特許第6566442号(P6566442)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6566442
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】複合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 11/83 20060101AFI20190819BHJP
   D06M 23/08 20060101ALI20190819BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20190819BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20190819BHJP
   D06M 101/06 20060101ALN20190819BHJP
【FI】
   D06M11/83
   D06M23/08
   B82Y30/00
   B82Y40/00
   D06M101:06
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-128032(P2016-128032)
(22)【出願日】2016年6月28日
(65)【公開番号】特開2018-3175(P2018-3175A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2018年11月2日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年3月1日 公益社団法人日本セラミックス協会 2016年 年会 講演予稿集 〔刊行物等〕 平成28年3月16日 公益社団法人日本セラミックス協会主催の2016年 年会
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591060980
【氏名又は名称】岡山県
(74)【代理人】
【識別番号】110002206
【氏名又は名称】特許業務法人せとうち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 英司
(72)【発明者】
【氏名】古谷 充章
【審査官】 小石 真弓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−089311(JP,A)
【文献】 特開2014−070158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 11/00−11/84
B82Y 30/00
B82Y 40/00
D06M 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース繊維の表面に金属粒子が付着してなる複合体の製造方法であって、平均繊維径が2.5nm〜300μmのセルロース繊維が分散し、金属塩が溶解した液を、湿式ジェットミルを用いて圧力1〜600MPaで処理する工程Aを備えることを特徴とする複合体の製造方法。
【請求項2】
前記金属塩が、周期表における第8〜12族に属する金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属の塩である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
工程Aの前に、セルロース繊維を含む分散液を、湿式ジェットミルを用いて前処理する工程をさらに備える請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
工程Aで得られた混合液に含まれる固形物を洗浄する工程を、さらに備える請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース繊維の表面に金属粒子が付着してなる複合体の製造方法に関する。また、本発明は、その複合体及びその複合体を含む分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粒径がナノメートルオーダーの大きさの金属粒子は金属ナノ粒子と呼ばれている。金属ナノ粒子は、粒径が1μm程度の金属粒子とは異なる光学特性、触媒能、熱的性質及び電磁気的性質などを示すことが知られており、これまで様々な手法で金属ナノ粒子が合成されている。金属ナノ粒子の製造方法としてセルロース繊維を用いた方法が知られていて、例えば以下のような方法が挙げられる。
【0003】
特許文献1には、表面にアルデヒド基を有するセルロース系ファイバーを準備する工程1、及び前記セルロース系ファイバーと金属化合物水溶液とを接触させて、前記セルロース系ファイバー表面のアルデヒド基によって前記金属化合物を還元し、前記セルロース系ファイバー表面に金属ナノ粒子を形成する工程2を含む、金属ナノ粒子とセルロース系ファイバーとの複合体の製造方法が記載されている。そして、その実施例には、セルロース系ファイバーの表面に粒子径が30nm程度のAgナノ粒子が分散した複合体が記載されている。しかしながら、粒径のより小さい金属粒子が付着してなる複合体が求められていた。
