特許第6566154号(P6566154)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6566154電池セル、セルスタック、及びレドックスフロー電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6566154
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】電池セル、セルスタック、及びレドックスフロー電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/18 20060101AFI20190819BHJP
   H01M 8/0258 20160101ALI20190819BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20190819BHJP
   H01M 8/0265 20160101ALI20190819BHJP
【FI】
   H01M8/18
   H01M8/0258
   H01M4/86 M
   H01M8/0265
【請求項の数】16
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2018-567320(P2018-567320)
(86)(22)【出願日】2018年7月12日
(86)【国際出願番号】JP2018026391
【審査請求日】2019年2月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100111567
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 寛
(72)【発明者】
【氏名】桑原 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】寒野 毅
(72)【発明者】
【氏名】澤田 真一
(72)【発明者】
【氏名】本井 見二
【審査官】 太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−091834(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/105155(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/072192(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00 − 8/0297
H01M 8/08 − 8/2495
H01M 4/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極と、前記電極と接触する双極板とを備える電池セルであって、
前記電極及び前記双極板の一方又は双方に、電解液の供給縁側から排出縁側に向かって連続して設けられる一つ以上の流路を備え、
前記流路は、前記供給縁と前記排出縁との間の距離よりも長い延長流路を含み、
前記電極と前記双極板との積層方向からみた平面視で隣り合う二つの前記流路のうち、少なくとも一方は前記延長流路である流路組を一組以上備え、
少なくとも一組の前記流路組に備えられる前記延長流路は、前記供給縁及び前記排出縁の双方に開口する連通溝を含む、
電池セル。
【請求項2】
電極と、前記電極と接触する双極板とを備える電池セルであって、
前記電極及び前記双極板の一方又は双方に、電解液の供給縁側から排出縁側に向かって連続して設けられる一つ以上の流路を備え、
前記流路は、前記供給縁と前記排出縁との間の距離よりも長い延長流路を含み、
前記電極と前記双極板との積層方向からみた平面視で隣り合う二つの前記流路のうち、少なくとも一方は前記延長流路であり、
前記供給縁と前記排出縁との間を前記電解液の流通方向に二等分し、前記供給縁に近い側を上流側とし、前記排出縁に近い側を下流側とし、前記延長流路における上流側の領域及び下流側の領域のうち、一方の領域は他方の領域よりも長い、
電池セル。
【請求項3】
前記一方の領域は、蛇行溝を含む請求項2に記載の電池セル。
【請求項4】
前記一方の領域は、前記電解液の流通方向とは逆方向に電解液を流す部分と、前記逆方向から前記流通方向に戻して電解液を流す部分とを有する戻り溝を含む請求項2又は請求項3に記載の電池セル。
【請求項5】
前記他方の領域は、前記電解液の流通方向に沿って直線状に設けられた直線溝を含む請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の電池セル。
【請求項6】
隣り合う二つの前記流路のうち、少なくとも一方は、
前記供給縁に開口すると共に前記排出縁に閉口する閉塞溝であって、前記下流側の領域を前記一方の領域とする下流側延長流路である、
又は前記排出縁に開口すると共に前記供給縁に閉口する閉塞溝であって、前記上流側の領域を前記一方の領域とする上流側延長流路である請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の電池セル。
【請求項7】
隣り合う二つの前記流路のうち、少なくとも一方は、
前記供給縁及び前記排出縁の双方に開口する連通溝であって、前記下流側の領域を前記一方の領域とする下流側延長流路である、
又は前記供給縁及び前記排出縁の双方に開口する連通溝であって、前記上流側の領域を前記一方の領域とする上流側延長流路である請求項2から請求項のいずれか1項に記載の電池セル。
【請求項8】
前記流路組は、前記連通溝からなる延長流路を含む流路組と、閉塞溝からなる延長流路を含む流路組とを備え、
前記閉塞溝からなる延長流路は、
前記供給縁と前記排出縁との間を前記電解液の流通方向に二等分し、前記供給縁に近い側を上流側とし、前記排出縁に近い側を下流側とし、前記延長流路における上流側の領域及び下流側の領域のうち、一方の領域は他方の領域よりも長く、前記他方の領域は前記電解液の流通方向に沿って直線状に設けられた直線溝を含み
前記供給縁に開口すると共に前記排出縁に閉口する溝であって、前記下流側の領域を前記一方の領域とする下流側延長流路である、
又は前記排出縁に開口すると共に前記供給縁に閉口する溝であって、前記上流側の領域を前記一方の領域とする上流側延長流路である請求項1に記載の電池セル。
【請求項9】
前記供給縁と前記排出縁との間を前記電解液の流通方向に二等分し、前記供給縁に近い側を上流側とし、前記排出縁に近い側を下流側とし、前記延長流路における上流側の領域及び下流側の領域のうち、一方の領域は他方の領域よりも長く、前記他方の領域は前記電解液の流通方向に沿って直線状に設けられた直線溝を含み、
隣り合う二つの前記流路のうち、少なくとも一方は、
記連通溝であって、前記下流側の領域を前記一方の領域とする下流側延長流路である、
又は前記連通溝であって、前記上流側の領域を前記一方の領域とする上流側延長流路である請求項1に記載の電池セル。
【請求項10】
前記下流側延長流路及び前記上流側延長流路の少なくとも一方は、この延長流路の形状に沿った前記電解液の流れ方向に対して垂直な平面で切断した断面において、断面積の変動量が前記断面積の平均に対して±20%以内である請求項6から請求項9のいずれか1項に記載の電池セル。
【請求項11】
前記断面における平均深さをdとし、平均幅をwとし、前記平均幅wに対する前記平均深さdの比をd/wとし、前記一方の領域における前記比d/wが前記他方の領域における前記比d/wよりも小さい請求項10に記載の電池セル。
【請求項12】
前記一方の領域における前記電極の密度が前記他方の領域における前記電極の密度よりも大きい請求項2から請求項11のいずれか1項に記載の電池セル。
【請求項13】
隣り合う二つの前記流路はいずれも、前記延長流路であると共に前記双極板に設けられ、前記電極には設けられていない請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の電池セル。
【請求項14】
前記延長流路の長さが前記供給縁と前記排出縁との間の距離の100%超130%以下である請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の電池セル。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の電池セルを有する、
セルスタック。
【請求項16】
請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の電池セル、又は請求項15に記載のセルスタックを有する、
レドックスフロー電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池セル、セルスタック、及びレドックスフロー電池に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電池の一つに、電解液を電極に供給して電池反応を行うレドックスフロー電池がある。レドックスフロー電池は、代表的には、正極電解液が供給される正極電極と、負極電解液が供給される負極電極と、両電極間に介在される隔膜とを備え、隔膜の表裏を挟む正極電極及び負極電極を更に挟むように一組の双極板が配置されて構成される(特許文献1の図19)。また、代表的には、双極板、正極電極、隔膜、負極電極という順に繰り返し積層されたセルスタックが利用される(特許文献1の図19)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−122230号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の電池セルは、
電極と、前記電極と接触する双極板とを備える電池セルであって、
前記電極及び前記双極板の一方又は双方に、電解液の供給縁側から排出縁側に向かって連続して設けられる一つ以上の流路を備え、
前記流路は、前記供給縁と前記排出縁との間の距離よりも長い延長流路を含み、
前記電極と前記双極板との積層方向からみた平面視で隣り合う二つの前記流路のうち、少なくとも一方は前記延長流路である。
【0005】
本開示のセルスタックは、
上記の本開示の電池セルを有する。
【0006】
本開示のレドックスフロー電池は、
上記の本開示の電池セル、又は上記の本開示のセルスタックを有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】実施形態1の電池セルを模式的に示す平面図である。
図1B】実施形態1の電池セルにおいて、隣り合う下流側延長流路と上流側延長流路とを拡大して示す説明図である。
図2】実施形態2の電池セルを模式的に示す分解斜視図である。
図3】実施形態3の電池セルを模式的に示す平面図である。
図4】実施形態4の電池セルを模式的に示す平面図である。
図5】実施形態5の電池セルを模式的に示す平面図である。
