(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6565897
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】液面状態判別装置及びこれを備えた冷凍装置並びに液面状態判別プログラム
(51)【国際特許分類】
F25B 49/02 20060101AFI20190819BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
F25B49/02 530Z
F25B49/02 570A
F25B49/02 570Z
F25B1/00 351S
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-253751(P2016-253751)
(22)【出願日】2016年12月27日
(65)【公開番号】特開2018-105564(P2018-105564A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2017年10月4日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】科野 隼三
(72)【発明者】
【氏名】嶋谷 圭介
(72)【発明者】
【氏名】室 昇一
(72)【発明者】
【氏名】堀内 正美
(72)【発明者】
【氏名】クシュワハ プラティーク
【審査官】
笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−185839(JP,A)
【文献】
特開2013−139902(JP,A)
【文献】
特開昭57−033769(JP,A)
【文献】
特開2014−202469(JP,A)
【文献】
特開2004−125309(JP,A)
【文献】
特開2016−211955(JP,A)
【文献】
特開2016−198197(JP,A)
【文献】
特許第5969685(JP,B2)
【文献】
特開平09−089422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 49/02
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍装置(R)を構成し内部に液が含まれる機器における液面状態を判別する装置であって、
機器内の液面を確認する確認部(20)と、
前記確認部(20)で確認される液面を撮像する撮像部(30)と、
前記撮像部(30)で撮像された液面画像を認識する認識部(45)、及び前記認識部(45)で認識した画像を予め設定された複数の分類のいずれかに分類する判別部(46)を含む演算部(42)と
を備えており、
前記判別する装置は、複数の確認部(20)、及び当該確認部(20)の数に対応した複数の撮像部(30)を備えており、
前記演算部(42)は、得られる複数の画像を一つの画像として前記認識部(45)に認識させる、液面状態判別装置(D)。
【請求項2】
液面画像に関する情報である学習画像情報が格納される学習画像格納部(43)を更に備え、
前記複数の分類は前記学習画像情報により作成されるものであり、
前記学習画像情報は深層学習を用いて学習された情報である、請求項1に記載の液面状態判別装置(D)。
【請求項3】
前記判別部(46)による液面画像の判別結果を時系列で表示する表示部(50)をさらに備える、請求項1又は請求項2に記載の液面状態判別装置(D)。
【請求項4】
冷凍装置(R)を構成し内部に液が含まれる機器における液面状態を判別するためにコンピュータを、機器内の液面を確認する確認部(20)で確認される液面を撮像する撮像部(30)で撮像された液面画像を認識する認識部(45)、及び前記認識部(45)で認識した画像を予め設定された複数の分類のいずれかに分類する判別部(46)として機能させ、前記機器における液面状態を判別する装置は、複数の確認部(20)、及び当該確認部(20)の数に対応した複数の撮像部(30)を備えており、前記認識部(45)及び判別部(46)を含む演算部(42)は、得られる複数の画像を一つの画像として当該認識部(45)に認識させる、液面状態判別プログラム。
【請求項5】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の液面状態判別装置(D)と、圧縮機(1)と、アキュームレータ(2)とを備えた、冷凍装置(R)。
【請求項6】
前記液面状態判別装置(D)の判別部(46)による判別結果が所定の警戒範囲にあるときに前記冷凍装置(R)の保護制御が行われる、請求項5に記載の冷凍装置(R)。
【請求項7】
前記警戒範囲は、圧縮機(1)については所定の液面以下であり、アキュームレータ(2)については所定の液面以上である、請求項6に記載の冷凍装置(R)。
【請求項8】
前記保護制御が、機器の異常の通知、機器の運転の停止、及び圧縮機(1)への油戻し運転のいずれかである、請求項6又は請求項7に記載の冷凍装置(R)。
