特許第6566029号(P6566029)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6566029
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】画像処理装置および画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20190819BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20190819BHJP
   G06T 5/00 20060101ALN20190819BHJP
【FI】
   A61B6/00 350N
   A61B6/00 350D
   A61B6/03 360B
   A61B6/03 360J
   !G06T5/00 710
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-520079(P2017-520079)
(86)(22)【出願日】2015年5月22日
(86)【国際出願番号】JP2015064823
(87)【国際公開番号】WO2016189601
(87)【国際公開日】20161201
【審査請求日】2017年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】大野 義典
【審査官】 九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−323926(JP,A)
【文献】 特開2009−050356(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0185733(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像を処理する画像処理装置であって、
当該入力画像のそれぞれの画素において、画素近傍の輝度分布から、輝度値の散らばり度合いを示す指標値を算出する指標値算出手段と、
前記それぞれの画素における指標値において、近傍領域内の指標値の中でピーク有し、かつ指標値が所定の閾値より高い画素を検出画素として検出する画素検出手段と、
前記検出画素で構成される画素領域に基づいて、前記入力画像の画素を複数の分割領域に分類して領域分割する領域分割手段と、
前記分割領域毎にフィルタ変更する処理切り替え手段と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記検出画素と対象となる画素との距離が長くなるのにしたがって前記フィルタの強度を弱く設定して、前記処理切り替え手段は、当該対象となる画素に対して当該設定されたフィルタでの処理を行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像処理装置において、
前記領域分割手段は、前記検出画素からの距離にしたがって複数の領域に領域分割することを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
入力画像を処理する画像処理をコンピュータに実行させるための画像処理プログラムであって、
当該入力画像のそれぞれの画素において、画素近傍の輝度分布から、輝度値の散らばり度合いを示す指標値を算出する指標値算出工程と、
前記それぞれの画素における指標値において、近傍領域内の指標値の中でピーク有し、かつ指標値が所定の閾値より高い画素を検出画素として検出する画素検出工程と、
前記検出画素で構成される画素領域に基づいて、前記入力画像の画素を複数の分割領域に分類して領域分割する領域分割工程と、
前記分割領域毎にフィルタ変更する処理切り替え工程と
を備え、
これらの工程での処理をコンピュータに実行させることを特徴とする画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、入力画像を処理する画像処理装置および画像処理プログラムに係り、特に、画像の鮮鋭度やコントラストを強調する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の方法では、注目領域における画素のばらつき(散らばり)を指標値として、値の大きさに応じて高周波強調処理の強調度を設定している。しかしながら、一般に画素のばらつきは、注目する画素において画素値変動率が同じ場合であっても、画素値が大きいほど変動の絶対値が大きくなり、逆に画素値が小さいほど変動の絶対値が小さく傾向にある。つまり、ばらつき指標値は、モニタの輝度値が大きい場合には大きな値となる傾向にあり、逆に輝度値が小さい場合には小さな値となる傾向にある。
【0003】
