(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の切断用空間は、前記搬送方向における前記第2の搬送装置の上流側及び下流側の両方に存在する請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の電極製造装置。
帯状集電体の少なくとも片面に活物質層の前駆体を有する長尺状の電極中間体を搬送しながら該電極中間体から電極を切り出す電極製造装置を用いた電極の製造方法であって、
前記電極中間体の面に沿い、かつ電極中間体の搬送方向に直交する方向を幅方向とすると、
前記電極製造装置は、前記幅方向に離れて配置され、前記電極中間体の少なくとも幅方向両端部を支持する第1の搬送装置と、
前記幅方向における前記第1の搬送装置の間に配置された第2の搬送装置と、
前記幅方向において、少なくとも一方の前記第1の搬送装置と前記第2の搬送装置との間に存在する第1の切断用空間と、
前記搬送方向における前記第2の搬送装置の上流側及び下流側の少なくとも一方に存在する第2の切断用空間と、
前記電極中間体から前記電極を切断するためのレーザ照射装置と、を備え、
前記第1の切断用空間及び前記第2の切断用空間に対応して配置された前記電極の縁部に沿って前記レーザ照射装置からレーザビームを照射させることを特徴とする電極の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1の位置決め搬送装置では、複数のスリットがベルトの長手方向に沿って電極のサイズおきに並んでおり、しかも、帯状電極材がベルト共に移動するため、帯状電極材において、長手方向に隣り合うスリット間の領域が一つの電極の製造領域となっている。このため、例えば、帯状電極材に不良箇所(例えば、活物質が脱落して膜厚の薄い部位)が存在すると、帯状電極材において不良箇所を挟むスリット間の領域全てが、電極の製造領域として使用できず廃棄領域となってしまう。
【0008】
本発明は、不良箇所が発生したときの電極中間体の廃棄量を減らすことができる電極製造装置及び電極の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するための電極製造装置は、帯状集電体の少なくとも片面に活物質層の前駆体を有する長尺状の電極中間体を搬送しながら該電極中間体から電極を切り出す電極製造装置であって、前記電極中間体の面に沿い、かつ前記電極中間体の搬送方向に直交する方向を幅方向とすると、前記幅方向に離れて配置され、前記電極中間体の少なくとも幅方向両端部を支持する第1の搬送装置と、前記幅方向における前記第1の搬送装置の間に配置された第2の搬送装置と、前記幅方向において、前記第2の搬送装置と、少なくとも一方の前記第1の搬送装置との間に存在する第1の切断用空間と、前記搬送方向において、前記第2の搬送装置の上流側及び下流側の少なくとも一方に存在する第2の切断用空間と、前記電極中間体から前記電極を切り出すためのレーザ照射装置と、を備え、前記レーザ照射装置によるレーザビームの照射範囲は前記第1の切断用空間及び前記第2の切断用空間の範囲内であることを要旨とする。
【0010】
これによれば、第1の搬送装置及び第2の搬送装置によって電極中間体が搬送されながら、レーザビームが電極中間体に向けて照射される。レーザビームは、電極中間体を打ち抜いた後、第2の搬送装置に隣接する第1の切断用空間及び第2の切断用空間を貫通し、レーザビームが各搬送装置に干渉することが回避される。
【0011】
例えば、電極製造装置として、電極中間体と一体に移動する搬送ベルトを有し、その搬送ベルトに、レーザビームとの干渉を回避する貫通孔を電極の寸法おきに設けたものを比較例とする。比較例の電極製造装置では、搬送方向に隣り合う貫通孔で挟まれた領域が、1枚の電極の製造領域となる。よって、比較例の電極製造装置では、電極中間体に不良箇所が生じた場合、その不良箇所を含む電極の製造領域全体が使用できなくなり、廃棄されてしまう。
【0012】
