特許第6566467号(P6566467)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6566467
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】涼感性不織布及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 23/12 20060101AFI20190819BHJP
   D06M 15/59 20060101ALI20190819BHJP
   D06M 15/71 20060101ALI20190819BHJP
   D04H 13/00 20060101ALN20190819BHJP
【FI】
   D06M23/12
   D06M15/59
   D06M15/71
   !D04H13/00
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-94974(P2015-94974)
(22)【出願日】2015年5月7日
(65)【公開番号】特開2016-211103(P2016-211103A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2018年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014487
【氏名又は名称】住江織物株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大澤 まゆみ
(72)【発明者】
【氏名】前田 里恵
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−161226(JP,A)
【文献】 国際公開第1991/001801(WO,A1)
【文献】 特表2008−546927(JP,A)
【文献】 特開2001−279582(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0100565(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H1/00−18/04
D06B1/00−23/30
D06C3/00−29/00
D06G1/00−5/00
D06H1/00−7/24
D06J1/00−1/12
D06M10/00−16/00
19/00−23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成繊維からなる不織布であって、加熱ロールによって接触加熱処理が施された前記不織布の表面の少なくとも一部に、相転移材料を封入したマイクロカプセル及び吸湿剤が固着しており、前記吸湿剤の量は、前記相転移材料を封入したマイクロカプセルの質量の20質量%〜50質量%であり、前記吸湿剤が有機アミド系吸湿剤であり、前記合成繊維の繊度が、2〜15dtexであることを特徴とする涼感性不織布。
【請求項2】
合成繊維からなる不織布であって、相転移材料を封入したマイクロカプセル及び吸湿剤が少なくとも一部に固着している前記不織布の表面が、加熱ロールによって接触加熱処理を施されており、前記吸湿剤の量は、前記相転移材料を封入したマイクロカプセルの質量の20質量%〜50質量%であり、前記吸湿剤が有機アミド系吸湿剤であり、前記合成繊維の繊度が、2〜15dtexであることを特徴とする涼感性不織布。
【請求項3】
前記相転移材料の融点が、25℃〜31℃である請求項1又は2に記載の涼感性不織布。
【請求項4】
バインダー樹脂によって前記相転移材料が10〜60g/m(固形分)固着している請求項1〜3のいずれか1項に記載の涼感性不織布。
【請求項5】
合成繊維からなる不織布の少なくとも一方の面を加熱ロールによって接触加熱する接触加熱工程と、前記接触加熱工程後の不織布の接触加熱された面に相転移材料を封入したマイクロカプセルとバインダー樹脂と吸湿剤を含む処理液を塗布する塗布工程と、前記塗布工程後の不織布を乾燥する乾燥工程と、を順に実施し、前記吸湿剤の量は、前記相転移材料を封入したマイクロカプセルの質量の20質量%〜50質量%であり、前記吸湿剤が有機アミド系吸湿剤であり、前記加熱ロールの温度が、前記合成繊維の融点より20℃〜60℃高い温度であることを特徴とする涼感性不織布の製造方法。
