(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記高周波移相素子のそれぞれは、一端が接地されたキャパシタと、前記キャパシタの他端にそれぞれの一端が接続された2つのインダクタとから構成されるT型回路、又は一端が接地されたインダクタと、前記インダクタの他端にそれぞれの一端が接続された2つのキャパシタとから構成されるT型回路であり、
前記入力端子の入力インピーダンス及び前記出力端子の出力インピーダンスがそれぞれZ0、前記第1高周波インピーダンス素子のリアクタンスがXa、前記k(n≧k≧1)番目の高周波移相素子に含まれるキャパシタの容量がCk、インダクタのインダクタンスがLk、k(n−1≧k≧1)番目の前記第2高周波インピーダンス素子のリアクタンスがXk、n番目の前記第2高周波インピーダンス素子のリアクタンスがXnであるとき、
前記容量Ckは、
Ck=1/2πf0Zk、Lk=Zk/2πf0、Z1=Z2=Z3=・・・=Zn-1 =Z0であり、
前記リアクタンスXkは、
Xk=(2πf0Lk)2Xa/(2Z02)であり、
前記リアクタンスXnは、
Xn=(2πf0Ln)2Xa/(4Z02)であることを特徴とする、
請求項7に記載の移相器。
前記高周波移相素子のそれぞれは、インダクタと、前記インダクタの両端にそれぞれの一端が接続されると共にそれぞれの他端が接地された2つのキャパシタとから構成されるπ型回路、又はキャパシタと、前記キャパシタの両端にそれぞれの一端が接続されると共にそれぞれの他端が接地された2つのインダクタとから構成されるπ型回路であり、
前記入力端子の入力インピーダンス及び前記出力端子の出力インピーダンスがそれぞれZ0、前記第1高周波インピーダンス素子のリアクタンスがXa、前記k(n≧k≧1)番目の高周波移相素子に含まれるキャパシタの容量がCk、インダクタのインダクタンスがLk、k(n−1≧k≧1)番目の前記第2高周波インピーダンス素子のリアクタンスがXk、n番目の前記第2高周波インピーダンス素子のリアクタンスがXnであるとき、
前記容量Ckは、
Ck=1/2πf0Zk、Lk=Zk/2πf0、Z1=Z2=Z3=・・・=Zn-1 =Z0であり、
前記リアクタンスXkは、
Xk=(2πf0Lk)2Xa/(2Z02)であり、
前記リアクタンスXnは、
Xn=(2πf0Ln)2Xa/(4Z02)であることを特徴とする
請求項7に記載の移相器。
【背景技術】
【0002】
近年の移動通信、無線LAN、センサネットワーク等の急速な発展に伴い、ワイヤレス装置の更なる小型化、高経済性への要求が高まってきている。モノリシックマイクロ波集積回路(Monolithic Microwave Integrated Circuit:MMIC)は、ワイヤレス装置の小型化、高経済性を推進する基盤技術として注目されている。その理由は、MMIC自体が小型であること、半導体プロセスにより無調整で均一性の高いチップを製造できるため量産性が高いこと、高集積化により高精度な再現性が実現されること、並びに実装コストの削減及び信頼性の向上が可能になること等である。
【0003】
MMIC化による小型化が期待されている高周波機能回路としては、高周波信号を増幅する増幅器、局部発振信号を生成する発振器、周波数変換を行う周波数変換器などが知られている。さらに、アンテナの指向性制御回路、可変利得増幅器の利得を変化させた場合の通過位相を一定にするための調整回路、及び電力増幅器の歪補償回路への適用を目的として、高周波信号の位相を制御する移相器に対しても、MMIC化による小型化に期待が寄せられている。
【0004】
図26は、従来の90度ブランチラインハイブリッドを用いた第1の移相器を示す図である(例えば、特許文献1参照)。90度ブランチラインハイブリッドは、設計周波数f
0での電気長が90度である4本の高周波伝送線路403a,403b,403c,403dから構成される。ここで、入出力端子401,402の入出力インピーダンスをZ
0、高周波伝送線路403c,403dの特性インピーダンスをZ
0、高周波伝送線路403a,403bの特性インピーダンスをZ
0/2
1/2、可変インピーダンス素子又は非線形素子の405a,405bのインピーダンスをZaとする。第1の移相器においては、インピーダンスZaを変化させることで、設計周波数f
0での入出力インピーダンスの整合を確保しつつ移相器として動作させることができる。
【0005】
他の従来例として、設計周波数f
0での位相変化量が90度でありインピーダンス変換機能を有する高周波移相素子を2個用いた第2の移相器がある(例えば、特許文献1参照)。例えば高周波移相素子として設計周波数f
0での電気長が90度の高周波伝送線路を用いた場合には、同様の高周波伝送線路が4本必要な従来の90度ブランチラインハイブリッドを使用して高周波回路を構成する場合と比較すると、必要な高周波伝送線路の本数が半分となる。したがって、このような構成を用いることにより、第2の移相器は小型化に適している。
【0006】
図27は、他の従来例としての第2の移相器を示す図である。第2の移相器における入出力端子501,502の入出力インピーダンスをZ
0、高周波伝送線路503a,503bの特性インピーダンスをZ
0、可変インピーダンス素子の500,505aのリアクタンスをそれぞれXa,X
1とする。第2の移相器においては、リアクタンスXa及びリアクタンスX
1を、X
1=Xa/4の関係式を維持して変化させることで、設計周波数f
0での入出力インピーダンスの整合を確保しつつ移相器として動作させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の第1の移相器においては、90度ブランチラインハイブリッドを構成するために、設計周波数f
0での電気長が90度の高周波伝送線路403a〜403dが4本も必要であり、小型化が困難であった。したがって、従来の第1の移相器を、例えば多素子小型実装が要求されるアレーアンテナや小型軽量化が要求される電力増幅器の非線形歪補償回路に適用した場合には、全体の寸法が大きくなるという問題点を有していた。
【0009】
また、従来の第2の移相器においては、設計周波数f
0における位相の可変範囲が、2箇所の可変インピーダンス素子の可変範囲に依存する。したがって、位相の可変範囲を増加させるためには、移相器を縦続接続する必要があるので小型化が困難であるとともに、通過損失の増加につながる要因となっていた。
