特許第6565626号(P6565626)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6565626
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】レーザレーダ装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/497 20060101AFI20190819BHJP
   G01S 17/42 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
   G01S7/497
   G01S17/42
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-225579(P2015-225579)
(22)【出願日】2015年11月18日
(65)【公開番号】特開2017-96641(P2017-96641A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年7月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 直丈
【審査官】 安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−037960(JP,A)
【文献】 特開2011−128120(JP,A)
【文献】 特開2012−038078(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0124241(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48− 7/51,
G01S 17/00−17/95,
G01C 3/00− 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外殻を構成するケースと、
前記ケースの内部に設けられ、所定の走査角度ごとにレーザ光を照射して物体からの反射光を受光することができる光学機構と、
前記レーザ光を透過可能であり、前記ケースに取り付けられて前記ケースの内部と外部とを仕切る窓部材と、
前記光学機構に対して相対的に振動可能な振動部材と、
を有する装置本体と、
前記光学機構で受光した前記反射光の強度と前記レーザ光を照射してから前記反射光を受光するまでの時間とに基づいて前記物体の有無及び前記物体までの距離を測定する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記振動部材までの測定距離が変化している場合に前記装置本体が振動していると判断する処理を行うことができる、
レーザレーダ装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記窓部材の外表面に物体を検出した場合において、前記物体を検出する直前に前記振動部材が振動したことを検出した場合には前記窓部材の外表面に汚れの原因となる物体が付着したと判断し、前記物体を検出する直前に前記振動部材が振動したことを検出していない場合には前記窓部材の外表面に汚れの原因となる物体が付着していないと判断する処理を行うことができる、
請求項1に記載のレーザレーダ装置。
【請求項3】
ユーザに対して前記装置本体に生じた異常に関する情報を報知する報知部を更に備え、
前記制御装置は、前記窓部材の外表面に汚れの原因となる物体が付着したと判断した場合には前記報知部を動作させ、前記窓部材の外表面に汚れの原因となる物体が付着していないと判断した場合には前記報知部を動作させない、
請求項2に記載のレーザレーダ装置。
【請求項4】
前記制御装置は、測定エリア内に存在する物体を背景物体として予め設定可能であり、前記振動部材の振動が所定期間以上継続されたことを検出し、かつ、前記背景物体までの測定距離が変化していることを検出した場合に、風の影響により前記装置本体が揺れていると判断する処理を行うことができる、
請求項1に記載のレーザレーダ装置。
【請求項5】
物体を検出した旨を示す警報を発報する警報部を更に備え、
前記制御装置は、前記装置本体が風の影響に揺れていると判断した場合に前記警報部の動作を低減させる、
請求項4に記載のレーザレーダ装置。
【請求項6】
前記装置本体に生じた異常に関する情報を報知する報知部を更に備え、
前記制御装置は、前記装置本体が風の影響により揺れていると判断した場合に前記報知部を動作させる、
請求項4に記載のレーザレーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の走査角度ごとに物体までの距離を測定するレーザレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の走査角度ごとに物体までの距離を測定するレーザレーダ装置が公知である。レーザレーダ装置は、外殻を構成するケースと、ケースの内部に設けられた光学機構と、を有する装置本体を備えている。光学機構は、所定の走査角度ごとにレーザ光を照射し、レーザ光の光路上に物体が存在する場合にはその物体からの反射光を受光する。そして、レーザレーダ装置は、受光した反射光の強度に基づいてレーザ光の光路上に物体が存在するか否かを判断し、レーザ光を照射してから反射光を受光するまでの時間に基づいてその物体までの距離を測定する。
【0003】