図6】実施形態6の電池セルを模式的に示す分解斜視図である。
図7A】実施形態7の電池セルを模式的に示す断面図である。
図7B】実施形態8の電池セルを模式的に示す断面図である。
図8】実施形態のセルスタックの一例を示す概略構成図である。
図9】実施形態のセルスタックを備えるレドックスフロー電池の概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示が解決しようとする課題]
レドックスフロー電池に対して、電池反応の効率を向上することが望まれている。
【0009】
特許文献1は、双極板の表裏面に電解液を流通する複数の溝を設けることを開示する。詳しくは、特許文献1の図1は、電解液の流通方向に沿って直線状に設けられる溝、より具体的には上下方向に沿った縦溝を設けることを開示する。上記直線状の溝を備えることで電解液の流通性に優れるものの、電池反応の効率を十分に改善しているとはいえない。
【0010】
そこで、本開示は、電池反応の効率を向上できる電池セルを提供することを目的の一つとする。また、本開示は、電池反応の効率を向上できるセルスタック、及びレドックスフロー電池を提供することを別の目的の一つとする。
【0011】
[本開示の効果]
本開示の電池セル、本開示のセルスタック、及び本開示のレドックスフロー電池は、電池反応の効率を向上できる。
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示の一態様に係る電池セルは、
電極と、前記電極と接触する双極板とを備える電池セルであって、
前記電極及び前記双極板の一方又は双方に、電解液の供給縁側から排出縁側に向かって連続して設けられる一つ以上の流路を備え、
前記流路は、前記供給縁と前記排出縁との間の距離よりも長い延長流路を含み、
前記電極と前記双極板との積層方向からみた平面視で隣り合う二つの前記流路のうち、少なくとも一方は前記延長流路である。
【0013】
上記平面視で隣り合う二つの流路の双方が延長流路である場合、以下のいずれかの形態をとり得る。
1.二つの延長流路の双方を電極に有し、双極板に有さない形態。
2.二つの延長流路の双方を双極板に有し、電極に有さない形態。
3.一方の延長流路を電極に有し、他方の延長流路を双極板に有する形態。
また、二つの延長流路の双方を電極及び双極板のそれぞれに有する形態でもよい。
【0014】
本開示の電池セルでは、電極及び双極板の少なくとも一方に設けられる流路が延長流路を含む。延長流路は電極又は双極板の供給縁側から排出縁側に連続する。また、延長流路は、供給縁と排出縁との間の距離を基準とすると、延長流路の長さが上記基準よりも長い。一方、上述の特許文献1に記載の直線状の溝の長さは上記基準よりも短い。そのため、延長流路は、上述の直線状の溝の長さよりも長く、電極と電解液との接触面積を増大できる。このような延長流路を備える本開示の電池セルは、上述の直線状の溝が設けられた双極板を備える従来の電池セルに比較して、電解液を電池反応に良好に利用でき、電池反応に利用されずに排出されることを低減し易い。また、本開示の電池セルは、流路の具備によって電解液の流通性にも優れる。そのため、本開示の電池セルは、未反応の電解液を電極に供給すること及び反応済の電解液を電極から排出することの双方を良好に行える。これらのことから、本開示の電池セルは、レドックスフロー電池(以下、RF電池と呼ぶことがある)に利用されることで、電池反応の効率の向上に寄与する。
【0015】
(2)本開示の電池セルの一例として、
前記供給縁と前記排出縁との間を前記電解液の流通方向に二等分し、前記供給縁に近い側を上流側とし、前記排出縁に近い側を下流側とし、前記延長流路における前記上流側の領域及び前記下流側の領域のうち、前記一方の領域は前記他方の領域よりも長い形態が挙げられる。
【0016】
上記形態において下流側の領域が上流側の領域よりも長い延長流路を備える場合には、上流側の領域では電解液の流通性に優れて、電解液を電極の下流側に拡散し易い。下流側の領域では電極と電解液との接触面積を増大できて、電極が電池反応を良好に行える。一方、上記形態において上流側の領域が下流側の領域よりも長い延長流路を備える場合には、上流側の領域では電極と電解液との接触面積を増大できて、電極が電池反応を良好に行える。下流側の領域では電解液の流通性に優れて、反応済の電解液を電極から排出し易い。従って、いずれの場合も、電池反応の効率の向上に寄与する。また、上記形態は、上流側の領域と下流側の領域とで電解液の接触面積を変更可能な延長流路を備えるため、流路の設計の自由度を高められる。
【0017】
(3)上記(2)の電池セルの一例として、
前記一方の領域は、蛇行溝を含む形態が挙げられる。
【0018】
上記形態は、相対的に長い一方の領域に蛇行溝を含む延長流路を有する。このような形態は、上述の直線状の溝を備える従来の電池セルに比較して、蛇行溝に沿って電解液が流れることで電極のより広い範囲に電解液を拡散し易く、電極の利用率を高められる。従って、上記形態は、電池反応の効率の更なる向上に寄与する。
【0019】
(4)上記(2)又は(3)の電池セルの一例として、
前記一方の領域は、前記電解液の流通方向とは逆方向に前記電解液を流す部分と、前記逆方向から前記流通方向に戻して電解液を流す部分とを有する戻り溝を含む形態が挙げられる。
【0020】
上記形態は、相対的に長い一方の領域に戻り溝を含む延長流路を有する。このような形態は、延長流路内の電解液が流通方向とは逆方向に流れた後、再び流通方向に沿って流れる。そのため、電解液が電池反応に利用されずに電極から排出されることを低減し易い。従って、上記形態は、電池反応の効率の更なる向上に寄与する。
【0021】
(5)上記(2)から(4)のいずれか一つの電池セルの一例として、
前記他方の領域は、前記電解液の流通方向に沿って直線状に設けられた直線溝を含む形態が挙げられる。
【0022】
上記形態は、相対的に短い他方の領域に直線溝を含む延長流路を有する。このような形態は、延長流路の一方の領域では電極と電解液との接触面積を増大できる。直線溝を含む他方の領域では電解液の流通性に優れる。従って、上記形態は、電池反応の効率の一層の向上に寄与する。
【0023】
(6)上記(2)から(5)のいずれか一つの電池セルの一例として、
前記二つの流路のうち、少なくとも一方は、
前記供給縁に開口すると共に前記排出縁に閉口する閉塞溝であって、前記下流側の領域を前記一方の領域とする下流側延長流路である、
又は前記排出縁に開口すると共に前記供給縁に閉口する閉塞溝であって、前記上流側の領域を前記一方の領域とする上流側延長流路である形態が挙げられる。
【0024】
上記形態において下流側延長流路を備える場合には、上流側の領域では電解液の流通性に優れて、電解液を電極の下流側に拡散し易い。下流側の領域では電極と電解液との接触面積を増大できて、電極が電池反応を良好に行える。一方、上記形態において上流側延長流路を備える場合には、上流側の領域では電極と電解液との接触面積を増大できて、電極が電池反応を良好に行える。下流側の領域では電解液の流通性に優れて、反応済の電解液を電極から排出し易い。特に、上記形態では、下流側延長流路や上流側延長流路が閉塞溝である。このことから上記形態は、電解液の供給と排出とを適切に行い易い上に、未反応の電解液が電極に供給されず排出されることを防止し易い。
【0025】
(7)上記の(2)から(6)のいずれか一つの電池セルの一例として、
前記二つの流路のうち、少なくとも一方は、
前記供給縁及び前記排出縁の双方に開口する連通溝であって、前記下流側の領域を前記一方の領域とする下流側延長流路である、
又は前記供給縁及び前記排出縁の双方に開口する連通溝であって、前記上流側の領域を前記一方の領域とする上流側延長流路である形態が挙げられる。
【0026】
上記形態において下流側延長流路を備える場合には、上流側の領域では電解液の流通性に優れて、電解液を電極の下流側に拡散し易い。下流側の領域では電極と電解液との接触面積を増大できて、電極が電池反応を良好に行える。一方、上記形態において上流側延長流路を備える場合には、上流側の領域では電極と電解液との接触面積を増大できて、電極が電池反応を良好に行える。下流側の領域では電解液の流通性に優れて、反応済の電解液を電極から排出し易い。特に、上記形態では、下流側延長流路や上流側延長流路が連通溝である。そのため、上記形態は、電解液中に不純物等が混入されていても不純物等を電極外に排出し易い。このことから上記形態は、不純物等が電極に付着して電極が目詰まりすること等を防止し易い。
【0027】
(8)上記の本開示の電池セルの一例として、
前記供給縁と前記排出縁との間を前記電解液の流通方向に二等分し、前記供給縁に近い側を上流側とし、前記排出縁に近い側を下流側とし、前記延長流路における前記上流側の領域及び前記下流側の領域のうち、前記一方の領域は前記他方の領域よりも長く、前記他方の領域は前記電解液の流通方向に沿って直線状に設けられた直線溝を含み、
前記二つの流路のうち、少なくとも一方は、
前記供給縁に開口すると共に前記排出縁に閉口する閉塞溝であって、前記下流側の領域を前記一方の領域とする下流側延長流路である、
又は前記排出縁に開口すると共に前記供給縁に閉口する閉塞溝であって、前記上流側の領域を前記一方の領域とする上流側延長流路である形態が挙げられる。
【0028】
上記形態において下流側延長流路を備える場合には、相対的に短い他方の領域である上流側の領域に直線溝を含む。そのため、上流側の領域では電解液の流通性に優れて、電解液を電極の下流側に拡散し易い。相対的に長い一方の領域である下流側の領域では電極と電解液との接触面積を増大できて、電極が電池反応を良好に行える。一方、上記形態において上流側延長流路を備える場合には、相対的に長い一方の領域である上流側の領域では電極と電解液との接触面積を増大できて、電極が電池反応を良好に行える。相対的に短い他方の領域である下流側の領域に直線溝を含む。そのため、下流側の領域では、電解液の流通性に優れて、反応済の電解液を電極から排出し易い。従って、いずれの場合も、電池反応の効率の一層の向上に寄与する。特に、上記形態では、下流側延長流路や上流側延長流路が閉塞溝である。このことから上記形態は、電解液の供給と排出とを適切に行い易い上に、未反応の電解液が電極に供給されず排出されることを防止し易い。また、上記形態は、上流側の領域と下流側の領域とで電解液の接触面積を変更可能な延長流路を備えるため、流路の設計の自由度を高められる。
【0029】
(9)上記の本開示の電池セルの一例として、
前記供給縁と前記排出縁との間を前記電解液の流通方向に二等分し、前記供給縁に近い側を上流側とし、前記排出縁に近い側を下流側とし、前記延長流路における前記上流側の領域及び前記下流側の領域のうち、前記一方の領域は前記他方の領域よりも長く、前記他方の領域は前記電解液の流通方向に沿って直線状に設けられた直線溝を含み、
前記二つの流路のうち、少なくとも一方は、
