(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6566035
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】分取精製装置
(51)【国際特許分類】
G01N 30/80 20060101AFI20190819BHJP
G01N 30/26 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
G01N30/80 D
G01N30/26 A
G01N30/26 M
G01N30/26 Q
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-536093(P2017-536093)
(86)(22)【出願日】2015年8月24日
(86)【国際出願番号】JP2015073702
(87)【国際公開番号】WO2017033256
(87)【国際公開日】20170302
【審査請求日】2018年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 智之
(72)【発明者】
【氏名】岩田 庸助
【審査官】
磯田 真美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−164049(JP,A)
【文献】
特開2013−238466(JP,A)
【文献】
特開2003−149217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 − 30/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体クロマトグラフから溶出する溶液をトラップカラムに流して該溶液に含まれる目的成分を該トラップカラム中に捕集し、その後に前記液体クロマトグラフの移動相とは別の溶出用溶媒を前記トラップカラムに流して目的成分を該トラップカラムから溶出する分取精製装置において、
a) 前記溶出用溶媒を前記トラップカラムの入口に送給する送液手段と、
b) 前記トラップカラムの出口を廃液流路又は回収流路のいずれかに選択的に接続する流路切替手段と、
c) 前記送液手段により前記トラップカラムに送給される前記溶出用溶媒の量を測定する送液量測定手段と、
d) 前記送液量測定手段によって測定された前記トラップカラムに送給される前記溶出用溶媒の量が所定の初期廃液量に達したタイミングで前記トラップカラムの出口を前記回収流路に接続し、その後、前記送液量測定手段によって測定された前記トラップカラムに送給される前記溶出用溶媒の量が所定の溶液回収量に達したタイミングで前記トラップカラムの出口を前記廃液流路に接続するように前記流路切替手段を制御することによって、先に目的成分を含む前記溶出用溶媒と前記移動相との混濁液を回収し、その後、目的成分を含む前記溶出用溶媒を回収させる流路制御手段と
を備え、
先に回収する目的成分を含む前記溶出用溶媒と前記移動相との混濁液と、その後に回収する目的成分を含む前記溶出用溶媒とからなる溶液であって、前記所定の初期廃液量と前記所定の溶液回収量とで決定される混合比を有する前記移動相と前記溶出用溶媒とを、前記回収流路から蒸発乾固処理を行わずに溶液のままで回収することを特徴とする分取精製装置。
【請求項2】
前記溶出用溶媒の沸点が水よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の分取精製装置。
【請求項3】
前記トラップカラムを複数備え、
各トラップカラムに捕集された目的成分を順次溶出させて個別の回収容器に回収する場合に、前記流路制御手段が、前記所定の初期廃液量と前記所定の溶液回収量とを、各トラップカラムに捕集された目的成分の種類毎に同じ値に設定することにより、各トラップカラムに捕集された目的成分の種類毎に回収された前記移動相と前記溶出用溶媒との混合比を一定にすることを特徴とする請求項1又は2に記載の分取精製装置。
【請求項4】
同一の試料を用いて目的成分を回収する場合に、前記流路制御手段が、前記所定の初期廃液量と前記所定の溶液回収量とを同じ値に設定することで、回収された前記移動相と前記溶出用溶媒との混合比を一定にすることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の分取精製装置。
【請求項5】
液体クロマトグラフから溶出する溶液をトラップカラムに流して該溶液に含まれる目的成分を該トラップカラム中に捕集し、その後に前記液体クロマトグラフの移動相とは別の溶出用溶媒を前記トラップカラムに流して目的成分を該トラップカラムから溶出する分取精製方法において、
