特許第6566414号(P6566414)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6566414基板処理方法および基板処理装置ならびに流体ノズル
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6566414
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置ならびに流体ノズル
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20190819BHJP
【FI】
   H01L21/304 651L
   H01L21/304 651B
   H01L21/304 648G
   H01L21/304 651M
【請求項の数】20
【全頁数】44
(21)【出願番号】特願2015-39025(P2015-39025)
(22)【出願日】2015年2月27日
(65)【公開番号】特開2016-162847(P2016-162847A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(72)【発明者】
【氏名】小林 健司
(72)【発明者】
【氏名】吉原 直彦
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 学
【審査官】 石丸 昌平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−111219(JP,A)
【文献】 特開2010−109087(JP,A)
【文献】 特開2013−201334(JP,A)
【文献】 特開2014−197571(JP,A)
【文献】 特開2014−110404(JP,A)
【文献】 特開2004−119717(JP,A)
【文献】 特開2011−071438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板保持ユニットによって基板を水平姿勢で保持する基板保持工程と、
前記基板保持ユニットによって保持されている前記基板の上面に処理液を供給して液膜を形成する液膜形成工程と、
前記基板保持ユニットに保持された基板の上方において前記基板の中心から周縁に向かって前記基板の上面と平行にかつ放射状に不活性ガスを吐出することにより、前記基板の上面と平行に流れ、前記基板の上面を覆う不活性ガス流を形成する上面被覆工程と、
前記上面被覆工程と並行して行われ、前記基板の上面に向かって不活性ガスを吐出することにより、前記液膜形成工程によって形成された前記液膜を前記基板の上面から排除する液膜排除工程とを含み、
前記液膜排除工程が、前記基板の中心に向かって前記上面に対して垂直に不活性ガスを直線状に吐出する垂直ガス吐出工程と、前記基板上面の中心と周縁との間の中間位置を吐出目標位置として、前記基板の上面に対して外向き斜めの方向に不活性ガスを放射状に吐出する斜めガス吐出工程とを含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記垂直ガス吐出工程が、前記基板の中心に向かって前記上面に対して垂直に吐出される不活性ガスの流量を漸次的に増加させる垂直ガス流量増加工程を含む、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記斜めガス吐出工程が、前記液膜の中央に形成された穴の周縁が前記吐出目標位置に達するタイミングで開始される、請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記斜めガス吐出工程が、前記吐出目標位置に向かって斜めに吐出される不活性ガスの流量を漸次的に増加させる斜めガス流量増加工程を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記斜めガス吐出工程が、前記吐出目標位置を漸次的に前記基板の上面の周縁に向かって移動させる吐出目標位置移動工程を含む、請求項4に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記吐出目標位置移動工程が、基板の上面に対して外向き斜めの方向に不活性ガスを吐出する傾斜流吐出口を、前記基板の上面に対して上昇させる工程を含む、請求項5に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記斜めガス吐出工程が、前記基板の中心と前記基板の上面の周縁との間の第1吐出目標位置に向けて、前記基板の上面に対して外向き斜め方向に第1傾斜流吐出口から不活性ガスを放射状に吐出する工程と、前記第1吐出目標位置と前記周縁との間の第2吐出目標位置に向けて、前記基板の上面に対して外向き斜め方向に第2傾斜流吐出口から不活性ガスを吐出する工程とを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記液膜の中央に形成される穴の周縁の位置を検出する周縁位置検出工程をさらに含み、
前記液膜排除工程が、前記周縁位置検出工程による検出結果に応じて不活性ガスの吐出を制御する工程を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記液膜形成工程の開始に先立って前記上面被覆工程が開始される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
基板の主面に対向して配置される流体ノズルであって、
前記基板の主面に垂直に配置される中心軸線に沿って、前記基板の主面に垂直な直線状に流体を吐出する線状流吐出口と、
前記中心軸線に垂直な平面に沿って、前記中心軸線の周囲に放射状に流体を吐出することにより、前記基板の主面に平行で、かつ前記基板の主面を覆う平行気流を形成する平行流吐出口と、
前記中心軸線に対して傾斜した円錐面に沿って、前記中心軸線の周囲に放射状に流体を吐出することにより、前記基板の主面に対して斜めに入射する円錐状プロファイルの傾斜気流を形成する傾斜流吐出口と、
第1流体入口と、
前記第1流体入口と前記線状流吐出口とを連通させる第1流体路と、
第2流体入口と、
前記第2流体入口と前記平行流吐出口とを連通させ、前記第流体路とは非連通の第2流体路と、
第3流体入口と、
前記第3流体入口と前記傾斜流吐出口とを連通させ、前記第1流体路および前記第2流体路のいずれとも非連通の第3流体路と
を含む、流体ノズル。
【請求項11】
前記傾斜流吐出口が、基板の主面に対して異なる位置で流体を斜めに入射させる第1傾斜流吐出口および第2傾斜流吐出口を含み、
前記第3流体路が、前記第3流体入口と前記第1傾斜流吐出口とを連通させており、
第4流体入口と、
前記第4流体入口と前記第2傾斜流吐出口とを連通させ、前記第1流体路、前記第2流体路および前記第3流体路のいずれとも非連通の第4流体路とをさらに含む、請求項10に記載の流体ノズル。
【請求項12】
前記中心軸線の近傍で基板の主面に向けて流体を吐出する中心吐出口と、
第5流体入口と、
前記第5流体入口と前記中心吐出口とを連通させ、前記第1流体路、前記第2流体路および前記第3流体路のいずれとも非連通の第5流体路と
をさらに含む、請求項10または11に記載の流体ノズル。
【請求項13】
基板を水平に保持する基板保持ユニットと、
請求項10〜12のいずれか一項に記載の流体ノズルと、
前記基板保持ユニットに保持される基板に対向するように、前記流体ノズルを保持するノズル保持ユニットと、
前記第1流体入口に結合された第1不活性ガス供給管と、
前記第2流体入口に結合された第2不活性ガス供給管と、
前記第3流体入口に結合された第3不活性ガス供給管と、
前記第1不活性ガス供給管の流路を開閉する第1不活性ガスバルブと、
前記第2不活性ガス供給管の流路を開閉する第2不活性ガスバルブと、
前記第3不活性ガス供給管の流路を開閉する第3不活性ガスバルブと、
前記第1不活性ガスバルブ、前記第2不活性ガスバルブおよび前記第3不活性ガスバルブを制御する制御ユニットと
を含む、基板処理装置。
【請求項14】
前記流体ノズルが請求項11に記載の流体ノズルであり、
前記第4流体入口に結合された第4不活性ガス供給管と、
前記第4不活性ガス供給管の流路を開閉する第4不活性ガスバルブとをさらに含み、
前記制御ユニットが、前記第4不活性ガスバルブをさらに制御する、請求項13に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記流体ノズルが請求項12に記載の流体ノズルであり、
前記第5流体入口に結合された処理液供給管と、
前記処理液供給管の流路を開閉する処理液バルブとをさらに含み、
前記制御ユニットが、前記処理液バルブをさらに制御する、請求項13または14に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記第1不活性ガス供給管を流れる不活性ガスの流量を調整する第1流量調整ユニットをさらに含み、
前記制御ユニットが、前記第1流量調整ユニットをさらに制御する、請求項13〜15のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記第3不活性ガス供給管を流れる不活性ガスの流量を調整する第2流量調整ユニットをさらに含み、
前記制御ユニットが、前記第2流量調整ユニットをさらに制御する、請求項13〜16のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項18】
前記基板保持ユニットと前記流体ノズルとの前記中心軸線に沿う方向の距離を調整する距離調整ユニットをさらに含み、
前記制御ユニットが前記距離調整ユニットをさらに制御する、請求項13〜17のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項19】
前記基板保持ユニットに保持された基板の上面の液膜の位置を検出する液膜位置検出ユニットをさらに含み、
前記制御ユニットが、前記液膜位置検出ユニットの検出結果に応じて、少なくとも前記第3不活性ガスバルブを制御する、請求項13〜18のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項20】
前記制御ユニットが、請求項1〜9のいずれか一項に記載の基板処理方法を実行するようにプログラムされている、請求項13〜19のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体で基板を処理する基板処理方法および基板処理装置、ならびに基板に流体を供給するための流体ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの製造工程では、半導体ウエハや液晶表示装置用ガラス基板などの基板を処理するための基板処理装置が用いられる。基板を1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置は、たとえば、基板を水平に保持して回転させるスピンチャックと、スピンチャックに保持された基板の上面に処理液を供給する処理液ノズルとを備えている。
【0003】
この基板処理装置による基板の処理では、たとえば、回転状態の基板の上面中央部に向けて処理液ノズルから処理液が吐出される。処理液ノズルから吐出された処理液は、基板の上面中央部に着液し、基板の回転による遠心力を受けて、基板の上面周縁部に向かって瞬時に広がっていく。これにより、基板の上面全域に処理液が供給され、基板の上面に処理液による処理が行われる。処理液による処理が行われた後は、スピンチャックによって基板を高速回転させて当該基板を乾燥させる乾燥処理(スピンドライ)が行われる。
【0004】
特許文献1に記載された基板処理装置は、環状の上側気体吐出口と、同じく環状の下側気体吐出口と、中心気体吐出口とを有する気体吐出ノズルを備えている。上側気体吐出口および下側気体吐出口は、それぞれ、基板の主面に沿って窒素ガスを放射状に吐出する。上側気体吐出口および下側気体吐出口にそれぞれ連なる窒素ガス流路は互いに連通しており、したがって、上側気体吐出口および下側気体吐出口からは、同時に窒素ガスが吐出される。中心吐出口は基板の主面に対向しており、弱い窒素ガス流を吐出する。この窒素ガス流は基板の主面で方向を変えて、基板の主面に平行な窒素ガス流を形成する。したがって、上側気体吐出口、下側気体吐出口および中心吐出口から吐出された窒素ガスは、基板の主面に平行な3層の窒素ガス流を形成する。この3層の窒素ガス流は、基板の表面に、跳ね返った液滴やミストが付着することを防止する。
【0005】
特許文献1の先行技術では、スピンチャックを高速回転させるスピンドライ工程において、基板の主面に平行な窒素ガス流が形成される。基板の表面の液体の排除は、専ら、基板の回転に伴う遠心力に依存しており、窒素ガス流は液体の排除に対して実質的な影響を及ぼしていない。中心吐出口からは基板の主面に向けて弱い窒素ガス流が吐出されるものの、基板上の液膜が除去されることのないように、十分に圧力が弱められる(特許文献1の段落0068参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−238758号公報
【特許文献2】特開2008−034553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、スピンドライによる基板の乾燥は、基板上に液滴を残すおそれがある。具体的には、基板を高速回転させることにより、基板上の液膜が微小な液滴に分裂すると、その液滴に働く遠心力が弱いために、基板外への排除が困難になる場合がある。とりわけ、基板の回転中心付近に位置する微小液滴の排除が困難である。
そこで、この発明の目的は、基板上の液膜を良好に排除することができる基板処理方法および基板処理装置、ならびにそのために利用可能な流体ノズルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
の発明は、基板保持ユニットによって基板を水平姿勢で保持する基板保持工程と、前記基板保持ユニットによって保持されている前記基板の上面に処理液を供給して液膜を形成する液膜形成工程と、前記基板保持ユニットに保持された基板の上方において前記基板の中心から周縁に向かって前記基板の上面と平行にかつ放射状に不活性ガスを吐出することにより、前記基板の上面と平行に流れ、前記基板の上面を覆う不活性ガス流を形成する上面被覆工程と、前記基板の上面に向かって不活性ガスを吐出することにより、前記液膜形成工程によって形成された前記液膜を前記基板の上面から排除する液膜排除工程とを含む、基板処理方法を提供する。
【0009】
この方法によれば、基板の中心から周縁に向かって基板の上面と平行な不活性ガス流を形成して、その不活性ガス流によって、基板の上面を覆うことができる。それにより、基板の上面に、跳ね返った液滴やミストなどが付着することを抑制または防止でき、高品質な基板処理が可能になる。さらに、この方法では、基板の上面に向かって吐出される不活性ガスによって、基板の上面の液膜が排除される。不活性ガスの吹き付けによる液膜の排除は、基板の回転によって生じる遠心力に依存しない。したがって、遠心力の利用では排除できない液膜の排除が可能である。また、遠心力を利用できない場合(すなわち、基板を回転しない場合)であっても、基板の上面の液膜を排除することができる。
【0010】
前記上面被覆工程は、前記液膜形成工程と同時に開始してもよく、前記液膜形成工程よりも前に開始してもよく、液膜形成工程の開始後に開始してもよい。また、前記上面被覆工程は、前記液膜形成工程と並行して行われる期間を有することが好ましい。
前記液膜排除工程は、前記上面被覆工程と同時に開始してもよく、前記上面被覆工程よりも前に開始してもよく、前記上面被覆工程よりも後に開始してもよい。また、前記液膜排除工程の少なくとも一部(好ましくは全部)の期間は、前記上面被覆工程と並行して行われることが好ましい。それにより、周囲から飛来する液滴やミスト等が基板の上面に付着することを抑制または防止した状態で、基板の上面の液膜を排除できる。
【0011】
液膜形成工程は、基板の上面の全域を覆う液膜を形成してもよいし、基板の上面の一部を覆う液膜を形成してもよい。少なくとも、基板の上面の中央領域を覆う液膜が液膜形成工程において形成されてもよい。
の発明の一実施形態では、前記液膜排除工程が、前記基板の中心に向かって前記上面に対して垂直に不活性ガスを直線状に吐出する垂直ガス吐出工程を含
【0012】
