(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、電動コンプレッサ6から加圧エアーの供給は、一方向から上記の放射状に配置された配管・分岐を経由して、端部の香供給口28まで供給されるため、香供給口28を各人に宛がうためには、香制御ボックス7から香供給口28までの配管構造を各人毎に設置する必要があり、設置費用が嵩張ることになる。
【0005】
設置費用が嵩張るのを抑えるには、1本の配管から配管の長さ方向で分岐して複数の観客に匂いを供給することが考えられる。しかし、1本の配管の長さ方向で分岐して匂いを供給する構造では、放香気体の供給点から近い点で分岐した放香気体の濃度は供給時の濃度との差がないが、供給点から離れるに従って放香気体の濃度が低下し、供給点から離れた位置に居る観客にとっては、匂いによる演出を十分に味わうことができないという課題が生じる。
これを解決するには、供給点からの距離に応じて放香気体を補充することも考えられるが、その補充を行う場合、別途必要となる設備費用の軽減の観点からさらなる改良が必要となる。
【0006】
本発明の目的は、上記課題を解決すべく成されたものであり、放香気体を補充することなく、供給点から離れた箇所での放香気体の濃度の低下を抑制する放香システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る、放香気体を供給する放香システムは、前記放香気体を管の長さ方向に沿って供給する配管と、前記放香気体を圧送する少なくとも2台の
同期して動作するコンプレッサと、を有し、前記2台のコンプレッサは、
前記放香気体の圧送方向が前記配管内で逆向きの方向になるように前記配管の気体供給口にそれぞれ連通され、
前記気体供給口から前記配管内に前記放香気体を
同期して圧送し、逆向きの方向の前記放香気体同士が前記配管内で混合して、前記配管内の前記放香気体の濃度の低下を抑制するものであることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る、放香システムの前記配管は、前記配管は、前記気体供給口側から長さ方向に沿って前記配管内の放香気体を分散させる
複数の分岐管を有し、
前記分岐管の内径は、前記配管の内径よりも小さいことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る、放香システムは、
複数の前記分岐管に
それぞれ連通し、前記配管から
複数の前記分岐管に分岐された前記放香気体を
それぞれ放射する放射部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、放香気体を管の長さ方向に沿って供給する配管と、前記放香気体を圧送する少なくとも2台のコンプレッサと、を有し、前記2台のコンプレッサは、前記配管の気体供給口にそれぞれ連通され、前記配管内に前記放香気体をそれぞれ供給することにより、供給点であるコンプレッサから離れた箇所で濃度が低下した放香気体を前記離れた箇所で混合させることにより、放香気体を補充することなく、放香気体の濃度を改質させることができる。
【0014】
また、少なくとも2台のコンプレッサによる前記放香気体の圧送方向を、前記配管の前記気体供給口から離れた前記配管内に向けた方向に揃えたことにより、2台のコンプレッサからの圧送による気体の流れを合流することで、供給点であるコンプレッサから離れた箇所で濃度が低下した放香気体を前記離れた箇所で混合させることになり、放香気体を補充することなく、放香気体の濃度を改質させることができる。
【0015】
本発明は、配管が、前記気体供給口側から長さ方向に沿って前記配管内の放香気体を分散させる分岐管を有し、前記コンプレッサは、前記配管の両端の気体供給口から離れた前記配管内に向けて前記放香気体を圧送することにより、複数の分岐管に同時に放香気体を送ることができる。
【0016】
また、分岐管の本数を増加したり、配管の形状を直線、曲線、円形等に配置することができ、設置に関して大規模、小規模のスペースを問わず、屋外でも使用することが可能である。また、本発明を座席に取付ける場合も大規模な演出装置や設置構造を必要としないことから、設置費用を抑えて放香を演出することが出来る。
【0017】