しかし、本発明の電極製造装置では、第1の切断用空間及び第2の切断用空間は、第2の搬送装置に隣接する状態で画定された空間であり、移動しない。よって、電極中間体に不良箇所が生じた場合、不良箇所が第2の搬送装置よりも搬送方向の下流側で、かつレーザビームを走査させる位置より搬送方向の下流側に移動すれば、切り出しを開始して電極を製造することができる。不良箇所は、第2の搬送装置上において搬送方向の上流側から下流側まで様々であるため、不良箇所を避けるために廃棄される長さは、平均すれば搬送方向に沿った電極の長さの半分となる。比較例では、搬送方向に沿った電極の長さ全体が廃棄されることとなり、本発明では、不良箇所が発生したときの電極中間体の廃棄量を減らすことができる。
【0013】
また、電極製造装置について、前記第1の搬送装置は、前記電極中間体を吸着する吸着型ベルトコンベヤであるのが好ましい。
これによれば、第1の搬送装置により、電極中間体の少なくとも幅方向両端部を吸着することができ、電極中間体が第1の搬送装置上で振動することを抑制することができる。
【0014】
また、電極製造装置について、前記第2の搬送装置は、前記電極中間体を吸着する吸着型ベルトコンベヤであるのが好ましい。
これによれば、第2の搬送装置により、電極中間体の幅方向両端部で挟まれた部分を吸着することができ、電極中間体が第2の搬送装置上で振動することを抑制することができる。よって、第1の搬送装置と第2の搬送装置によって、電極中間体が搬送中に振動することを抑制できる。
【0015】
また、電極製造装置について、前記第2の切断用空間は、前記搬送方向における前記第2の搬送装置の上流側及び下流側の両方に存在していてもよい。
これによれば、電極中間体の搬送方向へレーザビームを走査させながら電極を切り出すことができる。
【0016】
また、電極製造装置について、前記第2の搬送装置は、前記幅方向に複数配置されていてもよい。
これによれば、第2の搬送装置に隣接する第1の切断用空間及び第2の切断用空間を利用して、各第2の搬送装置で吸着された部分に電極を切り出すことができる。よって、電極中間体の幅方向に、第2の搬送装置の数に応じた電極を切り出すことができる。
【0017】
上記問題点を解決するための電極の製造方法は、帯状集電体の少なくとも片面に活物質層の前駆体を有する長尺状の電極中間体を搬送しながら該電極中間体から電極を切り出す電極製造装置を用いた電極の製造方法であって、前記電極中間体の面に沿い、かつ電極中間体の搬送方向に直交する方向を幅方向とすると、前記電極製造装置は、前記幅方向に離れて配置され、前記電極中間体の少なくとも幅方向両端部を支持する第1の搬送装置と、前記幅方向における前記第1の搬送装置の間に配置された第2の搬送装置と、前記幅方向において、少なくとも一方の前記第1の搬送装置と前記第2の搬送装置との間に存在する第1の切断用空間と、前記搬送方向における前記第2の搬送装置の上流側及び下流側の少なくとも一方に存在する第2の切断用空間と、前記電極中間体から前記電極を切断するためのレーザ照射装置と、を備え、前記第1の切断用空間及び前記第2の切断用空間に対応して配置された前記電極の縁部に沿って前記レーザ照射装置からレーザビームを照射させることを要旨とする。
【0018】
これによれば、第1の搬送装置及び第2の搬送装置によって電極中間体が搬送されながら、レーザビームが電極中間体に向けて照射される。レーザビームは、電極中間体を打ち抜いた後、第2の搬送装置に隣接する第1の切断用空間及び第2の切断用空間を貫通し、レーザビームが各搬送装置に干渉することが回避される。
【0019】
例えば、電極製造装置として、電極中間体と一体に移動する搬送ベルトを有し、その搬送ベルトに、レーザビームとの干渉を回避する貫通孔を電極の寸法おきに設けたものを比較例とする。比較例の電極製造装置では、搬送方向に隣り合う貫通孔で挟まれた領域が、1枚の電極の製造領域となる。よって、比較例の電極製造装置では、電極中間体に不良箇所が生じた場合、その不良箇所を含む電極の製造領域全体が使用できなくなり、廃棄されてしまう。
【0020】