【0004】
また、非特許文献1には、10〜20nm幅のセルロース繊維に粒径5nm以下の金粒子が分散した複合体が記載されている。この複合体の製造方法としては、まず、2,2,6,6-tetramethyl-1-piperidinyloxy(TEMPO)を用いて、セルロース繊維にカルボキシル基を導入したセルロース繊維(以下、TEMPO酸化セルロース繊維と称す)を作製する。そして、テトラクロロ金酸の水溶液にTEMPO酸化セルロース繊維を加えて撹拌した後、水素化ホウ素ナトリウム水溶液を加えて撹拌することで金粒子が分散した複合体が得られる。しかしながら、非特許文献1に記載の方法は、セルロース繊維を酸化させるための触媒(TEMPO)や金属を還元させるための還元剤(水素化ホウ素ナトリウム)が必要である。そのため、使用する試薬が多く製造工程も煩雑であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−240538号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Hirotaka Koga et al. Chem. Commun., 2010, 46, 8567
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、セルロース繊維の表面に、粒径の小さい金属粒子が付着してなる複合体を、簡易かつ効率的に製造することができる方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、セルロース繊維の表面に金属粒子が付着してなる複合体の製造方法であって、平均繊維径が2.5nm〜300μmのセルロース繊維が分散し、金属塩が溶解した液を、湿式ジェットミルを用いて圧力1〜600MPaで処理する工程Aを備えることを特徴とする複合体の製造方法を提供することによって解決される。
【0009】
このとき、前記金属塩が、周期表における第8〜12族に属する金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属の塩であることが好ましい。
【0010】
また、工程Aの前に、セルロース繊維を含む分散液を、湿式ジェットミルを用いて前処理する工程をさらに備えることが好ましい。工程Aで得られた混合液に含まれる固形物を洗浄する工程をさらに備えることも好ましい。
【0011】
上記課題は、酸化処理されていないセルロース繊維の表面に金属粒子が付着してなる複合体であって;前記セルロース繊維の平均繊維径が2.5〜30nmであり、前記金属粒子の平均粒径が1〜15nmであり、かつ前記複合体における前記金属粒子の含有量が、セルロース繊維100質量部に対して0.01〜10000質量部であることを特徴とする複合体を提供することによっても解決される。
【0012】
上記複合体を含む分散液が本発明の好適な実施態様である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、セルロース繊維の表面に、粒径の小さい金属粒子が付着してなる複合体を、簡易かつ効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1の複合体のXRDパターンである。
図2】実施例1の複合体のTEM像である。
図3】実施例1の複合体のSEM像である。
図4】処理圧力と粒径との関係を示した図である。
図5】処理圧力と反応率との関係を示した図である。
図6】実施例5の複合体のTEM像である。
図7】実施例6の複合体のTEM像である。
図8】比較例1の複合体のTEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、セルロース繊維の表面に金属粒子が付着してなる複合体の製造方法であって、平均繊維径が2.5nm〜300μmのセルロース繊維が分散し、金属塩が溶解した液を、湿式ジェットミルを用いて圧力1〜600MPaで処理する工程Aを備える。
【0016】
本発明で用いられるセルロース繊維は、その平均繊維径が2.5nm〜300μmである。平均繊維径が2.5nm未満のセルロース繊維は通常の方法で得ることが難しく、工業的に使用するのは現実的ではない。平均繊維径は5nm以上であることが好ましい。一方、平均繊維径が300μmを超えるとセルロース繊維の表面に金属粒子が付着してなる複合体を得ることができない。平均繊維径は100μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましく、500nm以下であることがさらに好ましい。
【0017】
