特許第6566263号(P6566263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6566263
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】羽根駆動装置および光学機器
(51)【国際特許分類】
   G03B 9/36 20060101AFI20190819BHJP
【FI】
   G03B9/36 D
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-154810(P2016-154810)
(22)【出願日】2016年8月5日
(65)【公開番号】特開2018-22109(P2018-22109A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2019年6月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】396004981
【氏名又は名称】セイコープレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】戸倉 翔一
【審査官】 井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−4819(JP,A)
【文献】 特開平5−333401(JP,A)
【文献】 特開2000−35603(JP,A)
【文献】 特開2002−14388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有した基板と、
前記基板に揺動可能に支持されたアームと、
前記アームに支持され、前記開口を露出させるように退避した退避位置と、前記開口の少なくとも一部を閉塞する閉塞位置と、の間を移動する羽根と、
前記退避位置および前記閉塞位置の少なくとも一方において、前記羽根の近傍に配置され、前記羽根に当接することにより前記羽根の移動を制動する羽根緩衝部材と、
を備え、
前記羽根緩衝部材は、前記羽根の長手方向において、前記アーム側に配置される第1羽根緩衝部材と、前記アーム側とは反対側の前記羽根の先端側に配置される第2羽根緩衝部材と、を有し、
前記第2羽根緩衝部材は、前記第1羽根緩衝部材と前記羽根とが当接した状態において、前記羽根との間に間隔をあけて配置されている、
ことを特徴とする羽根駆動装置。
【請求項2】
前記第2羽根緩衝部材の前記羽根と当接する面は、前記アーム側から前記羽根の先端側になるに従い、前記羽根から離間するように配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の羽根駆動装置。
【請求項3】
前記退避位置および前記閉塞位置の少なくとも一方において、前記アームの近傍に配置され、前記アームに当接することにより前記アームの移動を制動する、少なくとも一つのアーム緩衝部材を備え、
前記アーム緩衝部材の硬度は、前記羽根緩衝部材の硬度よりも高く設定されている、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の羽根駆動装置。
【請求項4】
前記羽根は、前記開口を開閉可能な先幕および後幕であり、
前記アームは、前記先幕を駆動する先幕アーム、および前記後幕を駆動する後幕アームであり、
前記羽根緩衝部材は、前記退避位置において前記先幕および前記後幕とそれぞれ当接する、先幕羽根緩衝部材および後幕羽根緩衝部材であり、
前記アーム緩衝部材は、前記退避位置において前記先幕アームおよび前記後幕アームとそれぞれ当接する、先幕アーム緩衝部材および後幕アーム緩衝部材である、
ことを特徴とする請求項3に記載の羽根駆動装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の羽根駆動装置を備える、
ことを特徴とする光学機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、羽根駆動装置および光学機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
羽根駆動装置としては、例えば、デジタルカメラやスチールカメラ等の光学機器に採用されるフォーカルプレーンシャッタがある。フォーカルプレーンシャッタは、開口を有した基板と、基板に揺動可能に支持されたアームと、アームに支持された羽根と、を備えている。そして、アームを駆動させることにより、羽根を、開口を露出させるように退避させた退避位置と、開口を閉塞させる閉塞位置と、の間で移動させる。
【0003】
ここで、羽根の移動は瞬時に行われるため、羽根を停止させる際に生じるバウンドを防止したり衝撃を緩和したりするために、羽根の停止位置に、この羽根と当接する緩衝部材を設ける技術が提案されている。
具体的には、羽根の閉塞位置において、この羽根と僅かに間隔をあけて緩衝部材を配置している。緩衝部材は、羽根の緩衝部材と当接する一辺のほぼ全域にわたって形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−221054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の従来技術のように、緩衝部材を、羽根の緩衝部材と当接する一辺のほぼ全域にわたって形成し、且つ羽根の閉塞位置において、この羽根と僅かに間隔をあけて配置するだけでは、緩衝部材によって羽根の停止時の衝撃を十分に吸収できない可能性があった。
【0006】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、停止時の羽根のバウンドを確実に防止できると共に、羽根の衝撃を確実に緩和できる羽根駆動装置および光学機器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係る羽根駆動装置は、開口を有した基板と、前記基板に揺動可能に支持されたアームと、前記アームに支持され、前記開口を露出させるように退避した退避位置と、前記開口の少なくとも一部を閉塞する閉塞位置と、の間を移動する羽根と、前記退避位置および前記閉塞位置の少なくとも一方において、前記羽根の近傍に配置され、前記羽根に当接することにより前記羽根の移動を制動する羽根緩衝部材と、を備え、前記羽根緩衝部材は、前記羽根の長手方向において、前記アーム側に配置される第1羽根緩衝部材と、前記アーム側とは反対側の前記羽根の先端側に配置される第2羽根緩衝部材と、を有し、前記第2羽根緩衝部材は、前記第1羽根緩衝部材と前記羽根とが当接した状態において、前記羽根との間に間隔をあけて配置されている、ことを特徴とする。
【0008】
このように、羽根の移動を制動する羽根緩衝部材を、少なくとも第1羽根緩衝部材と第2羽根緩衝部材との2つで構成し、それぞれ羽根のアーム側と先端側とに配置することにより、停止時の羽根のバウンドを防止し易くなると共に、衝撃を緩和し易くできる。