また、分岐管に連通し、配管から分岐管に分岐された前記放香気体を放射する放射部を有し、さらに、放射部に観客の鼻孔に接近して前記放香気体を放射する気体放射口を設けることにより、確実に各観客全員が匂いによる演出を十分に味わうことができる。
また、観客一人分の香りをそれぞれ少量だけ放香するので、放香器のコンプレッサが低出力でも、観客全員に放香することができる。また、少量だけ放香するので、空間内に香りが充満することなく使用することができる。
また、コンプレッサを駆動して、気体放射口から瞬間的に放香することができるので、映画・演劇等の上映シーンや演目と同期化して効果的な放香の演出ができる。
【0018】
また、前記放射部は、耳掛けタイプであり、鼻孔に接近して前記放香気体を放射する気体放射口を設けることで、観客は両手が空いたまま使用することができる。
【0019】
また、放香器が配管の両端部に設けられることにより、放香器に容易にアクセス可能であり、芳香剤の補充としてカートリッジの交換等のメンテナンスが容易である。
【0020】
更に、本発明の放香システムは、設置や撤去が容易であり、放香設備が必要なときにのみ、速やかに設置・撤去することが可能である。
【0021】
また、本発明に係る放香システムは、小出力のコンプレッサを使用することによって、コンプレッサの動作音を小さくすることが出来るので、観客に動作音を煩わせることなく、放香することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下図面を参照して、本発明に係る放香システムを実施するための形態について説明する。なお、本発明の放香システムは、放香気体を供給する際に供給点からの距離の如何に関わらず放香気体の濃度の変化を抑制するようにしたものである。
【0024】
図1は、本発明に係る放香システムの構成を示す図である。
図1に示すように、放香システム1は、放香気体を供給する配管5と、配管5の両端に設置された一対の放香器10、11と、配管5(本管)上に設けられて流路を分岐する三方管7と、三方管7で配管5から分岐した分岐管8と、分岐管8の端部に設けられた放射部50とからなる。
【0025】
なお、放香気体とは、芳香剤から揮散する芳香気体を含み、香り、匂いを有する気体すべてをいう。
【0026】
配管5は、中空で内部に放香気体を流通させる流路を有する中空の管である。配管5は柔軟性を有し、配管途中に三方管7を容易に接続することができる材質を用いる。例えば、ポリ塩化ビニル、ソフトポリプロピレン、等が好適である。また、配管5に柔軟性を有する材質を使用することにより、配管5の設置を直線のみならず、曲線、円形等に配置することができ、且つ撤去を容易に行うことができる。また、配管5の径の大きさは、配管5の長さ、三方管7及び分岐管8の個数、各分岐管8に圧送する放香気体の流量等から決めるようにする。
【0027】
分岐管8は、配管5から分岐し、配管5と同様に中空で内部に放香気体を流通させる流路を有する管であり、配管5と同様に柔軟性を有するポリ塩化ビニル、ソフトポリプロピレン、等の材質を用いると好適である。一端は三方管7を介して配管5に接続され、他端は観客に対して放香気体を放出する放射部50を有している。
【0028】
分岐管8の内径は、配管5の内径と同じか、小さくする。内径を小さくすると、配管5から分岐管8に流れ込む放香気体の流速を早くすることができ、放香気体を放射部50から勢いよく遠くまで放つことができる。
【0029】
放香器10、11は、配管5の気体供給口6に接続され、配管5内に放香気体を供給する機能を有する。放香器10、11は同一なものであり、放香システム1では一対の放香器10、11として動作する。
放香器10、11は、コンプレッサ20からカートリッジ13内に圧縮空気を圧送(送風)し、カートリッジ13内で霧化、揮散した芳香剤と混合し、放香気体として、配管5に圧送するものである。
【0030】
図2及び
図3を用いて放香器10,11について説明する。
図2(a)は、放香器10の外観を示す斜視図であり、カートリッジに配管を接続した状態を示す図、
図2(b)は、カートリッジのパイプ等の接続状態を示す図、
図3は、放香システムにおける放香器の構成を示すブロック図である。
【0031】
先ず、
図2(a)及び
図2(b)に示すように、配管5はカートリッジ13上部の吐出口17に接続されている。カートリッジ13の上部の流入口16には、
図3に示すコンプレッサ20からの圧縮空気を送るパイプ18が接続されている。
【0032】
