(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
二次電池の充放電サイクルの寿命の改善はたいへん素晴らしい成果であり、社会的貢献度がたいへん大きい。しかし市場ニーズは上記二次電池の長寿命化の要求に止まらず、市場が拡大するにつれて新たなニーズが色々生まれている。大きなニーズとして、二次電池の1回当たりの充電に対する負荷への電力供給可能時間をさらに伸ばしてほしいとのニーズがある。例えば電気自動車を例に挙げると、1回の充電で走行できる距離をさらに長くしてほしいとの強いニーズがある。また例えば太陽光を利用した照明装置において、昼間の充電電力で照明可能な時間をできるだけ長くしてほしいとのニーズがある。このようなニーズに応えるために従来は、二次電池その物の蓄電能力を向上することに開発の重点が置かれてきた。
【0006】
二次電池その物の蓄電能力を改善することは大変重要である。しかしそれだけでなく、二次電池から負荷への電力供給における効率向上、すなわち損失の低減も改善すべき重要な課題である。もし二次電池から負荷への電力供給動作における効率向上、すなわち損失低減を図ることができれば、二次電池の同じ充電量に対する負荷への電力供給時間をより長くすることができ、上記ニーズに答えることができる。
【0007】
本発明の目的は、二次電池からの電力供給の効率向上を可能とする二次電池の電流制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する為の第1の発明は、負荷へ電力を供給する二次電池の電流を制御する二次電池の電流制御装置であって、前記電流制御装置は、蓄えた電力に基づいて電流を供給する蓄電装置と、前記蓄電装置を前記二次電池に並列接続する接続装置と、前記接続装置の接続状態を制御する制御装置と、を有し、前記制御装置は、前記二次電池が前記負荷と接続されている状態において、前記接続装置を所定の周期で動作させ、前記蓄電装置を所定の周期で繰り返し、前記二次電池に並列接続
し、さらに、前記二次電池が直列接続された少なくとも第1二次電池と第2二次電池とを有していて、さらに、前記電流制御装置が有する前記蓄電装置は少なくとも第1コンデンサと第2コンデンサを有し、前記接続装置により、前記第1コンデンサが所定の周期で繰り返し前記第1二次電池と並列に接続され、前記第2コンデンサが所定の周期で繰り返し前記第2二次電池と並列に接続されることを特徴とする、二次電池の電流制御装置である。
【0009】
上記課題を解決する為の第2の発明は、負荷へ電力を供給する二次電池の電流を制御する二次電池の電流制御装置であって、前記電流制御装置は、蓄えた電力に基づいて電流を供給する蓄電装置と、前記蓄電装置を前記二次電池に並列接続する接続装置と、前記接続装置の接続状態を制御する制御装置と、を有し、前記制御装置は、前記二次電池が前記負荷と接続されている状態において、前記接続装置を所定の周期で動作させ、前記蓄電装置を所定の周期で繰り返し、前記二次電池に並列接続
し、前記蓄電装置が前記二次電池に並列接続されたときに、一時的に前記蓄電装置から前記二次電池に電流が供給されることを特徴とする、二次電池の電流制御装置である。
【0010】
上記課題を解決する為の第3の発明は、
第1の発明の二次電池の電流制御装置において、前記第1コンデンサあるいは前記第2コンデンサが前記第1二次電池あるいは前記第2二次電池に接続されるときに、前記第1コンデンサあるいは前記第2コンデンサの端子電圧が前記第1二次電池あるいは前記第2二次電池の端子電圧より大きいことを特徴とする、二次電池の電流制御装置である。
【0011】
上記課題を解決する為の第4の発明は、第1の発明乃至
第3の発明の内の一の発明の二次電池の電流制御装置において、前記制御装置は、
前記二次電池が前記負荷と接続されている状態に加え、前記二次電池が外部から電力の供給を受けて電力を蓄電している状態においても、前記接続装置を所定の周期で動作させ、前記蓄電装置を所定の周期で繰り返し、前記二次電池に並列接続することを特徴とする、二次電池の電流制御装置である。
【0012】
上記課題を解決する為の第5の発明は、第1の発明乃至
第4の発明の内の一の発明の二次電池の電流制御装置において、前記制御装置は、0.1秒より長い周期で繰り返し、前記接続装置を動作させることを特徴とする、二次電池の電流制御装置である。