しかし、本発明の電極製造装置では、第1の切断用空間及び第2の切断用空間は、第2の搬送装置に隣接する状態で画定された空間であり、移動しない。よって、電極中間体に不良箇所が生じた場合、不良箇所が第2の搬送装置よりも搬送方向の下流側で、かつレーザビームを走査させる位置より搬送方向の下流側に移動すれば、切り出しを開始して電極を製造することができる。不良箇所は、第2の搬送装置上において搬送方向の上流側から下流側まで様々であるため、不良箇所を避けるために廃棄される長さは、平均すれば、搬送方向に沿った電極の長さの半分となる。比較例では、搬送方向に沿った電極の長さ全体が廃棄されることとなり、本発明では、不良発生によって廃棄する量を減らすことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、不良箇所が発生したときの電極中間体の廃棄量を減らすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、電極製造装置、及び電極の製造方法を具体化した一実施形態を
図1〜
図6にしたがって説明する。
まず、電極を有する蓄電装置としての二次電池について説明する。
【0024】
図1に示すように、二次電池10は、外観が角型をなす角型電池であり、リチウムイオン電池である。二次電池10は、ケース10a内に電極組立体11を備える。電極組立体11は、複数の正極の電極と、複数の負極の電極とが、両者の間に多孔質の樹脂製セパレータを介在し、絶縁した状態で交互に積層された積層タイプである。
【0025】
図2に示すように、二次電池10用の電極12は、矩形状の金属箔13と、金属箔13の両面に存在する矩形状の活物質層14とを備えている。正極用の電極12の金属箔13は、例えば、アルミニウム箔製であり、負極用の電極12の金属箔13は、例えば、銅箔製である。また、正極の電極12の活物質層14は、正極用の活物質合剤を乾燥、圧縮して形成され、正極用の活物質合剤は、正極用の活物質、導電助剤、バインダ、及び溶媒を混練したものが用いられる。負極の電極12の活物質層14は、負極用の活物質合剤を乾燥、圧縮して形成され、負極用の活物質合剤は、負極用の活物質、導電助剤、バインダ、及び溶媒を混練したものが用いられる。
【0026】
電極12は、その一辺に沿って、活物質層14が存在せず、金属箔13が露出した未塗工部13aを有する。そして、電極12は、未塗工部13aの一辺の一部から突出した形状の集電タブ15を有する。電極12において、集電タブ15の突出した辺に沿う縁部を第1縁部12aとし、第1縁部12aの対辺に沿う縁部を第2縁部12bとする。また、電極12において、第1縁部12aの一端と第2縁部12bの一端とを繋ぐ辺に沿う縁部を第3縁部12cとし、第1縁部12aの他端と第2縁部12bの他端とを繋ぐ辺に沿い、かつ第3縁部12cの対辺に沿う縁部を第4縁部12dとする。
【0027】
上記構成の電極12の製造は、電極中間体を電極製造装置で電極12の形状に切り出して行われる。
図3に示すように、長尺帯状の電極中間体30は、電極12におけるシート状の金属箔13、未塗工部13a、及び集電タブ15を形成し得る、帯状集電体としての帯状金属箔31を備えている。帯状金属箔31は、長手方向に延びる第1の長縁部E1と、第1の長縁部E1の対辺に沿う第2の長縁部E2と、を備えている。
【0028】
電極中間体30は、帯状金属箔31の両面を覆う前駆体32を備えている。前駆体32は、それぞれ電極12が電極中間体30から切り出された際に、活物質層14となる部位である。前駆体32は、電極中間体30の長手方向に沿って、帯状に一定の幅で延びている。
【0029】
また、帯状金属箔31は、両方の長縁部E1,E2に沿って露出部34を備える。各露出部34は、帯状金属箔31の長手方向に沿って一定幅で露出している。露出部34は、帯状金属箔31と前駆体32とが重なっていない部位であり、帯状金属箔31が露出した部分である。
【0030】
次に、電極中間体30を搬送しながら電極12を切り出す電極製造装置40について説明する。
図4(a)に示すように、電極製造装置40は、電極中間体30を供給する中間体供給部41を備えている。中間体供給部41は、ロール状に捲回された電極中間体30を支持するホルダ42を備えている。ホルダ42は、電極中間体30の搬送速度にあわせて、電極中間体30を送出する。電極製造装置40は、中間体供給部41から供給された電極中間体30を搬送方向Xに搬送する搬送部43を備える。
【0031】
図3又は