【0010】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、小型化と位相の可変範囲の増加を実現できる移相器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様においては、入力端子と出力端子との間に接続されかつリアクタンス成分を有する第1高周波インピーダンス素子と、前記入力端子に一端が接続されかつ設計周波数f
0での位相変化量が90度である高周波移相素子がn個(n≧2、nは整数)縦続接続された第1高周波移相部と、前記出力端子と前記第1高周波移相部の他端との間に接続されかつ設計周波数f
0での位相変化量が90度である高周波移相素子が前記第1高周波移相部と同一個数縦続接続された第2高周波移相部と、前記第1高周波移相部における前記入力端子からk(n≧k≧1、kは整数)番目の高周波移相素子の前記入力端子と反対側の端子、及び前記第2高周波移相部における前記出力端子からk(n≧k≧1)番目の高周波移相素子の前記出力端子と反対側の端子に一端が接続されると共に他端が接地されかつ実質的にリアクタンスから構成されたインピーダンスを有する(2k−1)個の第2高周波インピーダンス素子と、を備え、前記第1高周波インピーダンス素子のインピーダンスと前記(2k−1)個の第2高周波インピーダンス素子のインピーダンスは、設計周波数f
0での入出力反射係数がほぼ零であることを特徴とする移相器を提供する。
【0012】
前記第1高周波インピーダンス素子及び前記(2k−1)個の第2高周波インピーダンス素子のそれぞれのリアクタンスは可変であってもよい。
【0013】
前記高周波移相素子は、周波数f
0での電気長が90度の高周波伝送線路又は高周波結合伝送線路であってもよい。
【0014】
前記入力端子の入力インピーダンス及び前記出力端子の出力インピーダンスがそれぞれZ
0、前記第1高周波インピーダンス素子のリアクタンスがXa、前記k(n≧k≧1)番目の高周波移相素子として用いられた前記高周波伝送線路の特性インピーダンス又は前記高周波結合伝送線路の偶モード特性インピーダンスがZ
k、k(n−1≧k≧1)番目の前記第2高周波インピーダンス素子のリアクタンスがX
k、n番目の前記第2高周波インピーダンス素子のリアクタンスがX
nであるとき、前記リアクタンスX
kは、X
k=Z
k2Xa/(2Z
02)、Z
1=Z
2=Z
3=・・・=Z
n-1=Z
0であり、前記リアクタンスX
nは、X
n=Z
n2Xa/(4Z
02)である。
【0015】
前記高周波移相素子は、周波数f
0での電気長が90度より小さい高周波伝送線路又は高周波結合伝送線路と、前記高周波伝送線路又は前記高周波結合伝送線路の両端にそれぞれの一端が接続されると共にそれぞれの他端が接地された2つのキャパシタとから構成されるπ型回路であってもよい。
【0016】
前記入力端子の入力インピーダンス及び前記出力端子の出力インピーダンスがそれぞれZ
0、前記第1高周波インピーダンス素子のリアクタンスがXa、前記k(n≧k≧1)番目の高周波移相素子に含まれる前記高周波伝送線路の電気長及び特性インピーダンス又は前記高周波結合伝送線路の電気長及び偶モード特性インピーダンスがそれぞれθ
k及びZ
k、k(n≧k≧1)番目の前記高周波移相素子に含まれるキャパシタの容量がC
k、k(n−1≧k≧1)番目の前記第2高周波インピーダンス素子のリアクタンスがX
k、n番目の前記第2高周波インピーダンス素子のリアクタンスがX
nであるとき、前記容量C
kは、C
k=1/(2πf
0Z
ktanθ
k)、Z
1sinθ
1=Z
2sinθ
2=・・・=Z
n-1sinθ
n-1=Z
0であり、前記リアクタンスX
kは、X
k=(Z
ksinθ
k)
2Xa/(2Z
02)であり、前記リアクタンスX
nは、X
n=(Z
nsinθ
n)
2Xa/(4Z
02)である。
【0017】
前記高周波移相素子は、インダクタとキャパシタとから構成される集中定数回路であってもよい。
【0018】
前記高周波移相素子のそれぞれは、一端が接地されたキャパシタと、前記キャパシタの他端にそれぞれの一端が接続された2つのインダクタとから構成されるT型回路、又は一端が接地されたインダクタと、前記インダクタの他端にそれぞれの一端が接続された2つのキャパシタとから構成されるT型回路であり、前記入力端子の入力インピーダンス及び前記出力端子の出力インピーダンスがそれぞれZ
0、前記第1高周波インピーダンス素子のリアクタンスがXa、前記k(n≧k≧1)番目の高周波移相素子に含まれるキャパシタの容量がC
k、インダクタのインダクタンスがL
k、k(n−1≧k≧1)番目の前記第2高周波インピーダンス素子のリアクタンスがX
k、n番目の前記第2高周波インピーダンス素子のリアクタンスがX
nであるとき、前記容量C
kは、C
k=1/2πf
0Z
k、L
k=Z
k/2πf
0、Z
1=Z
2=Z
3=・・・=Z
n-1=Z
0であり、前記リアクタンスX
kは、X
k=(2πf
0L
k)
2Xa/(2Z
02)であり、前記リアクタンスX
nは、X
n=(2πf
0L
n)
2Xa/(4Z
02)であってもよい。
【0019】
前記高周波移相素子のそれぞれは、インダクタと、前記インダクタの両端にそれぞれの一端が接続されると共にそれぞれの他端が接地された2つのキャパシタとから構成されるπ型回路、又はキャパシタと、前記キャパシタの両端にそれぞれの一端が接続されると共にそれぞれの他端が接地された2つのインダクタとから構成されるπ型回路であり、前記入力端子の入力インピーダンス及び前記出力端子の出力インピーダンスがそれぞれZ
0、前記第1高周波インピーダンス素子のリアクタンスがXa、前記k(n≧k≧1)番目の高周波移相素子に含まれるキャパシタの容量がC
k、インダクタのインダクタンスがL
k、k(n−1≧k≧1)番目の前記第2高周波インピーダンス素子のリアクタンスがX
k、n番目の前記第2高周波インピーダンス素子のリアクタンスがX
nであるとき、前記容量C
kは、C
k=1/2πf
0Z
k、L
k=Z
k/2πf
0、Z
1=Z
2=Z
3=・・・=Z
n-1=Z
0であり、前記リアクタンスX
kは、X
k=(2πf
0L
k)
2Xa/(2Z
02)であり、前記リアクタンスX
nは、X
n=(2πf
0L
n)
2Xa/(4Z
02)であってもよい。
【0020】
前記第1高周波インピーダンス素子及び前記第2高周波インピーダンス素子のそれぞれは、可変キャパシタであってもよい。
【0021】
前記第1高周波インピーダンス素子及び前記第2高周波インピーダンス素子のそれぞれは、共振回路であってもよい。この場合、前記共振回路は、インダクタとキャパシタとが直列接続された直列共振回路、又はインダクタとキャパシタとが並列接続された並列共振回路であってもよい。
