特許第6566443号(P6566443)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6566443
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】チーズ製品を被覆する方法
(51)【国際特許分類】
   A23C 19/16 20060101AFI20190819BHJP
【FI】
   A23C19/16
【請求項の数】12
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2016-505853(P2016-505853)
(86)(22)【出願日】2014年4月4日
(65)【公表番号】特表2016-515826(P2016-515826A)
(43)【公表日】2016年6月2日
(86)【国際出願番号】EP2014056881
(87)【国際公開番号】WO2014162009
(87)【国際公開日】20141009
【審査請求日】2017年3月6日
(31)【優先権主張番号】1353076
(32)【優先日】2013年4月5日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505322441
【氏名又は名称】ベル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ピエール−イヴ・ペナラン
【審査官】 松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−010771(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/033296(WO,A1)
【文献】 独国特許出願公開第10122635(DE,A1)
【文献】 特開2000−355389(JP,A)
【文献】 特表2009−539719(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0064206(US,A1)
【文献】 特開2011−225576(JP,A)
【文献】 特開2005−059860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C 19/16
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/AGRICOLA/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆されたチーズ製品を製造する方法であって、
a)2枚の被覆フィルムの間に粘性状態のチーズ材料を前記被覆フィルムと接触させて注入する工程であって、
前記被覆フィルムが、前記被覆されたチーズ製品の貯蔵温度で展性であり、各被覆フィルムが、外面に、ゲル状態の被覆組成物C1からなる少なくとも1層の外側層を含み、
前記被覆組成物C1が、
- 前記被覆組成物C1の総質量に対して少なくとも5質量%の、ポリオレフィン、酢酸ビニルをベースとするコポリマー、スチレンをベースとするコポリマー、脂肪酸のビニルエステルをベースとするコポリマー、脂肪アルコールのアクリラートをベースとするコポリマー、脂肪アルコールのメタクリラートをベースとするコポリマー、脂肪アルコールのエーテルをベースとするコポリマー、及びこれらの混合物、並びにバイオポリマーからなる群から選択される、少なくとも1種の疎水性ポリマー又は疎水性ポリマーの混合物
- 前記被覆組成物C1の総質量に対して0.1質量%〜50質量%の、可塑剤;及び
- 前記被覆組成物C1の総質量に対して0.1質量%〜60質量%の、充填剤
を含み、
2枚の前記被覆フィルムが、チーズ材料の注入前に別々に分離される、工程と、
b) 2枚の前記被覆フィルムの各々の外面に圧力をかけることによって少なくとも1つの被覆されたチーズ製品を成形して、前記チーズ材料を含むチーズコアと、前記被覆されたチーズ製品の貯蔵温度で展性であり、湿気及び微生物を防いで密封し、コアの周囲を完全に囲んでいる被覆物とを含む被覆されたチーズ製品を得る工程であって、前記被覆物が、前記被覆組成物C1の少なくとも1層の外層を含む2枚の前記被覆フィルムにかけた圧力による組立てによって形成される、工程と
を含み、
前記注入工程a) が行われると、直ちに続けて前記成形工程b)が行われ、
前記成形工程b) が、チーズ材料の周りの被覆物の成形及び前記被覆物の密封を可能にする、方法。
【請求項2】
前記被覆フィルムが各々、その内面に、前記被覆組成物C1とは異なる、ゲル状態の被覆組成物C2の少なくとも1層の内層を更に含み、前記成形工程b)の後に得られる被覆物が、前記被覆組成物C1の少なくとも1層の外層、及びコアと前記少なくとも1層の外層との間に、被覆組成物C2からなる前記少なくとも1層の外層とは異なる少なくとも1層の内層を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記注入工程a)の前に、粘性状態の少なくとも前記被覆組成物C1の供給を含む、2枚の被覆フィルムを形成する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記注入工程a)の前に、粘性状態の少なくとも前記被覆組成物C1の供給、及び粘性状態の少なくとも前記被覆組成物C2の供給を含む、2枚の被覆フィルムを形成する工程を更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
粘性状態の前記被覆組成物C1及び/又はC2の供給後に、前記被覆組成物C1及び/又はC2をゲル化することができる冷却工程が続く、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記チーズ材料が、プロセスチーズ、フレッシュチーズ、フレッシュプロセスチーズ、又は再結合法により得られるチーズである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記充填剤が鉱物フィラーである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記充填剤が、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩化ナトリウム、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記被覆組成物C2が、少なくとも1種の多糖又は多糖誘導体を含む水性被覆組成物である、請求項2から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記多糖又は多糖誘導体が、デンプン及びその誘導体、セルロース及びその誘導体、セロハン、アルギン酸塩、ペクチン酸塩、キサンタン、ジェラン、カラゲナン、プルラン(pulullane)、キトサン、キチン、並びに親水性ガムからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法に従って得ることができる被覆されたチーズ製品であって、
前記被覆されたチーズ製品は、粘性状態のチーズ材料を含むコアと、前記被覆されたチーズ製品の貯蔵温度で展性であり、湿気及び微生物を防いで密封し、コアの周囲を完全に囲んでいる被覆物とを含み、
前記被覆物が、ゲル状態の被覆組成物C1からなる少なくとも1層の外側層を外面に含む被覆フィルムから形成されており、前記被覆フィルムは、前記被覆されたチーズ製品の貯蔵温度で展性であり、前記被覆組成物C1は、
- 前記被覆組成物C1の総質量に対して少なくとも5質量%の、ポリオレフィン、酢酸ビニルをベースとするコポリマー、スチレンをベースとするコポリマー、脂肪酸のビニルエステルをベースとするコポリマー、脂肪アルコールのアクリラートをベースとするコポリマー、脂肪アルコールのメタクリラートをベースとするコポリマー、脂肪アルコールのエーテルをベースとするコポリマー、及びこれらの混合物、並びにバイオポリマーからなる群から選択される、少なくとも1種の疎水性ポリマー又は疎水性ポリマーの混合物
- 前記被覆組成物C1の総質量に対して0.1質量%〜50質量%の、可塑剤;及び
- 前記被覆組成物C1の総質量に対して0.1質量%〜60質量%の、充填剤
を含み、
前記チーズ材料が、周りの前記被覆物によって密封されている、
被覆されたチーズ製品。
【請求項12】
被覆されたチーズ製品であって、
チーズ材料を含むコアと、前記被覆されたチーズ製品の貯蔵温度で展性であり、湿気及び微生物を防いで密封し、コアの周囲を完全に囲んでいる被覆物とを含み、
前記チーズ材料が、プロセスチーズ、フレッシュチーズ、フレッシュプロセスチーズ、又は再結合法により得られるチーズであり、
前記被覆されたチーズ製品には、目に見える密封部分が残されておらず、
前記被覆物が、
- 前記被覆物の総質量に対して少なくとも5質量%の、ポリオレフィン、酢酸ビニルをベースとするコポリマー、スチレンをベースとするコポリマー、脂肪酸のビニルエステルをベースとするコポリマー、脂肪アルコールのアクリラートをベースとするコポリマー、脂肪アルコールのメタクリラートをベースとするコポリマー、脂肪アルコールのエーテルをベースとするコポリマー、及びこれらの混合物、並びにバイオポリマーからなる群から選択される、少なくとも1種の疎水性ポリマー又は疎水性ポリマーの混合物
- 前記被覆物の総質量に対して0.1質量%〜50質量%の、可塑剤;及び
- 前記被覆物の総質量に対して0.1質量%〜60質量%の、充填剤
を含む、被覆されたチーズ製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆されたチーズ製品を製造する方法及びこのようにして得られた被覆されたチーズ製品に関する。より詳細には、本発明は、貯蔵温度で展性ワックスの機械的性質を有する被覆物で粘性形態のチーズ材料を包装することに関し、この被覆物は湿気及び微生物を防いで密封している。