図4(b)に示すように、搬送部43は、電極中間体30を長手方向に搬送する。電極中間体30の面に沿い、かつ搬送方向Xに直交する方向を電極中間体30の幅方向Yとする。
【0032】
搬送部43は、吸着型ベルトコンベヤである一対の第1の搬送装置44を備える。なお、以下の説明において、説明を分かり易くするため、場合によっては、一対の第1の搬送装置44のうち一方の第1の搬送装置44を部材番号「44a」で表記し、他方の第1の搬送装置44を部材番号「44b」で表記する。
【0033】
一対の第1の搬送装置44は、互いに平行に配置されている。各第1の搬送装置44は、一対のプーリ46と、それらプーリ46に巻き掛けられたベルト47とを備え、ベルト47の長手方向が搬送方向Xに沿う状態にある。一対のプーリ46は、図示しない駆動装置により回転可能である。
【0034】
ベルト47は、図示しない多数の通気孔を備える。各第1の搬送装置44は、一対のプーリ46の間に配置された吸引装置48を備える。そして、吸引装置48の駆動により、ベルト47上部における一対のプーリ46で挟まれた部分に負圧が発生する。
図3のドットハッチングで示す負圧発生領域Tは、回転するベルト47であっても常に一定であり、電極中間体30は、幅方向Y両端部が負圧発生領域Tでベルト47上部に吸引され、ベルト47上部に保持されながら第1の搬送装置44によって搬送される。
【0035】
搬送部43は、吸着型ベルトコンベヤである第2の搬送装置50を一対備える。なお、以下の説明において、説明を分かり易くするため、場合によっては、一対の第2の搬送装置50のうち一方の第2の搬送装置50を部材番号「50a」で表記し、他方の第2の搬送装置50を部材番号「50b」で表記する。一対の第2の搬送装置50は、幅方向Yにおける一対の第1の搬送装置44の間に配置されている。第2の搬送装置50は、電極中間体30の幅方向Y両端部より内側の部分を保持しながら電極中間体30を搬送する。電極中間体30の幅方向Yにおいて、一方の第2の搬送装置50aは、一方の第1の搬送装置44a寄りに配置され、他方の第2の搬送装置50bは、他方の第1の搬送装置44b寄りに配置されている。
【0036】
各第2の搬送装置50は、一対のプーリ51と、それらプーリ51に巻き掛けられたベルト52とを備え、ベルト52の長手方向が搬送方向Xに沿う状態にある。一対のプーリ51は、図示しない駆動装置により回転可能である。
【0037】
ベルト52は、図示しない多数の通気孔を備える。各第2の搬送装置50は、一対のプーリ51の間に配置された吸引装置53を備える。そして、吸引装置53の駆動により、ベルト52上部における一対のプーリ51で挟まれた部分に負圧が発生する。負圧発生領域Tは、回転するベルト52であっても常に一定である。
【0038】
そして、
図4(b)に示すように、電極中間体30は、幅方向Y両端部が第1の搬送装置44に保持されつつ、幅方向Y両端部より内側の部分が負圧発生領域Tでベルト52上部に吸引され、ベルト52上部に保持されながら第2の搬送装置50によって搬送される。
【0039】
一対の第2の搬送装置50は、幅方向Yに離れて配置されている。そして、幅方向Yにおける一対の第2の搬送装置50同士の間には第1の切断用空間S1が存在する。第1の切断用空間S1は、レーザビームによって電極中間体30を切断する際、電極中間体30を貫通したレーザビームが第1の搬送装置44及び第2の搬送装置50に干渉しないようにするための空間である。よって、第1の切断用空間S1は、第1の搬送装置44及び第2の搬送装置50が配置されていない場所に存在する。
【0040】
一方の第2の搬送装置50aについて、幅方向Yにおける他方の第1の搬送装置44bとの間で、かつ他方の第2の搬送装置50bとの間に第1の切断用空間S1が存在し、他方の第2の搬送装置50bについても、一方の第1の搬送装置44aとの間で、かつ一方の第2の搬送装置50aとの間に第1の切断用空間S1が存在する。よって、第1の切断用空間S1は、二つの第2の搬送装置50で共通の切断用空間である。また、電極中間体30の搬送方向Xにおいて、各第2の搬送装置50の下流側には、第2の切断用空間S2が存在する。第2の切断用空間S2は、レーザビームによって電極中間体30を切断する際、電極中間体30を貫通したレーザビームが第2の搬送装置50に干渉しないようにするための空間である。よって、第2の切断用空間S2は、第2の搬送装置50が配置されていない場所に存在する。
