特許第6566027号(P6566027)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6566027感光性導電ペーストおよび導電パターン付基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6566027
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】感光性導電ペーストおよび導電パターン付基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20190819BHJP
   G03F 7/40 20060101ALI20190819BHJP
   G03F 7/032 20060101ALI20190819BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20190819BHJP
   H05K 3/02 20060101ALI20190819BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20190819BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
   G03F7/004 501
   G03F7/40 501
   G03F7/032 501
   H05K1/09 A
   H05K3/02 B
   H01B1/22 A
   H01B13/00 503D
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-514922(P2017-514922)
(86)(22)【出願日】2017年3月7日
(86)【国際出願番号】JP2017008908
(87)【国際公開番号】WO2017159445
(87)【国際公開日】20170921
【審査請求日】2019年3月18日
(31)【優先権主張番号】特願2016-53828(P2016-53828)
(32)【優先日】2016年3月17日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-53829(P2016-53829)
(32)【優先日】2016年3月17日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小山 麻里恵
(72)【発明者】
【氏名】水口 創
【審査官】 川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−134419(JP,A)
【文献】 特開平09−211866(JP,A)
【文献】 特開2003−195487(JP,A)
【文献】 特開2008−277172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
G03F 7/032
G03F 7/40
H01B 1/22
H01B 13/00
H05K 1/09
H05K 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粒子(A)と不飽和二重結合を有する化合物(B)と光ラジカル重合開始剤(C)と一分子中にヒドロキシピリジン骨格を有する化合物(D)とを含有する感光性導電ペースト。
【請求項2】
一分子中にヒドロキシピリジン骨格を有する化合物(D)が、メチロール基を有する請求項1記載の感光性導電ペースト。
【請求項3】
一分子中にヒドロキシピリジン骨格を有する化合物(D)の含有量が、不飽和二重結合を有する化合物(B)100質量部に対して、0.3〜10質量部である請求項1または2記載の感光性導電ペースト。
【請求項4】
熱硬化性樹脂(E)を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の感光性導電ペースト。
【請求項5】
熱硬化性樹脂(E)が、エポキシ当量150〜500g/当量のエポキシ樹脂である請求項4記載の感光性導電ペースト。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の感光性導電ペーストを、基板上に塗布した後に、温度100〜300℃でキュアする導電パターン付基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な導電パターンを形成することができる感光性導電ペーストおよびこの感光性導電ペーストを用いてなる導電パターン付基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、フォトリソグラフィー法により微細な導電パターンを製造することが可能になっている。用いる導電ペーストとして、感光性の有機成分に導電フィラーを分散させた感光性導電ペーストが開発提案されている(特許文献1および2参照)。このような感光性導電ペーストを用いることにより、ピッチ数十μm程度の導電パターンの形成は可能となるが、ピッチの狭化により導電パターン間のスペースが狭くなるとパターン間で短絡の可能性が高くなるという課題があった。そこで、紫外線吸収剤を添加する方法で、露光後の導電パターンの線太りを抑制し、直進性の良い導電パターンを形成することが提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2013/108696号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2013/146107号パンフレット
