(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1記載の旋回式油圧作業機械であって、前記アクチュエータ制御弁は、パイロット圧の供給を受けて作動するパイロット切換弁であり、前記基本制御部は、指令信号の入力を受けて前記アクチュエータ制御弁に入力されるパイロット圧を変化させるパイロット圧操作弁と、前記アクチュエータ操作器に与えられる操作に基いて基本指令信号を演算する基本指令信号演算部と、を含み、前記アクチュエータ流量制限部は、前記旋回方向が前記登坂方向でない場合には前記基本指令信号演算部により演算された基本指令信号をそのまま最終指令信号として前記パイロット圧操作弁に入力し、前記旋回方向が前記登坂方向である場合には前記傾斜角に応じて前記基本指令信号を減少させた信号を最終指令信号として前記パイロット圧操作弁に入力する、旋回式油圧作業機械。
請求項2記載の旋回式油圧作業機械であって、前記アクチュエータ流量制限部は、予め設定された制限指令信号であって前記傾斜角が一定以上の場合に当該傾斜角が大きいほど小さくなるような特性をもつ制限指令信号を演算する制限指令信号演算部と、前記旋回方向が前記登坂方向である場合に前記基本指令信号と前記制限指令信号とのうち低位のものを前記最終指令信号として選択して前記パイロット圧操作弁に入力する最終指令信号決定
部と、を含む、旋回式油圧作業機械。
請求項1〜3のいずれかに記載の旋回式油圧作業機械であって、前記旋回モータの作動を指令するための操作である旋回操作が与えられる旋回操作器をさらに備え、前記アクチュエータ流量制限部は、前記旋回操作が小さいほど前記アクチュエータ流量の制限を緩和する、旋回式油圧作業機械。
請求項3記載の旋回式油圧作業機械であって、前記旋回モータの作動を指令するための操作である旋回操作が与えられる旋回操作器をさらに備え、前記制限指令信号演算部は、前記制限指令信号に加え、前記旋回操作に基づき当該旋回操作が小さいほど大きくなる特性をもつ制限緩和指令信号を演算し、前記制限指令信号よりも前記制限緩和指令信号が大きい場合には当該制限指令信号を当該制限緩和指令信号に変更する、旋回式油圧作業機械。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記上部旋回体が水平ではなく傾斜した状態でその旋回駆動が行われる場合、当該上部旋回体の旋回方向によっては当該上部旋回体をこれに作用する重力に逆らって駆動しなければならず、当該駆動に要する作動油の圧力は水平状態での駆動に要する圧力よりも高くなる。この場合において、作動油の流量の多くが他の油圧アクチュエータに分配されると、旋回駆動力が不足し、最悪の場合には旋回の起動ができなくなるおそれがある。このような場合、旋回の起動を行うためには一旦ブーム用の操作レバーをそれまでのブーム上げ位置から中立位置に戻して旋回のための流量を確保する操作が必要であり、当該操作は作業効率を著しく低下させる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上部旋回体を旋回させる旋回モータ及びそれ以外の特定の油圧アクチュエータが共通の油圧ポンプに接続される旋回式油圧作業機械であって、前記上部旋回体の傾斜にかかわらずその旋回駆動を確実に可能とするように前記旋回モータ及び前記他の油圧アクチュエータへの作動油の適正な分配を行うことが可能なものを提供することを目的とする。
【0008】
提供される旋回式油圧作業機械は、下部走行体と、旋回体基準方向を有し、前記下部走行体上に搭載されるとともに、上から見た前記下部走行体に対する前記旋回体基準方向の角度が変化するように旋回可能な上部旋回体と、前記上部旋回体に搭載される作業装置と、作動油を吐出する油圧ポンプと、前記油圧ポンプにより吐出される作動油の供給を受けて作動する油圧モータからなり、当該作動油の供給に応じて前記上部旋回体を双方向に旋回させることが可能な旋回モータと、前記油圧ポンプと前記旋回モータとの間に介在し、当該油圧ポンプから当該旋回モータに供給される作動油の流量である旋回流量を変化させるように開閉作動する旋回制御弁と、前記旋回モータとは別の特定の油圧アクチュエータであって前記油圧ポンプにより吐出される作動油の供給を受けて作動する特定アクチュエータと、前記油圧ポンプと前記特定アクチュエータとの間に介在し、当該油圧ポンプから当該特定アクチュエータに供給される作動油の流量であるアクチュエータ流量を変化させるように開閉作動するアクチュエータ制御弁と、前記特定アクチュエータの作動を指令するためのアクチュエータ操作が与えられるアクチュエータ操作器と、前記上部旋回体の旋回方向を検出する旋回方向検出部と、前記旋回体基準方向からみた前記上部旋回体の傾斜方向及び傾斜角を検出する傾斜検出部と、前記アクチュエータ操作器に与えられる操作と前記旋回方向検出部が検出する旋回方向と前記傾
斜検出部が検出する傾斜角とに基づいて前記アクチュエータ流量を制御するように前記アクチュエータ制御弁を作動させる制御系と、を備える。当該制御系は、前記アクチュエータ操作器に与えられる前記アクチュエータ操作に応じて前記アクチュエータ制御弁の開度を変化させる基本制御部と、前記傾斜検出部が検出する前記傾斜方向に基づき前記旋回方向検出部により検出される旋回方向が前記上部旋回体に作用する重力に逆らう登坂方向であるか否かを判定し、登坂方向であると判定した場合に前記上部旋回体の傾斜角が大きいほど前記アクチュエータ流量を制限するように前記アクチュエータ制御弁の開度を減少させるアクチュエータ流量制限部と、を有する。