【背景技術】
【0002】
チーズ製品の被覆は、例えば、特許出願FR643128に記載されるように、溶融状態にした、化石又は再生可能物由来の被覆用ワックスを用いて、冷たい製品及び冷凍した製品を浸漬、噴霧、又は摩擦することによって一般に行われる。例えば、20g〜100gに小分けして包装するこのタイプの製品は、滅菌されていないので、一般に低温に保たれる。ワックスはチーズ製品を被覆するが、貯蔵寿命は室温でほんの数日である。浸漬/噴霧で被覆するための既知の装置は、完全な滅菌状態での包装には適していない。
【0003】
これらの被覆された製品は、特に、それらの非常に優れた携帯性、並びに被覆物の展性及びその引裂き可能な性質による面白い特性から消費者に強く求められている。
【0004】
更に、溶融チーズタイプの製品、特に粘性ペースト形態のものは、例えば、特許出願FR2926792及びFR2886518に記載されるように、形が事前加工されている、非展性の剛性包装(プラスチックトレー、事前型押しアルミニウムフィルム等)で一般に包装されている。使用される材料の性質は、包装がその形を保持し、製品と外部環境を隔てるために密封することができるような性質である。この方法では、チーズ製品は、通常、粘性状態で搬送され、約70℃の温度でトレイ又はバイシェル(bi-shell)に注入されるが、ここでの製品の熱が、包装及び包装作業からもたらされる微生物汚染のリスクを大幅に低減する。
【0005】
しかし、特に、湿気及び微生物を防ぐバリア性、並びに被覆物を容易に手で開封できる引裂き性に関して、消費又は保存の通常温度(1〜40℃)に冷却した後に展性ワックス被覆物の有利な特性を有する被覆材料で粘性状態のチーズ製品を被覆する既知の方法は、熱間包装であろうと冷間包装であろうと存在しない。
【0006】
浸漬又は噴霧によるワックスでの従来の包装は、溶融及び粘性状態のチーズ製品には不可能である。実際、包装温度では、チーズ製品と被覆物のどちらも粘性状態にあり、それぞれの粘度が互いに非常に近い場合、部分的に混合する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】FR643128
【特許文献2】FR2926792
【特許文献3】FR2886518
【特許文献4】WO03/039727
【特許文献5】WO03/039965
【特許文献6】US1,970,396
【特許文献7】US2,152,101
【特許文献8】US2,288,327
【特許文献9】WO2008/151820
【特許文献10】EP1788884
【特許文献11】FR2778821
【特許文献12】FR2818501
【特許文献13】WO03/051130
【特許文献14】WO2006/030128
【特許文献15】EP1345497
【特許文献16】FR2958120A1
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】ECK及びGILLIS J.C.、「Le fromage」、第3版、Lavoisier Paris編
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、1層又は複数層の被覆物で熱間又は冷間粘性形態で包装することができるチーズ製品が求められており、ここで、被覆材料は、チーズ製品に良好な保護性及び貯蔵性を与えるのに十分な疎水性であり、外部物質(製品を変質させるバクテリア及びカビ)に対する全面的なバリア、並びにチーズ製品からの水分損失(6カ月間で1質量%未満の損失)を防ぐための水分に対するバリアを提供するものである。
【0010】
チーズ分野以外では、被覆物が水溶性組成物からなる、食品以外の製品に関与するカプセル製造方法が実際に知られている。このようなカプセルは、例えば、化粧料を含有するバスビーズ、又は患者が摂取すると薬を放出する医薬溶液を含むカプセルである。このような方法は、例えば国際特許出願WO03/039727又はWO03/039965に記載されており、ゼラチン、デンプンを含む組成物、ある種のアクリルポリマー等の合成ポリマー、多糖、ガム、変性ゼラチン、プルラン、グルコマンナン、又はセルロース、及びこれらの誘導体等のバイオポリマー等の水溶性組成物を使用する。しかし、これらの被覆物は水溶性であり、水に対して高浸透性であるので、チーズ製品の被覆物には適さない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願人は、熱間又は冷間粘性状態のチーズ製品を包装する方法及びそれに特に適した関連する被覆組成物であって、この被覆物がコールドワックス被覆物の性質及び製品貯蔵における有利性及びどこにでも携帯できる性能を有する、方法及び被覆組成物の開発に成功した。
【0012】
被覆方法
この目的のため、本発明は、被覆されたチーズ製品を製造する方法であって、
a)2枚の被覆フィルムの間に粘性状態のチーズ材料を前記フィルムと接触させて注入する工程であって、前記フィルムが、前記被覆されたチーズ製品の貯蔵温度で展性であり、各フィルムが、外面にゲル状態の被覆組成物C1からなる少なくとも1層の外側層を含み、前記被覆組成物が、少なくとも1種の疎水性ポリマーを含む、工程と、
b)2枚の前記被覆フィルムの各々の外面に圧力をかけることによって少なくとも1つの被覆されたチーズ製品を製造して、前記材料を含むチーズコアと、前記被覆されたチーズ製品の貯蔵温度で展性であり、湿気及び微生物を防いで密封し、コアの周囲を完全に囲んでいる被覆物とを含む被覆されたチーズ製品を得る工程であって、前記被覆物が、2枚の前記被覆フィルムにかけた圧力によって形成され、前記被覆組成物C1の少なくとも1層の外層を含む、工程とを含む、方法に関する。
【0013】
本明細書では、「貯蔵温度」は、本発明による被覆されたチーズ製品が消費前に貯蔵される温度又は温度範囲を指す。この温度は、1℃〜40℃、好ましくは1℃〜30℃、より好ましくは1℃〜20℃の間、例えば2℃〜10℃の間である。
【0014】
本発明の方法の一変形によれば、前記フィルムは各々、その内面に、前記被覆組成物C1とは異なるゲル状態の被覆組成物C2の少なくとも1層の内層を更に含む。
【0015】
この変形によれば、製造工程b)の終わりに得られる被覆物は、前記少なくとも1種の被覆組成物C1の少なくとも1層の外層、及びコアと前記少なくとも1層の外層との間に、少なくとも1種の被覆組成物C2からなる前記少なくとも1層の外層とは異なる少なくとも1層の内層を含む。
【0016】
被覆されたチーズ製品
本発明はまた、本発明又は上述の変形による方法に従って得ることができる被覆されたチーズ製品に関する。
【0017】
これは、貯蔵温度で展性である被覆物を有し、ここで、前記被覆物は、好ましくは引裂き可能である。
【0018】
一実施形態によれば、被覆されたチーズ製品のコアは、チーズ材料でできている。
【0019】
被覆されたチーズ製品のコアは、任意選択でコア/シェル型構造の形をしていてもよく、ここで、前記コアは、食用フィリングからなり、チーズ材料とは異なり、前記シェルにより周囲が完全に囲まれており、このシェル自体はチーズ材料でできている。
【0020】
食用フィリングとしては、例えば、液体食用組成物、ゲル化した又は粘性のチーズ又はチーズ以外のものを使用することができる。一般に、チーズ、野菜、シリアル、チョコレート、又はフルーツをベースとした食用組成物を使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本出願においては、図1に断面で概略的に示すように、用語「被覆されたチーズ製品」(10)は、以下のものを含む食用製品を指す:
- チーズ材料(22)及び場合により食用フィリング(25)を含むコア(20)、並びに
- 湿気を防いで密封し、コア(20)の周囲を完全に囲んでいる被覆物(30);ここで、前記被覆物(30)は、少なくとも1種の被覆組成物C1からなる少なくとも1層の外層(40)を含む。
【0022】
本出願においては、図2に断面で概略的に示すように、用語「被覆されたチーズ製品」(12)はまた、以下のものを含む食用製品を指す:
- チーズ材料(22)及び場合により食用フィリング(25)を含むコア(20)、並びに
- 湿気を防いで密封し、コア(20)の周囲を完全に囲んでいる被覆物(35);ここで、前記被覆物(35)は、少なくとも1種の被覆組成物C1からなる少なくとも1層の外層(40)、及びコア(20)と前記少なくとも1層の外層(40)との間に位置する、少なくとも1種の被覆組成物C2からなる前記少なくとも1層の外層(40)とは異なる少なくとも1層の内層(45)とを含む。
【0023】
図3は、本発明による被覆されたチーズ製品の可能な形の様々な実施例を示している。
【0024】
「1つを含む(include a)」又は「1つを有する(have a)」は、そうでないことが明示されていない限り、それぞれ「少なくとも1つを含む(include at least one)」又は「少なくとも1つを有する(have at least one)」を意味する。
【0025】
用語「XはY及びZを含む(X includes Y and Z)」はまた、そうでないことが明示されていない限り、「XはY及びZからなる(X consists of Y and Z)」の好ましい一実施形態を包含する。
【0026】
図1に示す典型的な一実施形態によれば、被覆されたチーズ製品の被覆物は、被覆組成物C1の外層を含む。この実施形態によれば、外層は、空気に接しており、被覆されたチーズ製品の内部を、外部から、特に、湿気、微生物、及び場合により空気から遮断している。
【0027】
