特許第6565836号(P6565836)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6565836
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20190819BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
   G03G21/00 538
   G03G15/20 555
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-170128(P2016-170128)
(22)【出願日】2016年8月31日
(65)【公開番号】特開2018-36529(P2018-36529A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2018年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 米藏
(72)【発明者】
【氏名】大隈 浩平
【審査官】 佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−061836(JP,A)
【文献】 特開平02−287377(JP,A)
【文献】 特開2008−083302(JP,A)
【文献】 特開2004−061851(JP,A)
【文献】 特開2011−095629(JP,A)
【文献】 特開2011−180236(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0056874(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を記録紙に定着させる定着部と、
前記定着部周辺の空気を本画像形成装置の本体外部に排出する排気ダクトと、を備えるとともに、
一端部が前記排気ダクトの内壁面で回転可能に前記排気ダクト内の内壁面に軸支され、前記排気ダクトの幅には達しない長さを有する弁と、
前記弁を回転駆動する駆動部と、
本画像形成装置についての予め定められた駆動制御条件が成立したと判断したときに、前記駆動部を制御して、前記弁が軸支される前記排気ダクトの内壁面に対して垂直又は少なくとも垂直から一定範囲内の角度となる姿勢に前記弁を回転させる制御部と、を備え
複数の前記弁が、前記排気ダクトによる空気の排出方向に沿って、前記排気ダクト内で向かい合う前記内壁面の双方に並べて設けられ、前記各内壁面では、回転時に互いの可動域での干渉をさけた位置に配置され、
前記各内壁面における前記弁の配設位置は、前記排出方向に沿って互い違いに設定されている画像形成装置。
【請求項2】
トナー像を記録紙に定着させる定着部と、
前記定着部周辺の空気を本画像形成装置の本体外部に排出する排気ダクトと、を備えるとともに、
一端部が前記排気ダクトの内壁面で回転可能に前記排気ダクト内の内壁面に軸支され、前記排気ダクトの幅には達しない長さを有する弁と、
前記弁を回転駆動する駆動部と、
本画像形成装置についての予め定められた駆動制御条件が成立したと判断したときに、前記駆動部を制御して、前記弁が軸支される前記排気ダクトの内壁面に対して垂直又は少なくとも垂直から一定範囲内の角度となる姿勢に前記弁を回転させる制御部と、を備え、
前記排気ダクトは、主経路と当該主経路から分岐する副経路とを備え、
前記副経路は、前記主経路に設けられた上流側開口部を介して前記主経路から分岐し、前記主経路に設けられた下流側開口部を介して前記主経路と合流し、
一端部が前記主経路の内壁面に回転可能に軸支され、前記主経路の幅に達する長さを有する第1弁及び第2弁と、
前記第1弁及び第2弁を回転駆動する駆動部とを更に備え、
前記第1弁は、前記上流側開口部を開閉する回転動作を行い、前記上流側開口部を開放するときには前記主経路の排出経路を遮蔽する姿勢まで回転し、前記上流側開口部を閉鎖するときには前記主経路の排出経路を開放する姿勢まで回転し、
前記第2弁は、前記下流側開口部を開閉する回転動作を行い、前記下流側開口部を開放するときには前記主経路の排出経路を遮蔽する姿勢まで回転し、前記下流側開口部を閉鎖するときには前記主経路の排出経路を開放する姿勢まで回転し、
前記制御部は、前記駆動部を制御して、本画像形成装置の通常動作時には、前記上流側開口部及び前記下流側開口部を閉鎖する姿勢に前記第1弁及び前記第2弁を回転させ、前記予め定められた駆動制御条件が成立したと判断したときには、前記上流側開口部及び前記下流側開口部を開放する姿勢に前記第1弁及び前記第2弁を回転させる画像形成装置。
