(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、ビタミンDおよびサポニンを含む混合物を提供する。
【0009】
本明細書中で用いられる場合、用語「ビタミンD」は、特に指定されないかぎり、1)ビタミンD2およびビタミンD3、2)ビタミンD2およびビタミンD3の代謝産物、3)ビタミンD2およびビタミンD3アナログ薬、ならびに4)それらの塩を包括的に含むものとする。ビタミンD2およびビタミンD3の代謝産物としては、例えば、ビタミンDにヒドロキシル基が付加された化合物(例、25OHビタミンD2、25OHビタミンD3、1,25(OH)
2ビタミンD2、1,25(OH)
2ビタミンD3)が挙げられる。
【0011】
ビタミンD2およびビタミンD3アナログ薬としては、例えば、マキサカルシトール(maxacalcitol)、ファレカルシトリオール(falecalcitriol)、パリカルシトール(paricalcitol)、ドキセルカルシフェロール(doxercalciferol)、カルシポトリオール(calcipotriol)、セオカルシトール(seocalcitol)が挙げられる。
【0012】
塩としては、例えば、金属塩、無機塩、有機塩、および酸付加塩が挙げられる。金属塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等の一価の金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等の二価の金属塩が挙げられる。無機塩としては、例えば、アンモニウム塩が挙げられる。有機塩としては、例えば、アルキル基で置換されたアンモニウム塩が挙げられる。アルキル基で置換されたアンモニウム塩としては、モノアルキルアンモニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアルキルアンモニウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩が挙げられる。アルキル基で置換されたアンモニウム塩におけるアルキル基は、特に限定されないが、炭素数1〜6のアルキル基であってもよい。炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖または分岐鎖であり、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、sec−ペンチル、tert−ペンチル、ヘキシル、イソヘキシルが挙げられる。酸付加塩で用いられる酸としては、例えば、無機酸(例、硫酸、塩酸、臭化水素酸、硝酸、およびリン酸)、ならびに有機酸(例、酢酸、シュウ酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、およびp−トルエンスルホン酸)が挙げられる。
【0013】
ビタミンDは、単一物質であっても、複数(例、2種、3種または4種)の混合物であってもよい。単一物質であることもまた好ましい。ビタミンDは、例えば、標品、医薬、試薬、食品、飲料、および飼料等の成分として用いることができる。
【0014】
サポニンは、サポゲニン(非糖部分またはアグリコンとも呼ばれる)および糖部分から構成される配糖体である。サポニンは、親水基として作用し得る糖部分、および疎水基として作用し得るサポゲニンを有することにより界面活性作用を発揮し得る。サポニンは、単一物質であっても、複数(例、2〜50種、2〜40種、2〜30種、2〜20種、2〜10種、または2〜5種)の混合物(例、抽出物)であってもよい。
【0015】
サポニンを構成する糖部分としては、例えば、グルコース、ガラクトース、アラビノース、フコース、ラムノース、キシロース、アピオース等のペントースおよびヘキソースが挙げられる。
【0016】
サポニンを構成するサポゲニンとしては、例えば、トリテルペン系サポゲニン、およびステロイド系サポゲニンが挙げられる。
【0017】
