(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材フィルムの一方の面に吸着層を積層し、もう一方の面に粘着剤層を積層してなる、ディスプレイパネルの情報表示画面に硬質の透明保護カバーを貼着するための両面粘着フィルムであって、前記吸着層はシリコーン樹脂組成物を架橋剤で架橋してなり、前記シリコーン樹脂組成物は少なくとも、重量平均分子量(Mw)が25,000〜700,000であるシリコーン樹脂を70.0〜99.0重量%と、重量平均分子量(Mw)が25,000未満であるシリコーン樹脂を0.5〜15.0重量%含有し、前記吸着層表面のマルテンス硬度が30〜70mN/mm2であることを特徴とする両面粘着フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の両面粘着フィルム及びそれを用いた情報表示画面用の保護部材を、その構成要素に基づいて、さらに詳しく説明する。
【0015】
(全体構成)
本発明の情報表示画面用の保護部材は、透明保護カバーと、基材フィルムの一方の面に、吸着層を積層し、もう一方の面に粘着剤層を積層してなり、前記吸着層に貼り合わされたセパレータからなる両面粘着フィルムとを、前記粘着剤層を介して貼り合せた状態で提供されるものである。
【0016】
(透明保護カバー)
本発明の情報表示画面用の保護部材の構成部材のうち、前記透明保護カバーは、波長が380〜780nmの領域の可視光の全光線透過率が80%以上のものを使用することが好ましい。全光線透過率が80%未満の場合には、画面から発せられた光が透明部材を透過しにくくなるので、視認性が低下するからである。材質としては硬質の透明な素材、例えばアクリル、PET、ポリカーボネート、ガラス等が良好に用いられるが、これらに限定される物ではない。なかでもガラスが高硬度で透明性が良い点から好適に用いられる。
【0017】
(全光線透過率の測定方法)
ここでの全光線透過率は、JIS K 7105に準じ、積分球式濁度計(日本電色工業株式会社製、NDH2000)により測定した。
【0018】
前記透明保護カバーの厚みは、硬さと断裁加工性の観点から100〜1,000μmの範囲であることが好ましい。前記透明保護カバーの厚みが100μmより小さいと、前記透明保護カバーを情報表示画面に貼着する際の作業性が低下する場合がある。一方、前記透明保護カバーの厚みが1,000μmを超えると、コストアップとなり、透過率が低下して視認性が低下する場合がある。
【0019】
前記透明保護カバーは、中心線表面粗さRaが5.0μm以下であることが好ましい。中心線表面粗さRaが5.0μmより大きいと、前記粘着剤層が塑性変形しても透明保護カバー表面の凹凸を打ち消しづらくなって、前記吸着層表面の平滑性に影響を与えてしまうために、前記保護部材の吸着層とディスプレイパネルの情報表示画面とを面接触する条件で貼着させる際に、気泡の巻き込みが生じやすくなるからである。
【0020】
前記透明保護カバーには、場合により、光反射防止層を設けることができ、透明保護カバーの片面に光反射防止剤としてITO、SiO
2、TiO
2、ZnO
2等の酸化金属の膜を形成する。このような膜の形成は、例えばITOなどをスパッタリングすることにより行っても良く、この方法によって光反射防止層を形成する場合には、透明性など信頼性が高いものが得られる。
【0021】
また、光反射防止層の形成は、コストの点で好ましい方法として、例えばITO、SiO
2、TiO
2、ZnO
2等の酸化金属の微粉末にアクリル系樹脂のバインダーを加え溶液化又はエマルジョン化し、これをグラビアコーター、スピンコーターなどで塗工するウエット法で形成しても良い。ウエット法における反射防止剤として使用する前記酸化金属の微粉末の粒径は、透視性の点から微細である程好ましく、10〜500nmとすることが好ましいが、この粒径とする場合には、分散性の悪さと二次凝集によって歩留まりが悪くなることから、粒径1.0μmより小さいものが好ましい。
【0022】
(両面粘着フィルム)
本発明の情報表示画面用の保護部材に用いる両面粘着フィルムは、基材フィルムの一方の面に、吸着層を積層し、もう一方の面に粘着剤層を積層してなり、前記吸着層にプラスチックフィルムからなるセパレータを貼り合わせたものであり、さらに前記粘着剤層に、ポリエステル系樹脂フィルムにシリコーン離型処理を施したカバーフィルムを貼り合わせた状態で提供されるものである。
