特許第6566481号(P6566481)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6566481
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】撤去機構、仮設柱、および撤去方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/16 20060101AFI20190819BHJP
   E04H 5/02 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
   E04G21/16
   E04H5/02 C
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-127125(P2016-127125)
(22)【出願日】2016年6月28日
(65)【公開番号】特開2018-3288(P2018-3288A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2018年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100195752
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 一正
(72)【発明者】
【氏名】辻田 勝彦
【審査官】 立澤 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 実開平03−050163(JP,U)
【文献】 特開2014−084201(JP,A)
【文献】 実開平03−113058(JP,U)
【文献】 特開2002−276525(JP,A)
【文献】 米国特許第06425712(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/16
E04H 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モジュール型プラントにおける上部梁からの荷重を支えて下部梁との間に設けられてなる仮設柱を撤去するために、当該仮設柱にかかる荷重を開放する撤去機構であって、
フランジと、
前記フランジと前記フランジに対向する部材である対向部材との間にシムプレートを挿入してなる荷重受け部と、
前記フランジと前記対向部材との間に接続ボルトを螺合してなるシムプレート固定部と、
ジャッキボルトのねじ部分の先端が前記対向部材を向くように前記フランジに備えた雌ねじ部に前記ジャッキボルトを螺合させてなるジャッキアップ部と、を備え、
前記ジャッキボルトのねじ部分の長さは前記フランジの厚みと前記シムプレートの厚みとの和より長く、前記ジャッキボルトのねじ部分の先端により前記対向部材を押圧可能であり、
前記シムプレートを前記荷重受け部から除去することにより前記仮設柱にかかる荷重を開放可能であることを特徴とする撤去機構。
【請求項2】
前記シムプレートは、前記接続ボルトの挿通位置に対応し、一端を開放した長穴を備えたことを特徴とする請求項1に記載の撤去機構。
【請求項3】
モジュール型プラントにおける上部梁からの荷重を支えて下部梁との間に設けられてなる仮設柱であって、
前記仮設柱は、当該仮設柱にかかる荷重を開放する撤去機構を有し、
前記撤去機構は、フランジと、
前記フランジと前記フランジに対向する部材である対向部材との間にシムプレートを挿入してなる荷重受け部と、
前記フランジと前記対向部材との間に接続ボルトを螺合してなるシムプレート固定部と、
ジャッキボルトのねじ部分の先端が前記対向部材を向くように前記フランジに備えた雌ねじ部に前記ジャッキボルトを螺合させてなるジャッキアップ部と、を備え、
前記ジャッキボルトのねじ部分の長さは前記フランジの厚みと前記シムプレートの厚みとの和より長く、前記ジャッキボルトのねじ部分の先端により前記対向部材を押圧可能であり、
前記シムプレートを前記荷重受け部から除去することにより前記仮設柱にかかる荷重を開放可能であることを特徴とする仮設柱。
【請求項4】
上部柱と下部柱とを有し、前記上部柱と前記下部柱との間に前記撤去機構を備え、前記対向部材は前記下部柱の最上部における部材であることを特徴とする請求項3に記載の仮設柱。
【請求項5】
最上部に前記撤去機構を備え、前記対向部材は前記上部梁における部材であることを特徴とする請求項3に記載の仮設柱。