【0022】
また、前記共振回路は、インダクタと第1のキャパシタとが直列接続された直列共振回路に対して第2のキャパシタが並列接続された複合共振回路であってもよい。また、前記共振回路は、インダクタとキャパシタとが直列接続された2つの直列共振回路が並列接続された複合共振回路であってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、移相器の小型化と位相の可変範囲の増加を実現できるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[本実施形態の概要]
本実施形態は、設計周波数f
0での位相変化量が90度でありインピーダンス変換機能を有する高周波移相素子を複数個(4個以上)使用して、入出力インピーダンスの整合を図った移相器を実現することを最も主要な特徴とする。例えば、高周波移相素子として周波数f
0での電気長が90度の高周波伝送線路を10個用いた移相器は、従来の高周波移相素子として周波数f
0での電気長が90度の高周波伝送線路を2個使用した移相器を5個縦続接続して構成する移相器と比較すると、高周波伝送線路を直線状に並べることで曲りにより発生する損失の低減と小型化を図ることができる。
【0026】
また、本実施形態に係る移相器においては、入力端子と出力端子との間に設けられた第1高周波インピーダンス素子を入力信号が通過する回数が5回から1回になるため、第1高周波インピーダンス素子での通過損失を低減することができる。以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0027】
[高周波インピーダンス素子として可変リアクタンス素子を用いる形態]
図1は、本実施形態に係る移相器10の構成を示す回路図である。移相器10においては、入力端子1と出力端子2との間に、第1高周波インピーダンス素子としての可変リアクタンス素子3が接続されている。可変リアクタンス素子3のインピーダンスは、実質的にリアクタンスから構成されている。このリアクタンスをXaとし、入力端子1の入力インピーダンス及び出力端子2の出力インピーダンスをZ
0とする。
【0028】
入力端子1には高周波移相素子103aの一端が接続されている。出力端子2には高周波移相素子103bの一端が接続されている。高周波移相素子103a,103bのそれぞれの他端(接続点104a,104b側)には高周波移相素子103c,103dの一端が接続されている。高周波移相素子103c,103dのそれぞれの他端(接続点104c,104d側)には高周波移相素子103e,103fの一端が接続されている。高周波移相素子103e,103fのそれぞれの他端(接続点104e,104f側)には高周波移相素子103g,103hの一端が接続されている。高周波移相素子103g,103hのそれぞれの他端(接続点104g,104h側)には高周波移相素子103i,103jの一端が接続されている。高周波移相素子103i,103jのそれぞれの他端(接続点104i側)は共通に接続されている。
【0029】
高周波移相素子103a,103c,103e,103g,103iは、第1高周波移相部を構成する。また、高周波移相素子103b,103d,103f,103h,103jは、第2高周波移相部を構成する。第1高周波移相部及び第2高周波移相部は、n個(n≧2、nは整数)の高周波移相素子103が縦続接続されていてもよい。
【0030】
高周波移相素子103a〜103jは、共に周波数f
0での位相変化量が90度であり、インピーダンス変換機能を有している。本実施形態において、高周波移相素子103a及び103b、103c及び103d、103e及び103f、103g及び103h、並びに103i及び103jを高周波伝送線路で置き換えた場合の等価的な特性インピーダンスをそれぞれZ
1、Z
2、Z
3、Z
4、Z
5とする。
【0031】
接続点104a,104bには、第2高周波インピーダンス素子としての可変リアクタンス素子105a、105bの一端が接続されている。可変リアクタンス素子105a、105bの他端は接地されている。可変リアクタンス素子105a、105bのインピーダンスは、実質的にリアクタンスから構成されている。このリアクタンスをX
1とする。リアクタンスX
1は可変である。
【0032】
同様に、接続点104c,104dには第2高周波インピーダンス素子としての可変リアクタンス素子105c、105dの一端が接続されている。可変リアクタンス素子105c、105dの他端は接地されている。可変リアクタンス素子105c、105dのインピーダンスは、実質的にリアクタンスから構成されている。このリアクタンスをX
2とする。リアクタンスX
2は可変である。
【0033】
同様に、接続点104e,104fには第2高周波インピーダンス素子としての可変リアクタンス素子105e、105fの一端が接続されている。可変リアクタンス素子105e、105fの他端は接地されている。可変リアクタンス素子105e、105fのインピーダンスは、実質的にリアクタンスから構成されている。このリアクタンスをX
3とする。リアクタンスX
3は可変である。
【0034】
同様に、接続点104g,104hには第2高周波インピーダンス素子としての可変リアクタンス素子105g、105hの一端が接続されている。可変リアクタンス素子105g、105hの他端は接地されている。可変リアクタンス素子105g、105hのインピーダンスは、実質的にリアクタンスから構成されている。このリアクタンスをX
4とする。リアクタンスX
4は可変である。
【0035】
同様に、接続点104iには第2高周波インピーダンス素子としての可変リアクタンス素子105iの一端が接続されている。可変リアクタンス素子105iの他端は接地されている。可変リアクタンス素子105iのインピーダンスは、実質的にリアクタンスから構成されている。このリアクタンスをX
5とする。リアクタンスX
5は可変である。
【0036】
上記の例では、移相器10は、9個の可変リアクタンス素子105を有していたが、これに限らない。移相器10は、第1高周波移相部における入力端子1からk(n≧k≧1、kは整数)番目の高周波移相素子103の入力端子1と反対側の端子、及び第2高周波移相部における出力端子2からk(n≧k≧1)番目の高周波移相素子103の出力端子2と反対側の端子に一端が接続されると共に他端が接地されかつ実質的にリアクタンスから構成されたインピーダンスを有する(2k−1)個の第2高周波インピーダンス素子を有していてもよい。