【0041】
搬送部43は、吸着型ベルトコンベヤである補助搬送装置60を一対備える。一対の補助搬送装置60は、幅方向Yにおける一対の第1の搬送装置44の間に配置されている。補助搬送装置60は、電極中間体30の幅方向Y両端部より内側の部分を保持しながら電極中間体30を搬送する。
【0042】
各補助搬送装置60は、搬送方向Xにおける第2の搬送装置50の下流側に第2の切断用空間S2を空けて配置されている。また、電極中間体30の幅方向Yにおいて、一方の補助搬送装置60は、一方の第1の搬送装置44a寄りに配置され、他方の補助搬送装置60は、他方の第1の搬送装置44b寄りに配置されている。そして、第2の搬送装置50と補助搬送装置60は搬送方向Xに並んでいる。
【0043】
各補助搬送装置60は、搬送方向Xに長手方向が延びる状態である。一対の補助搬送装置60は、互いに平行に配置されている。各補助搬送装置60は、一対のプーリ61と、それらプーリ61に巻き掛けられたベルト62とを備え、ベルト62の長手方向が搬送方向Xに沿う状態にある。一対のプーリ61は、図示しない駆動装置により回転可能である。各ベルト62は、図示しない多数の通気孔を備える。各補助搬送装置60は、一対のプーリ61の間に配置された吸引装置63を備える。そして、吸引装置63の駆動により、ベルト62上部における一対のプーリ61で挟まれた部分に負圧が発生する。負圧発生領域Tは、回転するベルト62であっても常に一定であり、電極中間体30は、幅方向Y両端部より内側部分が負圧発生領域Tに保持されながら補助搬送装置60によって搬送される。
【0044】
電極製造装置40は、電極中間体30を切断するレーザ照射装置70を備える。レーザ照射装置70は、レーザ光源71、ビーム走査器72を備える。ビーム走査器72は、レーザ光源71から出射されたレーザビームを2次元方向に走査する。ビーム走査器72には、例えば、ガルバノスキャナが用いられる。
【0045】
図5(a)〜
図5(e)に示すように、レーザ照射装置70は、第2の搬送装置50に隣接する第1の切断用空間S1及び第2の切断用空間S2上に位置する電極中間体30に向けてレーザビームを照射し、第1の切断用空間S1及び第2の切断用空間S2でレーザビームを走査する。照射されたレーザビームは、電極中間体30を切断し、第1の切断用空間S1や第2の切断用空間S2を貫通する。よって、レーザビームが、第1の搬送装置44及び第2の搬送装置50に干渉することがない。本実施形態において、レーザ照射装置70は、電極中間体30が第2の搬送装置50上を搬送される間に、電極12の第2縁部12b、第3縁部12c、及び第4縁部12dを切り出す。なお、電極12の第1縁部12a及び集電タブ15に沿う部分は、電極製造装置40より下流側に配置された、図示しない切断装置によって切断される。
【0046】
次に、電極製造装置40を用いた電極12の製造方法を説明する。
まず、
図5(b)に示すように、レーザ照射装置70は、一方の第2の搬送装置50aよりも搬送方向X下流側の第2の切断用空間S2に向けてレーザビームを照射する。レーザビームは、下流側の第2の切断用空間S2のうち、電極中間体30における前駆体32の第1の長縁部E1寄りの位置に入射する。
【0047】
電極中間体30が搬送方向Xに搬送されるなかで、
図5(b)の矢印に示すように、レーザビームは、第2の切断用空間S2において、他方の第1の搬送装置44bに向かいつつ搬送方向X下流側に向けて斜めに走査される。すると、電極中間体30は、一方の第1の搬送装置44a側から他方の第1の搬送装置44bに向けて幅方向Yに沿って直線状に切断される。すなわち、電極12の第3縁部12cとなる部分が電極中間体30から切り出される。
【0048】
次に、
図5(c)に示すように、レーザ照射装置70はレーザビームの照射を停止させつつ、ビーム走査器72によりレーザ光源71を電極中間体30の幅方向Y中央部にまで移動させ、
