特許第6566171号(P6566171)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6566171
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】水素化NBR組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 15/00 20060101AFI20190819BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20190819BHJP
   C08K 5/541 20060101ALI20190819BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20190819BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
   C08L15/00
   C08K3/36
   C08K5/541
   C09K3/10
   F25B1/00 396Z
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-517458(P2019-517458)
(86)(22)【出願日】2018年7月25日
(86)【国際出願番号】JP2018027940
(87)【国際公開番号】WO2019054058
(87)【国際公開日】20190321
【審査請求日】2019年4月19日
(31)【優先権主張番号】特願2017-178075(P2017-178075)
(32)【優先日】2017年9月15日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066005
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100114351
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 和子
(72)【発明者】
【氏名】村上 英幸
【審査官】 松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−176382(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/038835(WO,A1)
【文献】 特開2015−063047(JP,A)
【文献】 特開平08−231769(JP,A)
【文献】 特開昭58−178083(JP,A)
【文献】 特開2011−201993(JP,A)
【文献】 特開2007−291295(JP,A)
【文献】 特開2001−226527(JP,A)
【文献】 特開平11−021382(JP,A)
【文献】 特開2002−302571(JP,A)
【文献】 特開平03−188138(JP,A)
【文献】 特開2008−291205(JP,A)
【文献】 特開2010−132393(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/192844(WO,A1)
【文献】 特開2016−183779(JP,A)
【文献】 特開昭50−034334(JP,A)
【文献】 特開平06−016872(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0258980(US,A1)
【文献】 国際公開第2007/119848(WO,A1)
【文献】 国際公開第2018/123713(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08L 1/00 − 101/14
C08K 3/00 − 13/08
C09K 3/10 − 3/12
F25B 1/00 − 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリロニトリル含量30〜38%の中高ニトリル水素化NBR 35〜50重量%とアクリロニトリル含量40〜46%の高ニトリル水素化NBR 65〜50重量%との水素化NBRブレンド物100重量部当り、BET比表面積40〜100m2/gのシリカ40〜80重量部およびシランカップリング剤0.5〜3重量部を配合してなる水素化NBR組成物。
【請求項2】
さらに10重量部以下のエステル系可塑剤を配合した請求項1記載の水素化NBR組成物。
【請求項3】
さらに10重量部以下の受酸剤を配合した請求項1記載の水素化NBR組成物。
【請求項4】
受酸剤が酸化亜鉛である請求項3記載の水素化NBR組成物。
【請求項5】
さらに1〜10重量部の有機過酸化物架橋剤が配合された請求項1、2、3または4記載の水素化NBR組成物。