図2(a)に示すように、放香器10の前面パネル12の固定を外して、前面パネル12を点線で示すように手前に倒すことにより、カートリッジ13が露出する。
【0033】
次に、
図3は、放香システムにおける放香器の構成を示すブロック図を用いて説明する。放香システム1における放香器10、11は、放香気体として、例えば、芳香剤の霧化した気体を配管5に圧送(送風)するものである。
【0034】
図3に示すように、放香器10、11は、カートリッジ13と、コンプレッサ20と、駆動部22と、制御部25とから構成されている。カートリッジ13は、例えば、芳香剤14を収納してコンプレッサ20からの圧縮された空気が流入する流入口16と、霧化した芳香剤を外部に吐き出す吐出口17とを有している。吐出口17は配管5の気体供給口6に接続される。
【0035】
カートリッジ13は、内部に芳香剤14が収容される容器であり、例えば、ポリ塩化ビニル、ソフトポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、等の合成樹脂の成形、ガラス等によって構成される。内部の芳香剤14が減少、劣化した場合は、カートリッジ13そのものを放香器10から取り出して交換する。
【0036】
カートリッジ13の交換について説明する。取り出し方法として、カートリッジ13とコンプレッサ20とをつなぐパイプ18を流入口16から外し、及び吐出口17と気体供給口6(配管5)の接続を外す。取り付け方法として、新たなカートリッジ13本体を放香器10の所定の位置に挿入して固定し、新たなカートリッジ13とコンプレッサ20とをつなぐパイプ18を流入口16に接続し、及び吐出口17と気体供給口6(配管5)を接続する。これにより、放香器10のカートリッジ13の交換は、容易に行うことができる。
【0037】
芳香剤14は、芳香成分を含有した液体であり、カートリッジ13内で霧化、揮散がされる。液体を霧状にして微粒子化し、例えば、粒子を10マイクロメートル程の大きさにして、コンプレッサ20から圧送された空気と放香成分が混合して放香気体となる。
【0038】
尚、芳香剤14は、液体の芳香材料に限らず、芳香成分が揮散する芳香材料であってもよい。例えば、芳香剤14として、常温で芳香成分が揮散する液体状の芳香材料を、ビーズ状、ジェル状、又は、保持剤に含浸させた状態でカートリッジに収容するようにしてもよい。芳香剤14の収容状態は、芳香成分の揮散を妨げなければその形態は限定されず、例えばゲル化剤を添加することによってビーズ状又はジェル状とし、また、シリカゲル、不織布、フェルト、紙材などの保持剤に含浸させるようにしてもよい。
【0039】
流入口16は、パイプ18を介してコンプレッサ20と接続されている。これにより、カートリッジ13内の流入口16と霧化した芳香成分を含む気体が流れる流路とが互いに連通する。
【0040】
カートリッジ13の吐出口17は、気体供給口6と接続され、配管5に連通している。これにより、カートリッジ13の気化した芳香剤14が空気と混合し、放香気体として配管5に供給される。
【0041】
このようにして、放香器10、11のコンプレッサ20から、パイプ18、カートリッジ13の流入口16、吐出口17、気体供給口6及び配管5とがつながって流路を構成しており、この流路には気体が満たされている。コンプレッサ20を駆動すると、流路の気体に対して所定の圧力が加わるため、カートリッジ13の吐出口17から外部の配管5へ圧送される気体の流れが生じる。
【0042】
また、放香システム1においては、コンプレッサ20が駆動されたときに流路内の気体が加圧され、これによって芳香成分を含んだ気体が外部へ圧送されるが、コンプレッサ20が駆動されていない期間には加圧されないため、芳香剤14の流出を抑えることができる。
【0043】
コンプレッサ20は、カートリッジ13に圧縮空気を供給する。コンプレッサ20は、制御部25からの信号によって、カートリッジ13への圧縮空気の供給、停止を行う。コンプレッサ20を必要時のみ駆動させることによって、カートリッジ13への圧縮空気を供給するので、芳香剤14が短期間に減少したり、空気に触れることで経時的な匂いの変化を極小化することができ、カートリッジ13(芳香剤14)の交換までの期間を長くすることができる。
【0044】