【請求項6】
最下部に前記撤去機構を備え、前記対向部材は前記下部梁における部材であることを特徴とする請求項3に記載の仮設柱。
【請求項7】
モジュール型プラントにおける上部梁からの荷重を受けて下部梁との間に設けられてなる仮設柱を撤去する撤去方法であって、
前記仮設柱は、当該仮設柱にかかる荷重を開放する撤去機構を有し、
前記撤去機構は、フランジと、
前記フランジと前記フランジに対向する部材である対向部材との間にシムプレートを挿入してなる荷重受け部と、
前記フランジと前記対向部材との間に接続ボルトを螺合してなるシムプレート固定部と、
ジャッキボルトのねじ部分の先端が前記対向部材を向くように前記フランジに備えた雌ねじ部に前記ジャッキボルトを螺合させてなるジャッキアップ部と、を備え、
前記ジャッキボルトのねじ部分の長さは前記フランジの厚みと前記シムプレートの厚みとの和より長く、前記ジャッキボルトのねじ部分の先端により前記対向部材を押圧可能であり、
前記接続ボルトを緩め、前記ジャッキボルトを螺嵌して前記ジャッキボルトのねじ部分の先端により前記対向部材を押圧して、前記フランジと前記対向部材との間に前記シムプレートの厚さよりも大きいスペースを形成した後、前記シムプレートを除去し、前記仮設柱を撤去することを特徴とする撤去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モジュール型プラントにおける仮設柱の撤去機構、仮設柱、および撤去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラントを製作工場から据付地に輸送する際に、完成したプラントを複数のモジュールに分解して輸送し、据付地にて再度各モジュールを組み立てることが行われている。このとき、複数のモジュールに分解したことにより、柱の数が不足する等構造的に弱い部分ができる。この構造的弱点を補強するために仮設柱を設けて輸送することが行われている。この場合、モジュール組立後にこの仮設柱を撤去することが必要となる。
【0003】
プラントには、複数の縦梁および横梁により支持された重量機械を内蔵しているため、モジュール組立後には仮設柱にそれらの荷重がかかる。したがって仮設柱撤去時には、その荷重を開放させて撤去しなければならず容易な作業ではない。従来は、クレーンでプラントを吊り下げて仮設柱にかかる荷重をなくした状態で仮設柱を撤去するか、強引に仮設柱を切断して撤去する方法が実施されている。しかしながら、このような方法は手間がかかるという問題があった。
【0004】
特許文献1には、完成したプラントを多数のモジュールに分割して輸送し、外国における所定位置において各モジュールを組み立てるプラント建設の構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特許文献1:特開昭60−80628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載のものは、複数のモジュールに分割した後の構造的弱点を補強する仮設柱については記載がなく、仮設柱の要否や撤去方法については不明である。このため、現在まで、荷重がかかっている仮設柱の撤去を簡易に行うことが困難であるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決して、仮設柱の撤去を簡易な作業で行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、モジュール型プラントにおける上部梁からの荷重を支えて下部梁との間に設けられてなる仮設柱を撤去するために、当該仮設柱にかかる荷重を開放する撤去機構であって、
フランジと、
前記フランジと前記フランジに対向する部材である対向部材との間にシムプレートを挿入してなる荷重受け部と、
前記フランジと前記対向部材との間に接続ボルトを螺合してなるシムプレート固定部と、
ジャッキボルトのねじ部分の先端が前記対向部材を向くように前記フランジに備えた雌ねじ部に前記ジャッキボルトを螺合させてなるジャッキアップ部と、を備え、
前記ジャッキボルトのねじ部分の長さは前記フランジの厚みと前記シムプレートの厚みとの和より長く、前記ジャッキボルトのねじ部分の先端により前記対向部材を押圧可能であり、
前記シムプレートを前記荷重受け部から除去することにより前記仮設柱にかかる荷重を開放可能であることを特徴とする撤去機構を提供するものである。
【0009】