【請求項3】
前記排気ダクトは、前記第1弁、前記第2弁、前記駆動部、及び前記副経路を複数備え、
前記制御部は、前記複数の駆動部を一定時間毎に交互に駆動して、前記複数の経路において、一方の前記経路の前記上流側開口部及び前記下流側開口部を開放させ、他方の一方の前記経路の前記上流側開口部及び前記下流側開口部を閉鎖する動作を交互に行わせる請求項に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記副経路が、空気の流れる方向を変化させる屈曲部分を有している請求項又は請求項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記副経路には、集塵を行うフィルターが設けられている請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記定着部は、前記記録紙に転写されたトナー像を定着する加熱ローラーと当該加熱ローラーを温める熱源とを備え、
前記制御部は、前記加熱ローラーが予め定められた温度以下のときに前記熱源を点灯させ、前記熱源を予め定められた時間継続して点等させた場合に、予め定められた駆動制御条件が成立したと判断する請求項1乃至請求項のいずれかに記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特に定着部を通過する際に発生する異物を捕集する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置を稼動させる際、種々の化合物等が装置外部に排出されることが知られており、固体粉塵や、定着部を通過する際に発生する揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds:VOC)や準揮発性有機化合物(Semi Volatile Organic Compounds:SVOC)に対しての対策はなされてきた。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、定着部近傍の空気を装置外部へ排出する排気ダクトを、装置の内壁面に沿い、屈曲するように配置し、屈曲した部分でVOC等を滞留させることによって、VOC等の装置外部への拡散を防止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−145576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近、100nm以下の粒子である超微小粒子(Ultra-Fine Particle:UFP)の画像形成装置からの排出を低減することが求められている。UFPの排出量は、各国の環境ラベルにて基準値が設定されてている。2013年には、ドイツ環境庁が定める環境ラベル制度「ブルーエンジェル」の規定改定により、7nm〜300nmの粒子を規制する環境規格も運用されている。
【0006】
UFPの詳細な発生メカニズムついては判明していないが、定着部及びその周辺から発生することが分かっている。そのため、定着部近傍の空気を装置外部へ排出する排気ダクトを備える上記特許文献1に記載された装置は、UFPの拡散防止にも有効と考えられる。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載された装置では、排気ダクトを装置の内壁面に沿うように配置しなければならず、装置の設計が制約されるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであり、設計上の大きな制約を受けることなく、UFP等の異物の装置外部への排出を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面に係る画像形成装置は、トナー像を記録紙に定着させる定着部と、前記定着部周辺の空気を本画像形成装置の本体外部に排出する排気ダクトと、を備えるとともに、一端部が前記排気ダクトの内壁面で回転可能に前記排気ダクト内の内壁面に軸支され、前記排気ダクトの幅には達しない長さを有する弁と、前記弁を回転駆動する駆動部と、本画像形成装置についての予め定められた駆動制御条件が成立したと判断したときに、前記駆動部を制御して、前記弁が軸支される前記排気ダクトの内壁面に対して垂直又は少なくとも垂直から一定範囲内の角度となる姿勢に前記弁を回転させる制御部と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、制御部が、超微小粒子(UFP)等の異物が発生しやすい予め定められた駆動制御条件が成立したと判断した場合、弁が排気ダクトの内壁面に対して垂直又は少なくとも垂直から一定範囲内の角度となる姿勢に回転するため、排出ダクト内を流れる空気は、排出ダクト内を直進できず、当該弁に沿って進み、弁の端部と排出ダクトの内壁との間を通過して排出方向に向かうことになる。すなわち、排出ダクト内で空気が迂回することになり排出流路が長くなるので、UFP等の異物を装置内部に留めておく時間を長くすることができる。
