特許第6566507号(P6566507)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大建工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6566507-壁面収納装置 図000002
  • 特許6566507-壁面収納装置 図000003
  • 特許6566507-壁面収納装置 図000004
  • 特許6566507-壁面収納装置 図000005
  • 特許6566507-壁面収納装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6566507
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】壁面収納装置
(51)【国際特許分類】
   A47B 55/00 20060101AFI20190819BHJP
   E04F 19/08 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
   A47B55/00
   E04F19/08 102
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-227250(P2018-227250)
(22)【出願日】2018年12月4日
【審査請求日】2019年4月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本合 優太
【審査官】 中村 百合子
(56)【参考文献】
【文献】 実開平2−116841(JP,U)
【文献】 意匠登録第1231918(JP,S)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 19/08
A47B 43/00−47/06
A47B 55/00−55/06
A47B 61/04
A47B 81/00−81/06
A47B 87/00−87/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に固定支持される壁面収納装置であって、
少なくとも1つの矩形箱状の第1収納部と、該第1収納部よりも小さい左右幅を有する少なくとも1つの矩形箱状の第2収納部とが上下方向に隣接して並んだ状態で配置されており、
上記第1収納部の開口の一部と、第2収納部の開口の全体とを開閉する揺動型の共通扉が第1及び第2収納部に跨がるように設けられ、
上記共通扉の左右幅は第2収納部の左右幅よりも大きく形成されていて、該共通扉の揺動端部には、共通扉の閉じ位置で第2収納部の側板よりも左右方向に突出する突出部が設けられていることを特徴とする壁面収納装置。
【請求項2】
請求項1において、
共通扉は、第2収納部の上下中間部において上下に分割されていることを特徴とする壁面収納装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上下2つの第1収納部間の左右一側部に1つの第2収納部が配置されていることを特徴とする壁面収納装置。
【請求項4】
請求項1又は2において、
上下2つの第1収納部間の左右両側部にそれぞれ第2収納部が配置されていることを特徴とする壁面収納装置。
【請求項5】
請求項3又は4において、
第2収納部は、上下端部がそれぞれ上側及び下側の第1収納部に連結固定された左右の側板を有し、該第2収納部の天板及び底板はそれぞれ上記上側及び下側の第1収納部の一部で構成されていることを特徴とする壁面収納装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示されるように、箱状の収納本体と、一側部が収納本体に回動可能に支持され、収納本体の開口を開閉する矩形板状の扉とを備えた扉付き収納装置はよく知られている。この特許文献1のものでは、扉の一側部以外の側部に該側部の裏面側を切り欠いた切欠部を形成して、扉の閉じ位置で切欠部の裏側に空間が生じるようにし、その空間に指を入れて扉に引っ掛けることで、扉を開くようにしている。
【0003】
また、特許文献2には、部屋の互いに直交する後壁面及び側壁面の間の入り隅部の壁面間に固定支持される収納家具として、後壁面に固定された背板と、側壁面に固定された側板と、背板及び側板に上下に並べられて固定された複数の棚板とを有する棚構成体を設け、棚構成体前側の側壁面に、棚構成体の上下寸法よりも大きい上下高さ及び棚板の左右長さよりも大きい左右幅を有する扉を一端部で回動可能に支持して、その扉により棚構成体の前側開口を開閉するようにし、扉の閉じ位置では、その他端部である回動端部を棚構成体の棚板において側板と反対側端部の位置よりも突出させて、この扉により棚板を前側から隠すようにすることが提案されている。