図5(c)の矢印に示すように、電極中間体30の幅方向Y中央部の第1の切断用空間S1に向けてレーザビームを照射する。レーザビームは、電極中間体30の幅方向Yの中央部に入射する。レーザ照射装置70は、レーザビームを搬送方向X上流側に向けて走査させ、搬送方向Xに搬送される電極中間体30を長手方向に沿って切断する。すると、
図5(d)の実線に示すように、電極中間体30は、既に切り出された部分と合わせて横T字状に切断され、2枚の電極12の第3縁部12c、及び2枚の電極12に共通の第2縁部12bが切り出される。
【0049】
次に、
図5(d)の矢印に示すように、レーザ照射装置70はレーザビームの照射を停止させつつ、ビーム走査器72によりレーザ光源71を、一方の第2の搬送装置50aよりも搬送方向X下流側の第2の切断用空間S2に向けて移動させ、切り出しを開始した位置まで照射位置を戻す。そして、レーザビームの照射を再開させる。
【0050】
レーザビームは、下流側の第2の切断用空間S2のうち、電極中間体30の第1の長縁部E1寄りの位置に入射する。電極中間体30が搬送方向Xに搬送されるなかで、
図5(e)の矢印に示すように、レーザビームは、他方の第1の搬送装置44bに向かいつつ搬送方向X下流側に向けて斜めに走査される。すると、電極中間体30は、一方の第1の搬送装置44a側から他方の第1の搬送装置44bに向けて幅方向Yに沿って直線状に切断される。その結果、電極中間体30の幅方向に並ぶ2枚の電極12の第4縁部12dが切り出される。よって、2枚の電極12のうち、第1縁部12a及び集電タブ15に沿う部位以外が電極中間体30から切り出される。
【0051】
その後、電極中間体30は、補助搬送装置60によって搬送方向Xの下流側に搬送された後、図示しない切断装置によって切断される。すると、
図6の2点鎖線に示すように、電極12の第1縁部12a及び集電タブ15に沿う部分が切断され、電極中間体30から2枚の電極12が切り出される。
【0052】
次に、電極製造装置40の作用を記載する。
図5(a)に示すように、電極中間体30の前駆体32に不良箇所Fが存在している場合、
図5(b)に示すように、不良箇所Fが、第2の搬送装置50より下流側の第2の切断用空間S2でのレーザ走査位置(
図5(b)の矢印)より搬送方向X下流側に移動するまで、レーザ照射装置70によるレーザビームの照射を停止させる。そして、不良箇所Fがレーザ走査位置より搬送方向X下流側まで移動した後、第1の切断用空間S1及び第2の切断用空間S2に対応して配置された電極12の各縁部に沿ってレーザ照射装置70からレーザビームを照射させ、電極中間体30の切り出しを行う。その結果、
図5(f)に示すように、今回切り出されることとなる電極121と、直前に切り出された電極122の間に不良箇所Fが存在する状態で切り出しが行われる。今回の電極121の切り出しは、不良箇所Fがレーザ走査位置より搬送方向X下流側まで移動した直後に行われたため、不良箇所Fのすぐ上流側に今回の電極121が形成される。
【0053】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)電極製造装置40は、レーザビームと各搬送装置44,50との干渉を回避するための第1の切断用空間S1及び第2の切断用空間S2を、第1の搬送装置44と第2の搬送装置50とを離して配置することで設けている。このため、第1の切断用空間S1及び第2の切断用空間S2に対し、電極中間体30が相対的に移動する。電極中間体30に不良箇所Fが存在しても、不良箇所Fが第2の搬送装置50より下流側で、かつレーザビームの走査位置より下流側まで移動すれば、レーザビームによる電極12の切り出しを行うことができる。
【0054】
比較例として、電極中間体と共に移動する搬送ベルトにレーザビームの貫通孔が等間隔おきに設けられ、隣り合う貫通孔の間が1枚の電極の製造領域である場合を挙げる。この比較例の場合、搬送ベルトと共に電極中間体が移動するため、不良箇所Fが発生した場合には、貫通孔で挟まれた製造領域全体がレーザビームの照射領域から外れるまで電極の製造を行えず、貫通孔で挟まれた製造領域全体が廃棄されることとなる。
【0055】
これに対し、本実施形態では、不良箇所Fがレーザビームの走査位置から外れるまでの量が比較例より減り、不良箇所が発生したときの電極中間体30の廃棄量を減らすことができる。