【0023】
(基材フィルム)
本発明で使用する基材フィルムは、各種のプラスチックからなるフィルムであれば、特に限定されない。例えばポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリアミドイミド、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル等よりなるフィルムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。粘着剤層や吸着層の熱架橋時の取り扱い性、コストの面からポリエステルフィルムやポリカーボネートフィルムが好ましい。透明性の点では、ポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。基材の厚みは、用途に応じて適宜選択すればよいが、通常5〜400μm、特に20〜250μmの範囲であるのが好ましい。
【0024】
基材フィルムは、その表面をコロナ放電処理、紫外線照射処理、プラズマ処理、火炎処理したり、必要に応じてアンカー層等を設けてもよい。アンカー層等を積層する方法としては、製膜時に積層するいわゆるインライン法、または製膜したフィルムに積層するいわゆるオフライン法のいずれでもよい。
【0025】
(粘着剤層)
本発明の粘着剤層には、両面粘着フィルムの全光線透過率が80%以上になるような高透明粘着剤が得やすい等の理由から、各種アクリルモノマー及び/またはオリゴマーを共重合して得られるアクリル系共重合体と架橋剤を必須成分とするアクリル系粘着剤が好適に使用することができる。
【0026】
前記架橋剤としては、各種の公知の架橋剤、たとえばイソシアネート系、エポキシ系、金属キレート系、メラミン系等が使用可能であるが、これらに限定されるものではない。またこれら架橋剤は1種類、または2種類以上を同時に使用してもよい。なかでも初期硬化速度が速く、より平滑な面が安定して得られるため、金属キレート系架橋剤が好適に用いられる。
【0027】
金属キレート系架橋剤としては、中心金属イオンとしてアルミニウムイオン、チタンイオン、ジルコニウムイオン等を持ったものが挙げられる。具体例としては、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、ジ―イソ―プロポキシビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ―ノルマル―ブトキシビス(トリエタノールアミン)チタン、ジヒロドキビス(ラクティクアシド)チタン、テトラオクチレングリコールチタン、ジ―イソ―プロポキシビス(アセト酢酸エチル)チタン、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、チタン―1、3プロパンジオキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムエチルアセトアセトネート等が上げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0028】
前記アクリル系共重合体としては、アクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステルに水酸基を持つアクリル酸化合物や水酸基を持つメタクリル酸化合物のほか、酢酸ビニル、ビニルエーテル、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのビニル基含有化合物や、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、アクリル酸プロピレングリコール、アクリルアミド、メタクリルアミド、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸−tert−ブチルアミノエチル等の化合物を必要に応じて共重合したものが用いられる。
【0029】
前記アクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−tert−ブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸イソステアリル、アクリル酸イソボニル、アクリル酸アミル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。またこれらの化合物は単独でも、また2種以上を使用してもよい。