【0009】
この旋回式油圧作業機械では、上部旋回体の傾斜状態を考慮した作動油流量の分配、つまり、旋回流量とアクチュエータ流量との比率の決定、が行われるので、当該上部旋回体の旋回方向が登坂方向すなわち当該上部旋回体に作用する重力に抗して当該上部旋回体を動かさなければならない方向である場合であっても、その登坂方向への旋回に必要な旋回流量を確保することが可能である。具体的に、当該旋回式油圧作業機械の制御系は、前記上部旋回体の旋回方向が前記登坂方向である場合にその傾斜角が大きいほど前記アクチュエータ流量を制限することにより、当該登坂方向への上部旋回体の旋回に必要な旋回流量すなわち旋回モータに供給されるべき作動油の流量を確保することができる。一方、前記上部旋回体の旋回方向が前記登坂方向でない場合には前記アクチュエータ流量の制限が行われず、また、登坂方向であっても傾斜角が小さい場合には前記アクチュエータ流量の制限も小さいので、特定アクチュエータの作動速度が無駄に抑制されることが回避される。
【0010】
前記アクチュエータ制御弁が、パイロット圧の供給を受けて作動するパイロット切換弁である場合、前記基本制御部は、指令信号の入力を受けて前記アクチュエータ制御弁に入力されるパイロット圧を変化させるパイロット圧操作弁と、前記アクチュエータ操作器に与えられる操作に基いて基本指令信号を演算する基本指令
信号演算部と、を含み、前記アクチュエータ流量制限部は、前記旋回方向が前記登坂方向でない場合には前記基本指令信号演算部により演算された基本指令信号をそのまま最終指令信号として前記パイロット圧操作弁に入力し、前記旋回方向が前記登坂方向である場合には前記傾斜角に応じて前記基本指令信号を減少させた信号を最終指令信号として前記パイロット圧操作弁に入力するものが、好適である。
【0011】
この場合、前記アクチュエータ流量制限部は、例えば、予め設定された制限指令信号であって前記傾斜角が一定以上の場合に当該傾斜角が大きいほど小さくなるような特性をもつ制限指令信号を演算する制限指令信号演算部と、前記旋回方向が前記登坂方向である場合に前記基本指令信号と前記制限指令信号とのうち低位のものを前記最終指令信号として選択して前記パイロット圧操作弁に入力する最終指令信号決定部と、を含むものが、好適である。当該アクチュエータ流量制限部は、前記基本指令信号と前記制限指令信号との間での低位選択という簡単な演算動作で好適なアクチュエータ流量の制限の制御を実現することができる。
【0012】
前記旋回式油圧作業機械が前記旋回モータの作動を指令するための操作である旋回操作が与えられる旋回操作器をさらに備える場合、前記アクチュエータ流量制限部は、前記旋回操作が小さいほど前記アクチュエータ流量の制限を緩和することが、好ましい。この旋回操作に基づくアクチュエータ流量の制限の緩和は、当該旋回操作が小さい場合すなわち大きな旋回駆動力の要請がない場合に当該旋回操作が大きい場合に比べてアクチュエータ流量を増やすことにより、前記特定アクチュエータの作動速度が無駄に抑えられるのを防ぐことを可能にする。
【0013】
例えば、前記アクチュエータ流量制限部が前記制限指令信号演算部及び前記最終指令信号決定部を含む場合、当該制限指令信号演算部は、前記制限指令信号に加え、前記旋回操作に基づき当該旋回操作が小さいほど大きくなる特性をもつ制限緩和指令信号を演算し、前記制限指令信号よりも前記制限緩和指令信号が大きい場合には当該制限指令信号を当該制限緩和指令信号に変更するものが、好適である。当該アクチュエータ流量制限部は、演算した本来の制限指令信号と、これとは別に演算した制限緩和指令信号との間での高位選択という簡単な演算動作によって好適なアクチュエータ流量の制限の緩和を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、上部旋回体を旋回させる旋回モータ及びそれ以外の特定の油圧アクチュエータが共通の油圧ポンプに接続される旋回式油圧作業機械であって、前記上部旋回体の傾斜にかかわらず当該上部旋回体の旋回駆動を確実に可能にするような前記旋回モータ及び前記特定の油圧アクチュエータへの作動油の適正な分配を行うことが可能なものが、提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、前記実施の形態に係る油圧ショベルを示す。なお、本発明は、ここに示される油圧ショベルに限らず、上部旋回体を備えかつ油圧を主たる動力として作動する作業機械に広く適用され得るものである。
【0018】
前記油圧ショベルは、地盤G上を走行可能な下部走行体10と、前記下部走行体10に搭載される上部旋回体12と、上部旋回体12に搭載される作業装置14と、を備える。前記上部旋回体12には、旋回体基準方向として旋回体前後方向が設定され、その旋回体前後方向の前側部分に運転室であるキャブ16が設けられるとともに前記作業装置14が搭載され、後側部分にエンジンルーム18が設けられている。
【0019】
前記作業装置14は、ブーム20、アーム22、バケット24、及びこれらの駆動のためにそれぞれ設けられた複数の伸縮可能な油圧シリンダ、すなわちブームシリンダ26、アームシリンダ27及びバケットシリンダ28を含む。このうち前記ブーム20の起伏駆動のための油圧アクチュエータであるブームシリンダ26が、本発明にいう「特定アクチュエータ」に相当する。