【0004】
この特許文献2の収納家具は、棚構成体における側壁面と反対側端部に側板がなく、その反対側端部は常時開放されているので、閉じ位置にある扉を開くときには、棚構成体の開放端部に手を入れることで、その手を扉に引っ掛けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−170011号公報
【特許文献2】特開2017−66609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、例えば建物の玄関等にその壁面に固定支持されて配置される収納装置としては、上部ユニット(天袋ユニット)及び下部ユニットと、それらの間に隣接して配置される中間ユニットとに分割されたものが一般的に用いられている。各ユニットは矩形箱状とされ、上部及び下部ユニットの左右幅は互いに略同じで、中間ユニットの左右幅は上部及び下部ユニットよりも小さくされており、収納装置は、上部及び下部ユニットの左右一側部に1つの中間ユニットが配置されてコ字型とされたもの、或いは上部及び下部ユニットの左右両側部にそれぞれ中間ユニットが配置されたロ字型とされたものが用いられる。
【0007】
このような収納装置においては、上部及び下部ユニットや中間ユニットのユニット毎にそれぞれ扉を設けて、各ユニットの開口を個別の扉によって開閉するのが一般的であるが、意匠性の向上を図る等の観点では、上下に隣接するユニットの開口を両ユニットに跨がった共通扉により開閉するようにしてもよい。
【0008】
そして、その共通扉にハンドルを付けないハンドルレスデザインとする場合、共通扉を閉じ位置から開くために、その揺動端部に何等かの手掛かり部が必要となる。この手掛け部として、共通扉の木口面に特許文献1に示すような切欠き、或いは凹部を設けてもよいが、その切欠きや凹部等を形成するための特別な作業や手間がかかり、製造コストがかかる。その他、共通扉に手掛かり用引手金具やプッシュオープン金具を設けてもよいが、その取付けの手間や部品としての金具が必要となり、やはりコストアップに繋がる。
【0009】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたもので、その目的は、上記のように上下に並んで配置される収納部の開口を共通の扉で開閉する収納装置の構造に工夫を加えることで、その共通扉に対する特別な加工や金具の取付けを要することなく手掛かり部が設けられるようにして、ハンドルレスデザインの収納装置の製造コストの低減を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成すべく、この発明では、上下に隣接して配置される収納部の一方の左右幅が他方よりも小さいことを利用し、その小さい側の収納部の左右幅よりも共通扉の左右幅を大きくし、その差の分だけ共通扉を収納部の側板から突出させて、その突出部を手掛かり部とするようにした。
【0011】
具体的には、第1の発明は、壁面に固定支持される壁面収納装置であって、少なくとも1つの矩形箱状の第1収納部と、この第1収納部よりも小さい左右幅を有する少なくとも1つの矩形箱状の第2収納部とが上下方向に隣接して並んだ状態で配置されており、第1収納部の開口の一部と、第2収納部の開口の全体とを開閉する揺動型の共通扉が第1及び第2収納部に跨がるように設けられ、この共通扉の左右幅は第2収納部の左右幅よりも大きく形成されていて、該共通扉の揺動端部には、共通扉の閉じ位置で第2収納部の側板よりも左右方向に突出する突出部が設けられていることを特徴とする。
【0012】
この第1の発明では、第1収納部と、それよりも小さい左右幅を有する第2収納部とが上下に隣接して配置され、共通扉は両収納部に跨がるように配置されて、この共通扉により第1収納部の開口の一部と、第2収納部の開口の全体とが開閉される。こうして共通扉によって隣接する2つの収納部の開口を開閉するので、共通扉が2つの収納部に跨がって配置されて、その大きさも大きくなり、すっきりした外観見映えが得られて収納装置全体の意匠性が高くなる。
【0013】
