特許第6566235号(P6566235)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アテックスの特許一覧

特許6566235コンバインにおける排稈カッターの拡散装置
<>
  • 特許6566235-コンバインにおける排稈カッターの拡散装置 図000002
  • 特許6566235-コンバインにおける排稈カッターの拡散装置 図000003
  • 特許6566235-コンバインにおける排稈カッターの拡散装置 図000004
  • 特許6566235-コンバインにおける排稈カッターの拡散装置 図000005
  • 特許6566235-コンバインにおける排稈カッターの拡散装置 図000006
  • 特許6566235-コンバインにおける排稈カッターの拡散装置 図000007
  • 特許6566235-コンバインにおける排稈カッターの拡散装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6566235
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】コンバインにおける排稈カッターの拡散装置
(51)【国際特許分類】
   A01F 29/12 20060101AFI20190819BHJP
【FI】
   A01F29/12 A
   A01F29/12 Z
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-36980(P2015-36980)
(22)【出願日】2015年2月26日
(65)【公開番号】特開2016-158503(P2016-158503A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2018年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144980
【氏名又は名称】株式会社アテックス
(72)【発明者】
【氏名】八塚 英樹
(72)【発明者】
【氏名】永易 伸悟
【審査官】 中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−134926(JP,A)
【文献】 特開2002−142545(JP,A)
【文献】 特許第5344230(JP,B2)
【文献】 実開昭56−008137(JP,U)
【文献】 実開昭53−003264(JP,U)
【文献】 実開昭58−194652(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0092298(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01F 12/40
A01F 29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転外周縁に切刃縁(1)を形成の刃盤(2)を配置したカッター軸(3)と、この切刃縁(1)と対向接近して排稈掻込回転する掻込縁(4)を形成の掻込盤(5)を配置したローター軸(6)とを、カッタフレーム(7)の株元側、穂先側の左右両側のサイドフレーム(8),(9)間に亘って平行に軸装して、脱穀排稈装置(10)から供給される排稈を受けて掻込みしながら切断排出する切断部(11)を構成し、このカッタフレーム(7)の下側には、後側のリヤカバー(12)部と左右両側のサイドカバー(13),(14)部として覆う拡散室(15)を形成して、この拡散室(15)の株元部寄前側部には排風ファン(16)の吹出口(17)を形成して、前記切断部(11)から切断排出される切断わらを、コンバイン車体の刈取走行跡幅域に亘って拡散排出しながら排稈処理するコンバインにおける排稈カッターの拡散装置において、前記リヤカバー(12)の株元側端部の株元側サイドカバー(13)内側面に、下端部を内側へ屈曲して傾斜案内面(19)を形成して、前記拡散排風ファン(16)による吹出口(17)からの排風によって、株元側切断わらを、この株元側サイドカバー(13)内側面に吹き出して拡散案内させ、前記株元側サイドカバー(13)の内側面に、下端部を内側へ屈曲して傾斜案内面(19)を形成し、この傾斜案内面(19)の下端縁部には、これよりも内側へ緩傾斜の緩傾斜案内面(20)を屈曲形成すると共に、前記株元側サイドカバー(13)の下端縁部で、緩傾斜案内面(20)の前端縁部には、直下に開放する直下開口部(21)を形成することを特徴とするコンバインにおける排稈カッターの拡散装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインにおける排稈カッターの拡散装置に関し、コンバインによって刈取られて脱穀排出される排稈を、排稈カッターで短かく切断しながら、コンバイン走行の刈取幅跡の地面に幅広く、できるだけ均一層に拡散排出させる。