制御部25は、タイマ等を内蔵した制御回路を有し、入力装置(図示せず)によりコンプレッサ20の駆動の開始、駆動時間、停止動作の時間等が設定されている。制御部25は、設定された内容に基づいて駆動部22を介してコンプレッサ20を制御する。駆動部22は、制御部25からの信号に基づいてコンプレッサ20の始動、停止を行う。
【0045】
また、制御部25は、コンプレッサ20の出力を調整して、圧送する圧縮空気の圧力、流量を可変することにより、カートリッジ13から放出される芳香剤の濃度を変えることができる。また、制御部25は、外部の発信機からのリモート信号によりコンプレッサ20の駆動、開始、駆動時間、停止動作を行うことを可能としてもよい。
【0046】
以上、放香器10にカートリッジ13を1個搭載する例を説明したが、放香器10に複数個のカートリッジ13を搭載し、制御部25でコンプレッサ20から圧送する先のカートリッジ13を切り替えて、複数の芳香剤14を使い分けるようにしてもよい。
【0047】
次に、放香システム1の動作原理について
図4を用いて説明する。
図4は、放香システムにおける動作の流れを示すフローチャートである。
【0048】
図4に示すように、最初に放香器10、11に同時にトリガ信号が発せられ、放香器10、11の制御部25に出力される(ステップS1)。トリガ信号は、外部の装置(図示せず)からの信号であって、例えば、映画の画像投影機が所定の上映シーンに近づいたときに、これに連動して放香器10、11の制御部25へトリガ信号が出力される。
【0049】
次に制御部25は、トリガ信号に基づいて指示信号を駆動部22へ出力する(ステップS2)。そして、駆動部22は、駆動信号をコンプレッサ20へ出力する(ステップS3)。この駆動信号は、トリガ信号を受けた制御部25からの指示信号にしたがって発生する信号であって、例えばオン・オフを示す矩形波の信号である。
【0050】
コンプレッサ20は、駆動信号を受信することによって駆動され、駆動信号を受信し、圧縮空気(気体)を流路に圧送する(ステップS4)。
【0051】
制御部25は、トリガ信号がオフしたことを検知してコンプレッサを停止する信号を駆動部22に出力する(ステップS5)。
【0052】
このように、放香システム1における一対の放香器10、11は同期して動作するようになっており、制御部25によって、所定のタイミングでコンプレッサ20が駆動されてコンプレッサ20から圧送された気体は、パイプ18を介して流入口16、流路に流入し、流路と、カートリッジ13内で芳香成分と混合されて、吐出口17から芳香成分を含んだ気体が圧送される。例えば、映画で前もって設定した放香する上映シーンに達する直前に映像投影機からトリガ信号が放香器10、11の制御部25に信号を出力されて、配管5に芳香成分を含んだ気体が圧送される。
【0053】
次に、上記構成からなる放香システム1が放香気体を供給する際に供給点からの距離の如何に関わらず放香気体の濃度の変化を抑制することについて
図5を用いて説明する。
図5(a)(b)は、放香システムにおける配管の長さ方向での濃度の変化について説明する図である。
【0054】
図5(a)は、1本の配管5に一端の気体供給口6からのみコンプレッサ20で放香器10から揮散した放香気体を圧送した際に、コンプレッサ20側の供給点に近い配管5中における放香気体の濃度は供給時の濃度に保たれるが、配管5の長さ方向で順次分岐させた分岐管8から放香気体を順次放出すると、配管5の一端の気体供給口6から離れた箇所では放香気体の濃度が低下する傾向にある。
【0055】
図5(a)に示すように、コンプレッサ20で一端の気体供給口6のみから放香気体を供給する構造では、一端の気体供給口6から離れた箇所では放香気体の濃度が低下し、配管5内部の放香気体の濃度分布にばらつきが生じる。
つまり、放香気体の供給点である放香器10,11から近い点で配管5から分岐した分岐管8に流入する放香気体の濃度は供給時の濃度との差がないが、供給点から離れるに従って放香気体の濃度が低下し、供給点から離れた点で配管5から分岐した分岐管8に流入する位置に居る観客にとっては、匂いによる演出を十分に味わうことができないという課題が生じる。
【0056】
本発明では
