特許第6565634号(P6565634)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6565634-ハイブリッド車両及びその制御方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6565634
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/08 20060101AFI20190819BHJP
   B60K 6/485 20071001ALI20190819BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20190819BHJP
   B60W 20/00 20160101ALI20190819BHJP
   F02D 21/08 20060101ALI20190819BHJP
   F01P 11/16 20060101ALI20190819BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20190819BHJP
【FI】
   B60W10/08 900
   B60K6/485ZHV
   B60W10/06 900
   B60W20/00 900
   F02D21/08 301Z
   F01P11/16 E
   F01P11/16 D
   B60L50/16
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-230481(P2015-230481)
(22)【出願日】2015年11月26日
(65)【公開番号】特開2017-94986(P2017-94986A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100163061
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】岩田 憲仁
【審査官】 増子 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−299470(JP,A)
【文献】 特開2014−100944(JP,A)
【文献】 特開2010−241190(JP,A)
【文献】 特開2015−182573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 − 6/547
B60W 10/00 − 20/50
F02D 13/00 − 28/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの動力を伝達する出力軸に接続されたモータージェネレーターを有するハイブリッドシステムと、前記エンジンの冷却水が循環するエンジン冷却システムと、前記冷却水の温度が予め設定された作動開始温度になってときに作動するEGRシステムと、制御装置と、を備えたハイブリッド車両において、
前記制御装置は、前記エンジンの始動時に前記冷却水の温度が前記作動開始温度未満である場合には、スターターモーターに該エンジンのクランキングを行わせると同時に、前記モータージェネレーターに発電を開始させる制御を行うように構成されていることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項2】
前記冷却水の温度が、前記エンジンの出口における該冷却水の温度である請求項1に記載のハイブリッド車両。
【請求項3】
エンジンの動力を伝達する出力軸に接続されたモータージェネレーターを有するハイブリッドシステムと、前記エンジンの冷却水が循環するエンジン冷却システムと、前記冷却水の温度が予め設定された作動開始温度になってときに作動するEGRシステムと、を備えたハイブリッド車両の制御方法であって、
前記エンジンの始動時に前記冷却水の温度が前記作動開始温度未満である場合には、スターターモーターに前記エンジンのクランキングを行わせると同時に、前記モータージェネレーターに発電を開始させることを特徴とするハイブリッド車両の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハイブリッド車両及びその制御方法に関し、更に詳しくは、エンジンの暖機時間を短縮できるとともに、排ガス中のNOx含有率を低下することができるハイブリッド車両及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃費向上及び環境対策などの観点から、車両の運転状態に応じて複合的に制御されるエンジン及びモータージェネレーターを有するハイブリッドシステムを備えたハイブリッド車両(以下「HEV」という。)が注目されている。このHEVにおいては、車両の加速時や発進時には、モータージェネレーターによる駆動力のアシストが行われる一方で、慣性走行時や制動時にはモータージェネレーターによる回生発電が行われる(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