この構成により、ジャッキアップ部でジャッキアップし、シムプレートを除去することにより荷重を開放することができ、仮設柱の撤去を簡易な作業で行えるようにすることができる。
【0010】
前記シムプレートは、前記接続ボルトの挿通位置に対応し、一端を開放した長穴を備えるように構成してもよい。
【0011】
この構成より、シムプレートの挿入および除去を容易にし、仮設柱の撤去を簡易な作業で行えるようにすることができる。
【0012】
また、上記課題を解決するために本発明は、モジュール型プラントにおける上部梁からの荷重を支えて下部梁との間に設けられてなる仮設柱であって、
前記仮設柱は、当該仮設柱にかかる荷重を開放する撤去機構を有し、
前記撤去機構は、フランジと、
前記フランジと前記フランジに対向する部材である対向部材との間にシムプレートを挿入してなる荷重受け部と、
前記フランジと前記対向部材との間に接続ボルトを螺合してなるシムプレート固定部と、
ジャッキボルトのねじ部分の先端が前記対向部材を向くように前記フランジに備えた雌ねじ部に前記ジャッキボルトを螺合させてなるジャッキアップ部と、を備え、
前記ジャッキボルトのねじ部分の長さは前記フランジの厚みと前記シムプレートの厚みとの和より長く、前記ジャッキボルトのねじ部分の先端により前記対向部材を押圧可能であり、
前記シムプレートを前記荷重受け部から除去することにより前記仮設柱にかかる荷重を開放可能であることを特徴とする仮設柱を提供するものである。
【0013】
この構成により、ジャッキアップ部でジャッキアップし、シムプレートを除去することにより荷重を開放することができ、仮設柱の撤去を簡易な作業で行えるようにすることができる。
【0014】
上部柱と下部柱とを有し、前記上部柱と前記下部柱との間に前記撤去機構を備え、前記対向部材は前記下部柱の最上部における部材である構成としてもよい。
【0015】
この構成により、作業者が作業しやすい位置に撤去機構を設けることができ、仮設柱の撤去を簡易な作業で行えるようにすることができる。
【0016】
最上部に前記撤去機構を備え、前記対向部材は前記上部梁における部材である構成としてもよい。
【0017】
この構成により、仮設柱を上部柱と下部柱とに分ける必要がなくなるとともに、仮設柱の撤去を簡易な作業で行えるようにすることができる。
【0018】
最下部に前記撤去機構を備え、前記対向部材は前記下部梁における部材である構成としてもよい。
【0019】
この構成により、仮設柱を上部柱と下部柱とに分ける必要がなくなるとともに、仮設柱の撤去を簡易な作業で行えるようにすることができる。
【0020】
さらに、上記課題を解決するために本発明は、モジュール型プラントにおける上部梁からの荷重を受けて下部梁との間に設けられてなる仮設柱を撤去する撤去方法であって、
前記仮設柱は、当該仮設柱にかかる荷重を開放する撤去機構を有し、
前記撤去機構は、フランジと、
前記フランジと前記フランジに対向する部材である対向部材との間にシムプレートを挿入してなる荷重受け部と、
前記フランジと前記対向部材との間に接続ボルトを螺合してなるシムプレート固定部と、
ジャッキボルトのねじ部分の先端が前記対向部材を向くように前記フランジに備えた雌ねじ部に前記ジャッキボルトを螺合させてなるジャッキアップ部と、を備え、
前記ジャッキボルトのねじ部分の長さは前記フランジの厚みと前記シムプレートの厚みとの和より長く、前記ジャッキボルトのねじ部分の先端により前記対向部材を押圧可能であり、
前記接続ボルトを緩め、前記ジャッキボルトを螺嵌して前記ジャッキボルトのねじ部分の先端により前記対向部材を押圧して、前記フランジと前記対向部材との間に前記シムプレートの厚さよりも大きいスペースを形成した後、前記シムプレートを除去し、前記仮設柱を撤去することを特徴とする撤去方法を提供するものである。
【0021】
この構成により、ジャッキアップ部でジャッキアップし、シムプレートを除去することにより荷重を開放することができ、仮設柱の撤去を簡易な作業で行えるようにすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の撤去機構、仮設柱、および撤去方法により、仮設柱の撤去を簡易な作業で行えるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施例1における仮設柱撤去の概要を説明する図である。
図2】本発明の実施例1における撤去機構の例を説明する図である。
図3】本発明の実施例1における撤去方法の例を説明する図である。