図5(b)に示すように、2台のコンプレッサ20,20を配管5の両端の気体供給口6,6にそれぞれ連通し、配管5内に放香気体をそれぞれ供給する。その際、前記少なくとも2台のコンプレッサ20,20による放香気体の圧送方向を、配管5の気体供給口6,6から離れた配管5内に向けた方向に揃える、具体的には配管5が気体供給口6側から長さ方向に沿って配管5内の放香気体を分散させる分岐管8,8・・・を有しているため、コンプレッサ20で配管5の両端の気体供給口6,6から離れた配管5内に向けて放香気体を圧送している。2台のコンプレッサ20,20による放香気体の圧送方向を、配管5の両端の気体供給口6,6から離れた配管5内に向けた方向に揃えることが必要である。
【0057】
以上の構成を採用することにより、放香器10、11のコンプレッサ20から配管5の流路内へ気体供給口6から離れた配管5内に向けた方向へ放香気体の圧送を行うと、配管5の両端の気体供給口6から離れた配管5内で放香気体の濃度が低下する傾向にあるが、放香気体の圧送方向が配管5の気体供給口6から離れた方向で逆向きに設定されているため、濃度が低下した放香気体同士が配管5の気体供給口6から離れた配管5内で混合することになる。濃度が低下した放香気体同士が気体供給口6から離れた配管5内で混合することになり、配管内での放香気体の濃度が改質されることになる。以上のように、放香気体が混じり合うことにより、配管5の流路内での放香気体の濃度の低下を抑制することができる。
【0058】
このように、供給点から離れた箇所での放香気体の濃度の低下を抑制し、放射部50から観客が感じることができる濃度で放香することにより、観客はどの放射部50を使用しても匂いによる演出を十分に味わうことができる。
【0059】
[実施例]
以下、本発明の実施例として、映画館・劇場で観客が着席する座席に、放香システム1を設置した例を、
図6乃至
図8を用いて説明する。
【0060】
図6は、映画館で使用する放香システム1の構成を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図7(a)は、放射部としての耳フックタイプの構成を示す図、
図7(b)は、メガネ(ゴーグル)形状を示す図である。
【0061】
図6(a)に示すように、放香システムにおける放香気体を供給する配管5は、例えば、映画館におけるスクリーンと水平状態に設置された複数の座席(観座席)40の横1列に沿って設置されている。また、
図6(a)、(b)に示すように、座席40の両端外側、もしくは両端座席下には、配管5の両端(気体供給口6)に接続された放香器10、11が設置されている。映画館等であれば、放香器10、11は座席列の間の通路、階段等に設置できるが、座席下に設置する方が邪魔にならず、安全面から見てもより好適である。座席40の個数は特に限定されるものではなく、分岐管8と同じく2個以上であればよく、座席40が多く、配管5が長い場合には、配管5に接続する放香器10の数を増やしてもよい。
【0062】
配管5は、例えば、座席40下方の床面に設置されている。配管5の座席40毎にT字型の三方管7が設けられており、三方管7の1方路は、放香気体を座席40に流す分岐管8に接続されている。分岐管8は座席40の背面に設置され、観客の頭部付近に引き出されるように設置される。分岐管8の先端には、放香気体を放射する放射部50が設けられている。
【0063】
このように、映画館における放香システム1は、配管5が座席40下方の床面に設けられており、放射部50は座席40の背面から引き出されているため、従来の座席のレイアウト等を変更することなく設置することができる。また、配管5の設置位置はこれに限られるものではなく、座席40の背面等、設置場所の形状等や状況に応じて設置するようにしてもよい。
【0064】
次に、放香気体を放香する放射部50について
図7を用いて説明する。
図7(a)は、放射部としての耳フックタイプの構成を示す図、
図7(b)は、耳フックタイプの別の形状の使用例を示す図である。
【0065】
図7(a)に示すように、放射部50は、チューブ59が分岐管8の先端部に接続具(図示せず)等で接続されている。係員又は観客は、座席40に着席時に、分岐管8と放射部50の接続をする。あるいは、あらかじめ分岐管8とチューブ59が一体で固定されている形状のものでも良い。
【0066】
図7(a)に示すように、放射部50としての耳フックタイプ55は、耳の外周に沿ってチューブを掛ける耳掛け式である。耳掛け部58の先端から延伸される変形可能な放射チューブ57で形成することにより、気体放射口である放出口56が鼻孔付近に位置するように、観客が調整できることが望ましい。
【0067】