【請求項6】
合成繊維からなる不織布に相転移材料を封入したマイクロカプセルとバインダー樹脂と吸湿剤を含む処理液を塗布する塗布工程と、前記塗布工程後の不織布を乾燥する乾燥工程と、前記乾燥工程後の不織布の処理液を塗布された面を加熱ロールによって接触加熱する接触加熱工程と、を順に実施し、前記吸湿剤の量は、前記相転移材料を封入したマイクロカプセルの質量の20質量%〜50質量%であり、前記吸湿剤が有機アミド系吸湿剤であり、前記加熱ロールの温度が、前記合成繊維の融点より20℃〜60℃高い温度であることを特徴とする涼感性不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清涼感のある不織布に関するものであり、人が不織布の表面に触れたときにひやりとした涼しさを感じる不織布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、人が接する繊維製品に清涼感を与えようとする試みがなされ、特に夏場に快適に過ごしたいというニーズがある。これらの繊維製品としては、衣料関係、靴用、カーペットなど身の回りで接する商品が挙げられる。
【0003】
例えば、特定白色系微粒子(酸化アンチモンをドーピングした酸化第二スズ等)を含有する合成繊維と、吸水拡散繊維とを含でなる布帛が、特定の吸水速度、特定の内部温度である場合、汗などの水分の気化を促進することで涼感性を発現する布帛が提案されている(特許文献1)。
【0004】
また、特定の熱伝導率の有機高分子繊維を含んだ布帛で、かつ布帛の厚み方向の熱伝導率、接触冷温感等を特定の範囲に規定することで清涼感を長時間にわたって維持できる布帛が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−285780号公報
【特許文献2】特開2010−236130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1や2の布帛は、あらかじめ特定の繊維を用いる必要があるため、後加工で汎用繊維を用いた繊維又は繊維布帛に対して涼感性を付与するものではなかった。
【0007】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、特定の繊維を用いてなる布帛でなく、汎用の不織布を用いて、人が不織布の表面に触れたときにひやりとした涼しさを感じることができる涼感性不織布及び涼感性不織布の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0009】
[1]合成繊維からなる不織布であって、
加熱ロールによって接触加熱処理が施された前記不織布の表面の少なくとも一部に、
相転移材料を封入したマイクロカプセルが固着していることを特徴とする涼感性不織布。
【0010】
[2]合成繊維からなる不織布であって、
相転移材料を封入したマイクロカプセルが少なくとも一部に固着している前記不織布の表面が、
加熱ロールによって接触加熱処理を施されていることを特徴とする涼感性不織布。
【0011】
[3]前記合成繊維の繊度が、2〜15dtexである前項1又は2に記載の涼感性不織布。
【0012】
[4]前記相転移材料の融点が、25℃〜31℃である前項1〜3のいずれか1項に記載の涼感性不織布。
【0013】
[5]バインダー樹脂によって前記相転移材料が10〜60g/m(固形分)固着している前項1〜4のいずれか1項に記載の涼感性不織布。
【0014】
[6]合成繊維からなる不織布の少なくとも一方の面を加熱ロールによって接触加熱する接触加熱工程と、
前記接触加熱工程後の不織布の接触加熱された面に相転移材料を封入したマイクロカプセルとバインダー樹脂を含む処理液を塗布する塗布工程と、
前記塗布工程後の不織布を乾燥する乾燥工程と、
を順に実施することを特徴とする涼感性不織布の製造方法。
【0015】
[7]合成繊維からなる不織布に相転移材料を封入したマイクロカプセルとバインダー樹脂を含む処理液を塗布する塗布工程と、
前記塗布工程後の不織布を乾燥する乾燥工程と、