この方法によれば、基板の上面に対して垂直な方向に沿って、基板の中心に向けて不活性ガスが直線状に吐出される。それにより、基板の中心の液膜を不活性ガスによって確実に排除できる。直線状に吐出される不活性ガスは、基板の中心において液膜に穴を形成する(液膜開口工程)。すなわち、直線状の不活性ガス流は、液膜を貫通する穴を形成し、その穴から、基板の上面を露出させる。さらに、基板の上面にぶつかった不活性ガス流は、その方向を変えて、基板の中心から周縁へと向かう、基板の上面に平行な流れを形成する。これにより、穴が押し広げられ、液膜が基板の周縁へと押しやられる。こうして、基板の上面の液膜を基板外に排除することができる。
【0013】
の発明の一実施形態では、前記垂直ガス吐出工程が、前記基板の中心に向かって前記上面に対して垂直に吐出される不活性ガスの流量を漸次的に増加させる垂直ガス流量増加工程を含
この方法により、不活性ガス流量が漸次的に増加することにより、液膜に形成された穴をスムーズに広げることができ、液膜を基板の周縁に向けて押し出すことができる。それにより、基板の上面の液膜を効率的に排除できる。また、不活性ガス流量を漸次増加させる場合には液膜に最初に穴を形成する際の流量が小さくてもこの穴をスムーズに広げることができる。液膜に最初に穴を形成する際の流量を小さくした場合には、液膜に最初に穴を形成する際の液跳ねを防止または抑制することができる。
【0014】
の発明の一実施形態では、前記液膜排除工程が、前記基板上面の中心と周縁との間の中間位置を吐出目標位置として、基板の上面に対して外向き斜めの方向に不活性ガスを放射状に吐出する斜めガス吐出工程を含
この方法により、基板の上面に対して外向き斜めの方向に不活性ガスが放射状に吐出されることによって、基板の上面の液膜を一層効率的に排除できる。すなわち、外向き斜めの方向の不活性ガス流は、吐出直後から基板の外側に向かうベクトルを有しているので、液膜を強力に外方へと押し出すことができる。
【0015】
の発明の一実施形態では、前記斜めガス吐出工程が、前記液膜の中央に形成された穴の周縁が前記吐出目標位置に達するタイミングで開始され
この構成によれば、液膜に形成された穴の周縁が前記吐出目標位置に達すると、そのタイミングで当該吐出目標位置に向けて、外向き斜め方向に不活性ガス流が吐出される。この斜めの不活性ガス流は、穴の周縁を広げて、液膜を基板の外方へと押し出す。それにより、基板上に液膜が残留することを抑制または防止しながら、液膜を効率的に排除できる。
【0016】
穴の形成は、垂直ガス吐出工程によって行ってもよい。この場合、垂直ガス吐出工程よりも後に斜めガス吐出工程が開始されることが好ましい。斜めガス吐出工程中、垂直ガス吐出工程を並行して行ってもよい。
穴は、垂直ガス吐出工程によることなく形成されてもよい。たとえば、基板を加熱することによって、液膜に穴が形成されてもよい。
【0017】
穴は、垂直ガス吐出工程によって吐出される不活性ガスによって広げられてもよい。また、基板を加熱すると、液膜の穴の部分では基板温度が比較的高く、液膜の下方では基板温度が比較的低くなる。この温度差によって、高温側から低温側へと液膜が移動する。この現象を利用して穴が広げられてもよい。また、基板外に流下する液に引かれて基板上の液が外方に移動することによって、穴が広げられてもよい。
【0018】
の発明の一実施形態では、前記斜めガス吐出工程が、前記吐出目標位置に向かって斜めに吐出される不活性ガスの流量を漸次的に増加させる斜めガス流量増加工程を含
この方法によれば、不活性ガス流量が漸次的に増加することにより、液膜に形成された穴をスムーズに広げることができ、液膜を基板の周縁に向けて押し出すことができる。それにより、基板の上面の液膜を効率的に排除できる。
【0019】
の発明の一実施形態では、前記斜めガス吐出工程が、前記吐出目標位置を漸次的に前記基板の上面の周縁に向かって移動させる吐出目標位置移動工程を含
この方法により、外向き斜めの不活性ガス流の吐出目標位置が基板の周縁に向かって移動するので、不活性ガス流の運動量を液膜に効率的に伝えることができ、それによって、液膜を効率的に基板外に排除できる。
【0020】
の発明の一実施形態では、前記吐出目標位置移動工程が、基板の上面に対して外向き斜めの方向に不活性ガスを吐出する傾斜流吐出口を、前記基板の上面に対して上昇させる工程を含
この方法によれば、傾斜流吐出口を上昇させることによって、吐出目標位置を変更でき、それによって、基板上の液膜を効率的に基板外に排除できる。とくに、傾斜流吐出口から不活性ガスを吐出しながら当該傾斜流吐出口を上昇させれば、不活性ガスの傾斜流によって、基板の上面を外方に向けて走査できる。それにより、基板上の液膜を効率的に排除できる。
【0021】
傾斜流吐出口の上昇に伴って不活性ガス流量を増加させてもよい。それにより、傾斜流吐出口から吐出目標位置までの距離の増加を不活性ガスの流量増加によって補うことができ、液膜に対して基板の外方に向かう十分な力を作用させることができる。それにより、基板上の液膜を効率的に排除できる。
の発明一実施形態では、前記斜めガス吐出工程が、前記基板の中心と前記基板の上面の周縁との間の第1吐出目標位置に向けて、前記基板の上面に対して外向き斜め方向に第1傾斜流吐出口から不活性ガスを放射状に吐出する工程と、前記第1吐出目標位置と前記周縁との間の第2吐出目標位置に向けて、前記基板の上面に対して外向き斜め方向に第2傾斜流吐出口から不活性ガスを吐出する工程とを含
【0022】
この方法によれば、第1および第2傾斜流吐出口から、基板の中心からの距離が異なる第1および第2吐出目標位置に向けてそれぞれ不活性ガスが吐出されるので、基板上の液膜を一層効率的に排除できる。
たとえば、第1傾斜流吐出口からの不活性ガス流によって液膜の穴が広げられて第2吐出目標位置にその穴の周縁が達したタイミングで、第2傾斜流吐出口からの不活性ガス吐出を開始してもよい。それにより、液残りを抑制または防止しながら基板上の液膜を排除できる。第2傾斜流吐出口からの不活性ガスの吐出開始後は、第1傾斜流吐出口からの不活性ガスの吐出を停止してもよい。この場合、第1傾斜流吐出口から第2傾斜流吐出口への切り換えによって、吐出目標位置が基板の外周に向かって移動することになる。また、第2傾斜流吐出口からの不活性ガスの吐出開始後も、第1傾斜流吐出口からの不活性ガス吐出を継続してもよい。この場合、第1および第2傾斜流吐出口から同時に吐出される不活性ガスによって、基板上の液膜を強力に外方へと押し出すことができる。
【0023】
前記斜めガス吐出工程は、前記第2吐出目標位置と前記周縁との間の第3吐出目標位置に向けて、前記基板の上面に対して外向き斜め方向に第3傾斜流吐出口から不活性ガスを吐出する工程をさらに含んでもよい。
この発明の一実施形態では、前記基板処理方法が前記液膜の中央に形成される穴の周縁の位置を検出する周縁位置検出工程をさらに含み、前記液膜排除工程が、前記周縁位置検出工程による検出結果に応じて不活性ガスの吐出を制御する工程を含む。
【0024】
この方法では、液膜に形成された穴の周縁の位置が検出され、その検出結果に応じて不活性ガスの吐出が制御されることにより、基板上の液膜を一層効率的に排除できる。
たとえば、液膜の穴の周縁が外向き斜めの不活性ガス流の吐出目標位置に達したことを検出して、吐出目標位置に向けた外向き斜め方向への不活性ガスの吐出を開始することができる。また、穴の周縁の位置に応じて、外向き斜めの不活性ガス流の吐出目標位置を変更したり、不活性ガスの流量を増加させたりすることができる。また、液膜の穴が前記第1吐出目標位置に達したことを検出して第1傾斜流吐出口からの不活性ガス吐出を開始し、液膜の穴の周縁が前記第2吐出目標位置に達したことを検出して第2傾斜流吐出口からの不活性ガスの吐出を開始することができる。
【0025】
前記周縁位置検出工程は、基板の上面の画像を撮像する撮像ユニットと、この撮像ユニットによって撮像された画像を分析(画像処理)して、液膜の穴の周縁の位置を特定する位置特定ユニットとを含む構成によって実行されてもよい。
の発明の一実施形態では、前記液膜形成工程の開始に先立って前記上面被覆工程が開始され
【0026】
この方法により、不活性ガス流で基板の上面を覆った状態で液膜を形成できるので、跳ね返った液滴や雰囲気中のミスト等が基板の上面に付着することを抑制または防止しつつ、液膜を形成できる。それにより、高品質な基板処理が可能になる。また、液膜排除工程中にも上面被覆工程を継続することにより、より高品質な基板処理を実現できる。
この発明は、基板の主面に対向して配置される流体ノズルであって、前記基板の主面に垂直に配置される中心軸線に沿って、前記基板の主面に垂直な直線状に流体を吐出する線状流吐出口と、前記中心軸線に垂直な平面に沿って、前記中心軸線の周囲に放射状に流体を吐出することにより、前記基板の主面に平行で、かつ前記基板の主面を覆う平行気流を形成する平行流吐出口と、前記中心軸線に対して傾斜した円錐面に沿って、前記中心軸線の周囲に放射状に流体を吐出することにより、前記基板の主面に対して斜めに入射する円錐状プロファイルの傾斜気流を形成する傾斜流吐出口と、第1流体入口と、前記第1流体入口と前記線状流吐出口とを連通させる第1流体路と、第2流体入口と、前記第2流体入口と前記平行流吐出口とを連通させ、前記第流体路とは非連通の(独立した)第2流体路と、第3流体入口と、前記第3流体入口と前記傾斜流吐出口とを連通させ、前記第1流体路および前記第2流体路のいずれとも非連通の(いずれからも独立した)第3流体路とを含む、流体ノズルを提供する。
【0027】
この流体ノズルを用いることにより、前述のような基板処理方法を実行できる。具体的には、第1流体入口に不活性ガスを供給することによって、線状流吐出口から、基板の主面に対して垂直に直線状に不活性ガスを吐出させることができる。また、第2流体入口に不活性ガスを供給することによって、基板の主面に平行にかつ放射状に不活性ガスを吐出させることができ、その不活性ガスが形成する平行気流(基板主面に平行な気流)によって、基板の主面を覆うことができる。さらに、第3流体入口に不活性ガスを供給することによって、傾斜流吐出口から基板の主面に対して外向き斜めの方向に不活性ガスを吐出させることができる。
【0028】
そして、線状流吐出口、平行流吐出口および傾斜流吐出口に至る流体路がノズル内で独立しているので、それらの吐出口からの流体の吐出は、個別に制御可能である。それにより、たとえば、各吐出口からの流体の吐出開始、吐出終了、吐出流量などを他の吐出口から独立に制御できるので、ノズルを交換することなく、多様なプロセスを実現することができる。
【0029】
の発明の一実施形態では、前記傾斜流吐出口が、基板の主面に対して異なる位置で流体を斜めに入射させる第1傾斜流吐出口および第2傾斜流吐出口を含み、前記第3流体路が、前記第3流体入口と前記第1傾斜流吐出口とを連通させており、第4流体入口と、前記第4流体入口と前記第2傾斜流吐出口とを連通させ、前記第1流体路、前記第2流体路および前記第3流体路のいずれとも非連通の(いずれからも独立した)第4流体路とをさらに含む(請求項11)
【0030】
この構成では、第1傾斜流吐出口および第2傾斜流吐出口から基板の主面上の異なる位置を吐出目標位置として、流体を吐出させることができる。また、第1傾斜流吐出口および第2傾斜流吐出口に至る流体路がいずれも他の流体路から独立しているので、第1および第2傾斜流吐出口からの流体の吐出(吐出開始、吐出終了、吐出流量等)を個別に制御可能である。それにより、ノズルを交換することなく、より一層多様なプロセスを実現することができる。
【0031】
の発明の一実施形態では、前記流体ノズルが、前記中心軸線の近傍で基板の主面に向けて流体を吐出する中心吐出口と、第5流体入口と、前記第5流体入口と前記中心吐出口とを連通させ、前記第1流体路、前記第2流体路および前記第3流体路のいずれとも非連通の(いずれからも独立した)第5流体路とをさらに含む(請求項12)。請求項11の発明と組み合わせられる場合には、第5流体路は第4流体路とも非連通であることが好ましい。
【0032】
前記中心吐出口は、たとえば、前述の基板処理方法における処理液の供給のために用いることができる。したがって、ノズルを交換することなく、液膜形成工程、上面被覆工程および液膜排除工程を行える。
の発明は、基板を水平に保持する基板保持ユニットと、前述のような特徴を有する流体ノズルと、前記基板保持ユニットに保持される基板に対向するように、前記流体ノズルを保持するノズル保持ユニットと、前記第1流体入口に結合された第1不活性ガス供給管と、前記第2流体入口に結合された第2不活性ガス供給管と、前記第3流体入口に結合された第3不活性ガス供給管と、前記第1不活性ガス供給管の流路を開閉する第1不活性ガスバルブと、前記第2不活性ガス供給管の流路を開閉する第2不活性ガスバルブと、前記第3不活性ガス供給管の流路を開閉する第3不活性ガスバルブと、前記第1不活性ガスバルブ、前記第2不活性ガスバルブおよび前記第3不活性ガスバルブを制御する制御ユニットとを含む、基板処理装置を提供する。
【0033】
この基板処理装置を用いることにより、前述の基板処理方法を実行することができる。第1、第2および第3不活性ガスバルブを制御することによって、線状流吐出口からの不活性ガスの吐出、平行流吐出口からの不活性ガスの吐出、および傾斜流吐出口からの不活性ガスの吐出を個別に制御できる。
の発明の一実施形態では、前記流体ノズルが請求項11に記載の流体ノズルであり、前記基板処理装置が、前記第4流体入口に結合された第4不活性ガス供給管と、前記第4不活性ガス供給管の流路を開閉する第4不活性ガスバルブとをさらに含み、前記制御ユニットが、前記第4不活性ガスバルブをさらに制御す
【0034】
この基板処理装置を用いることにより、基板の主面(上面)上における異なる吐出目標位置に向けた不活性ガスの吐出を個別に制御できる。
の発明の一実施形態では、前記流体ノズルが請求項12に記載の流体ノズルであり、前記基板処理装置が、前記第5流体入口に結合された処理液供給管と、前記処理液供給管の流路を開閉する処理液バルブとをさらに含み、前記制御ユニットが、前記処理液バルブをさらに制御す
【0035】
この構成により、処理液の供給を制御できるので、前述の基板処理方法における液膜形成工程を実行できる。
の発明の一実施形態では、前記基板処理装置が、前記第1不活性ガス供給管を流れる不活性ガスの流量を調整する第1流量調整ユニットをさらに含み、前記制御ユニットが、前記第1流量調整ユニットをさらに制御す
【0036】
この構成により、線状流吐出口から吐出される不活性ガスの流量を制御できる。たとえば、線状流吐出口から基板の主面(上面)に向かって垂直に吐出される不活性ガスの流量を漸次的に増加させることができる。
の発明の一実施形態では、前記基板処理装置が、前記第3不活性ガス供給管を流れる不活性ガスの流量を調整する第2流量調整ユニットをさらに含み、前記制御ユニットが、前記第2流量調整ユニットをさらに制御す
【0037】
この構成により、傾斜流吐出口から吐出される不活性ガスの流量を制御できる。たとえば、傾斜流吐出口から基板の主面(上面)に向かって斜め外方に吐出される不活性ガスの流量を漸次的に増加させることができる。
の発明の一実施形態では、前記基板処理装置が、前記基板保持ユニットと前記流体ノズルとの前記中心軸線に沿う方向の距離を調整する距離調整ユニットをさらに含み、前記制御ユニットが前記距離調整ユニットをさらに制御す
【0038】
この構成により、基板保持ユニットに保持された基板の主面(上面)と流体ノズルとの距離を変化させることができる。たとえば、傾斜流吐出口から不活性ガスを吐出しながら流体ノズルを基板保持ユニットから遠ざけることにより、傾斜流吐出口から吐出される不活性ガスの吐出目標位置が基板の外方へと移動する。それにより、たとえば、基板の主面(上面)上の液膜を効率的に排除できる。
【0039】
の発明の一実施形態では、前記基板処理装置は、前記基板保持ユニットに保持された基板の上面の液膜の位置を検出する液膜位置検出ユニットをさらに含み、前記制御ユニットが、前記液膜位置検出ユニットの検出結果に応じて、少なくとも前記第3不活性ガスバルブを制御す
この構成により、少なくとも傾斜流吐出口からの不活性ガスの吐出の開始および終了を液膜の位置に応じて制御できる。たとえば、液膜の穴が基板の内方から外方に向かって広がり、その周縁が傾斜流吐出口からの吐出目標位置に達したタイミングで、第3不活性ガスバルブを開くことができる。それにより、液膜を穴の内側から外側に向けて押しやることができるので、基板上の液膜を効率的に基板外に排除できる。
【0040】