放香器10、11からの放香気体は、配管5、三方管7、分岐管8に連接されたチューブ59、及び放射チューブ57を経由して耳フックタイプ55の放出口56から放香される。これにより、映画の上映シーンに同期して放香することにより、観客は匂いによる演出を十分に味わうことができる。
【0068】
また、放射部50は、
図7(b)に示す、メガネ(ゴーグル)タイプであってもよい。
図7(b)は、放射部としてのメガネタイプの構成を示す図である。
図7(b)に示すように、メガネ(ゴーグル)タイプ65は、例えば、立体映像用のメガネフレームのテンプル68にチューブの一部が固定されて、変形可能な放射チューブ67を変形させて放出口66が鼻孔付近に位置するように調整可能である。
【0069】
また、放出口66には、放香気体を放出/遮断する開閉バルブ69を備えるようにしてもよい。これにより、放香気体を嗅ぐことを避けたい観客は開閉バルブ69を閉じて、放香しないようにすることができる。
【0070】
尚、開閉バルブ69の設置位置は限定するものではなく、分岐管8の端部や、チューブ59の途中等、観客が座席40内で着席したまま容易に操作できる範囲内に設けるようにしてもよい。また、
図7(a)の耳フックタイプの放射部50に設けてもよい。
【0071】
尚、観客の鼻孔に接近して放香気体を放射する放射部は、耳フックタイプ、メガネ(ゴーグル)タイプについて述べたが、耳フックタイプ、メガネ(ゴーグル)タイプの形状はこれに限定するものではなく、観客の鼻孔に放香気体を放射できるものであればよい。また、遊園地等での遊戯機で着用するヘルメット内に放射部を設けるようにしてもよい。
【0072】
次に、
図6に示す映画館における放香システム1の動作について説明する。
まず、制御部25(
図3に示す、以下同じ)にトリガ信号を送るタイミングをあらかじめ決定しておく。例えば、映画の1シーンに合わせて放香する時間を決めておく。その時間に合わせて放香器10、11のそれぞれの制御部25にトリガ信号を送るタイマ装置(図示せず)や、リモート信号を送るようにする。トリガ信号には、圧送の時間や、間隔、圧送の空気量の指示を含めるようにする。
【0073】
前記の映画で放香の上映シーンになると、放香器10、11のそれぞれの制御部25に対して同時にトリガ信号が送信される(
図4に示すステップS1)。
【0074】
次に放香器10、11のそれぞれの制御部25は、前記トリガ信号に基づいて指示信号を駆動部22(
図3に示す、以下同じ)へ出力する(
図4に示すステップS2)。そして、駆動部22は、駆動信号をコンプレッサ20へ出力する(
図4に示すステップS3)。この駆動信号は、前記トリガ信号を受けた制御部25からの指示信号にしたがって発生する信号であって、例えばオン・オフを示す矩形波の信号である。
【0075】
コンプレッサ20は、駆動信号を受信することによって駆動され、駆動信号を受信し、所定の時間、空気量である圧縮空気(気体)を流路であるパイプ18(
図3に示す)に圧送する(
図4に示すステップS4)。
【0076】
制御部25は、トリガ信号がオフしたことを検知してコンプレッサ20を停止する信号を駆動部22に出力する(
図4に示すステップS5)。
【0077】
図1及び
図3に示すように、コンプレッサ20から圧送された圧縮空気は、パイプ18を通過して、カートリッジ13の流入口16から、カートリッジ13の内に入る。圧縮空気はベルヌーイの法則により、芳香剤14を筒状部で流入口16近傍まで吸い上げ、霧吹きの原理で芳香剤14をカートリッジ13内の空気中に霧散させる。また、芳香剤14が自然に揮散した放香剤も圧縮空気と混合し、放香気体となり、放香気体に含まれる芳香剤の濃度が増すことになる。そして、放香気体がカートリッジ13内から吐出口17へ圧送され、気体供給口6を経由して配管5に放香気体が圧送される。この時、供給点である放香器10、11から同時に圧送される放香気体の圧送方向を、供給点から離れた分岐管8に向けた方向に揃えて圧送ことにより、配管5の流路内で放香器10、11から同時に圧送された放香気体が混合することになる。
【0078】
そして、分岐管8から放射部50に放香気体が流入し、
図7(a)(b)に示す放射部50の先端である放出口56から放香気体が、観客の鼻孔付近に放香される。
【0079】