a) 前記溶出用溶媒を前記トラップカラムの入口に送給し、
b) 前記トラップカラムに送給される前記溶出用溶媒の量を測定し、
c) 測定された前記トラップカラムに送給される前記溶出用溶媒の量が所定の初期廃液量に達したタイミングで前記トラップカラムの出口を回収流路に接続し、その後、測定された前記トラップカラムに送給される前記溶出用溶媒の量が所定の溶液回収量に達したタイミングで前記トラップカラムの出口を廃液流路に接続することによって、先に目的成分を含む前記溶出用溶媒と前記移動相との混濁液を回収し、その後、目的成分を含む前記溶出用溶媒を回収し、
先に回収された目的成分を含む前記溶出用溶媒と前記移動相との混濁液と、その後に回収される目的成分を含む前記溶出用溶媒とから成る溶液であって、前記所定の初期廃液量と前記所定の溶液回収量とで決定される混合比を有する前記移動相と前記溶出用溶媒とが、前記回収流路から蒸発乾固処理を行わずに溶液のままで回収されることを特徴とする分取精製方法。
【請求項6】
複数の前記トラップカラムに捕集された目的成分を順次溶出させてそれぞれ個別の回収容器に回収する場合に、前記所定の初期廃液量と前記所定の溶液回収量とを、各トラップカラムに捕集された前記目的成分の種類毎に同じ値に設定することにより、各トラップカラムに捕集された目的成分の種類毎に回収された前記移動相と前記溶出用溶媒との混合比を一定にすることを特徴とする請求項5に記載の分取精製方法。
【請求項7】
同一の試料を用いて目的成分を回収する場合に、前記所定の初期廃液量と前記所定の溶液回収量とを同じ値に設定することで、回収された前記移動相と前記溶出用溶媒との混合比を一定にすることを特徴とする請求項5又は6に記載の分取精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液に含まれる1乃至複数の成分を液体クロマトグラフを利用して分離して回収するための分取精製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製薬分野においては、化学合成により得られた各種の化合物をライブラリとして保管したり或いは詳細に分析したりするためのサンプルを収集することを目的として、液体クロマトグラフを利用した分取精製システムが使用されている。こうした分取精製システムとして、特許文献1、特許文献2に記載のシステムが知られている。
【0003】
特許文献1、2に記載の分取精製システムでは、試料溶液中の目的成分(化合物)を液体クロマトグラフで時間的に分離することにより目的成分毎に別々のトラップカラムに導入して一旦捕集する。その後、各トラップカラムに溶媒(溶出用溶媒)を流して該カラム内に捕集されている目的成分を溶出することにより該目的成分を含有する溶液を容器(回収容器)に採取し、各溶液について蒸発・乾固処理を行って溶媒を除去することにより目的成分を固形物として回収する。このように目的成分を固形物として回収することで、保管や輸送を容易に行えるようになる。
【0004】
蒸発・乾固処理は、回収した溶液を加熱したり、真空遠心分離したりする等の方法により行われるのが一般的である。回収容器に採取した溶液には、前記溶出用溶媒と、トラップカラムに捕集する際に使用する移動相が含まれる。移動相には通常、有機溶媒が用いられるが、水や水を主成分とした溶液が使用されることもある。移動相に水分が含まれる場合、水の蒸発に時間がかかるため、蒸発・乾固処理に数時間から1日程度の時間が必要となる。
【0005】
一方で、回収した目的成分を使用する際には、固形化した目的成分を溶媒に溶かすなどして、再び溶液にしてから使用されることがある。このような場合、分取精製システムにおいて蒸発・乾固処理を行わずに、溶液のままで回収し、使用することで目的成分の回収処理に必要な時間を大幅に短縮することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-149217号公報
