特許第6566038号(P6566038)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6566038
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】超音波入出力素子
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/02 20060101AFI20190819BHJP
   H04R 1/24 20060101ALI20190819BHJP
   H04R 1/32 20060101ALI20190819BHJP
   H04R 1/40 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
   H04R1/02 330
   H04R1/24 330
   H04R1/32 330
   H04R1/40 330
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-543031(P2017-543031)
(86)(22)【出願日】2016年8月29日
(86)【国際出願番号】JP2016075188
(87)【国際公開番号】WO2017056818
(87)【国際公開日】20170406
【審査請求日】2018年4月10日
(31)【優先権主張番号】特願2015-193964(P2015-193964)
(32)【優先日】2015年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】菅江 一平
(72)【発明者】
【氏名】家田 清一
【審査官】 下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−141451(JP,A)
【文献】 特開2004−253911(JP,A)
【文献】 特開平01−189578(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/090382(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/02
H04R 1/20 − 1/40
G01S 7/52 − 7/64
G01S 15/00 − 15/96
G08B 19/00 − 21/24
G08B 13/00 − 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の周波数の超音波を出力し、出力された超音波に対応する反射波を取得する第1の振動部と、前記第1の周波数とは異なる第2の周波数の超音波を出力し、出力された前記第2の周波数の超音波に対応する反射波を取得する第2の振動部と、の少なくとも2つの振動部と、
前記第1の振動部を駆動する第1の駆動部と、
前記第2の振動部を駆動する第2の駆動部と、
前記第1の振動部及び前記第1の駆動部と、前記第2の振動部及び前記第2の駆動部との夫々が個別に配設されるケースと、
前記ケースの夫々を、互いに緩衝部材を介した状態で収容する1つのハウジングと、を備える超音波入出力素子。
【請求項2】
前記第1の振動部及び前記第2の振動部外形が円形であって、同軸芯上配置され、
前記第1の振動部及び前記第2の振動部は、力される超音波の周波数が高い方の振動部の外形が、出力される超音波の周波数が低い方の振動部の外形よりも小さく構成されている請求項1に記載の超音波入出力素子。
【請求項3】
前記振動部と前記ケースとを収容する前記ハウジングを複数有し、前記複数のハウジングがアレイ状に配置されている請求項1又は2に記載の超音波入出力素子。
【請求項4】
前記振動部から出力される前記超音波が車両の周囲に出力されるように前記ハウジングを介して前記車両に取り付けられる請求項1から3のいずれか一項に記載の超音波入出力素子。
【請求項5】
前記第1の振動部及び前記第2の振動部は、同時駆動が可能である請求項1から4のいずれか一項に記載の超音波入出力素子。
【請求項6】
前記緩衝部材は、前記ケースの夫々と対向する面に、複数の突出部が設けられている請求項1から4のいずれか一項に記載の超音波入出力素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を出力し、出力された超音波に対応する反射波を取得する超音波入出力素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波等の振動波を利用して、車両や家の周囲の物体を検出する技術が利用されてきた。この種の技術として、例えば特許文献1及び2に記載のものがある。
【0003】