ここで、羽根は、アームに支持され、アームによって退避位置から閉塞位置に移動するので、アーム側の移動量よりも先端側の移動量が大きくなる。つまり、羽根の先端側の方がアーム側よりも大きく振れ回る。このため、第2羽根緩衝部材を、第1羽根緩衝部材と羽根とが当接した状態において、羽根との間に間隔をあけて配置することにより、2つの羽根緩衝部材(第1羽根緩衝部材、第2羽根緩衝部材)で段階的に羽根の衝撃を吸収できる。よって、停止時の羽根のバウンドを確実に防止できると共に衝撃を確実に緩和できる。
【0009】
本発明に係る羽根駆動装置において、前記第2羽根緩衝部材の前記羽根と当接する面は、前記アーム側から前記羽根の先端側になるに従い、前記羽根から離間するように配置されている、ことを特徴とする。
【0010】
ここで、上述したように羽根の先端側の方がアーム側よりも大きく振れ回ると、羽根のアーム側よりも羽根の先端側の方が変形しやすい。つまり、羽根と第1羽根緩衝部材とが当接した時点から羽根の先端側に作用する慣性力によって、この先端側だけがさらに移動しようと傾く場合がある。このため、第2羽根緩衝部材の羽根と当接する面を、アーム側から羽根の先端側になるに従い、羽根から離間するように配置することにより、第2羽根緩衝部材の羽根と当接する面と、第2羽根緩衝部材に羽根が当接する時点における羽根の第2羽根緩衝部材と当接する面と、をほぼ平行にすることができる。この結果、第2羽根緩衝部材と羽根とをできる限り面接触させることができ、羽根に加わる衝撃を最小限に抑えることができる。よって、停止時の羽根のバウンドを確実に防止できると共に衝撃を確実に緩和できる。
【0011】
本発明に係る羽根駆動装置において、前記退避位置および前記閉塞位置の少なくとも一方において、前記アームの近傍に配置され、前記アームに当接することにより前記アームの移動を制動する、少なくとも一つのアーム緩衝部材を備え、前記アーム緩衝部材の硬度は、前記羽根緩衝部材の硬度よりも高く設定されている、ことを特徴とする。
【0012】
このように、アームと羽根とを、それぞれ別々の緩衝部材(羽根緩衝部材およびアーム緩衝部材)によって制動することにより、停止時の羽根のバウンドを防止し易くなると共に、衝撃を緩和し易くできる。
ここで、羽根は、アームに支持され、アームによって退避位置から閉塞位置に移動するので、アームの移動量よりも羽根の移動量が大きくなる。このため、アーム緩衝部材の硬度を、羽根緩衝部材の硬度よりも高く設定することにより、アーム緩衝部材にアームが当接してからのアームの移動量をできる限り抑え、羽根緩衝部材によって羽根の衝撃を吸収しやすくしている。したがって、停止時の羽根のバウンドを確実に防止できると共に衝撃を確実に緩和できる。
【0013】
本発明に係る羽根駆動装置において、前記羽根は、前記開口を開閉可能な先幕および後幕であり、前記アームは、前記先幕を駆動する先幕アーム、および前記後幕を駆動する後幕アームであり、前記羽根緩衝部材は、前記退避位置において前記先幕および前記後幕とそれぞれ当接する、先幕羽根緩衝部材および後幕羽根緩衝部材であり、前記アーム緩衝部材は、前記退避位置において前記先幕アームおよび前記後幕アームとそれぞれ当接する、先幕アーム緩衝部材および後幕アーム緩衝部材である、ことを特徴とする。
【0014】
このように構成することで、先幕および後幕の停止時のバウンドを確実に防止できると共に、先幕および後幕の衝撃を確実に緩和できる。
【0015】
本発明に係る光学機器は、上記に記載の羽根駆動装置を備える、ことを特徴とする。
【0016】
このように構成することで、停止時の羽根のバウンドを確実に防止できると共に衝撃を確実に緩和できる光学機器を提供可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、羽根の移動を制動する羽根緩衝部材を、少なくとも第1羽根緩衝部材と第2羽根緩衝部材との2つで構成し、それぞれ羽根のアーム側と先端側とに配置することにより、停止時の羽根のバウンドを防止し易くなると共に、衝撃を緩和し易くできる。
また、第2羽根緩衝部材を、第1羽根緩衝部材と羽根とが当接した状態において、羽根との間に間隔をあけて配置することにより、2つの羽根緩衝部材(第1羽根緩衝部材、第2羽根緩衝部材)で段階的に羽根の衝撃を吸収できる。このため、停止時の羽根のバウンドを確実に防止できると共に衝撃を確実に緩和できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態における光学機器のブロック図である。
図2】本発明の第1実施形態におけるフォーカルプレーンシャッタの正面図であって、初期状態を示す。
図3】本発明の第1実施形態におけるフォーカルプレーンシャッタの正面図であって、露光終了状態を示す。
図4】本発明の第1実施形態におけるフォーカルプレーンシャッタの一部の羽根のみ図示した正面図である。
図5図4のA−A線に沿う断面図である。
図6図4のB−B線に沿う断面図である。
図7】本発明の第1実施形態における先幕と仕切り板との位置関係を説明するための斜視図である。
図8図4のC−C線に沿う断面図である。
図9図4のD−D線に沿う断面図である。
図10】本発明の第1実施形態における先幕緩衝部材の詳細な配置を示す説明図である。
図11】本発明の第1実施形態における先幕が退避位置への移動を完了する直前の挙動を示す説明図であって、(a)、(b)は、それぞれ動作途中の挙動を示す。
図12】本発明の第1実施形態におけるフォーカルプレーンシャッタの正面図であって、露光途中を示す。
図13】本発明の第1実施形態におけるフォーカルプレーンシャッタの正面図であって、チャージ途中を示す。
図14】本発明の第2実施形態における先幕緩衝部材の詳細な配置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
(光学機器)
図1は、光学機器1のブロック図である。
同図に示すように、光学機器1は、例えばデジタルカメラやスチールカメラ等であって、制御部2と、撮像素子4と、フォーカルプレーンシャッタ10と、を備えている。
【0021】
制御部2は、光学機器1の全体の動作を制御しており、CPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えている。制御部2は、後述するフォーカルプレーンシャッタ10の動作を制御する。
【0022】
撮像素子4は、例えばCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等であって、光により形成された被写体像を電気信号に変換する。
なお、光学機器1は、図1には図示していないが、焦点距離を調整するためのレンズ等を備えている。
【0023】
(第1実施形態)
(フォーカルプレーンシャッタ)
次に、フォーカルプレーンシャッタ10について説明する。