【0030】
前記メタクリル酸エステルとしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸イソボニル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。またこれらの化合物は単独でも、また2種以上を使用してもよい。
【0031】
前記アクリル系粘着剤に用いられるアクリル系共重合体としては、重量平均分子量が10万〜100万の範囲内のものが好ましく用いられる。重量平均分子量が10万より小さいと粘着力が高くなり、粘着剤層と貼合されたカバーフィルムとの剥離が困難になるといった不具合が発生する。また、重量平均分子量が100万を超えると溶液粘度が高くなりすぎて、塗工時に平滑な粘着剤塗工外観が得難い問題がある。また、このアクリル系共重合体のガラス転移点(Tg)は、−20℃以下のものが好ましく使用できる。−20℃よりTgが高いと粘着剤が硬くなり、透明保護カバーに対して適度な粘着力が得られなくなる。
【0032】
本発明における両面粘着フィルムの粘着剤層の厚みは、10〜200μmとすることが適当である。粘着剤層の厚みが10μm未満の場合、粘着力が低下し前記透明保護カバーに対して適度な粘着力が得られなくなる。また、粘着剤層の厚みが200μmを超えた場合は、粘着剤表面の平滑性を高い状態に保つことが困難になり、粘着剤層と透明保護カバーを貼着させて保護部材となした際に、反対側の吸着層表面を平滑に保つことができなくなった結果、情報表示画面に前記保護部材の吸着層を貼り付ける際に、吸着層では吸収不可能なレベルの凹凸を生じてしまい、気泡の巻き込みが生じてしまう。
【0033】
ここでの粘着剤層の形成方法としては、有機溶剤に溶解し粘度を調整した粘着剤を塗工する方法や水に分散し塗工する方法等の公知の方法を用いることができるが、架橋型アクリル系粘着剤の形成方法としては、有機溶剤に溶解し粘度を調整した粘着剤を塗工する方法が一般的である。
【0034】
なお、前記粘着剤の希釈剤としては特に制限無く用いることができる。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ベンゼン、トルエン、酢酸エチルなどの有機溶剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
本発明の粘着剤層の塗工法としては、コンマナイフコーター、ダイコーター、リーバースコーターなどが挙げられる。なお、気泡混入防止の点からからダイコーターが好適である。
【0036】
(カバーフィルム)
本発明の両面粘着フィルムには、粘着剤層面にポリエステル系樹脂フィルムをカバーフィルムとして貼り合わせることが好ましい。カバーフィルムの中心線表面粗さは0.20μm以下であることが好ましく、0.10μm以下であることがより好ましい。中心線表面粗さが0.20μmより大きくなると、カバーフィルム表面の粗さが粘着剤層に転写し、さらに転写してできた粘着剤層表面の凹凸が、透明保護カバーと粘着剤層を貼着して保護部材となした際に、吸着層表面に影響を与えて粘着剤層の塑性変形では打ち消せない凹凸を吸着剤表面に生じさせてしまい、前記保護部材をディスプレイパネルの情報表示画面へ面接触して貼着する条件で貼り付けた際に、気泡の混入が発生しやすくなる。
【0037】
カバーフィルムとして使用されるポリエステル系樹脂フィルムとしては、寸法安定性、透明性、硬さの点で、二軸延伸ポリエステル系フィルムの使用が好ましい。カバーフィルムとなるポリエステル系樹脂フィルムの厚みは10〜200μmの範囲、硬さと断裁加工性から25〜100μmの範囲のものが好ましい。前記の厚みが10μmより薄いとフィルム強度が不足し、カバーフィルム剥離時に破れたり、両面粘着フィルムに貼り合わせる際に、シワが入り易い等の問題が発生する。また、前記厚みが200μmより厚いと、フィルム自体が高価になる等の問題が発生する。
【0038】
また、本発明の両面粘着フィルムを前記の透明保護カバーに粘着剤層を介して貼り合わせる場合には、カバーフィルムを剥離して使用するものであり、前記粘着剤層からカバーフィルムを剥離する際の剥離力を調整するために、前記カバーフィルムの粘着剤層を貼り合わせる面に、シリコーン系剥離剤を塗工しておくことが好ましい。
【0039】
(吸着層)