【0013】
上記課題を解決する為の第6の発明は、第1の発明乃至
第5の発明の内の一の発明の二次電池の電流制御装置において、前記蓄電装置は10ファラッド以上の容量を有していることを特徴とする、二次電池の電流制御装置である。
【0014】
上記課題を解決する為の第7の発明は、
第6の発明の二次電池の電流制御装置において、前記蓄電装置は100ファラッド以上の容量を有していることを特徴とする、二次電池の電流制御装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、二次電池からの電力供給の効率向上が可能となる、二次電池の電流制御装置を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.実施例の説明
1.1 実施例の基本構成の説明
以下図面を用いて本発明を実施するための一形態(以下実施例と記す)を説明する。
図1は本発明を適用した負荷への電力供給装置の構成を示す回路図である。直流電力を蓄える二次電池70に端子62と端子64を介して負荷50が電気的に接続されている。なお実際の製品では、二次電池70と負荷50との間には、電源スイッチなどの開閉手段やヒューズ等の安全装置が設けられるが、本発明の構成及び動作を説明することが
図1の目的であり、煩雑さを避けるためにこれらを省略している。
【0019】
本実施例ではさらに二次電池70の放電あるいは充電電流を制御するために二次電池の電流制御装置100が設けられている。以下で説明するが二次電池の電流制御装置100を設けることにより二次電池70から負荷50へ電力を供給している状態において、二次電池70を流れる電流I
b1や電流I
b2を周期的に変えることができ、これにより二次電池70の内部損失を低減でき、結果的に所定の蓄積電力に基づく負荷50への供給電力量を増大することが可能となる。言い換えると所定の蓄積電力に基づく負荷50への電力供給時間を長くすることが可能となる。
1.2 負荷50の説明
負荷50は、特に限定されるものではない。負荷50は例えば照明装置であっても良いし、車両駆動用のモータであっても良い。本発明を適用するうえで、負荷50を特に限定する必要は無く、色々な種類の負荷に対して本発明が適用可能である。
【0020】
例えば負荷50は直流電力を消費する負荷であっても良いし、交流電力を受けて動作する負荷であっても良い。また負荷50が直流電力を消費する負荷の場合であっても、二次電池70から供給される直流電圧がそのまま供給可能な負荷であっても良いし、適切な電圧に変換した後に供給される負荷であっても良い。この場合には、負荷50として記載した負荷が電圧変換装置を備えていることを意味する。また交流電力を消費する負荷である場合には、負荷50として記載した負荷が直流電力を受けて交流電力を発生する電力変換装置を備えていることを意味する。
1.3 二次電池70の説明
この実施例では、二次電池70は直列接続された第1二次電池80と第2二次電池90とを有している。また第1二次電池80と第2二次電池90はそれぞれ少なくとも1個のリチウムイオン二次電池を有している。しかしこれは一例であり、二次電池70を構成する第1二次電池80や第2二次電池90の両方が常に必要なわけではなく、どちらか一つのみであっても良い。また第1二次電池80や第2二次電池90だけでなく、さらに多くの直列接続された二次電池が、例えば第3二次電池や第4二次電池が設けられていても良い。
【0021】
さらにまた第1二次電池80あるいは第2二次電池90が、1個以上の直列接続されたリチウムイオン二次電池を有するだけでなく、それぞれが並列接続されたリチウムイオン二次電池を有していても良い。なお並列接続されたリチウムイオン二次電池は容量が増大したと考えられるので、この場合には第1二次電池80や第2二次電池90などに付いてより大きな容量を有する二次電池であるとして取り扱うことができる。
【0022】
第1二次電池80と第2二次電池90がそれぞれ有するリチウムイオン電池の直列接続の数を増やすことにより、負荷50へ供給する電圧を増大することができる。また上述のように第1二次電池80や第2二次電池90に加えてさらに多くの直列接続された二次電池を設けることで負荷50へ供給する電圧を増大することができる。本実施例では説明を分かり易くするために、第1二次電池80と第2二次電池90の2組の二次電池を有する例で説明する。なお本実施例では、第1二次電池80や第2二次電池90の各組は1個またはそれ以上のリチウムイオン電池を備えているが、リチウムイオン電池は一例であり、鉛二次電池やその他の種類の二次電池であっても良い。