【0056】
(2)電極製造装置40の第1の搬送装置44は、吸着型ベルトコンベヤである。このため、電極中間体30の幅方向Yの両端部を第1の搬送装置44に吸着させながら搬送でき、搬送中及びレーザビームの照射中に電極中間体30が振動しにくく、レーザビームによる電極中間体30の切り出しが行いやすい。
【0057】
(3)電極製造装置40の第2の搬送装置50は、吸着型ベルトコンベヤである。このため、電極中間体30の幅方向Yの両端部より内側部分を第2の搬送装置50に吸着させながら搬送でき、搬送中及びレーザビームの照射中に電極中間体30が振動しにくく、レーザビームによる電極中間体30の切り出しが行いやすい。
【0058】
(4)電極製造装置40は、一対の第1の搬送装置44の間に2つの第2の搬送装置50を備え、幅方向Yにおける第2の搬送装置50同士の間に第1の切断用空間S1を備える。このため、第1の切断用空間S1に向けてレーザビームを照射し、かつ搬送方向Xの上流側に走査することで、電極中間体30を幅方向Yの中央部から二分することができる。よって、電極中間体30の幅方向Yに電極12を2枚切り出すことができる。
【0059】
なお、本実施形態は以下のように変更してもよい。
○
図7に示すように、電極製造装置40は、幅方向Yに隣り合う第2の搬送装置50同士の間にも第1の搬送装置44を備え、電極中間体30は、幅方向Yの両端部だけでなく、幅方向Yの中央部も第1の搬送装置44で支持される構成であってもよい。この場合、幅方向Yの両端部の第1の搬送装置44と、それら第1の搬送装置44に隣り合う第2の搬送装置50との間に第1の切断用空間S1が存在し、各第2の搬送装置50における搬送方向Xの上流側及び下流側の両方に第2の切断用空間S2が存在する。また、レーザ照射装置70を幅方向Yに2つ備える。
【0060】
また、電極中間体30は、幅方向Yの中央部に露出部34を備え、幅方向Y中央部の第1の搬送装置44によって、露出部34が吸着搬送される構成となる。そして、各レーザ照射装置70から照射されたレーザビームは、各第2の搬送装置50より上流側の第2の切断用空間S2のうち、幅方向Y中央部寄りに照射された後、幅方向Yの各端部の第1の搬送装置44に向けて下流側へ斜めに走査された後、第1の切断用空間S1を搬送方向Xに沿って照射される。さらに、レーザビームは、第2の搬送装置50より下流側の第2の切断用空間S2において幅方向Yの中央部に向けて下流側へ斜めに走査される。その結果、電極12における第2縁部12b、第3縁部12c及び第4縁部12dが電極中間体30から切り出される。その後、図示しない切断装置によって、電極12の第1縁部12a及び集電タブ15に沿う部分が露出部34から切り出され、電極12が切り出される。
【0061】
○
図8(a)に示すように、電極製造装置40は、幅方向Yに隣り合う第2の搬送装置50同士の間にも第1の搬送装置44を備え、電極中間体30は、幅方向Yの両端部だけでなく、幅方向Yの中央部も第1の搬送装置44で支持される構成であってもよい。
【0062】
この場合、幅方向Yの各端部の第1の搬送装置44と、各第1の搬送装置44に隣り合う第2の搬送装置50との間に第1の切断用空間S1が存在するとともに、幅方向Y中央部の第1の搬送装置44と各第2の搬送装置50との間にも第1の切断用空間S1が存在する。すなわち、幅方向Yにおける第2の搬送装置50の両側の第1の搬送装置44との間に第1の切断用空間S1が存在する。また、各第2の搬送装置50における搬送方向Xの上流側及び下流側に第2の切断用空間S2が存在する。
【0063】
また、幅方向Y両端部の第1の搬送装置44は、搬送方向Xに分割されており、搬送方向Xに隣り合う第1の搬送装置44同士の間で、かつ第1の切断用空間S1よりも幅方向Yの両端側にタブ切断用空間STを備える。このタブ切断用空間STは、集電タブ15を切り出す際に、レーザビームと第1の搬送装置44との干渉を回避するための空間である。
【0064】
なお、
図8(b)に示すように、幅方向Y両端部の第1の搬送装置44は、搬送方向Xに分割されていなくてもよい。この場合、電極中間体30の幅方向Y両端部の露出部34は実施形態よりも幅方向Yに沿う寸法が延長されており、各第1の搬送装置44は、各露出部34から集電タブ15を切り出す際に、レーザビームが干渉しない部位を支持する。