このようなレーザレーダ装置の装置本体は、屋外に設置されることも多く、その場合には様々な外乱の影響を受けることになる。例えば風の強い日には、その風自体によって装置本体が揺らされたり、風で飛ばされたゴミなどが装置本体に付着したりする可能性がある。そして、装置本体が揺らされたり、ゴミなどの物体が装置本体に付着してレーザ光の光路上に存在したりすると、物体の誤検出や距離測定精度の低下などを招き、その結果、レーザレーダ装置の信頼性を損ねるおそれがある。したがって、このようなレーザレーダ装置の性能低下を招く要因となる現象を検出することは重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−216238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本願発明者は、上述したレーザレーダ装置の性能低下を招く要因となる現象を検出するために、装置本体に生じる振動に着目した。すなわち、装置本体が風によって揺らされる場合に限らず、例えばゴミなどが装置本体に付着する場合にはそのゴミが装置本体に衝突することで装置本体に振動が生じる。そのため、本願発明者は、装置本体に生じる振動を検出することで、上述したようなレーザレーダ装置の性能低下を招く要因となる現象を検出できることを見出した。
しかしながら、振動を検出するため専用のセンサなどを設けることはコストの増大を招くことになる。
【0006】
そこで、振動を検出するため専用のセンサなどを設けることなく簡易な構成で、性能低下を招く直接的又は間接的な要因となる振動を検出することができるレーザレーダ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(請求項1)
請求項1に記載のレーザレーダ装置は、外殻を構成するケースと、前記ケースの内部に設けられ、所定の走査角度ごとにレーザ光を照射して物体からの反射光を受光することができる光学機構と、前記レーザ光を透過可能であり、前記ケースに取り付けられて前記ケースの内部と外部とを仕切る窓部材と、前記光学機構に対して相対的に振動可能な振動部材と、を有する装置本体と、前記光学機構で受光した前記反射光の強度と前記レーザ光を照射してから前記反射光を受光するまでの時間とに基づいて前記物体の有無及び前記物体までの距離を測定する制御装置と、を備える。前記制御装置は、前記振動部材までの測定距離が変化している場合に前記装置本体が振動していると判断する処理を行うことができる。
【0008】
この場合、振動部材は、装置本体の構成要素であるため、振動部材までの距離は設計値として既知の値である。そのため、制御装置は、既知の値である振動部材までの距離値つまり設計値と、光学機構によって計測された現在の振動部材までの測定値とを比較する。そして、制御装置は、両者の値に差が無ければ、振動部材が振動していないと判断し、両者の値に差が生じていれば振動部材が振動していると判断することができる。
【0009】
このように、本構成によれば、レーザレーダ装置が本来的に備える光学機構により振動部材の位置の変化を検出することで、装置本体に生じた振動を検出することができる。したがって、振動を検出するための専用のセンサなどを設けることなく簡易な構成で、装置本体に生じた振動、すなわち性能低下を招く直接的又は間接的な要因となる振動を検出することができる。
【0010】
(請求項2)
レーザレーダ装置は、屋外に設置されることも多く、その場合には、例えばゴミや泥水など汚れの原因となる物体が窓部材の外表面に付着する可能性がある。そして、このような物体が窓部材の外表面に付着すると、その物体によって、窓部材を通過するレーザ光や反射光が遮られたり、これらレーザ光や反射光の強度が低下したりする。その結果、レーザレーダ装置によって本来検出すべき物体の検出精度や距離の測定精度が低下する。すなわち、窓部材の外表面に汚れの原因となる物体が付着すると、レーザレーダ装置の能力が低下し、その結果、本来検出すべき不審者等の物体を見逃す事態すなわち失報を引き起こし、信頼性を著しく損なうおそれがある。
【0011】
そのため、窓部材の外表面に汚れの原因となる物体が付着した場合には、その物体が窓部材の外表面に付着したことをいち早く検出し、窓部材から取り除く必要がある。しかし、この場合、汚れの原因となる物体を検出するためだけに専用のセンサを設けることはコストの増大を招くことになる。そこで、窓部材の外表面の位置で物体を検出した場合に、窓部材の外表面に汚れの原因となる物体が付着していると判断する方法が考えられる。しかしながら、上述した方法では、検出した物体が、本当に汚れの原因となる物体であるか、又は単に窓部材の外表面付近に存在する人や荷物等の物体であるか否かを区別して判断することができず、誤検出を発生させてしまうおそれがある。
【0012】
そこで、請求項2に記載のレーザレーダ装置において、前記制御装置は、前記窓部材の外表面に物体を検出した場合において、前記物体を検出する直前に前記振動部材が振動したことを検出した場合には前記窓部材の外表面に汚れの原因となる物体が付着したと判断し、前記物体を検出する直前に前記振動部材が振動したことを検出していない場合には前記窓部材の外表面に汚れの原因となる物体が付着していないと判断する処理を行うことができる。
【0013】
すなわち、汚れの原因となる物体が窓部材の外表面に付着する状況とは、例えばゴミや泥水などの物体が勢いよく窓部材に衝突した場合が考えられる。この場合、ゴミや泥水などの物体が窓部材に衝突する際の衝撃によって、装置本体に振動が生じる。したがって、窓部材の外表面に汚れの原因となる物体が付着した際には、その直前において装置本体に振動が生じている蓋然性が高い。したがって、本実施形態において、制御装置は、窓部材の外表面に物体を検出した場合において、その物体が検出される直前に振動部材が振動したことを検出していた場合には、窓部材の外表面に汚れの原因となる物体が付着したと判断する。
【0014】
一方、窓部材の外表面付近に何らかの物体が検出された場合であっても、その物体が検出される直前に装置本体に振動が生じていない場合には、その検出された物体は、ゴミや泥水など汚れの原因となる物体以外の物体、例えば装置本体付近に存在する人や荷物などである蓋然性が高い。したがって、本構成において、制御装置は、窓部材の外表面に物体を検出た場合であっても、その物体が検出される直前に振動部材が振動したことを検出していない場合には、窓部材の外表面に汚れの原因となる物体が付着していないと判断する。