【請求項6】
コンプレッサのリップシールの架橋成形材料として用いられる請求項5記載の水素化NBR組成物。
【請求項7】
請求項6記載の水素化NBR組成物から架橋成形されたコンプレッサ用リップシール材。
【請求項8】
HFC134a/PAG油およびHFO1234yf/POE油を用いたエアコンディショナコンプレッサ用として用いられる請求項7記載のコンプレッサ用リップシール材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化NBR組成物に関する。さらに詳しくは、HFC134a/PAG油およびHFO1234yf/POE油用コンプレッサのシール材の架橋成形材料等として有効に用いられる水素化NBR組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
HFC134a、HFO1234yf等のエアコンディショナ用冷媒に対しては、ポリアルキレングリコール油(PAG油)、ポリオールエステル油(POE油)等の冷凍機油や組付け油が一緒に用いられている。
【0003】
従来エアコンディショナ用冷媒/冷凍機油としてHFC134a/PAG油が使用されているが、HFC134aは地球温暖化係数GWPが1300と高いため、GWPの低い冷媒としてHFO1234yfが公表され、実用化に向けた検討が行われている。
【0004】
HFC134a/PAG油用のリップシール材には主に水素化NBRが用いられているが、HFO1234yf/POE油使用環境下における従来の水素化NBR材は、HFC134a/PAG油使用環境下と比較して過大に膨潤してしまい、リップシールとしての耐摩耗性に劣っているのが実情である。
【0005】
またHFC134a/PAG油からHFO1234yf/POE油への移行期に当り、冷媒/冷凍機油の交換時に誤ってHFC134a/PAG油が用いられることも十分に予想されることから、HFC134a/PAG油使用環境下における性能保障、特にHFC134aに対する耐発泡性が要求される。
【0006】
また、HFO1234yfと共に用いられるPOE油に対して膨潤を抑制した水素化NBR材は、HFC134aに対する耐発泡性が悪くなるなど、かかる組合せでは耐膨潤性と耐発泡性との両立が難しい。すなわち、POE油に対する膨潤が大きく、さらにHFO1234yfが混在すると、より膨潤が大きくなるので、材料としては耐POE油性が問題となる。
【0007】
また、製品の必要機能上耐摩耗性も要求され、このため補強性の強い充填材が好まれるものの、補強性の高い充填材を高充填すると、所望の耐圧縮永久歪特性を得ることができない。
【0008】
本出願人は先に、次のような提案を行っている。
(1) 結合AN含量が15〜30重量%の水素化NBR、比表面積(窒素吸着法による)が200m2/g以下のホワイトカーボン、有機過酸化物、好ましくはさらに多官能性不飽和化合物を含有する水素化NBR組成物(特許文献1)。この水素化NBR組成物は、水素化NBRが本来有する機械的強度(常態物性)や耐油性を殆ど損なうことなく、それの耐熱性および低温特性を改善させる。
(2) 結合AN含量が31〜45重量%の水素化NBR、粒子径25〜500nmのカーボンブラック、比表面積(窒素吸着法による)30〜200m2/gのホワイトカーボン、シランカップリング剤および有機過酸化物を含有する、R152aおよびR134a用水素化NBR系シール成形材料(特許文献2)。この水素化NBR系シール成形材料は、R152aおよびR134aの両冷媒およびこれらに使用されるすべての冷凍機油や組付け油に対してすぐれた耐性を有する。
(3) 結合AN含量が31〜45重量%の水素化NBR、比表面積(窒素吸着法による)が30〜200m2/gのホワイトカーボン、シランカップリング剤および有機過酸化物を含有する、R152aおよびR134a用水素化NBR系シール成形材料(特許文献3)。この水素化NBR系シール成形材料は、R152a、R134aの両冷媒およびこれらに使用されるすべての冷凍機油や組付け油に対してすぐれた耐性を有する。
(4) NBRに、BET比表面積30〜110m2/g、好ましくは30〜60m2/gのホワイトカーボンを添加したNBR組成物(特許文献4)。このNBR組成物は、有機過酸化物および硫黄(供与性化合物)によって加硫され、NBRを用いながら高価な水素化NBRの加硫成形品に対応する耐圧縮永久歪特性を有する加硫成形品を与える。
【0009】
特許文献1〜3に記載された水素化NBR組成物またはシール成形材料は、それぞれ所期の目的を達成し得るものの、HFC134a/PAG油およびHFO1234yf/POE油に対する製品機能上要求される諸特性、例えばPOE油に対する容積変化率、製品の耐摩耗性、HFC134aに対する耐発泡性などを満足させることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−212333号公報