図2図3は、フォーカルプレーンシャッタ10の正面図であって、羽根受板15を取り外した状態を示す。図2は初期状態(チャージ状態)を示し、図3は露光を終了した直後の状態(露光終了状態)を示している。図4は、フォーカルプレーンシャッタ10の正面図である。図4は、説明を分かり易くするために一部の羽根31a,31bのみ図示している。
【0024】
図2図4に示すように、フォーカルプレーンシャッタ10は、台板11と、この台板11と対向配置された羽根受板15と、これら台板11と羽根受板15との間に配置された仕切り板(間隔羽根)21と、羽根受板15と仕切り板21との間に配置された先幕30Aおよび先幕アーム41a,42a(先幕主アーム41a、先幕従アーム42a)と、台板11と仕切り板21との間に配置された後幕30Bおよび後幕アーム41b,42b(後幕主アーム41b、後幕従アーム42b)と、先幕30Aおよび後幕30Bの衝撃を緩和するための緩衝部材50と、を主に有している。
【0025】
台板11は、例えば合成樹脂等により、第1方向L1に若干長くなるように略長方形状に形成されている。台板11の中央の大部分には、第1方向L1に若干長い略矩形状の第1開口12が形成されている。台板11は、フォーカルプレーンシャッタ10を構成する部材のうち、光学機器1のレンズに対して最も近く配置される部材である。
【0026】
羽根受板15は、台板11の背面に配置されている。羽根受板15は、例えば合成樹脂や金属材料等により、第1方向L1に若干長くなるように略長方形状に形成されている。羽根受板15の中央の大部分には、第1方向L1に若干長い略矩形状の第2開口16が形成されている。
第2開口16は、台板11の第1開口12に対応する位置に形成されている。第2開口16は、正面視において第1開口12と略一致するように形成されている。羽根受板15は、台板11に対して例えばネジ等により締結固定されている。
【0027】
仕切り板21は、台板11および羽根受板15に沿うように配置されている。仕切り板21は、例えば合成樹脂等により、平面視において台板11および羽根受板15よりもやや小さく形成されている。仕切り板21の中央の大部分には、第1方向L1に若干長い矩形状の第3開口22が形成されている。
第3開口22は、台板11の第1開口12に対応する位置に形成されている。第3開口22は、正面視において第1開口12および羽根受板15の第2開口16と略一致するように形成されている。仕切り板21は、その外周部において台板11に対して固定されている。
【0028】
このように、各開口12,16,22の貫通方向、つまり、各板11,15,21が重なっている方向が、光を通す光軸方向L3となる。そして、各板11,15,21は、光軸方向L3に沿って台板11、仕切り板21、羽根受板15の順に配置されている。
【0029】
先幕30Aおよび後幕30Bは、それぞれ各開口12,16,22の全体を開放した退避位置(開放位置)と、各開口12,16,22の全体を閉塞した閉塞位置と、の間を往復動し、各開口12,16,22を開閉可能とされている(図2図3参照)。
【0030】
なお、図2は、先幕30Aが閉塞位置にある一方、後幕30Bが退避位置にある場合を示している。これに対し、図3は、先幕30Aが退避位置にある一方、後幕30Bが閉塞位置にある場合を示している。ここで、先幕30Aと後幕30Bは、それぞれが退避位置にある状態において、各開口12,16,22を挟んで対称位置に配置されている。すなわち、先幕30Aおよび後幕30Bは、それぞれが退避位置にある状態において、各開口12,16,22を挟んで、これら開口12,16,22の短手方向(第2方向L2)の一方側と他方側とに位置するように設けられている。
【0031】
図2に詳示するように、先幕30Aは、複数(例えば、本実施形態では4枚)の羽根31a〜34aを備えている。先幕30Aは、複数の羽根31a〜34aを第2方向L2に沿って移動させることにより、退避位置と閉塞位置との間を往復動する。羽根31a〜34aは、例えば合成樹脂等により、第1方向に長くなるように、且つ薄く形成されている。
【0032】
羽根31a〜34aは、閉塞位置において展開され、退避位置において重なりつつ収納される。羽根31a〜34aは、閉塞位置において、先幕30Aが退避位置から閉塞位置へ移動するときの移動方向(第2方向L2)上流側から下流側(図2における下側から上側)に向けて、羽根34a,33a,32a,31aの順に並んで配置されている。
【0033】
一方、図3に詳示するように、後幕30Bは、複数(例えば、本実施形態では4枚)の羽根31b〜34bを備えている。後幕30Bも、複数の羽根31b〜34bを第2方向に沿って移動させることにより、退避位置と閉塞位置との間を往復動する。羽根31b〜34bは、例えば合成樹脂等により、第1方向に長くなるように、且つ薄く形成されている。
【0034】
羽根31b〜34bは、閉塞位置において展開され、退避位置において重なりつつ収納される。羽根31b〜34bは、閉塞位置において、後幕30Bが退避位置から閉塞位置へ移動するときの移動方向(第2方向L2)上流側から下流側(図3における上側から下側)に向けて、羽根34b,33b,32b,31bの順に並んで配置されている。
【0035】
図2に示すように、先幕30Aを構成する羽根31a〜34aは、2つの先幕アーム41a,42a(先幕主アーム41aおよび先幕従アーム42a)の先端側に連結されている。より具体的には、羽根31aは、その第1方向L1の一端部(基端部)において、先幕アーム41a,42aの先端部に回転可能に連結されている。羽根32aは、その第1方向L1の一端部において、先幕アーム41a,42aの羽根31aとの連結部分よりも基端側の部分に回転可能に連結されている。
【0036】
羽根33aは、その第1方向L1の一端部において、先幕アーム41a,42aの羽根32aとの連結部分よりも基端側の部分に回転可能に連結されている。羽根34aは、その第1方向L1の一端部において、先幕アーム41a,42aの羽根33aとの連結部分よりも基端側の部分に回転可能に連結されている。
このように、羽根31a〜34aは、それぞれ先幕アーム41a,42aと共に、平行リンク機構として機能する。先幕アーム41a,42aは、それぞれ強度を保つために、例えば金属の薄板で形成されている。
【0037】
一方、図3に示すように、後幕30Bを構成する羽根31b〜34bは、2つの後幕アーム41b,42b(後幕主アーム41bおよび後幕従アーム42b)の先端側に連結されている。より具体的には、羽根31bは、その第1方向L1の一端部において、後幕アーム41b,42bの先端部に回転可能に連結されている。羽根32bは、その第1方向L1の一端部において、後幕アーム41b,42bの羽根31bとの連結部分よりも基端側の部分に回転可能に連結されている。
【0038】