本発明の製造方法において、平均繊維径が小さいセルロース繊維を用いることにより、より多くの金属粒子をセルロース繊維の表面に付着させることができる。かかる観点から、平均繊維径は300nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましい。上記平均繊維径は走査型電子顕微鏡装置(SEM)で得られた画像から求めた値である。
【0018】
本発明で用いられるセルロース繊維の原料は特に限定されず、木材、藁、竹、バガス、笹、葦、籾殻が挙げられる。また、セルロース繊維の製造方法も限定されず、上記原料を機械的にフィブリル化する方法が挙げられる。フィブリル化する方法としては、ジェットミル、ホモジナイザー、ディスクミル、叩解機などの公知の装置を用いる方法が挙げられる。また、これらの方法は、湿式法であってもよいし、乾式法であってもよい。
【0019】
機械的にフィブリル化する方法の他に、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル(TEMPO)を用いてセルロース繊維を酸化する方法も知られている。しかしながら、セルロース繊維を酸化させるための触媒(TEMPO)などが必要となるため、使用する試薬が多く、製造工程が煩雑になる。また、TEMPOを用いてセルロース繊維を酸化させると、得られるセルロース繊維の熱安定性が低下するおそれもある。かかる観点から本発明の製造方法では酸化処理されていないセルロース繊維を用いる。
【0020】
本発明で用いられる金属塩が、周期表における第8〜12族に属する金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属の塩であることが好ましい。中でも、工業的な利用価値が高い点から、金属塩が、周期表における第10又は11族に属する金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属の塩であることがより好ましく、周期表における第10又は11族に属し、かつ第5又は6周期に属する金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属の塩であることがさらに好ましく、金、銀及び白金からなる群から選択される少なくとも1種の金属の塩であることが特に好ましい。
【0021】
そして、セルロース繊維が分散し、金属塩が溶解した液を、湿式ジェットミルを用いて処理する。このとき、液における金属塩の量が、固形分量で、セルロース繊維100質量部に対して1×10−2〜1×10質量部であることが好ましい。金属塩の量が1×10−2質量部未満であると、セルロース繊維の表面に金属粒子が付着してなる複合体を得ることができないおそれがある。金属塩の量は、1質量部以上であることがより好ましく、100質量部以上であることがさらに好ましい。一方、金属塩の量が1×10質量部を超える場合、金属塩を無駄に使用することになり、経済的に不利となることがある。金属塩の量は1×10質量部以下であることがより好ましい。
【0022】
セルロース繊維が分散し、金属塩が溶解した液の調製方法は特に限定されない。金属塩が溶解した水溶液にセルロース繊維を分散させてもよいし、セルロース繊維が分散した分散液に金属塩を溶解させてもよい。セルロース繊維及び金属塩が均一に分散・溶解した液を得る観点から、セルロース繊維が分散した分散液(セルロース分散液と称すことがある)と金属塩が溶解した水溶液(金属塩溶液と称すことがある)とを混合して得られた液を、湿式ジェットミルを用いて処理することが好ましい。このとき、セルロース分散液の濃度は特に限定されないが、固形分濃度で、通常、0.01〜20質量%である。金属塩溶液の濃度は特に限定されないが、通常、0.001〜2mol/Lである。セルロース分散液の分散媒及び金属塩溶液は、通常水であるが、少量の有機溶媒が含まれていてもかまわない。
【0023】
本発明では、セルロース繊維が分散し、金属塩が溶解した液を、湿式ジェットミルを用いて圧力1〜600MPaで処理する工程Aを備えることが重要である。圧力が1MPa未満であるとセルロース繊維の表面に金属粒子が付着してなる複合体を得ることができない。セルロース繊維の表面への金属粒子の付着量を増やす観点から、圧力は10MPa以上であることが好ましく、30MPa以上であることがより好ましく、80MPa以上であることがさらに好ましく、120MPa以上であることが特に好ましい。
【0024】
一方、圧力が600MPaを超えると製造にコストがかかり過ぎて工業的には現実的でない。金属粒子の粒径の大きさのバラツキを少なくする観点から、圧力は300MPa以下であることが好ましく、250MPa以下であることがより好ましく、200MPa以下であることがさらに好ましい。
【0025】
セルロース繊維が分散し、金属塩が溶解した液が、湿式ジェットミルを用いて処理される際の液温は、圧力との関係で設定されるが、通常、室温〜90℃である。処理時間は特に限定されず、処理する液の量により適宜決定されるものである。
【0026】
