特許第6565613号(P6565613)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6565613
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20190819BHJP
   C08G 18/67 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
   C08F290/06
   C08G18/67 055
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-217827(P2015-217827)
(22)【出願日】2015年11月5日
(65)【公開番号】特開2017-88681(P2017-88681A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197022
【弁理士】
【氏名又は名称】谷水 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100102635
【弁理士】
【氏名又は名称】浅見 保男
(72)【発明者】
【氏名】石川 正和
(72)【発明者】
【氏名】田中 将啓
(72)【発明者】
【氏名】玉井 哲也
【審査官】 松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−314779(JP,A)
【文献】 特開2004−035599(JP,A)
【文献】 特開平06−316614(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/142229(WO,A1)
【文献】 特開平07−048422(JP,A)
【文献】 特開2010−037411(JP,A)
【文献】 特開平04−198312(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0040120(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08F 251/00 − 283/00
C08F 283/02 − 289/00
C08F 291/00 − 297/08
C09D 1/00 − 10/00
C09D 101/00 − 201/10
DB名 CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のウレタン(メタ)アクリレート(A)および単官能(メタ)アクリレート(B)を含有し、ウレタン(メタ)アクリレート(A)と単官能(メタ)アクリレート(B)の質量比が(A)/(B)=50/50〜95/5である活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
ウレタン(メタ)アクリレート(A): 数平均分子量300〜900のポリカプロラクトンポリオール(a1)、脂肪族又は脂環式ジイソシアネート(a2)、水酸基含有(メタ)アクリレート(a3)を反応させて得られる重量平均分子量3,000〜30,000のウレタン(メタ)アクリレート
単官能(メタ)アクリレート(B): 単独重合体としたときのガラス転移温度が−30〜35℃であり、下記の式(1)で表される単官能(メタ)アクリレート
【化1】
(R1は水素原子またはメチル基、nは0〜2、Cyは式(2)〜(4)から選ばれる環状構造)
【化2】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性樹脂組成物は、活性エネルギー線の照射により直ちに硬化して強度や耐薬品性に優れる硬化膜を形成することから、各種の表面を保護するための塗料、コーティング材として用いられている。近年では、液晶ディスプレイ等の画像表示装置に使用される反射防止フィルム、偏光フィルム、プリズムシート等の光学フィルムまたはシートや、電子機器や家電製品の筐体、表示パネル、スイッチボタン等に使用されるインサート成形またはインモールド転写フィルムへの利用が拡大している。このような用途に用いられる硬化性樹脂組成物には、美観を維持するための耐傷つき性、耐薬品性と加工性の点での基材への密着性、伸張性が求められる。耐傷つき性を向上させる方法として多官能モノマーまたはオリゴマーを用いて表面硬度を向上させる方法が知られている。しかしこの方法では伸張性が著しく低下し、加工性が劣る。そこで、耐傷つき性と加工性を両立させる手段として、擦傷が継時的に自己修復する樹脂組成物が開示されている。例えば、イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチルアクリレートと分子量2,000のポリカプロラクトントリオールとを反応させて得られるウレタンアクリレート(特許文献1)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体とポリエチレングリコールモノアクリレートとを反応させて得られるウレタンアクリレート(特許文献2)が開示されている。しかしながら、これらの方法では良好な自己修復性、表面硬度、伸張性と基材への密着性、耐薬品性を同時に満たすには至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−35599号公報
【特許文献2】特開2005−162908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、良好な自己修復性、表面硬度、伸張性を有し、かつ基材へ密着性と耐薬品性が良好な硬化物を得ることができる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定構造のウレタン(メタ)アクリレートと特定の単官能(メタ)アクリレートを含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が有用であることを見出し、本発明の完成に至った。
【0006】
すなわち、本発明は、次の〔1〕である。