サポニンは、それを構成するサポゲニンの種類に基づき、トリテルペン系サポニンおよびステロイド系サポニンに主に分類することができる。トリテルペン系サポニンとしては、例えば、キラヤサポニン、茶種子サポニン、キキョウサポニン、ダイズサポニン、イトヒメハギサポニン、ミシマサイコサポニン、カンゾウサポニン、ヒロハセネガサポニン、ナツメサポニン、オタネニンジンサポニン、セイヨウキズタサポニン、トチバニンジンサポニン、ヒナタイノコズチサポニン、アケビサポニン、ミツバアケビサポニン、エゴノキサポニン、モダマサポニンが挙げられる。ステロイド系サポニンとしては、例えば、サルササポニン、ジオスシン、アモロニン、カンモニン、ギトニン、ジギトニン、スミロニン、チゴニン、ノロニン、ユコニン、トリラリン、トリリンが挙げられる。これらのサポニンは、例えば、植物から抽出することにより、市販物を購入することにより、あるいは人工的に合成することにより、入手できる。好ましくは、サポニンは、トリテルペン系サポニンである。
【0018】
サポニンはまた、サポゲニンと糖部分の関係から、規定することができる。例えば、サポニン一分子中に存在する、一単位のサポゲニンに対する糖部分の単位数の観点から、サポニンを規定することができる。サポニン一分子中に存在する、一単位のサポゲニンに対する糖部分の単位数は、例えば1〜20個であり、好ましくは2〜15個であり、より好ましくは4〜14個であり、さらにより好ましくは6個、7個、8個、9個、10個、11個、または12個である。また、サポゲニンに対する糖部分の鎖数(換言すれば、サポゲニンから伸びている糖鎖の数)の観点から、サポニンを規定することができる。このような鎖数は、例えば1個または複数個(例、2個または3個)であるが、好ましくは複数個であり、より好ましくは2個である。さらにより好ましくは、3位および28位の炭素原子にそれぞれ結合した2個の糖鎖を有するトリテルペン系サポニンである。糖鎖は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。
【0019】
サポニンは、水への溶解度の観点から特定することもできる。サポニンは、一般に、水への溶解度が高い。したがって、水溶液では、サポニンを高濃度に調製し易い。本発明で用いられるサポニンについて、水への溶解度は、例えば2.0g/100mL以上、好ましくは3.0g/100mL以上、より好ましくは4.0g/100mL以上、さらにより好ましくは5.0g/100mL以上、特に好ましくは6.0g/100mL以上であってもよい。サポニンについて、水への溶解度はまた、例えば、20.0g/100mL以下、15.0g/100mL以下、12.0g/100mL以下、または10.0g/100mL以下であってもよい。高濃度のサポニンを含む水溶液を保存液として用いた場合であっても、ビタミンDの検出反応が阻害されないことが実施例で確認されている。したがって、ビタミンDおよびサポニンを含む水溶液は、標品としてのビタミンDの保存に有用である。
【0020】
特に好ましくは、サポニンは、キラヤサポニンである。キラヤサポニンは、以下に示されるような構造を有する、サポゲニン(アグリコン)としてキラヤ酸を含むトリテルペン系サポニンである。キラヤサポニンは、例えば、バラ科キラヤ(Quillaja Saponaria Molina)の樹皮から抽出することにより、市販物を購入することにより、または人工的に合成することにより、入手することができる。
【0023】
サポニンは、抗酸化作用を有することが知られている(例、Grandonら、Nat Prod Commun.12:1697−700(2013);Guajardo−Floresら、Food Chem.2:1497−503(2013);Zhaoら、Evid Based Complement Alternat Med.2013:827230(2013)を参照)。サポニンが有する界面活性作用および抗酸化作用は、通常、別々に利用されている。例えば、サポニンを含む石鹸では、サポニンの界面活性作用が期待される。また、サポニンを含むサプリメントでは、サポニンの抗酸化作用が期待される。一方、本発明によれば、これらの両作用が同時に期待され得る。特にサポニンは水への溶解度が高いことから(例、キラヤサポニンの水への溶解度:10g/100mL)、サポニンを増量することで抗酸化作用の増強が期待できる。