本発明の吸着層に用いるシリコーン樹脂の性状としては、透明性が高く、ゴムのような柔軟性を持っていて被着体の表面に対しても、吸着層の面が被着体表面に沿うことが求められる。さらに剥離の際には、小さい剥離力で、容易に剥離できることが求められる。また、少なくとも厚み10μm以上で、目付け加工の方法を用いることなく、塗工及び加熱処理だけで架橋吸着層を設けるためには、シリコーン組成物の硬化反応に際して、白金触媒等のもとで、150℃以下の低温短時間で深部まで架橋し、透明で耐熱性、圧縮永久歪み特性に優れかつ低粘度で液状タイプである、1分子中に2個以上のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンと架橋剤としてSiH基を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンとの付加反応により熱架橋する付加反応型液状シリコーン組成物の使用が好ましい。
【0040】
1分子中に2個以上のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンとしては、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンと、両末端及び側鎖にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンと、末端にのみビニル基を有する分岐状ポリオルガノシロキサンと、末端及び側鎖にビニル基を有する分岐状ポリオルガノシロキサンとから選ばれる少なくとも1種を用いると良い。
【0041】
これらのポリオルガノシロキサンの1形態としては、下記一般式(化1)で表せられる、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンや、下記一般式(化2)で表せられる、末端及び側鎖にビニル基を有する分岐状ポリオルガノシロキサンが挙げられる。
【0043】
(式中Rは下記の有機基、nは整数を表す。)
【0045】
(式中Rは下記の有機基、n、mは整数を表す。)
【0046】
このビニル基以外のケイ素原子に結合した有機基(R)は異種でも同種でもよいが、具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基、などのアリール基、又はこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換した同種又は異種の非置換又は置換の脂肪族不飽和基を除く1価炭化水素基で好ましくはその少なくとも50モル%がメチル基であるものなどが挙げられる。また、これらの有機基をもつポリオルガノシロキサンは単独でも2種以上の混合物であってもよい。
【0047】
両末端および側鎖にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンは、上記一般式(化2)中のRの一部がビニル基である化合物である。末端にのみビニル基を有する分岐状ポリオルガノシロキサンは上記一般式(化1)で表せられる化合物である。末端及び側鎖にビニル基を有する分岐状ポリオルガノシロキサンは、上記一般式(化2)中のRの一部がビニル基である化合物である。
【0048】
なお、本発明におけるシリコーン樹脂としては、重量平均分子量(Mw)が25,000〜700,000のものと25,000未満のものがそれぞれ含有量を規定して使用される。
【0049】
前記シリコーン樹脂のMwが700,000を超えてしまうと、組成物の粘度が高くなりすぎて製造時の撹拌が困難になる。
【0050】
前記シリコーン樹脂のうち、重量平均分子量(Mw)が25,000〜700,000の範囲のものを吸着層中に70.0〜99.0重量%含有することで、吸着層塗工液が高粘度となり塗工時の塗工面が平滑なまま動くことなく乾燥硬化できるようになり、表面平滑性の高い吸着層を得ることができる。これにより、前記透明保護カバーと前記粘着剤層を貼り合わせて保護部材となし、情報表示画面に前記保護部材の吸着層を貼り付ける際に、面接触による貼着条件でありながら、情報表示画面と吸着層との間の気泡を巻き込みにくくなる。含有量が99.0重量%を越えると、吸着層が固くなりすぎて必要な吸着力が確保しづらくなる。含有量が70.0重量%未満では、吸着層がやわらかくなり、糊残りの不具合が発生しやすくなる。
【0051】
