(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6565794
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】リーダライタ
(51)【国際特許分類】
G06K 13/06 20060101AFI20190819BHJP
G06K 7/10 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
G06K13/06 B
G06K7/10 100
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-108306(P2016-108306)
(22)【出願日】2016年5月31日
(65)【公開番号】特開2017-215716(P2017-215716A)
(43)【公開日】2017年12月7日
【審査請求日】2018年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】304020498
【氏名又は名称】サクサ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】蟹澤 雅人
(72)【発明者】
【氏名】杉山 綾
(72)【発明者】
【氏名】紺野 峻史
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 伸行
【審査官】
梅沢 俊
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−109483(JP,A)
【文献】
特開2005−265517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 13/06
G06K 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触式のICカードに対し情報を読み書きするリーダライタであって、
複数の挿入方向に挿入される前記ICカードについて、挿入方向ごとの透過率に基づき電圧レベルを取得する電圧取得部と、
挿入方向ごとの前記電圧レベルのうち最小の電圧レベルを閾値として設定する閾値設定部と、を備えることを特徴とするリーダライタ。
【請求項2】
前記複数の挿入方向が判別されるように、前記ICカードが1以上のマスクを施されている
ことを特徴とする請求項1に記載のリーダライタ。
【請求項3】
前記マスクが前記ICカードの面上において非対称に施されていることを特徴とする請求項2に記載のリーダライタ。
【請求項4】
挿入方向ごとに取得される前記ICカードの前記電圧レベルの異なる波形を比較することにより、前記ICカードが前記複数の挿入方向のいずれから挿入されたかを判断する比較部、をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のリーダライタ。
【請求項5】
前記複数の挿入方向が前記ICカードの表裏及び上下の組み合わせによる4方向であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のリーダライタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーダライタに関する。
【背景技術】
【0002】
ICカードを機器内部に取り込んで読み書きするリーダライタにおいて、機器内部にICカードを挿入したときに、それをセンサで検知する必要がある。受発光によりICカードを検知する場合、発光側と受光側の間にICカードが存在し、センサの光が遮断された場合に「ICカードあり」、発光側と受光側の間にICカードが無く、センサの光が射光された場合に「ICカードなし」と判定される。
【0003】
ところで、ICカードの有無は、受光側に流れる電流を抵抗で電圧検出することにより、ある閾値以上で「ICカードあり(またはICカードなし)」、ある閾値以下で「ICカードなし(またはICカードあり)」として判定される。このとき、閾値となる電圧は、リーダライタが内蔵するCPUの入出力ポートに入力される。
【0004】
例えば、特許文献1に、データの読み書きに支障が起こらないように位置検出を確実に行うことができる、ICカードの位置検出方法およびICカードが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−109483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された技術によれば、使用するICカードが事前に分かっているため設計時に閾値を設定している。しかしながら、ICカードの種類やICカードに施された模様等により光の透過率が異なるため、設置後、設計値と異なる透過率を持つICカードが新規に使用されると、センサが誤動作する恐れがある。
【0007】
本発明は上記した課題を解決するためになされたものであり、種々のICカードに対応可能なリーダライタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、本発明は、非接触式のICカードに対し情報を読み書きするリーダライタであって、複数の挿入方向に挿入される前記ICカードについて、挿入方向ごとの透過率に基づき電圧レベルを取得する電圧取得部と、挿入方向ごとの前記電圧レベルのうち最小の電圧レベルを閾値として設定する閾値設定部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明において、前記複数の挿入方向が判別されるように、前記ICカードが1以上のマスクを施されていることを特徴とする。