図2に示す別の典型的な一実施形態によれば、被覆されたチーズ製品の被覆物は、被覆組成物C1の外層及び被覆組成物C2の内層を含む、又はからなり、ここで、前記内層は、チーズ材料及び前記外層に接している。この実施形態によれば、内層は、チーズ材料を外層から完全に隔てており、一方、外層は、空気に接しており、被覆されたチーズ製品の内部を、外部環境から、特に湿気及び微生物から遮断している。
【0028】
有利な一実施形態によれば、被覆されたチーズ製品の被覆物は、以下のものからなる多層被覆物である:
- チーズ材料に接し、且つそれを完全に覆っている内層、
- 前記第1内層に接し、且つそれを完全に覆っている中間層、及び
- 前記中間層に接し、且つそれを完全に覆っている、前記内層と同じ又は異なる外層。
【0029】
この方式では、少なくとも外層は、チーズ材料を外部環境から、特に、湿気、微生物、及び場合により空気から隔てる疎水性被覆組成物からなる。
【0030】
内層及び外層の性質を以下に詳述する。
【0031】
本発明にはまた、被覆物の延性特性のために製造段階中に様々な幾何構造に従って成形され得る被覆されたチーズ製品が得られるという利点がある。
【0032】
より詳細には、本発明の方法は、様々な大きさ及び形、例えば、肉厚円板(Minibabybel(登録商標)タイプ)、ボール、卵形、三角形、又は長方形等の幾何学的な形、動物、フルーツ、野菜、ボトルの形等の被覆されたチーズ製品の入手を可能にする。更に、注入中の粘性特性のために、チーズ製品はまた、型の形ひいてはその被覆物の形をとる。被覆されたチーズ製品は、1人分サイズ(約5〜40g)でもグループサイズ(40〜約600g)でもよい。
【0033】
硬質又は軟質のフィルム被覆物、例えばアルミニウムで包装されたフレッシュチーズ又はプロセスチーズの一部とは対照的に、本発明による被覆方法は、開封機構を有する又は有さない、完全に密封且つ気密な被覆物で被覆されて、汚染のリスクがかなり低減されたチーズ製品を得られるようにする。
【0034】
開封の必要に従って、開封機構を、有利にはチーズと被覆材料との間、更には被覆構造中に組み込むことができる。前記開封機構は、一般に、チーズ材料を被覆フィルムと接触させて注入する前に、被覆フィルムのうちの1枚に配置するか、又はそこに組み込む。この開封機構は、ワックスに覆われたチーズ(cheese in wax (fromages sous cire(タブ)))の場合に、又は引裂き可能若しくは剥離可能な蓋(引裂き可能なテープ)に、又は更にいわゆる「プレプレグ」複合材料に見られ得る強化布の形態に見ることができるものと似ている。この開封機構により、当業者に周知の展性特性、即ち、ゴーダ、Babybel(登録商標)、又はMiniBabybel(登録商標)等の製品に見ることができるチーズワックスの性質に似た性質を有する布を引裂くことが可能になる。この展性は、25℃でASTM D1321-10に従って測定した材料の貫入係数により説明することができ、一般に0.5〜6.0mmである。被覆材料を引裂いた後、引裂き後に得た被覆物片の数に応じていくつかの工程で製品を被覆物から手作業で取り出すことができる。
【0035】
本発明による方法のいくつかの重要な利点を、型成形ユニットを備えた標準的なチーズ設備で実施されるような従来技術による方法と比較して、以下に更に説明する。
【0036】
本発明による方法を実施するための装置が占める空間は、縮小されて、可搬式の生産設備を備えることさえ可能になる。実際、本方法は個々の型を使用する必要がなく、設備には前記の個々の型のための収納空間が必要ない。更に、本発明の方法によれば、任意の形のチーズ製品を製造するためのロータリー型への交換が、非常に簡易化される。
【0037】
更に、被覆前にチーズ材料を個々の型の中で固化(ゲル化)させる時間、一般に注入後少なくとも2日が回避される。ここでは、この固化は、被覆物内で直接起こる。
【0038】
本発明による方法は、被覆されたチーズ製品の連続製造を可能にし、チーズ材料の注入速度を制御することで容易に自動化することができる。
【0039】
被覆フィルム
注入ステップa)の前に、好ましくは、粘性状態の被覆組成物C1又は被覆組成物C1及びC2を供給して、被覆フィルムを事前に形成する。
【0040】
有利には、粘性状態の前記被覆組成物C1及び/又はC2の供給後に冷却工程が続き、この工程において、前記被覆組成物C1及び/又はC2がゲル状態になる。
【0041】
被覆組成物C1は、一般に、2個の別個のローラー上に粘性状態で注がれ、次いで、前記ローラーと接触させて冷却してゲル状態にし、それにより2枚の被覆フィルムの各々の外層が形成される。
【0042】
被覆フィルムが更に内層を含む場合、ローラー上ですでに形成され、おそらくすでにゲル状態になっている被覆組成物C1の外層上に被覆組成物C2を堆積させて、前記内層を形成する。
【0043】
「粘性」は、一般に被覆組成物の供給中に、この被覆組成物が、重力の作用下で、又は前記被覆組成物にかけられた圧力の作用下で流体のように流れることを意味する。
【0044】
「ゲル状態」は、被覆組成物の材料が、固化し、実質上固体になり、重力作用下又は圧力作用下で流れないことを意味する。しかし、「ゲル」状態において、これらの材料は、製造工程中、被覆されたチーズ製品を密封するのに十分な展性を有する。
【0045】
本発明によれば、「ゲル」状態は、特に「半結晶固体」状態を示し、これは前記材料の結晶化後に得られる。
【0046】
本発明においては、「プラスチック材料」は、延性プラスチック挙動、即ち、伸張又は圧縮による単一な機械的応力の影響下で非可逆的に変形する性能を有する材料を意味する。更に、この最初の変形に続いて、その展性特性のために、この材料はまた、貯蔵又は消費の温度において塑像用クレイのように成形、切断、及び再構築できる性能を有する。したがって、展性材料は、伸張後に貯蔵又は消費の温度で再成形することができない、一般にポリエチレン又はポリプロピレンのみからなるフィルムタイプ包装又はシェル材料とは異なる。
【0047】
材料の展性は、ASTM D1321-10に定義される方法を使用して、材料への穿孔の貫入係数により一般に測定される。展性であると言われる材料に関して、25℃で測定された貫入係数は、一般に0.1〜12.0mm、好ましくは0.1〜9.0mm、より好ましくは0.1〜6.0mmの範囲である。
【0048】
「延性材料」は、機械的応力によって生じた変形が最初は回復し、その後、粘性流により恒久的に変形した状態になるプラスチック材料を意味する。
【0049】
通常、前記少なくとも1種の被覆組成物C1を、その供給中に、前記組成物C1が粘性状態にある温度T1に加熱する。温度T1は、好ましくは70℃〜180℃、より好ましくは70℃〜130℃である。
【0050】
温度T1は、被覆組成物C1の液体-固体転移温度(TLS)又は液体-ゲル転移温度(TLG)(被覆組成物C1が上述の粘性液体状態から上述の半結晶固体状態又はゲル状態に変化する温度)より高く、前記TLS又はTGL温度よりも、好ましくは30℃では2℃超高く、より好ましくは20℃では2℃超高い。
【0051】
通常、前記少なくとも1種の被覆組成物C2を、その供給中に、前記組成物C2が粘性状態にある温度T2に加熱する。温度T2は、好ましくは70℃〜120℃、より好ましくは70℃〜100℃である。
【0052】
温度T2は、被覆組成物C2の液体-固体転移温度(TLS)又は液体-ゲル転移温度(TLG)(被覆組成物C2が粘性液体から半結晶固体状態又はゲル状態に変化する温度)より高く、前記TLS又はTGL温度よりも、好ましくは30℃では2℃超高く、より好ましくは20℃では2℃超高い。
【0053】
チーズ材料の注入前では別々になっている2枚のフィルムは、特に色又は表面質感の点から様々な構造及び様々な性質を有することができる。
【0054】
一実施形態によれば、被覆フィルムの少なくとも1枚は単層である、即ち、これは被覆組成物C1の単一層からなる。2枚のフィルムも単層被覆物であり得、各々は、同じでも異なっていてもよい被覆組成物C1からなる。
【0055】
或いは、2枚の被覆フィルムの少なくとも1枚は多層である、即ち、これは少なくとも2層からなる。多層フィルムは、二重層であり得、即ち、内層と、内層とは異なる外層とからなる。
【0056】
多層フィルムは、様々な組成物の3層以上の層の重ね合せからなり得る。好ましくは、類似タイプの層(例えば、親水性又は疎水性)が、互いに接している。
【0057】
多層被覆物では、特に被覆物が1層又は複数層の疎水性層及び1層又は複数層の親水性層を含む場合、親水性層は、有利には、疎水性層の構成物質がチーズ材料に移入するのを防ぐバリアであり(逆の場合も同じ)、一方、疎水性層は、好ましくは、湿気及び微生物を確実に防ぐバリアである。
【0058】
内層、中間層、及び外層を通常含む、上述のような多層被覆フィルムでは、前記中間層は、前記内層と外層との間の相溶化剤として働く。
【0059】
「相溶化剤」は、接着性が弱い又はない2層間の接着を確実にする材料を意味する。相溶化剤は、ポリマー、ポリマー含有添加剤、イオン性官能基を有するポリマー、ポリマーブレンド、又はポリマー含有充填剤であり得る。
【0060】
或いは、相溶化材料を、前記内層及び/又は前記外層に組み込むことができる。
【0061】
前記フィルムの外面は、被覆されたチーズ製品の被覆物の外面を構成することを意図しており、それ自体は空気に接している。
【0062】
前記フィルムの内面は、被覆されたチーズ製品の被覆物の内面を形成することを意図しており、それ自体はチーズ材料に接している。
【0063】
フィルムの各々は、通常、0.1mm〜5mm、好ましくは0.1mm〜3mm、より好ましくは0.2mm〜2mmの厚みを有する。
【0064】
一実施形態によれば、開封機構は、被覆フィルムの形成中に加えられる。
【0065】
注入
注入工程は、ゲル状態の2枚の被覆フィルムを互いに向かい合わせて連続的に巻き出し、通常注入ノズルを用いて、この2枚のフィルム間に粘性状態の被覆すべきチーズ材料を注入することによって通常行われる。