前記供給縁及び前記排出縁の双方に開口する連通溝であって、前記下流側の領域を前記一方の領域とする下流側延長流路である、
又は前記供給縁及び前記排出縁の双方に開口する連通溝であって、前記上流側の領域を前記一方の領域とする上流側延長流路である形態が挙げられる。
【0030】
上記形態において下流側延長流路を備える場合には、相対的に短い他方の領域である上流側の領域に直線溝を含む。そのため、上流側の領域では電解液の流通性に優れて、電解液を電極の下流側に拡散し易い。相対的に長い一方の領域である下流側の領域では電極と電解液との接触面積を増大できて、電極が電池反応を良好に行える。一方、上記形態において上流側延長流路を備える場合には、相対的に長い一方の領域である上流側の領域では電極と電解液との接触面積を増大できて、電極が電池反応を良好に行える。相対的に短い他方の領域である下流側の領域に直線溝を含む。そのため、下流側の領域では、電解液の流通性に優れて、反応済の電解液を電極から排出し易い。従って、いずれの場合も、電池反応の効率の一層の向上に寄与する。特に、上記形態では、下流側延長流路や上流側延長流路が連通溝である。そのため、上記形態は、電解液中に不純物等が混入されていても不純物等を電極外に排出し易い。このことから上記形態は、不純物等が電極に付着して電極が目詰まりすること等を防止し易い。
【0031】
(10)上記の(6)から(9)のいずれか一つの電池セルの一例として、
前記下流側延長流路及び前記上流側延長流路の少なくとも一方は、この延長流路の形状に沿った電解液の流れ方向に対して垂直な平面で切断した断面において、断面積の変動量が前記断面積の平均に対して±20%以内である形態が挙げられる。断面積の平均の測定方法は後述する。
【0032】
上記形態は、断面積の変動量が上述の特定の範囲であるため、電解液の流通量の変動が小さい。このことから上記形態は、上記流通量の変動に起因する電池反応の不均一を低減し易く、電池反応を安定して行える。また、上記形態は、断面積の変動量が上述の特定の範囲を満たす限りにおいて、溝幅や溝深さ等を変更すれば、電解液との接触面積を更に増大できる(後述の(11)参照)。このことから上記形態は、流路の設計の自由度を高められる。
【0033】
(11)上記の(10)の電池セルの一例として、
前記断面における平均深さをdとし、平均幅をwとし、前記平均幅wに対する前記平均深さdの比をd/wとし、前記一方の領域における前記比d/wが前記他方の領域における前記比d/wよりも小さい形態が挙げられる。平均深さ、平均幅の測定方法は後述する。
【0034】
上記形態において相対的に長い一方の領域は、他方の領域に比較して比d/wが小さいため、代表的には溝幅に比較して溝深さが小さいといえる。このような一方の領域は、例えば相対的に浅く広幅な溝で、開口面積が大きい溝を有することが挙げられる。この場合、上記一方の領域では電極と電解液との接触面積を増大できる上に電極に電解液を拡散し易い。このような形態は、電池反応の効率の更なる向上に寄与する。上述の蛇行溝や戻り溝の少なくとも一部において溝幅wに対する溝深さdの比(d/w)が他方の領域の比d/wよりも小さい場合には、電極と電解液との接触面積を大きくし易い。従って、電池反応の効率をより向上させ易い。上記蛇行溝や戻り溝の少なくとも一部における比(d/w)は1/2以下が好ましい。
【0035】
(12)上記の(2)から(11)のいずれか一つの電池セルの一例として、
前記一方の領域における前記電極の密度が前記他方の領域における前記電極の密度よりも大きい形態が挙げられる。
【0036】
上記形態は、延長流路における相対的に長い一方の領域に相対的に高密度な電極が配置される。そのため、上記一方の領域では、電極と電解液との接触面積をより増大でき、電極が電池反応をより良好に行える。従って、上記形態は、電池反応の効率の更なる向上に寄与する。
【0037】
(13)本開示の電池セルの一例として、
前記二つの流路はいずれも、前記延長流路であると共に前記双極板に設けられ、前記電極には設けられていない形態が挙げられる。
【0038】
双極板は電極に比較して溝の成形を精度よく行い易い上に、長期に亘り、溝の形状を維持し易い。上記形態は、隣り合う二つの延長流路が双極板に設けられているため、長期に亘り延長流路を維持して、電池反応の効率の向上に寄与する。
【0039】
(14)本開示の一態様に係るセルスタックは、
上記(1)から(13)のいずれか一つの電池セルを有する。
【0040】
上記のセルスタックは、延長流路を備える電池セルを有するため、RF電池に利用されることで、電池反応の効率の向上に寄与する。
【0041】
(15)本開示の一態様に係るレドックスフロー電池は、
上記(1)から(13)のいずれか一つの電池セル、又は上記(14)のセルスタックを有する。
【0042】
上記のRF電池は、延長流路を備える電池セル又はセルスタックを有するため、電池反応の効率を向上できる。
【0043】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、図面を参照して、本開示の実施形態を具体的に説明する。図中、同一符号は同一名称物を示す。
【0044】
<電池セル>
[実施形態1]
図1A図1Bを参照して実施形態1の電池セル1Aを説明する。
図1A図1Bでは、流路3が分かり易いように強調して示す。この点は、後述する図2図8も同様である。
また、図1Aでは、流路3が分かり易いように電極12と双極板2Aとを重ね合せずに平面的に示す。この点は、後述する図3図5も同様である。
図1Bは、図1Aに示す流路3において、隣り合う下流側延長流路31dと上流側延長流路31uとを拡大して示す説明図である。
【0045】
(概要)
実施形態1の電池セル1Aは、電極12と、電極12と接触する双極板2Aとを備え、RF電池の主要素に利用される。電極12は、未反応の電解液が供給されて電池反応を行い、反応済の電解液を排出する。双極板2Aは、代表的には、電流を流すが電解液を通さない導電性の平板材であり、セルフレーム4の状態でRF電池に利用される。双極板2Aの周縁領域を覆うように枠体40が設けられて、セルフレーム4が構築される。セルフレーム4の詳細は後述する。双極板2Aにおいて枠体40の窓部9から露出される内側領域に電極12が重ね合わされて配置され、電池セル1Aが構築される。
【0046】
実施形態1の電池セル1Aは、電極12及び双極板2Aの一方又は双方に、電解液の供給縁2i側から排出縁2o側に向かって連続して設けられる一つ以上の流路3を備える。流路3は、供給縁2iと排出縁2oとの間の距離Dよりも長い延長流路30を含む。特に、電極12と双極板2Aとの積層方向(図1A,1Bでは紙面直交方向)からみた平面視で隣り合う二つの流路3,3のうち、少なくとも一方は延長流路30である。つまり、実施形態1の電池セル1Aは、隣り合う二つの流路3,3の一方又は双方が延長流路30であるという組を一組以上含む。本例の電池セル1Aは、延長流路30を含む組を複数組含む。また、本例の電池セル1Aでは、上述の隣り合う二つの流路3,3がいずれも延長流路30,30である。上記隣り合う二つの流路3,3は双極板2Aに設けられており、電極12には設けられていない。この場合、上記積層方向からみた平面視で隣り合う二つの流路3,3とは、双極板2Aの厚さ方向からみた平面視で隣り合う二つの流路3,3に相当する。
【0047】
その他、本例では、双極板2Aにおける枠体40の窓部9から露出される内側領域の平面形状を長方形とし、上記内側領域の周縁をつくる四辺のうち、対向する二辺の縁を供給縁2i及び排出縁2oとして説明する。供給縁2iは、電解液が供給される側に配置される縁であり、図1A図1Bでは下端縁とする。排出縁2oは、電解液を電極12外に排出する側に配置される縁であり、図1A図1Bでは上端縁とする。また、本例では、供給縁2i及び排出縁2oに直交する方向(図1A図1Bでは上下方向)であって、図1Aの紙面下から上向きの方向を電解液の流通方向として説明する。ここでの電解液の流通方向とは、電解液の基本的な流れ方向であり、必ずしも流路3の形状に沿った方向ではない。この段落に記載の事項は、後述の図2図6についても同様である。
【0048】
以下、流路3、双極板2A、電極12を順に説明する。セルフレーム4及び電池セル1Aの具体的な構造等については、後段の項目でまとめて説明する。
【0049】
(流路)
流路3は、電極12及び双極板2Aの少なくとも一方(本例では双極板2A)に設けられる溝であることが挙げられる。上記溝は、代表的にはプレス成形等の成形や切削等によって形成されることが挙げられる。
【0050】
流路3は、供給縁2i側から排出縁2o側に向かって連続して設けられていると、電解液の流通性に優れる。また、電極12の広い範囲に電解液を拡散し易い。そのため、電極12は、電池反応を行う領域を大きく確保できて電池反応を良好に行えつつ、反応済の電解液を電極12外に排出し易い。このような流路3の一例として、供給縁2iに開口すると共に排出縁2oに閉口する閉塞溝であって、閉塞端が排出縁2oの近くに設けられた供給側開口路が挙げられる。「排出縁2oの近く」とは、例えば、排出縁2oから距離Dの15%以下の地点までの範囲が挙げられる。供給側開口路は、例えば、後述の下流側延長流路31d、後述の図4に示す直線溝37等が挙げられる。別例として、排出縁2oに開口すると共に供給縁2iに閉口する閉塞溝であって、閉塞端が供給縁2iの近くに設けられた排出側開口路が挙げられる。「供給縁2iの近く」とは、例えば、供給縁2iから距離Dの15%以下の地点までの範囲が挙げられる。排出側開口路は、例えば、後述の上流側延長流路31u、後述の図3に示す直線溝36等が挙げられる。更に、別例として、供給縁2i及び排出縁2oの双方に開口する連通溝が挙げられる。連通溝は、例えば、後述の図2に示す下流側延長流路32d、上流側延長流路32u等が挙げられる。
【0051】
複数の流路3を備える場合には、本例のように上述の供給側開口路と排出側開口路とが交互に並ぶ噛合形態が好ましい。噛合形態は、供給側開口路によって未反応の電解液を電極12に供給し易く、電極12が電池反応を良好に行える。また、噛合形態は、排出側開口路によって反応済の電解液を排出し易い。そのため、電池セル1Aが未反応の電解液の拡散、電池反応、反応済の電解液の排出という三過程を効率よく行えるからである。なお、本例では全ての流路3が供給側開口路と排出側開口路とが交互に並ぶ噛合形態であるが、隣り合って並ぶ供給側開口路を含む形態、隣り合って並ぶ排出側開口路を含む形態等としてもよい。
【0052】
《延長流路》
実施形態1の電池セル1Aは、複数の流路3を備えており、少なくとも一つの流路3の長さは供給縁2iと排出縁2oとの間の距離Dよりも長い。距離Dよりも長い流路3が延長流路30である。本例の電池セル1A(双極板2A)は、供給縁2i及び排出縁2oの延設方向(図1Aでは左右方向)に並列して複数の流路3を備える。また、本例では、全ての流路3が延長流路30である。