【特許文献3】特開2013−196998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、紫外線吸収剤を添加することにより直進性の良い微細な導電パターンを形成した場合、添加前と比較して比抵抗値は同等であっても、線幅がより細くなっており、回路抵抗は上昇してしまう課題があった。
【0005】
本発明は、直進性が良好で、かつ微細な導電パターンを形成するとともに、高い導電性を発現する感光性導電ペーストを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、有機成分の反応性を適度に落とすことが、直進性の良い微細な導電パターンの形成と、高い導電性の発現の両方に寄与していることを見出した。すなわち、有機成分の反応性を適度に落とすことにより、露光時のラジカル重合の暴走を抑制し、直進性の良い微細な導電パターンの形成が可能となる。また、露光後の時点で有機成分の反応が進みすぎないので、加熱時の硬化収縮が起こり、導電フィラー同士の接触確率が上昇し、高い導電性が発現する。そこに有機成分しとてヒドロキシピリジン骨格を有する化合物を含有することにより、有機成分の反応性を適度に抑制することができ、直進性の良い微細な導電パターンの形成と、高い導電性の発現の両方を達成できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
本発明は、導電性粒子(A)と不飽和二重結合を有する化合物(B)と光ラジカル重合開始剤(C)と一分子中にヒドロキシピリジン骨格を有する化合物(D)とを含有する感光性導電ペーストである。
【0008】
本発明の感光性導電ペーストの好ましい態様によれば、前記の一分子中にヒドロキシピリジン骨格を有する化合物(D)はメチロール基を有する化合物である。
【0009】
本発明の感光性導電ペーストの好ましい態様によれば、前記の一分子中にヒドロキシピリジン骨格を有する化合物(D)の含有量は、前記の不飽和二重結合を有する化合物(B)100質量部に対して、0.3〜10質量部である。
【0010】
本発明の感光性導電ペーストの好ましい態様によれば、熱硬化性樹脂(E)を含有することである。
【0011】
本発明の感光性導電ペーストの好ましい態様によれば、前記の熱硬化性樹脂(E)は、エポキシ当量150〜500g/当量のエポキシ樹脂である。
【0012】
本発明は、前記の感光性導電ペーストを、基板上に塗布した後に、温度100〜300℃でキュアすることにより導電パターン付基板を製造することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、直進性が良好で、かつ微細な導電パターンを形成することができる、比抵抗値の低い感光性導電ペーストが得られる。
【0014】
本発明の感光性導電ペーストは、タッチパネル用の周囲配線等の導電パターンの製造のために好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例の直進性評価での測定箇所を示した模式図である。
図2】実施例の比抵抗評価に用いたフォトマスクの透光パターンを示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の感光性導電ペーストは、導電性粒子(A)と不飽和二重結合を有する化合物(B)と光ラジカル重合開始剤(C)と一分子中にヒドロキシピリジン骨格を有する化合物(D)とを含有する。
【0017】
本発明の感光性導電ペーストにより得られた導電パターンは、有機成分と無機成分との複合物となっており、導電性粒子(A)同士が、熱キュア時の硬化収縮によって互いに接触することにより導電性が発現するものである。
【0018】
本発明の感光性導電ペーストに含まれる導電性粒子(A)としては、銀、金、銅、白金、鉛、スズ、ニッケル、アルミニウム、タングステン、モリブデン、クロム、チタンおよびインジウムの少なくとも1種の導電性フィラーを含むことが好ましく、これらの導電性フィラーを単独、合金あるいは混合粉末として用いることができる。また、上述の成分で、樹脂や無機酸化物等の絶縁性粒子または導電性粒子の表面を被覆した導電性粒子も同様に用いることができる。中でも、導電性の観点から銀、金または銅が好ましく、コストおよび安定性の観点から銀がより好ましく用いられる。
【0019】
導電性粒子(A)の形状としては、長軸長を短軸長で除した値であるアスペクト比が1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることがより好ましい態様である。導電性粒子(A)のアスペクト比を1.0以上として、導電性粒子(A)同士の接触確率がより高める。一方で、導電性粒子(A)のアスペクト比を2.0以下として、フォトリソグラフィー法で配線を形成する場合において露光光が遮蔽されにくく、現像マージンが広くできる。
【0020】
導電性粒子(A)のアスペクト比は、走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて倍率15000倍で導電性粒子(A)を観察し、無作為に100個の導電性粒子の一次粒子を選択して、それぞれの長軸長および短軸長を測定し、両者の平均値からアスペクト比を求める。
【0021】
導電性粒子(A)の粒径は、0.05〜5.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜2.0μmである。導電性粒子(A)の粒径を0.05μm以上とすると、粒子間の相互作用が弱く、ペースト中での導電性粒子(A)の分散状態を保ち易い。導電性粒子(A)の粒径を5.0μm以下とすると、製造された導電パターンの表面平滑度、パターン精度および寸法精度が向上できる。
【0022】
感光性導電ペーストが含有する導電性粒子(A)の粒径は、電子顕微鏡で観察し、無作為に20個の導電性粒子の一次粒子を選択して、それぞれの最大幅を測定し、それらの平均値を求めることで算出する。