【0024】
混合物としては、例えば、粉末、および水溶液が挙げられる。例えば、本発明の混合物が水溶液である場合、サポニンの作用により水溶液中のビタミンDを安定化できる。本発明の混合物がビタミンDおよびサポニンの混合粉末である場合、本発明の混合物は、標品等として用いられる、ビタミンDおよびサポニンを含む水溶液の簡便な調製(即ち、用時調製)に有用である。また、本発明の混合物がビタミンDおよびサポニンの混合粉末である場合、本発明の混合物が吸湿したとしても、サポニンの作用によりビタミンDが安定化され得る。混合粉末は、乾燥(例、凍結乾燥)または非乾燥の状態で提供されてもよい。水溶液は、凍結または液体の状態で提供されてもよい。好ましくは、本発明の混合物は、水溶液である。
【0025】
水溶液としては、例えば、水(例、蒸留水、滅菌水、滅菌蒸留水、純水)、および緩衝液が挙げられる。緩衝液としては、例えば、Tris−HCl、TE(Tris−EDTA)緩衝液等のTrisベースの緩衝液;塩酸−塩化カリウム緩衝液;グリシン‐塩酸緩衝液;クエン酸緩衝液;酢酸緩衝液;クエン酸−リン酸緩衝液;リン酸緩衝液;グリシン−水酸化ナトリウム緩衝液;炭酸−重炭酸緩衝液;ホウ酸緩衝液;酒石酸緩衝液;MES(2−モルホリノエタンスルホン酸)緩衝液が挙げられる。緩衝液のpHは、ビタミンDがサポニンにより安定化され得る限り特に限定されないが、例えばpH5.0〜9.0である。pHは、好ましくは5.5以上、より好ましくは6.0以上である。pHはまた、好ましくは8.5以下、より好ましくは8.0以下である。水溶液は、少量の有機溶媒を含んでいてもよい。有機溶媒としては、例えば、アルコール(例、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の炭素原子数1〜6の低級アルコール)が挙げられる。水溶液中に含まれる有機溶媒量としては、例えば20%(v/v)以下、好ましくは15%(v/v)以下、より好ましくは10%(v/v)以下、さらにより好ましくは5%(v/v)以下、特に好ましくは4%(v/v)以下、3%(v/v)以下、2%(v/v)以下、または1%(v/v)以下である。
【0026】
本発明の混合物中、ビタミンDとサポニンとの重量比(ビタミンD:サポニン)は、サポニンによりビタミンDを安定化できる限り特に限定されないが、例えば、1:200000〜1:10の範囲内であってもよい。ビタミンDとサポニンとの重量比の範囲における下限値は、好ましくは1:100000以上、より好ましくは1:20000以上、さらにより好ましくは1:10000以上、特に好ましくは1:2000以上である。ビタミンDとサポニンとの重量比の範囲における上限値は、好ましくは1:20以下、より好ましくは1:50以下、さらにより好ましくは1:100以下、特に好ましくは1:150以下または1:200以下である。
【0027】
本発明の混合物が水溶液である場合、水溶液中のビタミンDの濃度は、特に限定されないが、例えば1ng/mL以上、好ましくは10ng/mL以上、より好ましくは50ng/mL以上、さらにより好ましくは100ng/mL以上、特に好ましくは200ng/mL以上であってもよい。水溶液中のビタミンDの濃度はまた、例えば2000ng/mL以下、1000ng/mL以下、または500ng/mL以下である。
【0028】