【0066】
2枚の被覆フィルム間にチーズ材料を注入する前に、好ましくは、前記フィルムを互いに近づけて、粘性状態で注入されるチーズ材料を充填させることが意図される空間を設定する。
【0067】
被覆されたチーズ製品のコアが食用フィリングを含む場合、前記フィリング及び粘性状態のチーズ材料を、フィリングを注入する中心オリフィスと、チーズ材料を注入する周辺オリフィスとを有する同軸ノズルを用いて、通常一緒に注入する。
【0068】
工程a)で注入するチーズ材料は、前記チーズ材料が粘性状態にある温度Taにする。
【0069】
「粘性状態」は、チーズ材料が、重力の作用下で、又は前記チーズ材料にかけられた圧力の作用下で流体のように流れることを意味する。
【0070】
温度Taは、好ましくは50℃〜100℃、より好ましくは70℃〜95℃、例えば70℃〜75℃である。
【0071】
好ましくは、温度Taは、被覆組成物C1のTLS又はTLGより低い。被覆層C2が存在する場合、温度Taは、好ましくは、被覆組成物C2のTLS又はTLGより低い。これにより、粘性状態のチーズ材料をゲル状態の被覆フィルムと接触させて注入しても、前記フィルムの構造の不安定化は阻止される。
【0072】
成形
次いで、2枚の被覆フィルム及び注入工程a)の最後に注入したチーズ材料(及び任意選択でフィリング)の組合せを工程b)において成形して、上記で定義した1つのチーズ製品又は一連の被覆されたチーズ製品を得る。
【0073】
「成形」は、それにより密封及び気密にされている1つ又は一連の被覆されたチーズ製品が得られる、チーズ材料のコアの周りの被覆物の型成形及び密封処理を意味する。
【0074】
成形工程は、例えば、相補形の凹部を特徴とする2個の回転するローラー間に2枚の被覆フィルム及びチーズ材料を一緒に導入して、被覆されたチーズ製品に所望の形を型押しすることによって行われる。チーズ材料のこれらの被覆を実現するための機械の例は、「R1ソフトゲル機」等の、Caplustech社のいわゆる「ソフトゲル」機である。
【0075】
成形中、好ましくは、フィルムを、被覆組成物の融解温度又はゲル化温度より低い温度、好ましくは前記融解温度又はゲル化温度よりも2℃〜30℃低い、より好ましくは2℃〜15℃低い温度に維持して、フィルムに高い展性特性を与え、例えば、上述の回転するローラー間の加圧下で密封できるようにする。
【0076】
好ましくは、成形工程中に、フィルムを融解温度又はゲル化温度を超える温度に加熱しない。
【0077】
この実施形態の実施は、例えば、特許US1,970,396、US2,152,101、及びUS2,288,327に記載される「ソフトゲル」タイプのカプセル(RP Scherer社)の製造に使用される装置を用いて行う。
【0078】
本発明の方法の成形工程は、チーズ材料の周りの被覆物の成形及び前記被覆物の密封を可能にし、ここで、密封部分は被覆面に組み込まれる。好ましくは、成形工程は、縁又は膨らみ等の目に見える密封部分を残さないようにすることが可能である。したがって、被覆物は、自発的な機械的開封行為によって引き裂くことが可能である。この開封を容易にするために、有利には、被覆フィルムの成形中又は被覆物の成形中に組み込まれ、且つ被覆物を引き裂いて、チーズ材料を入手できるようにする開封機構を使用する。
【0079】
この成形工程により、包装中の汚染のリスクなしに一工程でチーズ材料を被覆物で包装することが可能になる。
【0080】
特に、本発明による方法は、湿気及び微生物を防いで密封する被覆物で粘性状態の熱い又は冷たいチーズ材料を包装することを可能にする。注入を行ったら、好ましくは、直ちに成形工程を続けて行う。このようにして、本発明による方法は、製品を消費するときまで、前記包装工程中の外部微生物の汚染のリスクなしにチーズ材料を包装することを可能にする。
【0081】
本発明による方法は、被覆されたチーズ製品の連続製造を可能にし、チーズ材料の注入速度を制御することで容易に自動化することができる。
【0082】
成形工程に続いて、得られた被覆されたチーズ製品を、通常、放出し、集める。
【0083】
チーズ材料は、成形中又は成形後に後続の冷却工程において20℃より低温、より詳細には6℃(冷蔵庫中の通常の貯蔵温度)より低温、例えば0〜6℃の間に冷却することができる。
【0084】
したがって、本発明は、得られた被覆されたチーズ製品の食品安全性の向上ひいては貯蔵寿命の延長、同時に、その官能的性質の維持及び消費者への楽しい包装の提供を可能にする。実際、消費及び貯蔵の温度で展性を有するこの被覆物のために、消費者、特に子どもは、塑像用クレイと同じようにこの被覆材料で楽しむであろう。
【0085】
チーズ材料
本出願においては、「チーズ材料」は、以下の任意の食品を意味する:
- ウシ、ヤギ、ヒツジ、バッファロー等の乳を加工して得られるもの、及び/又は
- 乳由来の原材料及び任意選択で他の食品成分から少なくとも部分的に得られるもの。
【0086】
本発明による方法の実施に適するには、チーズ材料が容易に注入できる粘性形態を示し、その後、被覆物を引き裂いている間にその被覆物から不所望に流れないように、十分な固体テクスチャ、特にゲル様に固化することが望ましい。
【0087】
チーズ材料は、特に以下のものを含む:
- ナチュラルチーズの溶融(一般に溶融塩の存在中)から得られる「プロセスチーズ」及びプロセスチーズ特性のもの(例えば、Vache qui rit(登録商標))、
- 溶融法以外の方法により得られるチーズ特性のもの、特に、いわゆる再結合法(WO2008/151820及びEP1788884に記載)及びテクスチャ再生(retexturing)法(特許FR2778821及びFR2818501に記載)により得られるチーズ特性のもの、並びに
- 本発明の方法による使用に適した粘性構造を有するフレッシュチーズ又はフレッシュプロセスチーズ(当業者に知られているように、例えば乳酸カード(lactic curd)から通常得られる)等の任意の他のチーズ又はチーズ製品(例えばKiri(登録商標)又はBoursin(登録商標))。
【0088】
本発明による方法において使用するチーズ材料は、通常、プロセスチーズ、フレッシュチーズ、フレッシュプロセスチーズ、又は再結合法により得られるチーズである。
【0089】
本発明によるチーズ材料は、特に粘性状態にある場合、注入ノズルを通して容易に注入可能である。
【0090】
温度Tにおける「粘性状態」は、チーズ材料が、この温度になると、通常注入中に、重力の作用下で、又は前記チーズ材料にかけられた圧力の作用下で流体のように流れることを意味する。
【0091】
粘性状態のチーズ材料は、通常、Anton Paar社のRheolab QCレオメータを用いて75℃及びせん断速度10s-1で測定すると0.1〜1000Pa.s、より好ましくは1〜100Pa.sのせん断粘度を有する。
【0092】
好ましくは、最終的な被覆されたチーズ製品のチーズ材料は、消費温度、通常4℃〜25℃で延展可能なペースト形態をしている、加工された、フレッシュ又はフレッシュプロセスチーズである。
【0093】
好ましくは、最終的な被覆されたチーズ製品のチーズ材料は、消費温度、通常4℃〜25℃で固いドウ形態をしている、加工された又は加工されていないチーズである。
【0094】
「ナチュラルチーズ」を得るには、出発物の乳を、タンパク質及び脂肪において標準化し、又は標準化せず、低温殺菌し、又は低温殺菌せず、レンネットやその代用品等の凝固剤の作用によって、若しくは乳に乳酸菌を播種し、カゼインの等電点(pH=4.6)まで酸性化することによって、若しくは前の2つの実施態様を組み合わせることによって凝固させ、水抜きし、成形し、硬化させ、場合により圧搾し、且つ/又は所望の感覚受容特性が得られるまで熟成室の最適条件下で発育させる特定の熟成フローラの作用により熟成させる。
【0095】
乳の性質、凝固方式、精製工程の有無に従って、フレッシュチーズ(乳酸凝固、ほぼ精製なし、低固形分(通常40%未満))、ソフトチーズ(混合凝固、水抜き、及び場合により精製、前述よりも高い固形分:35〜40%を超えるが通常50%未満)、及び圧搾チーズ(レンネット凝固、圧搾、及び大抵の場合熟成、並びに高固形分:45%超)に分類される広範な出発材料が得られる。
【0096】
一実施形態によれば、本発明による方法で使用するチーズ材料は、クリームチーズ等のナチュラルチーズである。また、場合によりテクスチャ再生された、ソフトチーズ又は圧搾ペーストチーズをベースとしたチーズ材料を使用することもできる。
【0097】
別の一実施形態では、本発明による方法で使用するチーズ材料は、プロセスチーズである。
【0098】
「プロセスチーズ」又は特殊なプロセスチーズは、加工熱処理下及び通常真空下で、溶融塩と一緒に、又は溶融塩なしで、チーズを溶融することにより得られる製品を意味する。使用する原材料は好ましくは圧搾ペーストチーズであるが、上記で定義した任意のタイプのナチュラルチーズも適している。また、レンネット又は乳酸特性を用いた「凝乳」チーズを使用することもできる。
【0099】
更に、スキム化された若しくはスキム化されていない配合粉乳、バター、AMF(無水乳脂肪)、ホエイパウダー、又は液体若しくは粉末形態のタンパク質濃縮物に添加することができる。乳脂肪を植物性脂肪に、タンパク質を植物タンパク質に部分的に又は完全に置き換えることができる。配合物はまた、親水コロイド等のテクスチャ剤を含むことができる。これらの使用は、湿潤な原材料(低固形分)を使用する場合、非常に柔軟なテクスチャを有する製品を得るのに有利である。チーズの製造は、ECK及びGILLIS J.C.、「Le fromage」、第3版、Lavoisier Paris編による書籍に十分に記載されており、より詳細に参照することができる。
【0100】