【0020】
前記ブーム20は、上部旋回体12の前端に起伏可能すなわち水平軸回りに回動可能に支持される基端部と、その反対側の先端部と、を有する。前記アーム22は、前記ブーム20の先端部に水平軸回りに回動可能に取付けられる基端部と、その反対側の先端部と、を有し、当該先端部に前記バケット24が回動可能に取付けられる。前記各シリンダ26〜28は作動油の供給を受けて伸縮方向に作動し、当該シリンダ26に対応する駆動対象を回動させる。例えば前記ブームシリンダ26は、その伸長及び収縮により前記ブーム20を上げ方向及び下げ方向にそれぞれ動かすように当該ブーム20と上部旋回体12との間に介在する。
【0021】
図2は、前記油圧ショベルに搭載される油圧回路のうち前記上部旋回体12の旋回駆動及び前記ブーム20の起伏駆動に関与する部分を示す。
図2に示されるように、当該油圧回路は、前記のように「特定アクチュエータ」に相当する前記ブームシリンダ26の他、エンジン30の出力軸に連結される複数の油圧ポンプである第1メインポンプ31、第2メインポンプ32及びパイロットポンプ34と、前記上部旋回体12の旋回駆動のための油圧モータである旋回モータ36と、ブーム1速制御弁38と、ブーム2速制御弁40と、旋回制御弁42と、ブームリモコン弁50と、旋回リモコン弁52と、を含む。
【0022】
前記各ポンプ31,32,34は、いずれも前記エンジン30によって駆動され、これによりタンク内の油を吐出する。前記第1及び第2メインポンプ31,32は、駆動対象となる油圧アクチュエータを直接動かすための作動油を吐出する。前記パイロットポンプ34は、前記各制御弁38,40,42にこれらを開閉作動させるためのパイロット圧を供給するためのパイロット油を吐出する。
【0023】
前記旋回モータ36は、前記作動油の供給を受けて回転する出力軸を有し、当該出力軸は前記上部旋回体12を左右双方向に旋回させるように当該上部旋回体12に連結されている。具体的に、当該旋回モータ36は、一対のポート36a,36bを有し、そのうちの一方のポートへの作動油の供給を受けることにより当該一方のポートに対応する方向に前記出力軸が回転するとともに他方のポートから前記作動油を排出する。
【0024】
前記各制御弁38,40,42は油圧パイロット切換弁からなり、前記パイロットポンプ34からのパイロット圧の供給を受けることによりそのパイロット圧の大きさに応じたストロークで開弁方向に作動し、これにより、当該パイロット圧に対応した流量で対応する油圧アクチュエータに作動油が供給されることを許容する。従って、当該パイロット圧を変えることによって前記流量の制御が可能である。
【0025】
前記ブーム1速制御弁38は、前記第1メインポンプ31から吐出される作動油を前記ブームシリンダ26の伸縮駆動のための主たる作動油として当該ブームシリンダ26に導く弁であって、前記第1メインポンプ31と前記ブームシリンダ26との間に介在する。具体的に、前記ブーム1速制御弁38は、前記第1メインポンプ31とタンクとを直通することが可能なセンターバイパスライン33の途中に設けられている。
【0026】
前記ブーム1速制御弁38は、3位置のパイロット切換弁であり、一対のパイロットポート39A,39Bを有する。ブーム1速制御弁38は、パイロットポート39A,39Bに供給されるパイロット圧が0または微小である場合は中立位置38nに保たれ、前記第1メインポンプ31と前記ブームシリンダ26との間を遮断して前記センターバイパスライン33を開通することにより前記第1メインポンプ31からの作動油をそのままタンクに逃がす。ブーム1速制御弁38は、前記パイロットポート39Aに一定以上のパイロット圧が供給されるとそのパイロット圧の大きさに対応したストロークで前記中立位置38nからブーム上げ位置38aにシフトし、このブーム上げ位置38aでは前記第1メインポンプ31からの作動油が前記ストロークに対応した流量で前記ブームシリンダ26のへッド側室27Hに供給されるのを許容するように前記第1メインポンプ31につながるポンプライン35と前記へッド側室27Hにつながるヘッド側室ライン37Hとを接続するとともに当該ブームシリンダ26のロッド側室27Rから排出される作動油をタンクに逃がすように当該ロッド側室27Rにつながるロッド側室ライン37Rをタンクに接続し、これにより、前記ブームシリンダ26を前記ストロークに対応する速度で伸長方向すなわちブーム上げ方向に作動させる。逆に、ブーム1速制御弁38は、前記パイロットポート39Bに一定以上のパイロット圧が供給されるとそのパイロット圧の大きさに対応したストロークで前記中立位置38nからブーム下げ位置38bにシフトし、このブーム下げ位置38bでは前記第1メインポンプ31からの作動油が前記ストロークに対応した流量で前記ブームシリンダ26のロッド側室27Rに供給されるのを許容するように前記ポンプライン35と前記ロッド側室ライン37Rとを接続するとともに当該ブームシリンダ26のへッド側室27Hから排出される作動油をタンクに逃がすように前記へッド側室ライン37Hをタンクに接続し、これにより、前記ブームシリンダ26を前記ストロークに対応する速度で収縮方向すなわちブーム下げ方向に作動させる。
【0027】