【0053】
上述の距離Dとは、流路3が設けられている双極板2Aの供給縁2iと排出縁2oとの間において、電解液の流通方向に沿った最短距離である。本例のように双極板2Aが複数の流路3を備える場合には、双極板2Aにおいて各流路3に対して距離Dをとる。以下、距離Dの具体例を示す。
【0054】
本例のように供給縁2iと排出縁2oとが平行な線分であり、各流路3の両端部が実質的に電解液の流通方向に沿った同一の直線上に位置する場合には、距離Dは、両縁2i,2oを繋ぐ線分であって、両縁2i,2oに直交する線分の長さに相当する。
【0055】
供給縁2iと排出縁2oとが非平行な線分であり、流路3の両端部が実質的に電解液の流通方向に沿った同一の直線上に位置する場合には、この直線の延長線と各縁2i,2oとの交点をとり、両交点を結ぶ線分の長さが距離Dに相当する。
【0056】
供給縁2iと排出縁2oとが平行な線分、又は非平行な線分であり、流路3の両端部が複数の流路3の並列方向にずれて位置する場合(例、後述の図5の戻り溝35を備える延長流路30の両端部参照)には、以下のように距離Dをとる。流路3の各端部について中心軸上の点を通り、電解液の流通方向に沿った直線をそれぞれとる。各直線と各縁2i,2oとの交点をとり、両交点を結ぶ線分の長さのうち、最小距離を距離Dとする。
【0057】
なお、流路3が電極12に設けられている場合には、双極板2Aと同様にして距離Dをとる。
【0058】
流路3の長さとは、双極板2Aに形成された流路3において、流路3の中心軸に沿った長さであって、供給縁2i側の端部から排出縁2o側の端部までの長さである。図1Bでは、流路3の中心軸を点線で仮想的に示す。図1A図1Bに例示するように、一つの流路3が電解液の流通方向に沿って設けられる部分(直線溝34)と、電解液の流通方向に交差するように設けられる部分(後述の蛇行溝33)とを備える場合、この流路3の長さとは、各部分の中心軸に沿った長さの合計長さである。なお、流路3が電極12に設けられている場合も同様である。
【0059】
ここで、双極板2Aの平面形状が長方形状であり、距離Dがこの長方形の一辺の長さに相当し、流路3が電解液の流通方向に沿って直線状に設けられた閉塞溝である場合、この流路3の長さは、代表的には距離Dと同等以下である。通常、この流路3の長さは、距離Dよりも短い。例えば、後述の直線溝36,37の長さは、距離Dよりも短い。延長流路30は、距離Dよりも長いことから直線溝36,37よりも長いといえる。従って、延長流路30を備えると、直線溝36,37のみを備える場合よりも電極12と電解液との接触面積を大きく確保できる。電極12と電解液との接触面積が大きいため、電解液を電池反応により確実に利用できる。従って、電解液が電池反応に十分に使用されずに排出されることを低減し易い。このような延長流路30を備える電池セル1AをRF電池に利用すれば、電池反応の効率を向上できる。
【0060】
延長流路30は、代表的には上述の直線溝36,37よりも長い形状を有する溝を少なくとも一部に含むことが挙げられる。このような溝として、例えば、電解液の流通方向に交差するように蛇行する蛇行溝33が挙げられる。別例として、後述の戻り溝35(図5)が挙げられる。
【0061】
蛇行溝33を含む延長流路30は、蛇行溝33に沿って電解液が流れることで電極12のより広い範囲に電解液を拡散し易く、電極12の利用率を高め易い。また、蛇行溝33を含む延長流路30では、蛇行溝33の振幅が大きいほど、又は山(又は谷)の個数が多いほど、又は一つの延長流路30に対して蛇行溝33が占める割合(以下、占有割合と呼ぶ)が大きいほど、電極12と電解液との接触面積を増大し易い。上記占有割合とは、例えば、一つの延長流路30の開口面積(開口面積の総和)に対して蛇行溝33の開口面積が占める割合、一つの延長流路30の長さに対して蛇行溝33の溝長さ(蛇行長)が占める割合等が挙げられる。一方、蛇行溝33の振幅がある程度小さければ、双極板2Aにおける流路3の個数を多くし易い点で上記接触面積を増大し易い。山の個数がある程度少なかったり、上記占有割合がある程度小さかったりすると、電解液の流通性に優れる。蛇行溝33の振幅、山の個数、上記占有割合等は、上記接触面積と、電解液の流通性とを考慮して選択するとよい。
【0062】
図1Aの振幅、山の個数、上述の占有割合は例示であり、適宜変更できる。図1Aの蛇行溝33の形状はジグザグ形状(三角波状)であるが、正弦波状(曲線波状)、矩形波状、鋸波状(直角三角波状)等に変更できる。
【0063】
本例の延長流路30は、その一部に蛇行溝33を含み、他部に電解液の流通方向に沿って直線状に設けられた直線溝34を含む。蛇行溝33は直線溝36,37に比較して電極12と電解液との接触面積を増大できる。そのため、蛇行溝33の具備により電極12が電池反応を良好に行える。直線溝34は電解液の流通性により優れる。そのため、直線溝34の具備により、未反応の電解液の供給及び電極12への電解液の拡散、反応済の電解液の排出を適切に行い易い。このような延長流路30を備えることで、電池反応の効率をより高め易い。
【0064】
一つの延長流路30における蛇行溝33の配置位置(ここでは電解液の流通方向の位置)を変更すれば、相対的に長い領域を電解液の流通方向の任意の位置に設けられる。具体的には、一つの延長流路30において蛇行溝33は、供給縁2iに近い上流側の位置、排出縁2oに近い下流側の位置、その中間位置のいずれにも設けられる。この点は後述の戻り溝35も同様である。
【0065】
本例の延長流路30は、延長流路30における上流側の領域3U(図1B)及び下流側の領域3D(図1B)において、一方の領域は他方の領域より長いという条件を満たす。延長流路30における上流側、下流側とは以下とする。双極板2Aにおける供給縁2iと排出縁2oとの間を電解液の流通方向に二等分する。延長流路30において上述の二等分した地点(以下の距離Dの二等分線が設けられる地点)よりも供給縁2iに近い側を上流側とし、排出縁2oに近い側を下流側とする。「供給縁2iと排出縁2oとの間を電解液の流通方向に二等分する」とは、両縁2i,2o間の距離Dを二等分することを意味する。図1A図1Bでは、距離Dの二等分線を二点鎖線で仮想的に示す。「一方の領域が他方の領域より長い」とは、以下を意味する。延長流路30において上記二等分線よりも供給縁2i側(上流側、図1A図1Bでは紙面下側)に配置される領域の長さと、上記二等分線よりも排出縁2o側(下流側、図1A図1Bでは紙面上側)に配置される領域の長さとを比較する。この比較によって、一方の領域の長さが他方の領域の長さよりも長いことを意味する。
【0066】
相対的に長い一方の領域が上流側の領域3Uである延長流路30(例、後述の上流側延長流路31u)を備える形態は、上流側の領域3Uでは電極12と電解液との接触面積を増大できて、電極12が電池反応を良好に行える。下流側の領域3Dでは電解液の流通性に優れて、反応済の電解液を電極12から排出し易い。相対的に長い一方の領域が下流側の領域3Dである延長流路30(例、後述の下流側延長流路31d)を備える形態は、上流側の領域3Uでは電解液の流通性に優れて電解液を電極12の下流側に拡散し易い。下流側の領域3Dでは電極12と電解液との接触面積を増大できて、電極12が電池反応を良好に行える。前者の上流側の領域3Uが相対的に長い延長流路30と、後者の下流側の領域3Dが相対的に長い延長流路30との双方を備える形態は、上述の双方の効果が得られて、電池反応の効率をより高め易い。
【0067】
特に、本例のように、上流側の領域3Uが相対的に長い延長流路30と下流側の領域3Dが相対的に長い延長流路30とを隣り合って備える形態が好ましい。この形態は、相対的に長く、電極12と電解液との接触面積を増大できる領域と、相対的に短く、電解液の流通性に優れる領域とが互い違いに隣り合って存在する。そのため、隣り合う延長流路30,30の一方では上流側の領域3Uで電極12が電池反応を良好に行え、他方では下流側の領域3Dで電極12が電池反応を良好に行えて、電解液の利用率を高められるからである。その結果、未反応の電解液の排出をより確実に低減できる。また、隣り合う延長流路30,30の一方では、下流側の領域3Dによって、両延長流路30,30の反応済の電解液を効率よく排出できるからである。
【0068】
本例では、隣り合う二つの流路3,3(延長流路30,30)のうち、一方は、供給縁2iに開口すると共に排出縁2oに閉口する閉塞溝であって、下流側の領域3Dを相対的に長い一方の領域とする下流側延長流路31dである。他方は排出縁2oに開口すると共に供給縁2iに閉口する閉塞溝であって、上流側の領域3Uを相対的に長い一方の領域とする上流側延長流路31uである。各延長流路31d,31uにおいて相対的に長い一方の領域は、蛇行溝33を含み、相対的に短い他方の領域は直線溝34を含む。本例は、延長流路31d,31uが交互に並ぶ噛合形態である。また、本例は、供給縁2i又は排出縁2oの延設方向にみると、蛇行溝33と直線溝34とが交互に並ぶ。
【0069】
《流路の大きさ》
流路3の長さ、溝幅、溝深さ、断面積等は適宜選択できる。本例では、各流路3における溝幅、溝深さ、断面積はその全長に亘って一様である。また、本例では、全ての流路3の長さ、溝幅、溝深さ、断面積が実質的に等しい。更に、本例では、隣り合う流路3,3間の間隔が実質的に等しい。このような双極板2Aは、溝形状が単純になり易く、双極板2Aの製造性に優れる。また、各流路3の溝幅、溝深さ、断面積が全長に亘って一様であっても、延長流路30の長さが距離Dよりも長い。そのため、上述のように電極12と電解液との接触面積を増大でき、電池反応を効率よく行える電池セル1Aを構築できる。なお、断面積を一定にして、溝幅又は溝深さを変えることもできる(後述の実施形態8参照)。
【0070】
上述の溝幅とは、流路3の形状に沿った電解液の流れ方向に対して直交する方向の長さとする。例えば、直線溝34は、直線溝34の長手方向(図1Bでは上下方向)が電解液の流通方向(図1Bでは紙面下から上向きの方向)に平行するように設けられている。この場合、直線溝34の溝幅w34とは、電解液の流通方向に直交する方向(図1Bでは左右方向)に沿った長さである(図1Bにおいて破線円内の拡大図参照)。又は、例えば、蛇行溝33は、蛇行溝33の形成方向が電解液の流通方向に非直交に交差するように設けられている。この場合、蛇行溝33の溝幅w33とは、上記交差方向に直交する方向に沿った長さである(図1Bにおいて破線円内の拡大図参照)。溝深さdとは、流路3の形状に沿った電解液の流れ方向に対して直交する平面で切断した断面において、双極板2Aの厚さ方向に沿った大きさとする。図1Bの破線円の近くに、直線溝34、蛇行溝33のそれぞれについて、上記断面における溝深さdを例示する。なお、流路3が電極12に設けられている場合も同様である。
【0071】
延長流路30の長さは、例えば距離Dの100%超130%以下、更に100%超110%以下が挙げられる。