図4】本発明の実施例2における撤去機構が設けられた仮設柱の例を説明する図である。
図5】本発明の実施例3における撤去機構が設けられた仮設柱の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0024】
本発明の実施例1について、図1図3を参照して説明する。図1は、本発明の実施例1における仮設柱撤去の概要を説明する図である。図2は、本発明の実施例1における撤去機構の例を説明する図である。図3は、本発明の実施例1における撤去方法の例を説明する図である。
【0025】
モジュール型プラントにおける仮設柱は、組み立てた後に上部梁から荷重を受けるため、そのままでは簡易に撤去することが困難である。そこで、本発明においては、仮設柱の一部に撤去機構を設けることにより、仮設柱が受ける荷重を開放して、仮設柱の撤去を容易にしている。実施例1においては、作業者が作業しやすい位置である仮設柱の途中に撤去機構を設けている。ここで、本発明において、モジュール型プラントとは、分割されている各モジュールを組立てて完成させるプラントをいう。このとき、分割されたモジュールは柱の数が不足して構造的に弱い部分ができるため、それを補強するために仮設柱を設けており、この仮設柱はプラント組立後撤去される。
【0026】
以下、本発明の実施例1における仮設柱撤去の概要について図1を参照して説明する。図1(a)は、組立後のモジュール型プラントにおける仮設柱100を示している。仮設柱100は、上部柱150、下部柱160、および撤去機構10を含んでいる。仮設柱100の上部は上部柱150が上部梁30にボルト等により固定されこの上部梁30から荷重を受けている。仮設柱100の下部は下部柱160が下部梁40にボルト等により固定されている。そして、撤去機構10は上部柱150と下部柱160との間に設けられている。上部柱150の長さおよび下部柱160の長さは任意であるが、作業者が作業しやすい位置に撤去機構10が位置するように上部柱150の長さおよび下部柱160の長さを設定することが望ましい。そして、上部柱150の長さと撤去機構10におけるシムプレート11、12の厚みと下部柱160の長さとの合計が、上部梁30の下端から下部梁40の上端までの長さになるように、上部柱150の長さと撤去機構10におけるシムプレート11、12の厚みと下部柱160の長さとを設定する。
【0027】
撤去機構10はシムプレート11およびシムプレート12に荷重をかける状態で備えており、このシムプレート11およびシムプレート12を除去する(図1(b))ことで撤去機構10にスペースができる。つまり、上部梁30の下端から下部梁40の上端までの距離の方が、上部柱150の長さと下部柱160の長さとの合計よりも長くなる。このために仮設柱100にかかっていた荷重が開放される(図1(c))。荷重が開放された仮設柱100は、上部柱150および下部柱160ともに固定されていたボルト等を除去することにより容易に撤去することができる。
【0028】
次に、撤去機構10について図2を参照して詳しく説明する。図2(a)は、仮設柱100における撤去機構10を説明する図であり、図2(b)は、撤去機構10におけるシムプレートを説明するA−A矢視図である。なお、以下の説明において、フランジ21に対向する部材を「対向部材」と称す。撤去機構10は、仮設柱100の上部柱150の最下部に設けたフランジ21と、フランジ21と対向部材との間にシムプレート11およびシムプレート12を挿入してなる荷重受け部141と、フランジ21と対向部材との間に接続ボルト17、18、19、20を螺合してなるシムプレート固定部142と、ジャッキボルト13、14、15、16のねじ部分の先端が対向部材を向くようにフランジ21に備えた雌ねじ部13S、14S、15S、16Sにジャッキボルト13、14、15、16を螺合させてなるジャッキアップ部140と、を備え、ジャッキボルト13、14、15、16のねじ部分の長さはフランジ21の厚みとシムプレート11、12の厚みとの和より長く、ジャッキボルト13、14、15、16のねじ部分の先端により対向部材を押圧可能であるように構成している。ここで、ジャッキボルト13、14、15、16はボルトで構成されている。
【0029】
ここで、実施例1におけるフランジ21に対向する部材(対向部材)とは、下部柱の最上部にある対向部材22を言い、フランジ21と対向する面積を有している。そして、フランジ21、シムプレート11、12、対向部材22が鉛直方向に並んで配置されている。また、接続ボルト17、18、19、20は、ボルトからなり、フランジ21および対向部材22に備えた挿通孔に挿通させた上で、ナット17N、18N、19N、20Nに螺合させている。