【0015】
このように、本構成によれば、専用のセンサを設けることなく簡易な構成であっても、窓部材の外表面の位置で検出された物体が、汚れの原因となる物体であるか、又は単に窓部材の外表面付近に存在する人や荷物等の物体であるかを精度よく区別して判断することができる。
【0016】
(請求項3)
請求項3に記載のレーザレーダ装置は、前記装置本体に生じた異常に関する情報を報知する報知部を更に備えている。前記制御装置は、前記窓部材の外表面に汚れの原因となる物体が付着したと判断した場合には前記報知部を動作させる。これによれば、ユーザは、汚れの原因となる物体が窓部材の外表面に付着したことをいち早く知ることができる。その結果、窓部材の外表面に、例えばゴミや泥水などが付着してレーザレーダ装置の性能が低下した場合であっても、ユーザはいち早くその物体を除去し、レーザレーダ装置の性能の回復を図ることができる。
【0017】
一方、前記制御装置は、前記窓部材の外表面に汚れの原因となる物体が付着していないと判断した場合には前記報知部を動作させない。これによれば、窓部材の外表面付近に何らかの物体が存在している場合において、装置本体に異常が発生していないにもかかわらず、異常が発生したとして報知される事態を回避することができる。
【0018】
(請求項4)
制御装置は、レーザレーダ装置の測定エリア内に存在する木や建物などの物体を、予め背景物体として設定することで検出対象から除外している。この場合、検出対象とは、検出された場合にユーザに対して警報などを行う対象となる物体を意味する。ここで、風によって装置本体や背景物体が揺らされると、背景物体までの測定距離に変化が生じる。すると、制御装置は、検出対象から除外した背景物体を、検出対象として検出してしまい、その結果、誤報を多発させるおそれがある。したがって、装置本体に生じた振動が、風の影響によるものであるか否かを判断することは重要である。
【0019】
そこで、請求項4に記載のレーザレーダ装置において、制御装置は、前記振動部材の振動が所定期間以上継続されたことを検出し、かつ、前記背景物体までの測定距離が変化していることを検出した場合に、風の影響により前記装置本体が揺れていると判断する処理を行うことができる。これによれば、制御装置は、装置本体に生じた振動が風の影響によるものであるのか否かを区別することができる。
【0020】
(請求項5)
風によって装置本体が継続して揺れると、上述したように、背景物体までの測定距離に変化が生じ、その結果、誤報が多発するおそれがある。そこで、請求項5に記載のレーザレーダ装置は、物体を検出した旨を示す警報を発報する警報部を更に備える。そして、前記制御装置は、前記装置本体が風の影響に揺れていると判断した場合に前記警報部の動作を低減させる。これによれば、風の影響を受けて装置本体が振動することによって生じる警報部の誤報を低減させることができる。したがって、警報の信頼性が向上するとともに、ユーザがいちいちその誤報に対応する必要がなくなり、その結果、煩わしい作業が低減されて利便性が向上される。
【0021】
(請求項6)
また、装置本体が風の影響を受けて揺れていることをユーザにいち早く知らせることができれば、ユーザは、例えば装置本体の固定方法を見直して風の影響を受け難くするなど適切な処置を行うことができ、その結果、風による振動の影響をいち早く排除することができる。そこで、請求項6に記載のレーザレーダ装置は、前記装置本体に生じた異常に関する情報を報知する報知部を更に備えている。そして、前記制御装置は、前記装置本体が風の影響により揺れていると判断した場合に前記報知部を動作させる。これによれば、ユーザは、装置本体が風の影響を受けて揺れていることをいち早く知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一実施形態によるレーザレーダ装置の機械的構成の概略を示す図
図2】一実施形態によるレーザレーダ装置の外観を示す斜視図
図3】一実施形態について、図1のX3−X3線に沿った断面を概略的に示す図
図4】一実施形態によるレーザレーダ装置の電気的構成を示すブロック図
図5】一実施形態について、振動部材の静止時及び振動時における反射光の検出状態を示す図
図6】一実施形態によるレーザレーダ装置の制御装置において実行される制御内容を示すフローチャート
図7】一実施形態について、振動検出処理の制御内容を示すフローチャート
図8】一実施形態について、汚れ判定処理の制御内容を示すフローチャート
図9】一実施形態について、振動態様判定処理の制御内容を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1及び図2に示すレーザレーダ装置10は、装置本体20を備えている。装置本体20は、取付具90を介して、建築物の壁面等の設置対象面100に取り付けられている。装置本体20は、図1に示すように、ベース21、ケース22、窓部材23、及び光学機構30を有している。なお、以下の説明では、ベース21に対して窓部材23側を、装置本体20の前側とし、ベース21に対して設置対象面100側を、装置本体20の後側とする。また、地面に対して水平方向でかつ装置本体20の前後方向に対して直角方向を、装置本体20の左右方向とする。
【0024】
ベース21は、光学機構30が設けられた状態で、ケース22に取り付けられている。ケース22は、装置本体20の外殻を構成するものであり、内部に光学機構30を収容している。また、ケース22は、照射口221を有している。照射口221は、装置本体20の前面側、この場合、設置対象面100と反対側に設けられており、ケース22の内部と外部とを連通させている。窓部材23は、レーザ光を透過可能な部材、例えば透明な樹脂やガラス等で構成されており、照射口221に嵌め込まれるようにして設けられている。これにより、窓部材23は、ケース22の内部と外部とを仕切っている。