特許文献1に記載のセキュリティ装置は、車両前席上部のルームミラーの近傍に、運転席方向と助手席方向とに向けて超音波を放出する超音波送波器を有し、放出された超音波の反射波を超音波受波器で受信して異常検知を行っている。超音波受波器で受信した音声信号は音声出力手段により外部へ出力される。また、特許文献2に記載のスピーカー付き時計は、圧電素子を用いて風防ガラスを振動させて音波を発生させ、時計の利用者が音声を聞くことができるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−265124号公報
【特許文献2】特開2005−221445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のセキュリティ装置は、車両に搭載され、反射波に基づいて車室内への侵入者が検知された場合に、車両ホーンやサイレンから警報を発生させるものである。よって、当該セキュリティ装置では、侵入者となる対象者が車室内へ侵入する前に警告を行うことができない。
【0006】
また、特許文献2に記載の技術は、圧電素子を振動させて音声を出力している。すなわち、当該技術は、圧電素子をスピーカーとして利用しているだけであるので、車両や建物への侵入者の検知には利用することができない。
【0007】
そこで、車両や建物への接近者を検知し、当該接近者に対して報知を行うことが可能な超音波入出力素子が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る超音波入出力素子の特徴構成は、第1の周波数の超音波を出力し、出力された超音波に対応する反射波を取得する第1の振動部と、前記第1の周波数とは異なる第2の周波数の超音波を出力し、出力された前記第2の周波数の超音波に対応する反射波を取得する第2の振動部と、の少なくとも2つの振動部と、前記第1の振動部を駆動する第1の駆動部と、前記第2の振動部を駆動する第2の駆動部と、前記第1の振動部及び前記第1の駆動部と、前記第2の振動部及び前記第2の駆動部との夫々が個別に配設されるケースと、前記ケースの夫々を、互いに緩衝部材を介した状態で収容する1つのハウジングと、を備えている点にある。
【0009】
超音波とは、可聴周波数(20Hz程度〜20kHz程度)よりも高い周波数の振動波である。このような超音波は、空中を伝搬する他の振動波と同様に、周波数が高くなる程減衰率が大きくなって到達距離が短くなる。よって、本構成とすれば、第1の周波数及び第2の周波数のうちの低い周波数の超音波を、高い周波数の超音波よりも遠方まで到達し易くできる。一方、超音波は進行方向に直交する方向に対して、少なからず拡散する。この拡散は周波数が低い程、顕著であり、逆に、周波数が高い程、指向性が良くなる。このため、第1の周波数及び第2の周波数のうちの低い周波数の超音波を出力する第1の振動部及び第2の振動部の一方の方が他方よりも検出範囲が広くなる。そこで、第1の振動部及び第2の振動部の一方で広い範囲に亘って物体が存在しているか否かを検出し、検出範囲の狭い第1の振動部及び第2の振動部の他方で前記広い範囲を走査して、より詳細に物体の位置を特定することが可能となる。また、位置を特定した物体に対して、第1の振動部及び第2の振動部の他方でよりスポット的(局所的に)に音声や警報を出力することもできるし、第1の振動部及び第2の振動部の一方で前記他方よりも広い範囲に亘って音声や警報を出力することもできる。このように、本構成であれば、車両や建物への接近者を検知し、当該接近者に対して報知を行うことが可能な超音波入出力素子を実現できる。
【0010】
また、前記第1の振動部及び前記第2の振動部外形が円形であって、同軸芯上配置され、前記第1の振動部及び前記第2の振動部は、力される超音波の周波数が高い方の振動部の外形が、出力される超音波の周波数が低い方の振動部の外形よりも小さく構成されていると好適である。
【0011】
このような構成とすれば、第1の振動部から物体までの距離と、第2の振動部から物体までの距離とを等しくすることができる。したがって、超音波入出力素子が、当該超音波入出力素子のパン(水平)方向、チルト(垂直)方向、及びロール(軸心)方向に回転した状態で設けられている場合であっても、物体の検出や音声の出力上、このような回転を無視することができる。したがって、超音波入出力素子の取り付けを簡素に行うことが可能となる。
【0012】
また、前記振動部と前記ケースとを収容する前記ハウジングを複数有し、前記複数のハウジングがアレイ状に配置されていると好適である。
【0013】