【0011】
装置内部にUFP等の異物を留めておく時間が長くなれば、ブラウン運動等によって異物同士が衝突して凝集する確率が上がるので、異物の個数を大きく減少させることができ、また、異物が排気ダクトの内壁面や弁に付着する確率も上がる。これにより、異物を装置内部で効果的に捕集することができ、装置外部へ排出されるUFP等の異物を低減することができる。
【0012】
また、本発明によれば、排気ダクトを装置の内壁面に沿って引き回す配設により経路を長くするといった構成を採る必要がないので、設計上の大きな制約を受けることなく、異物の装置外部への排出を低減する構成を採用可能になる。また、特別なフィルターや吸着剤を必要としないので、異物の装置外部への拡散防止を従来よりも簡単に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の構造を示した概略的な断面図である。
図2】第1実施形態に係る画像形成装置における定着部及び異物捕集装置を拡大した概略的な断面図である。
図3】排気ダクト内に設けられた弁の可動状態を示した概略的な断面図であり、(A)は弁が排気ダクトの内壁面と沿うように配置された状態を示し、(B)は弁が排気ダクト内壁面に対して垂直となるように配置された状態を示している。
図4】排気ダクト内に設けられた弁の可動状態を示した概略的な斜視図であり、(A)は弁が排気ダクトの内壁面と沿うように配置された状態を示し、(B)は弁が排気ダクト内壁面に対して垂直となるように配置された状態を示している。
図5】画像形成装置の主要内部構成を概略的に示した機能ブロック図である。
図6】第2実施形態に係る画像形成装置における定着部及び異物捕集装置を拡大した概略的な断面図である。
図7】排気ダクト内に設けられた弁の可動状態を示した概略的な断面図であり、(A)は排気経路が主経路になる状態を示し、(B)は排気経路が副経路になる状態を示し、(C)は排気経路が別の副経路になる状態を示している。
図8】別の実施形態における副経路を示した概略図である。
図9】実施例1及び比較例1によるUFP等の発生量の測定結果を示した表である。
図10】実施例2〜13及び比較例1によるUFP等の発生量の測定結果を示した表である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る異物捕集装置を備えた画像形成装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の構造を示した概略的な断面図である。画像形成装置1は、例えば、コピー機能、プリンター機能、スキャナー機能、及びファクシミリ機能のような複数の機能を兼ね備えた複合機であり、装置本体11に、画像形成部12、定着部13、給紙部14、及び異物捕集装置16を含んで構成されている。
【0015】
画像形成部12は、感光体ドラム121と、感光体ドラム121の表面を帯電させる帯電装置122と、電荷を帯びた感光体ドラム121の表面に、原稿読取部(図略)によって読み取られた原稿画像データに基づいて、レーザー光を照射することによって潜像を形成する露光装置123と、潜像をトナーで可視化する現像装置124と、感光体121上に形成されたトナー像を記録紙Pに転写させる転写装置125とを備える。トナー像の転写が行われる転写位置を通過した感光体ドラム121表面に付着している残トナーは、クリーニング部60で除去して回収される。
【0016】
定着部13は、熱圧着によりトナー像を記録紙Pに定着させるものであり、熱源であるヒートランプ132を内蔵する加熱ローラー131と、圧力ローラー133とを備える。加熱ローラー131と圧力ローラー133とは対を成し、記録紙Pが加熱ローラー131と圧力ローラー133との間を挟持搬送される際に、未定着のトナー像がヒートランプ132の熱で溶融し、加熱ローラー131及び圧力ローラー133の圧力で記録紙Pに定着される。定着処理が施された記録紙Pは、排出トレイ151に排出される。
【0017】