【0072】
本例では、上流側延長流路31uの下流側の領域3D、下流側延長流路31dの上流側の領域3Uはいずれも直線溝34で形成されており、両領域3D,3Uの長さはいずれも等しく、(1/2)×Dである。また、本例では、上流側延長流路31uの上流側の領域3U、下流側延長流路31dの下流側の領域3Dはいずれも蛇行溝33を含み、両領域3U,3Dの長さはいずれも等しく、(1/2)×D超である。なお、本例では、上流側延長流路31uの上流側の領域3Uの一部、及び下流側延長流路31dの下流側の領域3Dの一部に直線溝34を含むが、蛇行溝33のみとすることもできる。
【0073】
《流路の断面形状》
流路3の断面形状は適宜選択できる。例えば、断面形状は、長方形状や台形状、半円状、V字状、U字状等が挙げられる。断面形状とは、流路3の形状に沿った電解液の流れ方向に対して直交する平面で切断したときの形状である。
【0074】
《その他の流路》
その他、双極板2Aは、供給縁2iに沿って設けられる整流溝(図示せず)及び排出縁2oに沿って設けられる整流溝(図示せず)の少なくとも一方を備えてもよい。また、上述の閉塞溝は上記整流溝に開口する溝としてもよい。供給縁2iに沿った整流溝を備えると、供給縁2iの延設方向に沿って電解液を導入して、各流路3に均一的に電解液を導入し易い。排出縁2oに沿った整流溝を備えると、この整流溝に各流路3から反応済の電解液を集約できるため、各流路3から均一的に電解液を排出し易い。双極板2Aに代えて、枠体40に整流溝を備えることもできる。
【0075】
(双極板)
本例の双極板2Aは、上述のように枠体40の窓部9から露出される内側領域に、複数の流路3と、各流路3を仕切る畝領域とを備える。流路3については上述の通りである。なお、流路3は上記内側領域にあればよいが、流路3の一部を枠体40に覆われる周縁領域にも備えてもよい。
【0076】
畝領域は、電極12に接して配置されて電極12との間で電子の受け渡しを行うことに寄与する。また、畝領域は、電極12において主として電池反応を行う領域を確保することに寄与する。更に、畝領域は、隣り合う流路3,3を仕切り、電解液の流通性を確保すること等にも寄与する。なお、電極12において双極板2Aの流路3に対向する領域は、主として電解液の供給・拡散機能や電解液の排出機能を有しつつ電池反応を行う。電極12において畝領域に対向する領域は、主として電池反応を行う機能を有する。
【0077】
畝領域は、流路3の形状に応じた形状を有し、特に限定されない。双極板2Aの平面面積における流路3の開口面積は適宜選択できる。例えば、上記流路3の開口面積は、双極板2Aの平面面積を100%として5%以上50%以下であると、電極12における主として電池反応を行う領域を適切に確保して電池反応を良好に行いつつ、電解液の流通性にも優れる。
【0078】
(流路の配置)
本例のように双極板2Aに流路3を備える場合には、以下のいずれかの形態が挙げられる。なお、電極12に流路3を備える場合には、電極12において双極板2Aに対向する面に延長流路30を含む流路3を備えるとよい。
(a)双極板2Aの表裏面の一面に延長流路30を含む流路3を備え、他面に流路3を備えていない形態。
(b1)双極板2Aの表裏面の一面に延長流路30を含む流路3を備え、他面に流路3を備えるものの、延長流路30を含まない形態。
(b2)双極板2Aの表裏の両面に延長流路30を含む流路3を備える形態。
【0079】
上述のいずれの形態も、双極板2Aにおいて延長流路30を有する面に電極12を配置して、単セル電池又は多セル電池に利用するとよい。
【0080】
(構成材料)
双極板2Aの構成材料は、例えば有機複合材、いわゆる導電性プラスチック等が挙げられる。有機複合材は、例えば、炭素系材料や金属等の導電性材料と熱可塑性樹脂等の有機材とを含むものが挙げられる。双極板2Aは、例えば公知の方法によって板状に成形すると共に、流路3を成形することが挙げられる。導電性プラスチックの成形方法は、例えば射出成型、プレス成型、真空成型等が挙げられる。平坦な平板材に切削加工等を行って、流路3を形成することもできる。
【0081】
(電極)
電極12は、正極電解液や負極電解液に含まれる活物質(イオン)が電池反応を行う反応場である。電極12は、代表的には炭素材料の繊維集合体が挙げられる。炭素材料の繊維集合体は、例えば、カーボンフェルト、カーボンペーパー、カーボンクロス等が挙げられる。その他、公知の電極を利用してもよい。本例の電極12は、流路3を有していないものを利用している。電極12の大きさ(平面積、厚さ等)は、枠体40の窓部9の大きさに応じて、適宜選択できる。
【0082】
(主要な効果)
実施形態1の電池セル1Aは、供給縁2iと排出縁2oとの間の距離Dよりも長い延長流路30を備えており、延長流路30は特許文献1に記載の直線状の溝に比較して長いことで、電極12と電解液との接触面積を増大できる。そのため、実施形態1の電池セル1Aは、上記直線状の溝が設けられた双極板を備える従来の電池セルに比較して、電解液を電池反応に効率よく利用でき、電解液が電池反応に利用されずに排出されることを低減し易い。かつ、実施形態1の電池セル1Aは、延長流路30を含む流路3を備えることで、電解液の流通性にも優れるため、未反応の電解液の供給及び反応済の電解液の排出の双方を良好に行える。このような実施形態1の電池セル1Aは、RF電池に利用されることで、電池反応の効率の向上に寄与する。
【0083】
更に、本例の電池セル1Aは、以下のことから、電池反応の効率の更なる向上に寄与する。
【0084】
(A)延長流路30を含む流路3を双極板2Aに備えるため、上記流路3を電極12に備える場合に比較して、溝の成形を精度よく行い易い上に、長期に亘り、溝の形状を維持し易い。従って、長期に亘り延長流路30を維持できる。
【0085】
(B)延長流路30における上流側の領域3Uと下流側の領域3Dとにおいて、一方の領域は他方の領域よりも長い。そのため、本例では、溝幅、溝深さ、断面積が延長流路30の全長に亘って一様であるものの、相対的に長い一方の領域では、電極12と電解液との接触面積を増大できる。
【0086】
(C)下流側延長流路31dと上流側延長流路31uとの双方を備える。また、両延長流路31d,31uを隣り合って備える。そのため、上流側延長流路31uの上流側の領域3Uで電池反応を良好に行える。隣り合う下流側延長流路31dの下流側の領域3Dでも電池反応を良好に行えて、電解液の利用率を高められる。従って、未反応の電解液の排出をより確実に低減できる。また、下流側延長流路31dの下流側の領域3Dからの反応済の電解液を、隣り合う上流側延長流路31uの下流側の領域3Dによって効率よく排出できる。
【0087】
(D)両延長流路31d,31uが閉塞溝である。そのため、電解液の供給と排出とを適切に行い易い上に、未反応の電解液が電極12に供給されず排出されることを防止し易い。
【0088】
(E)延長流路30が蛇行溝33を含む。そのため、直線溝36,37に比較して、電極12のより広い範囲に電解液を拡散し易く、電極12の利用率を高められる。
【0089】
(F)延長流路30が蛇行溝33を含むと共に、直線溝34を含む。そのため、蛇行溝33を含む領域では電極12と電解液との接触面積を増大でき、直線溝34を含む領域では電解液の流通性に優れる。
【0090】
その他、本例の電池セル1Aは、下流側延長流路31dと上流側延長流路31uとにおいて、上流側の領域3Uと下流側の領域3Dとで溝の長さを調整できる。上記溝の長さを調整することで、電極12と電解液との接触面積を容易に変更可能であり、流路3の設計の自由度が高い。
【0091】
[その他の実施形態]
以下、図2図7A図7Bを参照して、実施形態2〜8の電池セル1B〜1Hを説明する。以下の説明では、代表的に双極板2、電極12と呼ぶことがある。
図2図6は、流路3が分かり易いように電極12と双極板2とを重ね合せずに離して示す分解斜視図である。
図7A図7Bは、電池セル1G,1Hを、電極12と双極板2とを重ね合せた状態で、その積層方向に平行な平面(図2に示す切断線(VII)−(VII)参照)で切断した断面を示す。また、図7A図7Bは、双極板2の一面側のみを示し、他面側は省略する。なお、他面側の形状は一面側と同様な形状としてもよいし、異ならせてもよい。
【0092】
実施形態2〜8の電池セル1B〜1Hの基本的構成は実施形態1の電池セル1Aと同様であり、電極12と、電極12と接触する双極板2とを備え、電極12及び双極板2の一方又は双方に延長流路30を含む流路3を備える。実施形態2〜8はいずれも、実施形態1と同様に、双極板2に、供給縁2i及び排出縁2oの延設方向に並列して複数の流路3を備える。但し、実施形態2〜8は流路3の形状や配置状態等が実施形態1とは異なる。以下、実施形態2〜8において、実施形態1との相違点、又は実施形態2等との相違点を中心に説明し、実施形態1等と重複する構成及び効果等は詳細な説明を省略する。
【0093】
[実施形態2]
図2に示す実施形態2の電池セル1Bは、実施形態1と同様に、隣り合う流路3,3が延長流路30,30である。全ての流路3が双極板2Bに設けられ、電極12に設けられていない。また、この電池セル1Bは、実施形態1と同様に、隣り合う延長流路30,30のうち、一方は、下流側の領域3Dが相対的に長い下流側延長流路32dであり、他方は、上流側の領域3Uが相対的に長い上流側延長流路32uである。更に、電池セル1Bは、実施形態1と同様に、一つの延長流路30に備えられる両領域3D,3Uのうち、一方の領域は蛇行溝33を含み、他方の領域は直線溝34を含む。但し、各延長流路32d,32uは、閉塞溝ではなく、供給縁2i及び排出縁2oの双方に開口する連通溝である。下流側延長流路32dでは、上流側に配置される直線溝34の端部が供給縁2iに開口し、下流側に配置される蛇行溝33の端部が排出縁2oに開口する。上流側延長流路32uでは、上流側に配置される蛇行溝33の端部が供給縁2iに開口し、下流側に配置される直線溝34の端部が排出縁2oに開口する。
【0094】
実施形態2の電池セル1Bは、実施形態1と同様に、延長流路30を備えるため、RF電池に利用されることで、電池反応の効率の向上に寄与する。本例の電池セル1Bは、下流側延長流路32dと上流側延長流路32uとの双方を備える。また、両延長流路32d,32uを隣り合って備える。これらのことからも、実施形態1と同様に電池反応の効率の更なる向上に寄与する。
【0095】