前記制御ユニットは、さらに、液膜位置検出ユニットの検出結果に応じて、前記第1流量調整ユニット、前記第2流量調整ユニット、前記距離調整ユニットなどを制御してもよい。また、前記基板処理装置が基板保持ユニットに保持された基板を回転させる基板回転ユニットを備えている場合には、前記制御ユニットは、さらに、液膜位置検出ユニットの検出結果に応じて、前記基板回転ユニットを制御してもよい。
【0041】
の発明の一実施形態では、前記制御ユニットが、前述のような特徴を有する基板処理方法を実行するようにプログラムされてい。この構成により、前述の基板処理方法を実行する基板処理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置の内部のレイアウトを説明するための図解的な平面図である。
図2図2は、前記基板処理装置に備えられた処理ユニットの構成例を説明するための図解的な断面図である。
図3図3は、前記処理ユニットに備えられたスピンチャックおよびヒータユニットの平面図である。
図4図4は、前記スピンチャックに備えられたチャックピンの構造例を説明するための斜視図である。
図5図5Aおよび図5Bはチャックピンの平面図であり、図5Aは閉状態を示し、図5Bは開状態を示す。
図6A図6Aは、前記処理ユニットに備えられた第1移動ノズルの構成例を説明するための模式的な縦断面図である。
図6B図6Bは、前記第1移動ノズルの構成例を示す平面図である。
図6C図6Cは、前記第1移動ノズルの構成例を一部切り欠いて示す側面図である。
図6D図6Dは、前記第1移動ノズルの構成例を示す底面図である。
図7図7は、基板処理装置の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。
図8図8は、基板処理装置による基板処理の一例を説明するための流れ図である。
図9図9は、有機溶剤処理(図8のS4)の詳細を説明するためのタイムチャートである。
図10A-10C】図10A図10Cは、有機溶剤処理(図8のS4)の各ステップの様子を説明するための図解的な断面図である。
図10D-10F】図10D図10Fは、有機溶剤処理(図8のS4)の各ステップの様子を説明するための図解的な断面図である。
図10G-10H】図10Gおよび図10Hは、有機溶剤処理(図8のS4)の各ステップの様子を説明するための図解的な断面図である。
図10I図10Iは乾燥処理(図8のS5)の様子を説明するための図解的な断面図である。
図11図11Aは、穴開けステップにおける液膜の状態を示す平面図である。図11Bは、加熱のみにより液膜を移動しようとした場合の液膜の状態を示す平面図である。
図12図12Aおよび図12Bは、基板の表面における気相層の形成を説明するための図解的な断面図であり、図12Cは、液膜の分裂を説明するための断面図である。
図13図13A図13Bおよび図13Cは、穴開けステップおよび穴広げステップを省いた場合(比較例)の課題を説明するための図解的な平面図である。
図14図14は、第1移動ノズルに備えられた傾斜流吐出口からの不活性ガスの吐出に関する変形例を説明するためのタイムチャートである。
図15図15は、傾斜流吐出口から不活性ガスを吐出している期間における第1移動ノズルの上下方向位置を変動させる変形例を示すタイムチャートである。
図16図16は、この発明の他の実施形態を説明するための概念図であり、第1移動ノズルの別の構成例を示す。
図17図17は、図16の実施形態の処理内容を説明するためのタイムチャートであり、図9と同様の図示がされている。
図18図18は、この発明のさらに他の実施形態に係る基板処理装置の制御に関連する構成を説明するためのブロック図である。
図19図19は、図18の実施形態における制御内容を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置の内部のレイアウトを説明するための図解的な平面図である。基板処理装置1は、シリコンウエハなどの基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。この実施形態では、基板Wは、円板状の基板である。基板処理装置1は、処理液で基板Wを処理する複数の処理ユニット2と、処理ユニット2で処理される複数枚の基板Wを収容するキャリヤCが載置されるロードポートLPと、ロードポートLPと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送ロボットIRおよびCRと、基板処理装置1を制御する制御ユニット3とを含む。搬送ロボットIRは、キャリヤCと搬送ロボットCRとの間で基板Wを搬送する。搬送ロボットCRは、搬送ロボットIRと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。複数の処理ユニット2は、たとえば、同様の構成を有している。
【0044】
図2は、処理ユニット2の構成例を説明するための図解的な断面図である。処理ユニット2は、一枚の基板Wを水平な姿勢で保持しながら、基板Wの中央部を通る鉛直な回転軸線A1まわりに基板Wを回転させるスピンチャック5と、基板Wを下面(下方側の主面)側から加熱するヒータユニット6と、ヒータユニット6を基板Wの下方で上下動させる昇降ユニット7と、スピンチャック5を取り囲む筒状のカップ8と、基板Wの下面に処理流体を供給する下面ノズル9と、基板Wの上面(上方側の主面)にリンス液としての脱イオン水(DIW)を供給するDIWノズル10と、基板Wの上方で移動可能な第1移動ノズル11と、基板Wの上方で移動可能な第2移動ノズル12とを含む。処理ユニット2は、さらに、カップ8を収容するチャンバ13(図1参照)を含む。図示は省略するが、チャンバ13には、基板Wを搬入/搬出するための搬入/搬出口が形成されており、この搬入/搬出口を開閉するシャッタユニットが備えられている。
【0045】
スピンチャック5は、基板Wを保持する基板保持ユニットであり、かつ基板Wを回転させる基板回転ユニットである。具体的には、スピンチャック5は、チャックピン20(チャック部材)と、スピンベース21と、スピンベース21の下面中央に結合された回転軸22と、回転軸22に回転力を与える電動モータ23とを含む。回転軸22は回転軸線A1に沿って鉛直方向に延びており、この実施形態では中空軸である。回転軸22の上端に、スピンベース21が結合されている。スピンベース21は、水平方向に沿う円盤形状を有している。スピンベース21の上面の周縁部に、複数のチャックピン20が周方向に間隔を空けて配置されている。複数のチャックピン20は、基板Wの周端に接触して基板Wを把持する閉状態と、基板Wの周端から退避した開状態との間で開閉可能である。また、複数のチャックピン20は、開状態において、基板Wの周縁部の下面に接触して、基板Wを下方から支持することができる。
【0046】
チャックピン20を開閉駆動するために、チャックピン駆動ユニット25が備えられている。チャックピン駆動ユニット25は、たとえば、スピンベース21に内蔵されたリンク機構26と、スピンベース21外に配置された駆動源27とを含む。駆動源27は、たとえば、ボールねじ機構と、それに駆動力を与える電動モータとを含む。チャックピン駆動ユニット25の具体的な構成例は、特許文献2などに記載がある。
【0047】
ヒータユニット6は、スピンベース21の上方に配置されている。ヒータユニット6の下面には、回転軸線A1に沿って鉛直方向に延びる昇降軸30が結合されている。昇降軸30は、スピンベース21の中央部に形成された貫通孔24と、中空の回転軸22とを挿通している。昇降軸30の下端は、回転軸22の下端よりもさらに下方にまで延びている。この昇降軸30の下端に、昇降ユニット7が結合されている。昇降ユニット7を作動させることにより、ヒータユニット6は、スピンベース21の上面に近い下位置から、基板Wの下面を支持してチャックピン20から持ち上げる上位置までの間で上下動する。
【0048】
昇降ユニット7は、たとえば、ボールねじ機構と、それに駆動力を与える電動モータとを含む。これにより、昇降ユニット7は、下位置および上位置の間の任意の中間位置にヒータユニット6を配置できる。たとえば、ヒータユニット6の上面である加熱面6aを基板Wの下面との間に所定の間隔を開けた離隔位置に配置した状態で、加熱面6aからの輻射熱によって基板Wを加熱することができる。また、ヒータユニット6で基板Wを持ち上げれば、加熱面6aを基板Wの下面に接触させた接触状態で、加熱面6aからの熱伝導により、基板Wをより大きな熱量で加熱することができる。
【0049】
第1移動ノズル11は、第1ノズル移動ユニット15によって、水平方向および鉛直方向に移動される。第1移動ノズル11は、水平方向への移動によって、基板Wの上面の回転中心に対向する処理位置と、基板Wの上面に対向しないホーム位置(退避位置)との間で移動させることができる。基板Wの上面の回転中心とは、基板Wの上面における回転軸線A1との交差位置である。基板Wの上面に対向しないホーム位置とは、平面視において、スピンベース21の外方の位置であり、より具体的には、カップ8の外方の位置であってもよい。第1移動ノズル11は、鉛直方向への移動によって、基板Wの上面に接近させたり、基板Wの上面から上方に退避させたりすることができる。第1ノズル移動ユニット15は、たとえば、鉛直方向に沿う回動軸15aと、回動軸15aに結合されて水平に延びるアーム15bと、アーム15bを駆動するアーム駆動機構15cとを含む。アーム駆動機構15cは、回動軸15aを鉛直な回動軸線まわりに回動させることによってアーム15bを揺動させ、回動軸15aを鉛直方向に沿って昇降することにより、アーム15bを上下動させる。第1移動ノズル11はアーム15bに固定されている。アーム15bの揺動および昇降に応じて、第1移動ノズル11が水平方向および垂直方向に移動する。
【0050】
このように、第1ノズル移動ユニット15は、スピンチャック5に保持された基板Wの上面に対向するように第1移動ノズル11を保持するノズル保持ユニットとしての機能を有している。さらに、第1ノズル移動ユニット15は、スピンチャック5に保持された基板Wと第1移動ノズル11との間の上下方向の距離を調節する距離調節ユニットとしての機能を有している。
【0051】
第2移動ノズル12は、第2ノズル移動ユニット16によって、水平方向および垂直方向に移動される。第2移動ノズル12は、水平方向への移動によって、基板Wの上面の回転中心に対向する位置と、基板Wの上面に対向しないホーム位置(退避位置)との間で移動させることができる。ホーム位置は、平面視において、スピンベース21の外方の位置であり、より具体的には、カップ8の外方の位置であってもよい。第2移動ノズル12は、鉛直方向への移動によって、基板Wの上面に接近させたり、基板Wの上面から上方に退避させたりすることができる。第2ノズル移動ユニット16は、たとえば、鉛直方向に沿う回動軸と、回動軸に結合されて水平に延びるアームと、アームを駆動するアーム駆動機構とを含む。アーム駆動機構は、回動軸を鉛直な回動軸線まわりに回動させることによってアームを揺動させ、回動軸を鉛直方向に沿って昇降することにより、アームを上下動させる。第2移動ノズル12はアームに固定される。アームの揺動および昇降に応じて、第2移動ノズル12が水平方向および垂直方向に移動する。
【0052】
第1移動ノズル11は、この実施形態では、有機溶剤を吐出する有機溶剤ノズルとしての機能と、窒素ガス等の不活性ガスを吐出するガスノズルとしての機能とを有している。第1移動ノズル11には、有機溶剤供給管35(処理液供給管)および第1〜第3不活性ガス供給管36A,36B,36Cが結合されている。有機溶剤供給管35には、その流路を開閉する有機溶剤バルブ37(処理液バルブ)が介装されている。不活性ガス供給管36A,36B,36Cには、それぞれの流路を開閉する第1〜第3不活性ガスバルブ38A,38B,38Cがそれぞれ介装されている。また、不活性ガス供給管36Aには、その流路を流れる不活性ガスの流量を正確に調節するためのマスフローコントローラ39A(第1流量調整ユニット)が介装されている。また、不活性ガス供給管36Bには、その流路を流れる不活性ガスの流量を調節するための流量可変バルブ39Bが介装されており、不活性ガス供給管36Cには、その流路を流れる不活性ガスの流量を調節するための流量可変バルブ39C(第2流量調整ユニット)が介装されている。さらに、不活性ガス供給管36A,36B,36Cには、それぞれ、異物を除去するためのフィルタ40A,40B,40Cが介装されている。
【0053】
有機溶剤供給管35には、有機溶剤供給源から、イソプロピルアルコール(IPA)等の有機溶剤が供給されている。不活性ガス供給管36A,36B,36Cには、不活性ガス供給源から、窒素ガス(N)等の不活性ガスがそれぞれ供給されている。
第2移動ノズル12は、この実施形態では、酸、アルカリ等の薬液を供給する薬液ノズルとしての機能を有している。より具体的には、第2移動ノズル12は、液体と気体とを混合して吐出することができる二流体ノズルの形態を有していてもよい。二流体ノズルは、気体の供給を停止して液体を吐出すればストレートノズルとして使用できる。第2移動ノズル12には、薬液供給管41および不活性ガス供給管42が結合されている。薬液供給管41には、その流路を開閉する薬液バルブ43が介装されている。不活性ガス供給管42には、その流路を開閉する不活性ガスバルブ44が介装されている。薬液供給管41には、薬液供給源から、酸、アルカリ等の薬液が供給されている。不活性ガス供給管42には、不活性ガス供給源から、窒素ガス(N)等の不活性ガスが供給されている。
【0054】
薬液の具体例は、エッチング液および洗浄液である。さらに具体的には、薬液は、フッ酸、SC1(アンモニア過酸化水素水混合液)、SC2(塩酸過酸化水素水混合液)、バッファードフッ酸(フッ酸とフッ化アンモニウムとの混合液)などであってもよい。
DIWノズル10は、この実施形態では、基板Wの上面の回転中心に向けてDIWを吐出するように配置された固定ノズルである。DIWノズル10には、DIW供給源から、DIW供給管46を介して、DIWが供給される。DIW供給管46には、その流路を開閉するためのDIWバルブ47が介装されている。DIWノズル10は固定ノズルである必要はなく、少なくとも水平方向に移動する移動ノズルであってもよい。
【0055】
下面ノズル9は、中空の昇降軸30を挿通し、さらに、ヒータユニット6を貫通している。下面ノズル9は、基板Wの下面中央に臨む吐出口9aを上端に有している。下面ノズル9には、流体供給源から流体供給管48を介して処理流体が供給されている。供給される処理流体は、液体であってもよいし、気体であってもよい。流体供給管48には、その流路を開閉するための流体バルブ49が介装されている。
【0056】
図3は、スピンチャック5およびヒータユニット6の平面図である。スピンチャック5のスピンベース21は、平面視において、回転軸線A1を中心とする円形であり、その直径は基板Wの直径よりも大きい。スピンベース21の周縁部には、間隔を空けて複数個(この実施形態では6個)のチャックピン20が配置されている。
ヒータユニット6は、円板状のホットプレートの形態を有しており、プレート本体60と、支持ピン61と、ヒータ62とを含む。プレート本体60は、平面視において、基板Wの外形とほぼ同形同大で、回転軸線A1を中心とする円形に構成されている。より正確には、プレート本体60は、基板Wの直径よりも僅かに小さい直径の円形の平面形状を有している。たとえば、基板Wの直径が300mmであり、プレート本体60の直径(とくに加熱面6aの直径)がそれよりも6mmだけ小さい294mmであってもよい。この場合、プレート本体60の半径は基板Wの半径よりも3mm小さい。
【0057】
プレート本体60の上面は、水平面に沿う平面である。プレート本体60の上面に複数の支持ピン61(図2を併せて参照)が突出している。支持ピン61は、たとえば、それぞれ半球状であり、プレート本体60の上面から微小高さ(たとえば0.1mm)だけ突出している。したがって、基板Wが支持ピン61に接触して支持されるとき、基板Wの下面はたとえば0.1mmの微小間隔を開けてプレート本体60の上面に対向する。これにより、基板Wを効率的かつ均一に加熱することができる。
【0058】
プレート本体60の上面は、支持ピン61を有していなくてもよい。支持ピン61を有していない場合には、基板Wをプレート本体60の上面に接触させることができる。ヒータユニット6の加熱面6aは、支持ピン61を有している場合には、プレート本体60の上面および支持ピン61の表面を含む。また、支持ピン61が備えられていない場合には、プレート本体60の上面が加熱面6aに相当する。以下では、支持ピン61が基板Wの下面に接している状態を、加熱面6aに基板Wの下面が接しているなどという場合がある。