前記乾燥工程後の不織布の処理液を塗布された面を加熱ロールによって接触加熱する接触加熱工程と、
を順に実施することを特徴とする涼感性不織布の製造方法。
【0016】
[8]前記加熱ロールの温度が、前記合成繊維の融点より20℃〜60℃高い温度である前項6又は7に記載の涼感性不織布の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
[1]の発明では、合成繊維からなる不織布の表面に加熱ロールを接触させて加熱処理が施された不織布の表面の少なくとも一部に、相転移材料を封入したマイクロカプセルが固着しており、より平滑な不織布の表面と相転移材料を封入したマイクロカプセルとの相乗効果で、人が不織布の表面に触れたときにひやりとした涼しさを感じることができる。
【0018】
[2]の発明では、合成繊維からなる不織布の表面の少なくとも一部に、相転移材料を封入したマイクロカプセルが固着し、不織布の表面に加熱ロールを接触させて加熱処理が施されており、相転移材料を封入したマイクロカプセルが固着した不織布の表面がより平滑であることから、相転移材料を封入したマイクロカプセルの効果と相まって、人が不織布の表面に触れたときにひやりとした涼しさを感じることができる。
【0019】
[3]の発明では、合成繊維の繊度が、2〜15dtexであるので、人が不織布の表面に触れたときの合成繊維との接触面を広くすることができ、より一層ひやりとした涼しさを感じることができる。
【0020】
[4]の発明では、融点が25℃〜31℃の相転移材料が、マイクロカプセルに封入されて不織布に固着しているので、人が不織布の表面に触れたときに相転移材料が融解して、そのとき人体から融解熱の移動がおこり、不織布を冷たく感じることができる。
【0021】
[5]の発明では、バインダー樹脂によって前記相転移材料が10〜60g/m(固形分)固着しているので、十分な涼感性能を発揮できる不織布とすることができる。
【0022】
[6]の発明では、合成繊維からなる不織布の少なくとも一方の面を加熱ロールによって接触させて加熱するので、不織布の表面をより滑らかにすることができる。その後、不織布の表面に相転移材料を封入したマイクロカプセルとバインダー樹脂を含む処理液を塗布してから乾燥するので、相転移材料を封入したマイクロカプセルを確実に固着することができる。こうして、人が不織布の表面に触れたときにひやりとした涼しさを感じることができる涼感性不織布を製造できる。
【0023】
[7]の発明では、合成繊維からなる不織布に相転移材料を封入したマイクロカプセルとバインダー樹脂を含む処理液を塗布してから乾燥するので、相転移材料を封入したマイクロカプセルを確実に固着することができる。その後、相転移材料を封入したマイクロカプセルが固着した不織布の表面を加熱ロールによって接触させて加熱するので、マイクロカプセルと不織布の表面とをより滑らかにすることができる。こうして、人が不織布の表面に触れたときにひやりとした涼しさを感じることができる涼感性不織布を製造できる。
【0024】
[8]の発明では、合成繊維の融点より20℃〜60℃高い温度で加熱するので、加熱ロールの接触によって、不織布を構成する繊維が軟化するので、繊維の側面や、不織布の表面から浮き出たりとび出でたりしている繊維を均すので十分に平滑にすることができる。こうして、人が不織布の表面に触れたときにより一層ひやりとした涼しさを感じることができる涼感性不織布を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
第1の発明に係る涼感性不織布は、合成繊維からなる不織布であって、加熱ロールによって接触加熱処理が施された不織布の表面の少なくとも一部に、相転移材料を封入したマイクロカプセルが固着していることを特徴とする。
【0026】
第2の発明に係る涼感性不織布は、合成繊維からなる不織布であって、相転移材料を封入したマイクロカプセルが少なくとも一部に固着している不織布の表面が、加熱ロールによって接触加熱処理を施されていることを特徴とする。
【0027】
上記第1、第2のいずれの発明の涼感性不織布も、特定の繊維を用いてなる布帛でなく、汎用の不織布を用いて、人が不織布の表面に触れたときにひやりとした涼しさを感じることができる涼感性不織布である。前記涼感性不織布において、不織布の表面の温度が25℃におけるQMAX(接触冷温感)が、0.100/cm・secより大きいことが好ましい。