特に、実施形態2の電池セル1Bでは、下流側延長流路32d及び上流側延長流路32uのいずれも連通溝である。そのため、供給縁2iから電解液を導入すると、下流側延長流路32dでは上流側の領域3Uが電解液の流通性に優れることから、電極12において下流側の領域3Dに配置される箇所に電解液を拡散し易く、電極12が電池反応を良好に行える。上流側延長流路32uでは上流側の領域3Uで電極12が電池反応を良好に行え、下流側の領域3Dでは反応済の電解液を排出し易い。また、各延長流路32d,32uは、連通溝であるものの、各延長流路32d,32uにおける相対的に長い領域(ここでは主として蛇行溝33)は電解液の流通に対してある程度の抵抗になる。そのため、各延長流路32d,32uは、閉塞端を有さないものの、上述の供給側開口路や排出側開口路と同様に機能すると期待される。そのため、電池セル1Bは未反応の電解液の拡散、電池反応、反応済の電解液の排出という三過程を効率よく行えると期待される。更に、各延長流路32d,32uが連通溝であれば、電解液中に不純物等が混入されていても不純物等を電極12外に排出し易い。そのため、電池セル1Bは、不純物等が電極12に付着して電極12が目詰まりすること等を防止し易い。
【0096】
[実施形態3]
図3に示す実施形態3の電池セル1Cは、上述の実施形態2と同様に、全ての流路3が双極板2Cに設けられ、電極12に設けられていない。また、この電池セル1Cは、実施形態2と同様に、相対的に長い下流側の領域3Dに蛇行溝33を含み、上流側の領域3Uに直線溝34を含む下流側延長流路32dを備え、下流側延長流路32dが連通溝である。但し、実施形態3の電池セル1Cは、上流側延長流路32uを備えていない。電池セル1Cは、隣り合う流路3,3のうち、一方が延長流路30(ここでは下流側延長流路32d)であり、他方が電解液の流通方向に沿って直線状に設けられた直線溝36である。本例の直線溝36は、一端部が排出縁2oに開口すると共に他端部が供給縁2iに閉口する閉塞溝である。直線溝36の他端部は供給縁2iの近くに配置されている。
【0097】
実施形態3の電池セル1Cは、実施形態1と同様に、延長流路30を備えるため、RF電池に利用されることで、電池反応の効率の向上に寄与する。特に、実施形態3の電池セル1Cでは、延長流路30(本例では下流側延長流路32d)と直線溝36とが隣り合う。そのため、下流側延長流路32dの下流側の領域3Dでは電極12が電池反応を良好に行えると共に、反応済の電解液を隣り合う直線溝36によって排出し易い。また、下流側延長流路32dは、実施形態2と同様に連通溝であるものの、上述のように供給側開口路と同様に機能し、隣り合う直線溝36は排出側開口路として機能すると期待される。このような電池セル1Cは未反応の電解液の拡散、電池反応、反応済の電解液の排出という三過程を効率よく行えると期待される。更に、下流側延長流路32dが連通溝であれば、上述のように不純物等の付着による電極12の目詰まり等を防止し易い。
【0098】
[実施形態4]
図4に示す実施形態4の電池セル1Dは、実施形態3に類似する。詳しくは、電池セル1Dは、双極板2Dに流路3が設けられ、隣り合う流路3,3のうち、一方が蛇行溝33と直線溝34とを含む延長流路30であり、他方が電解液の流通方向に沿って直線状に設けられた直線溝37である。但し、実施形態4の電池セル1Dでは、延長流路30が下流側延長流路32d(図3)ではなく、相対的に長い一方の領域が上流側の領域3Uである上流側延長流路32uである。直線溝37は、その一端部が供給縁2iに開口すると共に他端部が排出縁2oに閉口する閉塞溝である。いわば、電池セル1Dは、実施形態3の電池セル1Cに備えられる双極板2Cに対して、供給縁2iと排出縁2oとを逆にした形態である。なお、本例の直線溝37の他端部は、排出縁2oの近くに配置されている。
【0099】
実施形態4の電池セル1Dは、実施形態1と同様に、延長流路30を備えるため、RF電池に利用されることで、電池反応の効率の向上に寄与する。特に、実施形態4の電池セル1Dでは、延長流路30(本例では上流側延長流路32u)と直線溝37とが隣り合う。そのため、上流側延長流路32uの上流側の領域3Uでは電極12が電池反応を良好に行える。また、上流側延長流路32uの下流側の領域3Dに加えて、隣り合う直線溝37からも反応済の電解液を排出できる。更に、上流側延長流路32uは、実施形態2と同様に連通溝であるものの、上述のように排出側開口路と同様に機能し、隣り合う直線溝37は供給側開口路として機能すると期待される。このような電池セル1Dは未反応の電解液の拡散、電池反応、反応済の電解液の排出という三過程を効率よく行えると期待される。更に、上流側延長流路32uが連通溝であれば、上述のように不純物等の付着による電極12の目詰まり等を防止し易い。
【0100】
[実施形態5]
図5に示す実施形態5の電池セル1Eは、実施形態3に類似する。詳しくは、電池セル1Eは、双極板2Eに流路3が設けられ、隣り合う流路3,3のうち、一方が下流側延長流路32dであり、他方が直線溝36である。但し、実施形態5の電池セル1Eでは、下流側延長流路32dの上流側の領域3Uに直線溝34を含むものの、相対的に長い下流側の領域3Dは、蛇行溝33ではなく、戻り溝35を備える。以下、戻り溝35を詳細に説明する。
【0101】
戻り溝35は、電解液の流通方向に沿って電解液を流す部分(以下、順行部350と呼ぶ)と、電解液の流通方向とは逆方向に電解液を流す部分(以下、逆行部351と呼ぶ)と、逆方向から流通方向に戻して電解液を流す部分(以下、再順行部352と呼ぶ)とを有する。いわば戻り溝35は、電解液の流通方向に対して進退するように形成された形状の溝である。本例の戻り溝35は、電解液の流通方向に実質的に平行に設けられた三つの部分(順行部350、逆行部351、再順行部352)と、上記流通方向に実質的に直交するように設けられた部分とを備える矩形波状である。本例の逆行部351では電解液の流通方向とは真逆の方向、つまり図5の紙面上から下向きに電解液が流れる。戻り溝35の形状は適宜変更できる。例えば、戻り溝35をN字状とし、逆行部351を電解液の流通方向に非直交に交差するように設けることが挙げられる。この場合、逆行部351では、図5の紙面上から斜め下向きに電解液が流れる。このように「戻り溝35における電解液の流通方向とは逆方向」とは、電解液の流通方向とは真逆である場合の他、電解液の流通方向に対して概ね逆向きである場合も含む。
【0102】
戻り溝35を含む延長流路30は、戻り溝35に沿って電解液が流れることで電極12のより広い範囲に電解液を拡散し易く、電極12の利用率を高め易い。また、戻り溝35を含む延長流路30では、戻り溝35の振幅が大きいほど、又は逆行部351及び再順行部352の組数が多いほど、又は一つの延長流路30に対して戻り溝35が占める割合が大きいほど、電極12と電解液との接触面積を増大し易い。上記割合については、上述の蛇行溝33に関する占有割合と同様である。一方、戻り溝35の振幅がある程度小さかったり、上記組数がある程度少なかったりすれば、双極板2Eにおける流路3の個数を多くし易い点で上記接触面積を増大し易い。上記組数がある程度少なかったり、上述の占有割合がある程度小さかったりすると、電解液の流通性に優れる。戻り溝35の振幅、上記組数、上記占有割合等は、上記接触面積と、電解液の流通性とを考慮して選択するとよい。図5の振幅、上記組数、上記占有割合は例示であり、適宜変更できる。
【0103】
実施形態5の電池セル1Eは、上述の実施形態3と同様な効果を奏する(詳細は省略する)。特に、実施形態5の電池セル1Eは、戻り溝35を備えるため、電解液がその流通方向とは逆方向に流れた後、再び上記流通方向に沿って流れる。その結果、電解液が電池反応に利用されずに電極12から排出されることを低減し易い。このような実施形態5の電池セル1Eは、電池反応の効率の更なる向上に寄与する。
【0104】
[実施形態6]
図6に示す実施形態6の電池セル1Fは、実施形態1と同様に、隣り合う流路3,3が延長流路30,30である。また、この電池セル1Fは、上述の実施形態2と同様に、蛇行溝33と直線溝34とを含むと共に連通溝からなる下流側延長流路32dと上流側延長流路32uとを備える。両延長流路32d,32uは電極12Fと双極板2Fとの積層方向からみた平面視で隣り合う。但し、実施形態6の電池セル1Fでは、延長流路30が双極板2と電極12とのそれぞれ設けられている。本例の電池セル1Fは、隣り合う一方の延長流路30(本例では上流側延長流路32u)が電極12Fに設けられ、他方の延長流路30(本例では下流側延長流路32d)が双極板2Fに設けられている。いわば、電池セル1Fは、実施形態2の電池セル1Bに備えられる双極板2から上流側延長流路32uを削除して電極12に設け、下流側延長流路32dを双極板2に残した形態である。
【0105】
本例の双極板2Fは、複数の下流側延長流路32dを備える。各下流側延長流路32dは、双極板2Fの排出縁2oの延設方向に離間して配置される。一方、本例の電極12Fは、複数の上流側延長流路32uを備える。各上流側延長流路32uは、電極12Fの供給縁12iの延設方向に離間して配置される。このような双極板2Fと電極12Fとを重ね合せた状態において、双極板2Fの下流側延長流路32dと、電極12Fの上流側延長流路32uとが上述の平面視で隣り合うように、各延長流路32d,32uの形成位置が調整されている。図6では、双極板2Fにおいて、電極12Fの上流側延長流路32uが配置される位置を二点鎖線で仮想的に示す。
【0106】
電極12Fの延長流路30における上流側の領域3U,下流側の領域3Dは、双極板2Fの延長流路30における上流側の領域3U,下流側の領域3Dと同様にしてとる。即ち、電極12Fの供給縁12iと排出縁12oとの間において、電解液の流通方向に沿った最短距離(距離D12)をとり、更に距離D12の二等分線をとる。電極12Fの延長流路30において、上記二等分線から供給縁12i側に配置される領域を上流側の領域3U、上記二等分線から排出縁12o側に配置される領域を下流側の領域3Dとする。
【0107】
実施形態6の電池セル1Fは、上述の実施形態2と同様な効果を奏する(詳細は省略する)。特に、実施形態6の電池セル1Fでは、隣り合う延長流路30,30の一方を電極12Fに備え、他方を双極板2Fに備えることで、電極12Fにおいて双極板2Fの流路3と電極12Fの流路3との間に電解液が供給され易い。このような電池セル1Fは、電極12Fが電解液により効率的に接触できるため、電池反応の効率の更なる向上に寄与する。
【0108】
[実施形態7]
図7Aに示す実施形態7の電池セル1Gは、上述の実施形態2の電池セル1Bに対して、電極12の構造が異なる。電池セル1Gに備えられる電極12Gは、その全体に亘って一様な密度を有するのではなく、密度が部分的に異なり、密度が相対的に高い緻密部120と密度が相対的に低い疎部122とを備える。緻密部120の空隙率は疎部122の空隙率よりも小さい。例えば緻密部120の空隙率は70体積%以下が挙げられる。疎部122の空隙率は70体積%超が挙げられる。電極12Gが双極板2に配置された状態において、緻密部120が延長流路30において相対的に長い一方の領域に配置され、疎部122が他方の領域に配置されるように、電極12Gが設けられている。このような電極12Gを備える実施形態7の電池セル1Gは、相対的に長い一方の領域における電極12Gの密度が他方の領域における電極12Gの密度よりも大きい。