【請求項9】
冷凍装置(R)を構成し内部に液が含まれる機器における液状態を判別する装置であって、
機器内の液状態を確認する確認部(20)と、
前記確認部(20)で確認される液状態を撮像する撮像部(30)と、
前記撮像部(30)で撮像された液状態画像を認識する認識部(45)、及び前記認識部(45)で認識した画像を予め設定された複数の分類のいずれかに分類する判別部(46)を含む演算部(42)と
を備えており、
前記判別する装置は、複数の確認部(20)、及び当該確認部(20)の数に対応した複数の撮像部(30)を備えており、
前記演算部(42)は、得られる複数の画像を一つの画像として前記認識部(45)に認識させる、液状態判別装置(D)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液面状態判別装置及びこれを備えた冷凍装置並びに液面状態判別プログラム
に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍装置の圧縮機内部での油切れや、アキュームレータ内部での液冷媒のオーバーフロー、すなわちアキュームレータ内に液冷媒が溜まりすぎて当該液冷媒がアキュームレータからあふれ出てしまう現象、さらには当該冷凍装置を構成する機器等からの冷媒漏れは、圧縮機の焼き付き等の不具合につながる恐れがあり、冷凍装置の信頼性に影響を与える。
【0003】
かかる課題に対して、従来、種々の対策が検討されており、圧縮機の油切れの問題を防ぐために、外気温センサによる検出値が設定値よりも高い状態が所定時間継続したときに、強制的に油戻し運転を実施することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、圧縮機の吸入過熱度又は吐出過熱度が所定の目標値を所定時間継続して下回ったときにアキュームレータ内部の冷媒がオーバーフローしていると判断し、当該圧縮機を停止させるとともに、停止させた圧縮機を有する室外機から、駆動中の圧縮機を有する室外機に冷媒を移動させることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−149659号公報
【特許文献2】特開2010−164219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述した油切れやオーバーフロー等への対策を実施する前提として、冷凍装置を製作する過程で油切れやオーバーフローの程度を試験にて計測し、必要に応じて所定の対策を講じることで、冷凍装置の信頼性を高めることが行われている。
【0007】
通常、前述した油切れやオーバーフローの程度を試験で計測するには、圧縮機やアキュームレータに、液面計と呼ばれる、各機器の内部に溜まる油量(圧縮機の場合)や液冷媒量(アキュームレータの場合)を計測するための機構が設けられる。そして、当該液面計を介して外部から見ることができる機器内の油量や液冷媒量をCCDカメラ等の撮像部で撮像することで、試験運転時における油量や液冷媒量を計測している。
【0008】
しかし、撮像部で撮像した画像は試験担当者が目視で確認をして評価を行っているので、目視評価によるヒューマンエラーや試験担当者による評価のバラツキが生じる恐れがある。また、こういった試験では、撮像した画像をリアルタイムで評価する場合以外に、撮像した画像を録画し、録画された画像を試験担当者が確認することも多いが、録画時間が長くなる傾向がある。特に、夜間に無人運転を行い翌日に評価する場合には、録画時間が顕著に長くなることになる。この場合、録画画像の確認作業に非常に多くの工数を要することになる。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、機器内の液面の確認作業の効率を向上させるとともに、ヒューマンエラーや評価のバラツキを低減させることができる液面状態判別装置及びこれを備えた冷凍装置並びに液面状態判別プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の液面状態判別装置(以下、単に「判別装置」ともいう)は、
(1)冷凍装置を構成し内部に液が含まれる機器における液面状態を判別する装置であって、
機器内の液面を確認する確認部と、
前記確認部で確認される液面を撮像する撮像部と、
前記撮像部で撮像された液面画像を認識する認識部、及び前記認識部で認識した画像を予め設定された複数の分類のいずれかに分類する判別部を含む演算部と
を備えている。
【0011】