前記ブーム2速制御弁40及び前記旋回制御弁42は前記第2メインポンプ32と前記ブームシリンダ26及び前記旋回モータ36との間にそれぞれ介在する。換言すれば、前記第2メインポンプ32から吐出される作動油は、前記ブーム2速制御弁40及び前記旋回制御弁42をそれぞれ通じて前記ブームシリンダ26のへッド側室27Hと前記旋回モータ36とに分配され、その分配比率は前記各制御弁40,42の開度に応じて変化する。
図2に示される回路では、前記第2メインポンプ32とタンクとの間に両者を直通することが可能なセンターバイパスライン44が設けられ、このセンターバイパスライン44に沿って前記ブーム2速制御弁40及び前記旋回制御弁42が配置されている。
【0028】
前記ブーム2速制御弁40は、前記ブーム1速制御弁38を通じて前記ブームシリンダ26に供給される作動油に加え、ブーム20の上げ方向の駆動に関してその増速のための作動油を前記第2メインポンプ32から前記ブームシリンダ26のへッド側室27Hに導くとともに当該作動油の流量(アクチュエータ流量)を制御するアクチュエータ制御弁である。
【0029】
前記ブーム2速制御弁40は、2位置のパイロット切換弁であり、単一のパイロットポート41を有する。ブーム2速制御弁40は、パイロットポート41に供給されるパイロット圧が0または微小である場合は中立位置40nに保たれ、前記第2メインポンプ32と前記ブームシリンダ26との間を遮断するとともに前記センターバイパスライン44を開通する。ブーム2速制御弁40は、前記パイロットポート41に一定以上のパイロット圧が供給されるとそのパイロット圧の大きさに対応したストロークで前記中立位置40nからブーム上げ増速位置40aにシフトし、このブーム上げ増速位置40aでは前記第2メインポンプ32からの作動油が前記ストロークに対応した流量で前記ブームシリンダ26のへッド側室27Hに供給されるのを許容するように、前記センターバイパスライン44から分岐して前記へッド側室ライン37Hに合流する作動油合流ライン46を開通するとともに前記センターバイパスライン44を前記ストロークに対応して絞り、これにより前記ブームシリンダ26の上げ方向の駆動を前記ストロークに対応する度合いで増速する。
【0030】
前記旋回制御弁42は、前記旋回モータ36を駆動するための作動油を前記第2メインポンプ32から前記旋回モータ36の第1及び第2ポート36a,36bに択一的に導くとともに、当該旋回モータ36に供給される作動油の流量である旋回流量を制御する弁である。
【0031】
前記旋回制御弁42は、3位置のパイロット切換弁であり、一対のパイロットポート43A,43Bを有する。旋回制御弁42は、両パイロットポート43A,43Bに供給されるパイロット圧がいずれも0または微小である場合は中立位置42nに保たれ、前記第2メインポンプ32と前記旋回モータ36との間を遮断するとともに前記センターバイパスライン44を開通する。前記旋回制御弁42は、前記パイロットポート43Aに一定以上のパイロット圧が供給されるとそのパイロット圧の大きさに対応したストロークで前記中立位置42nから左旋回位置42aにシフトし、この左旋回位置42aでは前記第2メインポンプ32からの作動油が前記ストロークに対応した流量で前記旋回モータ36の第1ポート36aに供給されるのを許容するように、前記センターバイパスライン44から分岐する旋回用供給ライン48と前記第1ポート36aにつながる第1ポートライン45Aとを接続するとともに前記センターバイパスライン44を前記ストロークに対応して絞り、これにより前記旋回モータ36を前記ストロークに対応する速度で左旋回方向に作動させる。逆に、前記旋回制御弁42は、前記パイロットポート43Bに一定以上のパイロット圧が供給されるとそのパイロット圧の大きさに対応したストロークで前記中立位置42nから右旋回位置42bにシフトし、この右旋回位置42bでは前記第2メインポンプ32からの作動油が前記ストロークに対応した流量で前記旋回モータ36の第2ポート36bに供給されるのを許容するように、前記旋回用供給ライン48と前記第2ポート36bにつながる第2ポートライン45Bとを接続するとともに前記センターバイパスライン44を前記ストロークに対応して絞り、これにより前記旋回モータ36を前記ストロークに対応する速度で右旋回方向に作動させる。
【0032】
前記ブームリモコン弁50は、特定アクチュエータである前記ブームシリンダ26の作動を指令するための操作(アクチュエータ操作)が与えられるアクチュエータ操作器であって、当該操作に対応したパイロット圧を前記ブーム1速制御弁38のパイロットポート39A,39Bに択一的に供給するように前記パイロットポンプ34と前記ブーム1速制御弁38との間に介在する。
【0033】
具体的に、前記ブームリモコン弁50は、前記操作を受けて回動することが可能な操作部材であるブーム操作レバー50aと、当該ブーム操作レバー50aの動きとリンクして開弁作動する弁本体50bと、を有する。弁本体50bは、前記パイロットポンプ34に接続される入口ポートと、一対の出口ポートと、を有し、当該一対の出口ポートはブームパイロットライン54A,54Bをそれぞれ介して前記ブーム1速制御弁38のパイロットポート39A,39Bにそれぞれ接続されている。弁本体50bは、前記ブーム操作レバー50aが操作されずに中立位置にあるときは前記パイロットポンプ34と前記パイロットポート39A,39Bとの間を遮断する閉弁状態を保ち、前記ブーム操作レバー50aが前記中立位置から回動操作されると前記パイロットポート39A,39Bのうち前記回動操作の方向に対応するパイロットポートに対して当該回動操作の量に対応した大きさのパイロット圧を供給するように、当該回動操作に応じて開弁作動する。従って、前記ブーム2速制御弁40は前記ブーム操作レバー52aに与えられる操作の方向に対応した方向に当該操作の量に対応したストロークで開弁作動する。