また、共通扉の左右幅は第2収納部の左右幅よりも大きく形成され、共通扉の揺動端部に、共通扉の閉じ位置で第2収納部の側板よりも左右方向に突出する突出部が設けられているので、その閉じ位置にある共通扉の突出部を手掛かり部とし、突出部に手を掛けて引っ張ることで、共通扉を開くことができる。この突出部の形成は、単に共通扉の左右幅の寸法を第2収納部の左右幅よりも大きく設定するだけで済み、その共通扉に対する切欠きや凹部等の加工、引手金具やプッシュオープン金具の取付けは全く不要となり、その分、製造コストを下げることができる。よって、ハンドルレスデザインの収納装置を低コストで製造することができる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、共通扉は、第2収納部の上下中間部において上下に分割されていることを特徴とする。このように共通扉を上下に分割するときに、その分割位置を第2収納部の上下中間部とすることで、分割位置は第1及び第2収納部間の境界部とは異なる位置となり、共通扉を開いたときに、その分割位置とは予想できない関係にある収納部が露出することになり、意外性を得ることができる。また、共通扉が分割されていることにより、その分割扉が小さくかつ軽くなり、分割されていない共通扉を開く場合に比べ、第1及び第2収納部のうちの必要な部分のみを小さな力で開閉できる。しかも、分割されている分割扉が小さくなることで、その反りも生じ難くなり、収納装置の外観見映えが安定する。
【0015】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上下2つの第1収納部間の左右一側部に1つの第2収納部が配置されていることを特徴とする。このことで、正面から見てコ字状のハンドルレスデザインの壁面収納装置が得られる。
【0016】
第4の発明は、第1又は第2の発明において、上下2つの第1収納部間の左右両側部にそれぞれ第2収納部が配置されていることを特徴とする。このことで、正面から見てロ字状のハンドルレスデザインの壁面収納装置が得られる。
【0017】
第5の発明は、第3又は第4の発明において、第2収納部は、上下端部がそれぞれ上側及び下側の第1収納部に連結固定された左右の側板を有し、該第2収納部の天板及び底板はそれぞれ上記上側及び下側の第1収納部の一部で構成されていることを特徴とする。
【0018】
この第5の発明では、第2収納部は、上側及び下側の第1収納部に連結固定された左右の側板を有するものの、その天板は上側の第1収納部の一部で構成され、底板は下側の第2収納部の一部で構成されているので、第2収納部の天板が上側の第1収納部の一部として、また底板が下側の第1収納部の一部としてそれぞれ兼用されることとなり、第2収納部と上側及び下側の第1収納部とが接する部分で2枚の板材が重なった構造はなくなる。そのため、第2収納部は、少なくとも左右の側板だけで済み、板材の使用量を減らして材料や製造コスト等を低減することができる。また、板材の重なった部分がなくなるので、収納装置全体で板厚が同等になり、すっきりした外観見映えが得られる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明のように、本発明によると、第1収納部とそれよりも左右幅の小さい第2収納部とを上下方向に隣接して並んだ状態で配置し、第1収納部の開口の一部と、第2収納部の開口の全体とを開閉する揺動型の共通扉を両収納部に跨がるように設け、その共通扉の左右幅を第2収納部の左右幅よりも大きく形成して、共通扉の揺動端部に第2収納部の側板よりも突出する突出部を設けたことにより、閉じ位置にある共通扉の突出部を手掛かり部として、共通扉を開くことができ、共通扉に対する切欠きや凹部等の加工、引手金具やプッシュオープン金具の取付けを不要として、ハンドルレスデザインの収納装置の製造コストを下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の実施形態に係る壁面収納装置の全体構成を示す正面図である。
図2図2は、壁面収納装置の全体構成を示す側面図である。
図3図3は、壁面収納装置の装置本体を示す正面図である。
図4図4は、壁面収納装置の装置本体を示す分解斜視図である。
図5図5は、要部の拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0022】
図1及び図2は本発明の実施形態に係る壁面収納装置Aを示し、この壁面収納装置Aは、例えば玄関や台所等の壁面Wに固定支持されて収納のために使用される。尚、以下の説明では、「左」は壁面Wに向かって左側を言い、「右」は壁面Wに向かって右側を言うこととする。
【0023】
壁面収納装置Aは、例えば木質材料からなる収納本体1と扉31〜35とを備えている。図3及び図4に示すように、収納本体1は、第1収納部としての上部ユニット3(天袋ユニット)及び下部ユニット5と、第2収納部としての1つの中間ユニット8とを備え、これらはいずれも前後方向の奥行が同じで前側に開放された矩形状の箱体からなり、背面側(後側)で壁面Wに固定されるようになっている。
【0024】