異物捕集装置16は、定着部13近傍の空気を装置本体11外部へ排出するための排出経路を構成する排気ダクト161と、排気ダクト161内に空気を送り込むファン162とを備える。ファン162は、排気ダクト161の吸気口163に配置され、吸気口163は、加熱ローラー131の近くであってそのわずか上方に配置されている。ファン162は、加熱ローラー131周辺の空気を吸気口163に引き込んで排出口170に向けて案内する。
【0018】
給紙部14は、給紙カセット141、及び給紙カセット141に収容された記録紙Pをピックアップするためのピックアップローラー145を含んで構成されている。
【0019】
図2図3(A)(B)は、定着部13及び異物捕集装置16を拡大した概略的な断面図である。図4(A)(B)は、排気ダクト161を拡大した概略的な斜視図である。排気ダクト161内に、空気の流れる方向を変更する可動式の弁165,167が設けられている。弁165は、その一端部が排気ダクト161の上側内壁面164Tで回転軸166を介して軸支され、矢印A1の方向に回転可能に構成されている。弁167は、その一端部が排気ダクト161の下側内壁面164Bで回転軸168を介して軸支され、矢印A2の方向に回転可能に構成されている。さらに、弁165,167は、排気ダクト161の排出方向B1に沿って互い違いに等間隔で、互いの可動域に干渉しないように複数配置されている。各弁165,167は、排気ダクト161の幅Wには達しない長さとされている。
【0020】
各弁165,167は、画像形成装置1についての予め定められた駆動制御条件(後述)が成立したときに、弁165,167が軸支されるそれぞれの内壁面164T,164Bに対して垂直又は少なくとも垂直から一定範囲内の角度となる姿勢に回転する。
【0021】
内壁面164Tに配設された弁165と、内壁面164Bに配設された167は、それぞれ、排気ダクト161による空気の排出方向に沿って、排気ダクト161内で向かい合う内壁面164T,164Bの双方に並べて設けられている。そして、各内壁面164T,164Bでは、図2に示すように、弁165,167は、上記排出方向に沿って互い違いに設定され、弁165,167の回転時に互いの可動域での干渉をさけた位置に配置されている。
【0022】
図3(A)、図4(A)に示したように、弁165,167が排気ダクト161の内壁面164T,164Bと沿う位置に回転している姿勢のとき、排気ダクト161内における排出経路は、図3(A)に矢印C1で示す経路となる。
【0023】
また、図3(B)、図4(B)に示したように、弁165,167の自由端が、弁165,167が配設されているそれぞれの内壁面164T,164Bから離れ、弁165,167が内壁面164T,164Bに対して垂直となる姿勢まで回転したとき、弁165,167は排気ダクト161の一部を遮蔽し、上記自由端からこれに対向する内壁面164T,164Bまでの空間を開放する。このとき、排気ダクト161内における排出経路は、図3(B)に矢印C2で示す経路となる。矢印C2で示す経路の場合、排出ダクト61内を流れる空気は、排出ダクト161内を直進できず、当該弁165,167に沿って進み、弁165,167の上記自由端と内壁面164T,164Bとの間を通過して排出方向に向かう。このように、矢印C2で示す経路は、屈曲部分が形成されて入り組んだ経路となり、矢印C1が示す経路よりも長くなる。
【0024】
図5は、画像形成装置1の主要内部構成を概略的に示した機能ブロック図である。画像形成装置1は、制御ユニット10、原稿給送部6、原稿読取部5、画像形成部12、画像メモリー32、HDD(Hard Disk Drive)92、定着部13、給紙部14、異物捕集装置16、温度センサー134、及び操作部47を備える。なお、図1に示した画像形成装置1と同様の構成部分については同符号を付し、ここではその詳しい説明を省略する。
【0025】
異物捕集装置16は、排気ダクト161(図1)内に設けられた弁165,167の回転軸166,168に接続されている弁駆動部169(例えば、ステッピングモーターなど)を備える。温度センサー134は、加熱ローラー131(図1)の温度を検出するためのセンサーである。
【0026】
操作部47は、画像形成装置1が実行可能な各種動作及び処理について、操作者から、画像形成動作実行指示や原稿読取動作実行指示等の指示を受け付ける。操作部47は、操作者への操作案内等を表示する表示部473を備えている。
【0027】
制御ユニット10は、プロセッサー、RAM、ROM、及び専用のハードウェア回路を含んで構成される。プロセッサーは、CPU、MPU、ASIC等である。制御ユニット10は、画像形成装置1の全体的な動作制御を司る制御部100を備えている。
