特許第6566237号(P6566237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6566237
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】羽根駆動装置および光学機器
(51)【国際特許分類】
   G03B 9/36 20060101AFI20190819BHJP
【FI】
   G03B9/36 D
   G03B9/36 E
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-66192(P2015-66192)
(22)【出願日】2015年3月27日
(65)【公開番号】特開2016-186537(P2016-186537A)
(43)【公開日】2016年10月27日
【審査請求日】2018年1月11日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】396004981
【氏名又は名称】セイコープレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】大石 誠一
(72)【発明者】
【氏名】戸倉 翔一
【審査官】 藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−145651(JP,A)
【文献】 実開昭52−046725(JP,U)
【文献】 特開平09−005831(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0158635(US,A1)
【文献】 特開2001−281732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
9/08 − 9/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する台板と、
前記台板と対向するように配置される羽根受板と、
前記台板と前記羽根受板との間に設けられ、前記開口を閉じた展開位置において展開され、前記開口を開いた収納位置において重なりつつ収納される複数の羽根と、
レリーズ前の前記収納位置において前記羽根の側縁部が当接する当接面を有する規制部材と、
を備え、
前記当接面の少なくとも一部は、前記台板側から前記羽根受板側に向かうにしたがい、前記台板側に傾斜し、前記羽根の側縁部が当接する傾斜面となっており、
前記羽根が前記収納位置から前記展開位置に移動することにより露光を行うことを特徴とする羽根駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の羽根駆動装置であって、
前記傾斜面は、前記規制部材における前記羽根受板側の端部に設けられていることを特徴とする羽根駆動装置。
【請求項3】
請求項1に記載の羽根駆動装置であって、
前記傾斜面は、前記当接面の全面に設けられていることを特徴とする羽根駆動装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の羽根駆動装置であって、
前記当接面は、前記規制部材の本体部に保持され、
前記当接面の硬度は、前記本体部の硬度よりも高いことを特徴とする羽根駆動装置。
【請求項5】
請求項4に記載の羽根駆動装置であって、
前記規制部材の前記本体部は、弾性部材により形成されていることを特徴とする羽根駆動装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の羽根駆動装置を備えることを特徴とする光学機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、羽根駆動装置および光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラやスチールカメラ等の光学機器には、羽根を駆動させる駆動部材を備えた羽根駆動装置が採用されている。羽根駆動装置は、開口部を有する地板(台板)と、開口部を開閉する先幕シャッター羽根群および後幕シャッター羽根群と、を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、近年の羽根駆動装置では、単位時間当たりに撮影可能なコマ数(コマ速度)を向上するべく、連続動作時における羽根の動作間隔の短縮化が要求されている。