羽根33bは、その第1方向L1の一端部において、後幕アーム41b,42bの羽根32bとの連結部分よりも基端側の部分に回転可能に連結されている。羽根34bは、その第1方向L1の一端部において、後幕アーム41b,42bの羽根33bとの連結部分よりも基端側の部分に回転可能に連結されている。
このように、羽根31b〜34bは、それぞれ後幕アーム41b,42bと共に、平行リンク機構として機能する。後幕アーム41b,42bの形状は、先幕アーム41a,42aと各開口12,16,22を挟んでほぼ線対称の形状になっている。また、後幕アーム41b,42bは、先幕アーム41a,42aと同様に、それぞれ強度を保つために、例えば金属の薄板で形成されている。
【0039】
図5は、図4のA−A線に沿う断面図である。
図4図5に示すように、各先幕アーム41a,42aの基端411a,421a側は、台板11に立設されているピン61a,62aにそれぞれ回転自在に支持されている。ピン61a,62aは、台板11から羽根受板15に至るまで突出しており、第2方向L2に並んで配置されている。羽根受板15の台板11側(仕切り板21側)の面には、ピン61a,62aに対応する位置に、それぞれ座面63a,64a(主座面63aおよび従座面64a)が突設されている。
【0040】
これら座面63a,64aには、それぞれピン61a,62aを挿通可能な挿通孔65a,66aが形成されている。各挿通孔65a,66aにピン61a,62aの先端が挿通されることにより、これらピン61a,62aの先端が羽根受板15に保持される。また、各座面63a,64aに、それぞれ先幕アーム41a,42aの基端411a,421a側が摺接される。
【0041】
ここで、2つの座面63a,64aのうち、先幕主アーム41aが摺接される主座面63aの突出高さH1よりも、先幕従アーム42aが摺接される従座面64aの突出高さH2が高く設定されている。このように、2つの座面63a,64aの突出高さH1,H2が異なることによる先幕30Aの姿勢の変化について、以下に詳述する。
【0042】
図6は、図4のB−B線に沿う断面図、図7は、先幕30Aと仕切り板21との位置関係を説明するための斜視図である。
図6図7に示すように、主座面63aの突出高さH1よりも従座面64aの突出高さH2が高く設定されていると、先幕主アーム41aの基端411a側よりも先幕従アーム42aの基端421a側が仕切り板21側に押出される(図7における矢印Y1参照)。
【0043】
ここで、先幕アーム41a,42aは、羽根受板15と仕切り板21との間に配置されている。また、先幕アーム41a,42aは、複数の羽根31a〜34aと協働して平行リンク機構を構成しているので、先幕従アーム42aの基端421a側が仕切り板21側に押出されることにより、先幕従アーム42aの先端側が仕切り板21から離間する方向に向かって押出される(図7における矢印Y2参照)。この結果、図6に詳示するように、羽根31aの退避位置から閉塞位置へ移動するときの移動方向(第2方向L2)下流側(図6における上側)の一辺311aが上流側(図6における下側)の一辺312aよりも仕切り板21から離間するように傾く。
【0044】
図8は、図4のC−C線に沿う断面図である。
図4図8に示すように、各後幕アーム41b,42bの基端411b,421b側は、台板11に立設されているピン61b,62bにそれぞれ回転自在に支持されている。ピン61b,62bは、台板11から羽根受板15に至るまで突出しており、第2方向L2に並んで配置されている。羽根受板15には、それぞれピン61b,62bを挿通可能な挿通孔65b,66bが形成されている。各挿通孔65b,66bにピン61b,62bの先端が挿通されることにより、これらピン61b,62bの先端が羽根受板15に保持される。
【0045】
また、台板11には、各ピン61b,62bの根元側に、それぞれ座面63b,64b(主座面63bおよび従座面64b)が、ピン61b,62bと同軸上に一体成形されている。そして、各座面63b,64bに、それぞれ後幕アーム41b,42bの基端411b,421b側が摺接される。
【0046】
ここで、2つの座面63b,64bのうち、後幕主アーム41bが摺接される主座面63bの突出高さH3よりも、後幕従アーム42bが摺接される従座面64bの突出高さH4が高く設定されている。このように、2つの座面63b,64bの突出高さH3,H4が異なることによる後幕30Bの姿勢の変化について、以下に詳述する。
主座面63bの突出高さH3よりも従座面64bの突出高さH4が高く設定されていると、後幕主アーム41bの基端411b側よりも後幕従アーム42bの基端421b側が仕切り板21側に押出される。
【0047】
図9は、図4のD−D線に沿う断面図である。
図4図9に示すように、後幕アーム41b,42bは、台板11と仕切り板21との間に配置されている。後幕アーム41b,42bは、複数の羽根31b〜34bと協働して平行リンク機構を構成しているので、後幕従アーム42bの基端421b側が仕切り板21側に押出されることにより、後幕従アーム42bの先端側が仕切り板21から離間する方向に向かって押出される。この結果、羽根31bの退避位置から閉塞位置へ移動するときの移動方向(第2方向L2)下流側(図4図9における下側)の一辺311bが上流側(図4図9における上側)の一辺312bよりも仕切り板21から離間するように傾く。
【0048】
図2図3に戻り、台板11には、先幕主アーム41aを駆動するための(不図示の)先幕駆動レバーと、後幕主アーム41bを駆動するための(不図示の)後幕駆動レバーと、が設けられている。先幕駆動レバーおよび後幕駆動レバーは、それぞれ所定の範囲を揺動可能に台板11に支持されている。また、先幕駆動レバーおよび後幕駆動レバーには、それぞれ先幕駆動ピン、後幕駆動ピンが設けられている。また、先幕駆動ピン、後幕駆動ピンは、それぞれ先幕主アーム41aに形成された先幕駆動孔45A、後幕主アーム41bに形成された後幕駆動孔45Bに係合している。
【0049】
より詳しくは、先幕駆動レバーは、台板11に形成された軸を中心にして揺動可能に支持されており、先幕駆動ピンは、台板11に形成されたガイド溝46Aに挿通されることにより、その揺動範囲が規定されている。一方、後幕駆動レバーは、台板11に形成された軸を中心にして揺動可能に支持されており、後幕駆動ピンは、台板11に形成されたガイド溝46Bに挿通されることにより、その揺動範囲が規定されている。
そして、このように構成された先幕駆動レバーが揺動することにより、先幕主アーム41aが揺動し、これにより先幕30Aが移動する。同様に、後幕駆動レバーが揺動することにより、後幕主アーム41bが揺動し、これにより後幕30Bが移動する。
【0050】
先幕駆動レバーおよび後幕駆動レバーは、それぞれ不図示の駆動源により揺動される。駆動源としては、例えば電磁石とバネ等の付勢部材との作用により各駆動レバーを駆動するものや、ロータ、ステータおよびコイルを備えた電磁アクチュエータ等を用いることができる。
【0051】