【0028】
制御ユニット10は、HDD92に記憶されている制御プログラムに従った動作により、制御部100として機能するものである。但し、制御部100は、制御ユニット10による制御プログラムに従った動作によらず、ハードウェア回路により構成することも可能である。以下、特に触れない限り、各実施形態について同様である。
【0029】
制御部100は、原稿給送部6、原稿読取部5、画像形成部12、画像メモリー32、HDD92、定着部13、給紙部14、異物捕集装置16、温度センサー134、及び操作部47と接続され、これら各部の駆動制御等を行う。
【0030】
超微小粒子(UFP)の発生しやすい環境について説明する。定着部13を構成する加熱ローラー131が低温状態(例えば、定着可能温度を下回る予め定められた温度)であるときに、加熱ローラー131を温めるヒートランプ132が点灯し、その後、ヒートランプ132が一定時間(例えば、10秒)継続して点灯した場合、UFPが劇的に増加することが分かっている。すなわち、加熱ローラー131が低温状態であるときに、ヒートランプ132が点灯してから、ヒートランプ132の点灯が一定時間継続した場合に、UFPが発生しやすい環境になったといえる。
【0031】
従って、制御部100は、加熱ローラー131が上記低温状態であるときにヒートランプ132を点灯した時点から、当該ヒートランプ132の点灯が一定時間継続することを予め定められた駆動制御条件とし、温度センサー134からの出力信号及び内蔵するタイマーによる時間計測に基づいて、当該条件を満たしたか否か(成立したか否か)を判断して、弁165,167の回転動作を制御する。
【0032】
次に、画像形成装置1による定着部13周辺における空気の装置本体11外部への排出処理について説明する。
【0033】
制御部100は、画像形成装置1が画像形成及び定着動作が可能であり、かつ上記予め定められた駆動制御条件が成立していない状態で動作を行っている通常動作時には、弁駆動部169を制御し、回転軸166,168を中心に弁165,167を回転させることによって、弁165,167が排気ダクト161の内壁面164T,164Bと沿うように配置し、排気ダクト161の排気経路を矢印C1(図3(A))が示す経路となるようにする。
【0034】
一方、制御部100は、UFPが発生しやすい上記予め定められた駆動制御条件が成立したと判断したときは、弁駆動部169を制御し、回転軸166,168を中心に弁165,167を回転させることによって、弁165,167が排気ダクト161の内壁面164T,164Bに対して垂直となるように配置し、排気ダクト161の排気経路を矢印C2(図3(B))が示す経路となるようにする。
【0035】
なお、上記予め定められた駆動制御条件は、もっと単純にすることも可能である。UFPの発生は温度に大きく関係するので、例えば、ヒートランプ132の温度が予め定められた温度(例えば、170℃)以上となった状態を予め定められた駆動制御条件としてもよい。
【0036】
上記第1実施形態によれば、制御部100が、UFPが発生しやすい予め定められた駆動制御条件が成立したと判断した場合、可動式の弁165,167の動作が制御され、排出流路が長くなるので、UFP等の異物を装置本体11内部に留めておく時間を長くすることができる。
【0037】
装置本体11内部にUFP等の異物を留めておく時間が長くなれば、ブラウン運動等によって異物同士が衝突して凝集する確率が上がるので、異物の個数を大きく減少させることができる。また、異物が排気ダクト161の内壁面や弁165,167に付着する確率も上がるので、異物を装置本体11内部で効果的に捕集することができる。従って、装置本体11外部へ排出されるUFP等の異物を低減することができる。
【0038】
これにより、従来のように、排気ダクト161を装置本体11の内壁面に沿って引き回す配設により経路を長くするといった構成を採る必要がないので、設計上の大きな制約を受けることなく、異物の装置本体11外部への排出を低減する構成を採ることができる。また、特別なフィルターや吸着剤を必要としないので、異物の装置本体11外部への拡散防止を簡単に実現することができる。
【0039】