【0025】
光学機構30は、ケース22の内部に設けられており、所定の走査角度Rごとにレーザ光を照射して物体Mから反射されたレーザ光(以下、反射光と称する)を受光する。光学機構30は、第1固定ミラー31、第2固定ミラー32、回転ミラー33、照射部34、及び受光部35を有している。第1固定ミラー31及び回転ミラー33は、照射部34から照射されたレーザ光をケース22の外部へ導くための光路A1を形成する。回転ミラー33及び第2固定ミラー32は、物体Mで反射された反射光を受光部35へ導くための光路A2を形成する。
【0026】
第1固定ミラー31及び第2固定ミラー32は、回転不可に固定されている。第2固定ミラー32は、中心部に貫通穴321を有している。回転ミラー33は、第1固定ミラー31から反射されたレーザ光に対する傾斜角度を一定に維持した状態で回転可能に構成されている。この場合、回転ミラー33は、例えばステッピングモータ等のモータ331を有している。モータ331は、回転ミラー33を所定の走査方向へ向かって所定の走査角度R単位で回転させる。
【0027】
本実施形態の場合、光学機構30から照射されるレーザ光の走査方向は水平方向に設定されている。また、走査角度Rは、例えば1°に設定されている。この場合、図2等に示す一点鎖線Hは、各走査角度Rにおいてレーザ光が通過する窓部材23上の点を仮想的に結んだ線であり、レーザ光の走査方向を示している。すなわち、本実施形態において、光学機構30は、光路A1を水平に維持した状態で、図2等に示す一点鎖線H上をなぞるように回転ミラー33を回転させながら、走査角度R=1°ごとにレーザ光を照射する。
【0028】
この場合、光学機構30は、360°いずれの方向に対してもレーザ光を照射可能である。すなわち、走査角度Rは、0°〜360°の範囲に設定されている。また、回転ミラー33の1回転を、光学機構30による走査の1周期とする。また、この場合、レーザレーダ装置10の測定エリアは、光学機構30から照射されたレーザ光が届く範囲である。
【0029】
照射部34は、レーザ光を照射することができる。受光部35は、物体Mで反射された反射光を受光し、その反射光の強度を検出することができる。この場合、照射部34から照射されたレーザ光は、まず、第1固定ミラー31で反射され、貫通穴321を通り、回転ミラー33で反射された後に、窓部材23を通ってケース22の外部へ照射される。外部へ照射されたレーザ光の光路A1上に何らかの物体Mが存在する場合、外部へ照射されたレーザ光は、物体Mによって反射される。物体Mで反射された反射光は、窓部材23を通ってケース22の内部へ侵入し、回転ミラー33及び第2固定ミラー32で反射される。そして、第2固定ミラー32で反射された反射光は、受光部35によって受光される。
【0030】
装置本体20は、図1に示すように、振動機構50を備えている。振動機構50は、ケース22内の後部側、すなわち照射口221とは反対側に設けられている。振動機構50は、振動部材51と支持部材52とを有している。振動部材51は、回転ミラー33が後方を向いた状態におけるレーザ光の光路A1上に設けられている。振動部材51は、例えば不透明の樹脂や金属など透光性を有さない材料、つまりレーザ光を透過しない材料によって構成されている。
【0031】
振動部材51は、例えば上下方向に長細い柱状に形成されている。すなわち、振動部材51は、例えば四角柱や半円柱状、又は円柱状の一部を切り欠いた形状、若しくは多角柱状であって、光路A1と直角に交わる平坦面511を有している。この場合、平坦面511は、鏡面に形成されており、平坦面511に照射されたレーザ光が反射し易くなっている。すなわち、平坦面511では、レーザ光の乱反射が生じ難い。
【0032】
支持部材52は、振動部材51を、ベース21に対して相対的に振動可能に支持している。支持部材52は、例えばコイルバネ若しくは板バネなど各種バネ材やゴムなどの弾性部材、又は糸などである。なお、この場合、支持部材52には、樹脂や金属、綿や絹など、様々な材質のものを用いることができる。振動部材51の上下端部は、支持部材52に接続されている。そして、支持部材52は、ベース21に一体に形成された取付部211に取り付けられている。これにより、振動部材51は、支持部材52を介して、ベース21に相対的に振動可能に取り付けられている。
【0033】
この構成において、装置本体20つまりケース22に対して何らかの振動が加えられると、その振動は、ケース22及びベース21を介して、振動機構50に伝わる。すなわち、ベース21に生じた振動は、支持部材52を介して振動部材51に伝わる。この場合、振動部材51は、バネや糸などの支持部材52によってベース21に接続されているため、振動部材51には、ベース21に生じた振動が遅延して伝わる。これにより、振動部材51は、ケース22及びベース21に生じる振動に対して遅れて振動する。
【0034】
すなわち、振動部材51は、ケース22及びベース21に生じる振動の周期とは異なる周期で振動する。したがって、装置本体20に振動が加えられた場合、振動部材51は、ケース22及びベース21に対して相対的に振動する。換言すれば、装置本体20に振動が加えられた場合、振動部材51は、ベース21に設けられている光学機構30に対して相対的に振動する。そして、装置本体20に対する振動が収まった後も、ある程度の間例えば数秒程度の間、振動部材51は振動し続ける。なお、振動部材51及び支持部材52は、ケース22及びベース21に生じる振動に対して遅延しないように構成しても良い。
【0035】