また、前記シリコーン樹脂のうち、Mwが25,000未満のものは、吸着層中に0.5〜15.0重量%含有することが好ましく、0.5〜10.0重量%含有することがより好ましい。Mwが25,000未満のものを0.5〜15.0重量%含有することで、吸着層を架橋して積層した際の架橋密度が高くなり吸着層の凝集力が上がる為、吸着層を貼り付けた被着体からはがす際に吸着層が破壊されて被着体に残ってしまう現象(いわゆる糊残り)を防止する効果が得られる。含有量が0.5重量%未満では、糊残りを防止する効果が得られない。含有量が15.0重量%を越えると、吸着層塗工液が低粘度となり塗工時に塗工面が動きやすくなって平滑な状態を保って乾燥硬化することが困難になるために、表面平滑性の高い吸着層が得られにくくなる。また、乾燥硬化後の吸着層の硬度が低くなるために、高平滑でないセパレータを貼り合わせて保存すると、セパレータ凹凸の影響を受けて吸着層表面を平滑に保つことが出来なくなる。なお、Mwが25,000未満のシリコーン樹脂の中でも、Mw4,000以上、Mw25,000未満のものが、吸着層を貼り付けた被着体から取り外す際の糊残りを防止する効果がより得られる。
【0052】
また、本発明の吸着層は、たとえば吸着力を上げるための粘着剤や糊残りを防止するための離型剤等、本発明の効果を阻害しない範囲で各種添加剤を含有することができる。
【0053】
ここで架橋反応に用いる架橋剤の例として、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンが挙げられる。前記ポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するものであるが、実用上からは分子中に2個の≡SiH結合を有するものをその全量の50重量%までとし、残余を分子中に少なくとも3個の≡SiH結合を含むものとすることがよい。分子の形状としては、直鎖状、分岐状、環状のものを使用できる。
【0054】
前記アルケニル基を有するポリオルガノシロキサン中のアルケニル基(A)に対する、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン中のSiH基(B)のモル比(A)/(B)が1.0〜2.0の範囲となるように配合することが好ましい。モル比(A)/(B)が1.0未満では架橋密度が不足して、これに伴い凝集力、保持力が低くなってしまうことがあり、逆に2.0を超えると架橋密度が高くなり、適度な吸着力及びタック性が得られず、貼着時に気泡の混入も発生しやすくなる。
【0055】
架橋反応に用いる付加反応触媒は、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とアルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン化合物との反応物、塩化白金酸とビニル基含有シロキサンとの反応物、白金−オレフィン錯体、白金−ビニル基含有シロキサン錯体、ロジウム錯体、ルテニウム錯体などが挙げられる。また、これらのものをイソプロパノール、トルエンなどの溶剤や、シリコーンオイルなどに溶解、分散させたものを用いてもよい。架橋反応した吸着層は、シリコーンゴムのような柔軟性を持ったものとなり、この柔軟性が被着体との密着を容易にさせるものである。
【0056】
前記触媒の添加量は、前記吸着層を形成するシリコーン樹脂組成物の100重量部に対し、貴金属分として5〜2,000ppm、特に10〜500ppmとすることが好ましい。5ppm未満では硬化性が低下し、架橋密度が低くなり、保持力が低下することがあり、2,000ppmを超えると前記シリコーン樹脂組成物の塗工液の使用可能時間が短くなる場合がある。
【0057】
本発明に係るシリコーン樹脂の市販品の形状は、無溶剤型、溶剤型、エマルション型があるが、いずれの型も使用できる。なかでも、無溶剤型は、溶剤を使用しないため、安全性、衛生性、大気汚染の面で非常に利点がある。但し、無溶剤型であっても、所望の膜厚を得るための粘度調節のために、必要に応じてトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソパラフィンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸イソブチルなどのエステル系溶剤、ジイソプロピルエーテル、1、4−ジオキサンなどのエーテル系溶剤、またはこれらの混合溶剤などが使用される。
【0058】