このHEVのエンジンにディーゼルエンジンを用いる場合には、排ガスに含有される窒素酸化物(NOx)を低減することを目的として、排ガスの一部を吸気に還流させることで、燃焼温度を低く抑えてNOxの生成を抑制する排ガス再循環システム(EGRシステム)が装備される(例えば、特許文献2を参照)。
【0004】
このEGRシステムにおいては、気筒内での燃焼状態が悪化して排ガス中の不純物が増加することを防ぐため、排気側から吸気側へ延びるEGR通路の途中に水冷式のEGRクーラーを設置して、排ガスの分流(EGRガス)を冷却して体積を減少させてから、吸気へ供給することが行われている。その一方で、EGRガスがEGRクーラーにおいて過度に冷却されると、EGRガス中で結露した水分やタール状の未燃燃料が吸気へ流入して、気筒内での燃焼不良やエンジンの耐久性低下などを招くおそれがある。それ故、EGRシステムは、EGRクーラーの冷却に用いられる冷却水の温度が作動開始温度未満であるときは、作動しないようになっている。
【0005】
そのため、ディーゼルエンジンの始動時において、エンジンの暖機時間が長くなると、EGRシステムの非作動時間も長くなるため、多量のNOxが環境中へ放出されるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−238105号公報
【特許文献2】特開2001−41110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、エンジンの暖機時間を短縮できるとともに、排ガス中のNOx含有率を減少することができるハイブリッド車両及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成する本発明のハイブリッド車両は、エンジンの動力を伝達する出力軸に接続されたモータージェネレーターを有するハイブリッドシステムと、前記エンジンの冷却水が循環するエンジン冷却システムと、前記冷却水の温度が予め設定された作動開始
温度になってときに作動するEGRシステムと、制御装置と、を備えたハイブリッド車両において、前記制御装置は、前記エンジンの始動時に前記冷却水の温度が前記作動開始温度未満である場合には、スターターモーターに該エンジンのクランキングを行わせると同時に、前記モータージェネレーターに発電を開始させる制御を行うように構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
また、上記の目的を達成する本発明のハイブリッド車両の制御方法は、エンジンの動力を伝達する出力軸に接続されたモータージェネレーターを有するハイブリッドシステムと、前記エンジンの冷却水が循環するエンジン冷却システムと、前記冷却水の温度が予め設定された作動開始温度になってときに作動するEGRシステムと、を備えたハイブリッド車両の制御方法であって、前記エンジンの始動時に前記冷却水の温度が前記作動開始温度未満である場合には、スターターモーターに前記エンジンのクランキングを行わせると同時に、前記モータージェネレーターに発電を開始させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のハイブリッド車両及びその制御方法によれば、モータージェネレーターからエンジンに発電による負荷が加わるので、冷却水の温度上昇が促進されるため、エンジンの暖機時間を短縮できるとともに、EGRシステムの非作動時間の短縮により排ガス中のNOxの含有率を減少することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態からなるハイブリッド車両の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態からなるハイブリッド車両を示す。
【0013】
このハイブリッド車両(以下「HEV」という。)は、普通乗用車のみならず、バスやトラックなどを含む車両であり、車両の運転状態に応じて複合的に制御されるディーゼルエンジン10及びモータージェネレーター31を有するハイブリッドシステム30を備えている。
【0014】
ディーゼルエンジン10においては、エンジン本体11に形成された複数(この例では4個)の気筒12内における燃料の燃焼により発生した熱エネルギーにより、クランクシャフト13が回転駆動される。このクランクシャフト13の回転動力は、クランクシャフト13の一端部に接続するクラッチ14(例えば、湿式多板クラッチなど)を通じてトランスミッション20に伝達される。
【0015】
トランスミッション20には、HEVの運転状態と予め設定されたマップデータとに基づいて決定された目標変速段へ、変速用アクチュエーター21を用いて自動的に変速するAMT又はATが用いられている。なお、トランスミッション20は、AMTのような自動変速式に限るものではなく、ドライバーが手動で変速するマニュアル式であってもよい。
【0016】
トランスミッション20で変速された回転動力は、プロペラシャフト22を通じてデファレンシャル23に伝達され、一対の駆動輪24にそれぞれ駆動力として分配される。
【0017】
ハイブリッドシステム30は、モータージェネレーター31と、そのモータージェネレーター31に順に電気的に接続するインバーター35、高電圧バッテリー32、DC/DCコンバーター33及び低電圧バッテリー34とを有している。