【0010】
本発明において、前記マスクが前記ICカードの面上において非対称に施されていることを特徴とする。
【0011】
本発明において、挿入方向ごとに取得される前記ICカードの前記電圧レベルの異なる波形を比較することにより、前記ICカードが前記複数の挿入方向のいずれから挿入されたかを判断する比較部、をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
本発明において、前記複数の挿入方向が前記ICカードの表裏及び上下の組み合わせによる4方向であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、種々のICカードに対応可能なリーダライタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態に係るリーダライタの構成を示すブロック図である。
【
図2】一部にマスクが施されたICカードの表面を示す図である。
【
図3】サンプリングパターンとサンプリングデータの一例を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係るリーダライタの動作を示すフローチャートである。
【
図5】サンブリングにより得られる4種類のデータの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態の構成)
以下、本発明の実施の形態(以下、本実施形態という)に係るリーダライタについて図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号または符号を付している。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係るリーダライタ10は、制御部11と、電圧取得部12と、比較部13と、閾値設定部14と、通信部15とにより構成される。
【0017】
電圧取得部12は、センサを含み、複数の挿入方向に挿入されるICカード20について、挿入方向ごとの透過率に基づき電圧レベルを取得して比較部13へ出力する。比較部13は、挿入方向ごとに取得されるICカード20の電圧レベルの異なる波形を比較することにより、ICカード20が複数の挿入方向のいずれから挿入されたかを判断する。閾値設定部14は、挿入方向ごとの電圧レベルのうち最小の電圧レベルを閾値として設定して制御部11に出力する。
【0018】
通信部15は、挿入されるICカード20に対し非接触で情報を読み書きするための通信を行う。すなわち、ICカード20に電波を送信して電磁誘導等による起電力を生成することによりICカード20に内蔵されたチップを起動し、チップとの間で非接触通信を行うことにより情報を読み書きする。
【0019】
制御部11は、複数の挿入方向に挿入されるICカード20について、挿入方向ごとの透過率に基づき電圧レベルを取得し、挿入方向ごとの電圧レベルのうち最小の電圧レベルを閾値として設定するための制御中枢となり、上記した電圧取得部12と、比較部13と、閾値設定部14と、通信部15と、を制御する。制御部11には、例えば、AD(Analog-Digital)コンバータを内蔵するマイクロプロセッサが実装される。
【0020】
ICカード20は、例えば、
図2に示すように、複数の挿入方向が判別できるように、光を透過させない箇所に1以上のマスク処理が施されている。ここで、マスクは、例えば、シールを付すか厚みを持たせる等により実現している。ここでは、2個のマスク20a,20bがICカード20の面上において非対称に施されている。なお、符号20cは、磁気ストライプである。
【0021】
上記した複数の挿入方向とは、ICカード20の「表」、「裏」及び「上」、「下」の組み合わせによる4方向であり、
図3に、そのサンプリングパターン♯1〜♯4ごとのサンプリングデータの一例が示されている。図中、区間(1)〜(4)は、サンプリングパターン♯1〜♯4ごとの挿入方向に沿ってみたときのマスクの配置状況に基づく区間を示している。
【0022】
図3(a)は、ICカード20の「表上」にマスクが施されたサンプリングパターン#1であり、ICカード20の挿入方向とセンサの実装位置とにしたがい、光が透過する箇所(区間(1)〜(3))と光が透過しないマスク箇所(区間(4))の順にサンプリングされる。このため、電圧取得部12は、光が透過する箇所については比較的小さな電圧レベルを取得し、透過しないマスク箇所については比較的大きな電圧レベルを取得してパターン#1のデータとして比較部13に出力する。
【0023】
図3(b)は、ICカード20の「裏上」にマスクが施されたサンプリングパターン#2であり、サンプリングパターン#1に対してマスク箇所と磁気ストライプの実装位置が反転している。電圧取得部12は、ICカード20の挿入方向とセンサの実装位置とにしたがい、光が透過しないマスク箇所(区間(1))、光が透過する箇所(区間(2)〜(4))の順にサンプリングを行い、光が透過しないマスク箇所については比較的大きな電圧レベルを取得し、光が透過する箇所ついては比較的小さい電圧レベルを取得してパターン#2のデータとして比較部13に出力する。