緩衝部材50は、例えばニトリルゴムやウレタンフォーム等の弾性部材により形成されている。緩衝部材50は、先幕緩衝部材50Aと後幕緩衝部材50Bとにより構成されており、それぞれ台板11と羽根受板15との間で、且つ仕切り板21よりも外側に配置されている。より詳しく、以下に説明する。なお、以下では、各幕30A,30Bの閉塞位置から退避位置へ移動する方向を退避方向と称して説明する。
【0052】
先幕緩衝部材50Aは、先幕30Aの退避位置において、先幕主アーム41aの退避方向下流側(図2図3における下側)に当接する第1アーム緩衝部材51a、および第2アーム緩衝部材52a(先幕アーム緩衝部材)と、羽根31a〜34aの退避方向下流側に当接する第1羽根緩衝部材53a、および第2羽根緩衝部材54a(先幕羽根緩衝部材)と、により構成されている。
【0053】
図10は、先幕緩衝部材50Aの詳細な配置を示す説明図である。なお、図10では、説明を分かり易くするために、複数の羽根31a〜34aのうち、羽根31aのみを図示し、他の羽根32a〜34aの図示を省略している。
同図に示すように、第1アーム緩衝部材51a、および第2アーム緩衝部材52aは、略直方体状に形成されている。第1アーム緩衝部材51a、および第2アーム緩衝部材52aは、それぞれ先幕主アーム41aの長手方向に沿うように並んで配置されている。そして、第1アーム緩衝部材51a、および第2アーム緩衝部材52aは、先幕主アーム41aとの当接面511a,521aとなる短手方向の一辺が、先幕主アーム41aの退避方向側の一辺412aに沿うように配置されている。
【0054】
一方、第1羽根緩衝部材53a、および第2羽根緩衝部材54aは、羽根31a〜34aの長手方向(第1方向L1)に長くなるように、略直方体状に形成されている。そして、第1羽根緩衝部材53aは、羽根31a〜34aとの当接面531aが、羽根31a〜34aの先幕主アーム41a側(羽根31a〜34aの基端側)に当接するように配置されている。これに対し、第2羽根緩衝部材54aは、羽根31a〜34aとの当接面541aが、羽根31a〜34aの先幕主アーム41aとは反対側(羽根31a〜34aの先端側)に当接するように配置されている。
【0055】
ここで、第1アーム緩衝部材51a、第2アーム緩衝部材52a、および第1羽根緩衝部材53aは、先幕30A(羽根31a〜34a)の退避位置において、それぞれ対応する先幕主アーム41aや羽根31a〜34aに当接するように配置されている。これに対し、第2羽根緩衝部材54aは、先幕主アーム41aや羽根31a〜34aに第1アーム緩衝部材51a、第2アーム緩衝部材52a、および第1羽根緩衝部材53aが当接した状態において、羽根31a〜34aとの間にわずかに間隔K1をあけて配置されている。
【0056】
間隔K1は、その大きさが先幕主アーム41aから羽根31a〜34aの先端側に向かうに従い、大きくなるように設定されている。換言すれば、第2羽根緩衝部材54aは、当接面541aが先幕主アーム41aから羽根31a〜34aの先端側に向かうに従い、これら羽根31a〜34aから離間するように、羽根31a〜34aの退避方向側の一辺に対し、斜めに配置されている。なお、第2羽根緩衝部材54aの羽根31a〜34aの退避方向側の一辺に対する傾斜角度θは、例えば、約2°程度に設定される。
【0057】
図2に戻り、後幕緩衝部材50Bは、先幕緩衝部材50Aと各開口12,16,22を挟んで対称位置に構成されている。すなわち、後幕緩衝部材50Bは、後幕30Bの退避位置において、後幕主アーム41bの退避方向下流側(図2図3における上側)に当接する第1アーム緩衝部材51b、および第2アーム緩衝部材52b(後幕アーム緩衝部材)と、羽根31b〜34bの退避方向下流側に当接する第1羽根緩衝部材53b、および第2羽根緩衝部材54b(後幕羽根緩衝部材)と、により構成されている。
【0058】
第1アーム緩衝部材51b、および第2アーム緩衝部材52bは、略直方体状に形成されている。第1アーム緩衝部材51b、および第2アーム緩衝部材52bは、それぞれ後幕主アーム41bの長手方向に沿うように並んで配置されている。そして、第1アーム緩衝部材51b、および第2アーム緩衝部材52bは、後幕主アーム41bとの当接面511b,521bとなる短手方向の一辺が、後幕主アーム41bの退避方向側の一辺412bに沿うように配置されている。
【0059】
一方、第1羽根緩衝部材53b、および第2羽根緩衝部材54bは、羽根31b〜34bの長手方向(第1方向L1)に長くなるように、略直方体状に形成されている。そして、第1羽根緩衝部材53bは、羽根31b〜34bとの当接面531bが、羽根31b〜34bの後幕主アーム41b側(羽根31b〜34bの基端側)に当接するように配置されている。これに対し、第2羽根緩衝部材54bは、羽根31b〜34bとの当接面541bが、羽根31b〜34bの後幕主アーム41bとは反対側(羽根31b〜34bの先端側)に当接するように配置されている。
【0060】
また、第2羽根緩衝部材54bは、後幕主アーム41bや羽根31b〜34bに第1アーム緩衝部材51b、第2アーム緩衝部材52b、および第1羽根緩衝部材53bが当接した状態において、羽根31b〜34bとの間にわずかに間隔K2をあけて配置されている。つまり、第2羽根緩衝部材54bは、当接面541bが後幕主アーム41bから羽根31b〜34bの先端側に向かうに従い、これら羽根31b〜34bから離間するように、羽根31b〜34bの退避方向側の一辺に対し、斜めに配置されている。なお、第2羽根緩衝部材54bの羽根31b〜34bの退避方向側の一辺に対する傾斜角度も、例えば、約2°程度に設定される。
【0061】
次に、フォーカルプレーンシャッタ10の動作および作用について説明する。
図2に示すように、フォーカルプレーンシャッタ10は、初期状態においては、先幕30Aは閉塞位置にあり、後幕30Bは退避位置にある。
撮影に際して、光学機器1の不図示のレリーズボタンが押されると先幕駆動レバーが回転する。これにより、先幕30Aが退避位置に移動し始め、各開口12,16,22が開放される。一方、後幕30Bは退避位置にあるため、各開口12,16,22は開放した状態に維持され、各開口12,16,22に光軸方向L3に沿って光が通り、露光が開始される。
【0062】
ここで、図11に基づいて、先幕30Aが退避位置への移動を完了する直前の挙動について説明する。
図11(a)、図11(b)は、先幕30Aが退避位置への移動を完了する直前の挙動を示す説明図である。なお、図11では、説明を分かり易くするために、複数の羽根31a〜34aのうち、羽根31aのみを図示し、他の羽根32a〜34aの図示を省略している。
【0063】
図11(a)に示すように、先幕30Aが退避位置へ移動すると、第1アーム緩衝部材51aの当接面511aおよび第2アーム緩衝部材52aの当接面521aに、先幕主アーム41aの一辺412aが当接する。また、第1羽根緩衝部材53aの当接面531aに、羽根31a〜34aの基端部が当接する。これにより、先幕30Aが退避位置へ移動する際の衝撃がある程度吸収される。