【0028】
QMAX(接触冷温感)は、一定面積、一定質量の純銅板(熱容量0.41855j/℃)に熱を蓄え、これが試料表面に接触した直後に、蓄えられた熱量が低温側の試料物体に移動する熱量のピーク値を測定した値をいうもので、QMAX(接触冷温感)が大きいほど接触したときに冷たく感じる。
【0029】
本発明で使用する合成繊維としては、特に限定されないが、例えば、アクリル繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維を挙げることができる。また、これらを組み合わせてもよい。なお、前記合成繊維の単繊度は2〜15dtexが好ましい。単繊度が2dtex未満では、不織布の利用形態や部位にもよるが強度不足となる恐れがあり好ましくない。15dtexを越えると、接触加熱処理が不均一になる恐れがあり好ましくい。また、融点の異なる合成繊維を混ぜてもよい。この場合不織布の平滑化と風合いの両方を兼ね備えるので好ましい。
【0030】
本発明で使用する不織布としては、特に限定されないが、例えば、ニードルパンチ不織布、スパンボンド不織布、ケミカルボンド不織布を挙げることができる。なかでもニードルパンチ不織布が好ましい。また、前記不織布の目付は、50g/m〜500g/mが好ましい。目付が50g/m未満では、強度不足となる恐れがあり好ましくない。
【0031】
第1の発明に係る涼感性不織布において、接触加熱処理が施された不織布は、不織布に対して接触加熱処理が施されたものだから、より平滑な不織布である。
【0032】
第2の発明に係る涼感性不織布において、不織布、及び相転移材料を封入したマイクロカプセルの両方に対して接触加熱処理が施されたものだから、該マイクロカプセルも含めより平滑である。
【0033】
本発明で使用する相転移材料は、固相と液相との間で反復転換する材料で、融解、凝固するときに発現する熱を利用して、熱を蓄積、あるいは放出させて、相転移材料周辺の温度を制御するものである。相転移材料としては、パラフィンやワックス等の炭化水素化合物が好適に使用されるが特に限定しない。該相転移材料を封入したマイクロカプセルは市販されており、大和化学工業株式会社製プレサーモ、三木理研工業株式会社製蓄熱蓄冷マイクロカプセル等を挙げることができ、マイクロカプセルの組成としても、特に限定されなくて、一般に市販されているものでよい。
【0034】
相転移材料を封入したマイクロカプセルは、熱吸収のピーク温度(融点ともいう)または熱放散のピーク温度(凝固点ともいう)が20〜35℃の範囲内であるものが好ましい。人の体温は、36〜37℃であるが、手や足の表面温度はこれよりも低く32〜34℃といわれているので、20〜35℃で熱吸収のピーク温度(融点)となる相転移材料が好ましい。
【0035】
熱吸収のピーク温度が低すぎる場合では、人体が接触する前に既に相転移材料が溶けてしまっており、人体が接触しても涼感効果を得ることはできない。また、熱吸収のピーク温度が高すぎる場合には、人体が接触しても、相転移材料が溶けないため、涼感効果を得ることはできない。
【0036】
また相転移材料を封入したマイクロカプセルの粒径は1〜50μmが好ましい。50μmを超えると、ザラツキ感や硬さが発現し不織布の好ましい風合にならない。更に好ましい粒径は、5〜25μmである。
【0037】
相転移材料を封入したマイクロカプセルは、10〜60g/m(固形分)バインダー樹脂によって合成繊維からなる不織布の表面の少なくとも一部に固着されるのが好ましい。10g/m(固形分)を下回ると涼感効果を感じられない。また、60g/m(固形分)を超えて固着しても、不織布の風合が硬くなり、コストが上昇するだけで効果が伴わず好ましくない。より好ましくは、15〜40g/mの固着量がよい。
【0038】