【0065】
そして、
図9に示すように、レーザ照射装置70から照射されたレーザビームは、幅方向Yの各端部寄りの露出部34に照射され、搬送方向Xに沿って直線状に走査された後、集電タブ15に沿う形状に走査され、さらに、搬送方向Xに沿って直線状に走査される。その後、第2の搬送装置50より下流側の第2の切断用空間S2において、幅方向Y中央部寄りに照射された後、幅方向Y中央部寄りの第1の切断用空間S1を搬送方向Xに沿って上流側に照射される。さらに、レーザビームは、第2の搬送装置50より下流側の第2の切断用空間S2において幅方向Yの端部に向けて斜めに照射される。その結果、電極12の全体が電極中間体30から切り出される。
【0066】
このようにした場合、レーザビームの照射を停止させることなく、一連の照射で電極12を電極中間体30から切り出すことができる。また、電極12の第1縁部12aに沿う部分、及び集電タブ15を電極製造装置40で切り出すことができ、電極12の製造を一工程で行うことができる。
【0067】
○ 電極12を切り出す枚数は、電極中間体30の幅方向Yにおいては1枚であってもよい。この場合、
図10(a)に示すように、電極製造装置40は、電極中間体30の幅方向Yの両端部を支持する一対の第1の搬送装置44と、一対の第1の搬送装置44との間に配置された一つの第2の搬送装置50とを備える。さらに、電極製造装置40は、いずれか一方の第1の搬送装置44と第2の搬送装置50との間に存在する第1の切断用空間S1と、第2の搬送装置50の上流側及び下流側に存在する第2の切断用空間S2とを備える。また、電極中間体30の幅方向Yへの寸法は、実施形態の半分となり、一方の第1の搬送装置44aで電極中間体30の露出部34を支持する状態で搬送される。
【0068】
そして、レーザ照射装置70から照射されたレーザビームは、第2の搬送装置50より上流側の第2の切断用空間S2のうち、露出部34寄り(一方の第1の搬送装置44a寄り)に照射されつつ、他方の第1の搬送装置44bに向けて斜めに走査される。さらに、レーザビームは、搬送方向Xに沿って第1の切断用空間S1に向けて直線状に走査された後、第2の搬送装置50より下流側の第2の切断用空間S2において、一方の第1の搬送装置44aに向けて斜めに走査される。その結果、電極12における第2縁部12b、第3縁部12c及び第4縁部12dが電極中間体30から切り出される。その後、図示しない切断装置によって、電極12の第1縁部12a及び集電タブ15に沿う部分が露出部34から切り出され、電極12が切り出される。
【0069】
なお、
図10(b)に示すように、レーザビームは、第1の切断用空間S1で搬送方向Xへ走査させた後、第2の搬送装置50より下流側の第2の切断用空間S2において、一方の第1の搬送装置44aに向けて斜めに走査させてもよい。この場合、電極中間体30からは、電極12の第2縁部12b及び第3縁部12cが切り出され、第3縁部12cが切り出されると同時に、直前に切り出されていた別の電極12の第4縁部12dが切り出されることになる。
【0070】
又は、
図10(c)に示すように、レーザビームの走査は、第2の搬送装置50より上流側の第2の切断用空間S2における一方の第1の搬送装置44a寄りから開始し、他方の第1の搬送装置44bに向けて斜めに走査させた後、第1の切断用空間S1で搬送方向Xへ直線状に走査させてもよい。この場合、電極中間体30からは、電極12の第4縁部12d及び第2縁部12bが切り出され、直前に切り出されていた別の電極12の第4縁部12dが第3縁部12cとして切り出されることになる。
【0071】
○ 第1の搬送装置44及び第2の搬送装置50は、電極中間体30を吸着する吸着型としたが、吸引装置を備えないベルトコンベヤであってもよい。
○ 電極中間体は、帯状金属箔の片面に前駆体を備える構成であってもよい。この場合、電極は、金属箔の片面に活物質層を備える構成となる。
【0072】
○ 帯状集電体としての帯状金属箔31に具体化したが、活物質層の前駆体32を担持できるのであれば、帯状集電体は金属箔以外のシート状物であってもよい。