【0034】
前記旋回リモコン弁52は、前記旋回モータ36の作動を指令するための操作である旋回操作が与えられる旋回操作器であって、当該操作に対応したパイロット圧を前記旋回制御弁42のパイロットポート43A,43Bに択一的に供給するように当該旋回制御弁42と前記パイロットポンプ34との間に介在する。
【0035】
具体的に、前記旋回リモコン弁52は、前記操作を受けて回動することが可能な操作部材である旋回操作レバー52aと、当該旋回操作レバー52aの動きとリンクして作動する弁本体52bと、を有する。弁本体52bは、前記パイロットポンプ34に接続される入口ポートと、一対の出口ポートと、を有し、当該一対の出口ポートは旋回パイロットライン56A,56Bをそれぞれ介して前記旋回制御弁42のパイロットポート43A,43Bにそれぞれ接続されている。弁本体52bは、前記旋回操作レバー52aが操作されずに中立位置にあるときは前記パイロットポンプ34と前記パイロットポート43A,43Bとの間を遮断する閉弁状態を保ち、前記旋回操作レバー52aが前記中立位置から回動操作されると前記パイロットポート43A,43Bのうち前記回動操作の方向に対応するパイロットポートに対して当該回動操作の量に対応した大きさのパイロット圧を供給するように、当該回動操作に応じて開弁作動する。従って、前記旋回操作弁42は前記旋回操作レバー52aに与えられる操作の方向に対応した方向に当該操作の量に対応したストロークで開弁作動する。
【0036】
前記のように「アクチュエータ制御弁」に相当する前記ブーム2速制御弁40のパイロットポート41は、前記ブームリモコン弁50とは独立した専用のブーム2速パイロットライン58を介して前記パイロットポンプ34に接続されており、当該ブーム2速パイロットライン58には後に詳述するパイロット圧操作弁68が設けられている。
【0037】
この実施の形態に係る油圧ショベルは、さらに、
図2に示される複数のセンサを備える。当該複数のセンサは、ブーム上げパイロット圧センサ60と、一対の旋回パイロット圧センサ62A,62Bと、傾斜センサ64と、を含む。
【0038】
前記ブーム上げパイロット圧センサ60は、前記ブームリモコン弁50から前記ブーム1速制御弁38のパイロットポート38Aに供給されるパイロット圧であるブーム上げパイロット圧Pbを検出して電気信号すなわちブームパイロット圧検出信号に変換する圧力センサである。
【0039】
前記旋回パイロット圧センサ62A,62Bは、前記旋回リモコン弁52から前記旋回制御弁42のパイロットポート43A,43Bに供給されるパイロット圧である旋回パイロット圧Psa,Psbを検出して電気信号すなわち旋回パイロット圧検出信号に変換する圧力センサである。これらの旋回パイロット圧センサ62A,62Bは、前記上部旋回体12の旋回方向を検出する旋回方向検出部にも相当する。
【0040】
前記傾斜センサ64は、前記上部旋回体12に取付けられ、旋回体基準方向である前記旋回体前後方向からみた前記上部旋回体12の傾斜方向及び傾斜角度を検出する傾斜検出部を構成する。具体的に、当該傾斜センサ68は、
図3及び
図4に示すように前記上部旋回体12をその旋回体前後方向の前側からみたときの左右方向についての傾斜角θを検出してこれを電気信号である傾斜検出信号に変換する。当該傾斜角θには、傾斜方向に応じて正負の符号が与えられる。具体的に、
図3に示すように上部旋回体12が左に傾いている場合には正の符号が、
図4に示されるように右に傾いている場合には負の符号が、それぞれ与えられる。当該傾斜センサ64には、周知のものが適用可能であり、一般には傾斜に伴って変化する物理量(錘に対して特定方向に作用する重力の大きさ、静電容量、被検物の歪み等)を測定するものが用いられる。
【0041】
この油圧ショベルは、さらに、本発明にいう「アクチュエータ流量」に相当する流量であって前記ブーム2速制御弁42から前記ブームシリンダ26のへッド側室27Hに供給される作動油の流量を制御する制御系を備える。この制御系は、「アクチュエータ操作器」に相当する前記ブームリモコン弁50に与えられる操作と、「旋回操作器」に相当する前記旋回リモコン弁52に与えられる操作と、前記上部旋回体12の旋回方向と、前記傾斜センサ64が検出する(傾斜方向も含めた)傾斜角と、に基づいて前記アクチュエータ流量を制御する。
【0042】
この実施の形態に係る制御系は、前記パイロット圧操作弁68と、
図2及び
図5に示されるコントローラ70と、を含む。
【0043】
前記パイロット圧操作弁68は、指令信号の入力を受けて前記ブーム2速制御弁40のパイロットポート41に入力されるパイロット圧を変化させる。具体的に、この実施の形態に係るパイロット圧操作弁68は、ソレノイド69を有する電磁比例減圧弁からなり、当該ソレノイド69に供給される励磁電流である指令電流に比例した開度で開弁し、これにより前記パイロットポンプ34から前記ブーム2速制御弁40のパイロットポート41に供給されるパイロット圧すなわちブーム増速用パイロット圧を変化させる。