【0037】
上述した高周波移相素子103a〜103jのインピーダンス変換機能とは、可変リアクタンス素子105のインピーダンスを変換し、変換した可変リアクタンス素子105のインピーダンスと可変リアクタンス素子3のインピーダンスとを組み合わせたときに、入力端子1又は出力端子2から見た入出力反射係数がほぼ零となり、整合がとれるようにする機能のことをいう。
【0038】
次に、
図1に示した移相器10の動作について説明する。入力端子1から入力された信号は、可変リアクタンス素子3を通過する第1の道程と、高周波移相素子103a,103c,103e,103g,103i,103j,103f,103d,103bを通過する第2の道程とに分配される。第1の道程を通過する信号は、可変リアクタンス素子3のリアクタンスXaによって、所定の位相変化が与えられる。また、第2の道程を通過する信号は、その信号の周波数がf
0である場合、高周波移相素子103によってそれぞれ90度の位相変化が与えられ、可変リアクタンス素子105a〜105iのリアクタンスX
1〜X
5によって所定の位相変化が与えられる。
【0039】
このとき、各道程を通過した信号が合成されて、等振幅を保ちつつ出力端子2から出力されるように、可変リアクタンス素子3,可変リアクタンス素子105のリアクタンスXa,X
1〜X
5が設定されている。このように設定された可変リアクタンス素子3,可変リアクタンス素子105のリアクタンスXaとX
1〜X
5とを同時にかつ連続的に変化させることによって、
図1に示された移相器の位相変化量を連続的に変化させることができる。
【0040】
ここで、k=1、2、3、4とした場合、X
k=Z
k2Xa/(2Z
02)、Z
1=Z
2=Z
3=Z
4=Z
0、X
5=Z
52Xa/(4Z
02)の関係式を満たすように、リアクタンスXaとX
1〜X
5とを設定することで、周波数f
0での入出力反射係数S
11,S
22が零となるので、周波数f
0での入出力インピーダンスの整合を図ることができる。なお、現実に移相器10を作成する場合には、周波数f
0での入出力反射係数S
11,S
22が厳密に零である必要はなく、ほぼ零(例えば−10dB以下)であれば十分な効果を得られる。
【0041】
周波数f
0での位相変化量が90度でありインピーダンス変換機能を有する高周波移相素子103は、例えば以下の構成a〜構成dのように、さまざまな形態により構成することができる。
(構成a)周波数f
0での電気長が90度の高周波伝送線路である構成
(構成b)周波数f
0での電気長が90度より小さい高周波伝送線路と、その両端に一端が接続され他端が接地された2つのキャパシタとから構成されるπ型回路である構成
(構成c)インダクタとキャパシタとから構成される集中定数回路である構成
(構成d)2本の高周波伝送線路を結合させた高周波結合伝送線路などを用いて構成される構成
【0042】
以上の構成例では、(構成a)>(構成b)>(構成c)の順で移相器を小型化できる。(構成d)は、高周波結合伝送線路を使用することにより、(構成a)又は(構成b)の高周波伝送線路を使用する場合と比較して伝送線路の本数を半分にすることができる。
以下、種々の高周波移相素子103を用いた移相器の構成の詳細について説明する。
【0043】
[第1構成例]
図2は、
図1に示した移相器10の第1構成例としての移相器11を示す回路図である。この図において、
図1と同一部分は同一符号をもって示し、適宜その説明を省略する。移相器11は、インピーダンス変換機能を有する高周波移相素子103として、それぞれ、周波数f
0での電気長が90度の高周波伝送線路113を用いた移相器である。
【0044】
[第2構成例]
図3は、
図1に示された移相器10の第2構成例としての移相器12を示す回路図である。この図において、
図1と同一部分は同一符号をもって示し、適宜その説明を省略する。移相器12は、インピーダンス変換機能を有する高周波移相素子103として、それぞれ、高周波伝送線路123の両端がキャパシタ124,125を介して接地されたπ型回路を用いた移相器である。
【0045】
高周波伝送線路123は、周波数f
0での電気長θが90度より小さい。高周波伝送線路123aの一端にはキャパシタ124aの一端が接続され、高周波伝送線路123aの他端にはキャパシタ125aの一端が接続されている。同様に、高周波伝送線路123bの一端にはキャパシタ124bの一端が接続され、高周波伝送線路123bの他端にはキャパシタ125bの一端が接続されている。キャパシタ124a,124b,125a,125bのそれぞれの他端は接地されている。高周波伝送線路123aとキャパシタ124a,125aとから構成されるπ型回路は、第1高周波移相部の高周波移相素子103の一つであり、高周波伝送線路123bとキャパシタ124b,125bとから構成されるπ型回路は、第2高周波移相部の高周波移相素子103の一つである。
【0046】
ここで、高周波伝送線路123a,123bの特性インピーダンスをZ
1、キャパシタ124a,124b,125a,125bの容量をC
1とする。この容量C
1をC
1=1/(2πf
0Z
1tanθ
1)に設定し、可変リアクタンス素子105a,105bのリアクタンスX
1をX
1=(Z
1sinθ
1)
2Xa/(4Z
02)に設定する。また、k(5≧k≧1)番目の高周波移相素子103に含まれる高周波伝送線路の電気長及び特性インピーダンスがそれぞれθ
k及びZ
k、k(5≧k≧1)番目の高周波移相素子103に含まれるキャパシタの容量がC
k、k(4≧k≧1)番目の可変リアクタンス素子105のリアクタンスがX
k、5番目の可変リアクタンス素子105iのリアクタンスがX
5であるとき、以下の関係式を満たすように容量C
k、リアクタンスX
k、及びリアクタンスX
5を設定することで、周波数f
0での入出力反射係数が零となるので、周波数f
0での入出力インピーダンスの整合を図ることができる。
C
k=1/(2πf
0Z
ktanθ
k)
Z
1sinθ
1=Z
2 sinθ
2=Z
3sinθ
3=Z
4sinθ
4=Z
0
X
k=(Z
ksinθ
k)
2Xa/(2Z
02)
X
5=(Z
5sinθ
5)
2Xa/(4Z
02)
【0047】
なお、移相器12は、キャパシタ125i及びキャパシタ125jを個別に備えている。しかし、キャパシタ125i及びキャパシタ125jはいずれも接続点104iに接続されているため、容量が2C