ここで、湿式ジェットミルとは、原料となる水溶液や分散液を加圧して、スリットを通り抜ける際のせん断力を利用して粉砕を行う装置である。湿式ジェットミルとしては、増幸産業株式会社の「マスコマイザーX」などが挙げられる。湿式ジェットミルは高圧ホモジナイザーと呼ばれることもある。
【0027】
本発明において、工程Aの前に、セルロース繊維を含む分散液を、湿式ジェットミルを用いて前処理する工程をさらに備えることが好ましい。このような前処理工程を備えることにより、分散液の状態で市販されているセルロース繊維の分散状態を均一にすることができる。
【0028】
このときの処理圧力は1〜600MPaであることが好ましい。処理圧力が1MPa未満であるとセルロース繊維の分散状態を均一にすることができないおそれがある。処理圧力は10MPa以上であることが好ましく、30MPa以上であることがより好ましい。一方、処理圧力が、600MPaを超えると製造にコストがかかり過ぎて工業的には現実的でない。処理圧力は300MPa以下であることが好ましく、250MPa以下であることがより好ましい。
【0029】
セルロース繊維を含む分散液が、湿式ジェットミルを用いて前処理される際の液温は、圧力との関係で設定されるが、通常、室温〜90℃である。処理時間は特に限定されず、前処理する分散液の量により適宜決定されるものである。
【0030】
本発明において、工程Aで得られた混合液に含まれる固形物、すなわち複合体を洗浄する工程を、さらに備えることが好ましい。固形物を洗浄することにより固形物に残留した金属塩を除去することができる。洗浄方法は特に限定されず、混合液に洗浄液を加え濾材を用いて、当該混合液に含まれる金属塩を濾液として除去する方法や、遠心分離する方法などが挙げられる。洗浄液は通常水であるが、少量の有機溶媒が含まれていてもかまわない。
【0031】
上記製造方法によれば、セルロース繊維の表面に、粒径の小さい金属粒子が付着してなる複合体を、簡易かつ効率的に製造することができる。この製造方法によって、酸化処理されていないセルロース繊維の表面に金属粒子が付着してなる複合体であって、前記セルロース繊維の平均繊維径が2.5〜30nmであり、前記金属粒子の平均粒径が1〜15nmであり、かつ前記複合体における前記金属粒子の含有量が、セルロース繊維100質量部に対して0.01〜10000質量部であることを特徴とする複合体を得ることができる。このような複合体はこれまで製造することができず、これ自体新しいものである。
【0032】
ニッケルや銅からなる金属粒子が付着してなる複合体は、金属配線を形成するための材料として期待できる。白金やパラジウムからなる金属粒子が付着してなる複合体は、触媒への用途が期待できる。金や銀からなる金属粒子が付着してなる複合体は、化粧品や日用品への用途が期待できる。
【0033】
また、上記複合体を含む分散液も新しいものである。このとき、分散媒は特に限定されず、水や有機溶媒を分散媒として用いることができる。環境面及びコスト面から水が好ましい。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。
【0035】
(原料)
・セルロース繊維水分散液
株式会社スギノマシン製のセルロースナノファイバー「BiNFi-s 極短」(平均繊維径:75nm、平均繊維長:100μm)を含む水分散液(水分散体のセルロース繊維含有率:5質量%)。
・硝酸銀の水溶液
硝酸銀(和光純薬工業株式会社製:試薬特級)13.65gを50mLの蒸留水に溶解させて、1607mMの硝酸銀の水溶液を得た。
・テトラクロロ金(III)酸四水和物の水溶液
テトラクロロ金(III)酸四水和物(和光純薬工業株式会社製:試薬特級)0.199gを50mLの蒸留水に溶解させて、9.68mMの金含有水溶液を得た。
・ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物の水溶液
ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物(和光純薬工業株式会社製:試薬特級)0.263gを50mLの蒸留水に溶解させて、10.17mMの白金含有水溶液を得た。
【0036】
(装置)
・湿式ジェットミル
増幸産業株式会社製の湿式ジェットミル「マスコマイザーX 電動式 MMX-L200-D10」
・透過型電子顕微鏡装置(TEM)
日本電子株式会社製の透過型電子顕微鏡「JEM-2100」
・X線回折装置(XRD)
株式会社リガク製の全自動水平型多目的X線回折装置「Smart Lab」
・走査型電子顕微鏡装置(SEM)
日本電子株式会社製の走査型電子顕微鏡「JSM-7500FA」
・ICP発光分析装置
サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製の装置「iCAP 6500/DUO」
【0037】
実施例1
上記の原料を用いて複合体を作製した。工程は以下の通りである。