本発明の混合物が水溶液である場合、水溶液中のサポニンの濃度は、ビタミンDを安定化できる濃度である限り特に限定されないが、例えば0.1%(w/v)以上、好ましくは0.5%(w/v)以上、より好ましくは1.0%(w/v)以上、さらにより好ましくは1.5%(w/v)以上、特に好ましくは2.0%(w/v)以上であってもよい。水溶液中のサポニンの濃度はまた、サポニンの水への溶解度以下の濃度である限り特に限定されないが、例えば、20%(w/v)以下、15%(w/v)以下、12%(w/v)以下、10%(w/v)以下、9%(w/v)以下、8%(w/v)以下、7%(w/v)以下、6%(w/v)以下、または5%(w/v)以下である。
【0029】
本発明の混合物(例、水溶液)は、上述した成分に加えて、他の成分をさらに含有していてもよい。このような成分としては、例えば、アルブミン(例、BSA)、カゼイン等のタンパク質;包接化合物(例、β−シクロデキストリン等のシクロデキストリン);抗酸化剤;糖類(例、グルコース、スクロース、トレハロース);有機酸(例、サリチル酸、コール酸、デオキシコール酸);防腐剤(例、アジ化ナトリウム);無機物(例、金属イオン);塩(例、NaCl、KCl);医薬、試薬、食品、飲料または飼料等の製品として許容され得る担体が挙げられる。
【0030】
本発明の混合物が水溶液である場合、水溶液の容量は、水溶液中に含まれるビタミンDの用途に応じて適宜変動し得るが、例えば、0.1〜1000.0mLである。好ましくは、ビタミンDは標品として用いられることから、本発明の水溶液の容量は、例えば0.1〜20mLであってもよい。本発明の水溶液の容量は、好ましくは0.2mL以上、より好ましくは0.5mL以上、さらにより好ましくは1.0mL以上であってもよい。本発明の水溶液の容量はまた、好ましくは15mL以下、より好ましくは10mL以下、さらにより好ましくは5.0mL以下、4.0mL以下または3.0mL以下であってもよい。
【0031】
本発明の混合物(例、水溶液)は、例えば、容器(例、チューブ、マルチウェルプレート、バイアル、もしくはボトル)または点眼ビン(例、ガラス、もしくはプラスチック)に収容された形態で提供されてもよい。特に、本発明の混合物は、ビタミンD標品として用いられる場合、標品用の容器または点眼ビンに収容された形態(好ましくは、水溶液の形態)で提供される。本発明の混合物がビタミンD標品として用いられ、かつマルチウェルプレートに収容された形態で提供される場合、複数のウェルは、ビタミンDの定量に有用であるように、異なる用量のビタミンDを含む水溶液を収容していてもよい。
【0032】
本発明はまた、ビタミンDおよびサポニンを含む混合物の製造方法を提供する。本発明の製造方法は、ビタミンDをサポニンと組み合わせることを含む。具体的には、ビタミンDとサポニンとの組合せは、ビタミンD粉末または液体およびサポニン粉末または液体を混合することにより、行うことができる。ビタミンD、サポニン、混合物、ならびにビタミンDおよびサポニンを含む混合物は、上述したとおりである。
【0033】
好ましくは、本発明の製造方法は、ビタミンDおよびサポニンを含む水溶液の製造方法である。この場合、本発明の製造方法は、水溶液中においてビタミンDをサポニンと組み合わせることを含む。具体的には、ビタミンDおよびサポニンは、同時または別々に水溶液に添加することができる。ビタミンDおよびサポニンが別々に水溶液に添加される場合、ビタミンDを含む水溶液にサポニンが添加されてもよく、またはビタミンDを含む水溶液にサポニンが添加されてもよい。このような操作により、上述したような濃度範囲内にあるビタミンDおよびサポニンを含む水溶液を調製することができる。ビタミンD、サポニン、水溶液、ならびにビタミンDおよびサポニンを含む水溶液は、上述したとおりである。
【0034】
本発明の製造方法は、ビタミンDおよびサポニンに加えて、上述したような他の成分(例、別の安定化剤)を組み合わせること(例、水溶液中に添加すること)を含んでいてもよい。他の成分は、ビタミンDおよびサポニンと同様に、同時または別々に組み合わせること(例、水溶液中に添加すること)ができる。
【0035】