本発明においては、従来技術に従って、プロセスチーズ、又は得るべき食味特性に応じてあるカテゴリーのチーズ若しくは複数種の混合物を溶融させたプロセスチーズ調製物を調製する。
【0101】
更に、出発物のチーズ原材料は、チーズ又はプロセスチーズ原材料又は最終製品に付与したい感覚受容特性に基づく。例えば、最終製品にカマンベールのようなソフトペーストタイプチーズ製品の感覚受容特性(食味及び芳香)を付与したい場合、カマンベールからプロセスチーズを調製する。
【0102】
本発明の好ましい一実施形態では、加工するチーズ原材料は、ナチュラルリンドを有するソフトペーストチーズ、フレッシュチーズ、又はフレッシュ乳酸若しくはレンネットカード、又はこれらの成分の混合物の群から選択されるであろう。
【0103】
出発物のチーズとして、ブリー又はカマンベール等の白色リンドを有するソフトペーストチーズ、ゴルゴンゾーラ及びロックフォール等の青カビチーズ、マンスター及びマロワルのような多彩なクラストを有するチーズ、ゴーダ、エダム、カンタル、エメンタール、マースダム、及びオールド又はヤングチェダーチーズ等のハードチーズを挙げることができる。
【0104】
プロセスチーズは、温度が60℃〜100℃での熱処理及び低せん断機械的処理により通常調製される。
【0105】
「低せん断」は、「カッター」タイプ装置において最大1200rpmまでの速度で実施される応力と同じくらいの応力を意味する。
【0106】
デリカテッセン又はプロセスチーズ製造において250〜1200rpm、好ましくは300〜600rpmの間の速度で従来から使用されている市販のカッター(例えば、名称STEPHAN(登録商標)で販売されているもの)で行われる処理を挙げることができ、混練装置、ブレンダー、ミキサー、調理用ミキサー、撹拌機、押出機も適している。
【0107】
更に別の一実施形態では、本発明による方法で使用するチーズ材料は、他のチーズ特性のものである。
【0108】
「他のチーズ特性のもの」は、加工法以外の方法で得られるすべての既知のチーズ特性のもの、好ましくは、再結合又はテクスチャ再生により得られるチーズ特性のものを意味する。様々な調製法が当業者に知られている。
【0109】
調製物は、粉乳、限外ろ過により得られる濃縮液(濃縮乳)から得られる。これらの方法により、以下のほんの数工程で迅速にチーズを得ることが可能になる:粉乳を水、酸、又は脂肪溶液と混合し、場合により酵素を添加し、このようにして得られた混合物を加熱し、様々な添加剤を添加する。これらの技術は、主に、粉乳タンパク質濃縮物及びバターからチーズを得るために再結合を使用する。例えば、WO03/051130は、濃縮タンパク質性材料(CPM)と油脂を混合して、タンパク質ペーストを得た後、水、酸、酸性化酵母を添加し、次いで、75〜95℃に加熱し、冷却し、型成形することを記載している。
【0110】
別の種類の技術がWO2006/030128及びWO2008/151820に記載されており、これらは、特定の乳製品粉末及び適切な再結合ツールによる効率的な再結合法からのチーズの製造を可能にする。タンパク質濃縮物と減少させたラクトース(即ち、総質量に対して10質量%未満のラクトースを含有)の使用は、酸性化酵母の添加を含む連続工程において過度な酸性化を回避するために必要であり、これにより、精製された従来のチーズのような製品が生じるのを防げる。
【0111】
既知のテクスチャ再生法は、例えば、EP1345497に記載されており、これにより、粘性チーズペースト製品を得ることが可能になる。
【0112】
被覆物
被覆物に使用する材料は、食品との接触に適しており、好ましくは「食品」グレードのものであるが、摂取を意図してはいない。したがって、被覆されたチーズ製品の被覆物は、被覆物が覆っているチーズ材料を消費する前に取り除く必要がある。
【0113】
チーズ材料を消費する際、被覆物を取り除いているとき、被覆物はチーズ材料に付着しない。
【0114】
一実施形態によれば、チーズ材料を消費する前に、被覆物をつまんで引き裂いて、取り除く。好ましくは、被覆物は、展性且つ延性であるプラスチック材料からなる。
【0115】
「プラスチック材料」は、可塑性の粘弾性挙動により変形させることができる材料を意味する。
【0116】
別の一実施形態では、チーズ製品の被覆物は、引き裂くこと、及び場合により被覆物の構造を補足することによって被覆物を開封するための開封機構を含む。
【0117】
別の一実施形態では、被覆物を破壊して、取り除く。ここで、チーズ材料は、有利には、片手の指間の圧力によって被覆物から取り出す。この場合、被覆材料は、脆弱な粘弾性挙動を有する。
【0118】
被覆物は、通常0.1mm〜5mm、好ましくは0.1mm〜3mm、より好ましくは0.2mm〜2mmの厚みを有する。
【0119】
被覆物は、少なくとも45℃の温度まで安定である、即ち、被覆物は、融解せず、テクスチャ及び構造に有意な変化を示さない。
【0120】
被覆物の性質
被覆されたチーズ製品の被覆物は、貯蔵又は消費の温度(1℃〜40℃)において展性ワックスの機械的性質を有する。
【0121】
本発明によるチーズ被覆製品の被覆物は、好ましくは、特に特許出願FR643128に記載されるような、溶融状態のワックスにチーズを浸漬させてハードチーズを被覆する際に通常使用されるようなワックス被覆物の性質を有する。
【0122】
一方、被覆物は、貯蔵及び流通中にチーズ材料が乾燥するのを阻止し、又は、他方では、微生物によるチーズの汚染及び変化を阻止する。
【0123】
チーズ材料の周りの被覆物は、1層又は複数層からなり、湿気及び微生物及び場合により空気を防いで密封する少なくとも1層の被覆層を有する。
【0124】
「湿気を防いで密封」は、湿気が被覆物に有意な程度浸透せず、被覆されたチーズ製品が乾燥しないことを意味する。
【0125】
本発明による被覆されたチーズ製品の乾燥を、4℃、相対湿度70%で貯蔵した前記チーズ製品の経時的な質量損失を測定することによって評価することができる。本発明による被覆されたチーズ製品の乾燥による質量損失は、これらの条件下で1カ月後に1%未満である。比較として、同条件下で、20gの被覆していないチーズ製品の質量損失は、わずか2日で6%である。
【0126】
「微生物を防いで密封」は、微生物が被覆物を通過せず、被覆物がチーズ製品を微生物から完全に隔てていることを意味する。
【0127】
好ましくは、被覆されたチーズ製品の被覆物は気密である。
【0128】
「気密」は、空気、特に酸素が被覆物を通過しないことを意味する。
【0129】
この性質は、被覆されたチーズ製品の乾燥及び微生物による腐敗を阻止するのに役立つ。
【0130】
外層及び被覆組成物C1
被覆組成物C1は、外層に湿気及び微生物及び場合により空気を防いで密封する機能を付与する少なくとも1種の疎水性ポリマーを含む。外層は、外部に対するバリアとして作用し、チーズ製品を保護する。
【0131】
外層は、食品との接触に適合しているが、通常摂取はできない。
【0132】
外層は疎水性を有する、即ち、水は前記層に接して広がらないが、高い接触角、通常90°超で小滴を形成する。
【0133】
「疎水性」ポリマーは、水性媒体に溶解しないポリマーであって、水の溶解性が非常に低く(通常1質量%未満)、このポリマーを含有する組成物に、湿気及び水(液体又は蒸気の形態)を通さない特性を付与することができるポリマーを意味する。疎水性ポリマーは、通常、炭化水素タイプモノマー又は少なくとも1つの炭化水素脂肪鎖を含むモノマー等の疎水性モノマーを含むモノマーの混合物の重合から得られる。疎水性ポリマーは、通常、帯電性官能基、アニオン性若しくはカチオン性官能基、極性官能基、又は酸素及び窒素原子と水素結合を形成することができる官能基等の親水性官能基を有さない。
【0134】
通常、疎水性ポリマー又は疎水性ポリマーの混合物は、被覆組成物C1の総質量に対して少なくとも5質量%、好ましくは少なくとも10質量%、より好ましくは少なくとも20質量%、更により好ましくは少なくとも50質量%の含有量で被覆組成物C1中に存在する。
【0135】
好ましくは、被覆組成物C1は、水を含まない。
【0136】
好ましくは、被覆組成物C1は、本質的に疎水性ポリマー又は疎水性ポリマーの混合物からなり、ここで、前記被覆組成物C1の他の成分は、少量の添加剤である。
【0137】
好ましくは、疎水性ポリマーは、ポリオレフィン、酢酸ビニルをベースとするコポリマー、スチレンをベースとするコポリマー、脂肪酸のビニルエステルをベースとするコポリマー、脂肪アルコールのアクリラートをベースとするコポリマー、脂肪アルコールのメタクリラートをベースとするコポリマー、脂肪アルコールのエーテルをベースとするコポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択する。
【0138】
疎水性ポリマーはまた、テルペン樹脂及び水素添加形又はエステル形のその誘導体等のバイオポリマー、ロジン及び水素添加形又はエステル形のその誘導体等の疎水性ガムから選択することができる。
【0139】
疎水性ポリマーはまた、以下に言及するようにベースガムから選択することができる。
【0140】
「ポリオレフィン」は、オレフィン又はオレフィン混合物の重合から誘導されるポリマーを意味する。「オレフィン」又は「アルケン」は、少なくとも1個のC=C結合を有する、直鎖状又は分岐状の、通常C2〜C10の不飽和炭化水素を意味する。
【0141】
ポリオレフィンとして、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレンを挙げることができる。
【0142】
「酢酸ビニルをベースとするコポリマー」は、モノマーの総質量に対して少なくとも10質量%、好ましくは少なくとも30質量%、有利には少なくとも50質量%、より有利には少なくとも70質量%の酢酸ビニルを含むモノマー混合物の重合から誘導されるランダム又はブロックのコポリマーを意味する。
【0143】