【背景技術】
【0002】
コンバインの脱穀排稈装置の後端部に、左右横方向に亘るカッターと、このカッター軸間の切断部から排出される切断わらを受けて、刈取幅跡へ拡散排出させる拡散ファンや、拡散排出カバー等を設ける技術(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5344230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンバインの排稈カッターでは、この排稈カッターの切断部に供給されて切断する切断わらを、コンバインの刈取走行跡地面に幅広く、均一層に拡散して排出させることが要求されるが、株元側の拡散排出わら層が盛り上がる傾向にあって、後続の刈取走行作業で通る刈取分草杆や、刈刃装置等に干渉し、引っ掛け易くなったり、刈取作用を乱すこととなり易い。
【0005】
この発明は、排稈カッターの拡散排出室内に拡散ラセンや、拡散羽根車等の伝動回転部材を設けることなく、主としてこの拡散排出室を構成するリヤカバーと、左右両側部のサイドカバーとによって、簡潔な形態、構成として、切断部から排出される切断排稈を、穂先側位置へ均一層に的確に拡散排出させるものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、回転外周縁に切刃縁1を形成の刃盤2を配置したカッター軸3と、この切刃縁1と対向接近して排稈掻込回転する掻込縁4を形成の掻込盤5を配置したローター軸6とを、カッタフレーム7の株元側、穂先側の左右両側のサイドフレーム8,9間に亘って平行に軸装して、脱穀排稈装置10から供給される排稈を受けて掻込みしながら切断排出する切断部11を構成し、このカッタフレーム7の下側には、後側のリヤカバー12部と左右両側のサイドカバー13,14部として覆う拡散室15を形成して、この拡散室15の株元部寄前側部には排風ファン16の吹出口17を形成して、前記切断部11から切断排出される切断わらを、コンバイン車体の刈取走行跡域に亘って拡散排出しながら排稈処理するコンバインにおける排稈カッターの拡散装置において、前記リヤカバー12の株元側端部の株元側サイドカバー13内側面に、下端部を内側へ屈曲して傾斜案内面19を形成して、前記拡散排風ファン16による吹出口17からの排風によって、株元側切断わらを、この株元側サイドカバー13の内側面に吹き出して拡散案内させることを特徴とするコンバインにおける排稈カッターの拡散装置の構成とする。
【0007】
コンバイン作業において、刈取装置部で刈取られた穀稈が脱穀装置に送込まれて脱穀されて、この脱穀済排稈が排稈装置10で後方へ搬送されて、排稈カッターのカッタ軸3及びローター軸6間の切断部11に供給されて、下側の拡散室15内へ排出される。この拡散室15には、株元側寄り位置の吹出口17から排風ファン16による排風作用が行われていて、この株元側のサイドカバー13から、この後端部のリヤカバー12に亘るカバー隅部に亘って、吹出風が案内されて、リヤカバー12に吹き当たる風圧は、そのまま後方へ逃げることはなく、サイドカバー13下端部の傾斜案内面19側へ案内されて、強く吹き当てられ、切断わらはこの拡散室15内側下方の刈取跡地面に向けて拡散排出される。従って、前記切断部11から切断されて拡散室15に排出される株元部側の切断わらは、前記吹出口17からの排風力によって、前記株元側のサイドカバー13の内側面や、リヤカバー12の内側面に亘るカバー隅部に沿って排出案内されて、このサイドカバー13の下端部に形成の傾斜案内面19に衝突案内されて、単にこの傾斜案内面19に沿って摺動して滑落案内されるだけではなく、この傾斜案内面19上に反射浮揚される状態となり易く、この切断わら排出の浮揚状態において、送風力によって拡散室15の内方へ勢よく吹き飛ばされる。このように、傾斜案内面19によって跳ね飛ばされるようにして反射放出されて、この傾斜案内面19の下端縁から穂先側へできるだけ遠く離間した刈取幅跡地面位置へ拡散排出させる。前記傾斜案内面19の下端縁は、後側のリヤカバー12の下端縁部内、乃至これより上側に位置して、後側面に覆われているため、傾斜案内面19によって、内側へ跳ね飛ばされる切断わらの拡散状態に外風圧を働かせないようにして、わらの拡散放出を円滑に、的確に行わせる。前記のように、傾斜案内面19は、垂直状のサイドカバー13の内側面に対して、この内側面部から下方へ吹き飛ばされる株元部側の切断わらを受けて穂先部側内方へ反射放出するように拡散排出させるものであるから、拡散室15内側への屈曲角をできるだけ小さくして緩やかな傾斜案内面19に形成することが好適であり、略45度に形成して、排稈カッターの配置構成や、刈取穀稈の性状条件の変化に、広範囲に適応し易く設定することができる。