〔1〕下記のウレタン(メタ)アクリレート(A)および単官能(メタ)アクリレート(B)を含有し、ウレタン(メタ)アクリレート(A)と単官能(メタ)アクリレート(B)の質量比が(A)/(B)=50/50〜95/5である活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
ウレタン(メタ)アクリレート(A): 数平均分子量300〜900のポリカプロラクトンポリオール(a1)、脂肪族又は脂環式ジイソシアネート(a2)、水酸基含有(メタ)アクリレート(a3)を反応させて得られる重量平均分子量3,000〜30,000のウレタン(メタ)アクリレート
単官能(メタ)アクリレート(B): 単独重合体としたときのガラス転移温度が−30〜35℃であり、下記の式(1)で表される単官能(メタ)アクリレート
【化1】
(R1は水素原子またはメチル基、nは0〜2、Cyは式(2)〜(4)から選ばれる環状構造)
【化2】
【発明の効果】
【0007】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物によれば、良好な自己修復性、表面硬度、伸張性を有し、かつ基材への密着性と耐薬品性が良好な硬化物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、ウレタン(メタ)アクリレート(A)、単官能(メタ)アクリレート(B)を含有することを特徴とする。以下に、各成分について説明する。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
<ウレタン(メタ)アクリレート(A)>
【0009】
本発明に用いるウレタン(メタ)アクリレート(A)は、数平均分子量300〜900のポリカプロラクトンポリオール(a1)と、脂肪族または脂環式ジイソシアネート(a2)と、水酸基含有(メタ)アクリレート(a3)とを反応させて得られる重量平均分子量が3,000〜30,000のウレタンアクリレートである。
<ポリカプロラクトンポリオール(a1)>
【0010】
本発明に用いるポリカプロラクトンポリオールとしてはポリカプロラクトンジオールまたはポリカプロラクトントリオールが挙げられ、2種以上を組み合わせて使用することもできる。ポリカプロラクトンポリオールの数平均分子量が300未満の場合は自己修復性が不十分となり、900を超えると自己修復性と表面硬度、密着性、耐薬品性が不十分となる。好ましくは500〜850である。ポリカプロラクトンポリオールの入手可能な市販品としては、(株)ダイセル製の「プラクセル205」、「プラクセル205H」、「プラクセル205U」、「プラクセルL205AL」、「プラクセル208」、「プラクセル210」、「プラクセル210N」、「プラクセル210CP」等が挙げられる。
<脂肪族または脂環式ジイソシアネート(a2)>
【0011】
本発明に用いる脂肪族ジイソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられ、脂環式ジイソシアネートとしては、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。硬化物の表面硬度、伸張性および耐薬品性に優れるという点で脂環式ジイソシアネートが好ましい。
<水酸基含有(メタ)アクリレート(a3)>
【0012】
本発明で用いる水酸基含有(メタ)アクリレート(c)は、1分子中に少なくとも1個以上の水酸基と、1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する水酸基含有(メタ)アクリレートである。例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン付加物(平均付加モル数1〜10)、ポリエチレングリコール(平均付加モル数1〜10)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(平均付加モル数1〜10)モノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等が挙げられる。これら水酸基含有(メタ)アクリレートは、一種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。自己修復性と伸張性に優れるという観点から、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートが好ましい。
【0013】
本発明に用いるウレタンアクリレート(A)の重量平均分子量は3,000〜30,000である。重量平均分子量が3,000未満では自己修復性と伸張性が不十分であり、30,000を超えると自己修復性と表面硬度が不十分である。好ましくは4,000〜15,000である。
【0014】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)の製造において、ポリカプロラクトンポリオール(a1)、水酸基含有(メタ)アクリレート(a3)の水酸基の合計とジイソシアネート(a2)のイソシアネート基の当量比は0.9〜1.1であり、好ましくは0.95〜1.05である。
【0015】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)の製造において、ウレタン化反応の方法は一般的には公知の方法に従って製造することができる。例えば、反応容器中にポリカプロラクトンポリオール(a1)、ジイソシアネート(a2)を投入し、必要に応じてウレタン化触媒、重合禁止剤、黄変防止剤、有機溶剤を投入し、30〜100℃の温度において反応させ、その後に水酸基含有(メタ)アクリレートを投入して、さらに30〜100℃の温度において反応させる。
【0016】
ウレタン化反応において、反応時間を短縮することができることから、ウレタン化触媒を使用することが好ましい。ウレタン化触媒としては、ジブチルスズジラウレートなどの有機スズ化合物、ジブチルビスマスジラウレートなどの有機ビスマス化合物、トリエチルアミンなどの3級アミン、テトラアルキルアンモニウムブロマイドなどの4級アンモニウムなどを用いることができる。これらのウレタン化触媒は、反応原料の総量に対して0.005〜1.0重量%の量で用いられる。