定着部13で高温となった空気が装置本体11内部に長時間留まるのは、装置本体11内部の温度が高くなり、本画像形成装置1に負荷が掛かるおそれがあるため、あまり好ましいことではない。しかしながら、本実施形態に係る画像形成装置1では、排出ダクト161の排出経路を長くするのは、UFPが発生しやすい上記予め定められた駆動条件が成立したときのみであり、上記通常動作時には、排出経路は長くならない。このため、必要もないのに高温となった空気が装置本体11内部に長く留まることはなく、不必要に本画像形成装置1に負荷が掛かるのを回避することができる。
【0040】
次に、第2実施形態に係る画像形成装置1を説明する。図6図7は、第2実施形態に係る画像形成装置1における定着部13及び異物捕集装置16を拡大した概略的な断面図である。
【0041】
排気ダクト161は、主経路171と、空気の流れる方向を変化させる屈曲部分を2以上有する副経路181T,181Bとを備える。副経路181T,181Bは、主経路171よりも排出経路が長いことが好ましい。本実施形態では、副経路181T,181Bは、主経路171よりも排出経路が長い設定とされている。
【0042】
副経路181Tは、主経路171の上側内壁面172Tに形成された上流側開口部173Tを介して主経路171から分岐し、上側内壁面172Tに形成された下流側開口部174Tを介して主経路171と合流する。また、下流側開口部174Tは上流側開口部173Tと隣接するように形成されている。
【0043】
副経路181Bは、主経路171の下側内壁面172Bに形成された上流側開口部173Bを介して主経路171から分岐し、下側内壁面172Bに形成された下流側開口部174Bを介して主経路171と合流する。また、下流側開口部174Bは上流側開口部173Bと隣接するように形成されている。
【0044】
排気ダクト161内には、空気の流れる方向を変更する可動式の弁182T,182B,184T,184Bが設けられている。弁182T,184Tはそれぞれ、その一端部が主経路171の上側内壁面172Tで回転軸183T,185Tを介して軸支され、矢印A3,A4の方向に回転可能に構成され、弁182B,184Bはそれぞれ、その一端部が主経路171の下側内壁面172Bで回転軸183B,185Bを介して軸支され、矢印A5,A6の方向に回転可能に構成されている。
【0045】
また、弁182T,182Bはそれぞれ、上流側開口部173T,173Bを開閉し、上流側開口部173T,173Bを開放する場合、主経路171の下流側への排出経路を遮蔽するように構成され、弁184T,184Bはそれぞれ、下流側開口部174T,174Bを開閉し、下流側開口部174T,174Bを開放する場合、主経路171の上流側への排出経路を遮蔽するように構成されている。なお、弁182T,182Bは、特許請求の範囲における第1弁の一例であり、弁184T,184Bは、特許請求の範囲における第2弁の一例である。
【0046】
弁182T,184T、弁182B,184Bはそれぞれ、主経路171の幅W1に達する長さを有する
【0047】
図7(A)に示すように、上流側開口部173T,173Bを閉鎖するように、弁182T,182Bが回転し、下流側開口部174T,174Bを閉鎖するように、弁184T,184Bが回転した場合、排気ダクト161内における排出経路は主経路171を通過する矢印C3が示す経路となる。
【0048】
図7(B)に示すように、弁182B,184Bが主経路171の下側内壁面172Bに対して垂直となるように回転した場合、排気ダクト161内における排出経路は副経路181Bを通過する矢印C4が示す経路となり、矢印C3が示す経路よりも長くなるとともに、屈曲部分が形成されて入り組んだ経路となる。
【0049】
また、図7(C)に示したように、弁182T,184Tが主経路171の上側内壁面172Tに対して垂直となるように回転している場合、排気ダクト161内における排出経路は副経路181Tを通過する矢印C5が示す経路となり、矢印C4が示す経路と同様に、矢印C3が示す経路よりも長くなるとともに、屈曲部分が形成されて入り組んだ経路となる。
【0050】
次に、画像形成装置1による定着部13近傍の空気の装置本体11外部への排出処理について説明する。制御部100は、上記通常動作時においては、弁駆動部169を制御し、回転軸183T,183B,185T,185Bを中心に弁182T,182B,184T,184Bを回転させることによって、弁182T,182Bが上流側開口部173T,173Bを閉鎖するように配置し、弁184T,184Bが下流側開口部174T,174Bを閉鎖するように配置する。これにより、排気ダクト161内における排出経路は、主経路171を通過する矢印C3(図7(A))が示す経路となる。
【0051】