【0024】
図3(c)は、ICカード20の「表下」にマスクが施されたサンプリングパターン#3であり、ICカード20の挿入方向とセンサの実装位置とにしたがい、光が透過する箇所(区間(1)〜(2))、光が透過しないマスク箇所(区間(3))、光が透過する箇所(区間(4))の順にサンプリングされる。このため、電圧取得部12は、最初に光が透過する箇所については比較的小さな電圧レベルを取得し、次の光が透過しないマスク箇所については比較的大きな電圧レベルを取得し、最後に光が透過する箇所については比較的小さな電圧レベルを取得してパターン#3のデータとして比較部13に出力する。
【0025】
図3(d)は、ICカード20の「裏下」にマスクが施されたサンプリングパターン#4であり、サンプリングパターン#3に対してマスク箇所と磁気ストライプの実装位置が反転している。電圧取得部12は、ICカード20の挿入方向とセンサの実装位置とにしたがい、光が透過する箇所(区間(1))、光が透過しないマスク箇所(区間(2))、光が透過する箇所(区間(3)〜(4))の順でサンプリングする。このため、最初に光が透過する箇所については比較的小さな電圧レベルを取得し、次に透過しないマスク箇所については比較的大きな電圧レベルを取得し、最後に光が透過する箇所については比較的小さな電圧レベルを取得してパターン#4のデータとして比較部13に出力する。
【0026】
(実施形態の動作)
以下、
図4のフローチャートを参照しながら、本実施形態に係るリーダライタ10の動作について詳細に説明する。
【0027】
まず、作業者は、本実施形態に係るリーダライタ10に、ICカード20を、
図3に示すように、「表」「裏」「上」「下」の4方向に向きを変えながら順次挿入する。リーダライタ10は、ICカード20の挿入が検知されると(ステップS41)、通信部15によるICカード20との通信を開始する。そして、電圧取得部12による、ICカード20の挿入方向ごとの透過率に基づき電圧レベルを取得する、サンプリング操作が開始される(ステップS42)。
【0028】
制御部11は、電圧取得部12が、
図3(a)(b)(c)(d)に示す4種類のサンプリングデータを取得した場合に4方向へのICカード20の挿入が完了したと認識し、比較部13を起動して4種類のサンプリングデータの比較を開始させる。
【0029】
なお、ICカード20を4方向に挿入する際、作業者が誤って重複した方向に挿入する可能性があるため、制御部11は、取得されるサンプリングデータが重複した場合はエラー判定を行い作業者に再入力を促すものとする。
【0030】
4パターンのサンプリングデータを取得後(ステップS43“YES”)、比較部13は、挿入方向ごとに取得されるICカード20の電圧レベルが異なる波形を比較することにより(ステップS44)、ICカード20が複数の挿入方向のいずれから挿入されたかを判断し、光が最も透過したときの電圧レベルを算出して閾値設定部14に出力する(ステップS45)。
【0031】
閾値設定部14は、比較部13により算出される電圧レベルにしたがい、制御部11がICカード20の有無を判定するための閾値を設定する(ステップS46)。例えば、
図5に一例を示すように、
図3に示した4方向のサンプリングパターン♯1〜♯4について区間(1)〜(4)のサンプリングデータを取得した場合、閾値設定部14は、比較部13の出力にしたがい、挿入方向ごとの電圧レベルのうちの最小値である2[V](サンプリングパターン♯3の区間(1))を閾値として制御部11に設定する。なお、
図5において、ハッチングを付した領域の電圧値がサンプリングパターン♯1〜♯4ごとの最小値である。
【0032】
制御部11は、電圧取得部12で取得された電圧レベルを内蔵のADコンバータを介してデジタル値に変換し、閾値設定部14により設定された閾値と比較することによりICカード20の有無判定を行う。
【0033】
(実施形態の効果)
本実施形態に係るリーダライタ10によれば、ICカード20を4方向に挿入し、最も光が透過するときの挿入方向の電圧レベルを最適な閾値として設定することにより、新しいICカード20が導入された場合でも、当該ICカード20を新たに4方向に挿入して最適な閾値に設定変更することができる。したがって、種々のICカード20に対応可能なリーダライタを提供することができる。
【0034】
なお、本実施形態に係るリーダライタ10によれば、ICカード20「表」「裏」「上」「下」の面に段違いにマスクを施しているが、斜め等に一定幅のマスクを施す等、表裏上下にICカード20を通過させたときに、それぞれに異なる出力が得られる構成であればよい。但し、4方向に通過したときに、出力波形が互いに異なるように、ICカード20の面上において非対称に施されている必要がある。
【0035】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0036】
10…リーダライタ、11…制御部、12…電圧取得部、13…比較部、14…閾値設定部、15…通信部、20…ICカード、20a,20b…マスク、20c…磁気ストライプ