【0023】
導電性粒子(A)の含有量は、導電ペースト中の全固形分に対して60〜95質量%が好ましく、75〜90質量%がより好ましい。導電性粒子(A)の全固形分に対する含有量が60質量%以上であると、キュア時の導電性粒子(A)同士の接触確率が向上し、製造された導電パターンの比抵抗及び断線確率が低くなる。導電性粒子(A)の全固形分に対する含有量が95質量%以下であると、露光工程において塗膜の透光性が向上し、微細なパターニングが容易となる。ここで全固形分とは、溶剤を除く、感光性導電ペーストの全構成成分をいう。
【0024】
本発明の感光性導電ペーストに含まれる不飽和二重結合を有する化合物(B)としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン若しくはヒドロキシメチルスチレン等のスチレン類、アクリル系モノマー、アクリル系共重合体、エポキシカルボキシレート化合物、および1−ビニル−2−ピロリドンが挙げられる。
【0025】
アクリル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、iso−プロパンアクリレート、グリシジルアクリレート、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、オクタフロロペンチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、アミノエチルアクリレート、フェニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、1−ナフチルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、チオフェノールアクリレート若しくはベンジルメルカプタンアクリレート、アリル化シクロヘキシルジアクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート若しくはトリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート若しくはジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−n−ブトキシメチルアクリルアミド若しくはN−イソブトキシメチルアクリルアミド、エポキシ基を不飽和酸で開環させた水酸基を有するエチレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、グリセリンジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、ビスフェノールFのアクリル酸付加物若しくはクレゾールノボラックのアクリル酸付加物等のエポキシアクリレートモノマーまたはγ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、あるいは、それらのアクリル基をメタクリル基に置換した化合物が挙げられる。
【0026】
アクリル系共重合体としては、用いられるモノマーすなわち共重合成分に、アクリル系モノマーを含む共重合体をいう。カルボキシル基を有するアルカリ可溶性のアクリル系共重合体は、モノマーとして不飽和カルボン酸等の不飽和酸を用いることにより得られる。不飽和酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸若しくは酢酸ビニル、およびこれらの酸無水物が挙げられる。用いられる不飽和酸の多少により、得られるアクリル系共重合体の酸価を調整することができる。また、上記のアクリル系共重合体が有するカルボキシル基と、グリシジル(メタ)アクリレート等の不飽和二重結合を有する化合物とを反応させることにより、側鎖に反応性の不飽和二重結合を有するアルカリ可溶性のアクリル系共重合体が得られる。
【0027】
エポキシカルボキシレート化合物としては、エポキシ化合物と、不飽和二重結合を有するカルボキシル化合物とを出発原料として合成することができる化合物をいう。出発原料となり得るエポキシ化合物としては、例えば、グリシジルエーテル類、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル類、グリシジルアミン類又はエポキシ樹脂が挙げられるが、より具体的には、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル、ビフェノールジグリシジルエーテル、テトラメチルビフェノールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、およびtert−ブチルグリシジルアミンが挙げられる。また、不飽和二重結合を有するカルボキシル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸およびα−シアノ桂皮酸が挙げられる。
【0028】
エポキシカルボキシレート化合物と多塩基酸無水物とを反応させて、エポキシカルボキシレート化合物の酸価を調整することができる。多塩基酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸、3−メチルテトラヒドロ無水フタル酸、4−メチルーヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、および無水マレイン酸が挙げられる。上記の多塩基酸無水物と反応させたエポキシカルボキシレート化合物が有するカルボキシル基と、グリシジル(メタ)アクリレート等の不飽和二重結合を有する化合物とを反応させることにより、エポキシカルボキシレート化合物が有する反応性の不飽和二重結合の量を調整することができる。
【0029】