ここで、光学機構30によって照射されるレーザ光は、図3に示すように、始点Oを中心にして回転可能である。始点Oは、距離測定の基準となる地点であり、ケース22内における光路A1又はA2上の特定の地点、例えば回転ミラー33の中心部つまり回転軸上の点に設定されている。図3において、走査角度R(n)は、ある基準点Pに対してn番目における光路A1の通過位置、つまりn番目の探索角度を示すものであり、「n」には任意の正の整数が入る。すなわち、走査角度R(n)は、仮想線H上でかつ基準点Pに対して(R×n)°の角度を有する地点である。そして、静止状態の振動部材51に対してレーザ光が照射される際の走査角度Rを、走査角度R(x)とする。この場合、xには、予め設定された特定の正の整数が入る。すなわち、静止状態の振動部材51は、走査角度R(n)=R(x)のときに、光学機構30から照射されたレーザ光の光路A1を遮る。なお、xに入る整数の数は、振動部材51の幅方向の寸法によって定められるものであり、1つでもよいし複数でもよい。
【0036】
次に、図4も参照して、レーザレーダ装置10の電気的構成について説明する。図4に示すように、レーザレーダ装置10は、駆動回路24及び制御装置40を備えている。駆動回路24は、装置本体20に設けられている。駆動回路24は、図示しないCPUやROM及びRAMなどを有するマイクロコンピュータを有して構成されている。光学機構30のモータ331、照射部34、及び受光部35は、駆動回路24に接続されている。駆動回路24は、CPUにおいてROMやRAMに記憶されているコンピュータプログラムを実行することにより、光学機構30の駆動を制御する。
【0037】
制御装置40は、駆動回路24に対して制御信号を送受信したり、装置本体20による測定結果に基づいて、物体Mの有無の判断や物体Mまでの距離の算出等を行ったりする。本実施形態において、制御装置40は、装置本体20とは別体であり、例えばいわゆるパソコンで構成されている。制御装置40は、図示は省略するが、装置本体20による監視状況やカメラで撮像した画像等を表示する表示部、マウスやキーボード等のユーザの操作を入力する入力部も備えている。なお、制御装置40は、装置本体20内に組み込まれたコンピュータなどであってもよい。
【0038】
制御装置40は、制御部41、記憶部42、報知部43、及び警報部48を有している。制御部41は、例えばCPUや、ROM、RAM等を有するマイクロコンピュータを主体に構成されている。記憶部42は、例えば書き換え可能なフラッシュメモリ等で構成されている。記憶部42は、装置本体20の制御や距離の算出等を行うための制御プログラムなどを記憶している。
【0039】
報知部43は、例えばスピーカやディスプレイ等であり、ユーザに対して、装置本体20に生じた異常に関する情報を報知するためのものである。なお、本実施形態において、報知部43は、ユーザに対して、例えば汚れの付着による性能低下や装置本体20に生じた異常振動など、装置本体20の異常を知らせる。警報部48は、レーザレーダ装置10の正常な動作において不審者などの物体を検出した場合に、物体を検出した旨を示す警報をユーザに発報するためのものである。
【0040】
また、制御装置40は、測定処理部44、振動検出処理部45、汚れ判定処理部46、及び振動態様判定処理部47などを有している。制御装置40は、制御部41において記憶部42に記憶されている制御プログラムを実行することにより、測定処理部44、振動検出処理部45、汚れ判定処理部46、及び振動態様判定処理部47などを、ソフトウェアによって仮想的に実現する。なお、これら各処理部44〜47は、例えば制御部41と一体の集積回路としてハードウェア的に実現してもよい。
【0041】
測定処理部44は、測定処理を実行することができる。測定処理は、光学機構30の受光部35で受光した反射光の強度に基づいて物体Mの有無を検出する処理を含んでいる。また、測定処理は、物体Mが検出された場合に、レーザ光を照射してから反射光を受光するまでの時間に基づいて、その物体Mまでの距離を測定する処理を含んでいる。
【0042】
振動検出処理部45は、振動検出処理を実行することができる。振動検出処理は、振動部材51までの測定距離が変化した場合に、装置本体20が振動したと判断する処理である。以下、図5も参照して、振動検出処理の原理について説明する。ここで、始点Oから振動部材51の平坦面511までの距離、すなわち、走査角度R(x)における振動部材51の平坦面511までの距離を、L(x)とする。また、静止状態における始点Oから振動部材51までの距離L(x)を、静止距離L0とする。この場合、静止距離L0は、既知の設計値である。
【0043】
制御装置40は、1周期ごとに、始点Oから振動部材51の平坦面511までの距離L(x)を測定し監視している。装置本体20が振動していない場合、振動部材51も振動しないため、図5の(a)に示すように、距離L(x)は静止距離L0から変化しない。一方、何らかの要因によって装置本体20が振動すると、その振動は、ベース21及び支持部材52を介して振動部材51に伝わる。その結果、図5の(b)〜(d)に示すように、振動部材51は、前後左右に振動する。
【0044】
この場合、図5の(b)に示すように、振動部材51が振動して前方へ移動すると、始点Oから平坦面511までの距離L(x)は、静止距離L0よりも短い距離L1となる。また、図5の(c)に示すように、振動部材51が振動して後方へ移動すると、始点Oから平坦面511までの距離L(x)は、静止距離L0よりも長い距離L2となる。そして、図5の(d)に示すように、振動部材51が振動して左右方向へ移動すると、走査角度R(x)におけるレーザ光は、振動部材51に遮られることなく、振動部材51の背後のベース21まで到達する。この場合、制御装置40は、走査角度R(x)において、振動部材51の背後のベース21を検出する。
【0045】