<単官能(メタ)アクリレート(B)>
【0017】
式(1)で表され、単独重合体としたときのガラス転移温度が−30〜35℃である。単独重合体としたときのガラス転移温度が−30℃未満では自己修復性、表面硬度、耐薬品性が不十分となり、35℃を超えると、自己修復性と伸張性が不十分となる。具体的にはフェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレートが挙げられる。これらの内1種類を用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。自己修復性と表面硬度に優れるという観点からフェノキシエチルアクリレートが好ましい。
【0018】
【化1】
(R1は水素原子またはメチル基、nは0〜2、Cyは式(2)〜(4)から選ばれる環状構造)
【0019】
【化2】
<活性エネルギー線硬化型樹脂組成物>
【0020】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、ウレタン(メタ)アクリレート(A)と環状構造を有する(メタ)アクリレート(B)を質量比(A)/(B)=50/50〜95/5で含有する。50/50未満では自己修復性、伸張性、耐薬品性が十分でなく、95/5を超えると硬化物の自己修復性と表面硬度が不十分となる。好ましくは(A)/(B)=50/50〜80/20である。
【0021】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には光重合開始剤を配合しても良い。前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等のベンゾインまたはベンゾインアルキルエーテル;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸等の芳香族ケトン;ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール等のベンジルケタール;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン−1−オン等のアセトフェノン;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシド等のアシルフォスフィンオキシドが挙げられる。
【0022】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には、単独重合体としたときのガラス転移温度が80〜200℃である単官能(メタ)アクリレート(C)を1〜30質量%配合することで硬化物の伸張性がさらに良好な樹脂組成物が得られる。具体的には、イソボニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアクリルアミドを配合することが好ましい。さらには、アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアクリルアミドを配合することよりが好ましい。
【0023】
さらに、任意成分として、(メタ)アクリル重合体、表面調整剤、レベリング剤、充填剤、顔料、シランカップリング剤、帯電防止剤、消泡剤、防汚剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、光重合開始剤、有機溶剤等を配合することができる。
【0024】
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させる方法としては、赤外線、可視光線、紫外線、X線、γ線および電子線などの活性エネルギー線の群より選ばれる光線を選択することができる。活性エネルギー線の照射方法は、通常の硬化性樹脂組成物の硬化方法を用いることができる。活性エネルギー線照射装置として紫外線を用いる場合、波長が200〜450nmの領域にスペクトル分布を有するフュージョンUVシステムズ(株)製Hバルブ等の無電極ランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ガリウムランプ、メタルハライドランプ等が挙げられる。活性エネルギー線の照射量は、積算光量として通常10〜3,000mJ/cm2であり、50〜2,000mJ/cm2が好ましく、100〜1,000mJ/cm2がより好ましい。照射時の雰囲気は空気中でもよく、窒素やアルゴン等の不活性ガス中で硬化してもよい。
【0025】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物はディスプレイ画面、モバイル機器の筐体、加飾フィルム等の各種コーティング剤に有用である。
【実施例】
【0026】
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下において特に規定しない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を示す。
<合成例1:ウレタン(メタ)アクリレート(UA−1)の製造>
【0027】
攪拌装置、空気導入管、温度計を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量530のポリカプロラクトンジオール((株)ダイセル製プラクセル205U)を159g、イソホロンジイソシアネート(住化バイエルウレタン(株)製デスモジュールI)を88.9g、酢酸ブチルを67.8g、ジブチルスズジラウレートを0.03g投入し、窒素を吹き込みながら内温を60℃に保持して4時間反応させた後、JIS K 7301の方法でイソシアネート基含有量が3.5%以下でなることを確認した。次に、2−ヒドロキシエチルアクリレートを23.2g、メトキシハイドロキノンを0.1g投入した。空気を吹き込みながら内温を60℃に保持して3時間反応させた後、イソシアネート基含有量が0.2%以下でなることを確認し、重量平均分子量4,450のウレタン(メタ)アクリレート(UA−1)を322.1g得た。
<合成例2〜5、比較合成例1〜4>
【0028】
