチセンシング走査信号制御部604は、共通電極92と導電配線11との間の静電容量の変化を検出し、タッチセンシングを行う。
【0193】
以上に説明した液晶表示装置900は、制御部602によって、表示部901の液晶層90を駆動制御することによって、表示部901によるカラーの画像表示を行うことができる。なお、本実施形態では、画素電極と共通電極の役割を入れ替え、さらに共通電極をタッチセンシングでの検出電極(検出配線)として用いてもよい。
【0194】
さらに、液晶表示装置900は、配線基板500の外表面に形成された導電配線11、アレイ基板510に形成された共通電極92、タッチセンシング走査信号制御部604、およびシステム制御部605を備えることにより、タッチセンシングを行うことができる。
本実施形態では、共通電極92がタッチセンシングの駆動配線あるいは検出配線を兼ねているため、タッチセンシング専用の配線を低減できる。
【0195】
液晶表示装置900における導電配線11は、装置の外表面となる基板62の表面62a上に形成されている。しかし、導電配線11の第2の導電性酸化物層3上には、第1の黒色層4が積層されているため、視認方向8から銅合金層2の色や光反射が目に入らず視認性が改善される。
導電配線11は、装置の外表面に位置するため、使用時にストレスを受けやすくなっている。しかし、導電配線11は、第1の導電性酸化物層1および第2の導電性酸化物層3によって高強度に形成されているため、傷つきにくく、断線もしにくい。
【0196】
なお、上記複数の実施形態で説明した配線基板、半導体装置、および液晶表示装置は、種々の電子機器として、あるいは種々の電子機器の装置部分として用いることができる。上述した実施形態の配線基板、半導体装置、および液晶表示装置は、例えば、携帯電話、携帯型ゲーム機器、携帯情報端末、パーソナルコンピュータ、電子書籍、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、ヘッドマウントディスプレイ、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、デジタルオーディオプレイヤー等)、複写機、ファクシミリ、プリンター、プリンター複合機、自動販売機、現金自動預け入れ払い機(ATM)、個人認証機器、光通信機器などの電子機器あるいはこれら電子機器の一部分として用いることができる。
【0197】
上記各実施形態の説明では、液晶層を含む場合、液晶層が水平配向(垂直配向)であって、FFS方式(VA方式)によって駆動される場合の例で説明した。しかし、液晶層の配向および液晶駆動方式は、これには限定されない。
液晶層は、他の液晶駆動方式として、例えば、HAN(Hybrid-aligned Nematic)方式、TN(Twisted Nematic)、OCB(Optically Compensated Bend)方式、CPA(Continuous Pinwheel Alignment)方式、ECB(Electrically Controlled Birefringence)方式、TBA(Transverse Bent Alignment)方式等のうちから適宜選択して用いることができる。液晶層の配向は、選択された駆動方式に適する適宜の配向を用いることができる。
FFS方式あるいはVA方式では、液晶層はノーマリーブラック表示とすることができる。
液晶の駆動は、液晶表示での焼きつきを抑制するため、所定の映像表示期間のあとに、液晶層に印加する電圧の正と負を反転させる極性反転駆動(交流反転駆動)が行われている。極性反転駆動の方法として、画素を個別に反転させるドット反転駆動、横方向の行単位で反転させる水平ライン反転駆動、縦方向の列単位で反転させるカラム反転駆動、一画面や画面のブロック単位で反転させるフレーム反転駆動などがある。こうした液晶駆動は本発明の液晶表示装置に適用できる。
液晶層の液晶材料として、例えば、1×10
13Ωcm以上の固有低効率を有する高純度材料を用いてもよい。液晶層に用いる液晶は、負の誘電率異方性の液晶であっても、正の誘電率異方性の液晶であってもよい。
【0198】
上記各実施形態の説明で、タッチセンシングに用いる検出配線および駆動配線として用いるとして説明した配線または電極の組み合わせにおいて、役割を交換した構成としてもよい。すなわち、上記各実施形態で検出配線に用いた配線または電極を駆動配線として用い、同じく駆動配線として用いた配線または電極を検出配線として用いてもよい。
【0199】
上記各実施形態の説明では、検出配線および駆動配線の種々の組み合わせについて説明した。液晶表示装置において、積層方向における高さが異なる2面に配置され、平面視で互いに交差して配置された配線同士は、すべてタッチセンシングの検出配線および駆動配線として用いることができる。その際、各配線は、導電配線11のような積層構造の導電配線であってもよいし、導電配線11のような積層構造を有しない配線でもよい。
例えば、上記第3の実施形態において、配線基板300における導電配線11、アレイ基板310におけるゲート配線75、およびアレイ基板310におけるソース配線66からなる配線群のうちから選んだ一つの配線と、配線群のその他の配線のうちから選んだ一つの配線とからなる一対の配線を平面視にて互いに配列方向が異なるように配置し、この一対の配線を検出配線および駆動配線として用いてもよい。
【0200】
上記各実施形態の説明では、配線基板において、第1の導電性酸化物層、銅合金層、および第2の導電性酸化物層が積層された導電配線の形状、配置レイヤー、用途などについて複数の例を示した。しかし、本発明の配線基板に用いる導電配線の形状、配置レイヤー用途などは、上記各実施形態の例には限定されない。
例えば、導電配線の平面視形状は、直線状のパターンには限定されず、曲線状、パッド状など形状でもよい。
例えば、配線基板における導電配線の配置レイヤーは、上述したレイヤー以外でもよい。導電配線は、同一レイヤーに配置されるもの同士は、同一の製造プロセスで形成されるため、同一レイヤーには、複数の用途の導電配線を混在させてもよい。
例えば、導電配線の用途は、回路要素間の電気的接続に用いる導電配線でもよい。例えば、導電配線は、トランジスタに限らず、他の半導体素子の導電部分に用いられてもよい。例えば、導電配線の積層構成は、電気的に浮いたフローティングパターン、表示領域の4辺に位置する額縁と呼称される遮光パターン、帯電防止パターンなどに用いられてもよい。
【0201】
上記各実施形態では、配線基板および半導体装置に形成されるTFTの構造として、ボトムゲート構造の例で説明した。しかし、配線基板および半導体装置に形成されるトランジスタの構造としては、これには限定されず、例えば、デュアルゲート構造等のマルチゲート構造、または、トップゲート構造であってもよい。
【0202】
本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。