【特許文献2】特開2004−217811号公報
【特許文献3】特開2009−102646号公報
【特許文献4】WO 2007/099724 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、HFC134a/PAG油およびHFO1234yf/POE油に対する製品機能上要求される諸特性を満足せしめる水素化NBR組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる本発明の目的は、アクリロニトリル含量30〜38%の中高ニトリル水素化NBR 35〜50重量%とアクリロニトリル含量40〜46%の高ニトリル水素化NBR 65〜50重量%との水素化NBRブレンド物100重量部当り、BET比表面積40〜100m2/gのシリカ40〜80重量部およびシランカップリング剤0.5〜3重量部を配合してなる水素化NBR組成物によって達成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明にあっては、中高ニトリル水素化NBRと高ニトリル水素化NBRとをブレンドして用いることにより、HFC134aに対する耐発泡性とPOE油に対する耐膨潤性とを両立させることができ、さらに特定BET比表面積のシランとシランカップリング剤を用いることで、所望の耐圧縮永久歪特性と製品の耐摩耗性を確保することができる。
【0014】
こうしたことから、HFC134a/PAG油およびHFO1234yf/POE油に対して、製品機能上良好なリップシール材を得ることができ、エアコンディショナコンプレッサ用として有効に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
中高ニトリル水素化NBRとしては、アクリロニトリル含量が30〜38%のものが用いられる。また、高ニトリル水素化NBRとしては、アクリロニトリル含量が40〜46%のものが用いられる。実際には、市販品、例えば日本ゼオン製品Zetpolシリーズの中から所定のアクリロニトリル含量のものが選択して用いられる。
【0016】
中高ニトリル水素化NBRと高ニトリル水素化NBRとは、それぞれ前者が35〜50重量%、後者が65〜50重量%の割合でブレンドして用いられる。前者の割合がこれ以上では、POE油に対する耐膨潤性が不足し、製品の耐摩耗性にも劣り、一方これ以下の割合で用いるとHFC134aに対する耐発泡性(および低温特性)を満足させない。
【0017】
シリカとしては、BET比表面積が40〜100m2/gのものが、水素化ニトリルゴム100重量部当り40〜80重量部、好ましくは50〜70重量部の割合で用いられる。
【0018】
これらは、ハロゲン化けい酸または有機けい素化合物の熱分解法やけい砂を加熱還元し、気化したSiOを空気酸化する方法などで製造される乾式法シリカやけい酸ナトリウムの熱分解法などで製造される湿式法シリカなどであり、実際にはゴム工業用として上市されている市販品、例えば東ソー・シリカ製品ニップシールER#100、E74P、エポニックデグサ社製品Ultrasil 360等をそのまま用いることができる。
【0019】
これよりも比表面積の小さいものを用いると、機械的強度が不足し、耐発泡性と耐摩耗性にも劣り、一方これよりも大きい比表面積のものは耐圧縮永久歪特性あるいは製品の耐摩耗性に劣るようになる。また、シリカの配合割合がこれよりも少ないとあるいは多く用いられると、HFC134aに対する耐発泡性および製品の耐摩耗性が低下する。
【0020】
水素化NBRとシランとの密着性および耐HFC134a性を向上させるために、シランカップリング剤を水素化NBR 100重量部当り0.5〜3重量部、好ましくは1〜2重量部の割合で併用する必要がある。シランカップリング剤としては、例えばビニルトリス(β-メトキシエトキシシラン)、ビニルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が用いられる。
【0021】
シランカップリング剤を用いないと、耐HFC134a性、耐圧縮永久歪特性が損なわれる。
【0022】
シリカを含有する水素化NBRは、有機過酸化物によって架橋される。有機過酸化物としては、例えば第3ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、第3ブチルクミルパーオキサイド、1,1-ジ(第3ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、1,3-ジ(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、第3ブチルパーオキシベンゾエート、第3ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、n-ブチル-4,4-ジ(第3ブチルパーオキシ)バレレート等が、水素化NBR 100重量部当り1〜10重量部、好ましくは4〜6重量部の割合で用いられる。