【特許文献2】国際公開WO2009/044425号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の分取精製システムで目的成分を回収する場合、トラップカラムに溶出用溶媒を送液した際に、溶出用溶媒と移動相がその境界付近で懸濁する。この懸濁液中にも目的成分が溶出しているため、トラップカラムに捕集されている目的成分をできるだけ多く回収するためにはこの懸濁液も含めて回収することになる。従って回収した溶液は溶出用溶媒と移動相が混合している。この回収溶液を用いて、目的成分の分析等の処理を行う場合、移動相と溶出用溶媒の混合比がばらついていると正確な分析が行えなかったり、迅速な処理が行えないという問題がある。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、採取する溶液中に含まれる移動相と溶出用溶媒の混合比を調整することが可能な分取精製装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために成された本発明に係る分取精製装置は、
液体クロマトグラフから溶出する溶液をトラップカラムに流して該溶液に含まれる目的成分を該トラップカラム中に捕集し、その後に前記液体クロマトグラフの移動相とは別の溶出用溶媒を前記トラップカラムに流して目的成分を該トラップカラムから溶出する分取精製装置において、
a) 前記溶出用溶媒を前記トラップカラムの入口に送給する送液手段と、
b) 前記トラップカラムの出口を廃液流路又は回収流路のいずれかに選択的に接続する流路切替手段と、
c) 前記送液手段により前記トラップカラムに送給される前記溶出用溶媒の量を測定する送液量測定手段と、
d) 前記トラップカラムに送給される前記溶出用溶媒の量が所定の初期廃液量に達したタイミングで前記トラップカラムの出口を前記回収流路に接続し、その後、所定の溶液回収量に達したタイミングで前記トラップカラムの出口を前記廃液流路に接続するように前記流路切替手段を制御する流路制御手段と
を備えることを特徴とする。
【0010】
また、上記課題を解決するために成された本発明の別の態様は、
液体クロマトグラフから溶出する溶液をトラップカラムに流して該溶液に含まれる目的成分を該トラップカラム中に捕集し、その後に前記液体クロマトグラフの移動相とは別の溶出用溶媒を前記トラップカラムに流して目的成分を該トラップカラムから溶出する分取精製方法において、
a) 前記溶出用溶媒を前記トラップカラムの入口に送給し、
b) 前記トラップカラムに送給される前記溶出用溶媒の量を測定し、
c) 前記トラップカラムに送給される前記溶出用溶媒の量が所定の初期廃液量に達したタイミングで前記トラップカラムの出口を回収流路に接続し、その後、所定の溶液回収量に達したタイミングで前記トラップカラムの出口を廃液流路に接続することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る分取精製装置では、トラップカラム内の吸着剤に目的成分が捕集され、且つ、トラップカラム内に移動相が溜まっている状態で送液手段により溶出用溶媒が送給され、トラップカラムの入口に送り込まれる。これにより移動相がトラップカラムの出口から押し出される。このとき、トラップカラムから押し出された移動相は初期廃液として廃液流路に流される。流路制御手段は、送液量測定手段により測定された溶出用溶媒の量が所定の初期廃液量に達すると、流路切替手段を制御して、トラップカラムの出口から流出する液を回収流路に流し始める。流路を切り替えた時点でトラップカラム内に未だ移動相又は移動相と溶出用溶媒の混濁液(又は、移動相が水系である場合には懸濁液)が残っていた場合、それらは回収流路の方に送られる。その後、トラップカラム内の移動相又は混濁液が全て排出されると、トラップカラムから排出される溶液が溶出用溶媒に切り替わる。流路制御手段はトラップカラムに送給される溶出用溶媒の量が所定の溶液回収量に達すると、流路切替手段を制御してトラップカラムから排出される溶出用溶媒(後期廃液)を廃液流路に流す。これにより、トラップカラムから回収された所定量(溶液回収量)の中の移動相と溶出用溶媒の比率を所望の値に設定することができる。
【0012】
上記分取精製装置の溶出用溶媒として、アセトニトリル、ジクロロメタン等の水よりも沸点が低い溶媒を好適に用いることができる。このような溶媒を用いることで、回収した溶液を濃縮する場合の処理を短時間で行うことができる。
【0013】
上記分取精製装置は、流路制御手段が、回収した溶液の混合比が全て一定となるように流路切替手段を制御する構成とすることができる。
【0014】
複数の溶液を採取して濃縮する場合には、採取した溶液の混合比によって濃縮処理にかかる時間が異なるため、溶液毎に濃縮の処理を行う必要があった。また、全ての溶液の濃縮を同時に行うためには、各溶液の混合比が一律になるようにそれぞれの溶液を調整した後に濃縮の処理を行う必要があり、手間が掛かっていた。