【0044】
前記コントローラ70は、
図5に示すような基本指令電流演算部72、制限指令電流演算部74及び最終指令電流決定部76を有する。
【0045】
前記基本指令電流演算部72は、前記パイロット圧操作弁68とともに、アクチュエータ操作器である前記ブームリモコン弁50のブーム操作レバー50aに与えられる操作に応じて前記ブーム2速制御弁40の開度を変化させる基本制御部を構成する。具体的に、当該基本指令電流演算部72は、前記ブーム上げパイロット圧センサ60により検出されるブーム上げパイロット圧Pbに基いて、前記パイロット圧操作弁68の開度を決める前記指令電流の基礎となる基本指令電流Iboを演算する。この実施の形態では、前記ブーム上げパイロット圧Pbと前記基本指令電流Iboとの関係について
図7に示すような特性が決められており、前記基本指令電流演算部72は当該特性を記憶し、これに基いて前記ブーム上げパイロット圧Pbに対応する基本指令電流Iboを決定する。
【0046】
前記制限指令電流演算部74及び前記最終指令電流決定部76は、アクチュエータ流量制限部を構成する。このアクチュエータ流量制限部は、前記傾斜センサ64が検出する前記上部旋回体12の傾斜方向に基づき、前記旋回パイロット圧センサ62A,62Bにより検出される前記上部旋回体12の旋回方向が当該上部旋回体12に作用する重力に逆らう登坂方向であるかあるいは当該重力に従う降坂方向であるかを判定し、登坂方向であると判定した場合に前記上部旋回体12の傾斜角が大きいほどアクチュエータ流量すなわち前記ブーム2速制御弁40を通じて前記ブームシリンダ26のへッド側室27Hに供給される作動油の流量を制限するように、当該ブーム2速制御弁40の開度を減少させる。
【0047】
具体的に、前記制限指令電流演算部74は、前記傾斜角θに応じて予め設定された制限指令電流Irを記憶し、当該傾斜角θに対応する制限指令電流Irを演算してこれを出力する。この実施の形態に係る制限指令電流演算部74は、前記傾斜角θが一定以上の場合に当該傾斜角θが大きいほど前記制限指令電流Irが小さくなるような特性を記憶しており、この特性に基いて前記傾斜角θに対応する前記制限指令電流Irを決定する。
【0048】
図8は、その特性の例を示す。この特性では、傾斜角θが一定未満の範囲には基本指令電流Iboの最大値と同等の制限指令電流Irが与えられ、当該傾斜角θ(正確には傾斜角θの絶対値)が増大するにつれて制限指令電流Irが減少し、傾斜角θ(の絶対値)が許容範囲を超えると制限指令電流Irは最小値に抑えられる。
【0049】
前記最終指令電流決定部76は、前記上部旋回体12の旋回方向が前記登坂方向でない場合には前記基本指令電流演算部72により演算された基本指令電流Iboをそのまま最終指令電流Ibとして前記パイロット圧操作弁68に入力する。一方、前記最終指令電流決定部76は、前記旋回方向が前記登坂方向である場合には、前記基本指令電流演算部72により演算された基本指令電流Iboと、前記制限指令電流演算部74により演算された制限指令電流Irつまり前記傾斜角θに応じて指令電流を基本指令電流Iboよりも減少させるための信号と、を対比し、そのうち低位のものを最終指令電流Ibとして選択して前記パイロット圧操作弁68に入力する。
【0050】
さらに、この実施の形態に係るアクチュエータ流量制限部は、前記旋回リモコン弁52に与えられる旋回操作が小さいほど前記アクチュエータ流量の制限を緩和する機能を有する。具体的に、前記制限指令電流演算部74は、本来の前記制限指令電流Irに加え、前記制限の緩和を行うための制限緩和指令電流Irrを演算する機能と、前記制限指令電流Irよりも前記制限緩和指令電流Irrが大きい場合には当該制限指令電流Irを当該制限緩和指令電流Irrに変更する機能と、を有する。前記制限緩和指令電流Irrは、前記旋回操作の大きさに対応する旋回パイロット圧Ps(旋回パイロット圧センサ62A,62Bにより検出されるパイロット圧Psa,Psbのうちの高位のもの)に基づき当該旋回操作が小さいほど大きくなる特性を有する。つまり、この実施の形態に係る制限指令電流演算部74は、本来の制限指令電流Irとして演算した値と別の制限緩和指令電流Irrとして演算した値との高位選択に基づき、制限の緩和も考慮に入れた最終的な制限指令電流Irの決定を行う。
【0051】
図9は、前記旋回パイロット圧Psに対する前記制限緩和指令電流Irrの特性の例を示す。この特性によれば、旋回パイロット圧Psが一定未満の範囲では制限緩和指令電流Irrに最大の値が与えられ、当該範囲から逸脱するにつれて制限緩和指令電流Irrが減少する。旋回パイロット圧Psが許容範囲を超えると制限緩和指令電流Irrは最小値に抑えられる。制限指令電流演算部74は、このような特性を記憶し、当該特性に基いて前記旋回パイロット圧Psに対応する制限緩和指令電流Irrを特定する。
【0052】
次に、前記コントローラ70が実際に行う演算制御動作を、
図6のフローチャートを参照しながら説明する。
【0053】
コントローラ70は、前記各センサ60,62A,62B,64等から入力される各種信号を取込む(ステップS1)。当該コントローラ70の基本指令電流演算部72は、前記各種信号のうちのブーム上げパイロット圧Pbに関する検出信号に対応する基本指令電流Iboを演算する(ステップS2)。この基本指令電流Iboは、