【0023】
有機過酸化物架橋に際しては、多官能性不飽和化合物を水素化NBR 100重量部当り10重量部以下、一般には0.5〜10重量部、好ましくは2〜8重量部併用することが望ましく、これによりシール材料の架橋密度が上昇するため、耐圧縮永久歪特性が向上し、長寿命化が可能となる。多官能性不飽和化合物としては、例えばトリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート、N,N′-m-フェニレンビスマレイミド等が用いられる。これ以上の添加割合で用いられると、ゴム硬度が非常に高くなり、ゴム弾性も失われる傾向となる。
【0024】
以上の各成分からなる本発明の水素化NBR系組成物中には、活性化炭酸カルシウム等のカーボンブラック、ホワイトカーボン以外の他の補強剤、タルク、クレー、グラファイト、けい酸カルシウム等の充填剤、ステアリン酸、パルミチン酸、パラフィンワックス等の加工助剤、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等の受酸剤、老化防止剤、可塑剤などのゴム工業で一般的に使用されている配合剤が、必要に応じて適宜添加されて用いられる。
【0025】
特に、10重量部以下のエステル系可塑剤、10重量部以下の受酸剤、好ましくは酸化亜鉛の配合が有効である。
【0026】
水素化NBR系組成物の調製は、インターミックス、ニーダ、バンバリーミキサ等の混練機またはオープンロールなどを用いて混練することによって行われ、それの架橋は射出成形機、圧縮成形機、加硫プレス等を用いて、一般に約150〜200℃で約3〜60分間程度加熱することによって行われ、必要に応じて約100〜200℃で約0.5〜24時間程度加熱する二次架橋が行われる。
【0027】
本発明の水素化NBR組成物は、コンプレッサのリップシール材の架橋成形材料等として有効に用いられる。この組成物から架橋成形されたコンプレッサ用リップシール材は、特にHFC134a/PAG油およびHFO1234yf/POE油を用いたエアコンディショナコンプレッサ用として有効に用いられる。
【実施例】
【0028】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0029】
実施例1
水素化NBR(日本ゼオン製品Zetpol 2000、AN含量36%) 50重量部
水素化NBR(日本ゼオン製品Zetpol 1020、AN含量44%) 50 〃
シリカ(東ソー・シリカ製品E74P、BET比表面積50m2/g) 70 〃
酸化亜鉛 5 〃
シランカップリング剤(モメンティブ社製品A-172NTJ) 1 〃
ジクミルパーオキサイド 4 〃
以上の各成分をニーダおよびオープンロールで混練し、混練物を170℃、15分間のプレス加硫(一次加硫)および165℃、30分間のオーブン加硫(二次加硫)により架橋成形し、架橋シート(150×150×2mm)およびP-24サイズのOリングを得た。
【0030】
得られた架橋シートおよびP-24 Oリングについて、次の各項目の測定を行った。
POE油に対する容積変化率:
POE油中に150℃で70時間浸漬後の容積変化率を測定し、ΔV
6%以下を○、それを超えるものを×と評価
HFC134a、HFO1234yfに対する耐発泡性:
冷媒浸漬を25℃で24時間行った後、150℃、1時間の加熱を行っ
たときの外観状態(発泡の有無)を目視で観察し、発泡なしを○
、ありを×と評価
製品の耐摩耗性:
150℃のPOE油中でシール耐久試験機を用い、回転数7,500rpm、
72時間後、摩耗なしを○、ありを×と評価
圧縮永久歪:
P-24 Oリングについて、ASTM D395に対応するJIS K6262に準拠
して、150℃、70時間での圧縮永久歪を測定し、16%以下を◎
、17〜23%を○、24〜29%を△、30%以上を×と評価
低温特性:
ガラス転移温度Tgを測定し、-18℃未満を○、-18℃以上を×と
評価
【0031】
実施例2〜11
実施例1において、シランカップリング剤、ジクミルパーオキサイド以外の各成分量(重量部)が表に示される如く変更された。
注)Nipsil ER#100:東ソー・シリカ製品シリカ、BET比表面積95m2/g
TMP:トリメチロールプロパン
RS-700:ADEKA製品可塑剤アデカサイザー
【0032】
以上の実施例1〜11においては、評価全項目が○(ただし、実施例3の圧縮永久歪は◎)であった。