羽根の動作間隔を短縮するためには、連続動作時の羽根の移動速度のバラつきを抑制することが重要である。連続動作時の羽根の移動速度のバラつきを抑制するためには、羽根が展開する前の初期位置について、動作毎に所定位置に安定させることが有効であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−58400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術の羽根駆動装置にあっては、羽根の初期位置については何ら考慮されていない。したがって、連続動作時の羽根の移動速度のバラつきを抑制し、羽根の動作間隔を短縮するという点で改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みたものであって、連続動作時の羽根の移動速度のバラつきを抑制し、羽根の動作間隔を短縮することができる羽根駆動装置および光学機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の羽根駆動装置は、開口を有する台板と、前記台板と対向するように配置される羽根受板と、前記台板と前記羽根受板との間に設けられ、前記開口を閉じた展開位置において展開され、前記開口を開いた収納位置において重なりつつ収納される複数の羽根と、レリーズ前の前記収納位置において前記羽根の側縁部が当接する当接面を有する規制部材と、を備え、前記当接面の少なくとも一部は、前記台板側から前記羽根受板側に向かうにしたがい、前記台板側に傾斜し、前記羽根の側縁部が当接する傾斜面となっており、前記羽根が前記収納位置から前記展開位置に移動することにより露光を行うことを特徴としている。
【0008】
本発明によれば、羽根の収納時において羽根の側縁部が当接する当接面を有する規制部材を備えているので、羽根の収納時において移動方向における各羽根の側縁部の位置が規制部材により規制される。これにより、羽根は、動作毎において、移動方向における初期位置をバラつきなく決定することができる。
また、当接面の少なくとも一部は、台板側から羽根受板側に向かうにしたがい、台板側に傾斜する傾斜面となっているので、傾斜面に当接した羽根は、台板側に向かって移動する。これにより、少なくとも一部の羽根同士は、所定の位置で互いに接することができるので、動作毎において、接した羽根同士の展開移動時における摺動抵抗を安定させることができる。
このように、移動方向における初期位置をバラつきなく決定することができるとともに、接した羽根同士の展開移動時における摺動抵抗を安定させることができるので、連続動作時の羽根の移動速度のバラつきを抑制し、羽根の動作間隔を短縮することができる。
【0009】
また、前記傾斜面は、前記規制部材における前記羽根受板側の端部に設けられていることを特徴としている。
【0010】
本発明によれば、傾斜面は、規制部材における羽根受板側の端部に設けられているので、羽根の収納時において羽根受板側から台板側に向かって羽根を移動させることができる。これにより、羽根同士は、羽根受板側から台板側に亘って所定の位置で互いに接することができるので、動作毎において、接した羽根同士の展開移動時における摺動抵抗を安定させることができる。したがって、連続動作時の羽根の移動速度のバラつきを抑制し、羽根の動作間隔を短縮することができる。
【0011】
また、前記傾斜面は、前記当接面の全面に設けられていることを特徴としている。
【0012】
本発明によれば、傾斜面は、当接面の全面に設けられているので、羽根の収納時において羽根受板側から台板側に向かって全ての羽根を確実に移動させることができる。これにより、羽根同士は、羽根受板側から台板側に亘って所定の位置で互いに接することができるので、動作毎において、接した羽根同士の展開移動時における摺動抵抗を安定させることができる。したがって、連続動作時の羽根の移動速度のバラつきを抑制し、羽根の動作間隔を短縮することができる。
【0013】
また、前記当接面は、前記規制部材の本体部に保持され、前記当接面の硬度は、前記本体部の硬度よりも高いことを特徴としている。
【0014】
本発明によれば、当接面の硬度は、本体部の硬度よりも高いので、羽根の収納時において、羽根が規制部材の当接面に当接したときに、摩耗粉等の塵埃が発生するのを抑制しつつ、傾斜面上において滑らかに羽根を摺動させることができる。したがって、羽根の動作間隔をさらに短縮することができる、信頼性に優れた羽根駆動装置とすることができる。