【0030】
図2(b)に示すように、シムプレート11は、接続ボルト17、18の挿通位置に対応し、一端を開放した長穴11Aおよび11Bを備えた板材であり、シムプレート12は、接続ボルト19、20の挿通位置に対応し、一端を開放した長穴12Aおよび12Bを備えた板材である。この長穴11A、11B、12A、12Bを備えることにより、シムプレート11およびシムプレート12が、接続ボルト17、18、19、20の締め付け力を充分伝達させる面積を有する形状であるとともに、荷重受け部141に挿入又は除去しやすくなっている。シムプレート11およびシムプレート12の材質は限定するものではなく、鉄、アルミ、ステンレス等の金属や強化プラスチックなどの柱を支えるための強度があり変形の少ない材質を使用することができる。シムプレート11およびシムプレート12は同じ厚さを有している。また、シムプレート11およびシムプレート12の厚さは仮設柱が受ける荷重により適宜選択できる。つまり、シムプレート11およびシムプレート12を除去した場合における上部柱150の撓み量より大きければよく、シムプレート11およびシムプレート12の除去後にフランジ21と対向部材22の間にクリアランスが形成されればよい。
【0031】
なお、実施例1においては、荷重受け部141に挿入するシムプレートをシムプレート11および12の2枚構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、シムプレート11の長穴11Aおよび11Bの長さを接続ボルト19、20の挿通位置に対応する位置まで含むように長くして、シムプレート12を省略しシムプレート11のみの1枚構成としてもよい。また、各シムプレートを一つの接続ボルトの挿通位置に対応するサイズにして4枚構成としてもよい。さらに、長穴を設けることなく四角形等のシムプレートとして細分化された構成としてもよい。
【0032】
また、実施例1においては、接続ボルト17、18、19、20は、フランジ21および対向部材22に備えたそれぞれの挿通孔に挿通させた上で、ナット17N、18N、19N、20Nに螺合させる構成としたが、これに限定されるものではなく、適宜その構成は変更が可能である。例えば、接続ボルト17、18、19、20を螺合させる方向をフランジ21から対向部材22に向ける方向としてもよいし、対向部材22からフランジ21に向ける方向としてもよい。また、フランジを下部柱160の最上部に設けて、上部柱150の最下部における対向部材に向けて下からジャッキアップする構成にしてもよい。
【0033】
また、実施例1における雌ねじ部13S、14S、15S、16Sは、図2(a)に示すようにフランジ21の下面にナットを溶接して設けている。しかし、これに限定するものではなく、適宜変更することが可能である。例えば、フランジ21の上面にナットを強度のある溶接をして設けてもよいし、フランジ21の孔に雌ねじを形成してもよい。
【0034】
また、実施例1においては、接続ボルトの数を4本とし、ジャッキボルトの数を4本としたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、荷重の大きさや撤去機構の都合により適宜変更できる。例えば、接続ボルトおよびジャッキボルトの数を2本としてもよいし、5本以上としてもよい。
【0035】
次に、実施例1における仮設柱の撤去方法について、図3を参照して説明する。プラントのモジュールが組み立てられた状態では、上部柱150と下部柱160との間に撤去機構10が設けられ、接続ボルト17、18、19、20がナット17N、18N、19N、20Nに螺嵌されてシムプレート固定部142が形成されている(図3(a))。そして、上部梁30(図1参照)からの荷重を受け、シムプレート11、12(図2(b)参照)が荷重受け部141を形成している。
【0036】
まず、接続ボルト17、18、19、20(図2(a)、(b)参照)とナット17N、18N、19N、20N(図2(a)参照、但し、ナット19N、20Nは図示せず)との締め付けを緩めて、図3(b)に示すクリアランスAのような隙間をつくる。次に、ジャッキボルト13、14、15、16の螺合を締め付けて、そのねじ部分先端を対向部材22に対して押圧する。この押圧により、フランジ21とシムプレート11、12との間にクリアランスBを得る(図3(b))。これで、フランジ21と対向部材22との間にシムプレート11、12の厚さよりも大きいスペースが形成されて、シムプレート11、12にかかる荷重は開放され、シムプレート11、12は容易に除去可能の状態となる。