このような構成とすれば、互いに隣接するハウジングに設けられる同じ周波数の振動部から出力される超音波同士に位相差を持たせることにより互いに干渉させて、超音波の指向性を制御することが可能となる。一方、物体に対して報知する場合には、超音波の直進性を向上させると共に、報知する音や音声の音量を大きくすることが可能となる。
【0014】
また、前記振動部から出力される前記超音波が車両の周囲に出力されるように前記ハウジングを介して前記車両に取り付けられると好適である。
【0015】
このような構成とすれば、車両に接近する人を検出し、当該人に対してスポット的に報知を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施形態に係る超音波入出力装置の斜視図である。
図2】第1の実施形態に係る超音波入出力装置の側方断面図である。
図3】第1の実施形態に係る超音波入出力装置の分解斜視図である。
図4】超音波入出力素子の搭載例を示す図である。
図5】第2の実施形態に係る超音波入出力装置の側方断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る超音波入出力素子は、車両や建物への接近者を検出し、当該接近者に対して報知する機能を備えて構成される。以下、本実施形態の超音波入出力素子1について、説明する。
【0018】
1.第1の実施形態
図1には、本実施形態の超音波入出力素子1の斜視図が示され、図2には超音波入出力素子1の側方断面図が示される。図3には各部に展開した図が示される。図1図3に示されるように、超音波入出力素子1は、振動部10、ケース30、ハウジング50を備えて構成される。
【0019】
振動部10は少なくとも2つが備えられる。本実施形態では、振動部10が第1の振動部11及び第2の振動部21の2つからなるとして説明する。以下では、第1の振動部11と第2の振動部21とを区別する必要がない場合には、振動部10として説明し、夫々を区別する場合には第1の振動部11、第2の振動部21として説明する。
【0020】
第1の振動部11は、第1の周波数の超音波を出力し、出力された超音波に対する反射波を取得する。第1の周波数は、第1の振動部11が出力する超音波の周波数として予め設定されている。この第1の周波数は可聴周波数より大きい周波数、例えば20kHz以上に設定される。第1の振動部11から出力された超音波は所定の方向に向かって空中伝搬する。超音波が出力された範囲に物体が存在する場合には、当該物体により超音波が反射される。この時、反射された超音波は、反射波として第1の振動部11により取得される。このように、第1の振動部11は、超音波の出力と、反射波の取得とで併用されている。したがって、第1の振動部11は、超音波の出力期間と、反射波の待ち期間とを所定時間毎に繰り返すように駆動される。
【0021】
このような第1の振動部11は、圧電素子を用いて構成すると良い。第1の振動部11の駆動は、第1の駆動部12により行われる。第1の駆動部12には一対の制御端子13A,13Bが設けられ、第1の振動部11が通電されることで超音波を出力し、反射波を取得した場合には、反射波により第1の振動部11が振動され、所定の電気信号が一対の制御端子13A,13Bを介して出力される。
【0022】
第2の振動部21は、上述した第1の周波数とは異なる第2の周波数の超音波を出力し、出力された当該第2の周波数の超音波に対する反射波を取得する。「第1の周波数とは異なる第2の周波数」とは、第1の周波数とは別の周波数として予め設定された周波数であり、第2の振動部21が出力する超音波の周波数として予め設定されている。この第2の周波数も可聴周波数より大きい周波数、例えば20kHz以上に設定される。特に、本実施形態では、第2の周波数は、第1の周波数よりも低い周波数に設定される。
【0023】
第2の振動部21から出力された超音波(以下「第2の超音波」とする)は、第1の振動部11から出力された超音波(以下「第1の超音波」とする)と同様に、所定の方向に向かって空中伝搬する。この時、第1の超音波よりも第2の超音波の方が、周波数が低いので波長が長くなり、空中伝搬する間に減衰され難く、第2の超音波は第1の超音波よりも遠くに達することができる。したがって、第2の超音波では、第1の超音波よりも遠くに存在する物体を検知することが可能となる。物体で反射された超音波は、反射波として第2の振動部21により取得される。このように、第2の振動部21も、第1の振動部11と同様に、超音波の出力と、反射波の取得とで併用されている。したがって、第2の振動部21は、超音波の出力期間と、反射波の待ち期間とを所定時間毎に繰り返すように駆動される。
【0024】