具体的には、上部ユニット3は左右方向に細長い箱体からなり、左右の側板3a,3b、天板3c及び底板3dを有する。この実施形態では、天板3cは両側板3a,3bに対し、左端部下面が左側の側板3aの上端面に、また右端面が右側の側板3bの上端部左側面にそれぞれ当接した状態で固定されている。また、底板3dは両側板3a,3bに対し、左端部上面が左側の側板3aの下端面に、また右端面が右側の側板3bの下端部左側面にそれぞれ当接した状態で固定されている。上部ユニット3の内部には、左右中央よりも左側寄り位置に上下方向の仕切板3fが配置され、仕切板3fの上端面は天板3c下面に、また下端面は底板3d上面にそれぞれ当接して固定されており、この仕切板3fにより上部ユニット3の内部空間が左右2つの空間に区画されている。さらに、2つの空間内の後端部にはそれぞれ背板3e,3eが左右に分かれた状態で嵌め込まれ、各背板3eは周縁端面を側板3a,3b、天板3c、底板3d及び仕切板3fに当接させた状態でそれらに一体的に固定されている。
【0025】
一方、下部ユニット5も左右方向に細長い箱体からなり、その高さが上部ユニット3よりも2倍近く大きいだけであり、下部ユニット5の左右長さ及び奥行は上部ユニット3と同じとされている。すなわち、下部ユニット5も、左右の側板5a,5b、天板5c及び底板5dを有する。この実施形態では、天板5cは両側板5a,5bに対し、左端部下面が左側の側板5aの上端面に、また右端部下面が右側の側板5bの上端面にそれぞれ当接した状態で固定されている。また、底板5dは両側板5a,5bに対し、左端面が左側の側板5aの下端部右側面に、また右端面が右側の側板5bの下端部左側面にそれぞれ当接した状態で固定されている。下部ユニット5の内部には、左右中央よりも左側寄り位置に上下方向の仕切板5fが配置され、仕切板5fの上端部は天板5c下面に、また下端部は底板5d上面にそれぞれ固定されており、この仕切板5fにより下部ユニット5の内部空間が左右2つの空間に区画されている。さらに、2つの空間内の後端部にはそれぞれ背板5e,5eが左右に分かれた状態で嵌め込まれ、各背板5eは周縁端面を側板5a,5b、天板5c、底板5d及び仕切板5fに当接させた状態でそれらに一体的に固定されている。
【0026】
そして、下部ユニット5は上部ユニット3の真下位置に上下に間隔をあけて重なるように配置され、上部ユニット3の左右の側板3a,3bの真下位置に下部ユニット5の左右の側板5a,5bが、また上部ユニット3の仕切板3fの真下位置に下部ユニット5の仕切板5fがそれぞれ位置している。
【0027】
尚、上部及び下部ユニット3,5における側板3a,3b,5a,5b、天板3c,5c、底板3d,5d、仕切板3f,5f及び背板3e,5eの接続構造は上記説明の例に限定されない。
【0028】
上記中間ユニット8も見掛け上は基本的に矩形箱状のもので、上記上部及び下部ユニット3,5間の左側部に配置され、この中間ユニット8の左右幅(左右長さ)は上部及び下部ユニット3,5よりも小さくなっている。
【0029】
そして、図5にも示すように、中間ユニット8は、上下端部がそれぞれ上部及び下部ユニット3,5に連結固定された左右の側板10,11を有する。具体的には、中間ユニット8の左側の側板10は、上端部が上部ユニット3の左側の側板3aと底板3dを介して連続し、下端部が下部ユニット5の左側の側板5aと天板5cを介して連続するように配置され、この左側の側板10の上端部は、上部ユニット3の底板3dの左端部に、また下端部は、下部ユニット5の天板5cの左端部にそれぞれダボ構造により連結固定されている。ダボ構造とは、図示しないが、互いに対向して当接する面の一方にダボ穴を形成し、他方にダボを突設するか、或いは当接する面の両方にダボ穴とダボとを互いに嵌合可能に設けて、そのタボをダボ穴に嵌合することで、両者を継ぎ合わせる構造である。
【0030】
これに対し、中間ユニット8の右側の側板11も、上部ユニット3の底板3dと下部ユニット5の天板5cとの間に配置され、この右側の側板11の上端部は上部ユニット3の底板3dに、また下端部は下部ユニット5の天板5cにそれぞれダボ構造により連結固定されている。この右側の側板11は、上部及び下部ユニット3,5の仕切板3f,5fの位置よりも少し(例えば22mm)だけ左側に位置しており、このことで、右側の側板11と上部及び下部ユニット3,5の仕切板3f,5fとは、前側から見て直線状に連続していない配置となっている。
【0031】
以上の構造により、中間ユニット8は天板及び底板を有する矩形箱状の構造であるが、その天板は上部ユニット3の一部である、底板3dの左側寄り部分で、また底板は下部ユニット5の一部である、天板5cの左側寄り部分でそれぞれ構成されている。換言すれば、中間ユニット8は、上下端部がそれぞれ上部及び下部ユニット3,5に連結固定された左右の側板10,11と、上部ユニット3の底板3dの左側寄り部分(上部ユニット3の一部)で構成された天板と、下部ユニット5の天板5cの左側寄り部分(下部ユニット5の一部)で構成された底板とを有する。