前記溶剤の添加量は、前記シリコーン樹脂組成物100重量部に対し、10〜1,000重量部、特に25〜900重量部とすることが好ましい。10重量部未満では、吸着層と基材の密着性が低下する場合があり、1,000重量部を超えると、前記シリコーン樹脂組成物の塗工液の粘度が低くなりすぎるので、塗工後から硬化までの間に、塗工された吸着層が一部流動し、吸着層表面の均一性が低下してしまう。
【0059】
前述のごとく、吸着層の性状としては、ゴムのような柔軟性を持っていて被着体への貼着時に被着体の表面の凹凸に追従して吸着力を確保することが求められる。そして、例えば前記情報表示画面の保護部材を貼り付けるために両面粘着フィルムを使用する場合、吸着層の膜厚は、被着体に対する吸着層の密着面方向の剪断力を確保するために少なくとも10μm以上、通常は10〜100μmが好ましい。本発明の場合、20〜50μmであることがより好ましい。10μm未満であると被着体に対する保護部材の密着面方向の剪断力が確保できず、特に長期貼り付け時には、両面粘着フィルムや、前記両面粘着フィルムを用いた保護部材が被着体から剥がれ易い。また、吸着層の厚みが100μmを超える場合には、前記シリコーン樹脂組成物の使用量が多くなり、両面粘着フィルムの製造コストの上昇を招いてしまう。
【0060】
前記吸着層の物性としては、前記吸着層表面のマルテンス硬度が30〜70mN/mm
2であることが、吸着層表面の変形を防止でき、取り扱いが容易な点で好ましい。マルテンス硬度が30mN/mm
2未満の場合、前記吸着層表面が柔らかすぎて容易に変形できる様になってしまい、高平滑でないセパレータと貼り合わせた場合、セパレータ表面の凹凸の影響を受けて平滑な吸着層表面を保つことができなくなり、情報表示画面に前記保護部材の吸着層を貼り付ける際に気泡の巻き込みを生じ易くなる。また、マルテンス硬度が70mN/mm
2より大きい場合は、両面粘着フィルム自体の柔軟性が低下して、取扱いが困難になる。
【0061】
(吸着層表面のマルテンス硬度の測定方法)
本発明の両面粘着フィルムを構成する吸着層表面のマルテンス硬度の測定は、超微小押し込み硬さ試験機(株式会社エリオニクス製 ENT―2100)を使用して下記条件にて行った。
使用圧子:球状圧子(半径200μm)
最大荷重:100μN
荷重時間:10sec
保持時間:5sec
徐荷時間:10sec
【0062】
前記吸着層のゲル分率は80.0〜98.0%である事が、被着体である前記情報表示画面に前記保護部材を貼り付けるのに好適である。ゲル分率が80.0%未満の場合は、前記吸着層の架橋密度が低くなりすぎて粘着剤層の凝集力が低下し、前記透明保護カバーと貼り合わせた保護部材の状態で透明保護カバーと両面粘着フィルムを固定することが困難になる(ずれる)。ゲル分率が98.0%を超えた場合は、架橋密度が高くなりすぎて吸着層の凝集力が上がり、被着体に対する十分な吸着力が得られなくなる。
【0063】
(吸着層のゲル分率の測定方法)
本発明の両面粘着フィルムを構成する吸着層のゲル分率は、所定の大きさにカットした基材上に吸着層のみが設けられた粘着フィルムを30分間トルエンに浸漬させ、浸漬後45℃で24時間乾燥した後に浸漬後の吸着層の重量を測定し、あらかじめ測定しておいた浸漬前の吸着層の重量との重量比として求められる。
【0064】
前記吸着層の吸着力は、15mN/25mm〜200mN/25mmの範囲であることが、好ましい。さらに、20mN/25mm〜150mN/25mmの範囲であることがより好ましい。吸着力がこの範囲の値である時に、前記保護部材を情報表示画面に貼り付ける場合に十分な吸着力を持ち、また前記保護部材の情報表示画面からの取り外しが容易となる。吸着力が15mN/25mm未満だと、吸着力が不足し、前記保護部材が外れてしまう場合がある。吸着力が200mN/25mmを超えた場合は前記保護部材の取り外しが困難になる。
【0065】
(吸着層の吸着力測定方法)
本発明の吸着層の吸着力測定は以下の方法にて行った。本発明の両面粘着フィルムを25mm幅にカットし、表面が平滑なアクリル板に前記両面粘着フィルムのカバーフィルムを積層した粘着剤層側から、2kgの荷重ロールを2往復させて吸着層を貼着し、30分間常温放置した後に、粘着剤層面から180度方向に毎分1,200mmの速度で引き剥がした際の引き剥がし力を測定した。
【0066】
(アンカー層)