このように、放香を行いたい上映シーンでのトリガ信号の送信から、観客の鼻孔付近への放香までの処理を瞬間的に実行することができるので、放香を行いたい映画や演劇、音楽等の上映シーンや演目と、放香のタイミングに時間差が無く同期化して効果的な放香の演出ができる。また、分岐管8ごとの濃度の変化を改質できるため、観客はどの座席40にすわっても、匂いによる演出を十分に味わうことができる。
【0080】
また、観客一人分の香りを少量だけ放出口56から放香すればよく、放香器10のコンプレッサ20が低出力でも、総ての放出口56(分岐管8)に対して放香することができる。また、放出口56からは一人が嗅ぎ取れる程度に少量だけ放香するので、空間内に香りが充満することなく使用することができる。
【0081】
また、小出力のコンプレッサを使用することによって、コンプレッサの動作音を小さくすることが出来るので、観客に動作音を煩わせることなく、放香することが出来る。
【0082】
また、放射部50は、耳掛けタイプであり、観客は両手が空いたまま、鼻孔に接近して放香気体を放射する放出口56(気体放射口)を支持することができる。
【0083】
また、放香器が配管の両端部に設けられることにより、放香器に容易にアクセス可能であり、カートリッジ13の交換等のメンテナンスが容易である。
また、放香器10,11を座席40の端部に設置することにより、観客の妨げにならずに、カートリッジ13の交換が可能になる。
【0084】
また、カートリッジを短時間で交換することが可能なため、例えば、映画の上映中にカートリッジ13を交換し、複数の放香を行うこともでき、映画館でのコマーシャル用にも使用することができ、効果的に宣伝することができる。
[実施例2]
【0085】
前述のように、配管5に柔軟性を有する材質を使用することにより、配管5の設置を直線のみならず、曲線、円形等に配置することができる。以下に、他の実施形態としての放香システムについて
図8を用いて説明する。
図8は、放香システムにおける他の実施形態の構成を示す図である。
【0086】
図1及び
図6に示す放香システム1は、配管5は直線的に設けられており、配管5の両端である通路側に放香器10、11が設置されている。このため、配管5のカートリッジ13の交換に一方の通路に移動後、他の通路に移動して他のカートリッジ13を交換する必要がある。
【0087】
これに対して、同一通路側に一対の放香器10、11を設置して、メンテナンス等の効率を上げることが可能である。
【0088】
図8に示すように、放香システム100の配管105は、2列の座席40をU字形に配置させている。即ち、配管105の約半分の長さは1列目の座席40に設けられて、配管105の長さの中央付近で湾曲して次の座席40で湾曲して2列目の座席40を通って配管105の先端が戻ってくる。配管105の両端部の気体供給口106から配管内に放香気体をそれぞれ供給する放香器10、11に接続する。
【0089】
このように、配管をU字形に配置することにより、同一通路側に一対の放香器が設置されているため、直線的に配置されている配管に比べて、メンテナンス等が容易となる。
【0090】
上述のように、放香システム1について、映画館における実施形態について述べたが、本発明に係る放香システムは、映画館に限らず配管5から複数の分岐管8が分岐し、放香器10が配管5の両端から放香気体を圧送可能な配置であれば、座席の配置を、直線、曲線、円形等に配置してもよく、また、配管5から分岐する分岐管8の数によって、大規模、小規模のスペースを問わず、使用することが可能である。
【0091】
以上の実施形態では、1本の配管5を用い、その配管5の両端の気体供給口6から離れた配管5内での放香気体の濃度が低下するのを回避する構成について説明したが、これに限られるものではない。例えば、少なくとも2本以上の配管5の一端の気体供給口6にコンプレッサ20を連通させ、複数の配管5の他端の気体供給口6を互いに連通させた構成を採用してもよいものである。この場合、配管5の一端の気体供給口6から少なくとも2台以上のコンプレッサ20で放香気体をそれぞれの配管5内に圧送することになるが、少なくとも2台のコンプレッサ20による放香気体の圧送方向を、複数の配管5を連通させた箇所に向けて揃えることが必要である。
【0092】
この発明は、その本質的特性から逸脱することなく数多くの形式のものとして具体化することができる。よって、上述した実施形態は専ら説明上のものであり、本発明を制限するものではないことは言うまでもない。