本発明に係る分取精製装置によれば、回収した溶液の混合比が全て一定であるため、これらの溶液を濃縮する際に、複数の溶液を一律な条件で処理することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る分取精製装置によれば、採取する移動相及び溶出用溶媒の回収量を調整することで、これらの混合比を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係る分取精製装置の概略構成図。
【
図2】トラップカラムからの溶出液中の溶媒及び目的成分の変化を説明するための図。
【
図3】トラップカラム内の溶媒の変化を説明するための模式図。
【
図4】本発明の第二の実施形態に係る分取精製装置の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施する形態について図面を参照しつつ説明する。
【0018】
図1は本発明の第一の実施形態に係る分取精製装置の概略構成図である。分取精製装置は、移動相が収容された移動相容器110と、該移動相を輸送する移動相送液ポンプ120と、移動相中に試料を注入する自動試料注入装置130と、試料中の目的成分を分離する分離カラム140と、分離された目的成分を検出する検出器150と、第1流路切替バルブ160と、第2流路切替バルブ170と、第1カラム切替バルブ180aと、第2カラム切替バルブ180bと、目的成分を捕集するトラップカラム190と、回収/廃液切替バルブ200と、回収流路201と、廃液流路202と、溶出液容器230と、溶出液送液ポンプ240と、回収容器250と、制御部260とからなる。
【0019】
分離カラム140は入口端が自動試料注入装置130、出口端が検出器150にそれぞれ接続される。検出器150の出口端は第1流路切替バルブ160のポートeに接続される。検出器150は吸光度検出器、示差屈折率検出器等の液体クロマトグラフ用の各種検出器を使用することができる。
【0020】
第1及び第2流路切替バルブ160、170は、ポートa〜fを有しており、
図1の実線又は破線で示す流路のいずれかを選択的に接続することで、各ポートをその両隣にあるポートのいずれか一方に連通させることができる。
【0021】
第2流路切替バルブ17
0は、第1カラム切替バルブ180aを経由してトラップカラムと接続されている。第1カラム切替バルブ180aは、第2流路切替バルブ170のポート
cと、トラップカラム190a〜e及びトラップカラムが接続されていないドレイン流路191のいずれか1つを選択的に接続する。第1流路切替バルブ16
0は、第2カラム切替バルブ180bを経由してトラップカラムに接続されており、第2カラム切替バルブ
180bは第1流路切替バルブ160のポートcと、トラップカラム190a〜e及びドレイン流路191を選択的に接続する。また、第1及び第2カラム切替バルブ180a、180bは双方が同期しており、一方が切り替わった場合には他方のバルブも同じトラップカラム190a〜190e又はドレイン流路191に切り替わる。
【0022】
回収/廃液切替バルブ200は、第1流路切替バルブ160を経由してトラップカラムに接続されており、トラップカラム190を回収容器250に溶液を流す回収流路201と、溶液を廃棄するための廃液流路202のいずれか一方の流路に選択的に接続する。
【0023】
CPU等で構成される制御部260は、流路制御部260aと、入力部260bを有し、送液量測定部240a及び回収/廃液切替バルブ200と電気的に接続される。流路制御部260aは、予め設定されたプログラムに従って回収/廃液切替バルブ200の制御を行う。また、入力部260bから初期廃液量、溶液回収量をそれぞれ設定することができ、これらの設定値は、流路制御部260aにおける回収/廃液切替バルブ200の切り替えタイミングの判定に用いられる。
【0024】
溶出液容器230にはトラップカラム190内に捕集される目的成分に応じた溶出液が収容される。回収容器250は複数個の容器が、回収する目的成分の種類に応じて設けられる。
【0025】
溶出液送液ポンプ240は、送液量測定部240aを有する。送液量測定部240aは制御部260に電気的に接続されており、溶出液送液ポンプ240から送給される溶出液の量を測定し、測定データを制御部260に送信する。
【0026】
なお、第2流路切替バルブ170のポートa、b、e、fには図示しない洗浄液や希釈液が収容される容器やそれら送給する送液ポンプが接続されるが、本実施形態ではこれらの説明は省略する。
【0027】
次に分取精製装置の動作について説明する。分取精製装置の動作は、捕集工程と溶出工程に大きく分けることができる。まず、捕集工程について説明する。