このような第2の振動部21も、圧電素子を用いて構成すると良い。第2の振動部21の駆動は、第2の駆動部22により行われる。第2の駆動部22には一対の制御端子23A,23Bが設けられ、第2の振動部21が通電されることで超音波を出力し、反射波を取得した場合には、反射波により第2の振動部21が振動され、所定の電気信号が一対の制御端子23A,23Bを介して出力される。
【0025】
ケース30には、振動部10の夫々が個別に配設される。「個別に配設される」とは、1つのケース30に対して、1つの振動部10が配設されることを意味する。上述したように本実施形態では、振動部10は、第1の振動部11及び第2の振動部21を有する。このため、本実施形態では、2つのケース30が用いられる。理解を容易にするために、この2つのケース30を区別する必要がある場合には、夫々第1のケース31、第2のケース32として説明する。
【0026】
本実施形態では、第1のケース31は、円板状部61と筒状部62とを有する。本実施形態では筒状部62は円筒状に構成され、筒状部62の軸方向一方側が円板状部61で蓋をされた形態となる。円板状部61の天面63(第1のケース31において内側を向く面)には、第1の振動部11が付設される。第1のケース31は、第1の振動部11が振動し易い材料を用いて構成すると良い。
【0027】
また、本実施形態では、第2のケース32は、円板状部41と、当該円板状部41の外周縁から当該円板状部41の軸方向に沿って立設する外側立設部42と、円板状部41の内周縁から円板状部41の軸方向に沿って外側立設部42と同じ方向に立設する内側立設部43と、を有する形状で構成される。したがって、円板状部41と外側立設部42と内側立設部43とにより環状凹部が形成される。円板状部41の天面44(環状凹部の底面)には、第2の振動部21が付設される。このため、第2の振動部21も環状に形成すると良い。第2のケース32は、第2の振動部21が振動し易い材料を用いて構成すると良い。
【0028】
第1のケース31内における第1の振動部11よりも開口側には、第1の振動部11との間に隙間を有して第1の緩衝部材51が設けられる。この第1の緩衝部材51の開口側に、上述した第1の駆動部12が配設される。
【0029】
また、第2のケース32内における第2の振動部21よりも開口側には、第2の振動部21との間に隙間を有して円環状の第2の緩衝部材52が設けられる。この第2の緩衝部材52の開口側に、上述した第2の駆動部22が配設される。
【0030】
ハウジング50には、ケース30の夫々を、互いに緩衝部材40を介した状態で収容する。上述したように本実施形態では、複数のケース30が備えられるが、これら複数のケース30の全てが1つのハウジング50内に収容される。したがって、第1のケース31と第2のケース32とは、互いの間に緩衝部材40が設けられた状態でハウジング50の内部に収容されるので、第1の振動部11及び第2の振動部21のうちの一方の振動が、他方へ伝達されることを防止できる。なお、第1のケース31と第2のケース32とは、夫々の開口部側では固定部材45を介して固定される。
【0031】
本実施形態では、図1に示されるように、振動部10及びケース30は環状に形成される。また、これらの振動部10及びケース30は、夫々の振動部10から出力される超音波の周波数が高いものから順に径方向内側から径方向外側に向けて同軸芯上に配置すると良い。すなわち、径方向内側に第1の振動部11が設けられ、第1の振動部11の径方向外側であって、第1の振動部11と同軸芯上に第2の振動部21が設けられる。
【0032】
このように構成することで、第1の振動部11から物体までの距離と、第2の振動部21から物体までの距離とを等しくすることができる。したがって、超音波入出力素子1が、当該超音波入出力素子1のパン(水平)方向、チルト(垂直)方向、及びロール(軸心)方向に回転した状態で設けられている場合であっても、物体の検出や音声の出力上、このような回転を無視することができる。したがって、超音波入出力素子1の取り付けを容易に行うことが可能となる。
【0033】
本実施形態の超音波入出力素子1は、例えば図4に示されるように、振動部10から出力される超音波が車両2の周囲に出力されるようにハウジング50を介して当該車両2に取り付けられる。図4の例では、超音波入出力素子1は、車両2の前方左側ドアのドアノブ3A及び前方右側ドアのドアノブ3Bに取り付けられる。
【0034】
このように構成された超音波入出力素子1は車両2の周囲への超音波の出力と、反射波の取得とを繰り返し行う。超音波入出力素子1が反射波を取得すると、検出結果として超音波が出力されてから反射波が取得されるまでの時間が、一対の制御端子13A,13B又は一対の制御端子23A,23Bを介して制御部(図示せず)に伝達され、制御部は伝達された前記時間と、超音波及び反射波の伝搬速度とを用いて超音波入出力素子1から物体までの距離を演算する。
