特許第6566440号(P6566440)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6566440岸壁クレーンおよび岸壁クレーンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6566440
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】岸壁クレーンおよび岸壁クレーンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 19/00 20060101AFI20190819BHJP
   B66C 5/04 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
   B66C19/00 B
   B66C5/04
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-243000(P2015-243000)
(22)【出願日】2015年12月14日
(65)【公開番号】特開2017-109804(P2017-109804A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2018年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】518126144
【氏名又は名称】株式会社三井E&Sマシナリー
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】堀江 雅人
【審査官】 羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−214388(JP,A)
【文献】 特開2015−193464(JP,A)
【文献】 特開平11−157777(JP,A)
【文献】 特開平11−292463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 19/00−23/94
B66C 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚構造体と、この脚構造体に海陸方向に移動可能に支持されるスライド式ブームとを備える岸壁クレーンにおいて、
前記スライド式ブームのブーム下端またはブーム上端に前記海陸方向に沿って配置される受け部材と、前記脚構造体に設置されていて前記受け部材を上下方向から挟み込む状態で支持するとともに前記スライド式ブームを前記海陸方向に摺動可能な状態で支持する支持体とを備えていて、
前記スライド式ブームの前記ブーム上端と前記ブーム下端の上下距離がブーム海側端部において海側端に向かって小さくなっていることを特徴とする岸壁クレーン。
【請求項2】
前記海陸方向を直角に横断する方向における前記スライド式ブームの幅が、前記ブーム海側端部において海側端に向かって小さくなる状態に構成される請求項1に記載の岸壁クレーン。
【請求項3】
前記スライド式ブームの海側端に向かって下り傾斜となる状態に構成される前記ブーム上端と、このブーム上端に沿って配置される前記受け部材とを備えていて、
前記スライド式ブームを陸側に移動させたときに前記スライド式ブームの陸側端が下方に下がる構成を備える請求項1または2に記載の岸壁クレーン。
【請求項4】
前記受け部材の上方または下方の一方に配置される前記支持体を上下方向に移動可能に支持するバネ機構を備える請求項1〜3のいずれかに記載の岸壁クレーン。
【請求項5】
海陸方向に移動可能な状態でスライド式ブームを脚構造体に配置する岸壁クレーンの製造方法において、
前記スライド式ブームのブーム下端またはブーム上端に前記海陸方向に沿って受け部材を配置して、この受け部材を上下方向から挟み込む状態で支持するとともに前記スライド式ブームを前記海陸方向に摺動可能な状態で支持する支持体を前記脚構造体に設置して、
前記スライド式ブームの前記ブーム上端と前記ブーム下端の上下距離がブーム海側端部において海側端に向かって小さくなる状態に前記スライド式ブームを形成することを特徴とする岸壁クレーンの製造方法。
【請求項6】