5の1つのキャパシタにまとめて置き換えることも可能である。
【0048】
[第3構成例]
図4は、第3構成例において、
図1に示された移相器10の高周波移相素子103として用いられる、2つのインダクタの接続点がキャパシタを介して接地されたT型回路を示す図である。この場合、入力端子1の入力インピーダンス及び出力端子2の出力インピーダンスがそれぞれZ
0、可変リアクタンス素子3のリアクタンスがXa、k(n≧k≧1)番目の高周波移相素子103に含まれるキャパシタの容量がC
k、インダクタのインダクタンスがL
k、k(n−1≧k≧1)番目の可変リアクタンス素子105のリアクタンスがX
k、n番目の可変リアクタンス素子105のリアクタンスがX
nであるとき、以下の関係式を満たすように容量C
k、リアクタンスX
k、及びリアクタンスX
nを設定することで、周波数f
0での入出力反射係数が零となるので、周波数f
0での入出力インピーダンスの整合を図ることができる。
C
k=1/2πf
0Z
k、L
k=Z
k/2πf
0、Z
1=Z
2=Z
3=・・・=Z
n-1 =Z
0
X
k=(2πf
0L
k)
2Xa/(2Z
02)
X
n=(2πf
0L
n)
2Xa/(4Z
02)
【0049】
[第4構成例]
図5は、第4構成例において、
図1に示された移相器10の高周波移相素子103として用いられる、インダクタの両端がキャパシタを介して接地されたπ型回路である。この場合、入力端子1の入力インピーダンス及び出力端子2の出力インピーダンスがそれぞれZ
0、可変リアクタンス素子3のリアクタンスがXa、k(n≧k≧1)番目の高周波移相素子103に含まれるキャパシタの容量がC
k、インダクタのインダクタンスがL
k、k(n−1≧k≧1)番目の可変リアクタンス素子105のリアクタンスがX
k、n番目の可変リアクタンス素子105のリアクタンスがX
nであるとき、以下の関係式を満たすように容量C
k、リアクタンスX
k、及びリアクタンスX
nを設定することで、周波数f
0での入出力反射係数が零となるので、周波数f
0での入出力インピーダンスの整合を図ることができる。
C
k=1/2πf
0Z
k、L
k=Z
k/2πf
0、Z
1=Z
2=Z
3=・・・=Z
n-1 =Z
0
X
k=(2πf
0L
k)
2Xa/(2Z
02)
X
n=(2πf
0L
n)
2Xa/(4Z
02)
なお、この第4構成例を第2構成例のように構成した場合、容量が2C
5の1つのキャパシタにまとめて置き換えることも可能である。
【0050】
[第5構成例]
図6は、第5構成例において、
図1に示された移相器10の高周波移相素子103として用いられる、2つのキャパシタの接続点がインダクタを介して接地されたT型回路を示す図である。入力端子1の入力インピーダンス及び出力端子2の出力インピーダンスがそれぞれZ
0、可変リアクタンス素子3のリアクタンスがXa、k(n≧k≧1)番目の高周波移相素子103に含まれるキャパシタの容量がC
k、インダクタのインダクタンスがL
k、k(n−1≧k≧1)番目の高周波インピーダンス素子のリアクタンスがX
k、n番目の高周波インピーダンス素子のリアクタンスがX
nであるとき、以下の関係式を満たすように容量C
k、リアクタンスX
k、及びリアクタンスX
nを設定することで、周波数f
0での入出力反射係数が零となるので、周波数f
0での入出力インピーダンスの整合を図ることができる。
C
k=1/2πf
0Z
k、L
k=Z
k/2πf
0、Z
1=Z
2=Z
3=・・・=Z
n-1 =Z
0
X
k=(2πf
0L
k)
2Xa/(2Z
02)
X
n=(2πf
0L
n)
2Xa/(4Z
02)
【0051】
[第6構成例]
図7は、第6構成例において、
図1に示された移相器10の高周波移相素子103として用いられる、キャパシタの両端がインダクタを介して接地されたπ型回路を示す図である。入力端子1の入力インピーダンス及び出力端子2の出力インピーダンスがそれぞれZ
0、可変リアクタンス素子3のリアクタンスがXa、k(n≧k≧1)番目の高周波移相素子103に含まれるキャパシタの容量がC
k、インダクタのインダクタンスがL
k、k(n−1≧k≧1)番目の高周波インピーダンス素子のリアクタンスがX
k、n番目の高周波インピーダンス素子のリアクタンスがX
nであるとき、以下の関係式を満たすように容量C
k、リアクタンスX
k、及びリアクタンスX
nを設定することで、周波数f
0での入出力反射係数が零となるので、周波数f
0での入出力インピーダンスの整合を図ることができる。
C
k=1/2πf
0Z
k、L
k=Z
k/2πf
0、Z
1=Z
2=Z
3=・・・=Z
n-1 =Z
0
X
k=(2πf
0L
k)
2Xa/(2Z
02)
X
n=(2πf
0L
n)
2Xa/(4Z
02)
なお、この第4構成例を第2構成例のように構成した場合、インダクタンスがL
5/2の1つのインダクタにまとめて置き換えることも可能である。
【0052】
[第7構成例]
図8は、
図1に示された移相器10の第7構成例としての移相器17を示す回路図である。この図において、
図1と同一部分は同一符号をもって示し、適宜その説明を省略する。移相器17は、インピーダンス変換機能を有する高周波移相素子103として、それぞれ、周波数f
0での電気長が90度の高周波結合伝送線路153を用いた移相器である。高周波結合伝送線路153の偶モード特性インピーダンスを、第1構成例の
図2の高周波伝送線路113の特性インピーダンスと同じ値に設定することにより、周波数f
0での入出力インピーダンスの整合を図ることができる。
【0053】
[移相器の具体例とその特性]
次に、
図1に示された移相器の具体例の振幅特性及び位相特性のシミュレーション結果を示す。
図9は、
図2に示された移相器11を実際の回路に適用した移相器11aを示す図である。
図9において、
図2と同一部分は同一符号をもって示し、適宜その説明を省略する。
【0054】
図9に示された移相器11aでは、可変リアクタンス素子3及び可変リアクタンス素子105として、可変キャパシタ13及び可変キャパシタ115がそれぞれ用いられている。可変キャパシタ13及び可変キャパシタ115は、例えばバリキャップ(あるいはバラクタ)ダイオードである。ここで、高周波伝送線路113の周波数f
0=10GHzでの電気長を90度とする。また、高周波伝送線路113は無損失であると仮定し、入出力インピーダンスZ
0=50Ωとする。
【0055】
図10は、高周波伝送線路113の特性インピーダンスがZ
1=50Ω,Z