【0008】
又、前記株元側サイドカバー13の内側面、下端部を内側へ屈曲して傾斜案内面19を形成し、この傾斜案内面19の下端縁部には、これよりも内側へ緩傾斜の緩傾斜案内面20を屈曲形成させる。
【0009】
前記株元側サイドカバー13の内側面は、前記傾斜案内面19の下端縁部に、緩傾斜案内面20を屈曲形成するもので、この傾斜案内面19で反射拡散されたわらや、拡散室15の内側部等から飛散されるわら等を、この傾斜案内面19の先端部から内方へ拡散させたいときは、この緩傾斜案内面20に受けられて、拡散室15内方位置へ案内させて排出することができ、この傾斜案内面19直下位置での盛り上がり層を軽減して、均一層分布のわら拡散を行わせる。
【0010】
更に、前記株元側サイドカバー13の下端縁部で、緩傾斜案内面20の前端縁部には、直下に開放する直下開口部21を形成する。
【0011】
前記のように株元側のサイドカバー13内側面部近くに落下される株元部の切断わらは、吹出口17から吹き出される排風によって、下方へ吹き飛ばされて、このサイドカバー13の後部内側部に形成の傾斜案内面19に吹き当てられて、この傾斜案内面19に反射されて、拡散室15の内側方位置へ拡散排出される。又、この傾斜案内面19の下端から落下するわらは、緩傾斜案内面20上面に沿って更に拡散室15内側へ吹き流されて、この緩傾斜案内面20の内端縁部から排出落下される。又、このような株元側のサイドカバー13の内側面近くに排出された切断わらであっても、排風ファン16の排風力による放出力が弱く、又、切断わら片が小さく、軽い等によって、吹出口17近くに落下する切断わらは、この株元側のサイドカバー13の内側面前部近くに落して、下端部の直下開口部21から直接刈取幅跡地面に排出される。この場合、直下開口部21から直接刈取跡地面に排出されるわらは、わら量が少ないため、刈取装置の刈取を邪魔することにはなり難く、又、この緩傾斜案内面20下端縁よりも内方位置に形成される拡散わら層の株元側際縁を乱すことも少い。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明は、排稈カッターの切断部11から下方の拡散室15へ切断排出される株元部側の切断わらは、この拡散室15の前側上部の吹出口17から後側下部へ向けて吹き出す排風力によって、前記株元側のサイドカバー13の内側面や、リヤカバー12の内側面に亘るカバー隅部に沿って排出案内されて、このサイドカバー13の下端部に形成の傾斜案内面19に衝突案内させて、この傾斜案内面19の内方へ勢よく跳ね飛ばすように反射放出させて、この傾斜案内面19の下端縁から穂先側へできるだけ遠くへ離間した刈取幅跡地面位置へ拡散排出させることができる。このため、傾斜案内面19によって拡散室15内方位置へ広く拡散される切断わらは、この傾斜案内面19下端縁直下位置での盛上り層を少くすることができ、刈取走行幅に亘る均一な切断わらの拡散を容易化することができる。又、この切断わらの拡散形態を、排稈カッターを構成する株元側のサイドカバー13と、リヤカバー12とによって主体を構成し、この株元側のサイドカバー13の下端前部に内側へ向けて傾斜の傾斜案内面19を屈曲形成して、吹出口17から吹き出される排風力を利用して、切断わらを拡散排出させるものであるから、構成が簡単、容易であり、軽量化でき、これら拡散室15を覆うリヤカバー12や、サイドカバー13,14等を取外して、拡散室15内部の掃除、点検等のメンテナンス性を高めることができる。又、前記傾斜案内面19の屈曲角度をできるだけ小さく急角度(略45度)に折曲形成することによって、この傾斜案内面19に比重の大きい株元部の切断わらを衝突させて拡散室15内側遠くの位置へ拡散させることができ、拡散を円滑に、的確に行わせて、均一拡散を安定させることができる。
【0013】