前記バインダー樹脂としては、合成繊維からなる不織布の表面に相転移材料を封入したマイクロカプセルを強固に固着することが出来ればよいが、一般的には、例えばウレタン樹脂、自己架橋型アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、シリコン樹脂、グリオキザール樹脂、ポリエステル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ブタジエン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル−シリコン共重合体樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂(SBR)、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、イソブチレン無水マレイン酸共重合体樹脂、エチレン−スチレン−アクリレート−メタアクリレート共重合体樹脂等を挙げることができる。
【0039】
次に、本発明に係る涼感性不織布の製造方法について説明する。
【0040】
第1の発明に係る涼感性不織布の製造方法は、合成繊維からなる不織布の少なくとも一方の面を加熱ロールによって接触加熱する接触加熱工程と、前記接触加熱工程後の不織布の接触加熱された面に相転移材料を封入したマイクロカプセルとバインダー樹脂を含む処理液を塗布する塗布工程と、前記塗布工程後の不織布を乾燥する乾燥工程と、を順に実施することを特徴とする。
【0041】
第2の発明に係る涼感性不織布の製造方法は、合成繊維からなる不織布に相転移材料を封入したマイクロカプセルとバインダー樹脂を含む処理液を塗布する塗布工程と、前記塗布工程後の不織布を乾燥する乾燥工程と、前記乾燥工程後の不織布の処理液を塗布された面を加熱ロールによって接触加熱する接触加熱工程と、を順に実施することを特徴とする。
【0042】
まず、上記第1、第2のいずれの発明の製造方法においても、接触加熱工程、塗布工程、乾燥工程を含み、両者の違いは工程の順序にある。すなわち、上記第1の発明の製造方法は、まず接触加熱工程、次に塗布工程、最後に乾燥工程の順序で製造する方法である。一方、上記第2の発明の製造方法は、まず塗布工程、次に乾燥工程、最後に接触加熱工程の順序で製造する方法である。
【0043】
(接触加熱工程)
接触加熱工程では、加熱ロールを接触させて加熱処理を施す。前記加熱ロールとしては、180℃〜250℃程度まで加熱できるロールであれば特に限定されないが、例えば、スチールロール、ジャケットロール等を挙げることができる。これらの加熱ロールに当てたり、巻きつけたりするなどして接触させればよく、この場合、特にロール間で挟んで押圧させる必要はないが、不織布の用途に応じて挟み込んで押圧してもよい。
【0044】
加熱ロールに当てたり、または巻きつける場合は加熱ロールの大きさにもよるが円周の1/20〜19/20の範囲で設定するのが好ましく、接触加熱処理が施された不織布の表面がより平滑化していればよい。
【0045】
前記加熱ロールの温度は、不織布を構成する合成繊維の融点より20℃〜60℃高い温度が好ましい。また、複数の種類の合成繊維からなる不織布では、一番低い融点を基準に設定するのが好ましい。
【0046】
(塗布工程)
塗布工程では、バインダー樹脂溶液に浸透剤、相転移材料を封入したマイクロカプセル等を均一に分散させた溶液を、不織布の表面にスプレー法やロールコート法で塗布する。また、分散溶液を発泡させてから塗布してもよい。
【0047】
また、前記相転移材料を封入したマイクロカプセルとバインダー樹脂と、水に分散した水分散液として使用することができる。バインダー樹脂については水との間でエマルジョン状態を形成させるのがより好ましい。なお、分散媒としては、水以外にアルコール等も使用し得るが、水が好適である。水に分散させる順序としては、相転移材料を封入したマイクロカプセルを水に分散させておいてから、バインダー樹脂を分散させるのが、マイクロカプセルとバインダー樹脂をより均一に分散させる観点から好ましい。また、この水分散液に、浸透剤、分散剤、増粘剤などの各種添加剤を配合してもよい。なお、分散溶液を発泡させるには、発泡剤を加え泡立て機を用いて発泡させる。発泡倍率は1.5倍〜6倍が好ましい。
【0048】