そのため、輝度値が大きい場合の特性に合わせた対応関係の設定を行うと、輝度値が小さい場合のばらつきを検出することができず指標値が小さな値となり、対応して設定する強調度が正しく設定されない。また、反対に輝度値が小さい場合の特性に合わせた対応関係の設定を行うと、輝度値が大きい場合のばらつきを過剰に検出して指標値が大きくなってしまい、対応して設定する強調度が強く設定される。その結果、輝度値が小さい場合の特性に合わせた対応関係の設定を行うと、ノイズ成分を増幅させて画質が劣化してしまう問題がある。そこで、検出された代表輝度値に基づいて、被検体部位を推定して、強調度を設定することで上記問題を解決する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5579639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1:特許第5579639号公報のような方法では、部位や条件の数だけ代表輝度値と強調係数との対応関係を予め保有しなければならず、撮影前の事前準備や設定が多く、煩雑であるという問題点がある。さらに、同一の被検体でも、輝度値は撮影環境や撮影条件で変動することがあるので、輝度値から部位を安定して推定することは困難である。そのために、設定値が必ずしも被検体に適した値に設定されるとは限らず、処理精度が安定しないという問題点がある。
【0006】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、撮影環境や撮影条件が変化した場合でも、精度の高い処理を安定して行うことができる画像処理装置および画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、この発明の画像処理装置は、入力画像を処理する画像処理装置であって、当該入力画像のそれぞれの画素において、画素近傍の輝度分布から、輝度値の散らばり度合いを示す指標値を算出する指標値算出手段と、前記それぞれの画素における指標値において、近傍領域内の指標値の中でピーク有し、かつ指標値が所定の閾値より高い画素を検出画素として検出する画素検出手段と、前記検出画素で構成される画素領域に基づいて、前記入力画像の画素を複数の分割領域に分類して領域分割する領域分割手段と分割領域毎にフィルタ変更する処理切り替え手段とを備えることを特徴とするものである。
【0008】
この発明の画像処理装置によれば、入力画像のそれぞれの画素において、画素近傍の輝度分布から、輝度値の散らばり度合いを示す指標値を算出し、指標値自体の散らばり度合いに応じて分割された分割領域毎に画像の強調度(フィルタの特性またはフィルタの強度)を設定するので、輝度値の大きさに応じた調整が不要で、低輝度部から高輝度部まで強調処理を高精度に行うことができる。また、輝度値の大きさに依存した設定がないので、撮影前の細かい設定や調整が不要で、撮影環境や撮影条件が変化した場合でも、精度の高い処理を安定して行うことができる。また、近傍領域内での相対的なピーク値に基づいて画素検出さらには領域分割を行うので、ノイズ等による誤検出や誤作動がない。
【0009】
検出画素と対象となる画素との距離が長くなるのにしたがってフィルタの強度を弱く設定して、当該対象となる画素に対して当該設定されたフィルタでの処理を行うのが好ましい。検出画素が対象となる画素の場合には、フィルタの強度を最も強く設定して、対象となる画素(すなわち検出画素)に対して当該設定されたフィルタでの処理を行う。そして、検出画素と対象となる画素との距離が長くなるのにしたがってフィルタの強度を弱く設定して、当該対象となる画素に対して当該設定されたフィルタでの処理を行う。近傍領域内で散らばり度合いを示す指標値が相対的に大きい画素(すなわち検出画素)では、強く設定されたフィルタでの処理を行うことができる。近傍領域内で検出画素からの距離が長くなるのにしたがって対象となる画素の指標値が相対的に小さくなると考えられる。よって、検出画素からの距離が長く、指標値が相対的に小さい画素では、弱く設定されたフィルタでの処理を行うことができる。
【0010】
領域分割手段は、検出画素からの距離にしたがって複数の領域に領域分割するのが好ましい。上述したように、近傍領域内で検出画素からの距離が長くなるのにしたがって対象となる画素の指標値が相対的に小さくなると考えられる。よって、検出画素からの距離にしたがって複数の領域に領域分割して、分割された分割領域毎にフィルタの特性またはフィルタの強度を変更して、それぞれ異なる処理を行うことで、強調処理を高精度に行うことができる。複数の領域に領域分割するのであれば、領域分割数については特に限定されない。
【0011】
また、この発明に係る画像処理プログラムは、入力画像を処理する画像処理をコンピュータに実行させるための画像処理プログラムであって、当該入力画像のそれぞれの画素において、画素近傍の輝度分布から、輝度値の散らばり度合いを示す指標値を算出する指標値算出工程と、前記それぞれの画素における指標値において、近傍領域内の指標値の中でピーク有し、かつ指標値が所定の閾値より高い画素を検出画素として検出する画素検出工程と、前記検出画素で構成される画素領域に基づいて、前記入力画像の画素を複数の分割領域に分類して領域分割する領域分割工程と分割領域毎にフィルタ変更する処理切り替え工程とを備え、これらの工程での処理をコンピュータに実行させることを特徴とするものである。