【0059】
ヒータ62は、プレート本体60に内蔵されている抵抗体であってもよい。図3には、複数の領域に分割されたヒータ62を示している。ヒータ62に通電することによって、加熱面6aが室温(たとえば20〜30℃。たとえば25℃)よりも高温に加熱される。具体的には、ヒータ62への通電によって、第1移動ノズル11から供給される有機溶剤の沸点よりも高温に加熱面62aを加熱することができる。図2に示すように、ヒータ62への給電線63は、昇降軸30内に通されている。そして、給電線63には、ヒータ62に電力を供給するヒータ通電ユニット64が接続されている。ヒータ通電ユニット64は、基板処理装置1の動作中、常時、通電されてもよい。
【0060】
支持ピン61は、プレート本体60の上面にほぼ均等に配置されている。プレート本体60の外周端よりも外方に、チャックピン20が配置されている。チャックピン20の全体がプレート本体60の外周端よりも外方に配置されている必要はなく、ヒータユニット6の上下動範囲に対向する部分がプレート本体60の外周端よりも外方に位置していればよい。
【0061】
図4は、チャックピン20の構造例を説明するための斜視図である。また、図5Aおよび図5Bはチャックピン20の平面図であり、図5Aは閉状態を示し、図5Bは開状態を示す。
チャックピン20は、鉛直方向に延びたシャフト部53と、シャフト部53の上端に設けられたベース部50と、シャフト部53の下端に設けられた回動支持部54とを含む。ベース部50は、把持部51と、支持部52とを含む。回動支持部54は、鉛直方向に沿うチャック回動軸線55まわりに回動可能にスピンベース21に結合されている。シャフト部53は、チャック回動軸線55から離れた位置にオフセットされて、回動支持部54に結合されている。より具体的には、シャフト部53はチャック回動軸線55よりも、回転軸線A1から離れた位置に配置されている。したがって、チャックピン20がチャック回動軸線55まわりに回動されると、ベース部50は、その全体が基板Wの周端面に沿って移動しながら、チャック回動軸線55まわりに回動する。回動支持部54は、スピンベース21の内部に設けられたリンク機構26(図2参照)に結合されている。このリンク機構26からの駆動力によって、回動支持部54は、チャック回動軸線55まわりに所定角度範囲で往復回動する。
【0062】
ベース部50は、平面視において、くさび形に形成されている。ベース部50の上面には、チャックピン20の開状態で基板Wの周縁部下面に当接して基板Wを下方から支持する支持面52aが設けられている。換言すれば、ベース部50は支持面52aを上面とする支持部52を有している。把持部51は、ベース部50の上面において、支持部52とは別の位置で上方に突出している。把持部51は、基板Wの周端面に対向するようにV字状に開いた保持溝51aを有している。
【0063】
回動支持部54が図5Bに示す開状態からチャック回動軸線55まわりに時計まわり方向に回動されるとき、把持部51は基板Wの周端面に接近し、支持部52は基板Wの回転中心から離反する。また、回動支持部54が図5Aに示す閉状態からチャック回動軸線55まわりに反時計まわり方向に回動されるとき、把持部51は基板Wの周端面から離反し、支持部52は基板Wの回転中心に接近する。
【0064】
図5Aに示すチャックピン20の閉状態では、保持溝51aに基板Wの周端面が入り込む。このとき、基板Wの下面は、支持面52aから微小距離だけ上方に離間した高さに位置する。図5Bに示すチャックピン20の開状態では、保持溝51aから基板Wの周端面が脱していて、平面視において、把持部51は基板Wの周端面よりも外方に位置する。チャックピン20の開状態および閉状態のいずれにおいても、支持面52aは、少なくとも一部が基板Wの周縁部下面の下方に位置している。
【0065】
チャックピン20が開状態のとき、基板Wを支持部52で支持できる。その開状態からチャックピン20を閉状態に切り換えると、断面V字状の保持溝51aに案内されてせり上がりながら基板Wの周端面が保持溝51a内へと案内され、保持溝51aの上下の傾斜面によって基板Wが挟持された状態に至る。その状態からチャックピン20を開状態に切り換えると、基板Wの周端面が保持溝51aの下側傾斜面に案内されながら滑り降り、基板Wの周縁部下面が支持面52aに当接する。
【0066】
図5Aおよび図5Bに示すように、ベース部50は、平面視において、ヒータユニット6のプレート本体60に対向する縁部が、プレート本体60の周縁形状に倣っている。すなわち、支持部52は、平面視において、プレート本体60よりも回転中心に対して外方に位置する側面52bを有している。それにより、基板Wよりも若干小さい円形の加熱面6aを有するプレート本体60は、ヒータユニット6が上下動するときに、チャックピン20と干渉しない。この非干渉位置関係は、チャックピン20が閉状態および開状態のいずれにおいても保たれる。すなわち、チャックピン20が閉状態のときも開状態のときも、支持部52の側面52bは、平面視において、ヒータユニット6の加熱面6aから外方に離隔している。それによって、ヒータユニット6は、チャックピン20が閉状態か開状態かを問わず、加熱面6aを側面52bの内側を通過させながら、昇降することができる。
【0067】
基板Wの直径は、たとえば300mmであり、プレート本体60の上面の直径はたとえば294mmである。したがって、加熱面6aは、基板Wの下面の中央領域および周縁領域を含むほぼ全域に対向している。チャックピン20の閉状態および開状態のいずれにおいても、加熱面6aの外周縁の外側に所定の微小間隔(たとえば2mm)以上の間隔を確保した状態で、支持部52が配置される。
【0068】
把持部51は、チャックピン20の閉状態において、その内側縁が、プレート本体60の外周縁の外側に所定の微小間隔(たとえば2mm)以上の間隔を確保した状態で位置するように構成されている。したがって、ヒータユニット6は、チャックピン20の閉状態および開状態のいずれにおいても、加熱面6aを把持部51の内側で上下させて、基板Wの下面に接触するまで上昇させることができる。
【0069】
チャック回動軸線55は、平面視において、回転軸線A1(図2および図3参照)を中心とし、加熱面6aの半径よりも小さな半径の円周上に位置している。
図6Aは、第1移動ノズル11の構成例を説明するための縦断面図(図6BのVIA-VIA断面図)である。また、図6Bはその平面図であり、図6Cはその側面図であり、図6Dはその底面図である。図6Cには、図6Bの矢印VICの方向に見た構成を一部切り欠いて表してある。
【0070】
第1移動ノズル11は、複数の吐出口を有する流体ノズルである。第1移動ノズル11は、基板Wの主面に垂直に配置される中心軸線70に沿って、基板Wの主面に垂直な直線状に流体(この実施形態では不活性ガス)を吐出する線状流吐出口81を有している。さらに、第1移動ノズル11は、中心軸線70に垂直な平面に沿って、中心軸線70の周囲に放射状に流体(この実施形態では不活性ガス)を吐出する平行流吐出口82を有している。また、第1移動ノズル11は、中心軸線70に対して傾斜した円錐面に沿って、中心軸線70の周囲に放射状に流体(この実施形態では不活性ガス)を吐出する傾斜流吐出口83を有している。線状流吐出口81から吐出された不活性ガスは、基板Wの主面に垂直に入射する線状気流85を形成する。平行流吐出口82から吐出された不活性ガスは、基板Wの上面に平行で、かつ基板Wの上面を覆う平行気流86を形成する。傾斜流吐出口83から吐出された不活性ガスは、基板Wの上面に対して斜めに入射する円錐状プロファイルの傾斜気流87を形成する。
【0071】
第1移動ノズル11は、図6Aに最もよく表れているように、内構成部材91と、その外側に配置された中間構成部材92と、その外側に配置された外構成部材93とを含む。
内構成部材91は、ほぼ円柱状に構成されており、下端部に外向きのフランジ部95を有している。フランジ部95は、中心軸線70に対して外向き斜め下方に傾斜した円錐面状の上面95aを有している。また、フランジ部95は、中心軸線70と垂直な(すなわち基板Wの上面と平行な)底面95bを有している。フランジ部9の内側において、内構成部材91の下端面には、基板Wの上面から離れる方向に窪んだ凹所96が形成されている。凹所96は、中心軸線70のまわりに回転対称なほぼ円錐台形状に形成されている。
【0072】
内構成部材91の中央部には、中心軸線70と平行に、3本の管36A,35,73が、上面91aから凹所96まで通されている。具体的には、不活性ガス供給管36Aと、有機溶剤供給管35と、薬液供給管73(図2では図示省略)とが通されている。これらの供給管36A,35,73の下端部は、凹所96内に配置されている。不活性ガス供給管36Aの下端部は、線状流吐出口81を構成している。有機溶剤供給管35の下端部は、中心軸線70の近傍で基板Wの上面に向けて流体(この実施形態では処理液の一種としての有機溶剤)を吐出する中心吐出口71を構成している。薬液供給管73の下端部は、中心軸線70の近傍で基板Wの上面に向けて流体(この実施形態では処理液の一種としての薬液)を吐出する薬液吐出口72を構成している。
【0073】
不活性ガス供給管36Aは、内構成部材91の上端付近を流体入口(第1流体入口)とし、その流体入口と線状流吐出口81との間を連通させる流体路(第1流体路)を提供している。同様に、有機溶剤供給管35は、内構成部材91の上端付近を流体入口(第5流体入口)とし、その流体入口と中心吐出口71との間を連通させる流体路(第5流体路)を提供している。そして、薬液供給管73は、内構成部材91の上端付近を流体入口とし、その流体入口と薬液吐出口72との間を連通させる流体路を提供している。
【0074】
内構成部材91の外周面には、ショルダ部91bが中心軸線70まわりに回転対称な環状に形成されている。このショルダ部91bに、中間構成部材92が係合している。より具体的には、中間構成部材92は、円筒状に形成されており、その上端に内向きのフランジ部98が形成されている。このフランジ部98がショルダ部91bに係合している。また、中間構成部材92の下端部には、外向きのフランジ部99が形成されている。フランジ部99は、中心軸線70に垂直な(すなわち基板Wの上面に平行な)上面99aを有している。また、フランジ部99は、中心軸線70に対して外向き斜め下方に傾斜した底面99bを有している。この底面99bは、内構成部材91の下端部に形成されたフランジ部95の上面95aに対向している。それにより、それらの底面99bおよび上面95aの間に、中心軸線70に対して外向き斜め下方に傾斜する円錐面形状の傾斜流吐出口83が区画されている。
【0075】
内構成部材91の外周面と、中間構成部材92の内周面との間には、流体路100(第3流体路)が筒状に区画されている。流体路100は、不活性ガス供給管36Cに結合された流体入口101(第3流体入口。図6Bおよび図6C参照)および傾斜流吐出口83に連通し、それによって、それらの間を連通させている。内構成部材91の外周面および中間構成部材92の内周面には凹凸が形成されており、それによって、流体路100には、第1バッファ部102、第1狭窄路103、第2バッファ部104および第2狭窄路105が形成されている。流体入口101からの不活性ガスは第1バッファ部102に導入されて滞留することにより周方向に拡散し、さらに第1狭窄路103を通って第2バッファ部104に導入されて滞留することにより、再度、周方向に拡散される。そして、第2バッファ部104内の不活性ガスは、第2狭窄路105を通って傾斜流吐出口83に至る。第1および第2バッファ部102,104で不活性ガスが均圧化されることにより、傾斜流吐出口83は、全周にわたって均等な流量および流速で不活性ガスを放射状に吹き出すことができる。
【0076】
中間構成部材92の上面側から、外構成部材93が被せられている。外構成部材93は、中心軸線70に直交する天面部108を有している。この天面部108の下面が中間構成部材92の上端面に支持されている。天面部108には、内構成部材91を上方に貫通させる貫通孔109が形成されている。外構成部材93は、天面部108の上方から、当該天面部108に形成された挿通孔110および中間構成部材92のフランジ部98に形成された挿通孔111を挿通し、内構成部材91に螺合するボルト112によって、内構成部材91に結合されている。これにより、同時に、中間構成部材92が内構成部材91と外構成部材93とに挟持され、それによって、内構成部材91、中間構成部材92および外構成部材93が一体的に結合されている。
【0077】
外構成部材93には、中心軸線70に対して回転対称なほぼ円筒状の空間が内方に形成されている。この空間内に、中間構成部材92が収容されている。外構成部材93の底面93aは、中心軸線70に垂直な(すなわち基板Wの上面に平行な)平面に沿っており、中間構成部材92のフランジ部99の上面99aに対向している。これにより、それらの底面93bおよび上面99aの間に、中心軸線70に対して垂直な(すなわち基板Wの上面に平行な)平行流吐出口82が区画されている。
【0078】
中間構成部材92の外周面と、外構成部材93の内周面との間には、流体路120(第2流体路)が筒状に区画されている。流体路120は、不活性ガス供給管36Bに結合された流体入口121(第2流体入口。図6Bおよび図6D参照)および平行流吐出口82に連通し、それによって、それらの間を連通させている。中間構成部材92の外周面および外構成部材93の内周面(この実施形態では主として外構成部材93の内周面)には凹凸が形成されており、それによって、流体路120には、第1バッファ部122、第1狭窄路123、第2バッファ部124および第2狭窄路125が形成されている。流体入口121からの不活性ガスは第1バッファ部122に導入されて滞留することにより周方向に拡散し、さらに第1狭窄路123を通って第2バッファ部124に導入されて滞留することにより、再度、周方向に拡散される。そして、第2バッファ部124内の不活性ガスは、第2狭窄路125を通って平行流吐出口82に至る。第1および第2バッファ部122,124で不活性ガスが均圧化されることにより、平行流吐出口82は、全周にわたって均等な流量および流速で不活性ガスを放射状に吹き出すことができる。
【0079】
外構成部材93は、ブラケット127を介して第1ノズル移動ユニット15のアーム15bに結合されている。
外構成部材93の天面部108には、一対の流体入口101が配置されている。一対の流体入口101は、平面視において、中心軸線70を挟んで対向する位置に配置されている。一対の流体入口101には、一対の不活性ガス供給管36Cが、管継手106を介して結合されている。これにより、筒状の流体路100には、中心軸線70を中心として180度の角度間隔を空けた2箇所から不活性ガスが導入される。
【0080】
内構成部材91の上部は外構成部材93の上方に突出しており、その上面91aから、不活性ガス供給管36A、有機溶剤供給管35および薬液供給管73が中心軸線70に沿って挿入されている。内構成部材91の上面には、供給管36A,35,40を保持する管保持部材107が配置されている。
外構成部材93の側面には、流体入口121が配置されている。流体入口121には、管継手115を介して、不活性ガス供給管36Bが結合されている。これにより、不活性ガス供給管36Bからの不活性ガスを、流体入口121を介して、流体路120に導入できる。
【0081】
図7は、基板処理装置1の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。制御ユニット3は、マイクロコンピュータを備えており、所定の制御プログラムに従って、基板処理装置1に備えられた制御対象を制御する。とくに、制御ユニット3は、搬送ロボットIR,CR、スピンチャック5を回転駆動する電動モータ23、第1ノズル移動ユニット15、第2ノズル移動ユニット16、ヒータ通電ユニット64、ヒータユニット6を昇降する昇降ユニット7、チャックピン駆動ユニット25、バルブ類37,43,44,47,49などの動作を制御する。また、制御ユニット3は、第1〜第3不活性ガスバルブ38A,38B,38Cを開閉制御する。さらに、制御ユニット3は、マスフローコントローラ39Aの開度を制御して不活性ガス供給管36Aを通る不活性ガスの流量を制御する。また、制御ユニット3は、流量可変バルブ39B,39Cの開度を制御して、不活性ガス供給管36B,36Cを通る不活性ガスの流量を制御する。