1.4 二次電池の電流制御装置100の説明
本実施例では、二次電池70から負荷50へ供給する電流値を周期的に変化させることにより、二次電池70における電力の損失を低減でき、その結果として二次電池70から負荷50への電力供給の効率を向上することができる。二次電池70から負荷50へ供給する電流値を周期的に変化させるために、本実施例では二次電池の電流制御装置100が設けられている。
【0023】
二次電池の電流制御装置100は、蓄電装置120や蓄電装置130と、蓄電装置120や蓄電装置130を第1二次電池80あるいは第2二次電池90に並列に接続するための接続装置140と、接続装置140を制御するための制御装置150と、を備えている。二次電池70に負荷50が接続された状態で、制御装置150は接続装置140を所定の周期、例えば1秒周期で、切り替える。この実施例では、第1二次電池80および第2二次電池90に接続されている接続装置140の端子142が、端子144に接続されると、蓄電装置120と第1二次電池80が並列に接続される。この状態では蓄電装置130は第2二次電池90や負荷50とは接続されない状態となり、蓄電装置130の電流I
c2は流れない。この状態では、負荷50には第1二次電池80を流れる電流I
b1と蓄電装置120を流れる電流I
c1とのベクトル和の電流が流れる。なおこの実施例では第2二次電池90を流れる電流I
b2が負荷50を流れる電流と等しくなる。
【0024】
次に接続装置140の端子142が端子146に接続されると、蓄電装置120は接続されない状態となり、蓄電装置120を流れていた電流I
c1が流れなくなる。一方蓄電装置130が第2二次電池90に並列に接続される。この状態では、負荷50を流れる電流は蓄電装置130を流れる電流I
c2と第2二次電池90を流れる電流I
b2とのベクトル和の電流となる。なおこの実施例では第1二次電池80を流れる電流I
b1が負荷50を流れる電流と等しくなる。
【0025】
制御装置150による制御によって、接続装置140の端子142と端子144あるいは端子146との接続が所定周期で切り替わると、蓄電装置120と第1二次電池80あるいは蓄電装置130と第2二次電池90とが交互に接続する。この切り替わりにより、第1二次電池80を流れる電流I
b1や第2二次電池90を流れる電流I
b2が、上記一定周期毎に変化する。このように二次電池70を流れる電流を周期的に変化させることにより、二次電池70を構成する第1二次電池80や第2二次電池90の損失が低減され、二次電池70から負荷50への電流供給における損失が低減する、言い換えると二次電池70から負荷50への電力供給における効率が向上する。このことについて次に説明する。
2.実施例についてのシミュレーション条件およびシミュレーション結果の説明
2.1 シミュレーション条件の説明
図1の実施例において、蓄電装置120と蓄電装置130にコンデンサを使用し、該コンデンサの容量を1Fから1000Fまでの範囲を想定して、変化させてシミュレーションを行った。接続装置140の切り替え周期を1秒間とし、1秒の周期で蓄電装置120と蓄電装置130とが交互に、第1二次電池80や第2二次電池90にそれぞれ並列接続されるように設定した。なおこのシミュレーションでは、一例として、接続装置140は以下に記載の負荷50の消費電力の変化に関係なく、上記条件で切り替え周期を一定とし、1秒としている。
【0026】
第1二次電池80および第2二次電池90をリチウムイオン二次電池で構成し、第1二次電池80の端子電圧V
b1および第2二次電池90の端子電圧V
b2をそれぞれ4Vから24Vの範囲で変化させた。また端子62と端子64からの放電条件となる負荷50の消費電力を
図2に示す100秒を単位とする電力負荷パターンとし、この電力負荷パターンを8回繰り返し、時間0秒から時間800秒までのシミュレーションを行った。なお
図2では代表例として時間700秒から時間800秒までの100秒間の電力負荷パターンのみを示すが、他の期間も電力負荷パターンは同じである。
【0027】
図3から
図6は、