【0012】
この発明の画像処理プログラムによれば、指標値算出工程,画素検出工程,領域分割工程および処理切り替え工程での処理をコンピュータに実行させることにより、撮影環境や撮影条件が変化した場合でも、精度の高い処理を安定して行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明に係る画像処理装置によれば、入力画像のそれぞれの画素において、画素近傍の輝度分布から、輝度値の散らばり度合いを示す指標値を算出し、指標値自体の散らばり度合いに応じて分割された分割領域毎に画像の強調度(フィルタの特性またはフィルタの強度)を設定するので、撮影環境や撮影条件が変化した場合でも、精度の高い処理を安定して行うことができる。
また、この発明の画像処理プログラムによれば、指標値算出工程,画素検出工程,領域分割工程および処理切り替え工程での処理をコンピュータに実行させることにより、撮影環境や撮影条件が変化した場合でも、精度の高い処理を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】放射線画像撮影装置のブロック図である。
図2】実施例に係る一連の画像処理の流れを示したフローチャートである。
図3】領域分割部における処理の流れを示したフローチャートである。
図4】領域分割後の画像の模式図である。
【実施例】
【0015】
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。図1は、放射線画像撮影装置のブロック図であり、図2は、実施例に係る一連の画像処理の流れを示したフローチャートであり、図3は、領域分割部における処理の流れを示したフローチャートであり、図4は、領域分割後の画像の模式図である。本実施例では、画像処理の対象として、放射線画像撮影装置で得られた放射線画像である入力画像を例に採って説明する。
【0016】
本実施例に係る放射線画像撮影装置は、図1に示すように、被検体Mを載置した天板1と、被検体Mに向けて放射線(例えばX線)を照射する放射線源2(例えばX線管)と、放射線源2から照射されて被検体Mを透過した放射線を検出するフラットパネル型放射線検出器(以下、「FPD」と略記する)3と、FPD3によって検出された放射線に基づいて画像処理を行う画像処理部4と、画像処理部4によって各種の画像処理された放射線画像を表示する表示部5とを備えている。表示部5はモニタやテレビジョンなどの表示手段で構成されている。本実施例では、放射線画像撮影装置に画像処理部4を組み込んで構成している。画像処理部4は、この発明における画像処理装置に相当する。
【0017】
なお、放射線検出器は、フラットパネル型放射線検出器(FPD)以外の放射線検出器であってもよい。例えば、X線検出器の場合にはイメージ・インテンシファイア(I.I)を用いる。このようにアナログの放射線検出器で検出して得られた放射線画像はアナログ画像であるので、画像処理部4に当該アナログ画像を送り込んでデジタル変換してデジタル画像とすればよい。そして、本実施例では、このデジタル画像を入力画像とする。以下では、数値を10進数で表現しているが、実際には2進数で処理していることに留意されたい。
【0018】
画像処理部4は、中央演算処理装置(CPU)などで構成されている。なお、各種の画像処理を行うためのプログラム等をROM(Read-only Memory)などに代表される記憶媒体に書き込んで記憶し、その記憶媒体からプログラム等を読み出して画像処理部4のCPUが実行することでそのプログラムに応じた画像処理を行う。特に、画像処理部4の後述する指標値算出部41や画素検出部42や領域分割部43や処理切り替え部44は、指標値の算出や検出画素の検出や領域分割や処理の切り替えに関するプログラムを実行することで、そのプログラムに応じた指標値の算出や検出画素の検出や領域分割や処理の切り替えをそれぞれ行う(図2のフローチャートを参照)。指標値の算出や検出画素の検出や領域分割や処理の切り替えに関するプログラムは、この発明における画像処理プログラムに相当する。
【0019】
FPD3で検出して得られた放射線画像を入力画像として画像処理部4に送り込む。画像処理部4は、入力された入力画像のそれぞれの画素において、画素近傍の輝度分布から、輝度値の散らばり度合いを示す指標値を算出する指標値算出部41と、それぞれの画素における指標値において、近傍領域内で相対的にピーク値を有し、かつ指標値が所定の範囲を超える画素を検出画素として検出する画素検出部42と、検出画素で構成される画素領域に基づいて、入力画像中の画素を分類して複数の領域に領域分割する領域分割部43と、分割された分割領域毎にフィルタの特性またはフィルタの強度を変更して、それぞれ異なる処理を行う処理切り替え部44とを備えている。指標値算出部41は、この発明における指標値算出手段に相当し、画素検出部42は、この発明における画素検出手段に相当し、領域分割部43は、この発明における領域分割手段に相当し、処理切り替え部44は、この発明における処理切り替え手段に相当する。