【0109】
図7Aでは、双極板2Bに設けられた下流側延長流路32dにおいて、相対的に長い下流側の領域3D(ここでは蛇行溝33を含む領域)に電極12Gの緻密部120が配置され、上流側の領域3U(ここでは直線溝34を含む領域)に疎部122が配置された状態を例示する。下流側延長流路32dに隣り合う上流側延長流路32uでは、上流側の領域3Uに緻密部120が配置され、下流側の領域3Dに疎部122が配置される(図示せず)。
【0110】
実施形態7の電池セル1Gは、実施形態2と同様な効果を奏する(詳細は省略する)。特に、実施形態7の電池セル1Gは、緻密部120を含む電極12Gを備え、双極板2Bに設けられた延長流路30における相対的に長い領域に緻密部120が配置される。このような実施形態7の電池セル1Gは、双極板2Bの延長流路30と電極12Gの緻密部120との双方によって、電極12と電解液との接触面積を更に増大でき、電池反応をより良好に行える。そのため、電池セル1Gは、電池反応の効率の更なる向上に寄与する。また、実施形態7の電池セル1Gは、延長流路30と電極12の密度との双方を調整可能であり、上記接触面積の増大に対して設計の自由度が高い。
【0111】
[実施形態8]
図7Bに示す実施形態8の電池セル1Hは、上述の実施形態2の電池セル1Bに対して、延長流路30の断面積が異なる。ここで、上述の実施形態1〜7の電池セル1A〜1Gでは、延長流路30の全長に亘って溝幅、溝深さが一様であり、断面積も一様である。これに対し、例えば、延長流路30の全長に亘って断面積を一定とすると共に、溝幅を増加すること又は溝深さを低減することができる(図示せず)。断面積が一定であることで、電極12において電池反応を特に促進させたい領域での電解液の流通量の変動が小さく又は実質的に無く、電池反応を効率よく促進できる。又は、例えば、下流側延長流路32d及び上流側延長流路32uの少なくとも一方について、延長流路30の形状に沿った電解液の流れ方向に対して垂直な平面で切断した断面において溝幅や溝深さを変更して、断面積を変化させてもよい。
【0112】
例えば、図7Bに示すように双極板2Hに設けられた下流側延長流路32dにおいて溝幅を一定とし、供給縁2i側(上流側)から排出縁2o側(下流側)に向かうにつれて溝深さを減少させて、供給縁2i側から排出縁2o側に向かうにつれて断面積が減少する形態が挙げられる。又は、例えば、下流側延長流路32dに隣り合う上流側延長流路32u(図示せず)において溝幅を一定とし、供給縁2i側(上流側)から排出縁2o側(下流側)に向かうにつれて溝深さを増大させて、供給縁2i側から排出縁2o側に向かうにつれて断面積が増大する形態が挙げられる。いずれの形態も、溝幅が一定であるため、溝深さが最小深さである部分の断面積が最小値をとり、溝深さが最大深さである部分の断面積が最大値をとる。その他、溝深さを一定とし、溝幅を減少又は増大させたり、溝深さ及び溝幅の双方を減少又は増大させたりしてもよい。
【0113】
延長流路30の断面積を変化させる場合、上述の断面において断面積の変動量が断面積の平均に対して±20%以内であることが好ましい。断面積の平均とは、一つの延長流路30についての平均である。複数の延長流路30を備える場合には、延長流路30ごとに断面積の平均を求める。一つの延長流路30において、断面積の平均に対して±20%以内であるとは、この延長流路30の断面積の最小値が上記平均の−20%以内を満たし、断面積の最大値が上記平均の+20%以内を満たすことをいう。各延長流路30の断面積の平均は、例えば、以下のように求めることが挙げられる。市販の三次元測定機等を用いて、各延長流路30の三次元形状をとり、各延長流路30の全長に亘って上述の断面における断面積をとり、その平均を求めることが挙げられる。簡易的には、各延長流路30の全長に亘って溝空間の体積を求め、この体積を各延長流路30の長さ(上述の中心軸に沿った長さ)で除することが挙げられる。
【0114】
本例のように延長流路30の断面積の変動量が断面積の平均に対して±20%以内であれば、電解液の流通量の変動が小さい。そのため、流通量の変動に起因する電池反応の不均一を低減し易く、電池反応を安定して行える。また、断面積の変動量が断面積の平均に対して±20%以内において、流路3の開口面積や溝幅、溝深さ等を変更すれば、電極12と電解液との接触面積を更に増大でき、流路3の設計の自由度を高められる。一方、断面積の変動量が小さいほど上述の電池反応の不均一を低減し易い。断面積の変動量を断面積の平均に対して±15%以内、更に±10%以内、±5%以内としてもよい。なお、上述の実施形態1〜7の電池セル1A〜1Gでは、延長流路30の断面積の変動量が実質的にゼロである。このような電池セル1A〜1Gは、上記変動量がゼロ超である場合に比較して、上述の電池反応の不均一が生じ難い上に、電解液の流通性にも優れる。
【0115】
更に、本例の延長流路30(図7Bでは下流側延長流路32d)は、上記断面における平均深さをdとし、平均幅をwとし、平均幅wに対する平均深さdの比をd/wとすると、以下を満たす。相対的に長い一方の領域(図7Bでは蛇行溝33を含む下流側の領域3D)における上記比d/wが他方の領域(図7Bでは上流側の領域3U)における上記比d/wよりも小さい。
【0116】
延長流路30の各領域3D,3Uにおける平均深さd、平均幅wは、各領域3D,3Uの全長に亘って溝幅、溝深さをそれぞれ測定し、溝深さの平均、溝幅の平均を求めることが挙げられる。市販の三次元測定機等を用いると、延長流路30の全長や各領域3D,3Uの全長に亘って溝深さや溝幅を容易に求められる。簡易的には、各延長流路30の平均幅wは、各延長流路30の平面面積を各延長流路30の長さ(上述の中心軸に沿った長さ)で除することで求めることが挙げられる。上記平面面積とは、各延長流路30が設けられた双極板2の表面又は電極12の表面に直交する方向から各延長流路30を平面視したときの合計面積である。また、簡易的には、各延長流路30の平均深さdは、各延長流路30における以下の平面面積Sを各延長流路30の長さ(上述の中心軸に沿った長さ)で除することで求めることが挙げられる。一つの延長流路30における平面面積Sは、この延長流路30の中心軸に沿って溝の深さ方向に平行な平面で双極板2を切断したときの溝の縦断面積に相当する。従って、上記平面面積Sは、上記溝の縦断面積に相当する面積を求めればよい。
【0117】
その他、簡易的には、例えば、各延長流路30の幅が一端側から他端側に向かって連続的に増加又は減少している場合、平均幅wは、各延長流路30の最大幅と最小幅との平均とすることが挙げられる。また、例えば、各延長流路30の深さが一端側から他端側に向かって連続的に増加又は減少している場合、平均深さdは、各延長流路30の最大深さと最小深さとの平均とすることが挙げられる。
【0118】
溝幅や溝深さは、上述の断面積の変動量が断面積の平均に対して±20%以内を満たす範囲で調整することが好ましい。なお、溝幅、溝深さについては上述の通りである。
【0119】
図7Bに示す下流側延長流路32dでは、溝深さが上流側から下流側に向かうにつれて減少している。供給縁2i側の溝深さdiが最大深さであり、排出縁2o側の溝深さdoが最小深さである。この下流側延長流路32dの全長に亘って断面積が実質的に一定であれば、下流側の領域3Dにおける比d/wは上流側の領域3Uの比d/wよりも小さくなる。このような下流側の領域3Dは、上流側の領域3Uよりも相対的に浅く広幅であり、開口面積が大きい溝といえる。
【0120】
実施形態8の電池セル1Hは、延長流路30において相対的に長い一方の領域に相対的に浅く、大きな開口面積を有する溝を含む。このような電池セル1Hは、上記一方の領域では電極12と電解液との接触面積をより増大できる上に電極12に電解液を拡散し易く、電池反応の効率の更なる向上に寄与する。本例では、双極板2Hに延長流路30を備え、上記一方の領域では上記の大きな開口面積を有する開口部から電極12に電解液を良好に供給でき、電極12に電解液を拡散し易い。なお、電極12に延長流路30を備える場合には、電極12における上記の一方の領域では、電極12の厚さ方向に対する流路の形成割合が小さい。そのため、電池反応を行う領域を大きく確保し易く、上記の浅い溝の周囲に電解液を良好に拡散できる。
【0121】
[組合わせ例]
上述の実施形態1〜8の構成は例示であり、以下のような組み合わせが考えられる。
(1)流路3を双極板2のみに備える場合
〈a〉隣り合う流路3,3の双方が延長流路30,30である。
〈b〉隣り合う流路3,3の一方が延長流路30であり、他方がその他の流路(例、直線溝36,37等)である。
上記〈a〉,〈b〉のいずれの場合も、一つの延長流路30について、[1](閉塞溝、連通溝)から選択される一つ、[2](蛇行溝33、戻り溝35)から選択される一つ、[3](上流側の領域が長い、下流側の領域が長い)から選択される一つ、という三つの選択肢を組み合わせた構成をとり得る。
上述の実施形態1,2上記〈a〉の例示であり、実施形態3,4,5は上記〈b〉の例示であるが、[1]〜[3]の組み合わせを変更できる。
例えば、実施形態1〜4おいて蛇行溝33を戻り溝35に変更したり、蛇行溝33と戻り溝35とが混在したりする等の変更が可能である。混在の一例として、実施形態1,2において一方の延長流路30に蛇行溝33を含み、他方の延長流路30に戻り溝35を含むことが挙げられる。
【0122】
(2)流路3を電極12のみに備える場合
上述(1)双極板2のみに備える場合と同様であり、双極板2を電極12に代えて適用できる。なお、この場合、上記積層方向からみた平面視で隣り合う二つの流路3,3とは、電極12の厚さ方向からみた平面視で隣り合う二つの流路3,3に相当する。
【0123】
(3)流路3を双極板2と電極12との双方に備える場合
例えば、上述(1)双極板2のみに備える場合と同様に、隣り合う流路3,3の一方を双極板2に備え、他方を電極12に備えることが挙げられる。隣り合う流路3,3の少なくとも一方は延長流路30とする。
又は、例えば、上述(1),(2)と同様に、隣り合う流路3,3を双極板2に備えると共に、電極12にも備えることが挙げられる。隣り合う流路3,3の少なくとも一方は延長流路30とする。
【0124】
<セルフレーム、電池セル、セルスタック、RF電池>
主に、図8図9を参照して、セルフレーム4、電池セル1、実施形態のセルスタック5、実施形態のRF電池10を説明する。
図8では、双極板2として、実施形態2で説明した双極板2Bを例示する。
図9の正極タンク16内及び負極タンク17内に示すイオンは、各極の電解液中に含むイオン種の一例を示す。図9において実線矢印は充電、破線矢印は放電を意味する。
【0125】
(概要)
セルフレーム4は、双極板2と、双極板2の外周に設けられる枠体40とを備える。双極板2の詳細は、上述の双極板2A〜2Hの通りである。