前記海陸方向を直角に横断する方向における前記スライド式ブームの幅が前記ブーム海側端部において海側端に向かって小さくなる状態に前記スライド式ブームを形成する請求項5に記載の岸壁クレーンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は海陸方向に移動可能に支持されるスライド式ブームを備えた岸壁クレーンおよび岸壁クレーンの製造方法に関するものであり、詳しくは岸壁クレーンが設置される区域で設定されている高さ制限を超えない高さでありつつ、十分な揚程を確保することができる岸壁クレーンおよび岸壁クレーンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脚構造体に移動可能に支持されるスライド式ブームを備えていて、空港の近傍など高さ制限のある区域で使用される岸壁クレーンが種々提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1は、コンテナ船の接岸時には陸側にスライドさせてコンテナ船の接岸完了後に海側にスライドさせるスライド式ブームを備える岸壁クレーン(ロープロファイルクレーンということもある)を提案する。
【0003】
近年、コンテナ船の大型化にともないロープロファイルクレーンの脚構造体を大型化してスライド式ブームの設置位置を高くしたり、スライド式ブームを長くしたりすることが求められている。
【0004】
スライド式ブームを長く構成した場合、スライド式ブームの海側端部にトロリが移動したり、トロリがコンテナを吊上げたりすると、トロリやコンテナの重量によりスライド式ブームがたわんで海側端部が下がる可能性がある。
【0005】
スライド式ブームの下方で荷役作業を行なうことができる領域の高さ(揚程ということがある)を確保するには、スライド式ブームのたわみを考慮して予めブームの海側端部を上方に反った形状(キャンバーを有する形状ということもある)に製造することが考えられる。この場合、上方に反ったブームの海側端部が高さ制限を超えてしまう可能性がある。そのため高さ制限のある区域に設置するロープロファイルクレーンを大型化することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−196552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は岸壁クレーンが設置される区域で設定されている高さ制限を超えない高さでありつつ、十分な揚程を確保することができる岸壁クレーンおよび岸壁クレーンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の岸壁クレーンは、脚構造体と、この脚構造体に海陸方向に移動可能に支持されるスライド式ブームとを備える岸壁クレーンにおいて、前記スライド式ブームのブーム下端またはブーム上端に前記海陸方向に沿って配置される受け部材と、前記脚構造体に設置されていて前記受け部材を上下方向から挟み込む状態で支持するとともに前記スライド式ブームを前記海陸方向に摺動可能な状態で支持する支持体とを備えていて、前記スライド式ブームの前記ブーム上端と前記ブーム下端の上下距離がブーム海側端部において海側端に向かって小さくなっていることを特徴とする。
【0010】
本発明の岸壁クレーンの製造方法は、海陸方向に移動可能な状態でスライド式ブームを脚構造体に配置する岸壁クレーンの製造方法において、前記スライド式ブームのブーム下端またはブーム上端に前記海陸方向に沿って受け部材を配置して、この受け部材を上下方向から挟み込む状態で支持するとともに前記スライド式ブームを前記海陸方向に摺動可能な状態で支持する支持体を前記脚構造体に設置して、前記スライド式ブームの前記ブーム上端と前記ブーム下端の上下距離がブーム海側端部において海側端に向かって小さくなる状態に前記スライド式ブームを形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スライド式ブームは海側端に向かって先細となるので、重量が軽くなる。またスライド式ブームを構成する柱状の部材は、海側端に向かって密に配置されることになるので剛性が向上する。スライド式ブームは海側端に向かって重量が軽くなり剛性が向上してたわみにくくなるので、十分な揚程を確保するには有利である。
【0012】
スライド式ブームが、ブーム海側端部においてブーム上端とブーム下端の上下距離が海側端に向かって小さくなるテーパー部と、このテーパー部より陸側においてブーム上端とブーム下端の上下距離が一定となる基礎部とを備える構成にすることができる。
【0013】
脚構造体に設置されてスライド式ブームを海陸方向に移動可能な状態に支持する支持体を備えていて、この支持体に支持されるスライド式ブームの支持位置がブーム上端に沿って設定されている構成にすることができる。
【0014】
スライド式ブームを陸側に移動させたとき支持体がテーパー部のブーム上端を支持するので、スライド式ブームの陸側端を下げることができる。岸壁クレーンの陸側に高さ制限が設定されている場合にこの高さ制限を超えにくくするには有利である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の岸壁クレーンの作業状態を例示する説明図である。
図2図1の岸壁クレーンの休止状態を例示する説明図である。
図3図2の岸壁クレーンをAA矢視で例示する説明図である。