【0020】
FPD3は、指標値算出部41および処理切り替え部44に接続されており、放射線画像(入力画像)がそれぞれに送り込まれる。また、指標値算出部41は画素検出部42に接続されており、指標値が画素検出部42に送り込まれる。また、画素検出部42は領域分割部43に接続されており、検出画素が領域分割部43に送り込まれる。また、領域分割部43は処理切り替え部44に接続されており、分割領域が処理切り替え部44に送り込まれる。処理切り替え部44での強調処理後の画像を表示部5に送り込んで表示する。
【0021】
ここでは、画素値を階調変換した輝度値と、階調変換前の画素値とを同等として取リ扱う。よって、階調変換前の画素値を用いて図2のステップS1〜S4を行ってもよいし、階調変換後の輝度値を用いて図2のステップS1〜S4を行ってもよい。
【0022】
(ステップS1)指標値算出
指標値算出部41は、入力画像のそれぞれの画素において、画素近傍の輝度分布から、輝度値の散らばり度合いを示す指標値を算出する。本実施例では、注目画素を中心とする所定の大きさの矩形範囲(例えば9×9画素の画像)に含まれる画素値データをFPD3から取得し、指標値として標準偏差を算出する。上記の演算を、画像中の全ての画素に関して、同様に算出する。このように、指標値を算出した後に次の画素(例えば隣接する画素)を注目画素として新たに設定し、新たに設定された当該注目画素を中心とする画素近傍の範囲(ここでは矩形範囲)と前回の画素近傍の範囲(矩形範囲)とが重複するように走査する。
【0023】
なお、新たに設定された画素近傍の範囲(矩形範囲)と前回の画素近傍の範囲(矩形範囲)とが重複しないように走査してもよい。端部まで走査して当該端部において指標値を算出する際に、所定の大きさの画素近傍の範囲(矩形範囲)よりも狭くなる場合には、画素を折り返して画素値を貼り付けるなどのようにして画素範囲を仮想的に生成してもよい。また、端部まで走査して当該端部において指標値を算出する際に、後述するように画素近傍の範囲(矩形範囲)の大きさを変更してもよい。
【0024】
なお、画素近傍の範囲(矩形範囲)の大きさについては、画像サイズや被検体サイズに応じて変更しても構わない。さらに、画素近傍の範囲は、上述した矩形範囲に限定されることなく、注目画素を中心とした一定の距離内の領域(例えば円形領域)など他の形状でも構わない。ここで円形と述べたが、画素は正方形のドットであるので、実際には円に限りなく近い多角形であることに留意されたい。
【0025】
また、輝度値(画素値)の散らばり度合いを示す指標値は、上述した標準偏差に限定されず、分散値や平均値からの乖離などのように統計的に輝度値の散らばり度合いを示す指標なら他の数値でも構わない。このステップS1は、この発明における指標値算出工程に相当する。
【0026】
(ステップS2)画素検出
画素検出部42は、それぞれの画素における指標値において、近傍領域内で相対的にピーク値を有し、かつ指標値が所定の範囲を超える画素を検出画素として検出する。本実施例では、上述したように注目画素を中心とする所定の大きさの矩形範囲(例えば9×9画素の画像)に含まれる指標値データを指標値算出部41から取得し、下記(1)式のように指標値データの平均値((1)式の左辺の第1項を参照)と比較して、近傍領域内で大幅に大きな値を示す画素を検出画素として検出する。具体的には、注目画素P(x,y)における指標値をI(x,y)とし、近傍領域Rxyとすると、下記(1)式を満たす画素を検出画素として検出する。
【0027】
【数1】
【0028】
なお、αは、1.0〜1.2程度の定数とする。具体的なαの数値については特に限定されない。検出された検出画素には、領域を識別する識別番号または識別子(記号や文字)を設定する。
【0029】
また、画素を検出する方法は、これに限定されることはない。指標値の標準偏差または分散値を算出し、設定された分布(偏差値など)範囲外の画素を検出する、などとしても構わない。このステップS2は、この発明における画素検出工程に相当する。
【0030】
(ステップS3)領域分割
領域分割部43は、検出画素で構成される画素領域に基づいて、入力画像中の画素を分類して複数の領域に領域分割する。本実施例では、画素検出部42で検出された検出画素の集合,検出画素近傍の画素の集合,その他の画素の集合からなる3つの領域に分割する。それぞれの画素には、領域を識別する識別番号または識別子(記号や文字)を設定する。
【0031】
領域分割部43における処理の流れを、図3のフローチャートで示す。
【0032】
(ステップT1)検出画素?