【0082】
図8は、基板処理装置1による基板処理の一例を説明するための流れ図であり、主として、制御ユニット3が動作プログラムを実行することによって実現される処理が示されている。未処理の基板Wは、搬送ロボットIR,CRによってキャリヤCから処理ユニット2に搬入され、スピンチャック5に渡される(S1)。このとき、制御ユニット3は、ヒータユニット6を下位置に配置するように昇降ユニット7を制御する。また、制御ユニット3は、チャックピン20が開状態になるようにチャックピン駆動ユニット25を制御する。その状態で、搬送ロボットCRは、基板Wをスピンチャック5に渡す。この後、基板Wは、搬送ロボットCRによって搬出されるまで、スピンチャック5に保持される(基板保持工程)。基板Wは、開状態のチャックピン20の支持部52(支持面52a)に載置される。その後、制御ユニット3は、チャックピン駆動ユニット25を制御して、チャックピン20を閉状態とする。それにより、複数のチャックピン20の把持部51によって基板Wが把持される。
【0083】
搬送ロボットCRが処理ユニット2外に退避した後、薬液処理(S2)が開始される。制御ユニット3は、電動モータ23を駆動してスピンベース21を所定の薬液回転速度で回転させる。その一方で、制御ユニット3は、第2ノズル移動ユニット16を制御して、第2移動ノズル12を基板Wの上方の薬液処理位置に配置する。薬液処理位置は、第2移動ノズル12から吐出される薬液が基板Wの上面の回転中心に着液する位置であってもよい。そして、制御ユニット3は、薬液バルブ43を開く。それにより、回転状態の基板Wの上面に向けて、第2移動ノズル12から薬液が供給される。供給された薬液は遠心力によって基板Wの全面に行き渡る。
【0084】
一定時間の薬液処理の後、基板W上の薬液をDIWに置換することにより、基板W上から薬液を排除するためのDIWリンス処理(S3)が実行される。具体的には、制御ユニット3は、薬液バルブ43を閉じ、代わって、DIWバルブ47を開く。それにより、回転状態の基板Wの上面に向けてDIWノズル10からDIWが供給される。供給されたDIWは遠心力によって基板Wの全面に行き渡る。このDIWによって基板W上の薬液が洗い流される。この間に、制御ユニット3は、第2ノズル移動ユニット16を制御して、第2移動ノズル12を基板Wの上方からカップ8の側方へと退避させる。
【0085】
一定時間のDIWリンス処理の後、基板W上のDIWを、より表面張力の低い処理液(低表面張力液)である有機溶剤に置換する有機溶剤処理(S4)が実行される。
制御ユニット3は、第1ノズル移動ユニット15を制御して、第1移動ノズル11を基板Wの上方の有機溶剤リンス位置に移動させる。有機溶剤リンス位置は、第1移動ノズル11に備えられた中心吐出口71(有機溶剤ノズル:図6C参照)から吐出される有機溶剤(たとえばIPA)が基板Wの上面の回転中心に着液する位置であってもよい。
【0086】
そして、制御ユニット3は、不活性ガスバルブ38Bを開く。それにより、第1移動ノズル11の平行流吐出口82から、基板Wの中心から周縁に向かって、基板Wの上面と平行にかつ放射状に不活性ガスが吐出される。それにより、基板Wの上面と平行に流れる不活性ガス流である平行気流86が形成され、その平行気流86によって基板Wの上面の全域(正確には平面視で第1移動ノズル11の外側領域)が覆われる(上面被覆工程)。
【0087】
その状態で、制御ユニット3は、DIWバルブ47を閉じて、有機溶剤バルブ37を開く。それにより、回転状態の基板Wの上面に向けて、第1移動ノズル11(中心吐出口71)から有機溶剤(液体)が供給される。供給された有機溶剤は遠心力によって基板Wの全面に行き渡り、基板W上のDIWを置換する。それによって、基板Wの上面に有機溶剤の液膜が形成される(液膜形成工程)。
【0088】
有機溶剤処理において、制御ユニット3は、昇降ユニット7を制御して、ヒータユニット6を基板Wに向けて上昇させ、それによって、基板Wを加熱する。また、制御ユニット3は、スピンチャック5の回転を減速して基板Wの回転を停止し、かつ有機溶剤バルブ37を閉じて有機溶剤の供給を停止する。それにより、静止状態の基板W上に有機溶剤液膜が支持されたパドル状態とされる。基板Wの加熱によって、基板Wの上面に接している有機溶剤の一部が蒸発し、それによって、有機溶剤液膜と基板Wの上面との間に気相層が形成される。その気相層に支持された状態の有機溶剤液膜が排除される。
【0089】
有機溶剤液膜の排除に際して、制御ユニット3は、第1ノズル移動ユニット15を制御して、線状流吐出口81が基板Wの回転軸線A1上に位置するように、第1移動ノズル11を移動させる。そして、制御ユニット3は、不活性ガスバルブ38Aを開いて、基板W上の有機溶剤液膜に向けて不活性ガスを線状流吐出口81から直線状に吐出させる(垂直ガス吐出工程)。これにより、不活性ガスの吐出を受ける位置、すなわち、基板Wの中央において、有機溶剤液膜が不活性ガスによって排除され、有機溶剤液膜の中央に、基板Wの表面を露出させる穴が空けられる(液膜開口工程)。この穴を広げることによって、基板W上の有機溶剤が基板W外へと排出される(液膜排除工程)。基板W上面の外周部の液膜を基板W外に押しやるために、制御ユニット3は、適切なタイミングで、不活性ガスバルブ38Cを開く。それにより、傾斜流吐出口83から、外向きの斜め方向に不活性ガスが放射状(円錐状)に吐出され、液膜が外方へと押しやられる。
【0090】
こうして、有機溶剤処理を終えた後、制御ユニット3は、電動モータ23を制御して、基板Wを乾燥回転速度で高速回転させる。それにより、基板W上の液成分を遠心力によって振り切るための乾燥処理(S5:スピンドライ)が行われる。
その後、制御ユニット3は、第1ノズル移動ユニット15を制御して第1移動ノズル11を退避させ、さらに、電動モータ23を制御してスピンチャック5の回転を停止させる。また、制御ユニット3は、昇降ユニット7を制御して、ヒータユニット6を下位置に制御する。さらに、制御ユニット3は、チャックピン駆動ユニット25を制御して、チャックピン20を開位置に制御する。これにより、基板Wは、チャックピン20の把持部51に把持された状態から、支持部52に載置された状態となる。その後、搬送ロボットCRが、処理ユニット2に進入して、スピンチャック5から処理済みの基板Wをすくい取って、処理ユニット2外へと搬出する(S6)。その基板Wは、搬送ロボットCRから搬送ロボットIRへと渡され、搬送ロボットIRによって、キャリヤCに収納される。
【0091】
図9は、有機溶剤処理(図8のS4)の詳細を説明するためのタイムチャートである。また、図10A図10Hは、有機溶剤処理の各ステップの様子を説明するための図解的な断面図であり、図10Iは乾燥処理(図8のS5)の様子を説明するための図解的な断面図である。
有機溶剤処理は、有機溶剤リンスステップT1と、有機溶剤パドルステップT2と、持ち上げパドルステップT3と、保温ステップT4と、穴開けステップT5と、穴広げステップT6と、外周液落としステップT7とを含み、これらが順に実行される。
【0092】
有機溶剤リンスステップT1は、基板Wを回転しながら、基板Wの上面に有機溶剤を供給するステップ(処理液供給工程、有機溶剤供給工程、液膜形成工程)である。図10Aに示すように、基板Wの上面に中心吐出口71から有機溶剤(たとえばIPA)が供給される。また、制御ユニット3は、不活性ガスバルブ38Bを開く。それにより、第1移動ノズル11の平行流吐出口82から不活性ガスが放射状に吐出され、基板Wの上面が平行気流86で覆われる(上面被覆工程)。平行流吐出口82からの不活性ガスの吐出は、中心吐出口71からの有機溶剤吐出よりも先に開始されることが好ましい。平行流吐出口82からの不活性ガスの吐出流量は、たとえば100リットル/分程度とされてもよい。
【0093】
供給された有機溶剤は、遠心力を受けて基板Wの上面の中心から外方へと向かい、基板Wの上面を覆う液膜150を形成する。液膜150が基板Wの上面全域を覆うことにより、DIWリンス処理(図8のS3)で基板Wの上面に供給されたDIW(別の処理液)が全て有機溶剤に置換される。基板Wの上面が不活性ガスの平行気流86で覆われているので、処理室内壁から跳ね返った液滴や雰囲気中のミスト等が基板Wの上面に付着することを抑制または防止できる。
【0094】
有機溶剤リンスステップT1の期間中、基板Wは、スピンチャック5によって、有機溶剤リンス処理速度(液供給速度。たとえば300rpm程度)で回転させられる(液供給速度回転工程)。第1移動ノズル11は、基板Wの回転中心の上方に配置される。有機溶剤バルブ37は開状態とされ、したがって、中心吐出口71から吐出される有機溶剤(たとえばIPA)が基板Wの上面の回転中心に向けて上方から供給される。チャックピン20は閉状態とされ、基板Wは把持部51によって把持され、スピンチャック5とともに回転する。ヒータユニット6は、下位置よりも上方に位置制御され、基板Wの下面から所定距離(たとえば2mm)だけ下方に離隔した離隔位置にその加熱面6aが配置される。これにより、基板Wは、加熱面6aからの輻射熱によって予熱される(基板予熱工程)。ヒータユニット6の加熱面の温度は、たとえば150℃程度であり、面内で均一である。第2移動ノズル12は、カップ8の側方のホーム位置に退避している。薬液バルブ43および不活性ガスバルブ38A,38C,44は閉状態に制御される。
【0095】
有機溶剤パドルステップT2は、図10Bに示すように、基板Wの回転を減速して停止させ、基板Wの表面に有機溶剤の厚い液膜150を形成して保持するステップである。
基板Wの回転は、この例では、有機溶剤リンス処理速度から段階的に減速される(減速工程、漸次減速工程、段階的減速工程)。より具体的には、基板Wの回転速度は、300rpmから、50rpmに減速されて所定時間(たとえば10秒)維持され、その後、10rpmに減速されて所定時間(たとえば10秒)維持され、その後、0rpm(停止)に減速されて所定時間(たとえば10秒)維持される。一方、第1移動ノズル11は、回転軸線A1上に保持され、引き続き、基板Wの上面の回転中心に向けて中心吐出口71から有機溶剤を吐出し、かつ平行流吐出口82から不活性ガスを吐出して平行気流86を形成する。中心吐出口71からの有機溶剤の吐出は、有機溶剤パドルステップT2の全期間において継続される。すなわち、基板Wが停止しても、有機溶剤の吐出が継続される。このように、基板Wの回転の減速から停止に至る全期間において有機溶剤の供給が継続されることにより、基板Wの上面の至るところで処理液が失われることがない。また、基板Wの回転が停止した後も有機溶剤の供給が継続されることにより、基板Wの上面に厚い液膜150を形成できる。
【0096】
ヒータユニット6の位置は、有機溶剤リンスステップのときと同じ位置であり、加熱面6aが基板Wの下面から所定距離(たとえば2mm)だけ下方に離隔した離隔位置である。これにより、基板Wは、加熱面6aからの輻射熱によって予熱される(基板予熱工程)。チャックピン20は、基板Wの回転が停止した後、その停止状態が保持されている間に、閉状態から開状態へと切り換わる。それにより、基板Wの周縁部下面がチャックピン20の支持部52によって下方から支持された状態となり、把持部51が基板Wの上面周縁部から離れるので、基板Wの上面全域が開放される。第2移動ノズル12は、ホーム位置のままである。
【0097】
持ち上げパドルステップT3は、図10Cに示すように、ヒータユニット6で基板Wを持ち上げた状態で、すなわち、加熱面6aを基板Wの下面に接触させた状態で、基板Wを加熱しながら、基板Wの上面に有機溶剤液膜150を保持するステップである。
ヒータユニット6が離隔位置から上位置まで上昇させられて、所定時間(たとえば10秒間)保持される。ヒータユニット6が上位置まで上昇させられる過程で、チャックピン20の支持部52から加熱面6aに基板Wが渡され、加熱面6a(より具体的には支持ピン61。図2参照)によって基板Wが支持される(ヒータユニット接近工程、ヒータユニット接触工程)。第1移動ノズル11(中心吐出口71)からの有機溶剤の吐出は、持ち上げパドルステップT3の途中まで継続される。したがって、ヒータユニット6の加熱面6aが基板Wの下面に接触し、加熱面6aからの熱伝導による基板Wの急加熱が開始され、基板Wに与えられる熱量が増加(熱量増加工程)するときには、有機溶剤の供給は継続している。それにより、基板Wの急激な昇温に伴う有機溶剤の蒸発によって有機溶剤の液膜150に不特定の位置で穴があくことを回避している。有機溶剤の供給は、ヒータユニット6の加熱面6aが基板Wの下面に接触した後(熱量増加工程の後)、所定時間の経過の後に停止される(供給停止工程)。すなわち、制御ユニット3は、有機溶剤バルブ37を閉じて、中心吐出口71からの有機溶剤の吐出を停止させる。
【0098】
スピンチャック5の回転は停止状態であり、第2移動ノズル12はホーム位置にあり、不活性ガスバルブ44は閉状態である。第1移動ノズル11(中心吐出口71)は基板Wの回転中心の上方に位置している。
有機溶剤の供給が停止された後、所定時間が経過するまで、ヒータユニット6は上位置に保持される。基板Wに供給された有機溶剤は、中心に供給される新たな有機溶剤によって外周側へと押しやられ、その過程で、ヒータユニット6によって加熱された基板Wの上面からの熱で加熱されて昇温していく。有機溶剤の供給を継続している期間には、基板Wの中央領域の有機溶剤の温度は比較的低い。そこで、有機溶剤の供給を停止した後、所定の短時間だけヒータユニット6の接触状態を保持することによって、基板Wの中央領域における有機溶剤を昇温できる。それにより、基板Wの上面に支持された有機溶剤の液膜150の温度を均一化できる。
【0099】
基板Wの上面からの熱を受けた有機溶剤液膜150では、基板Wの上面との界面において蒸発が生じる。それによって、基板Wの上面と有機溶剤液膜150との間に、有機溶剤の気体からなる気相層が生じる。したがって、有機溶剤液膜150は、基板Wの上面の全域において、気相層上に支持された状態となる(気相層形成工程)。
保温ステップT4は、基板Wの熱を回避しつつ、気相層および有機溶剤液膜150を維持するために基板Wを保温するステップである。具体的には、図10Dに示すように、ヒータユニット6は上位置から若干下に下降させられる。それにより、基板Wは、ヒータユニット6からチャックピン20の支持部52に渡され、加熱面6aは、基板Wの下面から所定の微小距離だけ間隔を空けた非接触状態で基板Wの下面に対向する。これにより、基板Wの加熱は加熱面6aからの輻射熱による加熱に切り換わり、基板Wに与えられる熱量が減少する(熱量減少工程)。これによって、基板Wが過熱することを回避し、蒸発によって有機溶剤液膜150に亀裂(とくに基板Wの外周領域での亀裂)が生じることを回避している。
【0100】
穴開けステップT5は、図10Eに示すように、第1移動ノズル11の線状流吐出口81から基板Wの中心に向けて垂直に小流量(第1流量。たとえば3リットル/分)で不活性ガス(たとえば窒素ガス)の線状気流85を吹き付け、有機溶剤液膜150の中央部に小さな穴151を開けて基板Wの上面の中央部を露出させるステップである(垂直ガス吐出工程、穴開け工程)。線状気流85は小流量であるため、有機溶剤液膜150に小さな穴151を開ける際に有機溶剤液膜150での液跳ねが防止または抑制することができる。基板Wの回転は停止状態のままであり、したがって、静止状態の基板W上の液膜150に対して穴開けステップが行われる。有機溶剤液膜150の中央部に穴開けした状態の平面図を図11Aに示す。明瞭化のために、図11Aにおいて、有機溶剤液膜150は斜線を付して示す。
【0101】
より具体的には、制御ユニット3は、平行流吐出口82からの不活性ガスの吐出を継続しながら、第1ノズル移動ユニット15を制御して、第1移動ノズル11を中心下位置まで下降させ、第1移動ノズル11を基板Wに近づける。それにより、平行流吐出口82から吐出される不活性ガスが形成する平行気流86が基板Wの上面に近づく。また、制御ユニット3は、不活性ガスバルブ38Aを開き、かつマスフローコントローラ39Aを制御することによって、線状流吐出口81から小流量で不活性ガスを吐出させる。不活性ガスの吐出とほぼ同時にヒータユニット6が上昇させられる。それにより、不活性ガスによって有機溶剤液膜150の中央部に小さな穴151が開けられたタイミングよりも微小時間(たとえば1秒)だけ遅れて、加熱面6aが基板Wの下面に接触し、基板Wがヒータユニット6によって持ち上げられる。