2=50Ω,Z
3=50Ω,Z
4=50Ω,Z
5=50Ωである場合の移相器11aの振幅特性(順方向伝達係数S
21と入力反射係数S
11)と位相特性(順方向伝達係数S
21)のシミュレーション結果を示す図である。上図の横軸は周波数[GHz]、左側の縦軸は順方向伝達係数S
21[dB]、右側の縦軸は入力反射係数S
11[dB]である。下図の横軸は周波数[GHz]、縦軸は順方向伝達係数S
21[deg.]である。
【0056】
図10は、可変キャパシタ115a〜115hの容量C
ca〜C
chを可変キャパシタ13の容量Caの2倍に設定し、可変キャパシタ115iの容量C
iを可変キャパシタ13の容量Caの4倍に設定し、可変キャパシタ13の容量Caを0.05pF、0.2pF、0.41pFと変化させた場合の移相器11aの特性を示している。実線は、容量Caが0.05pFの場合の特性を示しており、破線は、容量Caが0.2pFの場合の特性を示しており、一点鎖線は、容量Caが0.41pFの場合の特性を示している。同図からわかるように、周波数f=0GHz〜11.0GHzにおいて、振幅変動として1dB以内、入力反射量として−6dB以下、周波数f=5.8GHz〜11.0GHzにおいて、位相変化量として360度以上の特性が得られている。
【0057】
同様に、
図11は、高周波伝送線路113の特性インピーダンスZ
1=50Ω,Z
2=50Ω,Z
3=50Ω,Z
4=50Ω,Z
5=55Ωの場合の移相器11aの振幅特性(順方向伝達係数S
21と入力反射係数S
11)と位相特性(順方向伝達係数S
21)のシミュレーション結果を示す図である。上図の横軸は周波数[GHz]、左側の縦軸は順方向伝達係数S
21[dB]、右側の縦軸は入力反射係数S
11[dB]である。下図の横軸は周波数[GHz]、縦軸は順方向伝達係数S
21[deg.]である。
【0058】
図11は、可変キャパシタ115a〜115hの容量C
ca〜C
chを可変キャパシタ13の容量Caの2倍に設定し、可変キャパシタ115iの容量C
iを可変キャパシタ13の容量Caの約3.3倍に設定し、可変キャパシタ13の容量Caを0.05pF、0.2pF、0.41pFと変化させた場合の移相器11aの特性を示している。実線は、容量Caが0.05pFの場合の特性を示しており、破線は、容量Caが0.2pFの場合の特性を示しており、一点鎖線は、容量Caが0.41pFの場合の特性を示している。同図からわかるように、周波数f=0GHz〜11.0GHzにおいて、振幅変動として1.4dB以内、入力反射量として−5dB以下、周波数f=5.7GHz〜11.0GHzにおいて、位相変化量として360度以上の特性が得られている。
【0059】
図12は、
図3に示された第2構成例の移相器12を実際の回路に適用した移相器12aを示す図である。この図において、
図3と同一部分は同一符号をもって示し、適宜その説明を省略する。
図12に示された移相器12aでは、可変リアクタンス素子3及び可変リアクタンス素子105として可変キャパシタ13及び可変キャパシタ115がそれぞれ用いられている。高周波伝送線路123とキャパシタ124,125とから構成される各π型回路のそれぞれの等価的な特性インピーダンスを50Ω、入出力インピーダンスZ
0=50Ωとする。また、高周波伝送線路123は無損失であると仮定し、周波数f
0=10GHzでの電気長θ
1〜θ
5を45度、特性インピーダンスZ
1〜Z
5を70.7Ωと仮定する。このとき、キャパシタ124a〜124j、125a〜125jの容量Cが0.225pFに設定される。
【0060】
図13は、
図12に示された移相器12aの振幅特性(順方向伝達係数S
21と入力反射係数S
11)と位相特性(順方向伝達係数S
21)のシミュレーション結果を示す図である。上図の横軸は周波数[GHz]、左側の縦軸は順方向伝達係数S
21[dB]、右側の縦軸は入力反射係数S
11[dB]である。下図の横軸は周波数[GHz]、縦軸は順方向伝達係数S
21[deg.]である。
【0061】
図13は、可変キャパシタ115a〜115hの容量C
ca〜C
chを可変キャパシタ13の容量Caの2倍に設定し、可変キャパシタ115iの容量C
iを可変キャパシタ13の容量Caの4倍に設定し、可変キャパシタ13の容量Caを0.05pF、0.2pF、0.41pFと変化させた場合の特性を示している。実線は、容量Caが0.05pFの場合の特性を示しており、破線は、容量Caが0.2pFの場合の特性を示しており、一点鎖線は、容量Caが0.41pFの場合の特性を示している。同図からわかるように、周波数f=0GHz〜11.0GHzにおいて、振幅変動として2dB以内、入力反射量として−4dB以下、周波数f=7.3GHz〜11.0GHzにおいて、位相変化量として360度以上の特性が得られている。
【0062】
なお、
図12に示された移相器12aは、キャパシタ125i及びキャパシタ125jを個別に備えている。しかし、キャパシタ125i及びキャパシタ125jはいずれも接続点104iに接続されているため、容量が2Cの1つのキャパシタにまとめて置き換えることも可能である。
【0063】
図14は、
図5に示されたπ型回路が移相器10の高周波移相素子103として用いられた第4構成例を実際の回路に適用した移相器14aを示す図である。この図において、
図3と同一部分は同一符号をもって示し、適宜その説明を省略する。
【0064】
図14に示された移相器14aでは、可変リアクタンス素子3及び可変リアクタンス素子105として可変キャパシタ13及び可変キャパシタ115がそれぞれ用いられている。インダクタ143、キャパシタ124及びキャパシタ125とから構成される各π型回路のそれぞれの等価的な特性インピーダンスを50Ω、入出力インピーダンスZ
0=50Ω、周波数f
0=10GHzとする。このとき、インダクタ143のインダクタンスLがL=0.796nHに、キャパシタ124a〜124j、125a〜125jの容量Cが0.318pFに設定される。
【0065】
図15は、
図14に示された移相器14aの振幅特性(順方向伝達係数S
21と入力反射係数S
11)と位相特性(順方向伝達係数S
21)のシミュレーション結果を示す図である。上図の横軸は周波数[GHz]、左側の縦軸は順方向伝達係数S
21[dB]、右側の縦軸は入力反射係数S
11[dB]である。下図の横軸は周波数[GHz]、縦軸は順方向伝達係数S
21[deg.]である。
【0066】
図15では、可変キャパシタ115a〜115hの容量C
ca〜C