【0015】
また、前記規制部材の前記本体部は、弾性部材により形成されていることを特徴としている。
【0016】
本発明によれば、規制部材の本体部が弾性部材により形成されているので、羽根の収納時において、羽根が規制部材の当接面に当接したときの衝撃を、規制部材の本体部により吸収することができる。これにより、羽根が損傷するのを防止できるので、羽根駆動装置の耐久性を向上することができる。
【0017】
また、本発明の光学機器は、上述のいずれか一つの羽根駆動装置を備えたことを特徴としている。
【0018】
本発明によれば、連続動作時の羽根の移動速度のバラつきを抑制し、羽根の動作間隔を短縮することができるので、コマ速度が高い高性能な光学機器とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、羽根の収納時において羽根の側縁部が当接する当接面を有する規制部材を備えているので、羽根の収納時において移動方向における各羽根の側縁部の位置が規制部材により規制される。これにより、羽根は、動作毎において、移動方向における初期位置をバラつきなく決定することができる。
また、当接面の少なくとも一部は、台板側から羽根受板側に向かうにしたがい、台板側に傾斜する傾斜面となっているので、傾斜面に当接した羽根は、台板側に向かって移動する。これにより、少なくとも一部の羽根同士は、所定の位置で互いに接することができるので、動作毎において、接した羽根同士の展開移動時における摺動抵抗を安定させることができる。
このように、移動方向における初期位置をバラつきなく決定することができるとともに、接した羽根同士の展開移動時における摺動抵抗を安定させることができるので、連続動作時の羽根の移動速度のバラつきを抑制し、羽根の動作間隔を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】光学機器のブロック図である。
図2】羽根駆動装置の正面図であって、露光を終了した直後の状態を示している。
図3】羽根駆動装置の正面図であって、初期状態を示している。
図4】羽根駆動装置の正面図であって、露光中の状態を示している。
図5図3のV−V線における断面図である。
図6】変形例の羽根駆動装置の説明図であって、図3のV−V線に相当する部分における断面図である。
図7】変形例の羽根駆動装置の説明図であって、図3のV−V線に相当する部分における断面図である。
図8】変形例の羽根駆動装置の説明図であって、図3のV−V線に相当する部分における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(光学機器)
図1は、光学機器のブロック図である。
図1に示すように、光学機器1は、例えばデジタルカメラやスチールカメラ等であって、制御部2と、撮像素子4と、羽根駆動装置10と、を備えている。
制御部2は、光学機器1の全体の動作を制御しており、CPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えている。制御部2は、後述する羽根駆動装置10の動作を制御する。
【0022】
撮像素子4は、例えばCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等であって、光により形成された被写体像を電気信号に変換する。
なお、光学機器1は、図1には図示していないが、焦点距離を調整するためのレンズ等を備えている。
【0023】
(羽根駆動装置)
図2から図4は、羽根駆動装置の正面図であって、図2は露光を終了した直後の状態(露光終了状態)を示し、図3は初期状態(チャージ状態)を示し、図4は露光中の状態を示している。図5は、図3のV−V線における断面図である。
羽根駆動装置10は、いわゆるフォーカルプレーンシャッターと称されるものである。図2から図4に示すように、羽根駆動装置10は、台板11と、羽根受板15と、仕切り板21と、羽根31a〜34a,31b〜34bと、駆動アーム41a,42a,41b,42bと、電磁石70A,70Bと、規制部材80と、を有している。
【0024】
図2に示すように、台板11は、合成樹脂製であり、矩形状の開口12を有している。台板11は、羽根駆動装置10のうち、光学機器1のレンズに対して最も近く配置される部材である。