【0064】
ここで、羽根31a〜34aは、先幕主アーム41aおよび先幕従アーム42aによって移動されるが、これら先幕主アーム41aおよび先幕従アーム42aは、それぞれの基端411a,421a側において、台板11に設けられたピン61a,62a(図5参照)を中心に回動する。つまり、先幕30Aは、ピン61a,62aから離れるほど回転半径Dが大きくなり、その移動量も大きくなる。
また、各緩衝部材51a,52a,53aに先幕主アーム41aおよび羽根31a〜34aの基端部が当接した後も、先幕主アーム41aや羽根31a〜34aに慣性力が作用する。さらに、各部に多少の組付けガタが生じると共に、多少の弾性変形が生じる。このため、引き続き羽根31a〜34aが移動しようとする。
【0065】
図11(b)に示すように、羽根31a〜34aが移動し続けると、これら羽根31a〜34aの先端側が、第2羽根緩衝部材54aの当接面541aに当接する。これにより、羽根31a〜34aの衝撃が確実に吸収され、羽根31a〜34aが退避位置へ移動する際の慣性が効果的に減衰される。
しかも、第2羽根緩衝部材54aは、当接面541aが先幕主アーム41aから羽根31a〜34aの先端側に向かうに従い、これら羽根31a〜34aから離間するように、羽根31a〜34aの退避方向側の一辺に対し、斜めに配置されている。このため、羽根31a〜34aが基端側を中心に触れ回っても、これら羽根31a〜34aと第2羽根緩衝部材54aとが確実に面接触される。このため、第2羽根緩衝部材54aへの羽根31a〜34aの面圧が低減され、第2羽根緩衝部材54aの摩耗が確実に抑制される。
【0066】
続いて、レリーズボタンが押されてから所定時間経過後に、後幕駆動レバーが回転する。これにより、後幕30Bが退避位置から閉塞位置へ移動し、各開口12,16,22が閉塞される。そして、露光が終了され、1回の撮影が終了する。
ここで、後幕30Bが退避位置から閉塞位置へ移動する際、羽根31bは、仕切り板21の第3開口22の内周縁における第2方向L2の一辺22a(図12参照)を越えていくことになる。
【0067】
図12は、フォーカルプレーンシャッタ10の正面図であって、後幕30Bが退避位置から閉塞位置へ移動する途中(露光途中)を示す。
同図に示すように、後幕30Bが閉塞位置への移動を完了する直前、羽根31bの一辺311bは、第3開口22の一辺22aと対向する。そして、この後この一辺22aを羽根31bが超えていくので、第3開口22の一辺22aに羽根31bが引っ掛かるおそれがある。しかしながら、羽根31bが支持されている後幕主アーム41bおよび後幕従アーム42bは、それぞれ基端411b,421bの支持位置が異なっている。このため、羽根31bは、一辺311bが仕切り板21から離間するように傾いている。この結果、第3開口22の一辺22aを羽根31bが超えていく際、第3開口22に羽根31bが引っ掛かってしまうことが防止される。
【0068】
次に、不図示のセットレバーによって先幕駆動レバーおよび後幕駆動レバーが撮影動作時とは反対方向に回転される。これにより、先幕30Aが退避位置から閉塞位置へと移動され、各開口12,16,22を閉鎖する。また、後幕30Bが退避位置に収納されて各開口12,16,22を開放し、図2に示す初期状態に戻る。
【0069】
ここで、先幕30Aが退避位置から閉塞位置へと移動する際も、後幕30Bが退避位置から閉塞位置へ移動する際と同様の事象が生じる。すなわち、先幕30Aが退避位置から閉塞位置へ移動する際、羽根31aは、仕切り板21の第3開口22の内周縁における第2方向L2の他辺22b(図13参照)を越えていくことになる。
【0070】
図13は、フォーカルプレーンシャッタ10の正面図であって、先幕30Aが退避位置から閉塞位置へ移動する途中(チャージ途中)を示す。
同図に示すように、先幕30Aが閉塞位置への移動を完了する直前、羽根31aの一辺311aが、第3開口22の他辺22bと対向する。羽根31aが支持されている先幕主アーム41aおよび先幕従アーム42aは、それぞれ基端411a,421aの支持位置が異なっている。このため、羽根31aは、一辺311aが仕切り板21から離間するように傾いている。この結果、第3開口22の他辺22bを羽根31aが超えていく際、第3開口22に羽根31aが引っ掛かってしまうことが防止される。
【0071】
このように、上述の第1実施形態では、緩衝部材50を構成する先幕緩衝部材50A、および後幕緩衝部材50Bは、それぞれ第1アーム緩衝部材51a,51b、および第2アーム緩衝部材52a,52bと、第1羽根緩衝部材53a,53b、および第2羽根緩衝部材54a,54bと、により構成されている。このうち、第1羽根緩衝部材53a,53bは、先幕30Aおよび後幕30Bの退避位置において、羽根31a〜34aの基端部に当接するように配置されている。一方、第2羽根緩衝部材54a,54bは、羽根31a〜34a,31b〜34bに第1羽根緩衝部材53aが当接した状態において、羽根31a〜34a,31b〜34bとの間にわずかに間隔K1,K2をあけて配置されている。このため、2つの羽根緩衝部材(第1羽根緩衝部材53a,53b、第2羽根緩衝部材54a,54b)によって段階的に羽根31a〜34a,31b〜34bの衝撃を吸収できる。よって、停止時の羽根31a〜34a,31b〜34bのバウンドを確実に防止できると共に衝撃を確実に緩和できる。
また、間隔K1,K2を設けることにより、各部の製造誤差に起因して第2羽根緩衝部材54a,54bと羽根31a〜34aとが最初に当接し、羽根31a〜34aに余計な負荷がかかってしまうことを防止できる。
【0072】
さらに、第2羽根緩衝部材54a,54bは、当接面541a,541bが先幕主アーム41a、および後幕主アーム41bから羽根31a〜34a,31b〜34bの先端側に向かうに従い、これら羽根31a〜34a,31b〜34bから離間するように、羽根31a〜34a,31b〜34bの退避方向側の一辺に対し、斜めに配置されている。このため、羽根31a〜34a,31b〜34bと第2羽根緩衝部材54a,54bとが確実に面接触される。よって、第2羽根緩衝部材54a,54bによって羽根31a〜34a,31b〜34bの衝撃を効果的に吸収できると共に、第2羽根緩衝部材54aの摩耗を確実に抑制できる。
【0073】
また、羽根受板15において、先幕主アーム41aが摺接される主座面63aの突出高さH1よりも、先幕従アーム42aが摺接される従座面64aの突出高さH2が高く設定されている。また、台板11において、後幕主アーム41bが摺接される主座面63bの突出高さH3よりも、後幕従アーム42bが摺接される従座面64bの突出高さH4が高く設定されている。すなわち、各従アーム42a,42bの基端421a,421b側は、光軸方向L3において、各主アーム41a,41bの基端411a,411b側よりも仕切り板21側で回転自在に支持されていることになる。