chを可変キャパシタ13の容量Caの2倍に設定し、可変キャパシタ115iの容量C
iを可変キャパシタ13の容量Caの4倍に設定し、可変キャパシタ13の容量Caを0.05pF、0.2pF、0.41pFと変化させている。実線は、容量Caが0.05pFの場合の特性を示しており、破線は、容量Caが0.2pFの場合の特性を示しており、一点鎖線は、容量Caが0.41pFの場合の特性を示している。同図からわかるように、周波数f=0GHz〜11.0GHzにおいて、振幅変動として2.3dB以内、入力反射量として−3dB以下、周波数f=7.5GHz〜11.0GHzにおいて、位相変化量として360度以上の特性が得られている。
【0067】
なお、
図14に示された移相器14aは、キャパシタ125i及びキャパシタ125jを個別に備えている。しかし、キャパシタ125i及びキャパシタ125jはいずれも接続点104iに接続されているため、容量が2Cの1つのキャパシタにまとめて置き換えることも可能である。
同様に、移相器10の第3構成例、第5構成例、第6構成例についても実際の回路に適用できる。
【0068】
図16は、
図8に示された第7構成例の移相器17を実際の回路に適用した移相器17aを示す図である。この図において、
図8と同一部分は同一符号をもって示し、適宜その説明を省略する。
図16に示された移相器17aでは、可変リアクタンス素子3及び可変リアクタンス素子105として可変キャパシタ13及び可変キャパシタ115がそれぞれ用いられている。高周波結合伝送線路153の周波数f
0=10GHzでの電気長を90度とする。また、高周波結合伝送線路153は無損失であると仮定し、入出力インピーダンスZ
0=50Ωとする。
【0069】
図17は、高周波結合伝送線路153の偶モード特性インピーダンスZ
1e=50Ω,Z
2e=50Ω,Z
3e=50Ω,Z
4e=50Ω,Z
5e=50Ω、奇モード特性インピーダンスZ
1o=50Ω,Z
2o=50Ω,Z
3o=50Ω,Z
4o=50Ω,Z
5o=50Ωの場合の移相器17aの振幅特性(順方向伝達係数S
21と入力反射係数S
11)と位相特性(順方向伝達係数S
21)のシミュレーション結果を示す図である。上図の横軸は周波数[GHz]、左側の縦軸は順方向伝達係数S
21[dB]、右側の縦軸は入力反射係数S
11[dB]である。下図の横軸は周波数[GHz]、縦軸は順方向伝達係数S
21[deg.]である。
【0070】
図17では、可変キャパシタ115a〜115hの容量C
ca〜C
chを可変キャパシタ13の容量Caの2倍に設定し、可変キャパシタ115iの容量C
iを可変キャパシタ13の容量Caの4倍に設定し、可変キャパシタ13の容量Caを0.05pF、0.2pF、0.41pFと変化させている。実線は、容量Caが0.05pFの場合の特性を示しており、破線は、容量Caが0.2pFの場合の特性を示しており、一点鎖線は、容量Caが0.41pFの場合の特性を示している。同図からわかるように、周波数f=0GHz〜11.0GHzにおいて、振幅変動として1dB以内、入力反射量として−6dB以下、周波数f=5.8GHz〜11.0GHzにおいて、位相変化量として360度以上の特性が得られている。
【0071】
同様に、
図18は、高周波結合伝送線路153の偶モード特性インピーダンスZ
1e=50Ω,Z
2e=50Ω,Z
3e=50Ω,Z
4e=50Ω,Z
5e=55Ω、奇モード特性インピーダンスZ
1o=50Ω,Z
2o=50Ω,Z
3o=50Ω,Z
4o=50Ω,Z
5o=55Ωの場合の移相器17aの振幅特性(順方向伝達係数S
21と入力反射係数S
11)と位相特性(順方向伝達係数S
21)のシミュレーション結果を示す図である。上図の横軸は周波数[GHz]、左側の縦軸は順方向伝達係数S
21[dB]、右側の縦軸は入力反射係数S
11[dB]である。下図の横軸は周波数[GHz]、縦軸は順方向伝達係数S
21[deg.]である。
【0072】
図18では、可変キャパシタ115a〜115hの容量C
ca〜C
chを可変キャパシタ13の容量Caの2倍に設定し、可変キャパシタ115iの容量C
iを可変キャパシタ13の容量Caの約3.3倍に設定し、可変キャパシタ13の容量Caを0.05pF、0.2pF、0.41pFと変化させている。実線は、容量Caが0.05pFの場合の特性を示しており、破線は、容量Caが0.2pFの場合の特性を示しており、一点鎖線は、容量Caが0.41pFの場合の特性を示している。同図からわかるように、周波数f=0GHz〜11.0GHzにおいて、振幅変動として1.4dB以内、入力反射量として−5dB以下、周波数f=5.7GHz〜11.0GHzにおいて、位相変化量として360度以上の特性が得られている。
【0073】
同様に、
図19は、高周波結合伝送線路153の偶モード特性インピーダンスZ
1e=50Ω,Z
2e=50Ω,Z
3e=50Ω,Z
4e=50Ω,Z
5e=55Ω、奇モード特性インピーダンスZ
1o=50Ω,Z
2o=50Ω,Z
3o=50Ω,Z
4o=50Ω,Z
5o=50Ωの場合の移相器17aの振幅特性(順方向伝達係数S
21と入力反射係数S
11)と位相特性(順方向伝達係数S
21)のシミュレーション結果を示す図である。上図の横軸は周波数[GHz]、左側の縦軸は順方向伝達係数S
21[dB]、右側の縦軸は入力反射係数S
11[dB]である。下図の横軸は周波数[GHz]、縦軸は順方向伝達係数S
21[deg.]である。
【0074】
図19では、可変キャパシタ115a〜115hの容量C
ca〜C
chを可変キャパシタ13の容量Caの2倍に設定し、可変キャパシタ115iの容量C
iを可変キャパシタ13の容量Caの約3.3倍に設定し、可変キャパシタ13の容量Caを0.05pF、0.2pF、0.41pFと変化させている。実線は、容量Caが0.05pFの場合の特性を示しており、破線は、容量Caが0.2pFの場合の特性を示しており、一点鎖線は、容量Caが0.41pFの場合の特性を示している。同図からわかるように、周波数f=0GHz〜11.0GHzにおいて、振幅変動として1.2dB以内、入力反射量として−6dB以下、周波数f=5.7GHz〜11.0GHzにおいて、位相変化量として360度以上の特性が得られている。
【0075】
[高周波インピーダンス素子として共振回路を用いる形態]
第1の高周波インピーダンス素子及び第2の高周波インピーダンス素子としてそれぞれ共振回路を用いて移相器を構成することもできる。共振回路は、インダクタ、キャパシタ、伝送線路で実現されたインダクタンス成分、伝送線路で実現されたキャパシタンス成分等を利用して構成される。共振回路のインピーダンスは、実質的にリアクタンスから構成されている。