図1に記載のシミュレーション回路の電流波形であり、時間0秒から時間800秒までのシミュレーションに基づく電流波形の内、時間700秒から時間800秒までの100秒間のみを示す。しかし他の時間における電流波形も時間700秒から時間800秒までの100秒間の波形とほぼ類似しており、同様の動作が行われていると考えることができる。
【0028】
図3は第1二次電池80を流れる電流I
b1の波形であり、
図4は蓄電装置120を流れる電流I
c1の波形である。
図5は第2二次電池90を流れる電流I
b2の波形であり、
図6は蓄電装置130を流れる電流I
c2の波形である。これら
図3から
図6に記載した各電流波形と第1二次電池80や第2二次電池90および蓄電装置120や蓄電装置130の動作に関しては、改めて以下で述べる。
【0029】
2.2 シミュレーション結果の説明
上述の条件に従って800秒までシミュレーションを行った結果に付いて
図7のグラフを用いて説明する。上述のように、第1二次電池80の電圧V
b1や第2二次電池90の電圧V
b2を4Vから24Vまでの範囲で変化させた。この電圧V
b1や電圧V
b2の変化をX軸としている。また蓄電装置120および蓄電装置130の静電容量を1Fから1000Fの範囲で変化させた。この静電容量の変化をY軸としている。
【0030】
負荷50に対して端子62や端子64から電源側のシミュレーション開始時の充電電力量、言い換えると電池容量を一定値に設定し、800秒のシミュレーション後の電池容量を求めた。二次電池の電流制御装置100を設けない状態でのシミュレーション後の電池容量をQ
noとし、二次電池の電流制御装置100を設けて本願発明を適用したシミュレーション後の電池容量Q
proとし、電池容量Q
noに対する電池容量Q
proの容量比Aを求めた。すなわち容量比Aは次の式1で示される。
【0031】
容量比A = Q
pro /Q
no ・・・(1)
式1で示される容量比Aを
図7のZ軸に示す。シミュレーション結果において、もしシミュレーション後の電池容量Q
proがシミュレーション後の電池容量をQ
noと同じであれば容量比Aが1となる。もし容量比Aが1より大きければ、二次電池の電流制御装置100を設けたことにより、二次電池70から負荷50への放電時間が延びることになる。すなわち二次電池の電流制御装置100を設けることにより第1二次電池80あるいは第2二次電池90の電流が周期的に変化し、これにより上記二次電池80や第2二次電池90の内部損失が低下し、また電流制御装置内部の蓄電装置120から負荷50へのエネルギー供給が可能となる、との両効果により、二次電池70の放電量が抑制され、1回の充電に対する放電時間が延びることになる。
【0032】
図7に記載のシミュレーション結果に基づくグラフを見ると、蓄電装置120や蓄電装置130の容量を大きくするに従って1回の充電に対する放電時間の延長効果が大きくなる傾向がある。例えば10F以上で効果が表れ、100F以上でより顕著な効果が表れている。さらに第1二次電池80の電圧V
b1や第2二次電池90の電圧V
b2の値が大きいほど大きな効果が表れている。
【0033】
2.3 実施例の特徴についての説明
図3に記載の第1二次電池80を流れる電流I
b1波形と
図4に記載の蓄電装置120を流れる電流I
c1との関係について検討する。
図1に示す状態では接続装置140の端子142が端子146側にあり蓄電装置120が第1二次電池80と並列に接続されている状態である。この1つ前の状態では、蓄電装置120は二次電池70から電気的に切り離された状態にあり、
図4のグラフにおいてその時の電流は電流I
c1aで示され、実際には電流が流れていない。この状態では、
図3に記載の電流I
b1aで示す如く、第1二次電池80には負荷50に供給するための大きな電流が流れる。この電流I
b1aが流れることにより第1二次電池80に蓄えられた容量が減少し、第1二次電池80の端子電圧V
b1が減少すると考えられる。一方蓄電装置120は電流I
c1が流れないので蓄電装置120の容量は維持され、蓄電装置120の端子電圧V
c1も低下することなく維持される。
【0034】
接続装置140の端子142が端子144側に切り替わり端子142が蓄電装置120に接続されたことにより、蓄電装置120と第1二次電池80とが並列接続される。まず蓄電装置120と第1二次電池80の電圧差に応じて蓄電装置120から