図4図1のスライド式ブームを例示する説明図である。
図5】比較例1の岸壁クレーンを例示する説明図である。
図6】比較例2の岸壁クレーンを例示する説明図である。
図7】本発明の岸壁クレーンの実施例1を例示する説明図である。
図8】本発明の岸壁クレーンの実施例2を例示する説明図である。
図9】スライド式ブームの変形例を例示する説明図である。
図10図9のスライド式ブームの休止状態を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の岸壁クレーンおよび岸壁クレーンの製造方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。尚、図中では岸壁クレーン1の走行方向を矢印y、走行方向yに対して直角に横断する横行方向を矢印x、上下方向を矢印zで示している。
【0017】
図1図3に例示するように本発明の岸壁クレーン1は、一対の海側脚2と一対の陸側脚3とこれらの脚をそれぞれ連結する複数の水平部材とを有する脚構造体4と、この脚構造体4の下端に設置される走行装置5とを備えている。この走行装置5により岸壁クレーン1は走行方向yに走行することができる。
【0018】
岸壁クレーン1は、脚構造体4の上方に配置され海陸方向(横行方向x)に延設されるスライド式ブーム6と、このスライド式ブーム6に沿って横行方向xに横行可能に配置されるトロリ7とを備えている。トロリ7の下方には、コンテナcを把持する吊り具(以下、スプレッダということもある)8が懸吊されている。
【0019】
図3に例示するように脚構造体4にはスライド式ブーム6を支持する支持体9が設置されている。この支持体9は、間隔をあけた状態で上下方向zに配置される例えば複数のロ
ーラ10で構成することができる。このローラ10は、スライド式ブーム6のブーム下端11に水平方向外側に突設される受け部材12を上下方向から挟み込むことにより、スライド式ブーム6を支持する。支持体9は例えば海側脚2の近傍と陸側脚3の近傍に配置することができる。
【0020】
スライド式ブーム6はブーム海側端部L1において細くなる状態に形成されている。図1に例示するように本明細書においてブーム海側端部L1の範囲は、横行方向xにおけるスライド式ブーム6の全長L0に対して海側端から10〜70%の範囲、望ましくは20〜60%の範囲をいう。この実施形態では、ブーム海側端部L1を全長L0の55%としている。岸壁クレーン1が作業状態であるとき、ブーム海側端部L1の全体が海側脚2よりも海側に位置するように構成している。
【0021】
図4に例示するようにスライド式ブーム6のブーム海側端部L1は、海側端に向かってブーム上端13とブーム下端11との上下距離hが小さくなる状態に形成されている。図4ではスライド式ブーム6の海側端における上下距離をh1で示している。本明細書において、ブーム上端13とはスライド式ブーム6を走行方向yに沿って見通したときに上端となる部分をいい、ブーム下端11とはスライド式ブーム6を走行方向yに沿って見通したときに下端となる部分をいう。
【0022】
本実施形態では、ブーム下端11は横行方向xに水平となる状態で伸びている。受け部材12はこのブーム下端11に沿って横行方向xに延設されている。ブーム上端13は、スライド式ブーム6の海側端に向かって下り傾斜となる状態で伸びている。ブーム上端13の下り傾斜の勾配は例えば0.5〜2.0%であり、この場合ブーム上端13は海側に1m進むごとに0.5〜2.0cm下がることになる。
【0023】
本発明において先細の状態となるテーパー部14の構成は上記に限定されない。例えばブーム上端13が横行方向xに水平となる状態で形成され、ブーム下端11がスライド式ブーム6の海側端に向かって上り傾斜となる状態で形成されてもよい。
【0024】
スライド式ブーム6のブーム海側端部L1より陸側では、ブーム上端13とブーム下端11との間の距離である上下距離hが一定となる状態に形成されている。図4では一定となる上下距離をh2で示している。以下、スライド式ブーム6において、海側端部L1に相当する部分をテーパー部14といい、このテーパー部14よりも陸側に位置して上下距離h2が一定となる部分を基礎部15という。
【0025】
図3に例示するようにスライド式ブーム6の走行方向yにおける長さ(以下、幅ということがある)は、スライド式ブーム6の海側端から陸側端に至る全範囲において一定であることを前提とする。ただし製作誤差は許容するものとする。
【0026】
次に岸壁クレーン1の動作について説明する。図1に例示するように岸壁16に接岸したコンテナ船17からコンテナcを下ろしたりコンテナ船17にコンテナcを積み込んだりする作業時には、スライド式ブーム6は海側に移動して突出した状態(以下、作業状態ということがある)となる。
【0027】