酢酸ビニルをベースとするコポリマーとして、例えば、酢酸ビニルベース及びエチレンベースのコポリマー、又は酢酸ビニル及びラウリン酸ビニルをベースとするコポリマー、並びに特にチューインガムの製造で使用されるものを挙げることができる。これらには、例えば、Wacker社の市販製品:Vinnapass20(登録商標)及びVinnapass40(登録商標)がある。
【0144】
Vinnapass20(登録商標)ポリマーは、20質量%のラウリン酸ビニル及び80質量%の酢酸ビニルを含む。これは、240000g/molの平均分子量(Mn)を有する。
【0145】
Vinnapass40(登録商標)ポリマーは、40質量%のラウリン酸ビニル及び60質量%の酢酸ビニルを含む。これは、450000g/molの平均分子量(Mn)を有する。
【0146】
「スチレンをベースとするコポリマー」は、モノマーの総質量に対して少なくとも10質量%、好ましくは少なくとも30質量%、有利には少なくとも50質量%、より有利には少なくとも70質量%のスチレンを含むモノマー混合物の重合から誘導されるランダム又はブロックのコポリマーを意味する。
【0147】
スチレンをベースとするコポリマーとして、例えば、ポリスチレン-イソプレン-スチレン(SIS)コポリマー、SIS/SIコポリマー混合物、ポリスチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)コポリマー、又はSBS/SB混合物を挙げることができ、特に、そのグレードは、被覆物の製造に承認されているグレード、好ましくは、チューインガム及びバブルガムの製造に使用されるグレードである。
【0148】
「脂肪酸」は、通常2〜24、好ましくは6〜24、好ましくは12〜24の炭素原子を有する、飽和又は不飽和の直鎖状又は分岐状の脂肪族鎖カルボン酸(即ち、炭素及び水素原子のみを有するもの)を有する。
【0149】
「脂肪アルコール」は、通常2〜24、好ましくは6〜24、好ましくは12〜24の炭素原子を有する、飽和又は不飽和の直鎖状又は分岐状の脂肪族鎖アルコール(即ち、炭素及び水素原子のみを有するもの)を有する。
【0150】
「脂肪酸のビニルエステルをベースとするコポリマー」は、モノマーの総質量に対して少なくとも10質量%、好ましくは少なくとも30質量%、有利には少なくとも50質量%、より有利には少なくとも70質量%の脂肪酸のビニルエステルを含むモノマー混合物の重合から誘導されるランダム又はブロックのコポリマーを意味する。例としては、Wacker社のコポリマー:Vinnapass20(登録商標)及びVinnapass40(登録商標)、並びにFR2958120A1に記載のコポリマーが挙げられる。
【0151】
「脂肪アルコールのアクリラートをベースとするコポリマー」は、モノマーの総質量に対して少なくとも10質量%、好ましくは少なくとも30質量%、好ましくは少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも70質量%の脂肪アルコールのアクリラートを含むモノマー混合物の重合から誘導されるランダム又はブロックのコポリマーを意味する。
【0152】
「脂肪アルコールをベースとするメタクリル酸コポリマー」は、モノマーの総質量に対して少なくとも10質量%、好ましくは少なくとも30質量%、有利には少なくとも50質量%、より有利には少なくとも70質量%の脂肪アルコールのメタクリラートを含むモノマー混合物の重合から誘導されるランダム又はブロックのコポリマーを意味する。
【0153】
「脂肪アルコールのエーテルをベースとするコポリマー」は、モノマーの総質量に対して少なくとも10質量%、好ましくは少なくとも30質量%、好ましくは少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも70質量%の脂肪アルコールのエーテルを含むモノマー混合物の重合から誘導されるランダム又はブロックのコポリマーを意味する。
【0154】
一実施形態によれば、被覆組成物C1は、しみ出しを制限又は完全に阻止するために、好ましくは食品添加物として承認されているか、又は高分子量(2000g/mol以上)である可塑剤を更に含み、その含有量は、被覆組成物C1の総質量に対して0.1質量%〜50質量%である。
【0155】
いかなる特定の理論に拘泥するものではないが、可塑剤の被覆組成物C1への添加は、被覆組成物C1の柔軟性、弾性、可塑性、及び展性の性質を向上させる。可塑剤はまた、本発明による被覆方法中に高温の被覆組成物C1のテクスチャを向上させるのに役立つ。
【0156】
好ましくは、可塑剤は、ポリオールの脂肪酸エステル及び脂肪アルコールの脂肪酸エステルからなる群から選択する。
【0157】
「ポリオール」又はポリアルコールは、いくつかの-OH基を含む有機化学化合物を意味する。
【0158】
可塑剤として使用するための、脂肪酸とのエステル化に適したポリオールとしては、例えば、グリセロール、ソルビトール、ソルビタン、キシリトール、スクロース、ステロール、及び植物性ポリフェノールを挙げることができる。
【0159】
溶融状態の被覆材料C1の可塑剤として、溶融状態のカルナウバワックス、水素添加された若しくはされていない脂肪物質、トリステアリン酸ソルビタン、又は脂肪酸の他のエステルを挙げることもできる。
【0160】
一実施形態によれば、被覆組成物C1は、増量剤を更に含み、好ましくは、その含有量は、被覆組成物C1の総質量に対して0.1質量%〜60質量%である。
【0161】
好ましくは、増量剤は、ケイ酸塩、炭酸塩、リン酸塩、及び硫酸塩等の無機フィラー、植物粉、木材粒子又は微粉化堅果殻、動物性食品、再生可能資源から作製された合成製品、並びにこれらの混合物からなる群から選択する。有利には、増量剤は、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩化ナトリウム、及びこれらの混合物からなる群から選択する。
【0162】
いかなる特定の理論に拘泥するものではないが、増量剤の組込みは、被覆物の機械的構造を補強する。これは、製造の諸工程、包装(例えば、二次包装への収納又は小さな製品の一括包装)、及び製品の流通の間の優れた耐衝撃性を維持しながら、被覆物の厚み縮小を可能にする。更に、この厚み縮小は、消費時に被覆物を容易に取り除けるようにし、一方、販売時の被覆物の引裂き可能特性を増大させる。増量剤は、ある程度大量の場合、ポリマー混合物の機械的挙動に非常に大きな変化をもたらして、本明細書に記載の被覆物に求められる著しい展性特性をポリマー混合物に付与する。例えば、チューインガム又は塑像用クレイの分野で使用されるものを挙げることができる。
【0163】
一実施形態によれば、被覆組成物C1は、被覆組成物C1の総質量に対して好ましくは0.1質量%〜5質量%の含有量で有機又は無機の顔料を更に含む。
【0164】
顔料を被覆組成物C1に組み込むと、被覆物の光学的性質が変更されて、被覆されたチーズに消費者に喜ばれる色及び/又は外観を与えることができる。
【0165】
同時に、顔料はまた、被覆物に光遮断性を与えることができる。
【0166】
好ましくは食品の範疇にあり、被覆物に付与したい光学的性質に応じて適切な顔料である入手可能な顔料及び染料のうちどれに決定するかは当業者の範囲内である。
【0167】
好ましくは、顔料は、マイカ、石英、鉄又はチタンの金属酸化物、アルミニウム粒子、リソールルビンBK、及びカーボンブラックからなる群から選択する。
【0168】
好ましくは、染料又は顔料は、被覆物の外層に単に組み込む。
【0169】
一実施形態によれば、被覆組成物C1は、被覆組成物C1の総質量に対して好ましくは0.1質量%〜10質量%の含有量で相溶化剤を更に含む。
【0170】
相溶化剤の組込みは、例えば、被覆組成物C1が増量剤を含む場合、又は被覆組成物C1が被覆組成物C2に接している場合、被覆組成物C1の安定性、又は被覆組成物C1の別の層への接着性を向上させる。
【0171】
相溶化剤は、通常、界面活性剤の性質を有する化合物(分子又はポリマー)であり、好ましくは、水素添加された長鎖脂肪酸(C12〜C24)及びそれらの塩(ナトリウム、カリウム、カルシウム、又はマグネシウム)、並びにエチレン又はプロピレンとメタクリル酸又はその塩との重合から誘導されるコポリマー等の、多くの親水性及び疎水性官能基を有するポリマーからなる群から選択する。
【0172】
相溶化剤の例として、DuPont(商標)社のポリマーSurlyn8920(登録商標)を挙げることができる。これは、カルボン酸基がナトリウムイオンで部分的に中和された、エチレンとメタクリル酸とのコポリマーである。このポリマーは、ASTM D1238に従って測定した場合に0.9g/10分の粘度指数(MFI/190℃/2.16kg)、及びASTM D3418に従ってDSC(示差走査熱量測定分析)で測定した場合に88℃の融解温度を有する。
【0173】
一実施形態によれば、被覆組成物C1は、被覆組成物C1の総質量に対して好ましくは0.1質量%〜5質量%の含有量で凝集剤を更に含む。
【0174】
凝集剤の組込みは、耐機械的衝撃性を増大させることよりそれを使用する分野の材料の凝集性を増大させて、材料を壊れにくいようにすることができる。
【0175】
好ましくは、凝集剤は、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル-エチレンコポリマー、エチレンコポリマー、及びメタクリル酸ブタノールからなる群から選択する。
【0176】
一実施形態によれば、被覆組成物C1は、被覆組成物C1の総質量に対して好ましくは0.1質量%〜5質量%の含有量で抗真菌剤を更に含む。
【0177】
抗真菌剤の組込みは、包装中、被覆されたチーズの表面を保護することができる。
【0178】
或いは、抗真菌剤を被覆物の表面にグラフトしてもよい。
【0179】