【0074】
このため、各従アーム42a,42bの先端側が、仕切り板21から離間する方向に向かって変位する。この結果、先幕30Aを構成する羽根31aの退避位置から閉塞位置へ移動するときの移動方向(第2方向L2)下流側(図6における上側)の一辺311aが、上流側(図6における下側)の一辺312aよりも仕切り板21から離間するように傾く。また、後幕30Bを構成する羽根31bの退避位置から閉塞位置へ移動するときの移動方向(第2方向L2)下流側(図9における下側)の一辺311bが、上流側(図9における上側)の一辺312bよりも仕切り板21から離間するように傾く。
【0075】
これにより、先幕30Aおよび後幕30Bが、それぞれ退避位置から閉塞位置に移動する際、仕切り板21の第3開口22の内周縁に先幕30Aおよび後幕30Bが引っ掛かってしまうことを防止できる。よって、フォーカルプレーンシャッタ10の動作時における羽根31a〜34a,31b〜34bの不具合を防止できると共に、羽根31a〜34a,31b〜34bの損傷を防止できる。
【0076】
また、フォーカルプレーンシャッタ10は、台板11と、羽根受板15と、仕切り板21と、を備え、羽根受板15と仕切り板21との間に先幕30Aを配置し、台板11と仕切り板21との間に後幕30Bを配置している。このように、2つの幕30A,30Bを開閉動作させることにより、露光時間を微調整しやすくできる。このため、光学機器1の性能を高めることができる。
【0077】
(第2実施形態)
次に、図14に基づいて、本発明の第2実施形態について説明する。
図14は、第2実施形態における先幕緩衝部材250Aの詳細な配置を示す説明図であって前述の図10に対応している。なお、第1実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明を省略する。
【0078】
同図に示すように、前述の第1実施形態と第2実施形態との相違点は、第1実施形態の第2羽根緩衝部材54aが配置されている箇所と、第2実施形態の第2羽根緩衝部材254aが配置されている箇所とが異なる点にある。
すなわち、第2実施形態における第2羽根緩衝部材254aは、先幕30Aの退避位置において、羽根31a〜34a(図14において、羽根32a〜34aは不図示)との当接面541aが、羽根31a〜34aの先端側に当接するように配置されている。
【0079】
ここで、第2実施形態では、第1羽根緩衝部材253a、および第2羽根緩衝部材254aの硬度よりも、第1アーム緩衝部材251a、および第2アーム緩衝部材252aの硬度が高く設定されている。第1羽根緩衝部材253a、および第2羽根緩衝部材254aの硬度と、第1アーム緩衝部材251a、および第2アーム緩衝部材252aの硬度差は、例えばHs20以上に設定されている。これは、各緩衝部材51a〜54aの製造誤差を考慮したためである。例えば、硬度差としてHs20以上に設定すると、第1羽根緩衝部材53a、および第2羽根緩衝部材54aの硬度よりも、第1アーム緩衝部材51a、および第2アーム緩衝部材52aの硬度を、ほぼ確実に高く設定できる。
【0080】
以下に、第1羽根緩衝部材253a、および第2羽根緩衝部材254aの硬度よりも、第1アーム緩衝部材251a、および第2アーム緩衝部材252aの硬度を高く設定するための各緩衝部材251a〜254aの材質例を列挙する。
すなわち、
1.第1アーム緩衝部材51a、および第2アーム緩衝部材52aと、第1羽根緩衝部材53a、および第2羽根緩衝部材54aとを、共にゴム材料により形成する。そして、第1羽根緩衝部材53a、および第2羽根緩衝部材54aを形成するゴム材料の硬度よりも、第1アーム緩衝部材51a、および第2アーム緩衝部材52aを形成するゴム材料の硬度を高く設定する。
【0081】
2.第1アーム緩衝部材51a、および第2アーム緩衝部材52aをゴム材料により形成する。一方、第1羽根緩衝部材53a、および第2羽根緩衝部材54aをウレタン系樹脂材料により形成する。
3.第1アーム緩衝部材51a、および第2アーム緩衝部材52aをゴム材料により形成する。一方、第1羽根緩衝部材53a、および第2羽根緩衝部材54aをシリコン系樹脂材料により形成する。
【0082】
4.第1アーム緩衝部材51a、および第2アーム緩衝部材52aと、第1羽根緩衝部材53a、および第2羽根緩衝部材54aとを、共にウレタン系樹脂材料により形成する。そして、第1羽根緩衝部材53a、および第2羽根緩衝部材54aを形成するウレタン系樹脂材料の硬度よりも、第1アーム緩衝部材51a、および第2アーム緩衝部材52aを形成するウレタン系樹脂材料の硬度を高く設定する。
3.第1アーム緩衝部材51a、および第2アーム緩衝部材52aと、第1羽根緩衝部材53a、および第2羽根緩衝部材54aとを、共にシリコン系樹脂材料により形成する。そして、第1羽根緩衝部材53a、および第2羽根緩衝部材54aを形成するシリコン系樹脂材料の硬度よりも、第1アーム緩衝部材51a、および第2アーム緩衝部材52aを形成するシリコン系樹脂材料の硬度を高く設定する。
【0083】
このような構成のもと、先幕30Aが退避位置へ移動すると、第1アーム緩衝部材251aの当接面511aおよび第2アーム緩衝部材252aの当接面521aに、先幕主アーム41aの一辺412aが当接する。また、第1羽根緩衝部材253aの当接面531aおよび第2羽根緩衝部材254aの当接面541aに、羽根31a〜34aが当接する。これにより、先幕30Aが退避位置へ移動する際の衝撃がある程度吸収される。
また、この際、第1アーム緩衝部材251a、および第2アーム緩衝部材252aの硬度は高く設定されているので、これら、第1アーム緩衝部材251a、および第2アーム緩衝部材252aに当接後の先幕主アーム41aの移動が抑制される。
【0084】
一方、先幕主アーム41aに対して移動量の大きい羽根31a〜34aは、第1羽根緩衝部材253a、および第2羽根緩衝部材254aに当接した後も大きな慣性力が作用し、移動しようとする。第1羽根緩衝部材253a、および第2羽根緩衝部材254aの硬度は低く設定されているので、その羽根31a〜34aの移動を減衰させながら許容しつつ、これら羽根31a〜34aの衝撃が効果的に吸収される。
したがって、上述の第2実施形態によれば、前述の第1実施形態における先幕緩衝部材50Aおよび後幕緩衝部材50Bと同様の効果を奏する。
【0085】
なお、図示は省略するが、後幕緩衝部材50Bを構成する第1アーム緩衝部材51b、および第2アーム緩衝部材52bと、第1羽根緩衝部材53b、および第2羽根緩衝部材54bの構成も、第1アーム緩衝部材251a、および第2アーム緩衝部材252aと第1羽根緩衝部材253a、および第2羽根緩衝部材254aの構成と同様である。