また、前記相転移材料を封入したマイクロカプセルと併用して吸湿剤を固着させてもよい。吸湿剤としては、特に限定はされないが、例えば、シリカゲル、キトサン、ゼオライト、セリシン、有機アミド、珪藻土、尿素、エチレン尿素、チオ尿素等を挙げることができる。相転移材料を封入したメラミン樹脂製のマイクロカプセルから放出される遊離ホルマリンを低減することができるとともに、吸湿作用により吸収された水分に人体の熱が伝道するので、人が不織布の表面に触れたとき冷たく感じることができる。吸湿剤を固着させるには、上記のマイクロカプセルとバインダー樹脂の水分散液に加えておけばよい。前記吸湿剤の量は、前記相転移材料を封入したマイクロカプセルの質量の20質量%〜50質量%が好ましい。
【0049】
(乾燥工程)
乾燥工程では、公知の方法で乾燥処理すればよい。乾燥手段は、加熱処理により連続的に乾燥させ巻き取る方法が望ましい。この時の加熱処理温度は、不織布を構成する合成繊維の種類にもよるが、100〜180℃とするのが好ましい。この温度での加熱処理により不織布への固着性がより高まり、耐久性が一段と向上する。
【実施例】
【0050】
次に、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例のものに特に限定されるものではない。使用した不織布、相転移材料を封入したマイクロカプセルの種類は次の通りである。
【0051】
<使用材料>
合成繊維・・・ポリエステル繊維(3dtex(融点220℃)50質量%、4dtex(融点170℃)20質量%、6dtex(融点220℃)30質量%の混綿)
不織布・・・前記合成繊維からなるニードルパンチ不織布(目付150g/m
相転移材料を封入したマイクロカプセル・・・(プレサーモ(大和化学工業株式会社製)、固形分40%、融点25℃と融点31℃の二種類)
バインダー樹脂・・・ポリウレタン樹脂エマルジョン「U−30NP」(大和化学工業株式会社製)
吸湿剤・・・有機アミド系吸湿剤「FC460」(三木理研工業株式会社製)
【0052】
<実施例1>
不織布の表面を温度210℃に設定された加熱ロール(直径500mm)の外周に1/4巻き付け接触加熱を20秒間施した。次に、水100重量部に相転移材料を封入したマイクロカプセル分散液を40重量部分散させておいてから、バインダー樹脂を8重量部及び吸湿剤を18重量部分散した水溶液をスプレーにて不織布表面に250g/m塗布し、その後120℃、10分間乾燥処理を施して、不織布上に相転移材料を封入したマイクロカプセルが30g/m、吸湿剤が10g/m、及びバインダー樹脂が5g/m固着した涼感性不織布を得た。涼感性能測定試験でQMAXは0.108j/cm・secであった。比較例1との官能評価においては10人の人が冷たいと感じ、また、風合いも「◎」で合格であった。
【0053】
<実施例2>
実施例1において、不織布を構成する3dtexのポリエステル繊維に替えて3dtexのナイロン繊維50質量%を用いた以外は実施例1と同様にして、不織布上に相転移材料を封入したマイクロカプセルが30g/m、吸湿剤が10g/m、及びバインダー樹脂が5g/m固着した涼感性不織布を得た。涼感性能測定試験でQMAXは0.120j/cm・secであった。比較例1との官能評価においては10人の人が冷たいと感じ、また、風合いも「◎」で合格であった。
【0054】
<実施例3>
実施例1において、不織布を構成するポリエステル繊維をすべて10dtexの繊維とし、加熱ロールの設定温度を240℃とした以外は実施例1と同様にして、不織布上に相転移材料を封入したマイクロカプセルが30g/m、吸湿剤が10g/m、及びバインダー樹脂が5g/m固着した涼感性不織布を得た。涼感性能測定試験でQMAXは0.102j/cm・secであった。比較例1との官能評価においては8人の人が冷たいと感じ、また、風合いも「◎」で合格であった。
【0055】
<実施例4>
実施例1において、水100重量部に相転移材料を封入したマイクロカプセル分散液を80重量部分散させておいてから、バインダー樹脂を21重量部及び吸湿剤を34重量部分散した水溶液をスプレーにて不織布表面に250g/m塗布した以外は実施例1と同様にして、不織布上に相転移材料を封入したマイクロカプセルが75g/m、吸湿剤が20g/m、及びバインダー樹脂が15g/m固着した涼感性不織布を得た。涼感性能測定試験でQMAXは0.158j/cm・secであった。比較例1との官能評価においては10人の人が冷たいと感じ、また、風合いも「○」で合格であった。
【0056】
<実施例5>