【0032】
中間ユニット8はさらに背板12を有する。図5に示すように、この背板12は、その左右端部が左右の側板10,11後端部の内面(対向面)に形成した上下方向の嵌合溝(図示せず)に嵌合されて接着剤により接着され、さらに例えば上下中央位置に配置した左右のL字金具15,15によって連結固定されている。背板12後側の壁面Wには図外の横桟が配置されており、各L字金具15の一側部をビス(図示せず)により側板10,11に螺合して取付固定するとともに、L字金具15の他側部、背板12及び横桟を貫通するビス(図示せず)を壁面Wに螺合することで、背板12を側板10,11と共に壁面Wに固定するようになっている。
【0033】
尚、背板12の側板10,11への固定構造は、上記の他、側板10,11後端面の内側に段差状の切欠きを形成して、その切欠きに背板12の左右端部を側板10,11後面と背板10,11後端面とが面一になるように嵌め込んで接着剤により接着固定してもよく、それに加えて、上記と同様にL字金具15を用いて背板12を側板10,11と共に壁面Wに固定するようにしてもよい。
【0034】
また、本発明は、中間ユニット8が背板12のないものも含んでおり、その場合は側板10,11をL字金具15によって壁面Wに固定するか、或いは側板10,11を壁面Wに固定せずに上部及び下部ユニット3,5のみに連結した構造とすればよい。
【0035】
このように、壁面収納装置Aは、1つの中間ユニット8が、上部及び下部ユニット3,5の左側部間に配置されていて、正面から見てコ字状(詳しくはコ字を左右逆にした形状)の収納装置となる。
【0036】
尚、本実施形態では、上部及び下部ユニット3,5の側板3a,3b,5a,5b、天板3c,5c、底板3d,5d、背板3e,5e、仕切板3f,5f、並びに中間ユニット8の側板10,11はいずれも同じ厚さ(例えば15mm)の板材が用いられ、中間ユニット8の背板12はそれよりも薄い板材が用いられている。
【0037】
また、図示しないが、上部ユニット3の側板3a,3b及び仕切板3fと、下部ユニット5の側板5a,5b及び仕切板5fと、中間ユニット8の側板10,11とにはそれぞれ高さ位置の異なる多段のダボ穴が形成されており、この同じ高さ位置のダボ穴にダボを嵌合して、そのダボ上に空間内に位置する棚板を支持できるようになっている。
【0038】
上記扉31〜35は、上下複数の丁番28,28(図では仮想線にて示す)で揺動可能に収納本体1に支持された揺動型の第1〜第4の4枚の扉31〜34と、及び同様に支持された1枚の共通扉35とからなる。
【0039】
第1〜第4の4枚の扉31〜34は、上部ユニット3及び下部ユニット5の各々の空間の前側開口を個別に開閉するものであり、第1扉31は、右端部が上部ユニット3の右側側板3bに上下2つの丁番28,28により揺動可能に支持されて、上部ユニット3の仕切壁3f右側の空間における右半部の前側開口を開閉するようになっている。第2扉32は、左端部が上部ユニット3の仕切板3fに上下2つの丁番28,28により揺動可能に支持されて、上部ユニット3の仕切壁3f右側の空間における左半部の前側開口を開閉する。第3扉33は、右端部が下部ユニット5の右側側板5bに上下2つの丁番28,28により揺動可能に支持されて、下部ユニット5の仕切壁5f右側の空間における右半部の前側開口を開閉する。第4扉34は、左端部が下部ユニット5の仕切板5fに上下2つの丁番28,28により揺動可能に支持されて、下部ユニット5の仕切壁5f右側の空間における左半部の前側開口を開閉する。第1扉31及び第2扉32は、閉じ位置で下端部が上部ユニット3の底板3d下面よりも僅かに下側に、また第3扉33及び第4扉34の上端部は、閉じ位置で下部ユニット5の天板5c上面よりも僅かに上側にそれぞれ突出しており、各扉31〜34を開くときには、この突出部に手を掛けて開くようになっている。
【0040】
これに対し、共通扉35は、上部ユニット3の仕切板3fの左側部分から中間ユニット8を経て下部ユニット5の仕切板5f左側部分まで上下部ユニット3,5(第1収納部)及び中間ユニット8(第2収納部)に跨がるように設けられており、上部ユニット3の仕切壁3f左側の空間の前側開口(第1収納部の開口の一部)と、中間ユニット8全体の前側開口(第2収納部の開口の全体)と、下部ユニット5の仕切壁5f左側の空間の前側開口(第1収納部の開口の一部)とを開閉する。
【0041】