本発明においては、基材フィルムと吸着層との接着力の向上、および被着体への保護部材の貼着後、前記保護部材を再剥離する際に、前記吸着層と基材フィルム間で剥離することなく、被着体からスムーズに剥離できることを目的として、前記基材フィルムと吸着層との間にアンカー層を設けてもよい。
【0067】
アンカー層の材料としては、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。中でもポリエステル系樹脂またはアクリル系樹脂が、帯電防止性や被膜特性の観点から好ましい。
【0068】
アンカー層塗工液、吸着層塗工液の塗工方法としては、3本オフセットグラビアコーターや5本ロールコーターに代表される多段ロールコーター、ダイレクトグラビアコーター、バーコーター、エアナイフコーター等公知の方法が適宜使用される。
【0069】
(セパレータ)
本発明においては、吸着層の表面の汚れや異物付着を防いだり、両面粘着フィルムのハンドリングを向上させるため、そして特に前記両面粘着フィルムを透明保護カバーに貼り合わせて情報表示画面の保護部材として用いたときに、気泡の混入を抑える目的で、プラスチックフィルムからなるセパレータを吸着層面に貼り合わせて用いる。
【0070】
本発明の両面粘着フィルムのセパレータには、プラスチックフィルムが用いられる。例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム等を挙げることができる。これらの中で、生産性、加工性に優れるポリエステルフィルムが好ましく使用できる。また、このようなポリエステルフィルムには二軸延伸フィルム、一軸延伸フィルム、無延伸フィルムがあり、そのいずれも使用できるが、特に二軸延伸フィルムが汎用的であり好ましく使用できる。プラスチックフィルムの厚さとしては、25〜200μmが好ましく用いられる。25μmより薄いとフィルム強度が不足し、十分な保護性能が得られなかったり、剥離時にフィルムが破れる等の問題が発生する。また、200μmより厚いとフィルム自体が高価になる等の問題が発生する。
【0071】
前記吸着層面に貼り合わせるセパレータの中心線表面粗さRaは0.70μm以下とすることが好ましい。より好ましくは、セパレータの中心線表面粗さが0.50μm以下である。前記中心線表面粗さが0.70μmより大きくなると、本発明の吸着層をもってしてもセパレータ表面の粗さが吸着層面に転写し、透明保護カバーと粘着剤層を貼り合わせて保護部材となした際に、凹凸を吸着剤表面に生じさせてしまい、前記保護部材の吸着層面をディスプレイパネルの情報表示画面へ面接触して貼着する条件にて貼り付けた際に、気泡の混入が発生しやすくなるという問題がある。
【0072】
(表面粗さの測定方法)
本発明における中心線表面粗さの測定は、接触型表面粗さ計(株式会社小坂研究所製、AY−22)を用いて行い、測定した得られた中心線平均粗さRaを用いる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例と比較例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、各実施例中の「部」は特に断ることのない限り重量部を示したものである。
【0074】
(実施例1〜12、比較例1〜3)
両面プラズマ処理された厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、表1に示す吸着層塗工液1〜10を作製し、乾燥後の膜厚が表2の膜厚になるようにダイコーターで塗工し、風速14m/min、風量20m
3/min、100℃の熱風を当てて2分間加熱・乾燥した後、オーブンにて150℃、100秒で架橋させて、実施例1〜12、比較例1〜3の吸着層を形成した。
【0075】
(実施例1〜12、比較例1〜3)
前記の吸着層が形成された各粘着フィルムの吸着層面に、厚さ50μm、中心線表面粗さRaが0.50μmのポリエステルフィルムのセパレータを2本のロール(ゴムロールとメタルロール)にて挟み込み、空気を逃がしながら両者を貼り合わせて、プラズマ処理された厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に吸着層、セパレータが積層された粘着フィルムを得た。
【0076】
(実施例1〜12、比較例1〜3)
前記粘着フィルムの、吸着層が形成された面とは反対側の面に、下記に記載の粘着剤層塗工液を乾燥後の膜厚が表2の膜厚になる様にダイコーターで塗工し、100℃で2分間加熱・乾燥して、粘着剤層を形成した。