羽根受板15は、台板11の背面において、台板11に対向するように配置されている(図5参照)。羽根受板15は、合成樹脂製であり、矩形状の開口16を有している。羽根受板15の開口16は、平面視において台板11の開口12と略一致するように形成されている。
【0025】
仕切り板21は、台板11と羽根受板15との間において、台板11および羽根受板15に沿うように配置されている(図5参照)。仕切り板21は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)等の合成樹脂製であり、平面視において台板11および羽根受板15よりもやや小さく形成されている。仕切り板21は、矩形状の開口22を有している。仕切り板21の開口22は、平面視において台板11の開口12および羽根受板15の開口16と略一致するように形成されている。
【0026】
羽根31a〜34a,31b〜34bは、開口12,16,22を閉じた状態において展開され、開口12,16,22を開いた状態において重なりつつ収納される(図2から図4参照)。羽根31a〜34a,31b〜34bは、合成樹脂製であり、薄く形成されている。羽根31a〜34a,31b〜34bの材質は、仕切り板21と同一の硬度を有することが望ましく、例えば仕切り板21と同種材料が好適である。駆動アーム41a,42a,41b,42bは、強度を保つため金属の薄板で形成されている。羽根31a〜34a,31b〜34bは、開口12,16,22から退避した位置と開口12,16,22の少なくとも一部と重なる位置との間を移動する。なお、以下の説明では、羽根31a〜34a,31b〜34bが展開された状態を「展開状態」といい、展開状態における羽根31a〜34a,31b〜34bの位置を「展開位置」という。また、羽根31a〜34a,31b〜34bが収納された状態を「収納状態」といい、収納状態における羽根31a〜34a,31b〜34bの位置を「収納位置」という。
【0027】
4枚の羽根31a〜34aは、先幕30Aを構成する。先幕30Aは、羽根受板15と仕切り板21との間に配設されている。4枚の羽根31b〜34bは、後幕30Bを構成する。後幕30Bは、台板11と仕切り板21との間に配設されている。なお図2は、先幕30Aが収納状態であり後幕30Bが展開状態である場合を示している。図2の場合には、先幕30Aは開口12,16,22から退避し、後幕30Bが開口12,16,22を閉じている。
【0028】
先幕30Aは、駆動アーム41a,42aに連結されている。後幕30Bは、駆動アーム41b,42bに連結されている。より具体的に、羽根31bは、駆動アーム41b,42bと回転可能に連結されている。羽根31bおよび駆動アーム41b,42bは、平行リンク機構として機能する。羽根32bは、羽根31bと同様に、駆動アーム41b,42bと回転可能に連結されている。その他の羽根33b,34bも、羽根31b,32bと同様の構造により駆動アーム41b,42bに連結されている。先幕30Aと駆動アーム41a,42aとの連結も、上記の後幕30Bと駆動アーム41b,42bとの連結と同様である。駆動アーム41a,42a,41b,42bは、それぞれ台板11に揺動自在に支持されている。
【0029】
台板11には、駆動アーム41a,42bをそれぞれ駆動するための先幕駆動レバー45Aおよび後幕駆動レバー45Bが設けられている。先幕駆動レバー45Aおよび後幕駆動レバー45Bは、台板11に所定の範囲を揺動可能に支持されている。詳細には、先幕駆動レバー45Aは、台板11に形成された軸を中心にして揺動可能に支持されており、台板11に形成された溝によりその揺動範囲が規定されている。後幕駆動レバー45Bも同様である。
【0030】
駆動アーム41aは、先幕駆動レバー45Aに連結されている。駆動アーム42bは、後幕駆動レバー45Bに連結されている。先幕駆動レバー45Aが揺動することにより、駆動アーム41aが揺動し、これにより先幕30Aが移動する。同様に、後幕駆動レバー45Bが揺動することにより、駆動アーム42bが揺動し、これにより後幕30Bが移動する。
【0031】
先幕駆動レバー45Aおよび後幕駆動レバー45Bは、それぞれ鉄片を保持している。先幕駆動レバー45Aは、鉄片が電磁石70Aに当接した位置から、鉄片が電磁石70Aから退避した位置の間を揺動可能である。後幕駆動レバー45Bについても同様である。
【0032】
また、先幕駆動レバー45Aは、不図示のバネにより電磁石70Aから離れる方向に付勢されている。同様に、後幕駆動レバー45Bは、不図示のバネにより電磁石70Bから離れる方向に付勢されている。