実施例3において、不織布を構成する繊維をすべて1dtexのアクリル繊維とした以外は実施例3と同様にして、不織布上に相転移材料を封入したマイクロカプセルが30g/m、吸湿剤が10g/m、及びバインダー樹脂が5g/m固着した涼感性不織布を得た。涼感性能測定試験でQMAXは0.125j/cm・secであった。比較例1との官能評価においては10人の人が冷たいと感じ、風合いも「◎」で合格であった。
【0057】
<実施例6>
実施例1において、不織布の表面の接触加熱工程を、相転移材料を封入したマイクロカプセルを不織布に固着乾燥後に施した以外は実施例1と同様にして、不織布上に相転移材料を封入したマイクロカプセルが30g/m、吸湿剤が10g/m、及びバインダー樹脂が5g/m固着した涼感性不織布を得た。涼感性能測定試験でQMAXは0.122j/cm・secであった。比較例1との官能評価においては10人の人が冷たいと感じ、また、風合いも「◎」で合格であった。
【0058】
<実施例7>
実施例1において、水100重量部に相転移材料を封入したマイクロカプセル分散液を30重量部分散させておいてから、バインダー樹脂を6重量部及び吸湿剤を13重量部分散した水溶液をスプレーにて不織布表面に200g/m塗布した以外は実施例1と同様にして、不織布上に相転移材料を封入したマイクロカプセルが17g/m、吸湿剤が7g/m、及びバインダー樹脂が3g/m固着した涼感性不織布を得た。涼感性能測定試験でQMAXは0.105j/cm・secであった。比較例1との官能評価においては8人の人が冷たいと感じ、また、風合いも「◎」で合格であった。
【0059】
<比較例1>
実施例1で用いた不織布に、相転移材料を封入したマイクロカプセルを固着させず、また接触加熱処理も施さない不織布を比較例1とした。涼感性能測定試験でQMAXは0.049j/cm・secであった。比較例1との官能評価においては誰ひとり冷たいと感じなかった。なお、風合いは「◎」で合格であった。
【0060】
<比較例2>
実施例1において、接触加熱処理を施さなかった以外は実施例1と同様にして、不織布上に相転移材料を封入したマイクロカプセルが30g/m、吸湿剤が10g/m、及びバインダー樹脂が5g/m固着した不織布を得た。涼感性能測定試験でQMAXは0.060j/cm・secであった。比較例1との官能評価においては2人の人が冷たいと感じ、風合いは「○」で合格であった。
【0061】
<比較例3>
実施例1において、相転移材料を封入したマイクロカプセルを固着させなかった以外は実施例1と同様にして、不織布を得た。涼感性能測定試験でQMAXは0.053j/cm・secであった。比較例1との官能評価においては誰ひとり冷たいと感じなかった。なお、風合いは「◎」で合格であった。
【0062】
<涼感性能測定試験>
QMAX(接触冷温感)・・・カトーテック株式会社製THERMO LABO II TYPEを用い、純銅板の初期温度36℃、不織布の温度25℃、接触圧0.98kPaで測定した。0.100j/cm・secより大きいものを合格とした。
官能評価・・・相転移材料を封入したマイクロカプセルを固着していない不織布を基準として冷たいと感じるかどうかを一対比較法で評価し、被験者数を10人とし、80%以上の人が冷たいと感じたものを合格とした。(気温25℃湿度50%の標準室内にて評価)
【0063】
<風合い評価試験>
不織布の表面を手でさするように触れた際の感触で評価した。すなわち、ザラザラ感が感じられなく滑らかな感触で風合いに優れるのものを「◎」、ザラザラ感が僅かに感じられるものの、風合いの比較的良好なものを「○」、ザラザラ感があって、柔らかい感触が乏しく風合いに劣るものを「×」とし、「○」以上を合格とした。
【0064】
本発明の涼感性不織布は、人が不織布の表面に触れたときにひやりとした涼しさを感じることができる優れた涼感性を発揮する不織布である。
【0065】
これに対し、比較例1〜3の不織布は、涼感性が格段に劣りほとんど涼しさを感じなかった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の涼感性不織布は、触れたときにひやりとした涼しさを感じることができるので、例えば、寝具用、衣料用の布地、靴用の布地及びインンソールなど身の回りで接する商品用の不織布として用いられる。