上述した原理を応用して、制御装置40は、始点Oから振動部材51の平坦面511までの距離L(x)が、静止距離L0と異なる値となっていれば、振動部材51が振動していると判断することができる。そして、振動部材51が振動したことは、装置本体20に何らかの外力が加えられて装置本体20が振動したことを意味する。したがって、制御装置40は、1周期ごとに振動部材51までの距離を測定し監視することにより、振動部材51が静止状態であるか振動状態であるかを判定することができる。
【0046】
汚れ判定処理部46は、汚れ判定処理を行うことができる。汚れ判定処理は、窓部材23の外表面に何らかの物体を検出し、かつ、その直前に振動部材51が振動したことを検出した場合に、窓部材23の外表面に汚れの原因となる物体が付着したと判断する処理である。なお、本実施形態において、「付着」とは、粘着的に貼りついている状態以外に、単に接触している状態も含むものとする。また、本実施形態において、「物体が検出される直前」とは、物体が検出された周期に対して、1〜数周期前程度前の期間を意味する。
【0047】
すなわち、泥水など汚れの原因となる物体が窓部材23の外表面に付着する状況とは、例えばこの泥水などの物体が勢いよく窓部材23に衝突した場合であると考えられる。この場合、泥水などの物体が窓部材23に衝突する際の衝撃によって、装置本体20に振動が生じる。したがって、窓部材23の外表面に汚れの原因となる物体が付着した際には、その直前において装置本体20に振動が生じている蓋然性が高い。したがって、本実施形態において、汚れ判定処理では、振動部材51が振動した直後に窓部材23の外表面に物体を検出した場合に、窓部材23の外表面に汚れの原因となる物体が付着したと判断する。この場合、「物体が検出された直後」とは、「物体が検出される直前」と反対の意味であり、物体が検出された周期に対して、1〜数周期前程度後の期間を意味する。
【0048】
振動態様判定処理部47は、振動態様判定処理を行うことができる。振動態様判定処理は、振動検出処理によって検出された振動が、風の影響によるものなのか否かを判定する処理である。制御装置40は、レーザレーダ装置10の測定エリア内に存在する木や建物などの物体を、予め背景物体として設定することで検出対象から除外する。なお、検出対象とは、検出された場合にユーザに対して警報などを行う対象となる物体を意味する。
【0049】
ここで、風によって装置本体20に振動が生じると、その振動に伴って光学機構30も振動し、その結果、背景物体までの測定距離に変化つまりズレが生じる。そのため、振動態様判定処理において、制御装置40は、振動部材51の振動が所定期間以上継続されたことを検出し、かつ、背景物体までの測定距離が変化していることを検出した場合に、風の影響により装置本体20が揺れていると判断する。
【0050】
次に、制御装置40の制御部41に行われる制御内容について図6図9も参照して説明する。なお、以下の説明では、測定処理部44、振動検出処理部45、汚れ判定処理部46、及び振動態様判定処理部47において行われる処理は、いずれも制御装置40によって行われるものとして説明する。
【0051】
制御装置40は、図6に示す処理を開始すると(スタート)、まず、ステップS11において、測定処理を実行する。測定処理は、各走査角度Rにおいて光路A1上に物体が存在するか否かを判断し、物体が存在する場合にはその物体までの距離を測定する処理である。すなわち、制御装置40は、ステップS11において、図3に示すR(1)、R(2)・・・の順に、各走査角度R(n)について反射光の強度を検出する。そして、反射光の強度に基づいて、物体が存在しているか否かを判断する。
【0052】
走査角度R(n)における反射光の強度が所定値よりも小さい場合、制御装置40は、走査角度R(n)における光路A1上には物体が存在していないと判断する。これに対し、走査角度R(n)における反射光の強度が所定値以上となった場合、制御装置40は、走査角度R(n)における光路A1上に物体が存在していると判断する。そして、制御装置40は、走査角度R(n)における光路A1上に物体が存在していると判断すると、レーザ光を照射してから反射光を受光するまでの時間に基づいて、検出した物体までの距離を算出する。この測定処理において、制御装置40は、走査角度R(x)における振動部材51の平坦面511までの距離L(x)も測定する。
【0053】
次に、制御装置40は、ステップS20において振動検出処理を実行する。振動検出処理を実行すると、制御装置40は、まず、図7のステップS21に示すように、図6のステップS10において測定された振動部材51の平坦面511までの距離L(x)が、静止距離L0であるか否かを比較する。始点Oから平坦面511までの距離L(x)が静止距離L0である場合(ステップS21でYES)、制御装置40は、ステップS22へ移行し、「振動無し」と判断する。一方、始点Oから平坦面511までの距離L(x)が静止距離L0とは異なる値である場合(ステップS21でNO)、制御装置40は、ステップS23へ移行し、「振動有り」と判断する。そして、制御装置40は、ステップS22又はステップS23において、振動の有無を判断した後、振動検出処理を終了して(リターン)、図6のステップS12へ移行する。
【0054】
ステップS12において、制御装置40は、ステップS11の測定処理で何らかの物体が検出されたか否かを判断する。ステップS11の測定処理において物体の検出がなかった場合(ステップS12でNO)、制御装置40は、ステップS15へ移行する。一方、ステップS11の測定処理において物体の検出があった場合(ステップS12でYES)、制御装置40は、ステップS13へ移行する。そして、制御装置40は、検出した物体の距離に基づいて、その検出した物体が窓部材23の外表面に付着しているか否かを判断する。検出した物体が窓部材23の外表面に付着していると判断された場合(ステップS13でYES)、制御装置40は、ステップS30へ移行し、汚れ判定処理を実行する。