エポキシカルボキシレート化合物が有するヒドロキシ基と、ジイソシアネート化合物を反応させることにより、ウレタン化をすることができる。ジイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、トリデンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネト、イソホロンジイソシアネート、アリルシアンジイソシアネート、およびノルボルナンジイソシアネートが挙げられる。
【0030】
不飽和二重結合を有する化合物(B)の酸価は、アルカリ可溶性を至適なものとするため、30〜250mgKOH/gであることが好ましい。不飽和二重結合を有する化合物(B)の酸価が30mgKOH/g以上では、可溶部分の溶解性を抑制できる。不飽和二重結合を有する化合物(B)の酸価が250mgKOH/g以下では、現像許容幅が保持できる。不飽和二重結合を有する化合物(B)の酸価は、JIS K 0070(1992)に準拠して測定することができる。
【0031】
本発明の感光性導電ペーストに含まれる光ラジカル重合開始剤(C)としては、例えば、ベンゾフェノン、O−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルケトン、フルオレノン等のベンゾフェノン誘導体、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,2’−ジエトキシアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン等のチオキサントン誘導体、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール等のベンジル誘導体、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル等のベンゾイン誘導体、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、1−フェニル−1,2−ブタンジオン−2−(O−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム等のオキシム系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等のα−ヒドロキシケトン系化合物、2−メチル−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)ブタン−1−オン等のα−アミノアルキルフェノン系化合物、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のフォスフィンオキサイド系化合物、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド等の芳香族スルホニルクロリド系化合物、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンゾスベロン、メチレンアントロン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサノン、6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサノン、6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、N−フェニルチオアクリドン、4,4’−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、四臭化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイル等が挙げられ、光感度の高いオキシム系化合物が、特に好ましく用いられる。
【0032】
ラジカル重合開始剤(C)の含有量は、不飽和二重結合を有する化合物(B)100質量部に対して0.05〜30質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることがより好ましい。光ラジカル重合開始剤(C)の含有量は、不飽和二重結合を有する化合物(B)100質量部に対して0.05質量部以上になると、露光部の硬化密度が上昇し、現像後の残膜率を高くすることができる。光ラジカル重合開始剤(C)の含有量は、不飽和二重結合を有する化合物(B)100質量部に対して30質量部以下になると、導電ペーストを塗布して得られた塗布膜上部での光ラジカル重合開始剤(C)による過剰な光吸収が抑制される。その結果、製造された導電パターンが逆テーパー形状となることによる基板との密着性低下が抑制される。
【0033】
本発明の感光性導電ペーストは、光ラジカル重合開始剤(C)と共に増感剤を含有させることができる。
【0034】
増感剤としては、例えば、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,3−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、ミヒラーケトン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p−ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p−ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2−(p−ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3−カルボニルビス(4−ジエチルアミノベンザル)アセトン、3,3−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、N−フェニル−N−エチルエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、N−トリルジエタノールアミン、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、3−フェニル−5−ベンゾイルチオテトラゾール、および1−フェニル−5−エトキシカルボニルチオテトラゾールが挙げられる。