スライド式ブーム6の下方であって、トロリ7がコンテナcの荷役作業を行なうことのできる高さを揚程Hという。本明細書では、スプレッダ8が移動可能となる上端位置から船倉18の下端位置までの距離を揚程Hで示している。図1では説明のため船倉18の内部および船倉18に配置されるコンテナcを破線で示している。
【0028】
岸壁クレーン1とコンテナ船17との間でコンテナcの受け渡しを完了した後には、図
2に例示するようにスライド式ブーム6は陸側に移動した状態(以下、休止状態ということがある)となる。スライド式ブーム6を陸側に移動させることにより、コンテナ船17は、船橋をスライド式ブーム6と干渉させることなく岸壁16から離岸することができる。
【0029】
図1に例示するように岸壁クレーン1が設置される区域で設定されている高さ制限Pを説明のため一点鎖線で示している。海側から陸側に向かって高くなる状態で斜めに伸びる高さ制限Pに対して、テーパー部14が先細の状態となっているので高さ制限Pを超えにくくすることができる。テーパー部14のブーム上端13が海側から陸側に向かって高くなる状態で形成されているので、高さ制限Pを超えない範囲で岸壁クレーン1を大型化するには有利である。
【0030】
図4に例示するようにスライド式ブーム6は、先細の状態に形成されているので横行方向xに直交する平面内におけるスライド式ブーム6の断面積Sは比較的小さくなる。本明細書においてスライド式ブーム6の断面積Sとは、横行方向xに直交する平面内においてブーム上端13とブーム下端11とこれらの端部を結ぶ一対のブーム側端19とで囲まれる面積をいう。図4では、テーパー部14の海側端の断面積をS1で示して、基礎部15の断面積をS2で示している。
【0031】
スライド式ブーム6の海側端に近い位置ほど、断面積Sの大きさに対して、スライド式ブーム6を構成する柱状の部材が密に配置されるので、スライド式ブーム6の剛性が向上する。またスライド式ブーム6の海側端に近い位置ほど、スライド式ブーム6を構成する柱状の部材が使用される量が少なくなるので重量が軽くなる。
【0032】
スライド式ブーム6は海側端に近い位置ほど剛性が向上して重量が軽くなるのでたわみにくくなる。スライド式ブーム6がたわむことにより揚程Hが小さくなる不具合が生じにくいので、十分な大きさの揚程Hを確保するには有利である。
【0033】
図5に例示する比較例1の岸壁クレーン1Xは、ブーム上端13とブーム下端11の上下距離hが陸側端から海側端にかけて一定のスライド式ブーム6Xを有している。トロリ7がスライド式ブーム6Xの海側端に移動してコンテナcを吊上げると海側端に荷重が集中するため、スライド式ブーム6Xにたわみが発生する。図5では説明のためたわみが発生した際のスライド式ブーム6Xの状態を破線で示している。
【0034】
たわみによりスライド式ブーム6Xの海側端が下方に下がるので、揚程Hが小さくなってしまう。このような岸壁クレーン1Xは、揚程Hを超える範囲にコンテナcを搭載したコンテナ船17に対して荷役作業を行うことができない。
【0035】
図6に例示する比較例2の岸壁クレーン1Yは、海側端部を予め上方に反った形状(キャンバーを有する形状)形成されたスライド式ブーム6Yを有している。キャンバーの大きさは、荷役作業にともないスライド式ブーム6Yにたわみが発生したときにスライド式ブーム6Yの海側端部が水平となるように決定されている。図6では説明のためたわみが発生した際のスライド式ブーム6Yの状態を破線で示している。
【0036】
比較例2の岸壁クレーン1Yは、荷役作業時に揚程Hが小さくなる不具合を回避できるものの、スライド式ブーム6Yがたわんでないときに海側端が高さ制限Pを超えてしまう不具合がある。
【0037】
図7に例示する本発明に係る実施例1は、スライド式ブーム6にたわみが発生していないときにブーム下端11が水平となり、ブーム上端13が海側端に向かって下がる状態に
構成されるスライド式ブーム6を有している。図7では説明のためたわみが発生した際のスライド式ブーム6の状態を破線で示している。
【0038】
先細の状態となるスライド式ブーム6は、海側端に近づくほど断面積Sが小さくなり重量が軽くなるので、たわみが発生したとしても比較例1に比べて小さくなる。たわみを小さく抑制できるので、揚程Hがほとんど小さくならない。十分な揚程Hを確保するには有利である。
【0039】
スライド式ブーム6の海側端部における剛性向上と軽量化により、実施例1の岸壁クレーン1は、大型化にともないスライド式ブーム6の全長が長くなった場合であってもたわみを抑制できるので有利である。
【0040】
図8に例示する本発明に係る実施例2は、海側端部にキャンバーを有する形状に形成したスライド式ブーム6を有している。キャンバーの大きさは、スライド式ブーム6にたわみが発生したときに、スライド式ブーム6のブーム下端11が水平となるように決定されている。図8では説明のためたわみが発生した際のスライド式ブーム6の状態を破線で示している。