【0035】
また、上述したように、第1の超音波の第1の周波数は第2の超音波の第2の周波数よりも高く設定される。このため、第1の超音波は波長が短いので、近距離センシングに利用することができる。一方、第2の超音波は第1の超音波よりも波長が長いので遠距離センシングに利用することができる。また、第1の振動部11と第2の振動部21とを同時に駆動することで、互いの超音波同士を干渉させて、第2の超音波によるセンシングよりも更に遠い距離に亘ってセンシングすることも可能となる。
【0036】
或いは、第2の振動部21で広い範囲に亘って物体が存在しているか否かを検出し、第1の振動部11の検出範囲を機構的に走査して、より詳細に物体の位置を特定することも可能である。
【0037】
制御部は、演算された距離に位置する物体に対して、所定の報知を行う。この報知は、物体が車両2のユーザであるか否かにより使い分けると良い。すなわち、物体が車両2のユーザであることを示すIDタグ等を有する場合には、制御部は物体が車両2のユーザであると判定し、このユーザに対して友好的な報知(例えば「ユーザを迎えるような報知」)を超音波入出力素子1に対して出力するように指示すると良い。この指示により第1の駆動部12又は第2の駆動部22が対応する振動部10に音声信号(例えば「ユーザをお迎えするような音声」)を入力して当該振動部10を振動させ、ユーザがいる位置に対してスポット的に(ビーム状の狭いエリアに)報知を行うと良い(音声を出力すると良い)。
【0038】
一方、物体が車両2のユーザであることを示すIDタグ等を有さない場合には、制御部は物体が車両2に対する不審者であると判定し、この不審者に対して警告となる報知を超音波入出力素子1に対して出力するように指示すると良い。この指示により第1の駆動部12又は第2の駆動部22が対応する振動部10に音声信号(例えば「警告音」)を入力して当該振動部10を振動させ、不審者がいる位置に対してスポット的に報知を行うと良い(警告音を出力すると良い)。
【0039】
この報知は、上述したように第1の振動部11により位置を特定した物体に対して、第1の振動部11でよりスポット的(局所的に)に音声や警報を出力することもできるし、第2の振動部21で広い範囲に亘って音声や警報を出力することもできる。
【0040】
なお、このようなスポット的な報知は、超音波入出力素子1を、限られた範囲にのみ音声を送ることができる公知のパラメトリックスピーカ(超指向性スピーカ)として利用することにより可能である。パラメトリックスピーカは、超音波を搬送波として音声(可聴音)を送出することにより実現できるが、この原理は公知(例えば、http://star.web.nitech.ac.jp/pdf/120324doc.pdf等参照)であるので説明は省略する。
【0041】
このようにして本超音波入出力素子1は、超音波を所定の方向に出力し、車両2に接近する人から反射された反射波が入力されて、当該人を検知することが可能となる。また、人に対して、超音波入出力素子1から超音波を搬送波として音声を出力することで、人に対してスポット的に報知を行うことが可能となる。
【0042】
2.第2の実施形態
次に、第2の実施形態について説明する。上記第1の実施形態において、第1のケース31と第2のケース32とは、互いの間に緩衝部材40が設けられた状態でハウジング50の内部に収容されるとして説明したが、この緩衝部材40の形状が第1の実施形態と第2の実施形態とで異なる。第1の実施形態では、緩衝部材40の内周面及び外周面には径方向に突出する突出部が設けられておらず、緩衝部材40の外周面が内側立設部43に当接し、緩衝部材40の内周面が筒状部62に当接していたが、本実施形態では、緩衝部材40の内周面及び外周面に夫々径方向に突出する突出部が設けられている。その他の構成については、第1の実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0043】
図5には、第2の実施形態に係る超音波入出力素子1の側方断面図が示される。本実施形態の超音波入出力素子1が有する緩衝部材40は、内周面に当該内周面から径方向内側に突出する内向突出部70が環状に設けられ、当該内向突出部70が筒状部62に当接し、外周面に当該外周面から径方向外側に突出する外向突出部80が環状に設けられ、当該外向突出部80が内側立設部43に当接する。内向突出部70は軸方向に沿って複数の突出部を有して構成され、本実施形態では、緩衝部材40における軸方向に沿って第1内向突出部71及び第2内向突出部72を有して構成される。また、外向突出部80は軸方向に沿って複数の突出部を有して構成され、本実施形態では、緩衝部材40における軸方向に沿って第1外向突出部81及び第2外向突出部82を有して構成される。したがって、本実施形態では、第1内向突出部71及び第2内向突出部72が筒状部62に当接し、第1外向突出部81及び第2外向突出部82が内側立設部43に当接する。