【0035】
増感剤の含有量は、不飽和二重結合を有する化合物(B)100質量部に対して、0.05〜10質量部であることが好ましい。増感剤の含有量は、不飽和二重結合を有する化合物(B)100質量部に対して0.05質量部以上になると、光感度が向上する。増感剤の含有量は、不飽和二重結合を有する化合物(B)100質量部に対して10質量部以下になると、導電ペーストを塗布して得られた塗布膜上部での、過剰な光吸収が抑制される。その結果、製造された導電パターンが逆テーパー形状となることによる、基板との密着性低下が抑制される。
【0036】
本発明の感光性導電ペーストに含まれる一分子中にヒドロキシピリジン骨格を有する化合物(D)としては、例えば、2−ヒドロキシピリジン、3−ヒドロキシピリジン、4−ヒドロキシピリジン、2,4−ジヒドロキシピリジン、2,4−ジヒドロキシキノリン、2,6−ジヒドロキシキノリン、2,8−ジヒドロキシキノリン、5−ヒドロキシ−2−メチルピリジン、2−ヒドロキシ−4−メチルピリジン、2−ヒドロキシ−5−メチルピリジン、2−ヒドロキシ−6−メチルピリジン、2,4−ジヒドロキシ−6−メチルピリジン、2−エチル−3−ヒドロキシ−6−メチルピリジン、4−ブロモ−2−ヒドロキシピリジン、4−クロロ−2−ヒドロキシピリジン、2−ヒドロキシ−5−ヨードピリジン、3−ヒドロキシイソキノリン、2−キノリノール、3−キノリノール、2−メチル−4−キノリノール、ピリドキサール−5−ホスフェート、シトラジン酸、6−ヒドロキシニコチン酸、およびこれらの塩が挙げられる。
【0037】
中でも、メチロール基を有するピリドキシン、4−デオキシピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミン、4−ピリドキシ酸、イソピリドキサール、2−ヒドロキシメチル−3−ピリジノール、2−ヒドロキシメチル−6−メチル−3−ピリジノール、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−3−ピリジノール、ギンコトキシン、ジカプリル酸ピリドキシン、ピリドキサールオキシム、6−(ヒドロキシメチル)−3,4−ピリジンジオール、2−ブロモ−6−(ヒドロキシメチル)−3−ピリジノール、2,5−ジクロロ−6−(ヒドロキシメチル)−3−ピリジノール、2−クロロ−6−(ヒドロキシメチル)−4−ヨード−3−ピリジノール、3−(ヒドロキシメチル)−6−メチル−4−キノリノール、ピリドキシン−3,4−ジパルミタート、およびこれらの塩は、有機成分の反応抑制効果が強すぎないため、導電パターンの現像マージン悪化が生じにくい。
【0038】
一分子中にヒドロキシピリジン骨格を有する化合物(D)の含有量は、不飽和二重結合を有する化合物(B)100質量部に対して0.3〜10質量部含有することが好ましく、0.5〜5重量部含有することがより好ましい。一分子中にヒドロキシピリジン骨格を有する化合物(D)の含有量は、不飽和二重結合を有する化合物(B)100質量部に対して0.3質量部以上になると、露光時の光ラジカル反応の暴走を防ぐため導電パターンの直進性が向上し、また、キュア前の時点で導電パターンの樹脂成分の硬化が進行しすぎないことにより、キュア時の硬化収縮を阻害せず導電性粒子(A)同士の接触確率が上昇し、比抵抗値が低下する。一分子中にヒドロキシピリジン骨格を有する化合物(D)の含有量は、不飽和二重結合を有する化合物(B)100質量部に対して10質量部以下になると、光ラジカル反応が過度に抑制されないため、微細なパターニングが可能となる。
【0039】
本発明の感光性導電ペーストには、熱硬化性樹脂(E)を含有させることができる。熱硬化性樹脂(E)としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコン樹脂、およびポリウレタンなどが挙げられる。熱硬化性樹脂(E)としては、中でも、エポキシ樹脂が好ましく、エポキシ樹脂の中でもエポキシ当量が150〜500g/当量のエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂のエポキシ当量を150g/当量以上とすることにより、塗布膜の保存安定性が感光性導電ペーストを得ることができる。エポキシ樹脂のエポキシ当量を500g/当量以下することにより、樹脂フィルムやガラス基板のような各種基板との密着性の高い導電パターンを得ることができる。
【0040】
エポキシ当量とは、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量を指し、構造式から求めた分子量を、その構造中に含まれるエポキシ基の数で除算して求める。
【0041】
エポキシ樹脂の含有量は、不飽和二重結合を有する化合物(B)100質量部に対して1〜100質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは30〜80質量部である。エポキシ樹脂の含有量は、不飽和二重結合を有する化合物(B)100重量部に対して1質量部以上とすることにより、密着性を向上させる効果が十分に発揮されやすく、不飽和二重結合を有する化合物(B)100重量部に対する含有量を100質量部以下とすることにより、塗布膜の保存安定性が特に高い感光性導電ペーストを得ることができる。
【0042】