本発明の判別装置は、試験担当者によって目視で画像を評価することに代えて、撮像部で撮像された液面画像を認識部で認識し、当該認識部で認識した画像を判別部により予め設定された複数の分類のいずれかに分類しているので、機器内の液面の確認作業の効率を向上させるとともに、ヒューマンエラーや評価のバラツキを低減させることができる。前記液面画像の認識や分類は、一般に入手可能な、例えばCaffe等の画像認識又は画像解析ソフトウェアを利用して行うことができる。なお、本明細書において「液」とは、冷凍装置を構成する圧縮機やアキュームレータ等の機器の内部に含まれる液状のものを意味しており、圧縮機における冷凍機油やアキュームレータにおける液状冷媒を含む趣旨である。さらに、アキュームレータにおいては、内部の液状冷媒の表層部分に泡状の冷媒が存在することがあるが、この場合の泡状の冷媒も、本明細書における「液」に含まれるものとする。
【0012】
(2)前記(1)の判別装置において、液面画像に関する情報である学習画像情報が格納される学習画像格納部を更に備え、
前記複数の分類は前記学習画像情報により作成されるものであり、
前記学習画像情報は深層学習を用いて学習された情報であるものとすることができる。この場合、液面判別状態をより行いやすくなる。
【0013】
(3)前記(1)又は(2)の判別装置において、前記判別部による液面画像の判別結果を時系列で表示する表示部をさらに備えることが望ましい。この場合、判別結果が時系列で表示されるので、液面画像の時間的な変化を容易に把握することができる。
【0014】
(4)前記(1)〜(3)の判別装置において、複数の確認部、及び当該確認部の数に対応した複数の撮像部を備えており、
前記演算部は、得られる複数の画像を一つの画像として前記認識部に認識させることが望ましい。この場合、複数の液面画像を用いることで、機器内の液面状態をより高精度に判別することができ、誤った分類がなされる可能性を小さくすることができる。
【0015】
本発明の液面状態判別プログラム(以下、単に「判別プログラム」ともいう)は、
(5)冷凍装置を構成し内部に液が含まれる機器における液面状態を判別するためにコンピュータを、機器内の液面を確認する確認部で確認される液面を撮像する撮像部で撮像された液面画像を認識する認識部、及び前記認識部で認識した画像を予め設定された複数の分類のいずれかに分類する判別部として機能させる。
【0016】
本発明の判別プログラムは、撮像部で撮像された液面画像を認識部に認識させ、当該認識部で認識した画像を予め設定された複数の分類のいずれかに判別部に分類させているので、機器内の液面の確認作業の効率を向上させるとともに、ヒューマンエラーや評価のバラツキを低減させることができる。
【0017】
本発明の冷凍装置は、
(6)前記(1)〜(4)のいずれかの判別装置と、圧縮機と、アキュームレータとを備えている。
【0018】
本発明の冷凍装置は前述した判別装置を備えており、試験担当者によって目視で画像を評価することに代えて、撮像部で撮像された液面画像を認識部で認識し、当該認識部で認識した画像を判別部により予め設定された複数の分類のいずれかに分類しているので、機器内の液面の確認作業の効率を向上させるとともに、ヒューマンエラーや評価のバラツキを低減させることができる。
【0019】
(7)前記(6)の冷凍装置において、前記判別装置の判別部による判別結果が所定の警戒範囲にあるときに前記冷凍装置の保護制御が行われるものとすることができる。この場合、冷凍装置の保護制御を行うことで、圧縮機の油切れやアキュームレータのオーバーフローによって圧縮機に焼き付き等の不具合が生じるのを防止して、当該冷凍装置の信頼性を向上させることができる。
【0020】
(8)前記(7)の冷凍装置において、前記警戒範囲を、圧縮機については所定の液面以下とし、アキュームレータについては所定の液面以上とすることができる。この場合、圧縮機が所定の液面以下となったり、アキュームレータが所定の液面以上となったりしたときに冷凍装置の保護制御を行うことで、圧縮機の油切れやアキュームレータのオーバーフローによって圧縮機に焼き付き等の不具合が生じるのを防止して、当該冷凍装置の信頼性を向上させることができる。
【0021】
(9)前記(7)又は(8)の冷凍装置において、前記保護制御を、機器の異常の通知、機器の運転の停止、及び圧縮機への油戻し運転のいずれかとすることができる。この場合、判別部による判別結果が所定の警戒範囲にあるときに、機器の異常の通知、機器の運転の停止、及び圧縮機への油戻し運転のいずれかを行うことで、冷凍装置の圧縮機に焼き付き等の不具合が生じるのを防止することができる。
【0022】
本発明の液状態判別装置は、
(10)冷凍装置を構成し内部に液が含まれる機器における液状態を判別する装置であって、
機器内の液状態を確認する確認部と、
前記確認部で確認される液状態を撮像する撮像部と、
前記撮像部で撮像された液状態画像を認識する認識部、及び前記認識部で認識した画像を予め設定された複数の分類のいずれかに分類する判別部を含む演算部と
を備えている。
【0023】