【0018】
高電圧バッテリー32としては、リチウムイオンバッテリーやニッケル水素バッテリーなどが好ましく例示される。また、低電圧バッテリー34には鉛バッテリーが用いられる。
【0019】
DC/DCコンバーター33は、高電圧バッテリー32と低電圧バッテリー34との間における充放電の方向及び出力電圧を制御する機能を有している。また、低電圧バッテリー34は、各種の車両電装品36に電力を供給する。
【0020】
このハイブリッドシステム30における種々のパラメータ、例えば、電流値、電圧値やSOCなどは、BMS39により検出される。
【0021】
モータージェネレーター31は、回転軸37に取り付けられた第1プーリー15とエンジン本体11の出力軸であるクランクシャフト13の他端部に取り付けられた第2プーリー16との間に掛け回された無端状のベルト状部材17を介して、ディーゼルエンジン10との間で動力を伝達する。なお、2つのプーリー15、16及びベルト状部材17の代わりに、ギヤボックスなどを用いて動力を伝達することもできる。また、モータージェネレーター31に接続するエンジン本体11の出力軸は、クランクシャフト13に限るものではなく、例えばエンジン本体11とトランスミッション20との間の伝達軸やプロペラシャフト22であっても良い。
【0022】
このモータージェネレーター31は、エンジン本体11を始動するスターターモーター(図示せず)の代わりに、クランキングを行う機能も有している。
【0023】
EGRシステム50は、排気通路41から吸気通路55へ延びるEGR通路51と、そのEGR通路51に介設された水冷式のEGRクーラー52及びEGRバルブ53とを備えている。
【0024】
エンジン本体11の各気筒12から排出された排ガス45の一部は、EGRガス54となってEGR通路51に分流し、EGRクーラー52で冷却されてEGRバルブ53で流量を調整された後に、吸気通路55からエンジン本体11へ循環される。
【0025】
このEGRシステム50は、吸気60への水分及び未燃燃料の侵入を防止するために、冷却水71の温度が予め設定された作動開始温度T未満では作動しないようになっている。
【0026】
エンジン冷却システム70においては、エンジン本体11を除熱した冷却水71は、ラジエーター(図示せず)において車速風や冷却ファン(図示せず)の冷却風を利用した空冷により冷却された後に、ウォータポンプ72によりエンジン本体11へ強制循環される。
【0027】
なお、エンジン本体11へ強制循環された冷却水の一部は、EGRシステム50のEGRクーラー52の冷却に用いられる。
【0028】
このエンジン冷却システム70には、エンジン本体11の出口近傍における冷却水71の温度を検出する冷却水温度センサ94が設けられている。
【0029】
これらのディーゼルエンジン10、ハイブリッドシステム30及びEGRシステム50は、制御装置80により制御される。具体的には、HEVの発進時や加速時には、ハイブリッドシステム30は高電圧バッテリー32から電力を供給されたモータージェネレーター31により駆動力の少なくとも一部をアシストする一方で、慣性走行時や制動時においては、モータージェネレーター31による回生発電を行い、余剰の運動エネルギーを電力に変換して高電圧バッテリー32を充電する。また、EGRシステム50については、ディーゼルエンジン10の運転状態及び冷却水温度センサ94の検出値に応じて、EGRバルブ53の開度を調整する。
【0030】
このようなHEVにおいて、制御装置80は、エンジン本体11の始動時に冷却水温度センサ94の検出値が作動開始温度T未満である場合には、スターターモーターあるいはモータージェネレーター31を用いてのエンジン本体11のクランキングを行うと同時に、ハブリッドシステム30を通じてモータージェネレーター31に発電を開始させる制御を行う。
【0031】
このような制御を行うことにより、モータージェネレーター31からディーゼルエンジン10に発電による負荷が加わるので、冷却水71の温度上昇が促進される。そのため、エンジン本体11の暖機時間を短縮できるとともに、冷却水71が作動開始温度Tに到達する時間が短くなって、EGRシステムの非作動時間を短縮されるので、排ガス45中に含有されるNOxを減少することができるのである。
【0032】
また、ディーゼルエンジン10に加わる負荷により、排ガス45の温度が上昇するので、排ガス処理システムにおける触媒(図示せず)の温度上昇が促進されて、排ガス45の浄化率を向上することも可能である。
【0033】
上記の実施形態においては、EGRシステム50の作動開始温度Tの比較対象として、エンジン本体11の出口近傍における冷却水71の温度を用いているが、これに限るものではなく、例えば、EGRクーラー52に対して流入又は流出する冷却水71の温度を用いるようにしても良い。
【符号の説明】
【0034】
10 ディーゼルエンジン
30 ハイブリッドシステム
31 モータージェネレーター
45 排ガス
50 EGRシステム
51 EGR通路
52 EGRクーラー
53 EGRバルブ
70 エンジン冷却システム
71 冷却水
94 冷却水温度センサ
図1