エポキシ樹脂としては、エポキシ当量が150〜500g/当量の範囲内のものが好ましく、200〜500g/当量の範囲内のものがより好ましい。具体例としては、エチレングリコール変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、および複素環式エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0043】
本発明の感光性導電ペーストには、溶剤を含有させることができる。溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジアセトンアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(以下、「DMEA」)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコー、および2,2,4,−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートが挙げられるが、沸点が150℃以上の溶剤であることが好ましい。沸点が150℃以上であると、溶剤の揮発が抑制され導電ペーストの増粘を抑制することができる。
【0044】
本発明の感光性導電ペーストは、その所望の特性を損なわない範囲であれば、分子内に不飽和二重結合を有しない非感光性ポリマー、可塑剤、レベリング剤、界面活性剤、シランカップリング剤、消泡剤、および顔料等の添加剤を含有させることができる。
【0045】
非感光性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド前駆体および既閉環ポリイミドが挙げられる。
【0046】
可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ポリエチレングリコールおよびグリセリンが挙げられる。
【0047】
レベリング剤としては、例えば、特殊ビニル系重合物および特殊アクリル系重合物が挙げられる。
【0048】
シランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、およびビニルトリメトキシシランが挙げられる。
【0049】
本発明の感光性導電ペーストは、例えば、三本ローラーミル、ボールミル若しくは遊星式ボールミル等の分散機または混練機を用いて製造される。
【0050】
本発明の導電パターン付基板の製造方法は、本発明の感光性導電ペーストを基板上に塗布し、乾燥し露光し現像した後に、温度100〜300℃でキュアする。
【0051】
本発明の感光性導電ペーストを基板上に塗布することにより、塗布膜を得る。感光性導電ペーストを塗布する基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムと称す)、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、アラミドフィルム、エポキシ樹脂基板、ポリエーテルイミド樹脂基板、ポリエーテルケトン樹脂基板、ポリサルフォン系樹脂基板、ガラス基板、シリコンウエハー、アルミナ基板、窒化アルミニウム基板、炭化ケイ素基板、加飾層形成基板、および絶縁層形成基板が挙げられる。
【0052】
本発明の感光性導電ペーストを基板に塗布する方法としては、例えば、スピナーを用いた回転塗布、スプレー塗布、ロールコーティング、スクリーン印刷またはブレードコーター、ダイコーター、カレンダーコーター、メニスカスコーター若しくはバーコーターを用いた塗布が挙げられる。
【0053】
得られる塗布膜の膜厚は、塗布の方法または感光性導電ペーストの全固形分濃度若しくは粘度等に応じて適宜決定することができるが、乾燥後の膜厚が0.1〜50μmになることが好ましい。膜厚は、サーフコム(登録商標)1400((株)東京精密製)のような触針式段差計を用いて測定することができる。より具体的には、無作為に選択した3つの位置の膜厚を、触針式段差計(測長:1mm、走査速度:0.3mm/秒)でそれぞれ測定し、それらの平均値を求めることで算出する。
【0054】
塗布膜は乾燥して溶剤を揮発させる。塗布膜を乾燥して溶剤を揮発除去する方法としては、例えば、オーブン、ホットプレート若しくは赤外線等による加熱乾燥および真空乾燥が挙げられる。加熱温度は50〜180℃であることが好ましく、加熱時間は1分〜数時間であることが好ましい。
【0055】
乾燥後の塗布膜は、任意のパターン形成用マスクを介して、フォトリソグラフィー法により露光する。露光の光源としては、水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)またはg線(436nm)が好ましく用いられる。
【0056】
露光後の塗布膜は現像液を用いて現像し、未露光部を溶解除去して、所望のパターンを得る。アルカリ現像を行う場合の現像液としては、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミンまたはヘキサメチレンジアミンの水溶液が挙げられる。
【0057】
これらの水溶液に、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド若しくはγ−ブチロラクトン等の極性溶剤、メタノール、エタノール若しくはイソプロパノール等のアルコール類、乳酸エチル若しくはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン若しくはメチルイソブチルケトン等のケトン類、および界面活性剤を添加することができる。
【0058】
有機現像を行う場合の現像液としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド若しくはヘキサメチルホスホルトリアミド等の極性溶剤又はこれら極性溶剤とメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、キシレン、水、メチルカルビトール、およびエチルカルビトールとの混合溶液が挙げられる。