又、前記株元側のサイドカバー13の下端部に形成の傾斜案内面19の下端縁に、これよりも緩傾斜の緩傾斜案内面20を屈曲形成することによって、前記上部の傾斜案内面で十分に反射拡散されなかった切断わらが流下してきても、この傾斜案内面20上面を流下案内させて、前記傾斜案内面19の先端縁位置よりも穂先側に遠い位置へ正確に案内して排出することができる。構成も、サイドカバー13の下端部を単に内側へ屈曲するだけであるから簡潔化することができる。又、前記傾斜案内面19は、この株元側のサイドカバー13を内側へ略45度の角度に屈曲させて形成するのに対して、この緩傾斜案内面20は、前記傾斜案内面19の下端縁部を更に内側へ屈曲させて形成するもので、例えば、水平面より略30度に屈曲させて、傾斜案内面19よりも緩傾斜の緩傾斜案内面20を形成すると共に、この緩傾斜案内面20の傾斜方向の長さを適宜に設定することによって、切断わらの拡散排出位置を所望位置に決めることができ、この緩傾斜案内面20の傾斜角が緩傾斜であっても、前記吹出口17から排風作用によって、緩傾斜案内面20上面の切断わらを掃き飛ばすようにして排出させることができ、円滑な拡散排出を行わせる。
【0014】
更に、前記傾斜案内面19の下端縁部において、この後側部には緩傾斜案内面20を形成すると共に、前側部には直下に開放する直下開口部21を形成したもので、この前側上部に形成される吹出口17から吹き出される排風力の当り難い拡散室15の前部少量域の切断わらを、この株元側のサイドカバー13、乃至傾斜案内面19の下端縁から直下開口部21を経て直接下方へ排出案内させることができ、特に緩傾斜案内面20を形成して画一的に穂先側寄り位置に決めた拡散分布域を、株元側の盛り上がりを少くした状態で、株元側へも少量分散させて、刈取走行幅全長に亘って拡散排出することができる。従って、前記緩傾斜案内面20を部分的に形成すると、この緩傾斜案内面20が形成されない部分では、これよりも株元側の位置に直下開口部21から切断わらを落下し、緩傾斜案内面20を設けた部分では、拡散室15内側へ飛散排出して、わらの飛散排出方向を刈取走行幅方向へ分散することができ、理想に近い拡散させることができ、サイドカバー13の形状によって、簡単に安価に生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】コンバインの脱穀、排稈カッター部の平面図。
図2】その背面図。
図3】その側面図。
図4】その株元側サイドガイド部の背面図。
図5】その株元側サイドガイド部を拡散室内側から見た斜視図。
図6】その別実施例を示す斜視図。
図7】その別実施例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面に基づいて、コンバインの脱穀装置24は、刈取装置の後側に配置されて、多条刈取形態に刈取搬送される穀稈の供給を受けて、後部へ搬送しながら脱穀処理する。脱穀装置24は、脱穀室25内に、前後方向に沿う扱胴軸26周りに回転する扱胴27を軸装し、この脱穀室25の一側に沿って開口する扱口28に沿って、フィードチエン29と、これと対向してフィードチエン29の回転を摺動案内する挟扼杆とを設けて、このフィードチエン29の回転により、前端部に供給される刈取穀稈の株元部を挟持して、穂先部を脱穀室25内へ供給して、前側の供給口33から後側の排出口30へ搬送しながら、扱胴27による脱穀作用を行わせる。
【0017】
前記脱穀室25の後側に排稈室31、及び排稈装置10を設け、この排稈室31の後側端に排稈カッター32を着脱自在に配置する。排稈室31の株元部側下側には、シロッコファン形態の排風ファン16を構成し、このファン16を回転することにより、脱穀室25、乃至後部排稈室31の選別、排塵等を吸引して、この吸引風を後側の吹出口17から、排稈カッター32下部の拡散室15内へ排風するように構成している。前記排稈装置10は、株元側と穂先側との平行な二連のチェンを後方穂先より位置へ向けて斜め方向へ掛け渡して、下側に沿うガイドレール上面を摺動回転させることによって、前記排出口30から排出される脱穀済排稈を受継挟持して、排稈室31の上部を後方へ搬送する。この排稈装置10による排稈作用は、排稈の稈身方向を横倒姿勢として、株元部をフィードチエン29乃至排風ファン16の側に向け、穂先部をこれらとは反対の側へ向けた状態、姿勢を維持して行われる。この排稈装置10の終端部に切替ガイド34を設け、この切替ガイド34を下側に位置させて、排稈カッター32の上側に位置させるときは、排稈装置10による排稈作用は、排稈カッター32の後側位置へ直接排送されるが、切替ガイド34を上側へ回動して排稈通路を交差することによって、排稈が下側の排稈カッター32の切断部11側へ供給案内される。この切替ガイド34によって排稈カッター32の切断部11へ落下供給される排稈は、稈身をこの切断部11、乃至カッター軸3、ローター軸6等と平行状態にして供給されて、全長を略同時に短かく切断される。