【0033】
先幕駆動レバー45Aおよび後幕駆動レバー45Bには、上述したバネを介して、それぞれラチェット車50A,50Bが係合している。先幕駆動レバー45Aを電磁石70Aから離れる方向に付勢するバネの一端はラチェット車50Aに係合しており、バネの他端は先幕駆動レバー45Aに係合している。ラチェット車50Aの回転量を調整することにより、バネの付勢力を調整することができる。ラチェット車50Bも、ラチェット車50Aと同様の機能を有している。
【0034】
電磁石70Aは、通電されることにより、先幕駆動レバー45Aの鉄片を吸着可能となる。同様に、電磁石70Bも通電されることにより、後幕駆動レバー45Bの鉄片を吸着可能となる。
【0035】
図5に示すように、台板11には、台板11の外縁部から羽根受板15側に向かって立設された側壁11aと、側壁11aの先端部から開口12側に向かって突出した突起部11bと、側壁11aの基端部における内側に設けられた嵌入溝11cと、が形成されている。側壁11aの先端には、羽根受板15が当接している。嵌入溝11cには、規制部材80が嵌入されている。
【0036】
規制部材80は、直方体状に形成されている。規制部材80は、台板11と羽根受板15との間において、後幕30Bの羽根31b〜34bと、台板11の側壁11aと、の間に配置されている。規制部材80の台板11側の端部は、嵌入溝11cに嵌入されて接着等により固定されている。規制部材80の羽根受板15側の端部は、羽根受板15に当接するとともに、台板11の突起部11bと、仕切り板21の端縁と、により挟持されている。規制部材80は、本体部81と、本体部81に保持された当接面82と、を有する。
【0037】
本体部81は、弾性部材により形成されている。本体部81を形成する材料としては、例えばウレタンフォームやゴム材等が好適である。
当接面82は、本体部81の硬度よりも高い硬度を有する材料により形成される。本実施形態では、当接面82は、PETからなる板部材を本体部81に貼付して保持させることにより形成される。なお、当接面82を形成する材料は、PETに限定されることはなく、PET以外の樹脂材料やアルミニウム等の金属材料であってもよい。
当接面82には、後幕30Bの羽根31b〜34bの収納時において、羽根31b〜34bにおける台板11の側壁11a側の側縁部31b1〜34b1が当接する。当接面82は、羽根31b〜34bに対する摩擦が小さくなるように、平滑な平面状に形成されている。
【0038】
規制部材80は、台板11の嵌入溝11cに嵌入されることで、突起部11bにより側壁11aに対して傾斜した状態とされている。具体的に、規制部材80は、台板11側から羽根受板15側に向かうにしたがい、突起部11bにより側壁11aから離間するように配置されている。これにより、規制部材80の当接面82の全面は、台板11側から羽根受板15側に向かうにしたがい、台板11側に傾斜する傾斜面83となっている。
【0039】
次に、羽根駆動装置10の動作について説明する。
図3に示すように、羽根駆動装置10は、初期状態においては、不図示のセットレバーが初期位置に固定されており、先幕30Aは展開状態にあり、後幕30Bは収納状態にある。この初期状態において、先幕駆動レバー45Aおよび後幕駆動レバー45Bの鉄片は、それぞれ電磁石70A,70Bに当接し、これに吸着可能な初期位置にセットされている。
【0040】
撮影に際して、光学機器1のレリーズボタンが押されると、電磁石70A,70Bのコイルが通電され、先幕駆動レバー45Aの鉄片は電磁石70Aに吸着され、後幕駆動レバー45Bの鉄片は電磁石70Bに吸着される。その後、セットレバーは、先幕駆動レバー45Aおよび後幕駆動レバー45Bから退避する。ここで、先幕駆動レバー45Aおよび後幕駆動レバー45Bはそれぞれ電磁石70A,70Bに吸着された状態で保持されている。
【0041】
その後、電磁石70Aのコイルの通電が遮断されると、図4に示すように、先幕駆動レバー45Aはバネの付勢力に従って時計回り方向に回転する。これにより、先幕30Aは開口12,16,22から退避して収納状態となる。また、所定期間電磁石70Bのコイルへの通電が維持され、後幕30Bは開口12,16,22から退避した収納状態に維持される。これにより、開口12,16,22は開いた状態(露光状態)となる。
【0042】