【0033】
比較例1
実施例3において、Zetpol 2000が100重量部用いられ、Zetpol 1020は用いられなかった。POE油に対するΔVおよび製品の耐摩耗性は×となった。
【0034】
比較例2
実施例3において、Zetpol 2000量が65重量部に、Zetpol 1020量が35重量部にそれぞれ変更された。POE油に対するΔVおよび製品の耐摩耗性は×となった。
【0035】
比較例3
実施例3において、Zetpol 2000量が30重量部に、Zetpol 1020量が70重量部にそれぞれ変更された。冷媒HFC134aに対する耐発泡性が×となった。
【0036】
比較例4
実施例3において、Zetpol 1020が100重量部用いられ、Zetpol 2000は用いられなかった。冷媒HFC134aに対する耐発泡性および低温特性が×となった。
【0037】
比較例5
実施例2において、E74P量が30重量部に変更された。冷媒HFC134aに対する耐発泡性および製品の耐摩耗性は×となった。
【0038】
比較例6
実施例2において、E74P量が90重量部に変更された。圧縮永久歪は×となった。
【0039】
比較例7
実施例3において、シランカップリング剤(A-172NTJ)が用いられなかった。冷媒HFC134aに対する耐発泡性および圧縮永久歪が×となった。
【0040】
比較例8
実施例5において、Nipsil ER#100量が30重量部に変更された。冷媒HFC134aに対する耐発泡性および製品の耐摩耗性は×となった。
【0041】
比較例9
実施例5において、Nipsil ER#100量が90重量部に変更された。冷媒HFC134aに対する耐発泡性および製品の耐摩耗性は×となった。
【0042】
比較例10
実施例2において、E74Pの代りに東ソー・シリカ製品Nipsil ER NA(BET比表面積120m2/g)が同量(40重量部)用いられた。圧縮永久歪が×となった。
【0043】
比較例11
比較例10において、Nipsil ER NA量が80重量部に変更された。比較例10と同様に圧縮永久歪が×であった。
【0044】
比較例12
比較例10において、Nipsil ER NA量が70重量部に変更された。比較例10と同様に圧縮永久歪が×であった。
【0045】
比較例13
実施例6において、Nipsil ER#100の代りに東ソー・シリカ製品Nipsil LP(BET比表面積210m2/g)が同量(40重量部)用いられた。製品の耐摩耗性が×となった。
【0046】
比較例14
比較例13において、Nipsil LP量が65重量部に変更された。製品の耐摩耗性は○となったが、圧縮永久歪が×であった。
【0047】
比較例15
比較例13において、Nipsil LP量が80重量部に変更された。比較例13と同様に製品の耐摩耗性が×であった。
【0048】
比較例16
実施例3において、E74Pの代りにエボニック社製品ULTRASIL 880(BET比表面積35m2/g)が同量(70重量部)用いられた。製品の耐摩耗性が×となった。
【0049】
比較例17
実施例8において、Nipsil ER#100の代りにSRFカーボンブラックである東海カーボン製品シーストG-SOが同量(75重量部)用いられ、シランカップリング剤(A-172NTJ)は用いられなかった。製品の耐摩耗性が×となった。
【0050】
比較例18
比較例17において、シーストG-SO量が90重量部に変更された。比較例17と同様に製品の耐摩耗性が×であった。
【0051】
なお、以上の各比較例においては、×評価以外の各項目の評価は○であった。
【0052】
以上の各実施例および比較例の結果から、次のようなことがいえる。
(1) 中高ニトリル水素化NBRと高ニトリル水素化NBRとを特定のブレンド割合で用い、これら水素化NBRブレンド物に対して特定BET比表面積を有するシリカおよびシランカップリング剤を特定割合で用いた各実施例では、POE油に対する容積変化率、HFC134a、HFO1234yfに対する耐発泡性、製品の耐摩耗性、耐圧縮永久歪特性および低温特性のいずれにおいても満足される性質を示している。
(2) 中高ニトリル水素化NBRの割合が規定量以上では、POE油に対する容積変化率および製品の耐摩耗性に劣り、一方規定量以下ではHFC134aに対する耐発泡性(および低温特性)に劣る。
(3) シリカのBET比表面積が規定値以上のものでは、圧縮永久歪あるいは製品の耐摩耗性が悪化する。
(4) シリカが規定量以上用いられると、HFC134aに対する耐発泡性および製品の耐摩耗性が低下し、規定量以下用いられた場合も同様である。前者の場合、圧縮永久歪が悪化する場合もある。
(5) シランカップリング剤が用いられないと、HFC134aに対する耐発泡性および圧縮永久歪が悪化する。