【0018】
前記排稈カッター32のカッター軸3やローター軸6、排稈装置10、及び排風ファン16等は、コンバイン本体側の連動部から伝動回転される。又、コンバインは、左右一対のクローラ40、41を有して、刈取走行することができるが、多条刈取形態の刈取装置を装着するコンバインでは、この株元側の側端部に配置される分草杆42が、コンバイン作業の折返し復行程時において、これから刈取ろうとする刈取幅の穂先側横外側端の穀稈Aの外側部と、往行程において切断排出されたわら層Bの株元側わら層C端部との間に位置して、分草推進するようになり、従って、この分草杆42位置のわら層C端部が接近した位置にあると、分草杆42によってわら層Cの一部を刈取穀稈A側へ掻き取って、刈取穀稈Aと共に刈取装置へ取込んで脱穀装置24へ搬送することが起こり易いものであるが、この発明では、このわら層C端部の盛り上がりを低くするため、分草杆42がこのわら層Cに接近して通っても掻き取りを少くすることができる。
【0019】
ここにおいて、この発明は、回転外周縁に切刃縁1を形成の刃盤2を配置したカッター軸3と、この切刃縁1と対向接近して排稈掻込回転する掻込縁4を形成の掻込盤5を配置したローター軸6とを、カッタフレーム7の株元側、穂先側の左右両側のサイドフレーム8,9間に亘って平行に軸装して、脱穀排稈装置10から供給される排稈を受けて掻込みしながら切断排出する切断部11を構成し、このカッタフレーム7の下側には、後側のリヤカバー12部と左右両側のサイドカバー13,14部として覆う拡散室15を形成して、この拡散室15の株元部寄前側部には排風ファン16の吹出口17を形成して、前記切断部11から切断排出される切断わらを、コンバイン車体の刈取走行跡域に亘って拡散排出しながら排稈処理するコンバインにおける排稈カッターの拡散装置において、前記リヤカバー12の株元側端部の株元側サイドカバー13内側面に、下端部を内側へ屈曲して傾斜案内面19を形成して、前記拡散排風ファン16による吹出口17からの排風によって、株元側切断わらを、この株元側サイドカバー13の内側面に吹き出して拡散案内させることを特徴とするコンバインにおける排稈カッターの拡散装置の構成とする。
【0020】
コンバイン作業において、刈取装置部で刈取られた穀稈が脱穀装置に送込まれて脱穀されて、この脱穀済排稈が排稈装置10で後方へ搬送されて、排稈カッターのカッタ軸3及びローター軸6間の切断部11に供給されて、下側の拡散室15内へ排出される。この拡散室15には、株元側寄り位置の吹出口17から排風ファン16による排風作用が行われていて、この株元側のサイドカバー13から、この後端部のリヤカバー12に亘るカバー隅部に亘って、吹出風が案内されて、リヤカバー12に吹き当たる風圧は、そのまま後方へ逃げることはなく、サイドカバー13下端部の傾斜案内面19側へ案内されて、強く吹き当てられ、切断わらはこの拡散室15内側下方の刈取跡地面に向けて拡散排風される。従って、前記切断部11から切断されて拡散室15に排出される株元部側の切断わらは、前記吹出口17からの排風力によって、前記株元側のサイドカバー13の内側面や、リヤカバー12の内側面に亘るカバー隅部に沿って排出案内されて、このサイドカバー13の下端部に形成の傾斜案内面19に衝突案内されて、単にこの傾斜案内面19に沿って摺動して滑落案内されるだけではなく、この傾斜案内面19上に反射浮揚される状態となり易く、この切断わら排出の浮揚状態において、送風力によって拡散室15の内方へ勢よく吹き飛ばされる。このように、傾斜案内面19によって跳ね飛ばされるようにして反射放出されて、この傾斜案内面19の下端縁から穂先側へできるだけ遠く離間した刈取幅跡地面位置へ拡散排出させる。前記傾斜案内面19の下端縁は、後側のリヤカバー12の下端縁部内、乃至これより上側に位置して、後側面に覆われているため、傾斜案内面19によって、内側へ跳ね飛ばされる切断わらの拡散状態に外風圧を働かせないようにして、わらの拡散放出を円滑に、的確に行わせる。前記のように、傾斜案内面19は、垂直状のサイドカバー13の内側面に対して、この内側面部から下方へ吹き飛ばされる株元部側の切断わらを受けて穂先部側内方へ反射放出するように拡散排出させるものであるから、拡散室15内側への屈曲角をできるだけ小さくして緩やかな傾斜案内面19に形成することが好適であり、略45度に形成して、排稈カッターの配置構成や、刈取穀稈の性状条件の変化に、広範囲に適応し易く設定することができる。