【0044】
本実施形態では、このような形状の緩衝部材40を用いて、第1のケース31と第2のケース32とがハウジング50内に保持される。このような内向突出部70及び外向突出部80を有する緩衝部材40を用いることにより、第1の振動部11と第2の振動部21とを個々に駆動する際には互いに振動を伝達し難くすることができ、第1の振動部11と第2の振動部21とを同時に駆動する際には全体で振動させることが可能となる。このように本実施形態の緩衝部材40は、内向突出部70及び外向突出部80により特徴的な構造と機能性とを実現している。なお、本実施形態では、緩衝部材40が内向突出部70及び外向突出部80を有するとして説明したが、緩衝部材40は内向突出部70のみを有するように構成しても良いし、或いは、外向突出部80のみを有するように構成しても良い。すなわち、緩衝部材40は内向突出部70及び外向突出部80の少なくともいずれか一方を有するように構成することが可能である。
【0045】
3.その他の実施形態
上記実施形態では、振動部10が、第1の振動部11及び第2の振動部21からなるとして説明したが、3つ以上の振動部を備えて構成することも可能である。この場合には、ケース30も3つ以上となるが、これらを1つのハウジング50に収容することで、本発明を適用することが可能である。
【0046】
上記実施形態では、振動部10及びケース30は環状に形成され、これらは、夫々の振動部10から出力される超音波の周波数が高いものから順に径方向内側から径方向外側に向けて同軸芯上に配置されているとして説明したが、振動部10及びケース30を環状とは異なる形状で構成することも可能である。また、振動部10及びケース30は環状に形成する場合には、夫々の振動部10から出力される超音波の周波数が低いものから順に径方向内側から径方向外側に向けて同軸芯上に配置することも可能である。
【0047】
上記実施形態では、1つのハウジング50からなる超音波入出力素子1を例に挙げて説明したが、振動部10とケース30とを収容するハウジング50を複数有し、当該複数のハウジング50をアレイ状に配置して(複数のハウジング50を並べて)利用することも可能である。このような構成とすれば、互いに隣接するハウジング50に設けられる同じ周波数の振動部10から出力される超音波同士に位相差を持たせることにより互いに干渉させて、超音波の指向性を制御することが可能となる。一方、物体に対して報知する場合には、直進性を向上させると共に、報知する音や音声の音量を大きくすることが可能となる。
【0048】
上記実施形態では、図4において、超音波入出力素子1が車両2の前方左側ドアのドアノブ3A及び前方右側ドアのドアノブ3Bに取り付けられるとして説明したが、前方左側ドアのドアノブ3A及び前方右側ドアのドアノブ3Bの一方に取り付けるように構成することも可能である。また、左側ドアミラー及び右側ドアミラーの少なくともいずれか一方に取り付けるように構成することも可能であるし、ガーニッシュ(例えばサイドガーニッシュ)等に取り付けることも可能である。更には、車内の所定の位置に取り付けて、ウィンドウ越しに超音波の出力及び反射波の取得を行うように構成することも可能である。
【0049】
上記実施形態では、超音波入出力素子1が車両2に搭載される例を挙げて説明したが、超音波入出力素子1を建物のドアや窓の近傍等にも配置することが可能である。また、物品(例えば美術品等)の監視にも用いることが可能である。
【0050】
上記第2の実施形態では、内向突出部70は軸方向に沿って複数の突出部を有して構成され、外向突出部80は軸方向に沿って複数の突出部を有して構成されるとして説明したが、内向突出部70及び外向突出部80の双方が、夫々突出部を一つずつ有するように構成しても良いし、内向突出部70及び外向突出部80の一方が複数の突出部を有するように構成し、内向突出部70及び外向突出部80の他方が一つの突出部を有するように構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、超音波を出力し、出力された超音波に対応する反射波を取得する超音波入出力素子に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1:超音波入出力素子
2:車両
10:振動部
11:第1の振動部
21:第2の振動部
30:ケース
40:緩衝部材
50:ハウジング
図1
図2
図3
図4
図5