図4に示す大きな電流I
c1bが一時的に放出される。この電流が第1二次電池80へ流れ込み、
図3に電流I
b1bとして示すように第1二次電池80を一時的に充電する。さらに、
図1に記載のように、第1二次電池80が負荷50に対して電気回路的には接続されているにも関わらず、放電電流に対する蓄電装置の電圧低下率と電池の内部抵抗に起因した電圧降下率のバランスによって電流I
b2bとして示すように蓄電装置120から第1二次電池80へ継続的な充電電流も流すことができる。第1二次電池80あるいは第2二次電池90の電流が周期的に変化することによる二次電池の内部損失の低下効果と蓄電装置120からのエネルギー供給に加えて、電池の充電効果もあるので、
図7を用いて説明した効果が生じるものと考えられる。
【0035】
また次のように考えることができる。一般的には、電池とキャパシタとの並列接続回路では、内部抵抗の高い電池は電流が流れにくく、このためキャパシタに電流が偏ってしまう。今蓄電装置120と第1二次電池80との並列回路を考えると、コンデンサで構成する蓄電装置120の内部抵抗が第1二次電池80より低いので、蓄電装置120を流れる電流I
c1が第1二次電池80を流れる電流I
b1より流れ易い傾向となる。蓄電装置120の容量が小さいと電流I
c1が流れることにより蓄電装置120の端子電圧が急激に低下する。しかし蓄電装置120の容量が大きくなると、例えば蓄電装置120の容量が10F以上、さらに大きくなり蓄電装置120の容量が100F以上、さらにより大きくなり蓄電装置120の容量が1000F以上、となると、すなわち蓄電装置120の容量が大きくなるに従って、蓄電装置120の電流I
c1による端子電圧の低下の時定数が大きくなり、端子電圧の低下が遅くなる。蓄電装置120と第1二次電池80とが並列接続されているので、蓄電装置120の端子電圧と第1二次電池80の端子電圧が等し保たれることになり、第1二次電池80の端子電圧を持ち上げることが必要となる。このため蓄電装置120の電流I
c1が第1二次電池80の充電電流として第1二次電池80に流れ込む。このような現象が生じ、この現象が
図7に示すような効果が生じる一因となっている。
【0036】
今蓄電装置120と第1二次電池80との関係を説明したが、
図5に示す第2二次電池90を流れる電流I
b2と蓄電装置130を流れる電流I
c2とは、上述した第1二次電池80を流れる電流I
b1と蓄電装置120を流れる電流I
c1との関係に非常に似ている。従って蓄電装置130は第2二次電池90に対して、蓄電装置120が第1二次電池80に及ぼすのと同様の作用をなし、同様の効果を奏するものと考える。
【0037】
2.4 実施例におけるその他の作用効果についての説明
特許文献1に記載の方式では、解決しようとする課題が二次電池の充放電サイクル寿命の改善であり、本発明では効果においておよび構成において、特許文献1に記載の公知の発明とは異なっている。しかしそれだけでなく、
図1に記載の実施例ではさらに異なる効果を有している。例えば蓄電装置120と第1二次電池80との端子間電圧の差が小さく、接続装置140の端子間に作用している電圧が小さい。蓄電装置130と第2二次電池90とに付いても同様である。従って接続装置140を介して流れる電流も少ない。接続装置140の電気的な負担が小さく、長寿命化に適している。
【0038】
また二次電池70は、接続装置140の動作に関係なく、回路的には負荷50に接続されており、仮に接続装置140に異常が発生しても二次電池70から負荷50へ電流を供給し続けることが可能となる。従って例えば負荷50が非常灯であったり、信号機であったり、車両の駆動装置であったり、安全性に関わる装置である場合に、安全性が維持され易い効果がある。例えば接続装置140が故障し、どちらかに接続した状態のままで動かなくなっても、あるいは蓄電装置120や蓄電装置130が二次電池70と接続することが困難となっても、直ちに危険な状態となるものではなく、二次電池70と負荷50との接続を維持し、二次電池70から負荷50への電力供給を維持することが可能である。
【0039】
3.実施例の変形例に付いての説明