電池セル1は、代表的には、正極電解液が供給される正極電極14(電極12の一例)と、負極電解液が供給される負極電極15(電極12の別例)と、正極電極14,負極電極15間に介在される隔膜11と、隔膜11を挟む正極電極14及び負極電極15を更に挟む一組のセルフレーム4,4とによって構築される。一方のセルフレーム4の双極板2と、正極電極14と、隔膜11の一面とで正極セルをなす。他方のセルフレーム4の双極板2と、負極電極15と、隔膜11の他面とで負極セルをなす。一つの電池セル1は、正極セルと負極セルとを一組備える。
【0126】
セルスタック5は、図8図9に示すように複数の電池セル1を多層に積層してなる積層体であり、正極セルと負極セルとの組を複数組備える。
【0127】
RF電池10は、一つの電池セル1を備える単セル電池(図8の上図参照)、又はセルスタック5を備える多セル電池である(図8の下図,図9)。
【0128】
上述の実施形態1〜8の電池セル1A〜1Hは、正極セル又は負極セルという片極セルにも、一つの双極板2の一面に正極電極14を備え、他面に負極電極15を備える双極セルにも利用できる。単セル電池では、正極セルと負極セルとを一組備える。多セル電池では、積層方向の各端部に片極セルを備え、積層方向の中間部に両極セルを一つ以上備える。双極板2に延長流路30を備える場合、上述の(流路の配置)で示した形態(a)、(b1)、(b2)のいずれも片極セル、双極セルに利用できる。双極セルには上述の形態(b2)を利用することが好ましい。双極板2の両面に延長流路30を備えることで、正極セル及び負極セルの双方において電極12と電解液との接触面積を増大できつつ、電解液の流通性に優れるからである。単セル電池を構成する正極セル及び負極セル、多セル電池では少なくとも一組の正極セル及び負極セル、好ましくは全ての組の正極セル及び負極セルにおいて延長流路30を含む流路3の仕様(形状や大きさ、個数、形成位置等)が実質的に等しい形態が挙げられる。この形態は、正極及び負極での電池反応の状態や電解液の流通状態等を等しくし易い。双極板2に延長流路30を備える場合、延長流路30が設けられた面に電極12を配置する。電極12は、延長流路30を有する電極12F,粗密な電極12G等としてもよい。
【0129】
電池セル1は、正極セル及び負極セルの少なくとも一方に、好ましくは双方に実施形態1〜8の電池セル1A〜1H(いずれでもよい)を有する。実施形態のセルスタック5は、片極セル及び双極セルの少なくとも一方に、好ましくは双方に実施形態1〜8の電池セル1A〜1H(いずれでもよい)を有する。実施形態のRF電池10は、単セル電池であれば、正極セル及び負極セルの少なくとも一方に、好ましくは双方に実施形態1〜8の電池セル1A〜1H(いずれでもよい)を有する。RF電池10が多セル電池であれば実施形態のセルスタック5を有する。以下、セルフレーム4、セルスタック5、RF電池10を順に説明する。
【0130】
(セルフレーム)
セルフレーム4は、上述のように双極板2と枠体40とを備えて、電極12を収納すると共に電解液を流通する空間を形成する。単セル電池では、一組のセルフレーム4,4を備える。多セル電池では、複数組のセルフレーム4を備える。
【0131】
枠体40は、双極板2を支持する。また、枠体40は、双極板2上に配置される電極12への電解液の供給、電極12からの電解液の排出に利用される枠部材である。図8では、枠体40として、中央部に長方形の窓部9を有する長方形の枠を例示する。枠体40には電解液の供給路及び排出路が設けられる。供給路は、給液孔(正極では44i,負極では45i)と、給液孔から窓部9に至るスリット等とを備える。排出路は、排液孔(正極では44o,負極では45o)と、窓部9から排液孔に至るスリット等とを備える。枠体40における上記供給路に繋がる内周縁に接するように双極板2の供給縁2i(図1A等)が配置される。また、枠体40における上記排出路に繋がる内周縁に接するように双極板2の排出縁2o(図1A等)が配置される。
【0132】
枠体40は、例えば、枠体40の厚さ方向に分割される一対の枠体片を備え、双極板2の周縁領域を双極板2の表裏から枠体片間に挟んで支持する形態等が挙げられる。双極板2を挟んだ一対の枠体片は適宜接合する。この場合、双極板2の周縁領域は、枠体片の内周縁近傍の領域に覆われる。双極板2のその他の領域(内側領域)は、窓部9から露出される。枠体40は、代表的には、電解液に対する耐性、電気絶縁性に優れる樹脂等で構成される。
【0133】
(隔膜)
隔膜11は、正極電極14,負極電極15間を分離すると共に所定のイオンを透過する部材である。例えば、隔膜11は、イオン交換膜、多孔質膜等を利用できる。
【0134】
(セルスタック)
セルスタック5は、図8図9に示すように、セルフレーム4(双極板2)と、正極電極14と、隔膜11と、負極電極15とが順に複数積層された積層体と、積層体を挟む一対のエンドプレート52,52と、エンドプレート52,52間を繋ぐ締結部材とを備える。締結部材は、長ボルト等の連結材54及びナット等が挙げられる。締結部材によってエンドプレート52,52間が締め付けられると、上記積層体は、その積層方向の締付力によって積層状態が保持される。
【0135】
セルスタック5は、所定数の電池セル1をサブセルスタック5Sとし、複数のサブセルスタック5Sを積層した形態で利用されることがある。
サブセルスタック5Sやセルスタック5における電池セル1の積層方向の両端に位置するセルフレーム4には、双極板2と銅等からなる金属板とを積層した集電部を備えるものを利用できる。
隣り合う枠体40,40間にはシール部材が配置され、上記積層体を液密に保持する。
【0136】
(RF電池)
RF電池10は、図9に示すように、電池セル1又はセルスタック5と、電池セル1又はセルスタック5に電解液を循環供給する循環機構とを備える。代表的には、RF電池10は、交流/直流変換器や変電設備等を介して、発電部7と、電力系統や需要家等の負荷8とに接続され、発電部7を電力供給源として充電を行い、負荷8を電力提供対象として放電を行う。発電部7は、例えば、太陽光発電機、風力発電機、その他一般の発電所等が挙げられる。電池セル1及びセルスタック5については、上述の通りである。以下、循環機構の概略を説明する。
【0137】
循環機構は、正極タンク16と、負極タンク17と、配管162,164,172,174と、ポンプ160,170とを備える。正極タンク16は、正極電極14に循環供給する正極電解液を貯留する。負極タンク17は、負極電極15に循環供給する負極電解液を貯留する。配管162,164は、正極タンク16と電池セル1又はセルスタック5間を接続する。配管172,174は、負極タンク17と電池セル1又はセルスタック5間を接続する。配管162,164,172,174はそれぞれ、積層された複数のセルフレーム4の給液孔44i,45i及び排液孔44o,45oによって形成される電解液の流通管路等に接続されて、各極の電解液の循環経路を構築する。ポンプ160,170は、電池セル1又はセルスタック5への供給側の配管162,172に設けられる。
【0138】
(電解液)
電解液は、正負の活物質をバナジウムイオンとするもの(特許文献1)、正極活物質をマンガンイオン、負極活物質をチタンイオンとするもの、その他、公知の組成のものが利用できる。
【0139】
(主要な効果)
実施形態のセルスタック5は、延長流路30を備える実施形態1〜8の電池セル1A〜1H(いずれでもよい)を有するため、RF電池10に利用されることで、電池反応の効率の向上に寄与する。実施形態のRF電池10は、延長流路30を備える実施形態1〜8の電池セル1A〜1H(いずれでもよい)又は実施形態のセルスタック5を有するため、電池反応の効率を向上できる。
【0140】
本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0141】
例えば、実施形態1の電池セル1A等に対して、以下の少なくとも一つの変更が可能である。
(変形例1)双極板2における枠体40の窓部9から露出される内側領域の平面形状を変更する。
例えば、楕円やレーストラック状等といった少なくとも一部に曲線を含む形状や、六角形や八角形等といった多角形状等が挙げられる。上記内側領域の周縁のうち、対向位置にある部分を供給縁2iと排出縁2oとすることが挙げられる。例えば、上記内側領域が楕円状であり、上記内側領域における対向位置にある楕円弧を供給縁2i,排出縁2oとすることが挙げられる。この場合に、上記楕円の短軸方向を電解液の流通方向に平行な方向とし、電解液の流通方向に沿って延長流路30が設けられ、更に複数の延長流路30が長軸方向に並列に設けられた形態では、各延長流路30に対する距離Dは、流路3の形成位置が短軸から離れるほど短くなる。
【0142】
(変形例2)複数の下流側延長流路31d(又は32d)と、複数の上流側延長流路31u(又は32u)とを備え、両者が交互に並ばない部分を含む。
例えば、複数の下流側延長流路31dの群と、複数の上流側延長流路31uの群とが交互に並ぶ形態等が挙げられる。
【0143】
(変形例3)流路3として、供給縁2i及び排出縁2oの双方に開口しない完全閉塞溝を備える。
完全閉塞溝の一端部が供給縁2i又は排出縁2oの近くに設けられていれば、上述の供給側開口路又は排出側開口路と同様な機能を有し易い。延長流路30が完全閉塞溝であるものを備えることもできる。
【符号の説明】
【0144】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H 電池セル
12,12F,12G 電極
12i 供給縁、12o 排出縁、120 緻密部、122 疎部
2,2A,2B,2C,2D,2E,2F,2H 双極板
2i 供給縁、2o 排出縁
3 流路
3U 上流側の領域、3D 下流側の領域
30 延長流路
31u,32u 上流側延長流路
31d,32d 下流側延長流路
33 蛇行溝、34 直線溝
35 戻り溝、350 順行部、351 逆行部、352 再順行部
36,37 直線溝
10 レドックスフロー電池(RF電池)
11 隔膜、14 正極電極、15 負極電極
16 正極タンク、17 負極タンク、160,170 ポンプ
162,164,172,174 配管
4 セルフレーム
40 枠体、44i,45i 給液孔、44o,45o 排液孔
5 セルスタック
5S サブセルスタック、52 エンドプレート、54 連結材
7 発電部、8 負荷
9 窓部
【要約】
電極と、前記電極と接触する双極板とを備える電池セルであって、前記電極及び前記双極板の一方又は双方に、電解液の供給縁側から排出縁側に向かって連続して設けられる一つ以上の流路を備え、前記流路は、前記供給縁と前記排出縁との間の距離よりも長い延長流路を含み、前記電極と前記双極板との積層方向からみた平面視で隣り合う二つの前記流路のうち、少なくとも一方は前記延長流路である電池セル。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9