【0102】
したがって、不活性ガスが基板Wの上面に到達する時点ではヒータユニット6から基板Wに与えられる熱量が少ないので、不活性ガスによる基板Wの冷却とヒータユニット6による加熱とに起因する基板Wの上下面間の温度差を少なくできる。それにより、基板Wの上下面の温度差に起因する基板Wの反りを回避できる。不活性ガスを供給したときにヒータユニット6を基板Wの下面に接触させていると、基板Wの上面側の温度がその下面側の温度よりも低くなり、基板Wは上面側が窪むように反るおそれがある。この場合、基板Wの上面は、中心部が低く周縁部が高くなるので、有機溶剤液膜150の外方への移動が妨げられる。そこで、この実施形態では、ヒータユニット6を基板Wの下面から離隔させた状態で不活性ガスを基板Wの上面中央に供給し、基板Wの上下面における温度差を緩和している。
【0103】
一方、有機溶剤液膜150の穴開けの直後から(すなわち、ほぼ同時に)、基板Wの急加熱が始まる(再熱量増加工程)。それにより、不活性ガスによる穴開けによって液膜150の外方への移動が始まると、基板Wの加熱が速やかに(ほぼ同時に)開始され、それによって、液膜150は止まることなく基板Wの外方へと移動していく。
より具体的には、穴開けされて液膜150がなくなった中央領域では、液膜150が存在しているその周囲の領域に比較して、基板Wの温度が速やかに上昇する。それによって、穴151の周縁において基板W内に大きな温度勾配が生じる。すなわち、穴151の周縁の内側が高温で、その外側が低温になる。この温度勾配によって、図10Fに示すように、気相層上に支持されている有機溶剤液膜150が低温側、すなわち、外方に向かって移動を始め、それによって、有機溶剤液膜150の中央の穴151が拡大していく。
【0104】
こうして、基板Wの加熱により生じる温度勾配を利用して、基板W上の有機溶剤液膜150を基板W外へと排除できる(液膜排除工程、加熱排除工程、液膜移動工程)。より具体的には、基板Wの上面において、パターンが形成された領域内の液膜150は、温度勾配による有機溶剤の移動によって排除できる。
不活性ガスの吹き付けによって基板Wの回転中心に穴151を形成した後に、長い時間を空けてヒータユニット6を基板Wに接触させると、その間に、穴151の拡大が停止する。このとき、液膜150の内周縁は、内方に向かったり外方に向かったりする平衡状態となる。このとき、基板Wの表面に形成されたパターン内に有機溶剤の液面が入り込み、表面張力によるパターン倒壊の原因となるおそれがある。そこで、この実施形態では、不活性ガスによる穴開けとほぼ同時にヒータユニット6を基板Wの下面に接触させて、基板Wに与える熱量を瞬時に増加させている。
【0105】
穴広げステップT6は、図10Gに示すように、線状流吐出口81から吐出される不活性ガスの流量を増量し、大流量(第2流量。たとえば30リットル/分)の不活性ガスを基板Wの中心に吹き付けて、有機溶剤液膜150の中央の穴151を不活性ガスによってさらに広げるステップである(液膜排除工程、垂直ガス流量増加工程、気体排除工程、液膜移動工程)。すなわち、制御ユニット3は、マスフローコントローラ39Aを制御して、第2移動ノズル12に供給される不活性ガスの流量を増加させる。流量の増加に応じて、流速も増加する。不活性ガス流量の増加により、基板Wの上面の外周領域まで移動した液膜150がさらに基板W外へと押しやられる。基板Wの回転は停止状態に保持される。
【0106】
具体的には、温度勾配によって穴151が広がっていく過程で、さらに不活性ガスの流量を増加させることで、液膜150の移動が停止することを回避して、液膜150の基板W外方に向かう移動を継続させることができる。温度勾配を利用する有機溶剤液膜150の移動だけでは、図11Bの平面図に示すように、基板Wの上面の周縁領域で液膜150の移動が止まってしまうおそれがある。そこで、不活性ガスの流量を増加させることで、液膜150の移動をアシストでき、それによって、基板Wの上面の全域から有機溶剤液膜150を排除できる。
【0107】
不活性ガスの流量を増量した後に、ヒータユニット6が下降させられ、加熱面6aからチャックピン20の支持部52に基板Wが渡される。その後、大流量での不活性ガス吐出が終了するまでに、チャックピン20が閉状態とされ、その把持部51によって基板Wが把持される。図9に示した例では、ヒータユニット6は、チャックピン20に基板Wが渡された後、基板Wの下面に微小距離を隔てて対向する非接触加熱位置に短時間保持され、その後、さらに下降されて、基板Wの下面に所定距離だけ隔てて対向する離隔位置に配置される。
【0108】
外周液落としステップT7は、図10Hに示すように、傾斜流吐出口83から外向きの斜め方向に放射状に不活性ガスを吐出させ(斜めガス吐出工程)、かつ基板Wを回転させることによって、基板Wの外周部に残る有機溶剤液膜を振り落とすステップである。チャックピン20で基板Wが把持された後、スピンチャック5が低速の外周振り落とし速度で回転させられる。具体的には、たとえば30〜100rpmでスピンチャック5とともに基板Wが回転させられる。その一方で、制御ユニット3は、不活性ガスバルブ38Cを開いて、傾斜流吐出口83から不活性ガスを吐出させる。吐出流量は、たとえば100リットル/分程度であってもよい。傾斜流吐出口83からの不活性ガスの吐出は、基板Wの回転を開始する前から行われてもよく、チャックピン20で基板Wが把持される前から開始されてもよい。傾斜流吐出口83から吐出される不活性ガスは、円錐状のプロファイルを有する放射状の傾斜気流87を形成する。この傾斜気流87は、基板Wの中心と周縁との間の中間位置に設定された吐出目標位置171(回転軸線A1を中心とする円周で定義される位置)に向かい、その吐出目標位置171で基板Wにぶつかり、基板Wの上面に平行に外側へと向かう。それにより、液膜150の穴11を広げて、液膜150を基板Wの外方へと押しやることができる。
【0109】
制御ユニット3は、不活性ガスバルブ38Bを開状態に保持しており、したがって、基板Wの上面は、平行流吐出口82から吐出される不活性ガスが形成する平行気流86で覆われている。したがって、基板Wの上面に液滴やミスト等の異物が付着することを抑制または防止しながら、基板W上の液膜150を排除できる。
傾斜流吐出口83からの不活性ガスの吐出は、液膜150の穴151の周縁が前記吐出目標位置171に達するタイミングで開始されることが好ましい。すなわち、制御ユニット3は、液膜150の穴151の周縁が吐出目標位置171に達するタイミングに整合するように調整されたタイミングで、不活性ガスバルブ38Cを開く。
【0110】
外周液落としステップT7に続けて、図10Iに示すように、スピンドライステップT8(乾燥処理。図8のS5)が実行される。平行流吐出口82からの不活性ガスの吐出、および傾斜流吐出口83からの不活性ガスの吐出は継続される。傾斜流吐出口83から吐出される不活性ガスが形成する傾斜気流87は、基板Wの上面にぶつかって、基板Wの上面に平行な外方へと向きを変える。これにより、基板Wの上面は、基板Wの上面に平行な2層の不活性ガス気流で覆われる。その状態で、制御ユニット3は、スピンチャック5の回転を高速な乾燥回転速度(たとえば800rpm)まで加速さる。これにより、遠心力によって、基板Wの表面の液成分を完全に振り切ることができる。基板Wの上面は不活性ガス気流によって覆われているので、周囲に飛び散って跳ね返った液滴や周囲のミストが基板Wの上面に付着することを回避できる。
【0111】
スピンドライステップT8の後は、スピンチャック5の回転が停止され、ヒータユニット6が下位置に下降させられる。また、不活性ガスバルブ38B,38Cが閉じられて、平行流吐出口82および傾斜流吐出口83からの不活性ガスの吐出が停止される。そして、第1移動ノズル11は、ホーム位置に移動される。その後は、制御ユニット3は、チャックピン20を開状態とし、搬送ロボットCRによって、処理済みの基板Wを処理ユニット2から搬出させる。
【0112】
図12Aおよび図12Bは、基板Wの表面における気相層の形成を説明するための図解的な断面図である。基板Wの表面には、微細なパターン161が形成されている。パターン161は、基板Wの表面に形成された微細な凸状の構造体162を含む。構造体162は、絶縁体膜を含んでいてもよいし、導体膜を含んでいてもよい。また、構造体162は、複数の膜を積層した積層膜であってもよい。ライン状の構造体162が隣接する場合には、それらの間に溝(溝)が形成される。この場合、構造体162の幅W1は10nm〜45nm程度、構造体162同士の間隔W2は10nm〜数μm程度であってもよい。構造体162の高さTは、たとえば50nm〜5μm程度であってもよい。構造体162が筒状である場合には、その内方に孔が形成されることになる。
【0113】
有機溶剤パドルステップT2では、図12Aに示すように、基板Wの表面に形成された有機溶剤液膜150は、パターン161の内部(隣接する構造体162の間の空間または筒状の構造体162の内部空間)を満たしている。
持ち上げパドルステップT3では、基板Wが加熱され、有機溶剤の沸点(IPAの場合は82.4℃)よりも所定温度(たとえば、10〜50℃)だけ高い温度となる。それにより、基板Wの表面に接している有機溶剤が蒸発し、有機溶剤の気体が発生して、図12Bに示すように、気相層152が形成される。気相層152は、パターン161の内部を満たし、さらに、パターン161の外側に至り、構造体162の上面162Aよりも上方に有機溶剤液膜150との界面155を形成している。この界面155上に有機溶剤液膜150が支持されている。この状態では、有機溶剤の液面がパターン161に接していないので、有機溶剤液膜150の表面張力に起因するパターン倒壊が起こらない。
【0114】
基板Wの加熱によって有機溶剤が蒸発するとき、液相の有機溶剤はパターン161内から瞬時に排出される。そして、形成された気相層152上に液相の有機溶剤が支持され、パターン161から離隔させられる。こうして、有機溶剤の気相層152は、パターン161の上面(構造体162の上面162A)と有機溶剤液膜150との間に介在して、有機溶剤液膜150を支持する。
【0115】
図12Cに示すように、基板Wの上面から浮上している有機溶剤液膜150に亀裂153が生じると、乾燥後にウォータマーク等の欠陥の原因となる。そこで、この実施形態では、基板Wの回転を停止した後に有機溶剤の供給を停止して、基板W上に厚い有機溶剤液膜150を形成して、亀裂の発生を回避している。ヒータユニット6を基板Wに接触させるときには、基板Wの回転が停止しているので、液膜150が遠心力によって分裂することがなく、したがって、液膜150に亀裂が生じることを回避できる。さらに、ヒータユニット6の出力および基板Wとの接触時間を調節して、有機溶剤の蒸気が液膜150を突き破って吹き出さないようにし、それによって、亀裂の発生を回避している。より具体的には、保温ステップT4では、ヒータユニット6を基板Wから離隔させることで基板Wの過熱を回避し、それによって、有機溶剤液膜150に亀裂が生じることを回避している。
【0116】
気相層152上に有機溶剤液膜150が支持されている状態では、有機溶剤液膜150に働く摩擦抵抗は、零とみなせるほど小さい。そのため、基板Wの上面に平行な方向の力が有機溶剤液膜150に加わると、有機溶剤液膜150は簡単に移動する。この実施形態では、有機溶剤液膜150の中央に穴開けし、それによって、穴151の縁部での温度差によって有機溶剤の流れを生じさせて、気相層152上に支持された有機溶剤液膜150を移動させて排除している。
【0117】
図13A図13Bおよび図13Cは、穴開けステップT5および穴広げステップT6を省いた場合(比較例)の課題を説明するための図解的な平面図である。明瞭化のために、図13A図13Cにおいて、有機溶剤液膜150に斜線を付す。
静止状態の基板Wの上面全域を覆う有機溶剤液膜150が形成された状態から、ヒータユニット6を基板Wに接触させて基板Wの加熱を継続すると、液相の有機溶剤の蒸発が進み、やがて、基板W上のいずれかの位置で液相層がなくなる。穴開けステップT5を省いた場合には、図13Aに示すように、基板W上の不特定の複数の位置で液相層がなくなって複数の穴157が形成される。液相層が無くなった位置では基板Wの温度が上昇するので、図13Bに示すように、温度差によって、複数の穴157がそれぞれ広がっていく。ところが、このように不特定の複数位置から乾燥が始まると、図13Cに示すように、基板W上の複数の位置に、複数の分離した液膜150が分散して残留する。この残留した液膜150は、パーティクルやパターン倒壊の原因となる。
【0118】
そこで、この実施形態では、気相層152上の液膜150が基板W上面の全域を覆っている状態で、基板Wの中央に不活性ガスを吹き付けて液膜150に一つの穴151を開けている(穴開けステップT5)。これにより、その一つの穴151から有機溶剤液膜150の排除が始まるので、液残りを生じることなく、有機溶剤液膜150を基板W外に排除できる。しかも、基板Wの回転を停止した状態で穴151を広げて有機溶剤液膜150が排除されるので、遠心力に起因する有機溶剤液膜150の分裂を回避できる。
【0119】
以上のように、この実施形態によれば、DIWリンス処理の後に、基板Wの表面のDIWを有機溶剤で置換して、基板Wの上面全域を覆う有機溶剤液膜150が形成される。この有機溶剤液膜150が基板Wの上面全域を覆う状態を維持しながら、基板Wの回転が減速させられて停止される。そして、基板Wの回転が停止し、さらに、ヒータユニット6が基板Wの下面に接触するまで、有機溶剤の供給が継続され、その後に有機溶剤の供給が停止される。それによって、基板Wの上面に有機溶剤の厚い液膜150が形成され、かつヒータユニット6の接触による基板Wの急激な昇温に際しても、その液膜150に亀裂が生じることがない。こうして、有機溶剤液膜150が基板Wの上面を覆っている状態を終始維持しながら、ヒータユニット6による基板Wの加熱によって、基板Wの上面と液膜150との間に有機溶剤の気相層152が基板Wの上面全域にわたって形成される。気相層152は、基板Wの表面のパターンの内部を満たし、かつパターンの上面よりも上に液膜150との界面を有する。したがって、パターン内に有機溶剤の液面が存在しないので、パターンは表面張力を受けない。よって、気相層152に支持された状態で液膜150を基板W外に排除することによって、パターンの倒壊を抑制または防止できる。
【0120】
この実施形態では、液膜150の排除に際して、その中央に向けて基板Wの上面に垂直な方向に不活性ガスの線状気流85が吐出され、それによって、一つの穴151が形成される。この一つの穴151が、温度勾配および大流量不活性ガス供給による液膜150の移動によって外方へと押し広げられる。このとき、基板Wの回転は停止しているので、液膜150は大きな厚さを保持したまま、分裂することなく、気相層152上を基板Wの外方へと移動して、基板W外に排除されていく。温度勾配に加えて大流量不活性ガス供給によって液膜150の移動を補助しているので、液膜150の移動が途中で止まることがなく、有機溶剤が基板Wの内方に戻ってパターン内にその液面を形成することがない。これにより、有機溶剤液膜150を排除する過程におけるパターン倒壊を回避できる。さらに、外周領域まで押しやられた液膜150は、円錐状のプロファイルを有する傾斜気流87によってさらに外方に押しやられ、かつ基板Wの低速回転によって振り落とされる。それによって、基板Wの表面から液膜150が完全に排除される。
【0121】
このようにして、有機溶剤液膜150は、気相層152の形成まで基板Wの上面全域を覆った状態を保ち、その後、基板W上からの排除が始まると、分裂することも、停止することもなく、基板Wの外方へと導かれる。これにより、基板W上のパターンの倒壊を効果的に抑制または防止しながら、基板W上の液成分を排除することができる。
また、平行流吐出口82からは、有機溶剤の吐出開始前から不活性ガスが吐出され、それによって、基板Wの上面を覆う平行気流86が形成される。これにより、跳ね返った液や雰囲気中のミストが基板Wの表面に付着することを回避しながら、有機溶剤の液膜150の形成およびその排除を行うことができる。これにより、高品質な基板処理を実現できる。
【0122】