図1において、第1二次電池80や第2二次電池90としてシミュレーションではリチウムイオン二次電池を使用した。しかしリチウムイオン二次電池に限らず他の種類の電池であっても、これら1回の充電に対する放電時間の延長効果があるものと考える。さらにシミュレーションでは蓄電装置120や蓄電装置130としてコンデンサを使用した。しかし第1二次電池80や第2二次電池90を流れる電流を周期的に変化させる作用は、コンデンサの使用に限られるものでは無く、蓄電装置120や蓄電装置130は蓄電作用を有していればよく、コンデンサ以外の蓄電装置、例えば二次電池であっても可能である。
【0040】
しかし、
図1や
図8に示すように蓄電装置120や蓄電装置130としてコンデンサを使用する方が、コンデンサ以外の蓄電装置、例えば二次電池、を使用するよりも優れている。すなわちコンデンサは充放電動作において、二次電池などに比べて放電電流に対する電圧降下が低い。このため二次電池と並列接続するとコンデンサからエネルギーを引き出し易い。従って本発明の実施例としてはコンデンサを使用する方が、発明の効果の点から望ましい。
【0041】
また二次電池70は本実施例では、第1二次電池80と第2二次電池90とを備えている。しかし上述した如く、第1二次電池80あるいは第2二次電池90のどちらか一方だけでも良い。あるいはさらに多くの二次電池を備えていても良い。負荷50の種類に応じて、適切な供給電圧が選択されることが重要であり、供給電圧の観点から二次電池70が有する直列の二次電池の数を決定することができる。蓄電装置120や蓄電装置130の数も実施例に限られるものではなく、1個でも良いし、さらに多くの蓄電装置を有していても良い。蓄電装置120や蓄電装置130として使用する部品、例えばコンデンサを使用する場合に各コンデンサにはそれぞれ好ましい使用電圧がある。各コンデンサの使用電圧と二次電池70全体の電圧との関係で、蓄電装置120や蓄電装置130を構成するコンデンサの直列接続数を決めることが望ましい。また蓄電装置120や蓄電装置130の容量をどのような値にするかに基づいて、蓄電装置120や蓄電装置130を構成するコンデンサの並列接続数を決めることが望ましい。
【0042】
図1や以下で説明する
図8に記載の実施例おいては、動作の安定性などの観点から、第1二次電池80や第2二次電池90は、それぞれほぼ同じ特性の二次電池を同じ数だけ直列および並列接続することにより構成されている。また蓄電装置120や蓄電装置130は、図示を省略しているが、それぞれほぼ同じ特性のコンデンサを同じ数だけ直列および並列接続することにより構成されている。
【0043】
上記シミュレーションでは、1秒間隔で、蓄電装置120と蓄電装置130の繋ぎ変えを行ったが、この周期に限るものではない。例えば0.1秒間隔で切り替えても良いし、もっと短い間隔で切り替えても良い。さらに長い間隔で、切り替えても良い。例えば10秒あるいはそれより長い間隔でも良い。間隔が長くなると、例えば第1二次電池80の電圧低下が大きくなり、例えば蓄電装置120が第1二次電池80に接続されたときの蓄電装置120と第1二次電池80との端子電圧の差が大きくなる。しかし、第1二次電池80の電圧低下は負荷50へ供給する電流と、第1二次電池80の容量との関係で定まり、第1二次電池80から負荷50へ供給する電流が大きい場合に第1二次電池80の電圧低下が大きくなる。今第1二次電池80について述べたが、第2二次電池90に付いても同様である。従って二次電池70が供給する電流の大きさに基づいて接続装置140の切り替え動作の周期を変えるようにしても良い。この場合、負荷50への供給電流が大きい場合と、負荷50への供給電流が小さい場合とを比較すると、負荷50への供給電流が大きい場合の方が短い周期で切り替えることになる。
【0044】
制御装置150が二次電池70の供給電流量と接続装置140の切り替え周期との関係を表すデータを有していて、このデータに基づいて制御装置150が切り替え周期を制御するようにしても良い。あるいは、第1二次電池80あるいは第2二次電池90等の端子間電圧の変化を実際に検出し、検出結果に従って制御装置150が接続装置140の切り替え周期を制御するようにしても良い。また他の考え方として、蓄電装置120や蓄電装置130を接続したときの蓄電装置120あるいは蓄電装置130を流れる電流値を計測して、この電流値が設定範囲内となるように接続装置140の切り替え周期を制御しても良い。
【0045】
4.本発明が適用された製品に関する動作の説明