(1)セルロース繊維水分散液50mLを湿式ジェットミルにセットして、63℃、150MPaで前処理した。この処理は5回繰り返して行った。
(2)湿式ジェットミルから水分散液を取り出し、この水分散液に硝酸銀水溶液を加えて撹拌して、セルロース繊維が分散し、硝酸銀塩が溶解した液を得た。このとき、液におけるセルロース繊維/硝酸銀の固形分比率(重量比)は1/90であった。
(3)上記の液100mLを湿式ジェットミルにセットして、63℃、150MPaで処理した。この処理は5回繰り返して行った。
(4)処理した混合液に水を加え、限外ろ過膜(分画分子量:10000)を用いて、当該液に含まれる金属塩をろ液として除去した。ここで、ろ液に含まれていた銀元素の量を、ICP発光分析装置を用いて測定した。このとき検出される銀元素は、未反応の硝酸銀に由来するものである。また、原料の硝酸銀水溶液に含まれていた銀元素の量も測定した。そして、当該硝酸銀水溶液に含まれていた銀元素の量と、ろ液に含まれていた銀元素の量との差分から反応率を算出した。その結果、反応率は57.1%であった。
(5)透過型電子顕微鏡装置(TEM)を用いて複合体のTEM像の撮影を行った。
(6)液に含まれている複合体をメンブレンフィルター(孔径:0.2μm)で回収して、得られた複合体を室温で自然乾燥させた。そして、得られた複合体を、X線回折装置(XRD)を用いて評価した。
(7)走査型電子顕微鏡装置(SEM)を用いて複合体のSEM像の撮影を行った。
【0038】
図1にXRDパターンを示す。図1において、回折角(2θ)が38°付近のピークは金属銀の結晶相に由来するピークであり、複合体は金属銀を含むことがわかった。また、回折角(2θ)が15°、22°、35°付近のピークはセルロース繊維に由来するピークであり、複合体はセルロース繊維を含むことがわかった。
【0039】
図2にTEM像を示す。図2に示すTEM像から、金属粒子の平均粒径は7.1nm(標準偏差1.6nm)であることがわかった。平均粒径は得られたTEM像において、明暗が明瞭で粒子の輪郭を判別できる粒子を50個選択し、粒子の長軸径を、画像解析ソフトウエアを用いて計測し平均することによって求めた。
【0040】
図3にSEM像を示す。図3にSEM像から、複合体はセルロース繊維を含み、そのセルロース繊維の表面に金属粒子(白い点)が付着していることがわかった。装置付属のツールでセルロース繊維の平均繊維径を測定したところ、平均繊維径は30nmであった。
【0041】
実施例2
工程(3)において、処理の条件を26℃、50MPaに変えた以外は実施例1と同様にして液を処理した。このときの反応率(%)は3.8%であった。そして、実施例1と同様にして金属粒子の平均粒径を求めたところ、平均粒径は3.9nm(標準偏差0.8nm)であった。結果を図4及び5に示す。
【0042】
実施例3
工程(3)において、処理の条件を48℃、100MPaに変えた以外は実施例1と同様にして液を処理した。このときの反応率(%)は16.3%であった。そして、実施例1と同様にして金属粒子の平均粒径を求めたところ、平均粒径は6.6nm(標準偏差1.5nm)であった。結果を図4及び5に示す。
【0043】
実施例4
工程(3)において、処理の条件を73℃、180MPaに変えた以外は実施例1と同様にして液を処理した。このときの反応率(%)は69.7%であった。そして、実施例1と同様にして金属粒子の平均粒径を求めたところ、平均粒径は13.4nm(標準偏差9.9nm)であった。結果を図4及び5に示す。
【0044】
実施例5
工程(2)において、硝酸銀水溶液の代わりに、金含有水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして液を処理した。そして実施例1と同様にして、TEM像の撮影を行った。TEM像を図6に示す。実施例1と同様にして金属粒子の平均粒径を求めたところ、平均粒径は4.4nm(標準偏差1.0nm)であった。
【0045】
実施例6
工程(2)において、硝酸銀水溶液の代わりに、白金含有水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして複合体を得た。そして実施例1と同様にして、TEM像の撮影を行った。TEM像を図7に示す。実施例1と同様にして金属粒子の平均粒径を求めたところ、平均粒径は13.0nm(標準偏差3.4nm)であった。
【0046】
比較例1
実施例1における工程(3)を以下の工程(3)’のように変更して液を処理した。そして、実施例1と同様にして、TEM像の撮影を行った。
(3)’液100mLを、還流冷却管を備えたビーカーに入れて、60℃、30分間加熱した。
【0047】
図8に複合体のTEM像を示す。得られたTEM画像において、粒径の異なる粒子同士が重なりあって粒子の輪郭を判別することができず、個々が独立した粒子を選別することができなかったため、平均粒径を求めることができなかった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8