対象となる画素(すなわち注目画素)において、画素検出部42で検出された検出画素であるか否かを判定する。検出画素でない場合にはステップT2に進む。検出画素である場合にはステップT6に進む。
【0033】
(ステップT2)近接?
注目画素において、検出画素に近接(例えば隣接)する画素であるか否かを判定する。検出画素に近接する画素でない場合にはステップT3に進む。検出画素に近接する画素である場合にはステップT7に進む。このステップT2では、領域の設定は、近接する画素に限定されることはない。例えば、検出画素から一定の範囲内であるか否かなどの判定を行っても構わない。
【0034】
(ステップT3)領域3識別子設定
検出画素に近接する画素でない場合には「領域3」の識別子を設定し、ステップT4に進む。
【0035】
(ステップT4)全ての画素?
全ての画素に関して判定が行われたか否かを調べ、全ての画素に関して判定が行われていない場合にはステップT5に進む。全ての画素に関して判定が行われた場合にはステップT1〜T7を終了する。
【0036】
(ステップT5)次の画素
全ての画素に関して判定が行われていない場合には次の画素(例えば隣接する画素)を注目画素として設定することで当該次の画素に移動し、ステップT1に戻って同様の判定や設定を行う。
【0037】
(ステップT6)領域1識別子設定
検出画素である場合には「領域1」の識別子を設定し、ステップT4に進む。
【0038】
(ステップT7)領域2識別子設定
検出画素に近接する画素である場合には「領域2」の識別子を設定し、ステップT4に進む。
【0039】
このように、ステップT1〜T7を行うことにより入力画像中の画素を分類して複数(ここでは3つ)の領域に領域分割する。領域分割後の画像の一例を図4に示す。図4中の符号1は検出画素の領域(領域1の識別子)を表し、図4中の符号2は検出画素近傍の領域(領域2の識別子)を表し、図4中の符号3はその他の領域(領域3の識別子)を表す。
【0040】
ここでは3つの領域に分割したが、これに限定されることはない。画素検出部42で検出された検出画素からの距離に応じて、さらに細かく分割しても構わない。また、モルフォロジー演算等により、検出結果の領域を膨張させ、膨張後の領域と膨張前の領域との差分をとることにより、検出画素近傍の領域(図4では領域2の識別子)を検出し、領域分割を行っても構わない。ステップT1〜T7(図3を参照)を含んだステップS3(図2を参照)は、この発明における領域分割工程に相当する。
【0041】
(ステップS4)処理切り替え
処理切り替え部44は、分割された分割領域毎にフィルタの特性またはフィルタの強度を変更して、それぞれ異なる処理を行う。フィルタには、一般的に画像の強調処理に使用されるものを用いる。本実施例では、例えば、以下に示すアンシャープマスクフィルタ(unsharp masking filter)(下記(2)式を参照)を利用する。
【0042】
【数2】
【0043】
なお、sはフィルタサイズであり、kは定数である。
【0044】
画素検出部42で検出された検出画素の領域(図4では領域1の識別子),検出画素近傍の領域(図4では領域2の識別子),その他の領域(図4では領域3の識別子)の順番に強調レベルを弱く設定する。例えば、フィルタサイズを固定して、上記kの値を2,1,0.5などの値に設定する。強調レベルが順番になっていれば、もちろん他の値に設定しても構わない。
【0045】
また、定数kの値を固定して、分割領域毎にフィルタサイズを変更しても構わない。この場合、強調レベルが強い領域にフィルタサイズの大きな値を設定する。また、フィルタサイズおよび定数を、ともに変更しても構わない。領域分割数が4以上の場合においても、同様に行う。
【0046】
さらに、強調レベルが中間の領域に対しては、強調レベルを強く設定した処理結果と強調レベルを弱く設定した処理結果との平均値を出力としても構わない。ただし、強調処理は、これに限定されることはなく、画像のコントラストやエッジを強調するフィルタ処理ならば、その他の公知の方法を利用しても構わない。このステップS4は、この発明における処理切り替え工程に相当する。
【0047】
表示部5は、処理切り替え部44から処理後の画像(処理結果データ)を受け取り、モニタなどの表示機器に出力表示する。また、RAM(Random Access Memory)などに代表されるハードディスクやメモリなどの記憶媒体(図示省略)に出力結果を書き込んで記憶する。