図7に示されるようにブーム上げパイロット圧Pbの増大に伴って大きくなる電流であり、よってブーム上げ操作とブーム2速制御弁40の開度とをリンクさせるための指令電流である。
【0054】
次に、コントローラ70の最終指令電流決定部76は、前記旋回パイロット圧センサ62A,62Bが検出する旋回パイロット圧Psa,Psbに基づき判断される上部旋回体12の旋回方向が登坂方向であるか否かを判定する(ステップS3)。例えば、
図3に示すように上部旋回体12をその旋回体前後方向の前側からみたときに当該上部旋回体12が左に傾いている場合(つまり傾斜角θが正の場合)、旋回方向がキャブ16内のオペレータからみて左方向である場合には当該旋回方向が登坂方向であると判定され、右方向である場合には降坂方向と判定される。逆に、
図4に示すように当該上部旋回体12が右に傾いている場合(つまり傾斜角θが負の場合)、旋回方向が前記オペレータからみて左方向である場合には当該旋回方向が降坂方向であると判定され、右方向である場合には登坂方向と判定される。また、「登坂方向でない場合」には、前記旋回方向が前記降坂方向である場合の他、上部旋回体12が水平である場合や、上部旋回体12が旋回していない場合(つまり旋回とブーム上げとの複合操作が行われていない場合)も含まれる。
【0055】
前記最終指令電流決定部76は、前記旋回方向が前記登坂方向ではないと判定した場合(ステップS3でNO)、つまり上部旋回体12をこれに作用する重力に逆らって旋回させる状態でない場合、前記基本指令電流Iboをそのまま最終指令電流Ibに設定する(ステップS4)。
【0056】
一方、前記旋回方向が前記登坂方向であると判定された場合(ステップS3でYES)、制限指令電流演算部74による制限指令電流Irの演算が行われる(ステップS5〜S8)。具体的に、制限指令電流演算部74は、
図8に示される特性に基いて傾斜角θに対応する制限指令電流Irを演算する(ステップS5)とともに、
図9に示される特性に基いて旋回パイロット圧Ps(両旋回パイロット圧Psのうちの高位のパイロット圧)に対応する制限緩和指令電流Irrを演算する(ステップS6)。前記制限指令電流演算部74は、前記制限指令電流Irが前記制限緩和指令電流Irr以上である場合には(ステップS7でNO)、当該制限指令電流Irをそのまま維持するが、前記制限緩和指令電流Irrが前記制限指令電流Irを上回る場合には(ステップS7でYES)、当該制限指令電流Irを当該制限緩和指令電流Irrに変更する(ステップS8)。
【0057】
前記最終指令電流決定部76は、前記のようにして決定された制限指令電流Irと前記基本指令電流Iboとを対比する(ステップS9)。最終指令電流決定部76は、前記基本指令電流Iboが前記制限指令電流Ir以下である場合には(ステップS9でYES)当該基本指令電流Iboを最終指令電流Ibに設定するが(ステップS10)、前記基本指令電流Iboよりも前記制限指令電流Irが小さい場合には(ステップS9でNO)当該制限指令電流Irを最終指令電流Ibに設定する(ステップS11)。
【0058】
前記最終指令電流決定部76は、前記のように決定した最終指令電流Ibをパイロット圧操作弁68に入力する(ステップS12)。パイロット圧操作弁68は、これにより、当該最終指令電流Ibに比例した開度で開弁し、当該開度に対応したパイロット圧がブーム2速制御弁40のパイロットポート41に供給されることを許容する。こうして、第2メインポンプ32から吐出される作動油のうち前記ブーム2速制御弁40を通じて前記ブームシリンダ26に供給される作動油の流量(アクチュエータ流量)が制御される。
【0059】
以上説明した油圧ショベルでは、共通の第2メインポンプ32から前記ブーム2速制御弁40及び旋回制御弁42をそれぞれ通してブームシリンダ26のへッド側室27H及び旋回モータ36に供給される作動油の流量について、傾斜センサ64により検出される上部旋回体12の傾斜状態を考慮した分配、つまり、旋回流量とアクチュエータ流量との比率の決定、が行われるので、前記旋回方向が登坂方向すなわち前記上部旋回体12に作用する重力に抗して当該上部旋回体を動かさなければならない方向である場合にも、その登坂方向への旋回に必要な旋回流量を確保することが可能である。
【0060】
具体的に、前記制御系は、前記パイロット圧操作弁68及び前記コントローラ70を含む制御系は、前記旋回方向が前記登坂方向である場合に当該上部旋回体12の傾斜角が大きいほど(この実施の形態では傾斜センサ64から出力される傾斜角θの検出信号の絶対値が大きいほど)前記アクチュエータ流量すなわちブーム2速制御弁40を通じて前記へッド側室27Hに供給される流量を制限することにより、当該登坂方向への上部旋回体12の旋回に必要な旋回流量すなわち旋回制御弁42を通じて旋回モータ36に供給されるべき作動油の流量を確保することができる。一方、前記制御系は、前記旋回方向が前記登坂方向でない場合には前記アクチュエータ流量を制限せず、また、当該旋回方向が登坂方向であっても前記上部旋回体12の傾斜角が小さい場合には前記アクチュエータ流量の制限も小さく抑えるので、前記ブームシリンダ26によるブーム上げ速度を無駄に抑制することなく必要な旋回流量を確保することができる。