抗真菌剤として、ナタマイシン、ソルビン酸及びそのカリウム塩、ナトリウム塩、又はカルシウム塩、脂肪酸、特にプロピオン酸、安息香酸及びその塩、ナイシン、ポリリジン(polylisine)を挙げることができる。
【0180】
一実施形態によれば、被覆組成物C1は、被覆組成物C1の総質量に対して好ましくは0.1質量%〜5質量%の含有量で核形成剤を更に含む。
【0181】
核形成剤の組込みは、被覆物の結晶性質並びに光学的及び機械的性質の改良を可能にする。核形成剤として、Milliken社の商品名E-Hyperform(登録商標)HPN20で知られているカルシウム1,2-シクロヘキサンジカルボキシラートに関連するステアリン酸亜鉛、タルク及びカオリン等のいくつかのケイ酸塩、又はDupont(商標)社のSurlyn8920(登録商標) 等のイオノマーNa+タイプのポリマーを挙げることができる。
【0182】
好ましい被覆組成物C1として、チューインガムの分野で使用され、SIS、SI、SIS/SI、SBS、SB、又はSBS/SBのコポリマーをベースとするベースガムから誘導される混合物、タルク等の鉱物フィラー、及び水素添加された松脂等の樹脂を挙げることができる。
【0183】
また、ビニル脂肪酸コポリマーが存在することは、可塑化及び/又は凝集効果をもたらすのに好ましい。
【0184】
本発明による被覆組成物C1の様々な好ましい変形を以下に示す。
【0185】
変形1
1種又は複数種の天然ガム、例えば、チクル又は天然ゴム(パラゴムノキ)等の植物ガムを含有しているチューインガム又はバブルガムのためのガムベースをベースとする組成物を使用する。
【0186】
同様に、ガムベースは、スチレン(S)及びブタジエン(B)又はイソプレン(I)をベースとするブロックコポリマーのコポリマー等の、1種又は複数種の合成ガムベースのエラストマータイプポリマーを含有し得る。これらのコポリマーは、通常、2個の別個のブロック、又は3個の別個のブロック、又は2個のコポリマーと3個のブロックとの混合物を含む。これらのコポリマーは、直鎖状又は放射状の構造を有し得る。SB、SBS、SBS/SB、SI、SIS、又はSIS/SIのコポリマーを挙げることができる。好ましくは、これらのコポリマー中において、スチレンは、コポリマーの総質量に対して10〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%、より好ましくは15〜35質量%である。好ましくは、これらのスチレンコポリマーは、0〜40g/10分の粘度数を有する(ASTM D 1238に従って測定した場合のMFI、200℃/5kg)。
【0187】
また、チューインガム分野で使用される他のポリマー及びコポリマーを、このような配合物、例えば、ポリエチレン、ポリイソブチレン、ポリ(酢酸ビニル)、エチレンと酢酸ビニルとのコポリマー、分岐状又は非分岐状のポリオレフィン、イソブチレン-イソプレンコポリマー、酢酸ビニル-ラウリン酸ビニルコポリマー、及び脂肪酸の他のビニルエステルにおいて使用することができる。
【0188】
好ましくは、ポリエチレンは、2000g/mol超、好ましくは10000g/mol超、より好ましくは50000g/mol超、更により好ましくは100000g/mol超の平均分子量(Mn)を有する。好ましくは、ポリエチレンは、0.1〜70%、好ましくは1〜50%、例えば、1〜35%の範囲の質量割合に準じて被覆組成物C1に存在する。ポリエチレンは、通常、被覆組成物C1中において他の疎水性ポリマーと混合して使用される。
【0189】
好ましくは、ポリ(酢酸ビニル)又は酢酸ビニル-エチレンコポリマーは、10000〜200000g/mol、より好ましくは15000〜100000g/molの間の平均分子量(Mn)を有する。好ましくは、ポリ(酢酸ビニル)又は酢酸ビニル-エチレンコポリマーは、0.1〜70%、有利には1〜50%、例えば1〜35%の質量割合に準じて被覆組成物C1に含まれる。これらのポリマーは、通常、被覆組成物C1中において他の疎水性ポリマーと混合して使用される。
【0190】
好ましくは、脂肪酸のビニルエステルコポリマーは、脂肪酸鎖長が2〜22個の炭素原子である脂肪酸のビニルエステルから作製される。一実施形態によれば、コポリマーは、ブロック又はグラフトのランダムタイプである。好ましくは、これらのコポリマーは、10000g/mol〜500000g/mol、好ましくは10000〜250000g/mol、例えば15000〜125000g/molの間の平均分子量(Mn)を有する。
【0191】
テルペン樹脂、植物樹脂(ロジン、松脂)の誘導体、植物ワックス、動物ワックス、又は石油由来のワックス、例えばマイクロクリスタリンワックス、フィッシャー-トロプシュワックス、ポリエチレンワックス、カルナウバワックス、又はビーズワックス等の構造化剤(structuring agent)も、組成物に含まれ得る。
【0192】
ケイ酸マグネシウム(タルク)、炭酸カルシウム、又は炭酸マグネシウム等の充填剤も、これらのガムベースの組成物に組み込まれ得る。
【0193】
例えば、GumBase & Co(商標)社のCHICA BBT(登録商標)、CAROL BBT(登録商標)等のガムベースは、前記被覆組成物C1の作製に使用することができる。チューインガム用のこれらのガムベースは、スチレンとブタジエンとのコポリマー、及び37質量%の含有量でタルクを含有する。ASTM D1525に従って測定したビカー軟化温度は、CHICA BBT(登録商標)では78℃、CAROL BBT(登録商標)では67℃である。
【0194】
有利には、タルクの総量(最初から存在したものと追加したもの)は、前記被覆組成物の総質量の30〜70%、より好ましくは35〜60%、更により好ましくは40〜55%である。
【0195】
この種の高温の材料(通常80℃〜140℃の間)は、上述の変形のうちの1つに従って、平坦面又はローラー上に容易に注いで、被覆フィルムを形成することができる。
【0196】
最初の冷却後、フィルムは固化するが、圧力密封をするには依然として十分な展性を有する。
【0197】
低温時、即ち、チーズ製品の消費温度では、こうして得られた被覆物は、展性を有し、引裂き可能であり、それ故、被覆物を開封し、製品を入手することが可能になる。
【0198】
配合物の例を以下の表に示す。
【0199】
【表1】
【0200】
変形2
被覆組成物C1として、高融点ワックスをベースとする組成物を使用することができ、それにより、包装温度は、前記ワックスの融点よりも2℃〜30℃低くなるようにする。このような温度において、前記ワックスは、容易に展性を有し、それ故、上述のようにローラーの2個の半型の間で容易に密封され得る。この配合物に、同じ温度範囲の結晶温度を有するポリオレフィンタイプポリマーを添加することができる。より詳細には、Baker Hughes(商標)社のVYBAR(登録商標)103又はVYBAR(登録商標)206等の分岐状ポリオレフィンを考慮に入れることができる。これらのポリマーは、α-オレフィン混合物の重合により得られるハイパーブランチポリマーであり、平均分子量(Mn)はそれぞれ4400g/mol及び2600g/molである。これらの融点は、それぞれ74℃及び54℃である。
【0201】
適切な融点を有するワックスとして、フィッシャー-トロプシュワックス、高融点マイクロクリスタリンワックス、カルナウバワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、高融点硬化脂肪を挙げることができる。有利には、ワックスの融点は、45℃、好ましくは60℃、より好ましくは70℃、更により好ましくは80℃を超える。
【0202】
また、添加剤を添加して、バルク又はゲルに加工することができ、例えば、ステアリン酸又はその塩、結晶ポリオールエステル(モノ、ジ、及びトリステアラート、ソルビタンモノ、ジ、及びトリステアラートグリセロール)、ステロール、及び植物ステロールエステルがある。
【0203】
【表2】
【0204】
ポリプロピレンワックス配合物(分子量Mn=5000g/mol)が炭酸カルシウム及びタルクを含有する場合に示されるように、充填剤を添加して、ワックスの熱力学性質を改変することもできる。
【0205】
【表3】
【0206】
ここで、Tc(℃)は、DSC(TA Instrument 2920CE)によって、2分間で初期温度の200℃から4℃に冷却して観測した結晶化温度であり、Tf最高(℃)は、更に高い温度での同じ組成物の融解のピーク融点である。
【0207】
フィラーとして、炭酸カルシウム(及び他の炭酸塩)、マグネシウム(タルク)及びアルミニウム(カオリン)及び他の鉱物を含むケイ酸塩、木粉、又は微粉化堅果殻を挙げることができる。
【0208】
これらの組成物9〜13は、被覆物に脆弱等の機械的挙動をもたらし、それ故、被覆物は片手の指で破壊され、開封機構が必要なくなる。
【0209】
変形3
被覆組成物C1として脱臭及び漂白された植物油を使用して、疎水性被覆層を形成することもできる。
【0210】
植物油には、例えば、ダイズ、ヒマワリ、ナタネ、オリーブ、ヤシ、ピーナッツ、及びココナッツ油がある。クルミ、ヘーゼルナッツ、アマ、コットン、及びトウモロコシ油等の他の油を使用することもできる。低飽和の油は、酸化のリスクを回避するため好ましい。
【0211】
このフィルムは、以下に記載するように、被覆層をゲル化できるように非晶質又は結晶質の添加剤を含有し得る。
【0212】
ポリマーは、油のゲル化を可能にするために使用されるが、フィルム形成性も与える。70℃超の熱転移(主に融解及びガラス転移)を有するポリマーが好ましい。例えば、スチレン、イソプレン、ブタジエン(1,3又は1,4)をベースとするブロックコポリマー、又はエチレンとプロピレン、ポリブチレン、若しくはポリブテンとのコポリマーを挙げることができる。
【0213】