さらに、この共通扉35は、中間ユニット8(第2収納部)の上下中間部の下端寄り部分において上側部35a及び下側部35bに上下に分割されている。すなわち、図5にも示すように、共通扉35の上側部35aは、上部ユニット3の仕切板3fの左側部分から中間ユニット8の下端寄り位置まで上部ユニット3及び中間ユニット8に跨がるように延び、その左端部が上部ユニット3の左側側板3aと中間ユニット8の左側の側板10とに上下2つの丁番28,28により揺動可能に支持されており、この上側部35aにより、上部ユニット3の仕切壁3f左側の空間の前側開口と、中間ユニット8の上側大半の空間の前側開口とを開閉するようにしている。
【0042】
また、共通扉35の下側部35bは、下部ユニット5の仕切板5fの左側部分から中間ユニット8の下端寄り位置(第5扉35の下端部近傍位置)まで下部ユニット5及び中間ユニット8に跨がるように延び、その左端部が中間ユニット8の左側の側板10と下部ユニット5の左側側板5aとに上下2つの丁番28,28により揺動可能に支持されており、この下側部35bにより、下部ユニット5の仕切壁5f左側の空間の前側開口と、中間ユニット8の下端部の空間の前側開口とを開閉するようになっている。
【0043】
そして、共通扉35の上側部35a及び下側部35bの幅は互いに同じで、中間ユニット8の左側側板10の左側面と右側側板11の右側面との間の距離よりも僅かに大きく、共通扉35の上側部35a及び下側部35bは、いずれもその閉じ位置では、揺動端である右端部が中間ユニット8の右側側板11の右面よりも僅かな突出量P(例えばP=5mm)だけ右側に突出していて、突出部37,37を有しており、上側部35a及び下側部35bの各々を開くときには、この突出部37を手掛かり部としてそれに手を掛けて開くようになっている。
【0044】
尚、上述したように、上部及び下部ユニット3,5の仕切板3f,5fと中間ユニット8の右側側板11との間に左右方向のずれがあるので、このずれに起因して、共通扉35の上側部35a及び下側部35bの右端部が中間ユニット8の右側側板よりも突出する。それに対し、上側部35aの右端部は上部ユニット3の仕切板3fよりも僅かに左側に位置し、下側部35bの右端部も下部ユニット5の仕切板5fよりも僅かに左側に位置している。
【0045】
次に、上記壁面収納装置Aを壁面Wに固定支持して施工する方法について説明する。予め、収納本体1の上部及び下部ユニット3,5は箱状に組み立てておく。これに対し、中間ユニット8は施工の際に組み立てる。
【0046】
まず、取り付けようとする壁面Wの例えば下部に下部ユニット5を背板5eにて固定する。次いで、この下部ユニット5の天板5c上面の左端位置(左側の側板5a上の位置)に中間ユニット8の左側側板10を、また天板5c上面の左端寄りの所定位置に中間ユニット8の右側側板11をそれぞれ起立させて固定する。このとき、各側板10,11の下端部はダボ構造により天板5cに固定する。また、側板10,11は、各々に形成されている嵌合溝が後側になるように起立させる。
【0047】
この後、中間ユニット8の左右の側板10,11の後端部にL字金具15,15を介して背板12を連結固定する。具体的には、この背板12は、左右の端部が左右の側板10,11の嵌合溝に嵌挿されるように上側から下に向かって差し込む。この背板12を下端部が下部ユニット5の天板5cに当接するまで完全に差し込み、差込みが終わると、L字金具15,15により背板12を側板10,11と共に壁面Wに固定する。
【0048】
次いで、中間ユニット8の左右の側板10,11上に上部ユニット3を持ち上げて、その上部ユニット3の底板3d下面の左端位置(左側の側板3aの位置)に中間ユニット8の左側側板10の上端部を、また上部ユニット3の底板3dの左端寄りの所定位置に中間ユニット8の右側側板11の上端部をそれぞれダボ構造により固定する。
【0049】
最後に、この上部ユニット3を背板3eにて壁面Wの上部に固定した後、4枚の扉31〜34と、分割された共通扉35(上側部35a及び下側部35bの2枚)とを個別に順に丁番28,28により取付支持すればよい。
【0050】
以上のような施工方法により、壁面収納装置Aを壁面Wに固定支持できる。こうすれば、施工時に中間ユニット8を箱状に組み立てる手間が不要となって、施工効率が良くなり、作業コストも低くなるメリットがある。
【0051】