【0061】
特に、この実施の形態に係る前記コントローラ70は、例えば
図7及び
図8に示すような特性をそれぞれ記憶する基本指令電流演算部72及び制限指令電流演算部74を併有し、両者により演算される基本指令電流Ibo及び制限指令電流Irからの低位選択により最終指令電流Ibを決定するので、複雑な演算動作を行装置ことなく好適なアクチュエータ流量の制限のための制御を実行することができる。
【0062】
さらに、この実施の形態に係るコントローラ70は、旋回リモコン弁52に与えられる旋回操作が小さいほど前記アクチュエータ流量の制限を緩和する機能を有するため、当該旋回操作が小さい場合すなわち大きな旋回駆動力の要請がない場合に当該旋回操作が大きい場合に比べてアクチュエータ流量を増やすことにより、ブーム上げの増速が無駄に抑えられるのを防ぐことができる。
【0063】
具体的に、この実施の形態に係る制限指令電流演算部74は、本来の制限指令電流Irの演算に加え、前記旋回操作が小さいほど大きくなる特性をもつ制限緩和指令電流Irrの演算と、前記制限指令電流Irと前記制限緩和指令電流Irrとの高位選択に基づく最終的な制限指令電流Irの決定と、を行う機能を有するから、複雑な演算動作を行うことなく好適なアクチュエータ流量の制限の緩和を行うことが可能である。
【0064】
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されない。本発明は、例えば次のような態様を含むことが可能である。
【0065】
1)特定アクチュエータ及びアクチュエータ制御弁について
本発明に係る特定アクチュエータ及びアクチュエータ制御弁はそれぞれ前記ブームシリンダ26及びブーム2速制御弁40に限定されない。本発明に係る特定アクチュエータは、作業装置に含まれる他の油圧アクチュエータ、例えばアームシリンダやバケットシリンダであってもよい。また、本発明は油圧ショベルに限定されず、よって、前記特定アクチュエータは掘削以外の作業を目的とする作業装置(例えば破砕機や昇降装置)に含まれるものであってもよい。換言すれば、本発明は、共通の油圧ポンプに旋回モータとそれ以外の特定の油圧アクチュエータとが接続されていて当該油圧アクチュエータに供給される作動油の流量であるアクチュエータ流量が当該旋回モータに供給される旋回流量に影響を与えるものについて広く適用されることが可能である。
【0066】
2)上部旋回体の傾斜状態の検出について
上部旋回体の旋回体基準方向は前後方向に限定されない。当該旋回体基準方向は、上から見て上部旋回体の旋回に伴い水平方向に変化する方向であればよく、例えば前記上部旋回体12の左右方向であってもよい。また、上部旋回体の傾斜状態を検出するための傾斜センサが下部走行体に取付けられてもよい。この場合、傾斜検出部は、当該傾斜センサに加え、当該傾斜センサが検出する下部走行体の傾斜状態と上部旋回体の旋回角度に基いて当該上部旋回体の旋回体基準方向から見た傾斜状態を演算する傾斜状態演算部を含むのが、よい。
【0067】
3)アクチュエータ操作器及び旋回操作器について
アクチュエータ操作器及び旋回操作器はそれぞれ前記ブームリモコン弁50及び前記旋回リモコン弁52に限定されない。当該操作器は、操作部材に与えられる操作に対応した電気信号を生成するもの(例えば電気レバー装置)であってもよい。この場合、前記ブーム上げパイロット圧センサ60や前記旋回パイロット圧センサ62といった圧力センサは不要となる。一方、アクチュエータ制御弁や旋回制御弁が前記実施の形態と同様にパイロット切換弁により構成される場合でも、そのパイロットラインの途中に電磁比例減圧弁が設けられて当該電磁比例減圧弁が操作されることにより、前記アクチュエータ制御弁や前記旋回制御弁による流量の制御が可能である。
【0068】
4)アクチュエータ流量の制限について
アクチュエータ流量を制限するための回路は
図2に示されるものに限定されない。例えば、アクチュエータ操作器を構成するリモコン弁であってアクチュエータ操作に対応したパイロット圧を出力するものがパイロットラインを介してアクチュエータ制御弁のパイロットポートに接続され、当該パイロットラインの途中にパイロット圧操作弁、例えば電磁比例減圧弁、が介在してもよい。この場合、前記リモコン弁が基本指令信号に相当するパイロット圧を生成して前記アクチュエータ制御弁に入力する基本制御部を構成するので、基本指令信号演算部は不要であり、前記電磁比例減圧弁等のパイロット操作弁に入力される指令信号としては、当該基本指令信号であるパイロット圧を減少させる度合いを特定する制限指令信号が演算されればよい。
【0069】
また、傾斜角に対する制限指令の特性は、自由に設定されることが可能である。例えば、旋回駆動に要するトルクは上部旋回体の作業姿勢によっても変化するため、当該作業姿勢も考慮した制限指令が算定されてもよい。
【0070】
5)アクチュエータ流量の制限の緩和について
前記アクチュエータ流量の制限の緩和のための具体的手段は、前記制限緩和指令電流Irrのような制限緩和指令信号の演算を含むものに限定されない。当該緩和は、例えば、基本指令信号を上限として制限指令信号を旋回操作に応じて増加させるための当該制限指令信号の補正を行うことによっても、実行されることが可能である。また、アクチュエータ流量の制限の緩和は仕様により省略されてもよい。