本発明はまた、ビタミンDの保存方法を提供する。本発明の保存方法は、ビタミンDをサポニンで安定化することを含む。好ましくは、本発明の保存方法は、ビタミンDおよびサポニンを含む本発明の水溶液中で行われる。保存は、粉末または液体(凍結または非凍結)の状態、好ましくは液体の状態で行われ得る。したがって、本発明の保存方法は、好ましくは、ビタミンDおよびサポニンを含む本発明の水溶液中において、ビタミンDをサポニンで安定化することを含んでいてもよい。液体状態での保存は、例えば50℃以下、より好ましくは45℃以下、さらにより好ましくは40℃以下、35℃以下、30℃以下、25℃以下、または20℃以下で行われてもよい。液体状態での保存はまた、0℃以上、1℃以上、2℃以上、3℃以上、または4℃以上で行われてもよい。
【0036】
液体状態での保存はまた、常温で行われてもよい。日本工業規格(JIS)では、常温とは、20℃±15℃(5〜35℃)の温度として定められている。一方、日本薬局方では、常温とは、15〜25℃の温度として定められている。本発明では、常温とは、5〜35℃の温度範囲、好ましくは15〜25℃の温度範囲として定義される。これらの温度範囲は、実施例で保存効果が実証された温度4℃と37℃との間にある。
【0037】
保存期間は、本発明の混合物中、好ましくは本発明の水溶液中において、ビタミンDが測定可能な状態で残存し得る期間である限り特に限定されない。ビタミンDの残存の程度は、保存期間によっても異なるため特に限定されないが、例えば、ビタミンDは、本発明の混合物中において、初期量に対して、例えば30%以上、好ましくは50%以上、70%以上、80%以上または90%以上の量において測定可能な状態で残存し得る。本発明の混合物中におけるビタミンDの残存の程度は、後述する方法(例、イムノアッセイ)により決定することができる。保存期間としては、例えば、3日以上、1週間以上、2週間以上、3週間以上、1ヶ月以上、2ヶ月以上または3ヶ月以上の期間が挙げられる。また、保存期間は、特に限定されないが、例えば、3年以下、1年以下、6ヶ月以下または4ヶ月以下の期間であってもよい。
【0038】
本発明はまた、ビタミンDの測定方法を提供する。本発明の測定方法は、ビタミンDおよびサポニンを含む水溶液を標品として用いてビタミンDを検出することを含む。本発明の測定方法では、当該水溶液(ビタミンD標品)は、例えば、ポジティブコントロールとして、および/または定量のための検量線の作成に用いることができる。
【0039】
本発明の測定方法が行われる場合、通常、ビタミンDを含有する、または含有すると疑われるサンプルの測定が併せて行われる。このようなサンプルの由来は特に限定されず、生物由来の生物学的サンプルであってもよく、または環境サンプルなどであってもよい。生物学的サンプルが由来する生物としては、例えば、哺乳動物(例、ヒト、サル、マウス、ラット、ウサギ、ウシ、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジ)、鳥類(例、ニワトリ)等の動物、昆虫、微生物、植物、菌類、魚類が挙げられるが、好ましくは哺乳動物、菌類、魚類であり、より好ましくは哺乳動物であり、さらにより好ましくはヒトである。生物学的サンプルはまた、血液自体または血液に由来するサンプルである血液関連サンプル(例、全血、血清、血漿)、唾液、尿、乳汁、組織または細胞抽出液、あるいはこれらの混合物であってもよいが、血液関連サンプルが好ましい。好ましいサンプルは、ヒトの血液関連サンプルである。環境サンプルとしては、土壌、海水、淡水由来のサンプルが挙げられる。サンプルは、遠心分離、抽出、ろ過、沈殿、加熱、凍結、冷蔵、および攪拌等の予備処理、ならびに界面活性剤等の成分を含む試薬(例、前処理液、希釈液、および/または反応液)による処理に付されてもよい。
【0040】