以下の説明では、先幕緩衝部材50Aを構成する第1アーム緩衝部材251a、および第2アーム緩衝部材252aと、第1羽根緩衝部材253a、および第2羽根緩衝部材254aとについてのみ述べるが、後幕緩衝部材50Bを構成する第1アーム緩衝部材51b、および第2アーム緩衝部材52bと、第1羽根緩衝部材53b、および第2羽根緩衝部材54bについても同様である。
【0086】
上述の第2実施形態において、第1羽根緩衝部材253aの当接面531aおよび第2羽根緩衝部材254aの当接面541aに、硬度の高い樹脂プレートや金属プレートを設けることが望ましい。このように構成することで、第1羽根緩衝部材253aや第2羽根緩衝部材254aの硬度を低く設定した場合であっても、これら第1羽根緩衝部材253aや第2羽根緩衝部材254aの摩耗を抑制できる。
【0087】
また、上述の第2実施形態において、第1羽根緩衝部材253a、および第2羽根緩衝部材254aの第1方向L1の長さ(図14におけるl1参照)を、第1アーム緩衝部材251a、および第2アーム緩衝部材252aの長さよりも長く設定することが望ましい。このように構成することで、退避位置に移動する羽根31a〜34aと、第1羽根緩衝部材253a、および第2羽根緩衝部材254aとの当接面積を増大させることができる。この結果、第1羽根緩衝部材253a、および第2羽根緩衝部材254aに羽根31a〜34aが当接する際の面圧を低減でき、羽根31a〜34aの損傷を防止できる。
【0088】
さらに、上述の第2実施形態において、第1羽根緩衝部材253a、および第2羽根緩衝部材254aの第2方向L2の厚さ(図14におけるt1参照)を、第1アーム緩衝部材51b、および第2アーム緩衝部材52bの厚さよりも厚く設定することが望ましい。このように構成することで、第1羽根緩衝部材253a、および第2羽根緩衝部材254aの硬度が低くても羽根31a〜34aの衝撃を十分吸収することが可能になる。
【0089】
(変形例)
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、フォーカルプレーンシャッタ10は、先幕30Aおよび後幕30Bを有していたが、これに限定されるものではない。例えば、フォーカルプレーンシャッタの幕として後幕30Bのみを備え、光学機器1の制御部2により撮像素子4を電子制御して先幕の動作を撮像素子4に実行させる電子先幕機能を制御部2に持たせてもよい。
【0090】
また、上述の実施形態では、先幕30Aおよび後幕30Bは、それぞれ4つの羽根31a〜34a,31b〜34bを備え、各羽根31a〜34a,31b〜34bは、主アーム41a,41bと従アーム42a,42bとに連結されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、幕30A,30Bごとにそれぞれ2つ以上の従アームを設けてもよい。この場合、主アーム41a,41bから最も離間した位置の従アームの基端側を、光軸方向L3において、主アーム41a,41bの基端411a,411b側よりも仕切り板21側で回転自在に支持すればよい。
このように構成することで、羽根31a〜34a,31b〜34bの姿勢を傾けることができる。よって、先幕30Aおよび後幕30Bが、それぞれ退避位置から閉塞位置に移動する際、仕切り板21の第3開口22の内周縁に先幕30Aおよび後幕30Bが引っ掛かってしまうことを防止できる。
【0091】
さらに、上述の実施形態では、各幕30A,30Bの退避位置において、先幕主アーム41a,41bの退避方向下流側に当接する第1アーム緩衝部材51a,51b,251a、および第2アーム緩衝部材52a,52b,252aと、羽根31a〜34a,31b〜34bの退避方向下流側に当接する第1羽根緩衝部材53a,53b,253a、および第2羽根緩衝部材54a,54b,254aと、を設けた場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、各幕30A,30Bの閉塞位置において、羽根31a,31bに当接する第1羽根緩衝部材、および第2羽根緩衝部材を設けてもよい。この場合の第1羽根緩衝部材、および第2羽根緩衝部材も、上記第1羽根緩衝部材53a,53b,253a、および第2羽根緩衝部材54a,54b,254aに対応するように配置する。このように構成することで、各幕30A,30Bの閉塞位置における羽根31a,31bのバウンドを防止できると共に衝撃を緩和できる。
【0092】
また、例えば、先幕30Aの閉塞位置において、先幕主アーム41aの基端411aに当接する緩衝部材80(図2に二点鎖線で示す)を設けてもよい。このように構成することで、先幕30Aが退避位置から閉塞位置に移動(展開)する際の衝撃も緩和することが可能である。
【0093】
さらに、上述の実施形態では、羽根31a〜34a,31b〜34bは、合成樹脂製である場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、羽根31a〜34a,31b〜34bは、金属製あるいは炭素繊維複合材で形成されてもよい。
各幕30A,30Bの羽根の枚数も4枚ずつに限られるものではなく、少なくとも1枚あればよい。
【0094】
さらに、上述の第2実施形態では、第1羽根緩衝部材253a、および第2羽根緩衝部材254aの硬度よりも、第1アーム緩衝部材251a、および第2アーム緩衝部材252aの硬度が高く設定されている実施例を説明した。しかしながら、第1実施形態において、第1羽根緩衝部材53a,53b、および第2羽根緩衝部材54a,54bの硬度よりも、第1アーム緩衝部材51a,51b、および第2アーム緩衝部材52a,52bの硬度が高く設定されていてもよい。
【符号の説明】
【0095】
1…光学機器 10…フォーカルプレーンシャッタ(羽根駆動装置) 11…台板(基板) 12…第1開口(開口) 15…羽根受板(基板) 16…第2開口(開口) 21…仕切り板(基板) 22…第3開口(開口) 30A…先幕 30B…後幕 31a,31b,32a,32b,33a,33b,34a,34b…羽根 41a…先幕主アーム(先幕アーム) 41b…後幕主アーム(後幕アーム) 42a…先幕従アーム(先幕アーム) 42b…後幕従アーム(後幕アーム) 51a,251a…第1アーム緩衝部材(アーム緩衝部材、先幕アーム緩衝部材) 51b…第1アーム緩衝部材(アーム緩衝部材、後幕アーム緩衝部材) 52a,252a…第2アーム緩衝部材(アーム緩衝部材、先幕アーム緩衝部材) 52b…(アーム緩衝部材、後幕アーム緩衝部材) 53a,253a…第1羽根緩衝部材(羽根緩衝部材、先幕羽根緩衝部材) 53b…第1羽根緩衝部材(羽根緩衝部材、後幕羽根緩衝部材) 54a,254a…第2羽根緩衝部材(羽根緩衝部材、先幕羽根緩衝部材) 54b…第2羽根緩衝部材(羽根緩衝部材、後幕羽根緩衝部材) 531a,531b,541a,541b…当接面(面) K1…間隔
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