尚、上記の施工方法の他、以下の方法で施工することもできる。すなわち、上記の施工方法と同様に、下部ユニット5を壁面Wに固定した後、その上の左端部に中間ユニット8の左側の側板10を起立させて固定する。一方、中間ユニット8の右側の側板11については、下部ユニット5の上面の右端部に起立させて仮止め状態で固定する。この後、上部ユニット3を持ち上げて中間ユニット8の左右の側板10,11上に載置し、その上部ユニット3を左右の両端部で左右の側板10,11により支持した状態で、上部ユニット3の下面の左端部に左側の側板10の上端部を固定するとともに、上部ユニット3を壁面Wに固定する。その後、上記仮止め状態にある右側の側板11を左端寄りの本来の位置に平行移動させ、その上下端部を上部ユニット3の底板3d及び下部ユニット5の天板5cに固定する。しかる後に扉31〜35を取り付ける。この場合、1人の作業者であってもより一層容易に施工することができる。
【0052】
したがって、この実施形態では、上部ユニット3及び下部ユニット5と、それよりも小さい左右幅を有する中間ユニット8とが上下に隣接して配置され、共通扉35は3つのユニット3,5,8に跨がるように配置されて、この共通扉35により上部ユニット3の仕切壁3f左側の空間の前側開口と、中間ユニット8全体の前側開口と、下部ユニット5の仕切壁5f左側の空間の前側開口とが開閉される。こうして共通扉35によって隣接する3つのユニット3,5,8の開口を開閉するので、共通扉35が3つのユニット3,5,8に跨がって配置されて、その大きさも大きくなり、すっきりした外観見映えが得られて収納装置A全体の意匠性が高くなる。
【0053】
また、共通扉35の上側及び下側部35a,35bの左右幅は中間ユニット8の左右幅よりも大きく形成され、これら上側及び下側部35a,35bの揺動端部(右端部)に、共通扉35の閉じ位置で中間ユニット8の右側側板11よりも左右方向に突出する突出部37,37が設けられているので、その閉じ位置にある共通扉35の突出部37,37を手掛かり部とし、各突出部37に手を掛けて引っ張ることで、共通扉35の上側及び下側部35a,35bを開くことができる。この突出部37の形成は、単に共通扉35の上側及び下側部35a,35bの左右幅の寸法を中間ユニット8の左右幅よりも大きく設定するだけで済み、その共通扉35に対する切欠きや凹部等の加工、引手金具やプッシュオープン金具の取付けは全く不要となり、その分、製造コストを下げることができる。このことによって、ハンドルレスデザインの収納装置Aを低コストで製造することができる。
【0054】
また、上記の扉構造により、扉31〜35を閉めたときと開いたときとの形態が変化し、図1に示す閉じ状態から扉31〜35をあけたときに、図3に示すように、特に共通扉35の開き位置によって、中間ユニット8の天板としての上部ユニット3の底板3dと、中間ユニット8の底板としての下部ユニット5の天板5cとが現れ、実際の収納部の配置が共通扉35の位置によって想像される配置とは異なるという意外性を期待することができる。
【0055】
しかも、共通扉35は上側部35a及び下側部35bに上下に分割され、分割部の位置は、中間ユニット8の下端寄り位置に位置しているので、この分割位置も上下部ユニット3,5及び中間ユニット8の境界部とは異なる位置となり、このことでも同様に意外性を期待できる効果が得られる。
【0056】
さらに、共通扉35が上側及び下側部35a,35bに上下に分割されていることにより、その分割された上側及び下側部35a,35bそのものが小さくかつ軽くなり、仮に分割されていない共通扉35を開く場合に比べ、上部ユニット3、下部ユニット5及び中間ユニット8のうちの必要な部分のみを小さな力で開閉できる。また、共通扉35の分割されている上側及び下側部35a,35bが小さくなることで、その反り自体も生じ難くなり、収納装置Aの外観見映えが安定する。
【0057】
また、本実施形態では、壁面収納装置Aの収納本体1は、上部ユニット3(天袋ユニット)、下部ユニット5及び1つの中間ユニット8を備え、その中間ユニット8は、上部及び下部ユニット3,5に連結固定された左右の側板10,11を有するが、中間ユニット8の天板は上部ユニット3の底板3dの左端部で構成され、底板は下部ユニット5の天板5cの左端部で構成されている。すなわち、中間ユニット8の天板が上部ユニット3の底板3dの左端部と兼用され、底板が下部ユニット5の天板5cの左端部と兼用される。このことから、中間ユニット8と上部及び下部ユニット3,5とが接する部分で2枚の板材が重なった構造はなくなる。そのため、中間ユニット8は、左右の側板10,11及び背板12だけで済み、その分、板材の使用量を減らして材料や製造コスト等を低減することができる。また、板材の重なった部分がなくなるので、収納装置A全体で板厚が同等になり、扉31〜35が開いた状態ですっきりした外観見映えが得られる。
【0058】
そのとき、中間ユニット8の背板12は、左右の側板10,11にL字金具15,15や接着剤により連結固定されているので、左右の側板10,11に背板12を簡単な構造で容易に連結することができる。