【0055】
制御装置40は、ステップS30において汚れ判定処理を実行すると、図8のステップS31において、物体を検出する直前に、装置本体20に対する振動つまり振動部材51の振動が検出されたか否かを判断する。物体を検出する直前に装置本体20に対する振動が検出されていた場合(ステップS31でYES)、制御装置40は、ステップS32へ移行する。そして、制御装置40は、検出された物体つまり窓部材23の外表面に付着している物体は汚れの原因となる物体であると判断する。
【0056】
窓部材23の外表面に付着した汚れの原因となる物体は、例えばゴミや泥水などであり、光路A1を遮ることによって光学機構30による距離測定の精度を低下させるおそれがある。したがって、制御装置40は、ステップS33において報知部43を動作させる。その際、報知部43は、ユーザに対して、窓部材23の外表面に付着した物体の除去等の処置を促す旨を報知する。そして、制御装置40は、汚れ判定処理を終了して(リターン)、図6のステップS11へ移行する。
【0057】
一方、物体を検出する直前に装置本体20に対する振動が検出されていない場合(図8のステップS31でNO)、制御装置40は、ステップS34へ移行する。そして、制御装置40は、検出された物体つまり窓部材23の外表面に付着している物体は汚れの原因となる物体以外の物体であると判断する。その後、制御装置40は、ステップS35へ移行し、警報部48を動作させて警報を発報する。これにより、ユーザに対して、汚れの原因となる物体以外の物体の検出があったことを知らせる。そして、制御装置40は、汚れ判定処理を終了して(リターン)、図6のステップS11へ移行する。
【0058】
また、図6のステップS13において検出物体が窓部材23の外表面に付着していないと判断された場合(NO)、制御装置40は、測定エリア内に何らかの物体を検出したと判断する。そして、制御装置40は、ステップS14を実行し、警報部48を動作させて何らかの物体を検出した旨を示す警報を発報する。その後、制御装置40は、ステップS15に移行する。
【0059】
ステップS12において物体の検出が無かった場合(NO)、又はステップS13において検出物体が窓部材23の外表面に付着していないと判断された場合(NO)、制御装置40は、ステップS15を実行し、ステップS20の振動検出処理において振動が検出されたか否かを判断する。振動が検出されていなかった場合(ステップS15でNO)、制御装置40は、ステップS11へ移行する。一方、振動が検出されていた場合(ステップS15でYES)、制御装置40は、ステップS40へ移行し、振動態様判定処理を実行する。
【0060】
制御装置40は、ステップS40の振動態様判定処理を実行すると、まず、図9のステップS41において、検出された振動が所定期間継続しているか否かを判断する。この場合、所定期間は、例えば1秒〜数秒程度の期間であり、光学機構30による走査の1周期すなわち回転ミラー33の1回転に要する期間よりも長い期間である。
【0061】
図6のステップS20の振動検出処理において検出された振動が、所定期間継続しておらず短期間のうちに収まった場合(図9のステップS41でNO)、装置本体20には突発的な振動つまり一時的な振動が加えられたものの、窓部材23の外表面には何らの物体も付着していないと考えられる(図6のステップS13でNO)。したがって、この場合、制御装置40は、レーザレーダ装置10の性能に与える影響は無いと判断し、振動態様判定処理を終了する(リターン)。
【0062】
一方、図6のステップS20の振動検出処理において検出された振動が所定期間継続している場合(ステップS41でYES)、制御装置40は、装置本体20に長期的つまり継続的な振動が加えられていると判断し、ステップS42へ移行する。そして、制御装置40は、ステップS42において、背景物体までの測定距離に変化が生じているか、すなわち背景物体までの実際の測定距離と初期値とにズレが生じているか否かを判断する。この場合、制御装置40は、背景物体までの測定距離の変化が多発しているか否かを判断する。背景物体までの測定距離の変化が多発しているか否かの判断は、例えば次のようにして行うことができる。すなわち、制御装置40は、背景物体までの実際の測定距離と、背景物体までの距離の初期値とを比較し、所定時間内に所定回数以上のズレが発生している場合には、ズレが多発していると判断する。この場合、初期値とは、装置本体20が静止状態において設定された背景物体までの距離値である。
【0063】
制御装置40は、背景物体までの測定距離の変化が多発していないと判断した場合(ステップS42でNO)、振動態様判定処理を終了し、図6のステップS11へ移行する(リターン)。一方、制御装置40は、背景物体の実際の測定距離と初期値とにズレが多発していると判断した場合(ステップS42でYES)、ステップS43へ移行し、風の影響によって装置本体20が揺らされていると判断する。そして、制御装置40は、ステップS44へ移行し、報知部43を動作させて、風の影響によって装置本体20が揺れている旨、すなわちレーザレーダ装置10の検出に風による振動の影響が出ていることをユーザに報知する。
【0064】
その後、制御装置40は、ステップS45へ移行し、誤検出改善処理を実行する。誤検出改善処理は、例えば風の影響を受けていない状態に比べて、物体の動きの検出精度を敢えて低下させることで、風の影響による背景物体の動きを排除又は低減し、これにより警報部48の誤報を低減する処理である。そして、制御装置40は、振動態様判定処理を終了し(リターン)、図6のステップS11へ移行する。
【0065】