第1移動ノズル11は、線状吐出口81に対応した流体路としての不活性ガス供給管36Aと、平行流吐出口82に対応した流体路120と、傾斜流吐出口83に対応した流体路100とを有しており、これらはそれぞれ独立した流体路である。そのため、それらの吐出口81,82,83からの不活性ガスの吐出は、個別に制御可能である。それにより、第1移動ノズル11を回転軸線A1上に配置したままで、穴開けステップ、穴広げステップ、外周液落としステップおよびスピンドライステップを行うことができる。
【0123】
また、この実施形態では、第1移動ノズル11は、有機溶剤を吐出する中心吐出口71(有機溶剤供給管35)を備えている。そのため、有機溶剤の液膜を形成する工程(有機溶剤リンスステップ、有機溶剤パドルステップ)および有機溶剤液膜を支持する気相層を形成する工程(持ち上げパドルステップ、保温ステップ)も、第1移動ノズル11を回転軸線A1上に配置したままで行える。それにより、平行流吐出口82から吐出される不活性ガスが形成する平行気流86で基板Wの上方を保護した状態で、それらの工程を実行することができる。
【0124】
図14は、傾斜流吐出口83からの不活性ガスの吐出に関する変形例を説明するためのタイムチャートであり、図9と同様の図示がされている。
この変形例では、外周液落としステップT7において、参照符号181で示すように、傾斜流吐出口83から吐出される不活性ガスの流量が漸次的に(図14の例では段階的に)増加する(斜めガス流量増加工程)。より具体的には、制御ユニット3は、流量可変バルブ39Cの開度を漸次的に増加させることによって、傾斜流吐出口83から吐出される不活性ガスの流量を増大させる。流量の増大に応じて、流速も増加する。流量の漸次的増加は、段階的増加であってもよいし、連続的増加であってもよい。図14には、段階的に流量を増加させる例を示す。
【0125】
このように、傾斜流吐出口83から吐出される不活性ガスの流量を漸次的に増加させることによって、基板Wの外方にまで押しやられた液膜に対して、さらに外方への力を確実に作用させることができる。それにより、基板W上の液膜をより確実に排除できる。
図15は、傾斜流吐出口83から不活性ガスを吐出している期間における第1移動ノズルの上下方向位置を変動させる変形例を示すタイムチャートであり、図14と同様の図示がされている。
【0126】
この変形例では、外周液落としステップT7において、第1移動ノズル11は、参照符号182で示すように、中心下位置から、回転軸線A1に沿って(すなわち、中心軸線70に沿って)漸次的に上昇させられる。すなわち、制御ユニット3は、第1ノズル移動ユニット15(距離調整ユニットの一例)を制御して、第1移動ノズル11を漸次的に上昇させる。これにより、傾斜流吐出口83が上昇するので、傾斜流吐出口83から吐出される不活性ガスの基板W上面における吐出目標位置171が、基板Wの周縁側へと漸次的に移動する(吐出目標位置移動工程)。したがって、有機溶剤の液膜に形成される穴の周縁が外方へと広がるにつれて、その周縁を追うように、吐出目標位置171が基板Wの周縁側へと移動する。それによって、傾斜流吐出口83から吐出された不活性ガスが形成する傾斜気流87は、基板Wの外周領域を外方へと走査する。これにより、傾斜気流87は、基板W上の液膜に対して確実に外方へと押しやる力を及ぼす。こうして、基板W上の液膜を一層確実に排除できる。
【0127】
図15の例では、第1移動ノズル11の漸次的上昇は、上昇速度を一定とした連続的な上昇であるが、第1移動ノズル11を段階的に上昇させてもよい。
また、図15の変形例では、第1移動ノズル11の上昇に合わせて、参照符号183で示すように、傾斜流吐出口83から吐出される不活性ガスの流量が漸次的に増加させられている。すなわち、制御ユニット3は、流量可変バルブ39Cを制御して、傾斜流吐出口83に供給される不活性ガスの流量を漸次的に増加させる。これにより、第1移動ノズル11の上昇によって傾斜流吐出口83から吐出目標位置171までの距離が長くなると、それを補うように、傾斜流吐出口83からの吐出流量を増加させることができる。それによって、液膜をより確実に基板W外へと排除できる。
【0128】
図15では、傾斜流吐出口83からの吐出流量が連続的に増加する例を示してあるが、吐出流量の漸次的な増加は、図14に示した例のような段階的な増加であってもよい。また、第1移動ノズル11を上昇させて吐出目標位置を移動させる過程において、傾斜流吐出口83からの吐出流量が一定に保たれてもよい。
図16は、この発明の第2の実施形態を説明するための概念図であり、第1移動ノズル11の別の構成例を示す。この実施形態では、第1移動ノズル11は、傾斜流吐出口83とは別の傾斜流吐出口84を有している。より具体的には、平行流吐出口82の下方に第1傾斜流吐出口83が配置され、さらに、平行流吐出口82と第1傾斜流吐出口83との間に第2傾斜流吐出口84が配置されている。第1傾斜流吐出口83および第2傾斜流吐出口84は、基板Wの上面において、基板Wの中心と周縁との間の中間位置に設定された第1および第2吐出目標位置171,172に向けて不活性ガスを放射状に吐出する。
【0129】
より具体的には、第1傾斜流吐出口83から吐出される不活性ガスは、回転軸線A1を中心とした円周位置である第1吐出目標位置171に向けて、円錐状のプロファイルの第1傾斜気流87を形成する。同様に第2傾斜流吐出口84から吐出される不活性ガスは、回転軸線A1を中心とした円周位置である第2吐出目標位置172に向けて、円錐状のプロファイルの第2傾斜気流88を形成する。第2吐出目標位置172は、第1吐出目標位置171よりも外側、すなわち、回転軸線A1からより遠い位置に配置されている。
【0130】
第2傾斜流吐出口84は、第1移動ノズル11内に形成された流体路130(第4流体路)に連通している。流体路130は、第1移動ノズル11の流体入口131(第4流体入口)に連通しており、それによって、流体入口131と第2傾斜流吐出口84とを連通させている。流体路130は、第1移動ノズル11内の流体路100,120のいずれとも連通しておらず、第1不活性ガス供給管36Aの流路とも連通していない、独立した流体路である。
【0131】
流体入口131には、第4不活性ガス供給管36Dが接続されている。第4不活性ガス供給管36Dは、不活性ガス供給源から、流体入口131に不活性ガス(たとえば窒素ガスを)を供給する。第4不活性ガス供給管36Dには、その流路を開閉する不活性ガスバルブ38Dと、その流路の開度を調整して流量を可変する流量可変バルブ39Dと、異物を除去するためのフィルタ40Dとが介装されている。不活性ガスバルブ38Dおよび流量可変バルブ39Dは、制御ユニット3によって制御される。
【0132】
図17は、処理内容を説明するためのタイムチャートであり、図9と同様の図示がされている。
この実施形態では、参照符号185で示すように、穴広げステップT6の途中から第1傾斜流吐出口83からの不活性ガス吐出が開始され、その吐出は、スピンドライステップT8の終了まで継続される。一方、外周液落としステップT7では、参照符号186で示すように、第2傾斜流吐出口84からの不活性ガス吐出が開始され、その吐出は、スピンドライステップT8の終了まで継続される。このような不活性ガスの吐出は、制御ユニット3が不活性ガスバルブ38C,38Dを制御することによって達成される。
【0133】
第1傾斜流吐出口83からの不活性ガスの吐出は、基板W上の液膜に形成される穴の周縁が第1吐出目標位置171に達したタイミング(より好ましくはその直後のタイミング)で開始されることが好ましい。同様に、第2傾斜流吐出口84からの不活性ガスの吐出は、基板W上の液膜に形成される穴の周縁が第2吐出目標位置172に達したタイミング(より好ましくはその直後のタイミング)で開始されることが好ましい。
【0134】
このように、第1傾斜流吐出口83および第2傾斜流吐出口84からの不活性ガスの吐出を順次開始することにより、基板W上の液膜の位置に応じて、液膜を基板Wの外方へと確実に押しやって排除できる。
なお、この実施形態において、制御ユニット3は、流量可変バルブ39Cを制御することにより、第1傾斜流吐出口83から吐出される不活性ガスの流量を漸次的(段階的または連続的)に増加させてもよい。同様に、制御ユニット3は、流量可変バルブ39Dを制御することにより、第2傾斜流吐出口84から吐出される不活性ガスの流量を漸次的(段階的または連続的)に増加させてもよい。
【0135】
さらに、制御ユニット3は、たとえば、第2傾斜流吐出口84からの不活性ガスの吐出を開始した後に、第1ノズル移動ユニット15を制御することにより、第1移動ノズル11を漸次的(段階的または連続的)に上昇させて基板Wの表面から遠ざけてもよい。これにより、第1吐出目標位置171および第2吐出目標位置172が基板Wの外方へと移動するので、第1傾斜気流87および第2傾斜気流88で基板Wの外方に向けて基板Wの上面を走査できる。それにより、基板W上の液膜を一層確実かつ効率的に排除できる。
【0136】
第1傾斜気流87および第2傾斜気流88は、基板Wの上面にぶつかって、基板Wの上面に平行な外向きへと方向を変える。したがって、スピンドライ工程では、平行気流86と合わせて3層の平行気流が基板W上に形成されることになる。それにより、基板Wの上面に液滴やミストが付着することを回避しながら、基板Wを乾燥させることができる。
図18は、この発明の第3の実施形態に係る基板処理装置の制御に関連する構成を説明するためのブロック図である。図18において、前述の図16に示された各部の対応部分には同一参照符号を付して示す。
【0137】
この実施形態では、スピンチャック5に保持された基板Wの上面を撮像する撮像ユニット140が備えられている。撮像ユニット140が出力する画像データは、制御ユニット3に入力される。
図19は、穴開けステップT5の後に撮像ユニット140が出力する画像データを用いて制御ユニット3が実行する処理を説明するためのフローチャートである。制御ユニット3は、撮像ユニット140が出力する画像を処理し(ステップS11)、その処理結果を用いて、基板W上の液膜の位置を特定する(ステップS12)。さらに、制御ユニット3は、基板W上の液膜に形成された穴の周縁の位置を特定する(ステップS13。周縁位置検出工程)。
【0138】
さらに、制御ユニット3は、その特定された周縁の位置が第1傾斜流吐出口83に対応した第1吐出目標位置171に達したかどうか、より具体的には、第1吐出目標位置171またはそれよりも外方に周縁が位置しているかどうかを判断する(ステップS14)。さらに具体的には、穴の周縁のうち最も回転軸線A1に近い部分が、第1吐出目標位置171またはそれよりも外方にあるかどうかを判断する。この判断が肯定されるまで、制御ユニット3は、ステップS11からの処理を繰り返す。液膜に形成された穴の周縁が第1吐出目標位置171に達すると(ステップS14:YES)、制御ユニット3は第1傾斜流吐出口83からの不活性ガスの吐出を開始させる(ステップS15)。
【0139】
第1傾斜流吐出口83からの不活性ガスの吐出を開始した後、制御ユニット3は、さらに、撮像ユニット140が出力する画像データを取得して、画像処理を行う(ステップS16)。制御ユニット3は、その処理結果を用いて、基板W上の液膜の位置を特定する(ステップS17)。さらに、制御ユニット3は、基板W上の液膜に形成された穴の周縁の位置を特定する(ステップS18。周縁位置検出工程)。
【0140】
さらに、制御ユニット3は、その特定された周縁の位置が第2傾斜流吐出口84に対応した第2吐出目標位置172に達したかどうか、より具体的には、第2吐出目標位置172またはそれよりも外方に周縁が位置しているかどうかを判断する(ステップS19)。さらに具体的には、穴の周縁のうち最も回転軸線A1に近い部分が、第2吐出目標位置172またはそれよりも外方にあるかどうかを判断する。この判断が肯定されるまで、制御ユニット3は、ステップS16からの処理を繰り返す。液膜に形成された穴の周縁が第2吐出目標位置172に達すると(ステップS19:YES)、制御ユニット3は第2傾斜流吐出口84からの不活性ガスの吐出を開始させる(ステップS20)。その後、所定時間の経過の後、スピンドライステップが開始される。
【0141】
このように、この実施形態では、撮像ユニット140および制御ユニット3の機能によって、基板W上の液膜の位置を検出する液膜位置検出ユニットが構成されている。また、制御ユニット3は、撮像ユニット140が出力する画像データに基づいて、穴の周縁の位置を特定する位置特定ユニットとしての機能を有している。
この実施形態では、基板W上の液膜の位置を検出し、その検出された結果に基づいて、傾斜流吐出口83,84からの不活性ガスの吐出が制御されている。それにより、傾斜気流87,88を最適なタイミングで形成できるから、液膜を一層効率的に基板W外に排除できる。
【0142】
なお、この実施形態は、一つの傾斜流吐出口83を有する第1実施形態の移動ノズル11を用いる場合にも適用できる。この場合には、図19のステップS16〜S20の処理を省けばよい。
以上、この発明の一実施形態について説明してきたが、この発明は、さらに他の形態で実施することもできる。この発明の範囲に含まれるいくつかの形態を以下に例示的に列挙する。
【0143】
1.前述の実施形態では、リンス液としてのDIWを有機溶剤に置換し、その有機溶剤を基板外に排除するために不活性ガスを用いる例が示されている。しかし、この発明は、有機溶剤処理(図8のステップS4)を有しないプロセスに対しても適用可能である。より具体的には、基板を薬液で処理する薬液処理工程、その後に基板上の薬液をリンス液(DIWなど)で置換するリンス処理工程、その後に基板上のリンス液を基板外に排除するリンス液排除工程を含む基板処理方法に対して、この発明を適用してもよい。その場合に、前述の実施形態に倣って、リンス液排除工程において前述の第1移動ノズル11を用い、平行流吐出口82から放射状に吐出される不活性ガスによって平行気流86を基板の上方に形成し、線状流吐出口81から基板の中心に向けて垂直に不活性ガスを吐出して線状気流85を形成し、傾斜流吐出口83,84から基板の上面に対して外向き斜めの方向に不活性ガスを放射状に吐出して傾斜気流87,88を形成すればよい。不活性ガス流量の漸次的増加、第1移動ノズル11の上昇等による吐出目標位置の移動なども、前述の実施形態に倣って、適宜、適用してもよい。
【0144】
2.前述の実施形態では、平行流吐出口82が一つだけ備えられた流体ノズル(第1移動ノズル11)の構造を示した。しかし、平行流吐出口は、2つ以上設けられていてもよい。その場合に、流体ノズル内には、それぞれの平行流吐出口に対応した独立した複数の流体路が形成されていてもよいし、複数(少なくとも2つ)の平行流吐出口で共有される流体路が形成されていてもよい。
【0145】
3.前述の実施形態では、傾斜流吐出口83,84が一つまたは2つ備えられた流体ノズル(第1移動ノズル11)の構造を示した。しかし、傾斜流吐出口は3つ以上備えられていてもよい。また、傾斜流吐出口が備えられておらず、線状吐出口81および平行流吐出口82が備えられた流体ノズルがこの発明の基板処理方法または基板処理装置に適用されてもよい。さらには、線状吐出口が備えられておらず、少なくとも一つの平行流吐出口と、少なくとも一つの傾斜流吐出口とが備えられた流体ノズルが、この発明の基板処理方法または基板処理装置に適用されてもよい。
【0146】
4.前述の実施形態では、処理液としての有機溶剤を吐出する中心吐出口71を備えた流体ノズル(第1移動ノズル11)の構造を示した。しかし、処理液を吐出する機能を有しない流体ノズルを用いることとして、処理液の吐出は別のノズルによって行うようにしてもよい。
5.前述の実施形態では、線状流吐出口81から不活性ガスを直線状に吐出する穴開けステップT5の前に、ヒータユニット6の加熱面6aを基板Wの下面から離間させる保温ステップT4が設けられている。この保温ステップT4を省いて、持ち上げパドルステップT3によって基板Wを昇温した後、この持ち上げパドルステップT3に続いて穴開けステップT5を実行してもよい。
【0147】
6.前述の実施形態では、スピンドライステップT8において、傾斜流吐出口83,84からの不活性ガスの吐出を継続している。しかし、スピンドライステップT8では、傾斜流吐出口83,84からの不活性ガスの吐出を停止してもよい。また、前述の実施形態では、穴広げステップT6が終わると、線状流吐出口81からの不活性ガスの吐出を停止している。しかし、線状流吐出口81からの不活性ガスの吐出は、外周液落としステップT7まで継続してもよいし、さらにスピンドライステップT8まで継続してもよい。
【0148】