ビタミンDの検出は、定性的または定量的に行われる。ビタミンDの検出は、自体公知の任意の方法により行うことができ、例えば、ビタミンDに対する親和性物質(例、抗体)を用いて行うことができる(例、国際公開第2013/042426号)。ビタミンDの検出はまた、イムノアッセイにより行なわれてもよい。このようなイムノアッセイとしては、例えば、酵素免疫測定法(EIA)(例、直接競合ELISA、間接競合ELISA、サンドイッチELISA)、放射免疫測定法(RIA)、蛍光免疫測定法(FIA)、磁性粒子法、免疫クロマト法、ルミネッセンス免疫測定法、スピン免疫測定法、ラテックス凝集法が挙げられる。ビタミンDの検出を可能とする上記以外の方法としては、例えば、LC−MSが挙げられる。
【0041】
ビタミンDに対する親和性物質として抗体が用いられる場合、2次抗体がさらに用いられてもよい。2次抗体としては、ビタミンDに対する抗体(1次抗体)の1次抗体部分に対する抗体であってもよく、ビタミンDおよび1次抗体の複合体に対する抗体であってもよい。2次抗体等の抗体は、検出用物質に連結されていてもよい。検出用物質としては、例えば、酵素(例、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ)、親和性物質(例、ストレプトアビジン、ビオチン)、蛍光物質(例、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン)、発光物質(例、ルシフェリン、エクオリン)、放射性物質(例、
3H、
14C、
32P、
35S、
125I)が挙げられる。2次抗体等の抗体は、抗体は、支持体に固定されていてもよい。支持体としては、例えば、粒子(例、磁性粒子)、メンブレン(例、ニトロセルロース膜)、ガラス、プラスチック、金属、プレート(例、マルチウェルプレート)、デバイスが挙げられる。抗体はまた、濾紙等の媒体に含浸された形態で提供されてもよい。
【0042】
本発明はまた、キットを提供する。ビタミンDとサポニンとの間の関連性(サポニンによるビタミンDの安定化)を見出した本発明者らの知見によれば、ビタミンDまたはその測定試薬とサポニンとを組み合わせる動機付けが生まれるが、このような知見なしにはこれらを組み合わせる動機付けは存在しない。本発明のキットは、ビタミンDまたはその測定試薬とサポニンとの組合せにより特徴付けられる。
【0043】
具体的には、本発明のキットは、以下(1)〜(4)のいずれかを含む。
(1)ビタミンD、およびサポニン;
(2)ビタミンDの測定試薬、およびサポニン;
(3)ビタミンDおよびサポニン、ならびにビタミンDの測定試薬;または
(4)ビタミンDおよびサポニンを含む水溶液、ならびにビタミンDの測定試薬。
【0044】
本発明のキットに含まれる上述の構成成分の詳細(例、ビタミンD、サポニン、水溶液、ならびにビタミンDおよびサポニンを含む水溶液、それらの濃度、好ましい例)は、本発明において上述したとおりであるが、上記(1)、(2)および(3)の場合、ビタミンDおよびサポニンは、粉末の状態であることも好ましい。ビタミンDの測定試薬は、例えば、ビタミンDに対する親和性物質(例、抗体)を含む。ビタミンDの測定試薬はまた、ビタミンDのイムノアッセイに必要な成分を含んでいてもよい。これらのキットは、サンプルの処理試薬(例、前処理液、希釈液、および/または反応液)をさらに含んでいてもよい。本発明のキットでは、各構成成分が、それぞれ異なる容器に収容された形態で提供されてもよい。本発明のキットは、例えば、ビタミンD標品を含むビタミンDの測定用キット、または試薬(例、診断試薬、実験試薬)用キットとして有用である。
【実施例】
【0045】
以下、本発明の実施例を記載するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。
【0046】
実施例1:ビタミンDの安定化に対する種々の界面活性剤の効果の検討
ビタミンDを溶液中で安定化させることが難しい理由は二つある。先ず、ビタミンDは、脂溶性であることから、容器の壁に容易に吸着し易い性質を有する。次に、ビタミンDは、酸化により破壊され易い性質を有する。これらの事項を考慮し、種々の界面活性剤が25OH VD3(25ヒドロキシビタミンD3)の安定化作用を有するか否かについて、以下のとおり検討した。