【0048】
本実施例に係る画像処理部4(画像処理装置)によれば、入力画像のそれぞれの画素において、画素近傍の輝度分布から、輝度値の散らばり度合いを示す指標値I(x,y)を算出し、指標値自体の散らばり度合いに応じて分割された分割領域毎に画像の強調度(フィルタの特性またはフィルタの強度)を設定するので、輝度値の大きさに応じた調整が不要で、低輝度部から高輝度部まで強調処理を高精度に行うことができる。また、輝度値の大きさに依存した設定がないので、撮影前の細かい設定や調整が不要で、撮影環境や撮影条件が変化した場合でも、精度の高い処理を安定して行うことができる。また、近傍領域内での相対的なピーク値に基づいて画素検出さらには領域分割を行うので、ノイズ等による誤検出や誤作動がない。
【0049】
本実施例のように、検出画素と対象となる画素との距離が長くなるのにしたがってフィルタの強度を弱く設定して、当該対象となる画素に対して当該設定されたフィルタでの処理を行うのが好ましい。検出画素が対象となる画素の場合には、フィルタの強度を最も強く(アンシャープマスクフィルタの場合に、例えばkの値を2の値に)設定して、対象となる画素(すなわち検出画素)に対して当該設定されたフィルタでの処理を行う。そして、検出画素と対象となる画素との距離が長くなるのにしたがってフィルタの強度を弱く(アンシャープマスクフィルタの場合に、例えばkの値を1,0.5の値に)設定して、当該対象となる画素に対して当該設定されたフィルタでの処理を行う。近傍領域内で散らばり度合いを示す指標値が相対的に大きい画素(すなわち検出画素)では、強く設定されたフィルタでの処理を行うことができる。近傍領域内で検出画素からの距離が長くなるのにしたがって対象となる画素の指標値が相対的に小さくなると考えられる。よって、検出画素からの距離が長く、指標値が相対的に小さい画素では、弱く設定されたフィルタでの処理を行うことができる。
【0050】
本実施例のように、領域分割部43は、図4に示すように、検出画素からの距離にしたがって複数(図4では3つ)の領域に領域分割するのが好ましい。上述したように、近傍領域内で検出画素からの距離が長くなるのにしたがって対象となる画素の指標値が相対的に小さくなると考えられる。よって、検出画素からの距離にしたがって複数の領域に領域分割して、分割された分割領域毎にフィルタの特性またはフィルタの強度を変更して、それぞれ異なる処理を行うことで、強調処理を高精度に行うことができる。複数の領域に領域分割するのであれば、領域分割数については特に限定されない。
【0051】
また、本実施例に係る画像処理プログラムによれば、指標値算出工程,画素検出工程,領域分割工程および処理切り替え工程に相当する図2のステップS1〜S4での処理をコンピュータに実行させることにより、強調したい領域のコントラストを最適に強調することができる。
【0052】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0053】
(1)上述した実施例では、画像処理の対象として、放射線画像撮影装置で得られた放射線画像である入力画像を例に採って説明したが、デジタルカメラやデジタルビデオなどに例示されるようにデジタル画像撮影装置で得られたデジタル画像、あるいはアナログ画像をデジタル変換したデジタル画像を入力画像とするなどのように、入力画像については特に限定されない。例えば、核医学診断装置で得られた、放射性薬剤が投与された被検体の核医学データを入力画像としてもよい。
【0054】
(2)上述した実施例では、被検体を人体とした医療用の放射線画像撮影装置に適用したが、被検体が人体以外の基板の内部構造を撮影する非破壊検査装置に適用してもよい。
【0055】
(3)上述した実施例では、放射線画像撮影装置に画像処理部(画像処理装置)を組み込んだが、放射線画像撮影装置を外部装置として、画像処理部(画像処理装置)単体であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上のように、この発明は、放射線画像撮影装置や、デジタルカメラやデジタルビデオなどのデジタル画像撮影装置に適している。
【符号の説明】
【0057】
4 … 画像処理部
41 … 指標値算出部
42 … 画素検出部
43 … 領域分割部
44 … 処理切り替え部
I(x,y) … 指標値
図1
図2
図3
図4