【0059】
現像の方法としては、例えば、基板を静置または回転させながら現像液を塗布膜面にスプレーする方法、基板を現像液中に浸漬する方法、および、基板を現像液中に浸漬しながら超音波をかける方法が挙げられる。
【0060】
現像により得られた導電パターンは、リンス液によるリンス処理を施すことができる。ここでリンス液としては、例えば、水あるいは水にエタノール若しくはイソプロピルアルコール等のアルコール類又は乳酸エチル若しくはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類を加えた水溶液が挙げられる。
【0061】
得られた導電パターンは、温度100〜300℃でキュアする。キュアの温度は、120〜180℃であることが好ましい。キュア温度が100℃未満では、樹脂成分の体積収縮量が大きくならず、比抵抗が十分に低くならない。キュアの温度が300℃を超えると、耐熱性が低い基板等の材料上に導電パターンを製造することが困難となる。
【0062】
得られた導電パターンをキュアする方法としては、例えば、オーブン、イナートオーブンまたはホットプレートによる加熱乾燥、紫外線ランプ、赤外線ヒーター、ハロゲンヒーター若しくはキセノンフラッシュランプ等の電磁波、または、マイクロ波による加熱乾燥、あるいは、真空乾燥が挙げられる。加熱により、製造される導電パターンの硬度が高まり、他の部材との接触による欠けや剥がれ等を抑制することができ、さらには基板との密着性を向上させることができる。
【0063】
本発明の感光性導電ペーストを用いて得られる導電パターンは、タッチパネル、積層セラミックコンデンサ、積層インダクタ、太陽電池等に好適に用いられるが、中でも、狭額縁化のため微細化が求められるタッチパネル用周囲配線でより好適に用いられる。
【実施例】
【0064】
次に、本発明の感光性導電ペーストについて、実施例により説明する。
各実施例で用いた評価方法は、次のとおりである。
【0065】
<パターニング性の評価方法>
PETフィルム上に、感光性導電ペーストを乾燥後の膜厚が4μmになるように塗布し、100℃の乾燥オーブン内で5分間乾燥した。一定のラインアンドスペース(以下、L/Sと称す)で配列された直線群、すなわち透光パターンを1つのユニットとし、L/Sの値が異なる10種類のユニットをそれぞれ有するフォトマスクを介して、乾燥後の塗布膜を露光及び現像して、L/Sの値が異なる10種類のパターンをそれぞれ得た。その後、得られた10のパターンを30分間、140℃の温度の乾燥オーブン内でいずれもキュアして、L/Sの値が異なる10種類の導電パターンをそれぞれ得た。フォトマスクが有する各ユニットのL/Sの値は、ライン幅L(μm)/間隔S(μm)が、250/250、100/100、50/50、40/40、30/30、25/25、20/20、15/15、10/10、および7/7である。得られた導電パターンを、光学顕微鏡で観察した。パターン間に残渣がなく、かつパターン剥がれのない、L/Sの値が最小の導電パターンを確認した。そのL/Sの値を、現像可能なL/Sの値とした。
【0066】
露光は、露光装置(PEM−6M;ユニオン光学株式会社製)を用いて露光量150mJ/cm(波長365nm換算)で全線露光を行い、現像は0.2質量%のNaCO溶液に基板を30秒浸漬させた後、超純水によるリンス処理を施して行った。
【0067】
<直進性の評価方法>
上記のパターニング性の評価に用いた導電パターンの、L/Sの値が20/20となる透光パターンBについて、図1に示す最も線幅が太い最大線幅1と、最も線幅が細い最小線幅2を、それぞれ無作為に10箇所測定し、それぞれの平均値を求めた。得られた「平均最大線幅」と「平均最小線幅」を用いて、下記の式(1)に基づきパターンから出る突起の長さを算出した。直進性について、突起の長さが2μm未満のものを「A非常に良い」、2μm以上4μm未満のものを「B良い」、4μm以上のものを「C悪い」とし、「A非常に良い」、「B良い」を合格とした。
突起の長さ=(平均最大線幅−平均最小線幅)/2 ・・・ 式(1)。
【0068】
<比抵抗の評価方法>
PETフィルム上に、感光性導電ペーストを乾燥後の膜厚が4μmになるように塗布し、塗布膜を100℃の温度の乾燥オーブン内で5分間乾燥した。図2に示す透光パターンAを有するフォトマスクを介して、乾燥後の塗布膜を露光および現像して、導電パターンを得た。その後、得られた導電パターンを30分間、140℃の温度の乾燥オーブン内でキュアして、比抵抗測定用の導電パターンを得た。得られた導電パターンの線幅は20μmであり、ライン長さは80mmであった。
【0069】
露光および現像の条件は、上記のパターニング性の評価方法と同様とした。得られた比抵抗測定用の導電パターンのそれぞれの端部を抵抗計でつないで抵抗値を測定し、下記の式(2)に基づいて比抵抗を算出した。
比抵抗=抵抗値×膜厚×線幅/ライン長 ・・・ 式(2)。
【0070】
各実施例で用いた材料は、次のとおりである。
[導電性粒子(A)]
体積平均粒子径が1.0μmのAg粒子。
【0071】
[不飽和二重結合を有する化合物(B)]
(合成例1:化合物(B−1))
共重合比率(質量基準):エチルアクリレート(以下、EAと称す)/メタクリル酸2−エチルヘキシル(以下、2−EHMAと称す)/スチレン(以下、Stと称す)/グリシジルメタクリレート(以下、GMAと称す)/アクリル酸(以下、AAと称す)=20/40/20/5/15。
【0072】