【0037】
次に、シムプレート11、12を荷重受け部141から引き抜くことで除去する(図3(c))。次に、ナット17N、18N、19N、20Nをさらに緩めて、接続ボルト17、18、19、20を除去する。そうすると、上部柱150および下部柱160が容易に除去可能となるので、これらを除去して、仮設柱100の撤去を完了する。
【0038】
なお、実施例1においては、シムプレート11、12を除去してから接続ボルト17、18、19、20を除去するようにしたが、必ずしもこれに限定されず、適宜変更が可能である。例えば、先に接続ボルト17、18、19、20を除去してからシムプレート11、12を除去してもよい。この場合は、シムプレート11、12に長穴11A、11B、12A、12Bがなくても除去でき、シンプルな形状のシムプレートとすることができる。
【0039】
以上のように、本発明の実施例1においては、モジュール型プラントにおける上部梁からの荷重を支えて下部梁との間に設けられてなる仮設柱を撤去するために当該仮設柱に備えた撤去機構であって、
フランジと、
前記フランジと前記フランジに対向する部材である対向部材との間にシムプレートを挿入してなる荷重受け部と、
前記フランジと前記対向部材との間に接続ボルトを螺合してなるシムプレート固定部と、
ジャッキボルトのねじ部分の先端が前記対向部材を向くように前記フランジに備えた雌ねじ部に前記ジャッキボルトを螺合させてなるジャッキアップ部と、を備え、
前記ジャッキボルトのねじ部分の長さは前記フランジの厚みと前記シムプレートの厚みとの和より長く、前記ジャッキボルトのねじ部分の先端により前記対向部材を押圧可能であることを特徴とする撤去機構により、仮設柱の撤去を簡易な作業で行えるようにすることができる。
【0040】
また、モジュール型プラントにおける上部梁からの荷重を支えて下部梁との間に設けられてなる仮設柱であって、
前記仮設柱は、撤去機構を有し、
前記撤去機構は、フランジと、
前記フランジと前記フランジに対向する部材である対向部材との間にシムプレートを挿入してなる荷重受け部と、
前記フランジと前記対向部材との間に接続ボルトを螺合してなるシムプレート固定部と、
ジャッキボルトのねじ部分の先端が前記対向部材を向くように前記フランジに備えた雌ねじ部に前記ジャッキボルトを螺合させてなるジャッキアップ部と、を備え、
前記ジャッキボルトのねじ部分の長さは前記フランジの厚みと前記シムプレートの厚みとの和より長く、前記ジャッキボルトのねじ部分の先端により前記対向部材を押圧可能であることを特徴とする仮設柱により、仮設柱の撤去を簡易な作業で行えるようにすることができる。
【0041】
さらに、モジュール型プラントにおける上部梁からの荷重を受けて下部梁との間に設けられてなる仮設柱を撤去する撤去方法であって、
前記仮設柱は撤去機構を有し、
前記撤去機構は、フランジと、
前記フランジと前記フランジに対向する部材である対向部材との間にシムプレートを挿入してなる荷重受け部と、
前記フランジと前記対向部材との間に接続ボルトを螺合してなるシムプレート固定部と、
ジャッキボルトのねじ部分の先端が前記対向部材を向くように前記フランジに備えた雌ねじ部に前記ジャッキボルトを螺合させてなるジャッキアップ部と、を備え、
前記ジャッキボルトのねじ部分の長さは前記フランジの厚みと前記シムプレートの厚みとの和より長く、前記ジャッキボルトのねじ部分の先端により前記対向部材を押圧可能であり、
前記接続ボルトを緩め、前記ジャッキボルトを螺嵌して前記ジャッキボルトのねじ部分の先端により前記対向部材を押圧して、前記フランジと前記対向部材との間に前記シムプレートの厚さよりも大きいスペースを形成した後、前記シムプレートを除去し、前記仮設柱を撤去することを特徴とする撤去方法により、仮設柱の撤去を簡易な作業で行えるようにすることができる。
【実施例2】
【0042】
本発明の実施例2は、撤去機構を仮設柱の最上部に設けた点で、実施例1と異なっている。以下、図4を参照して実施例2について説明する。図4は、本発明の実施例2における撤去機構が設けられた仮設柱の例を説明する図である。
【0043】