このように、レーザレーダ装置10は、レーザ光の光路A1上に設けられて光学機構30に対して相対的に振動可能な振動部材51を備えている。そして、制御装置40は、振動部材51までの測定距離L(x)が静止距離L0に対して変化している場合に装置本体20が振動していると判断する。したがって、本実施形態のレーザレーダ装置10によれば、レーザレーダ装置10が本来的に備えている光学機構30を活用することで、振動を検出するための専用のセンサなどを設けることなく簡易な構成で、装置本体20に生じた振動、すなわち性能低下を招く直接的又は間接的な要因となる振動を検出することができる。
【0066】
また、本実施形態の制御装置40は、窓部材23の外表面付近に物体が検出されたこと(図6のステップS13)と、物体が検出される直前に装置本体20に振動が加えられたこと(図8のステップS31)との両者を組み合わせて判断することで、窓部材23の外表面で検出された物体が、単に窓部材23の外表面付近に存在する人や荷物等の物体であるか、又は窓部材23の外表面に付着した汚れの原因となる物体であるかを判定する。
【0067】
すなわち、汚れの原因となる物体が窓部材23の外表面に付着する状況とは、例えばこの泥水などの物体が勢いよく窓部材23に衝突した場合であると考えられる。この場合、泥水などの物体が窓部材23に衝突する際の衝撃によって、装置本体20に振動が生じる。したがって、窓部材23の外表面に汚れの原因となる物体が付着した際には、その直前において装置本体20に振動が生じている蓋然性が高い。そこで、本実施形態において、制御装置40は、振動部材51が振動したことを検出した場合において、窓部材23の外表面に物体を検出した場合に、窓部材23の外表面に汚れの原因となる物体が付着したと判断する。
【0068】
一方、窓部材23の外表面付近に何らかの物体が検出された場合であっても、その物体が検出される直前に装置本体20に振動が生じていない場合には、その検出された物体は、泥水など汚れの原因となる物体以外の物体、例えば装置本体20付近に存在する人や荷物などある蓋然性が高い。そこで、本実施形態において、制御装置40は、振動部材51が振動したことを検出した場合であっても、窓部材23の外表面に物体を検出しない場合に前記窓部材の外表面に汚れの原因となる物体が付着していないと判断する。
【0069】
このように、本実施形態によれば、専用のセンサを設けることなく簡易な構成であっても、窓部材23の外表面の位置で検出された物体が、汚れの原因となる物体であるか、又は単に窓部材23の外表面付近に存在する人や荷物等の物体であるか否かを区別して判断することができる。
【0070】
レーザレーダ装置10は、ユーザに対して装置本体20に生じた異常に関する情報を報知する報知部43を備えている。制御装置40は、窓部材23の外表面に汚れの原因となる物体が付着したと判断した場合には報知部43を動作させる。これによれば、ユーザは、汚れの原因となる物体が窓部材23の外表面に付着したことをいち早く知ることができる。その結果、窓部材23の外表面に、例えばゴミや泥水などが付着してレーザレーダ装置10の性能が低下した場合であっても、ユーザはいち早くその物体を除去し、レーザレーダ装置10の性能の回復を図ることができる。
【0071】
一方、制御装置40は、窓部材23の外表面に汚れの原因となる物体が付着していないと判断した場合には、報知部43を動作させない。これによれば、窓部材23の外表面付近に何らかの物体が存在している場合において、装置本体20に異常が発生していないにもかかわらず、異常が発生したとして報知される事態を回避することができる。
【0072】
また、制御装置40は、レーザレーダ装置10の測定エリア内に存在する木や建物などの物体を、予め背景物体として設定することで検出対象から除外している。そして、制御装置40は、振動部材51の振動が所定期間以上継続されたことを検出し、かつ、背景物体までの測定距離が変化していることを検出した場合に、風の影響により装置本体20が揺れていると判断する。これによれば、制御装置40は、装置本体20に生じた振動が風の影響によるものであるのか否かを区別することができる。
【0073】
レーザレーダ装置10は、物体を検出した旨を示す警報を発報する警報部48を更に備える。そして、制御装置40は、装置本体20が風の影響に揺れていると判断した場合に警報部48の動作を低減させる。これによれば、風の影響を受けて装置本体20が振動することによって生じる警報部48の誤報を低減することができる。したがって、警報の信頼性が向上するとともに、ユーザがいちいちその誤報に対応する必要がなくなり、その結果、煩わしい作業が低減されて利便性が向上される。
【0074】
レーザレーダ装置10は、装置本体20に生じた異常に関する情報を報知する報知部43を更に備えている。そして、制御装置40は、装置本体20が風の影響により揺れていると判断した場合に報知部43を動作させる。これによれば、ユーザは、装置本体20が風の影響を受けて揺れていることをいち早く知ることができる。そして、風の影響によって装置本体20が揺れていることを知ったユーザは、例えば装置本体20の固定方法を見直して、風の影響を受け難くする処置を行うなどの適切な処置を行うことができる。その結果、風による振動の影響をいち早く排除することができる。
【0075】
(その他の実施形態)
本発明は、上記し且つ図面に記載した態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変形や拡張をすることができる。
上記実施形態で示した距離や数等は例示であり、それに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0076】
図面中、10はレーザレーダ装置、20は装置本体、22はケース、23は窓部材、30は光学機構、40は制御装置、43は報知部、48は警報部、51は振動部材を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9