【0028】
本実施形態では、移動相として純水、溶出用溶媒としてアセトニトリル(CH
3CN)を用いる。まず、ユーザが入力部260bから初期廃液量と溶液回収量を入力した後、分取精製の処理を開始させる。
初めに移動相容器110に収容された移動相が移動相送液ポンプ120によって一定の流量で送給される。目的成分を含む試料は、自動試料注入装置130によって前記移動相に注入され、分離カラム140に輸送される。分離カラム140において該試料中に含まれる目的成分は時間的に分離され、検出器150において目的成分が検出される。
【0029】
捕集工程では、第1及び第2流路切替バルブ160、170は、
図1の破線で示された流路に設定されている。検出器150を通過した試料は、第1流路切替バルブ160のポートeとポートfを経由し、さらに第2流路切替バルブ170のポートdとポートcを経由して第1カラム切替バルブ180aに流れる。移動相送液ポンプ120が送液を開始した直後は、第1カラム
切替バルブ180aに流れ込む移動相中に目的成分が含まれていないため、第1カラム切替バルブ180aはドレイン流路191に接続される。移動相は、第1流路切替バルブ160のポートcとポートdを経由して回収/廃液切替バルブ200から廃液流路202に流されて廃棄される。
【0030】
検出器150において目的成分が検出された時刻から所定の時間が経過すると、目的成分が第1カラム切替バルブ180aに流れ込む。第1カラム切替バルブ180aは、このタイミングで、接続する流路をドレイン流路191からトラップカラム190aに流路を切り替えることで、トラップカラム190aに目的成分を捕集させる。トラップカラム190aを通過した移動相は、第1流路切替バルブ160のポートcとポートdを経由して回収/廃液切替バルブ200から廃液流路202に流されて廃棄される。第1カラム切替バルブ180aは、検出器150で検出された目的成分が切り替わる毎に、流路を切り替えることで、目的成分の種類毎に別のトラップカラムに捕集する。
【0031】
目的成分が全てトラップカラム190a〜eのいずれかに捕集されると、分取精製装置は移動相送液ポンプ120を停止させる。なお、この時点で、全てのトラップカラム190a〜e内は移動相で満たされた状態となっている。
【0032】
次に、トラップカラム190に捕集された目的成分を回収容器250に回収する動作について説明する。
【0033】
まず、第1流路切替バルブ160が
図1の実線で示す流路に切り替えられる。溶出液送液ポンプ240が溶出液容器230に収容された溶出用溶媒をトラップカラム190に送給する。溶出用溶媒は第1流路切替バルブ160のポートbとポートcを経由し、第2カラム切替バルブ180bからトラップカラム190aの入口に流れ込み、トラップカラム190a内に充填されている移動相を押し出す。トラップカラム190aの出口から排出された移動相は第2流路切替バルブ170のポートcとポートdを経由し、第1流路切替バルブ160のポートfとポートaを経由して、回収/廃液切替バルブ200に流れ込む。回収/廃液切替バルブ200は、捕集工程と同様に廃液流路202に接続されているため、移動相はこの廃液流路202を通って初期廃液として廃棄される。
【0034】
流路制御部260aの動作を
図2、
図3を参照しつつ説明する。流路制御部260aは送液量測定部240aの測定値が初期廃液量v1になるまで、回収/廃液切替バルブ200を廃液流路202に接続する。この期間は
図2及び
図3(a)に示すように、トラップカラム190aから排出される溶媒は移動相である水であるため、目的成分は含まれない。そして、流路制御部260aは、送液量測定部240aの測定値が初期廃液量v1に達すると回収/廃液切替バルブ200を回収流路201に切り替える(
図3(b))。これにより移動相が回収容器250に回収され始める。その後、トラップカラム190aから溶出用溶媒と移動相の混濁液が徐々に排出され始め(
図3(c))、溶出用溶媒の送液量v2において排出される溶媒が溶出用溶媒のみになる(
図3(d))。そして目的成分が全て溶出した後、溶液回収量v3において、流路制御部260aは、回収/廃液切替バルブ200を廃液流路202に切り替え、溶出用溶媒を後期廃液として廃棄し、その後、トラップカラム190aからの目的成分の回収処理を終了する。
【0035】
その後、第1及び第2カラム切替バルブ180a、180bを次のトラップカラム190bに切り替え、回収容器250も新しい容器に切り替えて、次の目的成分の回収を同様な手順で行う。このとき、初期廃液量v1と溶液回収量v3をトラップカラム190aと同じ値とすることで、トラップカラム190aと同じ混合比で溶液