本発明の液状態判別装置は、試験担当者によって目視で画像を評価することに代えて、撮像部で撮像された、機器内の液の状態の画像である液状態画像を認識部で認識し、当該認識部で認識した画像を判別部により予め設定された複数の分類のいずれかに分類しているので、機器内の液状態の確認作業の効率を向上させるとともに、ヒューマンエラーや評価のバラツキを低減させることができる。なお、本明細書において「液状態」とは、冷凍装置を構成する機器内に含まれる液である冷媒の汚れなどの、機器内に含まれる液の状態を意味するものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の判別装置及びこれを備えた冷凍装置並びに判別プログラムによれば、機器内の液面の確認作業の効率を向上させるとともに、ヒューマンエラーや評価のバラツキを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の冷凍装置の一実施形態の冷媒回路図である。
【
図2】本発明の判別装置の一実施形態の説明図である。
【
図3】
図2に示される判別装置におけるCCDカメラ近傍の断面説明図である。
【
図6】アキュームレータ内の冷媒の複数のレベルの液面状態を示す表の一例である。
【
図7】液面画像の判別結果である液面レベルを時系列で表示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の判別装置及びこれを備えた冷凍装置並びに判別プログラムを詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る冷凍装置Rの冷媒回路図である。冷凍装置Rはビル用の空気調和装置の室外ユニット(室外機)からなり、主として、圧縮機1、アキュームレータ2、油分離器3、四路切換弁4、室外側熱交換器5、室外ファン6、及び膨張弁7を備えている。
図1において、それぞれ参照符号9及び10で示されるガス管及び液管は、図示しない1又は複数の室内ユニットの冷媒配管に接続される。
【0028】
四路切換弁4は、冷房運転サイクルと暖房運転サイクルとを切り替えることができる。冷房運転時には、
図1において実線で示される接続状態となり、圧縮機1から、油分離器3、室外側熱交換器5、室内側熱交換器(図示せず)及びアキュームレータ2を経て当該圧縮機1へと戻る冷房運転サイクルが構成される。一方、暖房運転時には、
図1において破線で示される接続状態となり、圧縮機1から、油分離器3、室内側熱交換器(図示せず)、室外側熱交換器5及びアキュームレータ2を経て当該圧縮機1へと戻る暖房運転サイクルが構成される。
【0029】
本実施形態に係る冷凍装置Rは、当該冷凍装置Rを構成する機器であるアキュームレータ2の内部に含まれる液冷媒の液面状態を判別する判別装置Dを備えている。判別装置Dは、
図2に示されるように、液面計20と、CCDカメラ30と、制御部40と、表示部50とを備えている。
【0030】
液面計20は、アキュームレータ2内の液冷媒の液面を確認する確認部を構成している。本実施形態における液面計20は、
図3に示されるように、アキュームレータ2の壁面2aに形成された丸孔の周縁に立設された短円筒体21と、当該短円筒体21の先端周縁に設けられた鍔部22と、前記丸孔を閉止し得る大きさの円形の窓体23と、当該窓体23を前記鍔部22に固定する環状の固定部24とを備えている。窓体23は、アキュームレータ2内の液冷媒の液面を機外から観察することができるように、ガラス等の透明な材料で作製されている。固定部24は、例えばボルト25及びナット26を用いて鍔部22に固定することができる。
【0031】
本実施形態では、アキュームレータ2の壁面2aに複数の液面計20、具体的には3つの液面計20が設けられている。3つの液面計20は、設置された状態のアキュームレータ2の上下方向(
図2において上下方向)に沿って設けられており、上から順に上液面計20a、中液面計20b、及び下液面計20cを構成している。後述するように、本実施形態の判別装置Dは、液面計20の透明な窓体23の画像を用いてアキュームレータ2内の液冷媒の液面状態を判別しているが、1つの液面計20であると、窓体23を介して撮像されるアキュームレータ2内の領域が液冷媒で満たされているのか、又は、液冷媒が全く存在していないのか、画像からは判別が難しいこともある。しかし、複数の液面計20を設けることで、いずれかの液面計20の窓体23に液部分と非液部分との境界を位置させること、又は、内側が液冷媒で満たされた窓部と内側に液冷媒が存在しない窓部とを併存させることが可能となる。その結果、3つの液面計20から得られる3つの画像を総合的に判断することで、アキュームレータ2内の液冷媒の液面状態をより高精度に判別することができる。なお、液面計20の数は、3つに限定されるものではなく、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。また、比較的小容量の液冷媒が収容されるアキュームレータの場合は、1つの液面計でも内部の液面状態を精度よく観察できることもある。
【0032】
CCDカメラ30は、窓体23を介してアキュームレータ2内の液冷媒の液面を撮像することができる撮像部を構成しており、