【0047】
1)材料の調製
・希釈液1を使用して、表1に示されるように、各界面活性剤をそれぞれの濃度に希釈した。
・EtOHを使用して25OH VD3を4μg/mLに希釈した。
・カルボキシル化磁性粒子に抗25OH VD抗体を感作させ、抗25OH VD抗体結合磁性粒子を調製した。
・希釈液2を使用して抗25OH VD抗体結合粒子を250μg/mLに希釈し、粒子液を調製した。
・希釈液3を使用して、抗25OH VD抗体と結合した25OH VD3を認識する、ALP(アルカリホスファターゼ)標識抗体を200ng/mlに希釈し、標識抗体液を調製した。
【0048】
希釈液1〜3の組成は、以下のとおりである。
希釈液1:pH7.5 100mM Tris−HCl,50mM NaCl,0.1%(w/v) NaN
3
希釈液2:pH7.2 50mM Tris−HCl,150mM NaCl,0.1%(w/v) NaN
3,0.1%(w/v) BSA,1mM EDTA
希釈液3:pH6.8 50mM MES,150mM NaCl,0.1%(w/v) NaN
3,0.1%(w/v) BSA,10μg/mL
【0049】
2)測定手順
測定は、以下のとおり行った。
・界面活性剤溶液300μLに25OH VD3溶液5μLを加えた。
・撹拌した後、混合溶液を70μLずつに分け、4℃または37℃で3日または6日間保存した。
・上記希釈液1で15mg/mLに希釈したデオキシコール酸ナトリウム溶液40μLを、混合溶液10μLに加えた。
・得られた溶液を撹拌した後、常温で10分間反応させた。
・溶液に希釈液4 150μLを加えた。
・上記溶液75μLに粒子液75μLを加えた。
・得られた溶液を撹拌した後、37℃で10分間反応させた。
・集磁して上清を除き、洗浄液250μLを加えて粒子を洗浄した。
・洗浄操作を合計3回繰り返した。
・標識抗体溶液125μLを加えた。
・得られた溶液を撹拌した後、37℃で10分間反応させた。
・集磁して上清を除き、洗浄液250μLを加えて粒子を洗浄した。
・洗浄操作を合計3回繰り返した。
・ALPの発光基質溶液110μLを加えた。
・得られた溶液を撹拌した後、37℃で4分間反応させた。
・発光量を測定した。
【0050】
希釈液4の組成は、以下のとおりである。
希釈液4:pH7.5 100mM Tris−HCl,50mM NaCl,0.1%(w/v) NaN
3,0.1%(w/v) BSA
【0051】
【表1】
【0052】
番号(1)〜(12)について「3days 4℃」の条件下で測定された発光量を100%とした場合の各発光量の相対値(%)を表2に示す。その結果、キラヤサポニンを用いて測定された発光量は、2つの温度条件下で、経時的に減少しなかった。このことは、サポニンが25OH VD3の安定化に優れることを示す。
【0053】
【表2】
【0054】
実施例2:ビタミンDの安定化に対するサポニンの濃度の効果の検討
低濃度および高濃度のサポニンによるビタミンDの安定化作用について、以下のとおり検討した。
【0055】
1)材料の調製
・希釈液1を使用して、表3に示されるように、各界面活性剤をそれぞれの濃度に希釈した。
・以降の操作は、実施例1−1)と同様に行った。
【0056】
2)測定手順
測定は、実施例1と同様に行った。
【0057】
番号(1)〜(3)について「4days 4℃」の条件下で測定された発光量を100%とした場合の各発光量の相対値(%)を表3に示す。その結果、2%(w/v)および10%(w/v)のキラヤサポニンを用いて測定された発光量は、2つの温度条件下で、経時的に減少しなかった。したがって、サポニンは、低濃度および高濃度の双方においてビタミンDを安定化できることが示された。また、水溶液中に含まれていた高濃度のキラヤサポニンは、ビタミンDの検出反応を阻害しなかった。したがって、サポニンは、ビタミンDの標品(水溶液)の保存に適切であることが示された。
【0058】
【表3】