図1を用いて二次電池70から負荷50への電力の供給動作に付いて説明したが、実際の製品においては、電力供給源から二次電池70に電力を供給して二次電池70に電力を蓄え、蓄えられた電力に基づいて、負荷50を駆動するための電力が二次電池70から供給される。二次電池70に電力を蓄える蓄電動作に付いて
図8を用いて説明する。なお他の図面と同一符号は同一の構成を示し、略同様の作用をなすと共に略同様の効果を奏する。
【0046】
二次電池の電流制御装置100が設けられていない場合には、負荷50の代わりに設けられた直流電源55から端子62や端子64を介して第1二次電池80および第2二次電池90に直流電流が供給される。二次電池70を構成する第1二次電池80や第2二次電池90にそれぞれ直流電源55から充電電流I
b1cや電流I
b2cが供給される。二次電池の電流制御装置100が設けられていない場合には、充電電流I
b1cと電流I
b2cは同じ値となる。
【0047】
次に二次電池の電流制御装置100が設けられ、接続装置140の動作により、蓄電装置120と蓄電装置130が所定周期で交互に第1二次電池80や第2二次電池90に並列接続されると、電流I
b1cや電流I
b2cは、パルス状に変化する電流すなわち断続的な電流状態となる。接続装置140の動作と第1二次電池80を流れる電流I
b1cや第2二次電池90を流れる電流I
c2cについて検討する。
【0048】
接続装置140の端子142と端子146とが接続している状態を考える。この状態では蓄電装置120は接続されていない。従って蓄電装置120の電流I
c1cは流れない。二次電池70と直流電源55とが接続されているので、第1二次電池80には電流I
b1cが供給される。また第2二次電池90には電流I
b2cが流れ、蓄電装置130には電流I
c2cが流れる。電流I
b1cが流れることによって第1二次電池80の蓄電量が増大し、第1二次電池80の端子電圧V
b1が増大する。この結果第1二次電池80の端子電圧V
b1が蓄電装置120の端子電圧V
c1より大きくなる。第2二次電池90と蓄電装置130にもそれぞれ電流I
b2cや電流I
c2cが流れるので第2二次電池90の端子電圧V
b2や蓄電装置130の端子電圧V
c2が増大するが、第2二次電池90と蓄電装置130とは互いに略短絡状態に近い状態で並列接続されているので、第2二次電池90の端子電圧V
b2や蓄電装置130の端子電圧V
c2は互いに略同じ値に維持される。
【0049】
次に接続装置140が動作して、接続装置140の端子142が端子144に接続され、端子146が解放されると、第1二次電池80の端子電圧V
b1が蓄電装置120の端子電圧V
c1より大きいので、電流I
b1cが逆方向の値となり、蓄電装置120の充電電流として作用する。蓄電装置120には直流電源55および第1二次電池80から電流が供給され、蓄電装置120の充電量が増大し、蓄電装置120の端子電圧V
c1が増大する。蓄電装置120の端子電圧V
c1が第1二次電池80の端子電圧V
b1に等しくなると、第1二次電池80から蓄電装置120への電流が無くなり、直流電源55から第1二次電池80と蓄電装置120の両方に充電電流が供給されるようになる。
【0050】
蓄電装置130は接続されていないので電流I
c2cが流れない。その結果蓄電装置130の端子電圧V
c2は増大しないが、第2二次電池90には直流電源55から電流I
b2cが供給されるので第2二次電池90の端子電圧V
c2が増大する。次に接続装置140の端子142が再び端子146に接続されると、第2二次電池90から蓄電装置130に充電電流が流れる。すなわち第2二次電池90に一時的に逆方向の電流が流れる。このような動作が、接続装置140が切り替わる度に行われる。第1二次電池80や第2二次電池90を流れる電流は、パルス状に変化するだけでなく、周期的に逆方向の電流が流れる。
【0051】
このように二次電池の電流制御装置100を用いることにより、負荷50へ電力を供給している状態だけでなく、直流電源55から二次電池70へ充電電力が供給されている状態においても、二次電池70の電流をパルス状態のように所定周期で変化するように制御することかでき、効率向上や長寿命化の効果を奏することが可能となる。さらに二次電池70を流れる電流を、所定周期で変化するだけでなく、二次電池70を流れる電流の方向を所定周期で変化するように制御することかでき、より大きな効果を得ることができる。