【0076】
以上のように、本発明による移相器はMMICで形成される構成に適している。移相器をMMICで形成することによって、小型の移相器を作成できる。また、半導体プロセスにより無調整で均一性の高いチップを製造できるので、量産性の向上を図れる。さらに、高集積化及び高精度な再現性により実装コストの削減及び信頼性の向上が可能になる。
【0077】
[変形例1]
図20は、
図9に示された移相器11aと、移相器11aを対称構成にした移相器とを接続した移相器22aを示す図である。移相器22aは、非対称なレイアウトにより発生する通過損失を低減することができる。
図20において、
図9と同一部分は同一符号をもって示し、適宜その説明を省略する。
【0078】
図20に示された移相器22aにおいて、高周波伝送線路213の周波数f
0=10GHzでの電気長を90度とする。また、高周波伝送線路213は無損失であると仮定し、入出力インピーダンスZ
0=50Ωとする。
【0079】
図21は、高周波伝送線路113及び高周波伝送線路213の特性インピーダンスがZ
1=100Ω,Z
2=100Ω,Z
3=100Ω,Z
4=100Ω,Z
5=100Ωである場合の移相器22aの振幅特性(順方向伝達係数S
21と入力反射係数S
11)と位相特性(順方向伝達係数S
21)のシミュレーション結果を示す図である。上図の横軸は周波数[GHz]、左側の縦軸は順方向伝達係数S
21[dB]、右側の縦軸は入力反射係数S
11[dB]である。下図の横軸は周波数[GHz]、縦軸は順方向伝達係数S
21[deg.]である。
【0080】
図21は、可変キャパシタ115a〜115h及び215a〜215hの容量C
ca〜C
chを可変キャパシタ13の容量Caと同じ値に設定し、可変キャパシタ115i及び215iの容量C
iを可変キャパシタ13の容量Caの2倍に設定し、可変キャパシタ13の容量Caを0.05pF、0.2pF、0.41pFと変化させた場合の移相器22aの特性を示している。実線は、容量Caが0.05pFの場合の特性を示しており、破線は、容量Caが0.2pFの場合の特性を示しており、一点鎖線は、容量Caが0.41pFの場合の特性を示している。同図からわかるように、周波数f=0GHz〜11.0GHzにおいて、振幅変動として1dB以内、入力反射量として−6dB以下、周波数f=5.8GHz〜11.0GHzにおいて、位相変化量として360度以上の特性が得られている。
【0081】
[変形例2]
図22は、
図9に示された移相器11aに切り替えスイッチが設けられた移相器24aを示す図である。
図24において、
図9と同一部分は同一符号をもって示し、適宜その説明を省略する。移相器24aは、スイッチの設定に応じて、位相変化量を切り替えることができるデジタル移相器として動作する。
【0082】
図22に示された移相器24aでは、
図9と同じ電気的特性を有するようにスイッチが設定されており、可変キャパシタを変化させることで、アナログ移相器として動作する。
図23は、移相器24aの第2の状態を示す図である。移相器24aは、
図23のようにスイッチが設定された場合には、設計周波数f
0での位相変化量が0度のデジタル移相器として動作する。
【0083】
図24は、移相器24aの第3の状態を示す図である。移相器24aは、
図24のようにスイッチが設定された場合には、設計周波数f
0での位相変化量が180度のデジタル移相器として動作する。
図25は、移相器24aの第4の状態を示す図である。移相器24aは、
図25のようにスイッチが設定された場合には、設計周波数f
0での位相変化量が360度のデジタル移相器として動作する。
【0084】
[その他の実施形態]
以上述べたすべての実施形態は本発明の実施形態を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。したがって、本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【0085】
また、本発明による移相器は、無線通信用アレーアンテナの指向性制御回路、可変利得増幅器の利得を変化させた場合の通過位相を一定にするための調整回路及び電力増幅器の歪補償回路などに広く適用可能である。さらにまた、光通信用CDR(Clock and Data Recovery Circuit)内で使用されている可変クロック遅延回路としても使用可能である。
【0086】
[本実施形態における効果]
以上説明したように、本発明による移相器では、位相変化量が90度の複数個(4個以上)の高周波移相素子と、複数個の高周波インピーダンス素子とを有し、入出力反射係数がほぼ零となるように各高周波インピーダンス素子のインピーダンスが設定されるようにした。
【0087】
例えば高周波移相素子として周波数f
0での電気長が90度の高周波伝送線路を10個用いた場合には、従来の高周波移相素子として周波数f
0での電気長が90度の高周波伝送線路を2個使用した移相器を5個縦続接続して構成する場合と比較すると、高周波伝送線路を直線状に並べることで曲りにより発生する損失の低減と移相器の小型化を図ることができる。また、第1高周波インピーダンス素子を通過する回数が5回から1回になるため、第1高周波インピーダンス素子での通過損失を低減することができる。以上により、本発明を用いることで通過損失の低減と移相器の小型化を図ることができる。
【0088】
また、本発明による移相器では、高周波移相素子として、(構成a)周波数f
0での電気長が90度の高周波伝送線路、(構成b)周波数f
0での電気長が90度より小さい高周波伝送線路とその両端に一端が接続され他端が接地された2つのキャパシタとから構成されるπ型回路、(構成c)インダクタとキャパシタとから構成される集中定数回路、(構成d)上記の(構成a)及び(構成b)の2本の高周波伝送線路を結合させた高周波結合伝送線路などを用いるようにした。この場合、(構成a)>(構成b)>(構成c)の順で移相器を小型化できる。(構成d)は、高周波結合伝送線路を使用することにより、(構成a)又は(構成b)の高周波伝送線路を使用する場合と比較して伝送線路の本数を半分にすることができる。
また、本発明による移相器では、高周波インピーダンス素子として共振回路を用いるようにした。これにより、位相変化量の増大を図ることができる。
【0089】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。