窒素雰囲気の反応容器中に、150gのDMEAを仕込み、オイルバスを用いて80℃の温度まで昇温した。これに、20gのEA、40gの2−EHMA、20gのSt、15gのAA、0.8gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリルおよび10gのDMEAからなる混合物を、1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに6時間重合反応を行った。その後、1gのハイドロキノンモノメチルエーテルを添加して、重合反応を停止した。引き続き、5gのGMA、1gのトリエチルベンジルアンモニウムクロライドおよび10gのDMEAからなる混合物を、0.5時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間付加反応を行った。得られた反応溶液をメタノールで精製することにより、未反応不純物を除去し、さらに24時間真空乾燥すること、化合物(B−1)を得た。得られた化合物(B−1)の酸価は、103mgKOH/gであった。
【0073】
(合成例2:化合物(B−2))
窒素雰囲気の反応溶液中に、164gのカルビトールアセテート、287gのEOCN−103S(日本化薬(株)製)、96gのAA、2gの2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールおよび2gのトリフェニルホスフィンを仕込み、98℃の温度で反応液の酸価が0.5mgKOH/g以下になるまで反応させ、エポキシカルボキシレート化合物を得た。引き続き、この反応液に57gのカルビトールアセテート及び137gのテトラヒドロ無水フタル酸を仕込み、95℃の温度で4時間反応させ、化合物(B−2)を得た。得られた化合物(B−2)の酸価は、97mgKOH/gであった。
【0074】
(合成例3:化合物(B−3))
窒素雰囲気の反応容器中に、123gのRE−310S(日本化薬(株)製)、47gのAA、0.3gのハイドロキノンモノメチルエーテルおよび0.5gのトリフェニルホスフィンを仕込み、98℃の温度で反応液の酸価が0.5mgKOH/g以下になるまで反応させ、エポキシカルボキシレート化合物を得た。その後、この反応溶液に252gのカルビトールアセテート、89gの2,2−ビス(ジメチロール)−プロピオン酸、0.4gの2−メチルハイドロキノンおよび47gのスピログリコールを加え、45℃の温度に昇温した。この溶液に162gのトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートを、反応温度が65℃を超えないように徐々に滴下した。滴下終了後、反応温度を80℃に上昇させ、赤外吸収スペクトル測定法により、2250cm−1付近の吸収がなくなるまで6時間反応させ、化合物(B−3)を得た。得られた化合物(B−3)の酸価は、80.0mgKOH/gであった。
【0075】
[光ラジカル重合開始剤(C)]
IRGACURE(登録商標)OXE01(チバジャパン(株)製、オキシム系化合物)(以下、OXE01と称す)
IRGACURE(登録商標)369(チバジャパン(株)製、α−アミノアルキルフェノン系化合物)(以下、IC369と称す)。
【0076】
[熱硬化性樹脂(E)]
エポキシ樹脂(E−1):三菱化学(株)製、JER(登録商標)828(エポキシ当量188)
エポキシ樹脂(E−2):(株)ADEKA製、アデカレジン(登録商標)EPR−4030(エポキシ当量380)
エポキシ樹脂(E−3):三菱化学(株)製、JER(登録商標)1002(エポキシ当量650)。
【0077】
[実施例1]
100mLクリーンボトルに、10.0gの化合物(B−1)、0.50gのOXE01、5.0gのDMEAおよび0.5gの2−ヒドロキシピリジンを入れ、自転−公転真空ミキサー“あわとり錬太郎”ARE−310(登録商標;(株)シンキー製)で混合して、16.0gの樹脂溶液(固形分68.8質量%)を得た。
【0078】
得られた16.0gの樹脂溶液と62.3gのAg粒子を混ぜ合わせ、三本ローラーミル(EXAKT M−50;EXAKT社製)を用いて混練し、78.3gの感光性導電ペーストを得た。表1に感光性導電ペーストの組成を示す。
【0079】
得られた感光性導電ペーストを用いて、導電パターンのパターニング性、直進性および比抵抗をそれぞれ評価した。パターニング性の評価指標となる現像可能なL/Sの値は、15/15であり、良好なパターン加工がされていることが確認された。また、導電パターンの突起の長さは2.7μmであり、直進性は「良い」ことが確認された。さらに、導電パターンの比抵抗は、6.0×10−5Ωcmであった。評価結果を表2に示す。
【0080】
[実施例2〜11]
表1に示す組成の感光性導電ペーストを実施例1と同じ方法で作製し、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0081】
[比較例1〜2]
表1に示す組成の感光性導電ペーストを、実施例1と同じ方法で製造し、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
表2に示されるように、実施例1〜11の感光性導電ペーストでは、いずれもパターニング性、直進性および導電性に優れた導電パターンを製造することができた。一方、比較例1および2の感光性導電ペーストでは、直進性に優れた導電パターンを作製することができず、また、比抵抗が高かった。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の感光性導電ペーストは、タッチパネル用の周囲配線等の導電パターンの製造のために好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1:最大線幅
2:最小線幅
A:透光パターン
B:L/S=20/20のフォトマスクを用いて作製した導電パターン
図1
図2