図3に示されるように、液面計20の窓体23の正面前方に、当該窓体23との間に所定距離、例えば5cm程度の距離を隔てて配設されている。本実施形態では、3つの液面計20のそれぞれに対応して合計3台のCCDカメラ30が配設されている。CCDカメラ30によって液面計20の窓体23の部分を含む動画が撮像され、撮像された動画は制御部40に送信される。
【0033】
制御部40はマイクロコンピュータ等からなっており、CCDカメラ30からの画像信号を受信する受信部41、演算部42、記憶部43、及び送信部44を備えている。演算部42は、演算処理の中枢として機能するCPUからなっており、機能的には、認識部45及び判別部46を備えている。演算部42による処理の結果は、送信部44から制御部40に接続されている表示部50に送信される。
【0034】
記憶部43は、演算部42の制御プログラム(判別プログラムを含む)が格納されたROMと、当該演算部42が制御動作を行う際にデータ等が一時的に書き込まれたり、その書き込まれたデータが読みだされたりするRAMとから構成されている。本実施形態の判別プログラムは、アキュームレータ2の液面状態を判別するために制御部40を、アキュームレータ2内の液面を確認する液面計20で確認される液面を撮像するCCDカメラ30で撮像された液面画像を認識する認識部45、及び前記認識部45で認識した画像を予め設定された複数の分類のいずれかに分類する判別部46として機能させる。
【0035】
表示部50は、例えば後述する判別結果を時系列で表示するための液晶表示素子、プラズマ表示素子又はCRT等で構成されている。
【0036】
つぎに、前述した判別装置Dを用いてアキュームレータ2内の液冷媒の液面状態を判別する方法の一例について説明する。以下に例示する判別方法では、オペレータが目視により液面状態を判別するのではなく、CCDカメラ30を用いて撮像した画像データを自動分類し、アキュームレータ2内の液冷媒の液面レベルを数値化して出力している。
【0037】
まずCCDカメラ30を用いてアキュームレータ2に設けられた液面計20の窓体23を含む領域が動画として撮像される。撮像された画像(動画)は、制御部40の受信部41に送信され、当該受信部41で受信された画像は制御部40の記憶部43に記憶される。
【0038】
ついで、演算部42によって、記憶部43に記憶されている画像(動画)が静止画に変換される。例えば、1枚/1秒の間隔ないし頻度で動画から静止画を取得することができる。
【0039】
ついで、演算部42の認識部45によって、取得された静止画が認識され、この認識部45により認識された静止画は、演算部42の判別部46によって、予め設定された複数の分類のいずれかに分類される。本実施形態では、アキュームレータ2の3つの液面計20の液面の画像を取得している。このため、演算部42は、同時刻に得られる3つの画像、すなわち上液面計20aからの画像27a、中液面計20bからの画像27b、及び下液面計20cからの画像27cを、例えば
図5に示されるような1つの画像28にまとめる処理を行う。認識部45は、この画像28を認識する。
【0040】
前述した液面状態を示す画像(液面画像)である静止画の認識及び分類は、一般に入手可能な、例えばCaffe等の画像認識又は画像解析ソフトウェアを利用して行うことができ、制御部40の記憶部43には、予めこのような画像認識又は画像解析ソフトウェアが格納されている。
【0041】
Caffe等の画像解析ソフトウェアを用いて画像の分類処理を行うに際し、予め液面画像に関する情報である学習画像情報(学習モデル)が生成され、生成された学習画像情報が学習画像格納部として機能する記憶部43に格納される。かかる学習画像情報は深層学習(Deep Learning)を用いて学習された情報であり、アキュームレータの液面状態の複数の分類は、当該学習画像情報によって生成される。
【0042】
本実施形態で用いられる、液面画像に関する情報である学習画像情報は、例えば、以下のようにして生成することができる。
まず、液面状態を判別しようとするアキュームレータと同じ仕様のアキュームレータについて、過去の録画画像より様々な液面状態の画像を教師画像として収集する。本実施形態では、3つの液面計を備えたアキュームレータの液面状態を判別するので、同じく3つの液面計を備えたアキュームレータについて様々な液面状態の画像を収集し、
図5に示されるように3つの画像を1つにまとめた画像を画像解析ソフトウェアに投入する。その際、収集した画像(3つの画像が1つのまとまったもの)のそれぞれについて、オペレータの目視による判断で分類値を与え、当該分類値と画像とをリンクさせて画像解析ソフトウェアに投入する。
図6は、3つの液面計を備えたアキュームレータ内の冷媒の複数のレベルの液面状態を示す表の一例である。例示した表では、液面状態が12のケースに分類されている。なお、分類自体は、12未満のケースに分類してもよいし、12を超えるケースに分類してもよい。
【0043】
