【実施例】
【0028】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0029】
実施例1
水素化NBR(日本ゼオン製品Zetpol 2000、AN含量36%) 50重量部
水素化NBR(日本ゼオン製品Zetpol 1020、AN含量44%) 50 〃
シリカ(東ソー・シリカ製品E74P、BET比表面積50m
2/g) 70 〃
酸化亜鉛 5 〃
シランカップリング剤(モメンティブ社製品A-172NTJ) 1 〃
ジクミルパーオキサイド 4 〃
以上の各成分をニーダおよびオープンロールで混練し、混練物を170℃、15分間のプレス加硫(一次加硫)および165℃、30分間のオーブン加硫(二次加硫)により架橋成形し、架橋シート(150×150×2mm)およびP-24サイズのOリングを得た。
【0030】
得られた架橋シートおよびP-24 Oリングについて、次の各項目の測定を行った。
POE油に対する容積変化率:
POE油中に150℃で70時間浸漬後の容積変化率を測定し、ΔV
6%以下を○、それを超えるものを×と評価
HFC134a、HFO1234yfに対する耐発泡性:
冷媒浸漬を25℃で24時間行った後、150℃、1時間の加熱を行っ
たときの外観状態(発泡の有無)を目視で観察し、発泡なしを○
、ありを×と評価
製品の耐摩耗性:
150℃のPOE油中でシール耐久試験機を用い、回転数7,500rpm、
72時間後、摩耗なしを○、ありを×と評価
圧縮永久歪:
P-24 Oリングについて、ASTM D395に対応するJIS K6262に準拠
して、150℃、70時間での圧縮永久歪を測定し、16%以下を◎
、17〜23%を○、24〜29%を△、30%以上を×と評価
低温特性:
ガラス転移温度Tgを測定し、-18℃未満を○、-18℃以上を×と
評価
【0031】
実施例2〜11
実施例1において、シランカップリング剤、ジクミルパーオキサイド以外の各成分量(重量部)が表に示される如く変更された。
注)Nipsil ER#100:東ソー・シリカ製品シリカ、BET比表面積95m
2/g
TMP:トリメチロールプロパン
RS-700:ADEKA製品可塑剤アデカサイザー
【0032】
以上の実施例1〜11においては、評価全項目が○(ただし、実施例3の圧縮永久歪は◎)であった。
【0033】
比較例1
実施例3において、Zetpol 2000が100重量部用いられ、Zetpol 1020は用いられなかった。POE油に対するΔVおよび製品の耐摩耗性は×となった。
【0034】
比較例2
実施例3において、Zetpol 2000量が65重量部に、Zetpol 1020量が35重量部にそれぞれ変更された。POE油に対するΔVおよび製品の耐摩耗性は×となった。
【0035】
比較例3
実施例3において、Zetpol 2000量が30重量部に、Zetpol 1020量が70重量部にそれぞれ変更された。冷媒HFC134aに対する耐発泡性が×となった。
【0036】
比較例4
実施例3において、Zetpol 1020が100重量部用いられ、Zetpol 2000は用いられなかった。冷媒HFC134aに対する耐発泡性および低温特性が×となった。
【0037】
比較例5
実施例2において、E74P量が30重量部に変更された。冷媒HFC134aに対する耐発泡性および製品の耐摩耗性は×となった。
【0038】
比較例6
実施例2において、E74P量が90重量部に変更された。圧縮永久歪は×となった。
【0039】
比較例7
実施例3において、シランカップリング剤(A-172NTJ)が用いられなかった。冷媒HFC134aに対する耐発泡性および圧縮永久歪が×となった。
【0040】
比較例8
実施例5において、Nipsil ER#100量が30重量部に変更された。冷媒HFC134aに対する耐発泡性および製品の耐摩耗性は×となった。
【0041】
比較例9
実施例5において、Nipsil ER#100量が90重量部に変更された。冷媒HFC134aに対する耐発泡性および製品の耐摩耗性は×となった。
【0042】
比較例10
実施例2において、E74Pの代りに東ソー・シリカ製品Nipsil ER NA(BET比表面積120m
2/g)が同量(40重量部)用いられた。圧縮永久歪が×となった。
【0043】
比較例11
比較例10において、Nipsil ER NA量が80重量部に変更された。比較例10と同様に圧縮永久歪が×であった。
【0044】
比較例12
比較例10において、Nipsil ER NA量が70重量部に変更された。比較例10と同様に圧縮永久歪が×であった。
【0045】
比較例13
実施例6において、Nipsil ER#100の代りに東ソー・シリカ製品Nipsil LP(BET比表面積210m
2/g)が同量(40重量部)用いられた。製品の耐摩耗性が×となった。
【0046】
比較例14
比較例13において、Nipsil LP量が65重量部に変更された。製品の耐摩耗性は○となったが、圧縮永久歪が×であった。
【0047】
比較例15
比較例13において、Nipsil LP量が80重量部に変更された。比較例13と同様に製品の耐摩耗性が×であった。
【0048】
比較例16
実施例3において、E74Pの代りにエボニック社製品ULTRASIL 880(BET比表面積35m
2/g)が同量(70重量部)用いられた。製品の耐摩耗性が×となった。
【0049】
比較例17
実施例8において、Nipsil ER#100の代りにSRFカーボンブラックである東海カーボン製品シーストG-SOが同量(75重量部)用いられ、シランカップリング剤(A-172NTJ)は用いられなかった。製品の耐摩耗性が×となった。
【0050】
比較例18
比較例17において、シーストG-SO量が90重量部に変更された。比較例17と同様に製品の耐摩耗性が×であった。
【0051】
なお、以上の各比較例においては、×評価以外の各項目の評価は○であった。
【0052】
以上の各実施例および比較例の結果から、次のようなことがいえる。
(1) 中高ニトリル水素化NBRと高ニトリル水素化NBRとを特定のブレンド割合で用い、これら水素化NBRブレンド物に対して特定BET比表面積を有するシリカおよびシランカップリング剤を特定割合で用いた各実施例では、POE油に対する容積変化率、HFC134a、HFO1234yfに対する耐発泡性、製品の耐摩耗性、耐圧縮永久歪特性および低温特性のいずれにおいても満足される性質を示している。
(2) 中高ニトリル水素化NBRの割合が規定量以上では、POE油に対する容積変化率および製品の耐摩耗性に劣り、一方規定量以下ではHFC134aに対する耐発泡性(および低温特性)に劣る。
(3) シリカのBET比表面積が規定値以上のものでは、圧縮永久歪あるいは製品の耐摩耗性が悪化する。
(4) シリカが規定量以上用いられると、HFC134aに対する耐発泡性および製品の耐摩耗性が低下し、規定量以下用いられた場合も同様である。前者の場合、圧縮永久歪が悪化する場合もある。
(5) シランカップリング剤が用いられないと、HFC134aに対する耐発泡性および圧縮永久歪が悪化する。