が回収される。他のトラップカラムについても同様な手順で目的成分を回収し、全てのトラップカラムにおける回収が終了すると、分取精製装置の処理が完了する。
【0036】
この後、同一の試料を用いて目的成分を回収する場合、初期廃液量と溶液回収量に上記の処理と同じ値を用いることで、混合比が同じ溶液を回収することが可能である。
【0037】
このように、上記実施形態に係る分取精製装置では、移動相及び溶出液の回収量を一定とすることで、回収した溶液の混合比を、全ての回収容器250において一定に調整することができる。
【0038】
次に、本発明の第二の実施形態に係る分取精製装置について説明する。
図4に第二の実施形態に係る分取精製装置の概略構成図を示す。第二の実施形態では、回収/廃液切替バルブ400の手前に分取用検出器470が設けられていること以外は、第一の実施形態と同一の構成である。また、分取精製装置の動作についても捕集工程は、第一の実施形態と同様であるため説明を省略し、溶出工程における分取用検出器470の動作を中心に説明する。
【0039】
溶出液送液ポンプ440が溶出液容器430に収容された溶出液をトラップカラム390に輸送する。溶出液は第1流路切替バルブ360のポートbとポートcを経由し、第2カラム切替バルブ380bからトラップカラム390aの入口に流れ込み、トラップカラム390a内に充填されている移動相を押し出す。トラップカラム390の出口から排出された移動相は第2流路切替バルブ370のポートcとポートdを経由し、第1流路切替バルブ360のポートfからポートaを経由して、分取用検出器470を通過し、回収/廃液切替バルブ400に流れ込む。回収/廃液切替バルブ400が捕集工程と同様に廃液流路402に接続されているため、移動相はこの廃液流路402を通って廃棄される。
【0040】
流路制御部460aは分取用検出器470で目的成分が検出されるまで、回収/廃液切替バルブ400を廃液流路402に接続する。トラップカラム390aから排出される溶媒に溶出用溶媒と移動相の懸濁液が含まれ始めると、分取用検出器470で目的成分が検出され、検出結果が流路制御部460aに送信される。目的成分が検出されると、流路制御部460aは回収/廃液切替バルブ400を回収流路401に切り替え、回収容器450への溶出液の回収を開始する。
【0041】
その後、溶出用溶媒の送液量v2においてトラップカラム390aから溶出用溶媒が排出され始める。そして目的成分が全て溶出し、分取用検出器470において目的成分が検出されなくなるタイミングで、流路制御部460aは回収/廃液切替バルブ400を廃液流路402に切り替え、トラップカラム390aからの目的成分の回収を終了する。
【0042】
第二の実施形態に係る分取精製装置では、分取用検出器470の測定値に応じて回収/廃液切替バルブ400が切り替えられる。この場合、溶出液送液ポンプの流量と時間を任意に設定することで、移動相、溶出用溶媒及び目的成分の回収量を調整することができる。
【0043】
上記実施形態では、ユーザが初期廃液量及び溶出液回収量をそれぞれ入力したが、回収開始時間と回収終了時間を入力する構成としてもよい。この場合、送液量が一定の溶出液送液ポンプを用いることで、溶媒の混合比をユーザが任意に設定することが可能である。
【0044】
送液量測定部を溶出液送液ポンプ内に設ける構成としたが、分取工程で使用される流路のうち、廃液流路を除くいずれの位置でも設けることができる。また、上記実施例ではトラップカラムの数は5個としたが、5個以上でも5個未満でもよい。多数のトラップカラムを設けることで、多くの目的成分をそれぞれ分取することが可能である。
【符号の説明】
【0045】
110、310…移動相容器
120、320…移動相送液ポンプ
130、330…自動試料注入装置
140、340…分離カラム
150、350…検出器
160、360…第1流路切替バルブ
170、370…第2流路切替バルブ
180a、380a…第1カラム切替バルブ
180b、380b…第2カラム切替バルブ
190、390…トラップカラム
191、391…ドレイン流路
200、400…回収/廃液切替バルブ
201、401…回収流路
202、402…廃液流路
230、430…溶出液容器
240、440…溶出液送液ポンプ
240a、440a…送液量測定部
250、450…回収容器
260、460…制御部
260a、460a…流路制御部
260b、460b…入力部
470…分取用検出器