一方、制御部100は、UFPが発生しやすい上記予め定められた駆動条件が成立したと判断した場合には、弁駆動部169を制御し、回転軸183B,185Bを中心に弁182B,184Bを回転させ、弁182B,184Bを、主経路171の下側内壁面171Bに対して垂直となる姿勢にする。
【0052】
これにより、弁182Bが上流側開口部173Bを開放するとともに、主経路171の下流側への排出経路を遮蔽し、弁184Bが下流側開口部174Bを開放するとともに、主経路171の上流側への排出経路を遮蔽するので、排気ダクト161の排出経路が主経路171から矢印C4(図7(B))が示す副経路181Bへ変更される。
【0053】
また、制御部100は、排気ダクト161の排出経路を主経路171から副経路181Bへ変更してから一定時間(例えば、5分間。上記タイマーにより計測)が経過すると、弁駆動部169を制御し、回転軸183T,185Tを中心に弁182T,184Tを回転させることによって、弁182T,184Tが主経路171の上側内壁面171Tに対して垂直となるように配置する。
【0054】
これにより、弁182Tが上流側開口部173Tを開放するとともに、主経路171の下流側への排出経路を遮蔽し、弁184Tが下流側開口部174Tを開放するとともに、主経路171の上流側への排出経路を遮蔽するので、排気ダクト161の排出経路が副経路181Bから矢印C5(図7(C))が示す副経路181Tへ切り替えられる。
【0055】
制御部100は、一定時間毎に、排気経路となる副経路を順次切り替えるので、排出経路を副経路181Tへ切り替えた後、一定時間が経過すると、排出経路を副経路181Bへ戻し、さらに一定時間が経過すると、排出経路を副経路181Tへ戻す。
【0056】
当該第2実施形態によれば、制御部100が、UFPが発生しやすい予め定められた環境が成立したと判断した場合、可動式の弁182B,184Bの動作が制御され、排気ダクト161の排出経路が主経路171から副経路181Bへ変更され、排出流路が長くなるので、UFP等の異物を装置本体11内部に留めておく時間を長くすることができ、上記第1実施形態と同様の効果を有する。
【0057】
さらに、当該第2実施形態によれば、排気ダクト161の排出経路が主経路171から副経路181Bへ変更されてから、一定時間が経過すると、排気ダクト161の排出経路が副経路181Bから副経路181Tへ切り替えられるので、副経路181Bは閉じた状態となり、UFP等の異物を副経路181B内部に閉じ込めることができる。
【0058】
これにより、異物同士が衝突して凝集する機会や、異物が排気ダクト161の内壁面や弁に付着する機会を増やすことができる。また、副経路181Bが閉じた状態になると、副経路181B内部の温度が下がり、揮発性有機化合物(VOC)や準揮発性有機化合物(SVOC)から熱を奪うことができるので、VOCやSVOCの液化率や固化率を向上させることができ、VOCやSVOCについてもより効果的に捕集することができる。
【0059】
また、排気経路に新たに切り替わった、内部温度の低い副経路181Tの内壁面には、UFP等の異物が付着しやすく、異物の捕集がより効果的に行われる。副経路181Tの内壁面に異物が付着しやすくなるのは、異物を含む排気ガスと副経路181Tとの温度差がその原因と考えられる。
【0060】
上記第2実施形態では、主経路171と、主経路171の上側に設けられた副経路181Tと、主経路171の下側に設けられた副経路181Bとを備える排気ダクト161について説明しているが、副経路については2つではなく、1つであっても良く、さらには主経路171の右側に更なる副経路を設けたり、主経路171の左側に更なる副経路を設けたりし、副経路を3つ又は4つ備えるようにしても良い。
【0061】
また、さらに別の実施形態では、図8に示したように、屈曲部分を増やした経路181Aを、副経路181T,181B,181R,181Lとして採用してもよい。また、副経路181T,181B,181R,181Lについては、その経路内に、集塵を行うフィルターを設置した構成としてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、図1乃至図8を用いて上記実施形態により示した構成及び処理は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明を当該構成及び処理に限定する趣旨ではない。
【実施例1】
【0063】
実施例として、上記第1及び第2実施形態に係る異物捕集装置16を備えた画像形成装置1における総揮発性有機化合部(Total Volatile Organic Compounds:TVOC)及び超微小粒子(UFP)の機外への排出量を測定した。また、比較例として、従来の画像形成装置におけるTVOC及びUFPの機外への排出量を測定した。