ゲルはまた、植物ステロールのエステル、ソルビタンのモノ、ジ、及びトリエステル、グリセロールのモノ、ジ、及びトリエステル、スクロースのモノ及びポリエステル、スクロース、ソルビトール、ポリグリセロール、テルペン樹脂のエステル、ロジンエステル、セルロースのエステル及びエーテル、デンプン又はヘミセルロースのエステル及びエーテル、ステロールエステル等の脂肪酸誘導体から形成することができる。好ましくは、これらの物質は、非晶質であり、界面活性剤の性質を有する。
【0214】
炭酸カルシウム(及び他の炭酸塩)、マグネシウム(タルク)及びアルミニウム(カオリン)を含むケイ酸塩、微粉化堅果殻等の充填剤を添加することができる。この種の組成物の油/脂肪質の外観を取り除くために、これらのフィラーの使用が好ましい(組成物7の例を参照)。
【0215】
被覆組成物の例を以下に示す。
【0216】
【表4】
【0217】
変形4
被覆組成物C1にワックスの挙動、即ち、展性及び引裂き可能特性を付与するために、充填剤を、優先的に親油性フィラーと一緒に使用することは好ましい。タルク及びカオリンは、グレードに応じて40%超〜70%の吸油能を有する。更に、これらの物質は、食品グレードのものは化学的に不活性であり、しみ出しにくく、被覆されたチーズ製品に後味の悪さ又は臭気をもたらすことはないと考えられる。
【0218】
これらのフィラーを十分な高濃度で添加した場合、被覆組成物の挙動はそれにより著しく改変され、柔軟で、弾性があり、ペースト様になる。更に、タルクが存在すると、タルクにより油が保持されるので(上に示すように溶解性が高いため)、例えば、材料の脂っぽさを低くできるようになる。
【0219】
諸実施形態によれば、完全に又は部分的にバイオベースのポリマーをベースとする組成物を使用する。特に、ホモポリマー、コポリマー、若しくはこれらのポリマーの混合物の形のアルキル側鎖ポリエステル、特にPHA即ちポリ(ヒドロキシアルカン酸)、又は脂肪酸ビニルポリエステル、或いは脂肪アルコールポリアクリラートを使用する。
【0220】
内層及び被覆組成物C2
被覆物が少なくとも1層の内層を更に含む場合、前記内層を構成する被覆組成物C2は、好ましくは水性被覆組成物である。前記内層は、好ましくはチーズ材料に接している。
【0221】
「水性被覆組成物」は、前記組成物の質量に対して少なくとも10質量%、好ましくは少なくとも20質量%、より好ましくは少なくとも30質量%の水を含む、通常ゲル形態の組成物を意味する。このような組成物を以下に記載する。
【0222】
特定の理論に拘泥するものではないが、好ましくは水を通さない外層とチーズ材料との間にこのような内層が存在すると、外層からチーズ材料への疎水性化合物のしみ出しを阻止することが可能になる。
【0223】
一実施形態によれば、被覆組成物C2は、少なくとも1種の多糖又は多糖誘導体を含む水性被覆組成物である。
【0224】
典型的には、多糖又は多糖誘導体(又はこれらの混合物)は、被覆組成物C2の総質量に対して少なくとも10%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、更により好ましくは少なくとも50%の含有量で被覆組成物C2中に存在する。
【0225】
典型的には、被覆組成物C2は、被覆組成物C2の総質量に対して30質量%〜80質量%、好ましくは40質量%〜70質量%、より好ましくは50質量%〜60質量%の水分を含む。
【0226】
「多糖誘導体」ポリマーは、例えば、多糖のアセチル誘導体、エーテル誘導体、メチルカルボキシ誘導体、又はメチル化ヒドロキシプロピル誘導体を意味する。
【0227】
多糖又は多糖誘導体として、例えば、デンプン及びその誘導体、セルロース及びその誘導体、セロハン、アルギン酸塩、ペクチン酸塩、キサンタン、ジェラン、カラゲナン、プルラン、キトサン、キチン、並びに親水性ガムを挙げることができる。
【0228】
デンプン誘導体としてヒドロキシプロピル化デンプン及び疎水性デンプンを挙げることができる。
【0229】
セルロース誘導体として、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、セロハン、又は再生セルロースを挙げることができる。
【0230】
親水性ガムの誘導体として、グアーガム又はアラビアガムを挙げることができる。
【0231】
特定の一実施形態によれば、通常、被覆物がアルギン酸塩又はジェランを含有する場合、被覆物は、カルシウム、マグネシウム、又は亜鉛のカチオン等の二価カチオンの作用によって被覆されたチーズ製品の成形後にゲル化される。チーズ材料は、前記カルシウムカチオンの源であり得る。
【0232】
一実施形態によれば、被覆組成物C1は、被覆組成物C1の総質量に対して好ましくは0.1質量%〜10質量%、好ましくは0.1質量%〜5質量%の含有量で相溶化剤を更に含む。
【0233】
相溶化剤の組込みは、外被覆層と内被覆層との間の凝集を向上させて、被覆物の安定性を向上させる。
【0234】
相溶化剤は、通常、界面活性剤の性質を有する化合物(分子又はポリマー)であり、好ましくは、水素添加された長鎖脂肪酸(C12〜C24)及びそれらの塩(ナトリウム、カリウム、カルシウム、又はマグネシウム)、並びにエチレン又はプロピレンとメタクリル酸との重合から誘導されるコポリマー等の、多くの親水性及び疎水性官能基を有するポリマーからなる群から選択する。
【0235】
相溶化剤は、外層又は内層のうちの一方又は他方に対する親和性に応じて、外層又は内層中にのみ組み込むことができる。
【0236】
したがって、内層が親水性ポリマー又はアルギン酸カルシウムジェランを含む場合、内層は相溶化剤を含まず、相溶化剤は、長鎖脂肪酸、又は、例えば、エチレン又はプロピレンとメタクリル酸又はその塩との重合から誘導されるコポリマーとして外層中に存在する。このような相溶化剤の一例として、Dupont(商標)社のSurlyn8920(登録商標)を挙げることができる。
【0237】
有利には、特定の疎水性及び親水性被覆組成物は、それらの対立する親水性及び疎水性の特性にもかかわらず、2層間に良好な接着をもたらす。
【0238】
この良好な接着に適応した系は、例えば、以下のものがある:
- 塩化カルシウム、酢酸カルシウム、或いはリン酸カルシウム等のカルシウム塩と架橋した、アルギン酸塩又はジェランをベースとする親水性の内層、及び
- 長鎖脂肪酸を含有するガムベース又はエチレンとアクリル酸とのコポリマー等のアニオン性両親媒性ポリマー等の湿気を通さない外層。
【0239】
有利には、内層及び外層の中間の性質を有する非常に薄いポリマー層、例えば、エチレンと酢酸ビニルとマレイン酸又はフマル酸とのターポリマー等を、前記層間に使用することができる。
【0240】
本出願はまた、上記で定義した被覆されたチーズ製品の製造への上記で定義した被覆組成物C1の使用に関する。
【0241】
被覆層C1及び被覆層C2を含む被覆されたチーズ製品の製造例
2つの組成物層C1及びC2を含む被覆物の例として、以下の実施を挙げることができる。
【0242】
製品に接する内層は、ゲル化温度が80℃の、アセチル化ジェラン及び水をベースとする組成物C2からなる。総質量の5%になるように、融点が80℃のベヘン酸をこの組成物C2に添加する。
【0243】
組成物C1の外層は、タルクの総質量が50%になるようにタルクに添加されたCHICA BBTガムベースからなる。
【0244】
組成物C1を加熱し、2個のローラー上に注いで、組成物C1の2枚のフィルムを形成し、次いで、リン酸カルシウム水溶液を前記2枚のフィルムの表面上に噴霧する。この方法では、フィルムの温度及び少ない噴霧量のために、フィルムの表面にほとんど残留水は残らない。次いで、第2の組成物C2をフィルム面上に注ぐ。内層と外層のどちらにも存在するカルボン酸官能基とリン酸カルシウムのカルシウムイオンとが一緒に存在し、これにより、2層間に強いイオン性架橋を生じさせることが可能になる。
【0245】
次いで、フレッシュプロセスチーズ(Kiri(登録商標))、プロセスチーズ(Vache qui Rit(登録商標)、Apericube(登録商標))、又はフレッシュチーズ(Boursin(登録商標))の形のチーズ調製物を、注入ノズルのレベルに合わせた2枚のフィルムの間、及びロータリー型の間に注入し、次いで、全体を型成形及び密封処理により成形した。
【0246】
このようにして得られた被覆されたチーズ製品を65℃以下に冷却すると、異なる組成物層C1及びC2のゲル化が可能になり、これらの接着性は、2種の組成物間に噴霧したカルシウムイオン、及びその後に乳製品から提供されたカルシウムイオン(組成物層C2を介しての移動による)により確保される。
【0247】
被覆されたチーズ製品
本発明はまた、被覆されたチーズ製品であって、チーズ材料を含むコアと、前記被覆されたチーズ製品の貯蔵温度で展性であり、湿気及び微生物を防いで密封し、コアの周囲を完全に囲んでいる被覆物とを含み、前記チーズ材料が、プロセスチーズ、フレッシュチーズ、フレッシュプロセスチーズ、又は再結合法により得られるチーズである、被覆されたチーズ製品に関する。
【0248】
この被覆されたチーズ製品は、本発明による方法により得ることができる被覆されたチーズ製品の利点を有する。
【0249】
前記被覆されたチーズ製品の被覆物は、通常、外部に接する、上記で定義したフィルム被覆組成物C1を含む。
【0250】
或いは、前記被覆物は、コアに接する、上記で定義した被覆組成物C2のフィルムを更に含む。
【0251】
好ましくは、チーズ材料は、プロセスチーズ、フレッシュチーズ、又はフレッシュプロセスチーズである。
【0252】
一実施形態によれば、被覆物は、上記で定義した充填剤を含む。
【符号の説明】
【0253】
10 被覆されたチーズ製品
12 被覆されたチーズ製品
20 コア
22 チーズ材料
25 食用フィリング
30 被覆物
35 被覆物
40 外層
45 内層
図1
図2
図3