レリーズボタンが押されてから所定期間経過後に電磁石70Bのコイルへの通電が遮断され、バネの付勢力により後幕駆動レバー45Bが時計回り方向に回転する。これにより、図2に示すように、後幕30Bは展開して開口12,16,22を閉じる。このようにして1回の撮影が終了する。
【0043】
次に、不図示のセットレバーにより先幕駆動レバー45A、後幕駆動レバー45Bが反時計回り方向に回転させられる。これにより、先幕30Aは展開されて開口12,16,22を閉じ、後幕30Bは収納されて開口12,16,22から退避し、図3に示す初期状態に戻る。
この際、図5に示すように、後幕30Bの羽根31b〜34bにおける側壁11a側の側縁部31b1〜34b1は、規制部材80の当接面82に当接する。
【0044】
ここで、当接面82は、台板11側から羽根受板15側に向かうにしたがい、台板11側に傾斜した傾斜面83となっている。羽根31b〜34bに作用する駆動力のベクトルは、側縁部31b1〜34b1が傾斜面83に当接することで、羽根31b〜34bが展開位置から規制部材80に向かう方向(矢印Aが指向する方向)から、傾斜面83に沿う方向(矢印Bが指向する方向)に変化する。このため、羽根31b〜34bは、側縁部31b1〜34b1が傾斜面83に当接した後、傾斜面83を摺動し、台板11側に向かって移動する。これにより、羽根31b〜34bは、互いに接した状態で収納位置に位置決めされる。したがって、羽根駆動装置10は、羽根31b〜34bが収納位置から展開位置へ移動する際に、羽根31b〜34b同士の摺動抵抗を安定させることができる。
【0045】
このように、本実施形態の羽根駆動装置10は、開口12を有する台板11と、台板11と対向するように配置される羽根受板15と、台板11と羽根受板15との間に設けられ、開口12を閉じた状態において展開され、開口12を開いた状態において重なりつつ収納される複数の羽根31b〜34bと、羽根31b〜34bの収納時において羽根31b〜34bの側縁部31b1〜34b1が当接する当接面82を有する規制部材80と、を備える。当接面82は、台板11側から羽根受板15側に向かうにしたがい、台板11側に傾斜する傾斜面83となっている。
【0046】
この構成によれば、羽根31b〜34bの収納時において羽根31b〜34bの側縁部31b1〜34b1が当接する当接面82を有する規制部材80を備えているので、羽根31b〜34bの収納時において移動方向における各羽根31b〜34bの側縁部31b1〜34b1の位置が規制部材80により規制される。これにより、羽根31b〜34bは、動作毎において、移動方向における初期位置をバラつきなく決定することができる。
また、当接面82は、台板11側から羽根受板15側に向かうにしたがい、台板11側に傾斜する傾斜面83となっているので、傾斜面83に当接した羽根31b〜34bは、台板11側に向かって移動する。これにより、羽根31b〜34b同士は、所定の位置で互いに接することができるので、動作毎において、接した羽根31b〜34b同士の展開移動時における摺動抵抗を安定させることができる。
このように、移動方向における初期位置をバラつきなく決定することができるとともに、接した羽根31b〜34b同士の展開移動時における摺動抵抗を安定させることができるので、連続動作時の羽根31b〜34bの移動速度のバラつきを抑制し、羽根31b〜34bの動作間隔を短縮することができる。
【0047】
また、傾斜面83は、当接面82の全面に設けられているので、羽根31b〜34bの収納時において羽根受板15側から台板11側に向かって全ての羽根31b〜34bを確実に移動させることができる。これにより、羽根31b〜34b同士は、羽根受板15側から台板11側に亘って所定の位置で互いに接することができるので、動作毎において、接した羽根31b〜34b同士の展開移動時における摺動抵抗を安定させることができる。したがって、連続動作時の羽根31b〜34bの移動速度のバラつきを抑制し、羽根31b〜34bの動作間隔を短縮することができる。
【0048】
また、当接面82の硬度は、本体部81の硬度よりも高いので、羽根31b〜34bの収納時において、羽根31b〜34bが規制部材80の当接面82に当接したときに、摩耗粉等の塵埃が発生するのを抑制しつつ、傾斜面83上において滑らかに羽根31b〜34bを摺動させることができる。したがって、羽根31b〜34bの動作間隔をさらに短縮することができる、信頼性に優れた羽根駆動装置10とすることができる。
【0049】