図4に示すように、撤去機構210が仮設柱200の最上部に設けられている。撤去機構210は、実施例1における撤去機構10と同様であるが、フランジに対向する部材(対向部材)は上部梁30における部材であり、ジャッキボルトが仮設柱最上部のフランジから上部梁30に向けた構成となっている。そして、上部梁30とジャッキボルトのねじ部分先端との間、および上部梁30とシムプレートとの間には上部梁30を保護する保護プレート220が設けられている。保護プレート220は板材からなり、その材質は任意であるが、鉄、アルミ、ステンレス等の金属や強化プラスチックなどの柱を支えるための強度があり変形の少ない材質を採用することができる。また、保護プレート220の大きさは、少なくともジャッキボルトのねじ部先端による押圧点全てとシムプレートとを含む大きさであればよく、厚さはジャッキボルトのねじ部先端が押圧されても上部梁30を傷つけず保護できる厚さであればよい。
【0044】
実施例2においても、撤去に際しては、接続ボルトを緩め、ジャッキボルトを螺嵌してねじ部分の先端により上部梁30における部材を押圧し、フランジとフランジに対向する上部梁30における部材との間にシムプレートの厚さよりも大きいスペースを形成した後、シムプレートを除去し仮設柱200が荷重を受けないようにして、仮設柱200を撤去する。
【0045】
以上のように、実施例2においては、撤去機構を最上部に設けた仮設柱とすることにより、上部柱および下部柱を不要にできるとともに、仮設柱の撤去を簡易な作業で行えるようにすることができる。
【実施例3】
【0046】
本発明の実施例3は、撤去機構を仮設柱の最下部に設けた点で、実施例1と異なっている。以下、図5を参照して実施例3について説明する。図5は、本発明の実施例3における撤去機構が設けられた仮設柱の例を説明する図である。
【0047】
図5に示すように、撤去機構310が仮設柱300の最下部に設けられている。撤去機構310は、実施例1における撤去機構10と同様であるが、フランジに対向する部材(対向部材)が下部梁40における部材であり、ジャッキボルトが仮設柱最下部のフランジから下部梁40に向けた構成となっている。そして、下部梁40とジャッキボルトのねじ部分先端との間、および下部梁40とシムプレートとの間には保護プレート320が設けられている。保護プレートは板材からなり、その材質は任意であるが、鉄、アルミ、ステンレス等の金属や強化プラスチックなどの柱を支えるための強度があり変形の少ない材質を採用することができる。また、保護プレートの大きさは、少なくともジャッキボルトのねじ部先端による押圧点全てとシムプレートとを含む大きさであればよく、厚さはジャッキボルトのねじ部先端が押圧されても下部梁40を傷つけず保護できる厚さであればよい。
【0048】
実施例3においても、撤去に際しては、接続ボルトを緩め、ジャッキボルトを螺嵌してねじ部分の先端により下部梁40における部材を押圧して、フランジとフランジに対向する下部梁40における部材との間にシムプレートの厚さよりも大きいスペースを形成した後、シムプレートを除去し仮設柱300が荷重を受けないようにして、仮設柱300を撤去する。
【0049】
以上のように、実施例3においては、撤去機構を最下部に設けた仮設柱とすることにより、上部柱および下部柱を不要にできるとともに、仮設柱の撤去を簡易な作業で行えるようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明における撤去機構、仮設柱、および撤去方法は、モジュール型プラントの分野に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0051】
10:撤去機構 11:シムプレート 12:シムプレート11A:長穴 11B:長穴 12A:長穴 12B:長穴13:ジャッキボルト 14:ジャッキボルト 15:ジャッキボルト 16:ジャッキボルト13S:雌ねじ部 14S:雌ねじ部 15S:雌ねじ部 16S:雌ねじ部17:接続ボルト 18:接続ボルト 19:接続ボルト 20:接続ボルト17N:ナット 18N:ナット 19N:ナット 20N:ナット21:フランジ 22:フランジに対向する部材(対向部材)30:上部梁 40:下部梁
100:仮設柱 140:ジャッキアップ部 141:荷重受け部
142:シムプレート固定部
150:上部柱 160:下部柱
200:仮設柱 210:撤去機構 220:保護プレート
300:仮設柱 310:撤去機構 320:保護プレート
図1
図2
図3
図4
図5