図6に示される例では、各液面計について4つの液面状態に分類し、全体として合計12のケースに分類している。分類「1」が最も液量が少ない状態であり、上液面計20a及び中液面計20bの液面レベルが0%、すなわち液冷媒が観察されない状態であり、下液面計20cの液面レベルは0%〜24%の範囲内である。また、分類「12」が最も液量が多い状態であり、中液面計20b及び下液面計20cの液面レベルが100%、すなわち中液面計20b及び下液面計20cで観察される範囲では満液状態であり、上液面計20aの液面レベルは75%〜100%の範囲内である。通常、分類が「12」以上であるとオーバーフローが発生する可能性が考えられる。
【0044】
演算部42によって1つのまとめられた画像28を、前述した学習画像情報に投入すると投入された画像28の特徴が捉えられて、1〜12のいずれかの分類値が出力される。このようにして、本実施形態では、アキュームレータ2内の液面レベルを機械的に且つ自動的に1〜12のいずれかの分類値に変換して出力することができる。
図7は、液面画像の判別結果である液面レベルの時系列での表示例を示している。
図7に示される例では、所定間隔で連続して取得された100の画像について、液面レベルが1〜20のいずれかの分類値に変換して出力されている。
【0045】
本実施形態に係る冷凍装置Rにおいて、前記判別装置Dの判別部46による判別結果が所定の警戒範囲にあるときに当該冷凍装置Rの保護制御を行うようにすることもできる。この場合、冷凍装置Rの保護制御を行うことで、圧縮機1の油切れやアキュームレータ2のオーバーフローによって圧縮機1に焼き付き等の不具合が生じるのを防止して、当該冷凍装置Rの信頼性を向上させることができる。
【0046】
冷凍装置Rの警戒範囲としては、例えば圧縮機1については所定の液面以下とし、アキュームレータ2については所定の液面以上とすることができる。また、保護制御としては、機器の異常の通知、機器の運転の停止、及び圧縮機1への油戻し運転のいずれかとすることができる。判別部46による判別結果が所定の警戒範囲にあるときに、機器の異常の通知、機器の運転の停止、及び圧縮機1への油戻し運転のいずれかを行うことで、冷凍装置Rの圧縮機1に焼き付き等の不具合が生じるのを防止することができる。
【0047】
〔その他の変形例〕
本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内において種々の変更が可能である。
例えば、前述した実施形態では撮像部を構成するCCDカメラで動画を撮像し、この動画を静止画に変換しているが、CCDカメラで所定時間毎に静止画を撮像し、得られる静止画を用いて液面状態を判別することもできる。
【0048】
また、前述した実施形態では、撮像部としてCCDカメラを用いているが、アキュームレータ等の機器における液面を撮像することができる撮像部としては、CCDカメラ以外にも、例えばCMOSカメラ等のデジタルカメラを用いることができる。
【0049】
また、前述した実施形態では、液面計の正面前方に撮像部としてのCCDカメラを配置しているが、液面計を介してアキュームレータ内の液冷媒の液面が撮像できる範囲内であれば、CCDカメラの位置は適宜変更することができる。
また、前述した実施形態では、冷凍装置のアキュームレータ内の液冷媒の液面状態を判別しているが、本発明の判別装置は、同じく冷凍装置を構成する圧縮機内の冷凍機油の液面状態を判別することもできる。
【0050】
また、前述した実施形態に係る装置では、冷凍装置を構成する機器における液面状態を判別しているが、本発明は、冷凍装置を構成する機器における液状態を判別する装置にも適用することができる。
すなわち、本発明の他の実施形態に係る液状態判別装置は、冷凍装置を構成し内部に液が含まれる機器における液状態を判別する装置であって、
機器内の液状態を確認する確認部と、
前記確認部で確認される液状態を撮像する撮像部と、
前記撮像部で撮像された液状態画像を認識する認識部、及び前記認識部で認識した画像を予め設定された複数の分類のいずれかに分類する判別部を含む演算部と
を備えている。
液状態の例としては、例えば冷凍装置を構成する機器内の冷媒の汚れを挙げることができる。かかる冷媒の汚れを、前記撮像部および演算部によって複数の分類のいずれかに分類することで、検知または検出することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 :圧縮機
2 :アキュームレータ
2a:壁面
3 :油分離器
4 :四路切換弁
5 :室外側熱交換器
6 :室外ファン
7 :膨張弁
9 :ガス管
10 :液管
20 :液面計
20a:上液面計
20b:中液面計
20c:下液面計
21 :短筒体
22 :鍔部
23 :窓体
24 :固定部
25 :ボルト
26 :ナット
27a:画像
27b:画像
27c:画像
28 :画像
30 :CCDカメラ
40 :制御部
41 :受信部
42 :演算部
43 :記憶部
44 :送信部
45 :認識部
46 :判別部
50 :表示部
D :冷凍装置
R :判別装置