また、規制部材80の本体部81が弾性部材により形成されているので、羽根31b〜34bの収納時において、羽根31b〜34bが規制部材80の当接面82に当接したときの衝撃を、規制部材80の本体部81により吸収することができる。これにより、羽根31b〜34bが損傷するのを防止できるので、羽根駆動装置10の耐久性を向上することができる。
【0050】
また、本実施形態の光学機器1は、羽根駆動装置10を備えているため、連続動作時の羽根31b〜34bの移動速度のバラつきを抑制し、羽根31b〜34bの動作間隔を短縮することができるので、コマ速度が高い高性能な光学機器1とすることができる。
【0051】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、規制部材80は、台板11の嵌入溝11cに嵌入されることで台板11に固定されていたが、これに限定されるものではない。規制部材は、台板11と一体的に形成されてもよいし、羽根受板15または仕切り板21に取り付けられてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、規制部材80の傾斜面83は、当接面82の全面に設けられていたが、これに限定されるものではなく、当接面82の少なくとも一部が傾斜面83となっていれば、同様の作用効果が得られる。図6に示すように、規制部材80の傾斜面83は、規制部材80における羽根受板15側の端部に設けられていてもよい。
この構成によれば、傾斜面83は、規制部材80における羽根受板15側の端部に設けられているので、羽根31b〜34bの収納時において羽根受板15側から台板11側に向かって羽根31b〜34bを移動させることができる。これにより、羽根31b〜34b同士は、羽根受板15側から台板11側に亘って所定の位置で互いに接することができるので、動作毎において、接した羽根31b〜34b同士の展開移動時における摺動抵抗を安定させることができる。したがって、連続動作時の羽根31b〜34bの移動速度のバラつきを抑制し、羽根31b〜34bの動作間隔を短縮することができる。
【0053】
また、上記実施形態では、規制部材80は、直方体状に形成され、台板11の突起部11bにより側壁11aに対して傾斜した状態とされているが、これに限定されるものではない。
例えば、図7に示すように、羽根受板15により規制部材80の羽根受板15側の端部を台板11側に向かって押圧することで、規制部材80を側壁11aに対して傾斜した状態とし、当接面82を傾斜させてもよい。また、図8に示すように、規制部材180は、羽根受板15側から台板11側に向かうにしたがい、台板11側に傾斜する当接面182(傾斜面83)を有する断面視台形状のブロック状に形成されてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、規制部材80は、収納状態にある後幕30Bの羽根31b〜34bの側縁部31b1〜34b1に当接するように配置されていたが、これに限定されるものではない。羽根駆動装置は、収納状態にある先幕30Aの羽根31a〜34aの側縁部に当接するように配置された規制部材を備えてもよい。
この構成によれば、収納状態にある先幕30Aの羽根31a〜34aの収納位置のバラつきを抑制できる。これにより、羽根駆動装置10が後幕30Bを展開位置から収納位置へ移動させる際に露光を行う構成である場合にも、先幕30Aを収納位置から展開位置へ移動させる際の羽根31a〜34aの移動速度のバラつきを抑制できる。したがって、羽根31a〜34aの動作間隔を短縮することができる。
【0055】
また、上記実施形態では、羽根駆動装置10は、バネの付勢力により羽根31b〜34bを駆動して露光を行う、いわゆるバネ駆動方式であったが、これに限定されるものではない。羽根駆動装置は、電磁アクチュエータの駆動力により露光を行う、いわゆる電磁駆動方式であっても、上記構成を適用することで、同様の作用効果が得られる。
【0056】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0057】
1…光学機器 10…羽根駆動装置 11…台板 12…開口 15…羽根受板 31b,32b,33b,34b…羽根 31b1,32b1,33b1,34b1…羽根の側縁部 80,180…規制部材 81…本体部 82,182…当接面 83…傾斜面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8