【0041】
実施例2の岸壁クレーン1は、先細の状態となる形状によりたわみにくいので、キャンバーを比較例2に比べて小さく設定しても揚程Hを十分に確保できる。そのため実施例2の岸壁クレーン1は、大型化にともないスライド式ブーム6の全長が長くなった場合であっても、キャンバーを比較的小さく設定できるので高さ制限Pを超えにくい。
【0042】
テーパー部14が海側端に向かって先細りしているため、比較例2に比べてキャンバーを大きく設定しても高さ制限Pを超えにくい。キャンバーの拡大により許容できるたわみ量が大きくなるので、テーパー部14を構成する柱状の部材をさらに減らして軽量化するには有利である。
【0043】
実施例1および実施例2に示すように本発明に係る岸壁クレーン1は、高さ制限Pを超えない大きさとしながらも、スライド式ブーム6の海側端のたわみ量を抑制できる。そのため高さ制限Pが設定されている区域において、岸壁クレーン1を大型化するには有利である。
【0044】
図9に例示するようにスライド式ブーム6のブーム上端13に沿って受け部材12を配置する構成にすることができる。この実施形態では受け部材12を支持する支持体9が、脚構造体4の上方に配置される。支持体9は例えば受け部材12を上下方向から挟み込む一対のローラ10で構成することができる。
【0045】
支持体9はローラ10に限らず、受け部材12を上下方向から挟み込んで支持するとともに、スライド式ブーム6を横行方向xに摺動させることができる構成であればよい。支持体9はたとえば受け部材12を上下方向から挟み込む一対の摺動部材で構成することができる。
【0046】
支持体9に支持されるスライド式ブーム6の支持位置が、ブーム上端13に沿って設定されているので、図10に例示するように休止状態のときスライド式ブーム6の陸側端は下方に下がる。休止状態におけるスライド式ブーム6の陸側端の高さが低くなるので、岸壁クレーン1の陸側に高さ制限Pが設定されている場合にこの高さ制限Pを超えにくくなる。
【0047】
受け部材12を上下方向から挟み込むローラ10の一方を、バネ機構20により上下方
向zに移動可能な構成にしてもよい。バネ機構20の設置により、テーパー部14のブーム上端13の傾斜角度が大きい場合であっても、スライド式ブーム6を海側と陸側のローラ10でそれぞれ安定的に支持することができる。ここで上側のローラ10にバネ機構20を設置した場合、スライド式ブーム6が移動しないときはバネ機構20に荷重がほとんど発生しないので、バネ機構20の長寿命化を実現するには有利である。
【0048】
スライド式ブーム6の基礎部15を、陸側端に向かって先細となる状態に形成してもよい。スライド式ブーム6の陸側端のブーム上端13を低くできるので、岸壁クレーン1の陸側の高さ制限Pを超えにくくなる。この場合、スライド式ブーム6の支持位置は、ブーム下端11に設定される。
【0049】
スライド式ブーム6のテーパー部14の幅(走行方向yにおける長さ)を先細となる状態に形成してもよい。この場合、図3に例示されている受け部材12の幅は一定としたまま、スライド式ブーム6のブーム側端19を形成する部材の幅を小さくすることが望ましい。
【0050】
この構成によればテーパー部14の海側端の断面積S1がより小さくなる。スライド式ブーム6の海側端の剛性を向上するとともに重量を軽くすることができるので、十分な大きさの揚程Hを確保するには有利である。
【0051】
テーパー部14の幅を先細となる状態に形成する場合、テーパー部14においてブーム上端13とブーム下端11との間の距離である上下距離hを一定にしてもよい。つまりスライド式ブーム6の海側端において上下方向zの大きさは変わらず、幅が小さくなる状態に構成してもよい。この構成によればスライド式ブーム6の海側端の上下方向zの長さを一定としているが、基礎部15に比べてテーパー部14の幅が小さくなるので、従来よりもテーパー部14の海側端の剛性を向上するとともに重量を軽くすることができる。十分な大きさの揚程Hを確保するには有利である。
【符号の説明】
【0052】
1 岸壁クレーン
2 海側脚
3 陸側脚
4 脚構造体
5 走行装置
6 スライド式ブーム
7 トロリ
8 スプレッダ
9 支持体
10 ローラ
11 ブーム下端
12 受け部材
13 ブーム上端
14 テーパー部
15 基礎部
16 岸壁
17 コンテナ船
18 船倉
19 ブーム側端
20 バネ機構
c コンテナ
L0 ブーム全長
L1 海側端部
h 上下距離
h1 (海側端における)上下距離
h2 (陸側における)上下距離
P 高さ制限
H 揚程
S 断面積
x 横行方向(海陸方向)
y 走行方向
z 上下方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10