【0064】
(実施例1)定着部13近傍が図2図3に示した構成となるように改造した複合機をSUS製5mチャンバー内に設置した。設置した際、電源は入れておいた。チャンバーについては5m/時の換気を行うように設定し、約2時間の換気後、所定原稿の印刷を10分間実行し、複合機から発生するTVOC及びUFPのサンプリングを印刷と同時に開始し、印刷終了後も引き続き行った。
【0065】
TVOCのサンプリングにはTenax管を用い、100ml/分の条件でサンプリング用ポンプ(柴田科学社製ミニポンプMP−Σ30N)を用いてサンプリングを行った。サンプリング後のTenax管を加熱脱着装置で脱着し、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)にて、TVOCの発生量を測定した。そして、機外に排出されるTVOC量を「ブルーエンジェル」のエミッション率の計算式に従って算出した。
【0066】
チャンバー内に排出されたUFPについては、米国TSI社製の高速応答型モビリティパーティクルサイザー(FMPS)Model3091で測定した。そして、機外に排出されるUFP量を「ブルーエンジェル」のエミッション率の計算式に従って算出した。
【0067】
(比較例1)図2図3に示した構成となるように改造していない複合機を使用した以外は、上記実施例1と同じ条件でTVOC及びUFPを測定した。
【0068】
(実施例2)図6図7に示したような、主経路171及び2つの副経路181T,181Bを有した排気ダクト161を備えるように改造した複合機をSUS製5mチャンバー内に設置した。設置した際、電源は入れておき、定着部13の熱源であるヒートランプ132の温度が170℃に到達すると、図7(B)の状態となって、排気経路を主経路171から副経路181Bへ変更するように、さらに5分が経過すると、図7(C)の状態となって、排気経路が副経路181Bから副経路181Tへ切り替わるように設定した。
【0069】
チャンバーについては5m/時の換気を行うように設定し、約2時間の換気後、所定原稿の印刷を10分間実行し、複合機から発生するTVOC及びUFPのサンプリングを印刷と同時に開始し、印刷終了後も引き続き行った。TVOC量及びUFP量の測定方法は、上記実施例1と同じである。
【0070】
(実施例3)主経路171及び3つの副経路181T,181B,181Rを有した排気ダクト161を備える点、そして副経路181Bから副経路181Tへの切り替えを200秒後、副経路181Tから副経路181Rへの切り替えを200秒後に行う以外は、上記実施例2と同じ条件で実施した。
【0071】
(実施例4)主経路171及び4つの副経路181T,181B,181R,181Lを有した排気ダクト161を備える点、そして副経路の切り替えタイミングが150秒後である以外は、上記実施例2と同じ条件で実施した。
【0072】
(実施例5〜7)図8に示したような、屈曲部分を増やした経路181Aを、副経路181T,181B,181R,181Lとして採用した以外は、上記実施例2〜4と同じ条件で実施した。
【0073】
(実施例8〜13)副経路181T,181B,181R,181Lの経路内に上記フィルターを設置した以外は、上記実施例2〜7と同じ条件で実施した。
【0074】
図9は、実施例1及び比較例1により測定されたTVOC量及びUFP量を示した表であり、実施例1は比較例1に比べてTVOC量及びUFP量が明らかに少ないことが分かる。
【0075】
図10は、実施例2〜13及び比較例1により測定されたTVOC量及びUFP量を示した表であり、実施例2〜13は比較例1に比べてTVOC量及びUFP量が明らかに少ないことが分かる。また、副経路については多い方が、副経路の屈曲部分についてもが多い方が、フィルターについては設置されている方がより効果的であることが分かる。
【符号の説明】
【0076】
1 画像形成装置
11 装置本体
13 定着部
100 制御部
131 加熱ローラー
132 ヒートランプ
16 異物捕集装置
161 排気ダクト
164T,164B,172T,172B 内壁面
165,167、182T,182B,184T,184B 弁
171 主経路
173T,173B 上流側開口部
174T,174B 下流側開口部
181T,181B,181A 副経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10