【0021】
又、前記株元側サイドカバー13の内側面、下端部を内側へ屈曲して傾斜案内面19を形成し、この傾斜案内面19の下端縁部には、これよりも内側へ緩傾斜の緩傾斜案内面20を屈曲形成する。
【0022】
前記株元側サイドカバー13の内側面は、前記傾斜案内面19の下端縁部に、緩傾斜案内面20を屈曲形成するもので、この傾斜案内面19で反射拡散されたわらや、拡散室15の内側部等から飛散されるわら等を、この傾斜案内面19の先端部から内方へ拡散させたいときは、この緩傾斜案内面20に受けられて、拡散室15内方位置へ案内させて排出することができ、この傾斜案内面19直下位置での盛り上がり層を軽減して、均一層分布のわら拡散を行わせる。
【0023】
又、前記株元側サイドカバー13の下端縁部で、緩傾斜案内面20の前端縁部には、直下に開放する直下開口部21を形成する。
【0024】
前記のように株元側のサイドカバー13内側面部近くに落下される株元部の切断わらは、吹出口17から吹き出される排風によって、下方へ吹き飛ばされて、このサイドカバー13の後部内側部に形成の傾斜案内面19に吹き当てられて、この傾斜案内面19に反射されて、拡散室15の内側方位置へ拡散排出される。又、この傾斜案内面19の下端から落下するわらは、緩傾斜案内面20上面に沿って更に拡散室15内側へ吹き流されて、この緩傾斜案内面20の内端縁部から排出落下される。又、このような株元側のサイドカバー13の内側面近くに排出された切断わらであっても、排風ファン16の排風力による放出力が弱く、又、切断わら片が小さく、軽い等によって、吹出口17近くに落下する切断わらは、この株元側のサイドカバー13の内側面前部近くに落して、下端部の直下開口部21から直接刈取幅跡地面に排出される。この場合、直下開口部21から直接刈取跡地面に排出されるわらは、わら量が少ないため、刈取装置の刈取を邪魔することにはなり難く、又、この緩傾斜案内面20下端縁よりも内方位置に形成される拡散わら層の株元側際縁を乱すことも少い。
【0025】
前記株元側のサイドカバー13は、垂直面状に形成し、この下端部に形成する傾斜案内面19の角度は略45度に形成し、サイドカバー13上面部との間に折曲げた屈曲部35を形成する。又、この傾斜案内面19の下端部の緩傾斜案内面20との間にも内側に折曲げた屈曲部36を形成する。このように、各傾斜案内面19や、緩傾斜案内面20等の間の屈曲部に角部を形成することによって、比較的薄い板金製、乃至合成樹脂製であっても、全体として剛性を高めて軽量で安定した拡散カバーの形態とすることができ、傾斜案内面19や、緩傾斜案内面20を平板面形態として、単にわらを滑落案内させるだけでなく、反発、反射させて、切断わらを傾斜案内面19、緩傾斜案内面20上に浮上させるようにして、吹出口17からの排風を当てて穂先側寄拡散室15へ落下案内することにより、わらの拡散効果を高めることができる。特に、わらの湿度が高いときは、わらが傾斜案内面19や緩傾斜案内面20に付着し難く、拡散排出が効果的に行われる。
【0026】
又、前記傾斜案内面19の下端縁部に形成する直下開口部21は、この傾斜案内面19の下端縁の前後方向幅を、前側半分程に切り欠いだ形態(図5)とするもよく、緩傾斜案内面20部を前後対角線方向に斜め方向に切り欠きした形態(図6)とするもよく、又、これら緩傾斜案内面20から傾斜案内面19の前下端面部に亘って深く傾斜する形態(図7)に形成することも可能である。いずれの形態においても、吹出口17から排風されて吹き飛ばされる切断わらは、傾斜案内面19の前半部面上に集中して吹出落下されるため、前記緩傾斜案内面20部から拡散排出されるわら量は多く、これに対して、吹出口19から後側へ吹き飛ばされる作用力が小さく、傾斜案内面19の前端部側に排出される比較的比重の軽いわらは、少量として直下開口部21から直下位置に排出されて、この株元側のわら層C端部の盛り上がりを低くすることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 切刃縁
2 刃盤
3 カッター軸
4 掻込縁
5 掻込盤
6 ローター軸
7 カッターフレーム
8 サイドフレーム
9 サイドフレーム
10 排稈装置
11 切断部
12 リヤカバー
13 サイドカバー
14 サイドカバー
15 拡散室
16 排風ファン
17 吹出口
19 傾斜案内面
20 緩傾斜案内面
21 直下開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7