(粘着剤層塗工液)
アクリル酸エステル系共重合物 100.0部
(サイデン化学(株)製、サイビノール(登録商標)AT−D45、固形分:50%)
アルミニウムキレート架橋剤(固形分10%) 1.6部
トルエン 9.3部
合計 110.9部
【0077】
(実施例1〜12、比較例1〜3)
前記の粘着剤層が形成された各粘着フィルムの粘着剤面に、シリコーン系剥離剤を塗工した厚さ25μmのカバーフィルム(ポリエチレンテレフタレート製)の剥離剤塗工面を向かい合わせて2本のロール(ゴムロールとメタルロール)にて挟み込み、空気を逃がしながら両者を貼り合わせた後、本発明の両面粘着フィルムを得た。
【0078】
両面粘着フィルムの吸着層処方を表1、各実施例、比較例の評価結果を表2、各評価方法を下記に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
(評価方法)
(吸着層のゲル分率)
厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを基材とし、実施例1〜12、比較例1〜3の吸着層塗工液を前記基材の片面に塗工し、100℃で2分間加熱・乾燥した後に、150℃で100秒架橋させて、実施例1〜12、比較例1〜3に提示した厚みの吸着層を形成した。この吸着層のみを設けたフィルムを100mm×100mmの大きさにカットして試験片を作製し、その試験片の重量を測定した。次に前記の各試験片をトルエンに30分浸漬させた後、試験片及びトルエン溶液をろ過した残渣を45℃で24時間乾燥させて、浸漬後の試験片の乾燥後重量およびトルエン溶液をろ過した残渣の乾燥後重量を測定した。その後、乾燥後試験片から吸着層を除去して基材重量を測定した。ゲル分率は以下の式によって算出した。
(トルエン浸漬後の試験片及びろ過残渣の乾燥重量−基材重量)/(トルエン浸漬前の試験片重量−基材重量)(%)
【0082】
(吸着層表面のマルテンス硬度)
上記作成した両面粘着フィルムを10mm×10mmの大きさにカットして試験片を作製し、超微小押し込み硬さ試験機(株式会社エリオニクス製 ENT―2100)を使用して下記条件にて各サンプルの吸着層表面のマルテンス硬度を測定した。
使用圧子:球状圧子(半径200μm)
最大荷重:100μN
荷重時間:10sec
保持時間:5sec
徐荷時間:10sec
【0083】
(気泡混入評価)
上記作成した両面粘着フィルムを120mm×55mmにカットし、厚み300μmの透明保護カバー(ガラス板)に、前記両面粘着フィルムのセパレータを積層した吸着層側から、2kgの荷重ロールを2往復させて粘着剤層を貼着した後、常温(25℃)で、24時間放置して、本発明の情報表示画面用の保護部材を得た。その後、前記保護部材のセパレータを剥離して、吸着層側を下にして厚み3mmのソーダ石灰ガラス板上に、力を加えずに保護部材を面接触するように静かに乗せて、中心部を軽く指で押さえることで吸着層全面とガラス板を貼り付ける。この時のガラス板と吸着層間の気泡混入を下記の基準により目視で評価した。
評価基準
◎:気泡の混入が全くない。
○:気泡の混入が殆どなく、実用上問題ない。
×:気泡が混入し、残っている。
【0084】
(吸着力評価)
上記作成した両面粘着フィルムを25mm幅にカットし、表面が平滑なアクリル板に前記両面粘着フィルムのカバーフィルムを積層した粘着剤層側から、2kgの荷重ロールを2往復させて吸着層を貼着し、30分間常温放置した後に、粘着剤層面から180度方向に毎分1,200mmの速度で引き剥がした際の吸着力を測定した。
評価基準
○:吸着力が15mN/25mm以上。
×:吸着力が15mN/25mm未満。
【0085】
(糊残り評価)
上記作成した両面粘着フィルムを120mm×55mmにカットし、厚み3mmの透明ソーダ石灰ガラス板に、前記両面粘着フィルムのカバーフィルムを積層した粘着剤層側から、2kgの荷重ロールを2往復させて吸着層を貼着した後、常温(25℃)で、24時間放置して、評価用のサンプルを作成した。次に貼着したサンプルのガラス面側からカーボンアークを照射強度500W/m
2、環境温度63℃の条件にて300時間照射した。この300時間照射後のガラス板に貼着した両面粘着フィルムをガラス板より手で剥離して、ガラス板上に付着した吸着層の有無を下記の基準により目視で評価した。
評価基準
◎:吸着層の付着無し。
○:吸着層が部分的に付着している。
×:吸着層が全面付着している。