【0059】
しかも、中間ユニット8の左右の側板10,11は上部及び下部ユニット3,5にダボ構造により固定されているので、上部及び下部ユニット3,5に対する中間ユニット8の側板10,11の固定がダボ構造によって容易になる。
【0060】
そして、上記中間ユニット8は、その天板及び底板が上部及び下部ユニット3,5で兼用されて、実質的に側板10,11及び背板12のみからなるものであるので、例えば室内の天井高さ等に合わせて壁面収納装置A全体の高さを変更するときには、その側板10,11及び背板12の各高さ(上下長さ)を変えるだけで済み、箱状の中間ユニットに比べて、壁面収納装置Aの高さの変更を容易に行うことができる。そのとき、壁面収納装置Aの高さに応じて共通扉35の高さも変更する必要がある。
【0061】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、共通扉35を中間ユニット8(第2収納部)の上下中間部の下端寄り部分において上側部35a及び下側部35bに上下に分割しているが、分割位置を中間ユニット8の上下中間部の他の位置に変えてもよく、さらに共通扉35は3枚以上に分割してもよい。また、共通扉は、上下に分割されていない1枚のものであってもよい。
【0062】
上記実施形態では、1つの中間ユニット8が上部及び下部ユニット3,5の左側部に配置されているが、この中間ユニット8を上部及び下部ユニット3,5の右側部に配置するようにしてもよく、その場合も壁面収納装置はコ字状となる。
【0063】
また、中間ユニット8を1つから2つに増やし、その2つの中間ユニット8,8を上部及び下部ユニット3,5の左右両側部に配置してもよい。2つの中間ユニット8,8の各々の構造は上記実施形態と同じである。この場合には、正面から見てロ字状の壁面収納装置が得られる。
【0064】
以上のコ字状やロ字状の壁面収納装置は、施工する箇所に応じて適宜選択すればよい。
【0065】
さらに、上記実施形態では、第1収納部としての上部及び下部ユニット3,5を2つとし、第2収納部としての中間ユニット8を1つとしているが、これら第1及び第2収納部の数は変更することができる。例えば、1つの第1収納部の上側(又は下側)に1つの第2収納部を隣接して並んだ状態で配置して、収納装置をL字型(又はその逆形状)としてもよい。或いは、上下に並んだ2つの第1収納部の左右中央部間に第2収納部を配置したI字型、上下に並んだ3つの第1収納部の間にそれぞれ第2収納部を配置したE字型等がある。いずれの場合も、第1収納部の開口の一部と、第2収納部の開口の全体とを開閉する揺動型の共通扉を第1及び第2収納部に跨がるように設け、その共通扉の左右幅を第2収納部の左右幅よりも大きく形成して、共通扉の揺動端部に、共通扉の閉じ位置で第2収納部の側板よりも左右方向に突出する突出部を設ければよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、共通扉に対する切欠きや凹部等の加工、引手金具やプッシュオープン金具の取付けを不要として製造コストを下げることができるので、極めて有用で産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0067】
F 壁面
A 壁面収納装置
1 収納本体
3 上部ユニット(第1収納部)
3d 底板
3f 仕切板
5 下部ユニット(第1収納部)
5c 天板
5f 仕切板
8 中間ユニット(第2収納部)
10 左側の側板
11 右側の側板
28 丁番
35 共通扉
35a 上側部
35b 下側部
37 突出部
P 突出量
【要約】
【課題】上下に並んで配置される上下部ユニット3,5及び中間ユニット8の開口を共通の扉で開閉する場合に、その共通扉に加工や金具の取付けを要することなく手掛かり部が設けられるようにして、ハンドルレスデザインの収納装置の製造コストの低減を図る。
【解決手段】壁面収納装置Aは、上下に間隔をあけて配置される上部及び下部ユニット3,5と、これらユニット3,5間に配置され、左右幅がユニット3,5よりも小さい1つの矩形箱状の中間ユニット8とを備えている。上部及び下部ユニット3,5の開口の左側と中間ユニット8の開口の全体とを開閉する揺動型の共通扉35がユニット3,5,8に跨がるように設けられ、共通扉35の左右幅は中間ユニット8よりも大きく形成され、共通扉35の揺動端部たる右端部には、共通扉35の閉じ位置で中間ユニット8の右側側板11よりも右方向に突出する手掛かり部としての突出部37が設けられている。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5