7.図9には、外周液落としステップT7において傾斜流吐出口83からの不活性ガスの吐出を開始する例を示してある。しかし、傾斜流吐出口83からの不活性ガスの吐出は、穴広げステップT6の途中から開始してもよい。より具体的には、傾斜流吐出口83からの不活性ガスの吐出は、吐出目標位置まで液膜の穴の周縁が達したタイミング(より好ましくはその直後のタイミング)で開始されることが好ましい。
【0149】
8.図17には、第2傾斜流吐出口84からの不活性ガス吐出開始後も第1傾斜流吐出口83からの不活性ガス吐出を継続する例を示した。しかし、第2傾斜流吐出口84からの不活性ガス吐出を開始した後に、第1傾斜流吐出口83からの不活性ガスの吐出を停止してもよい。
9.図18には、撮像ユニット140を用いて液膜に形成された穴の周縁の位置を特定する構成を示した。しかし、撮像ユニット140を用いずに、たとえば、超音波センサ等の適切なセンサを用いて基板W上の液膜の位置を直接的に検出する構成を採用してもよい。
【0150】
10.不活性ガスとしては、窒素ガスのほかにも、清浄空気その他の不活性ガスを採用できる。
11.処理対象の基板は、円形である必要はなく、矩形の基板であってもよい。
12.第1実施形態などに示した方法において使用可能な有機溶剤は、IPAのほかにも、メタノール、エタノール、アセトン、HEF(ハイドルフルオロエーテル)を例示できる。これらは、いずれも水(DIW)よりも表面張力が小さい有機溶剤である。この発明は、有機溶剤以外の処理液にも適用可能である。たとえば、水などのリンス液を基板外に排除するためにこの発明を適用してもよい。リンス液としては、水のほかにも、炭酸水、電界イオン水、オゾン水、希釈濃度(たとえば、10〜100ppm程度)の塩酸水、還元水(水素水)などを例示できる。
【0151】
13.穴開けステップにおいて、室温(たとえば25℃)よりも高温の不活性ガスを用いてもよい。この場合には、不活性ガスが基板Wに到達したときの基板Wの上下面間の温度差を少なくできる。したがって、ヒータユニット6を基板Wの下面に接触させたままで、穴開けステップのための高温不活性ガス吐出を行ってもよい。不活性ガスの温度は、基板Wの温度に近いほど好ましい。
【0152】
14.前述の実施形態では、有機溶剤パドルステップT2における基板Wの回転の漸次的減速が段階的に行われているが、連続的に回転を減速してもよい。たとえば、10秒以上かけて300rpmから0rpmまで回転速度を連続的(たとえば直線的)に減速すれば、液膜150が基板Wの上面全域を覆う状態を保持できる。
15.有機溶剤パドルステップT2において基板Wの回転を減速するときに、第1移動ノズル11から吐出される有機溶剤の流量を増加させてもよい(増流量減速工程)。この場合に、基板Wの回転の減速はステップ的に行われてもよいし、前述の実施形態のように、漸次的に行われてもよい。有機溶剤の供給流量を増加させることによって、基板Wの上面の外周領域における液切れが生じ難くなるので、基板Wの回転を速やかに減速して停止させることができる。これにより、短時間で基板Wの回転を停止できるので、生産性を向上できる。
【0153】
16.前述の実施形態では、ヒータユニット6から基板Wに与えられる熱量を増減するために、ヒータユニット6と基板Wとの距離を変更している。しかし、ヒータユニット6と基板Wとの間の位置関係の変更に代えて、またはそれとともに、ヒータユニット6の出力を変化させることにより、基板Wに与える熱量を増減してもよい。
17.前述の実施形態では、気相層152を形成するときに、ヒータユニット6を基板Wの下面に接触させている。しかし、ヒータユニット6からの輻射熱によって気相層152を形成できるのであれば、ヒータユニット6を基板Wの下面から離隔させたままで、気相層152の形成のための基板加熱を行ってもよい。ただし、ヒータユニット6の加熱面6aを基板Wに接触させる方が、雰囲気温度の変化等の外乱の影響を抑制できるので、加熱の面内均一性を高めることができる。また、基板Wに対しては、有機溶剤の蒸発によって奪われる気化熱を補って気相層152を形成および保持できる熱量を与える必要がある。したがって、加熱面6aを基板Wに接触させることにより、基板Wを効率的、安定的かつ速やかに加熱できる。
【0154】
18.前述の実施形態では、有機溶剤パドルステップT2の途中から基板Wの回転を完全に停止して静止状態にしている。また、有機溶剤パドルステップT2に続く持ち上げパドルステップT3、保温ステップT4、および穴開けステップT5を通して、基板Wの静止状態を維持している。しかし、基板Wの上に有機溶剤の液膜を保持し続けることができるのであれば、有機溶剤パドルステップT2から穴開けステップT5までの期間の全部または一部の期間において基板を静止状態とせず、静止状態と同一視できる程度の低速(たとえば10rpm程度)で回転させるようにしてもよい。たとえば、穴開けステップT5において基板Wをこのような速度で回転させてもよい。
【0155】
19.回転軸線A1周りにヒータユニット6を回転させるための電動モータ等からなる回転ユニットをさらに備えてもよい。この場合、ヒータユニット6を基板Wの回転に同期して回転させることができる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【0156】
この明細書および添付図面からは、特許請求の範囲に記載した特徴以外にも、以下のような特徴が抽出され得る。これらの特徴は、課題を解決するための手段の項に記載した特徴と任意に組み合わせ可能である。
A1.水平に保持された基板の上面に処理液を供給して前記基板の上面全域を覆う処理液の液膜を形成する液膜形成工程と、
前記基板を加熱して前記基板の上面に接する処理液を蒸発させ、前記基板の上面と前記処理液との間に気相層を形成し、前記気相層上に前記液膜を保持する気相層形成工程と、
前記気相層が形成された後、前記基板上の前記液膜に第1流量で気体を吹き付けて処理液を部分的に排除することによって前記液膜に穴を開ける穴開け工程と、
前記基板を加熱することにより、前記穴を前記基板の外周に向かって広げ、前記気相層上で液膜を移動させることにより、前記液膜を構成する処理液を基板外に排除する加熱排除工程と、
前記穴開け工程の後、前記基板の表面における前記穴内の領域に、前記第1流量よりも大きい第2流量で気体を吹き付け、前記穴を基板の外周に向かって広げ、前記気相層上で液膜を移動させることにより、前記液膜を構成する処理液を前記基板外に排除する気体排除工程と
を含む、基板処理方法。
【0157】
A2.前記穴開け工程では前記基板を静止状態とする、A1に記載の基板処理方法。
A3.加熱排除工程の後、前記基板を鉛直方向に沿う回転軸線まわりに外周振り落とし速度で回転することにより、前記基板の外周部の処理液を前記基板外に振り落とす回転振り落とし工程をさらに含む、A2に記載の基板処理方法。
A4.前記回転振り落とし工程の後、前記基板を前記回転軸線まわりに、前記外周振り落とし速度よりも高速な乾燥速度で回転させる高速回転乾燥工程をさらに含む、A3に記載の基板処理方法。
【0158】
A5.前記液膜形成工程は、
前記基板を鉛直方向に沿う回転軸線まわりに液供給速度で回転する液供給速度回転工程と、
前記液供給速度回転工程中に前記基板の上面への処理液の供給を開始して、前記基板の上面全域を覆う前記液膜を形成する処理液供給工程と、
前記処理液供給工程の実行中に、前記液膜が前記基板の上面全域を覆う状態を保持しながら、前記基板の回転を前記液供給速度から停止まで減速する減速工程と、
前記減速工程の後に、前記処理液の前記基板の上面への供給を停止する供給停止工程と
を含む、A1〜A4のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【0159】
A6.前記減速工程が、前記基板の回転速度を漸次的に減少させる漸次減速工程を含む、A5に記載の基板処理方法。
A7.前記漸次減速工程が、前記基板の回転速度を段階的に減速する段階的減速工程を含む、A6に記載の基板処理方法。
A8.前記漸次減速工程が、前記基板の回転速度を連続的に減少させる連続的減速工程を含む、A6に記載の基板処理方法。
【0160】
A9.前記減速工程が、前記処理液の供給流量を増加させた状態で前記基板の回転速度を減速させる増流量減速工程を含む、A5〜A8のいずれか一項に記載の基板処理方法。
A10.前記処理液供給工程が、前記処理液としての有機溶剤を供給する有機溶剤供給工程であり、
前記有機溶剤供給工程の前に、前記基板の上面に前記有機溶剤とは別の処理液を供給する工程をさらに含み、
前記減速工程が、前記基板上の全ての前記別の処理液を前記有機溶剤が置換した後に開始される、A5〜A9のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【0161】
A11.前記気相層形成工程が、前記基板に与える熱量を増加させる熱量増加工程を含み、
前記液膜形成工程が、前記基板の上面に処理液を供給する処理液供給工程と、前記熱量増加工程の開始よりも後に前記処理液の供給を停止する供給停止工程とを含む、A1〜A10のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【0162】
A12.前記液膜形成工程中に、前記気相層形成工程よりも少ない熱量で前記基板を予熱する基板予熱工程をさらに含み、
前記熱量増加工程が、前記基板に与える熱量を前記基板予熱工程よりも増加させる工程である、A11に記載の基板処理方法。
A13.前記基板予熱工程が、ヒータユニットを前記基板の下面から所定距離だけ離れた離隔位置に配置して、前記ヒータユニットからの輻射熱で前記基板を加熱する工程を含み、
前記熱量増加工程が、前記基板予熱工程における前記離隔位置よりも前記ヒータユニットを前記基板の下面に接近させる工程を含む、A12に記載の基板処理方法。
【0163】
A14.前記熱量増加工程が、前記ヒータユニットを前記基板の下面に接触させる工程を含む、A13に記載の基板処理方法。
A15.前記穴開け工程が、処理液の前記基板の上面への供給を停止した後に実行される、A1〜A14のいずれか一項に記載の基板処理方法。
A16.前記気相層形成工程が、前記基板に与える熱量を増加させる熱量増加工程と、前記熱量増加工程の後に、前記基板に与える熱量を減少させる熱量減少工程と、を含み、
前記加熱排除工程が、前記熱量減少工程の後に、前記基板に与える熱量を再び増加させる再熱量増加工程を含み、
前記熱量減少工程によって前記基板に与える熱量が減少させられた状態で、前記穴開け工程が開始される、A1〜A15のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【0164】
A17.前記穴開け工程の開始と前記再熱量増加工程の開始とがほぼ同時である、A16に記載の基板処理方法。
A18.前記穴開け工程が、室温よりも高温の気体を吹き付ける工程を含む、A1〜A17のいずれか一項に記載の基板処理方法。
A19.前記処理液が有機溶剤である、A1〜A18のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【0165】
A20.基板を水平に保持する基板保持手段(5)と、
前記基板保持手段に保持されている基板の上面に処理液を供給することにより、基板の上面全域を覆う処理液の液膜を形成する処理液供給手段(35)と、
前記基板保持手段に保持されている基板を、基板の上面全域が処理液の液膜で覆われている状態で、処理液の沸点以上の温度で加熱することにより、処理液を蒸発させて、処理液の液膜と基板の上面との間に気相層を形成する加熱手段(6)と、
基板上の処理液に気体を吹き付ける気体吹き付け手段(36A)と、
基板上に前記気相層によって支持されている処理液の液膜に前記気体吹き付け手段から第1流量で気体を吹き付けて、当該液膜に穴を開ける穴開け工程と、前記加熱手段によって基板を加熱することにより前記穴を基板の外周に向かって広げ、前記気相層上で液膜を移動させて処理液を基板外に排除する加熱排除工程と、前記穴内の領域に前記気体吹き付け手段から前記第1流量よりも大きい第2流量で気体を吹き付けて前記穴を基板の外周に向かって広げることにより処理液を基板外に排除する気体排除工程とを実行する制御手段(3)とを含む、基板処理装置。なお、括弧内の数字は、前述の実施形態における対応構成要素の参照符号を表す。以下同じ。
【0166】
A21.前記基板保持手段に保持された基板を鉛直方向に沿う回転軸線まわりに回転させる基板回転手段(23)をさらに含み、
前記制御手段は、前記加熱排除工程よりも後に、前記基板回転手段によって基板を外周振り落とし速度で回転することにより、基板の外周部の処理液を基板外に振り落とす回転振り落とし工程をさらに実行する、A20に記載の基板処理装置。
【0167】
B1.水平に保持された基板の上面全域を覆う処理液の液膜を形成する液膜形成工程と、
前記基板を加熱して基板の上面に接する処理液を蒸発させ、前記基板の上面と前記処理液との間に気相層を形成し、前記気相層上に前記液膜を保持する気相層形成工程と、
前記気相層が形成された後、前記基板を静止状態に保持して、前記基板の外周へと前記液膜を移動させる液膜移動工程と、
前記液膜移動工程の後に、前記基板を鉛直な回転軸線まわりに振り落とし回転速度で回転して、前記基板の外周部に残る液膜を遠心力によって振り落とす回転振り落とし工程と、
前記回転振り落とし工程の後に、前記基板を前記回転軸線まわりに、前記振り落とし回転速度よりも高速な乾燥回転速度で回転させて基板を乾燥させる乾燥工程と
を含む基板処理方法。
【0168】
B2.基板を水平に保持する基板保持手段(5)と、
前記基板保持手段に保持された基板を鉛直方向に沿う回転軸線まわりに回転させる基板回転手段(23)と、
前記基板保持手段に保持されている基板の上面に処理液を供給することにより、基板の上面全域を覆う処理液の液膜を形成する処理液供給手段(35)と、
前記基板保持手段に保持されている基板を、基板の上面全域が処理液の液膜で覆われている状態で、処理液の沸点以上の温度で加熱することにより、処理液を蒸発させて、処理液の液膜と基板の上面との間に気相層を形成する加熱手段(6)と、
前記基板保持手段、前記基板回転手段、前記処理液供給手段および前記加熱手段を制御して、B1に記載の基板処理方法を実行する制御手段(3)とを含む、基板処理装置。
【符号の説明】
【0169】
1 :基板処理装置
2 :処理ユニット
3 :制御ユニット
5 :スピンチャック
6 :ヒータユニット
7 :昇降ユニット
10 :DIWノズル
11 :第1移動ノズル
12 :第2移動ノズル
13 :チャンバ
15 :第1ノズル移動ユニット
16 :第2ノズル移動ユニット
20 :チャックピン
21 :スピンベース
22 :回転軸
23 :電動モータ
35 :有機溶剤供給管
36A :第1不活性ガス供給管
36B :第2不活性ガス供給管
36C :第3不活性ガス供給管
36D :第4不活性ガス供給管
37 :有機溶剤バルブ
38A :第1不活性ガスバルブ
38B :第2不活性ガスバルブ
38C :第3不活性ガスバルブ
38D :第4不活性ガスバルブ
39A :マスフローコントローラ
39B :流量可変バルブ
39C :流量可変バルブ
39D :流量可変バルブ
41 :薬液供給管
43 :薬液バルブ
46 :DIW供給管
47 :DIWバルブ
62 :ヒータ
70 :中心軸線
71 :中心吐出口
72 :薬液吐出口
81 :線状吐出口
82 :平行流吐出口
83 :傾斜流吐出口(第1傾斜流吐出口)
84 :傾斜流吐出口(第2傾斜流吐出口)
85 :線状気流
86 :平行気流
87 :傾斜気流(第1傾斜気流)
88 :傾斜気流(第2傾斜気流)
100 :流体路
101 :流体入口
120 :流体路
121 :流体入口
130 :流体路
140 :撮像ユニット
150 :有機溶剤液膜
151 :穴
152 :気相層
171 :第1吐出目標位置
172 :第2吐出目標位置
A1 :回転軸線
C :キャリヤ
CR :搬送ロボット
IR :搬送ロボット
LP :ロードポート
T1 :有機溶剤リンスステップ
T2 :有機溶剤パドルステップ
T3 :持ち上げパドルステップ
T4 :保温ステップ
T5 :ステップ
T6 :ステップ
T7 :外周液落としステップ
T8 :スピンドライステップ
W :基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9
図10A-10C】
図10D-10F】
図10G-10H】
図10I
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19