表1に記載の原料を用いて、実施例1と同様にしてウレタン(メタ)アクリレートUA−2〜UA−5及びUA’−1〜UA’−4を製造した。ウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量を表1に記載する。
【0029】
【表1】
【0030】
表中に略記した配合材料の詳細は次の通りである。
ポリカプロラクトンジオール(数平均分子量530):(株)ダイセル製「プラクセル205U」
ポリカプロラクトンジオール(数平均分子量830):(株)ダイセル製「プラクセル208」
ポリカプロラクトントリオール(数平均分子量850):(株)ダイセル製「プラクセル308」
ポリカプロラクトンジオール(数平均分子量2,000):(株)ダイセル製「プラクセル220」
ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量650):保土ヶ谷化学工業(株)製「PTG650」
ポリプロピレングリコール(数平均分子量700):日油(株)製「ユニオールD−700」
イソホロンジイソシアネート:住化バイエルウレタン製(株)「デスモジュールI」
ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン:住化バイエルウレタン(株)「デスモジュールW」
2−ヒドロキシエチルアクリレート:大阪有機化学工業(株)製「HEA」
ペンタエリスリトールトリアクリレート:大阪有機化学工業(株)製「ビスコート#300」
<実施例1〜9、比較例1〜8>
【0031】
合成例1〜5、比較合成例1〜4で得られたウレタンアクリレート、表2記載の単官能モノマーおよび表3又は表4記載の添加剤、溶剤を表3又は表4記載の重量で50mL褐色スクリュー管に量りとり、ボルテックスミキサーにて1分間混合させ活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。得られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を、125μmPETフィルム(東洋紡績(株)製コスモシャインA4300)上に乾燥膜厚が25μmとなるよう塗工し、80℃にて5分間乾燥して有機溶剤を蒸発させた。続いて、80W/cmの無電極UVランプ(Hバルブ)を用いて積算光量1,000mJ/cm2のエネルギー量を照射することで硬化物試験片を得た。この硬化物試験片を用いて以下の評価を行った。
【0032】
【表2】
<自己修復性>
【0033】
温度25℃、相対湿度60RH%の雰囲気下、硬化物表面に対して真鍮ブラシで1kg荷重で10往復擦り、硬化物表面に入った傷が復元するか否か、または傷が復元するまでの時間を測定し、下記の基準により判定した。
傷が10秒以内に復元する。(評価:◎)
10秒後に傷が認められるが、5分経過後には復元する。(評価:○)
5分経過しても傷が復元しない。(評価:×)
<表面硬度>
【0034】
JIS K5600に準拠して、荷重750gの条件で引っ掻き硬度(鉛筆法)を測定し、下記の基準で評価した。
鉛筆硬度が2H以上(評価:◎)
鉛筆硬度がF〜H(評価:○)
鉛筆硬度が2B以下(評価:×)
<伸張性>
【0035】
得られた硬化物試験片を基材から剥離し、を10cm幅に切断し、オートグラフ試験機((株)島津製作所製AGS−J)を用いて、温度25℃、相対湿度60RH%、引張速度50mm/min、チャック間距離50mmの条件で引張試験を行い、測定した破断伸度を下記の基準で評価した。
破断伸度が200%以上(評価:◎)
破断伸度が100%以上〜200%未満(評価:○)
破断伸度が100%未満(評価:×)
<密着性>
【0036】
JIS K5600に準拠して、碁盤目剥離試験を行い、下記の基準で評価した(これを、「初期密着性」とする)。また、硬化膜試験片を温度80℃、相対湿度90RH%の条件下で48時間静置した後、初期密着性と同様の方法で密着性を評価した(これを、「耐湿熱密着性」とする)。
◎:残存した碁盤目の面積が100%(評価:◎)
○:残存した碁盤目の面積が90%以上〜99%未満(評価:○)
△:残存した碁盤目の面積が90%未満(評価:×)
<耐薬品性>
【0037】
硬化膜表面に5%NaOH水溶液又は5%塩酸をスポイトで0.1g滴下し、温度25℃で24時間静置した後、水を含んだ脱脂綿で薬品を拭き取ったあとの表面状態を目視で観察し、下記の基準で評価した。
薬品による痕がまったく確認されない。(評価:○)
薬品による痕など硬化膜に異常が確認できる。(評価:×)
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
表3に示すように、実施例1〜9は自己修復性、表面硬度、伸張性、密着性、耐薬品性がいずれも良好な樹脂組成物である。
比較例1はウレタンアクリレート(A)の重量平均分子量が本発明の範囲より小さいために硬化物の自己修復性と伸張性が不十分である。比較例2はウレタンアクリレート(A)の原料に用いるポリカプロラクトンポリオールの分子量が本発明の範囲より大きいために硬化物の自己修復性、表面硬度、湿熱試験後の密着性、耐薬品性が不十分である。比較例3はウレタンアクリレート(A)の原料にポリカプロラクトンポリオールでなくポリテトラメチレングリコールを用いているために表面硬度、湿熱試験後の密着性、耐薬品性が不十分である。比較例4はウレタンアクリレート(A)の原料にポリカプロラクトンポリオールでなくポリプロピレングリコールを用いているために自己修復性、表面硬度、伸張性、湿熱試験後の密着性、耐薬品性が不十分である。比較例5は単独重合体としたときのガラス転移点が本発明の範囲より低い単官能モノマーを用いているために自己修復性、表面硬度、湿熱試験後の密着性、耐薬品性が不十分である。比較例6は単独重合体としたときのガラス転移点が本発明の範囲より高い単官能モノマーを用いているために自己修復性と伸張性が不十分である。比較例7単官能モノマー(B)を用いていないために自己修復性と表面硬度が不十分である。比較例8はウレタンアクリレート(A)と単官能モノマー(B)の質量が本発明の範囲を外れるために自己修復性、表面硬度、伸張性、湿熱試験後の密着性、耐薬品性が不十分である。